※この作品はR-18です。

悪の不死鳥   作:早見 彼方

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第27話

「起きなさい」

 重たい衝撃を腹部に受け、リアスは悶絶するとともに意識を覚ました。

 目を開くと、黒いエナメルストッキングに包まれた何者かの脚。目線を下げた先には、自分の露出した乳房。胸が邪魔で見えにくいが、どうやらハイヒールのつま先で腹部を思い切り蹴り上げられたのだと理解する。

 リアスは顔を上げた。

 紫色に燃え盛る炎に囲まれた広い空間。自分の正面に立っている者の顔を確認する。

 朱乃。自身の眷属にして、大切な親友。漆黒のハイレグボディスーツを纏った肉体は女体の線が鮮明に確認できる。臀部から腰に掛けたなまめかしい曲線も、胸元の豊満な膨らみも。それだけでも十分に扇情的であるというのに、乳首とへその周り、秘所を隠す生地は切り取られ、乳首や陰核に通された銀色のピアスが直接確認できた。

「うふふ。やっと起きたわね、リアス」

 本人の興奮に呼応してか、下腹部の淫紋は明滅し、紫色の炎の翼が火力を上げる。

 変わり果てた朱乃を見て、夢だと思いたかった。

 だが、今のリアスはもう、これが現実であると理解していた。

 朧気だったレーティングゲーム時の記憶が断片的に蘇る。

 自分の大切な眷属たちをライザーに奪われ、弄ばれた。自身もライザーの良い様に操られ、思い出したくもない痴態を見せつけた。レーティングゲームの後も、自慰の快楽に狂ってしまった。一生の恥だ。泡沫のように脳裏に浮かぶ最低な光景を前に、リアスは屈辱の底に叩き落された。

 何も守れなかった。眷属を奪われていることにも気が付けなかった。

 哀れな主を嘲笑うように、朱乃と、横から現れたアーシアと小猫が冷笑を向けてくる。

「リアス部長の無様な姿はもう見飽きてしまいましたね? 私も思いっきり蹴飛ばしてあげようかと思いましたけど、これ以上は可哀想です」

「情けないです……。もう少し、まともに抗ってみてはどうですか……? クソ雑魚乳牛部長……。その無駄に大きい乳袋を殴れば抵抗してみせてくれますか……?」

 二人に言われなくとも、リアスは先ほどから抗っていた。しかし、天井と床から伸びる紫の炎に両腕と両足を絡め取られ、宙に浮いたまま大の字を強要されている。熱を感じさせない炎であるため、焼かれることはないのだが、力を入れても全く動じないほどの頑強さは有していた。

「ライザーはどこ!?」

「リアス。口の利き方には気をつけなさい。ちゃんと敬称をつけなくては――」

「ライザー!」

 言葉を遮って大声を張り上げたリアスを見て、朱乃たちは呆れたような表情を浮かべ、背を向けた。炎の翼を羽ばたかせて三人が向かった先には、何もない空間にぽつんと置かれた玉座があった。

 悪趣味な金色の玉座に腰かけているのは、憎き男、ライザー・フェニックス。彼の開かれた足の間には、朱乃たちと揃いの衣装を身に纏う銀髪ポニーテールの女と金髪ツインテールの少女が膝を突いて座り込んでいた。金髪の少女はライザーの妹のレイヴェルだろうが、もう片方はいったい誰だろうか。顔は見えないが、随分とライザーに可愛がられているように見える。ライザーが女の銀髪を愛おしそうに撫でると、女はライザーの股間に顔を埋め、湿った音を立てて肉棒を喉奥まで迎え入れた。

「ぐぽぉっ、ぢゅぶっ、ぐぷっ、ぐぽぉっ、ぢゅぼっ、ぐぷぷぅっ!」

「ぢゅるるっ、あむっ、あぁ、お兄様の金玉、とぉっても美味しいですわ、ちゅぷっ、くちゅっ、ちゅっ」

 二人がかりの奉仕を受けるライザーの両脇に、アーシアと小猫が身を摺り寄せ、背中から朱乃がライザーに抱き着く。両手に余る美女に囲まれ、ライザーは幸せそうだった。小猫の小さな尻を撫で、アーシアの胸を揉み、朱乃の乳房のクッションに後頭部を預ける。

「どうだ、リアス。俺のコレクションは」

 大切な仲間をコレクション扱いされ、リアスは激情に駆られた。

「いい加減にしなさい! 私の仲間を返して!」

 必死に叫ぶと、今度は朱乃たちへと視線を振り向けた。

「朱乃! 小猫! アーシア! 早く目を覚ましなさい! あなたたちが帰ってこないと、私だけじゃない、皆が心配するわ! 誰一人だって欠けては駄目なの! 私たちにはあなたたちが必要なのよ!」

「皆? 心配?」

 リアスの言葉の何が気になったのか、ライザーは眉を潜めた。顔を横に向け、小猫たちと視線を重ねた後、「何を言っているんだろうな、こいつは」と馬鹿にするような目をリアスに向けてきた。

 しかし、やがて得心がいったのだろう、「ああ、なるほど」とライザーが声を上げた。

「そう言えば、記憶を完全に戻してやったわけじゃなかったな。お前は、ここにいない仲間は無事だと思っているようだが、それは間違いだ」

「どういう、意味……?」

「意味も何も、その通りなんだが。まあ、説明するよりも、見てもらったほうが早いか」

 言うと、ライザーが指を鳴らす。広い部屋に妙に響き渡る音。

 いったい何をしようというのか。警戒を怠らず、視線をさ迷わせるリアスだったが、その異変はリアスの正面に現れた。ライザーが座する玉座の後方、炎の壁の中に埋め込まれていたらしい二人の少年と一人の少女が姿を現した。

 少年の一人は一誠だ。全身の衣服はなく、今のリアスと同じように触手のような炎に全身を絡みつかれている。眠っているようだが、股間の一物は強い興奮を抱いて勃起していた。

 もう一人の少年は、ギャスパー・ヴラディ。中性的な容姿をしていて、股間で小さく膨らむ肉棒がなければ美少女にしか見えないだろう。小柄な金髪の男の娘は細い裸身を晒し、こちらも炎によって拘束されている。一誠と同じく眠りに就いていて、彼の赤い双眸は確認できない。

 そして、最後。長い金髪を背中まで伸ばした、同世代の少女。

 いや、胸はあるのだが、本当に少女なのだろうか。陰部には男の象徴が存在していた。だいぶ小さいが、それでも男の女の両方の特徴を併せ持っている。いわゆる両性具有と呼ばれる状態だ。

 目を覚ましているために開いた目からは青い瞳が確認できるが、まるで心を失ったように感情が欠落していた。同じ金髪のアーシアと比べて凛とした印象の綺麗な少女だったが、やはりリアスの知らない少女だった。

 ただ、この少女と似た面立ちの少年ならば、リアスは知っていた。たとえばその少年の性別を変えたとしたら。そんな想像をすると驚くほどにしっくりくる。左目の下に泣き黒子がある点も、同じだった。

 まさか。リアスは想い浮かべた恐ろしい想像を否定したかった。

「祐斗、なの……?」

 一度確信すると、そうとしか考えられなかった。

 驚愕に染まるリアスの表情を見て、ライザーが口元を愉快げに歪める。

「よくわかったな、さすがは主様だ。その通り、これは木場祐斗だ」

「本当に……?」

「どれくらいだかは俺も把握していないが、とりあえず心が壊れるまで射精地獄を体験させてやった。この後も射精を再開させ、雄の機能を完全終了させた後、内側も外側も徹底的に女に改造する予定だ。元から女として生まれたのと変わらない状態にしてやるよ。壊れた心もすぐに直せるし、何も問題はないだろう」

 何を言っているのか、すぐに理解できなかった。頭がそれを拒絶する。しかし、リアスはレーティングゲームの時の記憶を完全に取り戻してしまった。ゲームに参加していなかったギャスパーにも魔の手が及んだという事実も知ってしまった。

 一人も無事な眷属はいない。皆、蹂躙された。特に祐斗に至っては性別まで変えられた。こうなるまでに受けた過酷な過程を想像するだけで、急速に心が冷えていく。

「こいつらはただの玩具だからな」

 許さない。

「壊れても、そのたびに直せばいい」

 許されない。

「俺の玩具になれるんだ。これ以上の幸せはないよな?」

 この男だけは絶対に。

「だから、感謝しろよ? リアス」

 絶対に滅ぼす。

「ライザァァァアア!!」

 リアスは怒りを爆発させ、自分の正面に滅びの魔力を収束させた。兄であるサーゼクスのそれよりも破壊力に特化したリアスの滅びを体現するように、紅と黒が混ざり合った禍々しい魔力球が生み出される。

 頭一つ分の大きさに無理矢理凝縮させた魔力。

 火事場の馬鹿力を発揮し、これまでの中で最高の魔力を練ることに成功した。これに込められた破壊力はたとえ不死鳥といえどただでは済まない。いくら再生を繰り返そうと、内側で滞留し、延々と相手を蝕む。問題はライザーに当てられるかにかかっているのだが、それも問題なさそうだ。

 朱乃たちはどうやらそれを止める気はないらしい。守る体勢にも入らずにライザーとイチャついている。攻撃の矛先であるライザーも同様で、侍らせる美少女たちの胸や尻を堪能している。歯牙にもかけないようだ。

 それならば、その余裕ごと吹き飛ばす。

 リアスはそれを、愚直にも正面から打ち出した。

 滅びの魔力は誰にも妨げられることなく、ライザーの目前に駒を進めていた。ライザーはこちらに視線を向けてきた。止められるかとも思ったが、やはり、手を上げることもしない。顔で受け止めて見せようというのだ。

 馬鹿にしないで!

 リアスの怒りに応じて魔力は加速し、超高速で憎たらしい顔面へと突き刺さる。

 そのはずだった。

「止まった……?」

「おいおい、手を出さなくても良かったんだが?」

 ライザーに放った魔力が停止していた。潰すはずの顔の前で微動だにしない。それはライザーにとっても予想外のことであるらしく、攻撃を防いだ炎の翼、その所有者である足元の女へと目線を落としていた。

 女はそれを受け、これまで咥えていた肉棒を口から取り出し、言葉を紡いだ。

「申し訳ございません、ライザー様。我慢ができず」

 リアスにとってどこか聞き馴染みのある声を発した女は、炎でリアスの魔力を包み込み、そのまま焼きつぶした。自分の中で渾身の一撃を止められたこともそうだが、容易く焼き消されたこともリアスにとっては驚きだった。しかし、直後にはそれ以上の衝撃がリアスの心を襲った。

 ライザーを背で庇うように立ち上がった女が、リアスと正面から向き合う。

「ライザー様にゴミを投げつけるとは。ライザー様が許そうと、この私が許しません」

 正面からリアスを睨みつける女の顔は、リアスのよく知る人物のものだった。顔だけではない。信じたくもないが、卑猥なスーツに身を包むスタイルのいい女体も、凛とした声も同じ。あり得ない。そう思いたいが、身から漂う魔力は、本人のものとしか思えなかった。

「グレイフィア……!?」

「あら、ようやく気がついたのね。鈍すぎるのではないかしら」

 グレイフィアは呆れたように言った後、口角を上げた。紅色ではなく、紫色のルージュを塗った艶やかな唇が三日月を描く。細められた魅力的な双眼の内側で、銀の瞳がリアスを冷ややかに見つめている。それは濃密な敵意も伴っていて、視線を合わせるだけで胸が締めつけられるような重圧を覚える。

「そんな……。でも、どうして……!?」

 リアスは混乱の極致に立たされていた。目の前にいるグレイフィアは、たった今までレイヴェルと一緒にライザーの一物をむしゃぶりついていた。格好は違うとはいえ、美しい銀髪を目にしたとき、グレイフィアのことを一度も連想しなかったといえば嘘になる。だが、リアスの兄の妻であるグレイフィアが、そのようなことをするとは思えず、即座に切り捨てた予想だったはずなのに。

 これが現実だとすれば、思いつくのは一つだった。

「貴女の想像通りよ、リアス」

 グレイフィアが足を左右に開く。耳につけたチンポ型イヤリングと、乳首のピアスから垂れるハート型のアクセサリーが揺れる。小さく開いた口から赤い舌を出し、紫のルージュで彩った唇を軽く一舐めする。実に楽しそうな笑顔を象って、グレイフィアは陰唇を両手の指で掻き分け、隠れていた膣穴をよく見えるように公開した。

「見えるかしら? んっ、すぐにこの穴から出てくるわ……」

 ヒクヒクと動く膣穴。直後、濃すぎる白色に濁った体液が、ごぽぉと穴から押し出されるように流出した。糸を引くほど粘ついた白濁液が床に着弾し、足元に広がった。いったいどれだけ詰め込まれていたのか。次から次へとまだ新鮮とも思える子種汁を排出した後、グレイフィアは口を開いた。

「グレイフィア・ルキフグスはライザー・フェニックス様に敗北したの。ライザー様の妻であるグレイフィア・フェニックスとして生きていくことに決め、ライザー様に出会う前の無駄だった時間を取り戻すように、暇さえあればライザー様と愛し合い、愚息であるミリキャスを産んで穢れてしまった子宮に子種を注いでもらっているのよ」

 グレイフィアは金色の指輪を嵌めた左手の薬指で、下腹を優しく撫でた。

「いずれ、私の子宮は尊い不死鳥の遺伝子によって浄化されるわ。そして、悪魔の頂点に立つ不死鳥の血を引いだ優秀な子供を孕むの。ミリキャスという駄目な子供を産んだ事実を完全に消し去れるよう、受精と妊娠、出産を数えきれないほど繰り返す。今の私は、とても幸せだわ」

 聞きたくない。理解したくない。それでも、リアスはもうその言葉を聞き、理解してしまった。

 グレイフィアはライザーの手に堕ち、夫と息子を切り捨てたのだと。リアスのことも義理の妹だとはもう思っていないだろう。慈愛に満ちた表情で将来の子供を想うように腹を撫でていたグレイフィアが、明確な敵意と怒りを滲ませた。

「私の、私たちの幸せを邪魔立てしようというのなら、容赦なく排除するわ」

 押し寄せてくる濃密な殺気。全身に鳥肌が立ち、肝が冷える。ここまで明確な恐怖を感じたのは初めてだ。リアスは家族を捨てたグレイフィアに向けようとしていた侮蔑の言葉も忘れ、ただ小さな子供のように怯えていた。

 どうにか気丈さを振り舞おうと口を開くものの、喉から声が出てこない。

 そのまま見えない重圧に押し潰されるのではないかと思われたとき、助けが現れた。

「そこまでにしてやれ、グレイフィア」

「ライザー様」

 玉座を離れて隣に立ったライザーを見て、グレイフィアが殺気を収めた。差し出された左腕にすぐさま抱き着き、胸を押し付け、恋人のように絡み合っている。グレイフィアの愛情が本当にライザーに向いているのだと見せつけられて、とても眺めてはいられなかった。

 俯くリアスの前に、やがてライザーがグレイフィアを伴って歩み寄った。

「まあ、こういうわけだ。グレイフィアも、お前の仲間も全員俺の掌の上」

 ライザーの右手がリアスの顎に触れ、顔を持ち上げて無理矢理視線を上げさせられる。

「あとはお前だけだよ、リアス」

 ライザーの手が移動し、リアスの頬に触れる。すべすべとした感触を楽しんでいるようだ。楽しそうなライザーに対し、リアスは余裕を取り戻し、眼差しを強める。こんなことをしてどうにかなるわけではないが、心だけでもライザーに抵抗をしたかった。

「私は堕ちないわ」

 だから、リアスははっきりと断言しておいた。

「何?」

「あなたなんかには絶対に負けない。抗って、いつの日か皆を奪い返してみせるわ」

「わざわざそんなことを言わなくてもよいものを……」

 感心しているのか、呆れているのか。判断に迷う様子でライザーは呟いた。

「だが、そういうのは大好きだ。……グレイフィア」

「は、はいっ……」

 ライザーの肩に顔を埋めて悦に浸っていたグレイフィアが、名残惜しそうにライザーから離れた。咎めるような視線をリアスに向けると、リアスを束縛していた炎が消えた。

「どういうつもり?」

 突然拘束が解け、リアスは困惑した。今さらながら胸を手で隠して距離を取る。そんなリアスの疑問を受け、ライザーが右手を前に突き出した。

「こういうことだ」

 ライザーの手に集まった炎。それがリアスに放たれ、唐突に戦闘が始まった。

 壁のように迫ってくる赤熱色の炎を避け、リアスは滅びの魔力を放出した。それはライザーに真っ直ぐ飛んでいったが、床から噴き出した炎の柱が魔力を丸呑みにした。

 無駄に終わった攻撃を見届ける暇もなく、炎柱がリアスの足元から出現しようとしたのを見て、リアスはすぐにその場を飛び退った。その一秒後、リアスがいた場所は灼熱の地獄と化した。

「っ……!」

 舞い飛ぶ火の粉と熱風だけでもわかる。一度でも直撃を食らえば骨の髄まで溶かされる。いや、魂ごと燃やされるのではないか。それほどの力を感じた。

 一度距離を取って、リアスは呼吸を整えた。裸の体を隠している余裕もない。掻いた冷や汗も蒸発するほどの熱が支配する空間で、リアス一人が追い詰められていた。

 実力差があるのはわかっていたが、これほどとは。

 ライザーの恐ろしさを実感させられるが、勝機が全くないわけではない。

 ライザーはリアスの魔力を必ず炎で受け止めていた。それはつまり、生身で受けることが危険だと判断したからではないか。となれば、攻め方は決まった。

 リアスは滅びの魔力で全身を保護する。試したことのない戦い方だ。ライザーとの一騎討ちはまだ始まったばかりではあるが、リアスに濃い経験値を与えていた。苦境を乗り越えるべく編み出した戦闘方法を用いて、ライザーに向かっていく。

「はぁっ!!」

「む……」

 拳を突きだして迫ってくるリアスを見て、ライザーが後方に飛んだ。炎を打ち出してリアスを呑み込もうとする。リアスはギリギリでそれを回避し、すぐ側の炎から魔力で身を守り、炎を辿るようにしてその大元、ライザーへと肉薄する。

「なっ……」

 動揺を露わにするライザー。リアスは勝機を見出した。

 ライザーはやはり、リアスの攻撃を直接受け止めることを避けていたようだ。リアスに接近されて泡を食っている。

 一撃では仕留めきれないだろう。不死鳥は頭を吹き飛ばしてもすぐに再生する。再生した直後に手痛い反撃を食らうかもしれないが、それでもいい。

 まずは一撃。憎い不死鳥の鼻っ柱を消し去ろうと、拳を突き出した。

 拳が見事にライザーの顔面に突き刺さる。顔面を滅ぼし、崩壊していく頭部に両手を差し込み、魔力を走らせる。内側からの魔力攻撃。再生するたびに頭を壊され、ライザーが情けない叫び声を上げる。

 そんな光景を、リアスは幻視した。

「なんてな」

 リアスの拳を受けて無傷な顔に嘲笑を広げ、カウンターの一撃をリアスの腹にお見舞いした。ズドンッと内側に響く鈍痛。「が、はぁっ……!?」と肺の空気を強制的に吐き出させられ、力なく墜落したリアスの腹をライザーは膝蹴りで受け止めた。

 遠退く意識。

「クソ雑魚部長……」

「うふふ、本気で勝てると思っていたようですわね? 馬鹿みたい」

「部長さん、まさか頭の病気なんでしょうか? 私の力で治癒した方が……」

「リアスの単純思考は死ぬまで治らないでしょうね」

「もう、お兄様ったら……。せっかく久しぶりにお兄様のお精子を頂けると思っていましたのに……」

 聞こえてくる外野の声。

「そろそろ本番と行こうか」

 床に投げ捨てられたリアスを覗き込むライザー。邪悪に満ちた笑顔を見ながら、リアスは重たい瞼を閉ざした。

 意識を完全に失う直前、リアスは、室内を囲っていた炎の壁が晴れたのを目にした。

 

 漆黒に染まる室内。天井から吊り下がるシャンデリアの灯は闇色に染まっている。血のように赤い絨毯が入口付近の床から広い部屋を二分するように伸び、部屋の奥にある壇上まで覆っていた。

 絨毯の左右には椅子が一定間隔を置いて並んでおり、最前列には一誠とギャスパー、祐斗が座っていた。相変わらず裸だが、三人の体は少女の形をしたスライムに抱き着かれ、体の殆どを呑まれる形で犯されていた。

「こ、小猫ちゃん、もう、や、めて……」

「駄目だよ……。ギャーくんの貧弱な雄を根絶やしにするまで止まらないから……」

「ぁ、ぁっ、アーシア、好き、大好き、だ……」

「私も、イッセーさんのことが大好きですよ」

 ギャスパーは小猫そっくりのスライムに、一誠はアーシアそっくりのスライムに犯されていた。もはや心を壊した祐斗にはただのスライムが纏わりつき、小さくなった肉棒と萎みに萎んだ金玉から雄の要素を搾り尽くそうとしていた。

 スライムの体が半透明になっているため、中の状況がよく見える。一誠はともかく、ギャスパーの肉棒は不自然なほどに膨張していた。小柄なギャスパーに見合わない二十センチを超える雄チンポを痛々しく屹立させ、小猫のスライムによる膣扱きマッサージと精液の強制搾取が行われているようだった。

 この勃起が無理矢理引き起こされたものであり、一誠を優しく可愛がるアーシアスライムに比べて小猫スライムの腰振りは苛烈で、ギャスパーの男としての心と体を祐斗と同じようにぶち壊そうとしているのがわかった。

 目覚めてすぐにあんまりな光景を見たリアス自身は、黒いヴェールとウェディングドレスを着せられ、壇上で水平に置かれた逆十字型の台座に拘束されていた。あらゆる生物の骸骨を無理矢理重ねて作られた逆十字に、神聖さは皆無だ。死者の嘆きが聞こえてきそうで、今すぐここから離れたい心持ちだった。

 しかし、またしても体を動かすことは許されていない。頭上に真っ直ぐ伸ばされたリアスの両手は骸骨から伸びる太い骨の手に掴まれている。両足は左右に開かされ、こちらも今にも動き出しそうな骸骨の手がリアスの太腿に幾つも絡みついている。

 人間界のチャペルを参考にしたと思われる内装だが、それにしては邪悪すぎる改変がなされていた。

 ここで何をするつもりなのか。

 リアスは正面に立つ赤いタキシード姿のライザーと、リアスを左右から見下ろす五人の花嫁の姿を順番に映す。グレイフィア、レイヴェル、朱乃、小猫、アーシア。リアスと同じ黒い花嫁衣装に身を包んでいた。

 リアスもそうだが、その衣装はほぼ裸同然と言っていい布地面積だった。秘所も、乳房も丸見え。男を夜の遊びに誘う過激なランジェリーと捉えることもできる。この恰好ですることといえば、もはや一つに限られていた。

「グレイフィア」

「はい」

 ライザーの一声でグレイフィアがライザーへと近づく。その場で膝を突き、ズボンのチャックを下ろした。ジーッと滞りなく下がって開かれた穴に指を入れ、下着の中を通り、目当てのものに触れると、それを丁寧に外へと取り出した。

 表に飛び出したライザーの生殖器。初めてみるわけではないのに、視線を釘付けにされてしまう。女の中を引っ掻き回し、快楽を刻みつける肉太の突起物。グレイフィアの啄むようなキスの連発でさらに大きく膨らみ、リアスへと照準を合わせるようにカマ首をもたげ、我慢汁を尿道から滲ませた。

「ちゅっ、ぷちゅっ、れろっ……」

 舌で尿道口を穿って我慢汁を拭い取り、亀頭と竿に広げていく。汁と唾液で肉棒がテカテカと光る。それを確認するとグレイフィアは「準備ができました」とライザーに告げ、褒美とばかりに頭を撫でられて頬を朱に染めていた。

「さて」

 とライザーが言いながら歩み寄り、リアスの開かれた両足の間で止まった。自身の肉棒を掴み、すぐ前にあるリアスの膣に亀頭を擦りつけた。初めての生殖器同士の接触。こんな形で経験したくなかった、とリアスは歯噛みする。

「これからお前の処女を頂こうと思うが、今どんな気持ちだ?」

「最悪よ。生まれてからここまで酷い気分は初めてだわ」

「そうか。それは良かった。この部屋を用意した甲斐があったよ」

 ライザーの竿が陰唇と擦れ、中に隠れた膣穴にも熱が注がれる。たったそれだけのことで、子宮と膣中が反応を示す。雄の到来を予期して勝手に準備を整えていく。じゅくじゅくと愛液の生産が始まってしまう。

「ぅ、くっ……」

「どうした? 声が出ているぞ?」

「だ、黙りなさ、んっ……!?」

 ライザーが手を伸ばし、リアスの胸を無造作に掴む。欲望が駄々洩れの酷い触り方だ。しかし、リアスはいい意味で感じてしまっていた。ライザーの大きな手で揉まれるだけで、ライザーに使われているのだと認識し、心が揺らぐ。

 おかしい。またライザーに操られているに違いない。そうでなければ、まだ男を知ったことのない自分がここまで取り乱すはずもない。

「入れるのなら、早くなさい……」

 これ以上焦らされては、どうなるかわからない。それなら挿入を始めてもらったほうがまだマシだ。どうせ処女を奪われるのは避けられない。ならば、できるだけ感じる快楽を減らすようにしたかった。

「ふん。まあいいか」

 ライザーは素直に腰を引くと、リアスの陰裂に触れ、広げた。中には十分に解れた女の園。花弁のように花開いたその中心に小さな穴があり、絶えず蜜を垂らしている。雌の匂いを放って雄を誘っている。

 ライザーはそこへ肉棒を誘導する。腰が接近するに合わせて亀頭が膣穴にキスを放ち、直後に受けた抵抗を押し退けるように挿入を始めた。

 来てしまった。この瞬間が。

「く、ぅっ……!」

 大嫌いな男が自分の中に入ってくる。にやけた表情でリアスを見下ろし、雄の欲望で内側を汚そうとしてくる。それがどうしようなく怖くて、らしくもなく怯えた表情を浮かべてしまう。こんな顔、できれば誰にも見られたくはない。

 そんなことを思ってしまったからだろうか。

「アーシア、小猫。連れてこい」

 ライザーが顎をしゃくってアーシアたちに命令をする。それに応じた二人が即座に行動を開始する。何をしようというのか、リアスにはもう何となくライザーの考えはわかっていた。リアスの嫌がることは何でもしようというのだろう。

「さあ、イッセーさん。行きましょう」

「ギャーくんも、偽物の私に犯されながら、部長の笑える顔を見てあげて……?」

 アーシアと小猫が、一誠とギャスパーを連れてきた。二人の少年はスライムによって体を支えられて無理矢理立たされ、犯されながらリアスのことを見ている。ギャスパーは壊れかけてはいるが、まだ完全には壊れていない。一誠も弱り切ってはいるが、身も心も正気を保っている。

「さっさとしてください! ライザー様のご命令ですよ!?」

「遅い……」

「ぅ、ぐっ……!?」

「っ、ぁ……」

 もたもたとする一誠たちを急がせようと、アーシアと小猫が陰嚢に向かって膝蹴りを放った。それぞれのスライムがオリジナルの攻撃を避けたことで、柔らかい金玉袋に膝が直接食い込み、二人が上体を前に倒して苦しみに悶えた。

 それでも、覚束ない足取りで二人はどうにかリアスの傍にたどり着いた。

「ぶ、部長……」

「リアスお姉さま……」

「ふ、二人とも……」

 リアスが声を震わせる。眷属である二人を前に、情けない姿は見せたくないというのに、体から恐怖が抜けない。今もゆっくりと膣口を解す肉棒が急に押し込まれそうで、そうなった後、自分がどうにかなりそうで、怖かった。

「見ないで……。お願い……」

 震え、ただ頼むことしかできない。

「しっかりと見ろ。自分たちの部長がどうなるのかを。一度でも目を逸らせば、お前たちにさらなる苦しみを与えようか。たとえば、そうだな。眷属以外でお前たちの大切な者たちを連れてきて、目の前でじわじわと嬲り殺してやるとか、どうだ? いや、お前たち自身の手で殺させるとかも、いいかもなぁ?」

 ライザーの脅迫は二人には効果的だったようだ。二人は何もできず、涙を流してリアスのことを食い入るように見ていた。許可がなければもうリアスから目を離すことはないだろう。ライザーに弄ばれる眷属の姿はとても痛々しかった。

 主失格だ。眷属に苦しい想いをさせている。

 リアスはその事実を改めて痛感し、酷い後悔に苛まれた。

「はっ……はっ……」

 心を圧迫され、過呼吸気味な呼吸をする。ぽろぽろと涙がこぼれ、頬を伝う。

 リアスの追い詰められた顔は、ライザーにはどう映っているのだろう。嗜虐的な感情を表に出し、ライザーがリアスの股へと腰を沈めていく。亀頭が本格的に穴へと圧力をかけ、メリメリと中から力づくに拡張されているのがわかった。

 ライザーの亀頭が迫る。リアスの処女膜を射程に収め、食い込む。一突きでは終わらせない。じわじわと膜の穴を拡げ、裂けていく。ぐりぐりと押し寄せてくる亀頭に勝てるわけもなく、数回の接触でブチブチと膜は破け、亀頭は奥へと進行した。

「あぁっ、あああっ……!」

 痛覚と喪失感。そして、大切な場所に男を迎え入れる異物感にリアスは声を上げる。もう手加減はいいだろう、とライザーの思い切りのいい突き上げによって膣奥まで侵入を許してしまった。

 リアス・グレモリーとライザー・フェニックスは今、一つになった。生殖器はガッチリと噛み合っている。リアスがどれだけ相手を嫌おうと、ライザーと交わったという事実はもう覆せない。

 リアスの破瓜の血が隙間からこぼれる中、肉棒が少しずつ来た道を戻る。血を掻きだした後、また奥へと前進。ライザーの両手がリアスの胸に掴みかかると、指が沈む柔らかさを愉しみながら腰を揺さぶり始めた。

「んっ、ひぃっ、っ、あっ、んんっ……!?」

 太すぎる。穴を隙間なく埋め尽くすだけに留まらず、ライザーの形に変えられている。奥までしっかりと届くために調教は余すところなく行われていた。穴が広げられ、ライザーより生殖器が小さい相手と繋がっても満足することができなくなる。

「あぁああっ……!」

 力強く張ったカリに膣壁を削られ、仰け反って胸を弾ませる。それを一誠とギャスパーが見ていた。リアスはそれに気がつき、喘ぎながら二人に視線を送ると、ちょうど射精が始まったようだ。

 スライムのアーシアと小猫に精液を搾り取られ、絶頂に震える二人。肉体を弄られることなく普通の射精を迎えた一誠が呻き、雄として死ぬまで射精を強要されるギャスパーの掠れた悲鳴が耳を打つ。

「イッセーさん。部長さんの姿を見て興奮してしまったんですね。ふふ、さっきよりも精液の量がとっても多くて、すごく濃厚ですぅ。んんっ、はぁ、また可愛くて強い赤ちゃんを作りましょうね? ライザー様の兵士をどんどん作るんですよ?」

「子供……。二人の子供……。ライザー……様の、ために……」

「イケッ……。出せ……。どうせギャーくんが女の子を孕ませる機会なんて一生こないんだから、無駄に備わった雑魚精子コキ捨てて、金玉で精子を作るのもやめて、雄として死んじゃおう……? ギャーくんはきっと、女の子のほうが似合ってるよ……? だから、死ね……。死ね……。イキ死ね……。さっさとぶっ壊れろ、雄失格の男の娘……」

「僕は……女の子……。雄、失格……」

 スライムたちによって一誠の遺伝子が悪用されている。ギャスパーの雄遺伝子が滅亡へと誘われていく。

 一方的に扱われるそんな雄二人に対して、リアスの股で腰を振る雄は逞しかった。眷属たちに向けたリアスの悲哀の感情も、チンポ突きで吹き飛ばされる。凄まじい快楽に脳を殴られて反射的に背を浮かせ、胸を突き出す。

 その胸をライザーにしゃぶりつかれ、大声で鳴いた。

「あぁああっ、ぃやっ、んっ、あ、あ、ん、っ、くぅっ……!?」

 あれほど気丈だったリアスは、始まってみればライザーの玩具だった。牛の乳を搾るように胸を握られ、盛り上がった乳首を吸われる。母乳はでない代わりに膣から愛液を噴き出し、盛大に達した。

 思考が解け、意識に膜がかかる。何も考えられない甘美な幸福に浸っていても、すぐに子宮口をチンポでノックされ、叩き起こされる。もうイきたくない! 嫌! やめて! 叫んでもライザーは手を抜かない。逆に苛めを愉しんで、リアスの乳首に噛み跡が薄っすら残るくらいの甘噛みを始めた。

「ひひっ、ははっ、ははははっ……!」

 哄笑するライザーが視界いっぱいに映る。視線を横に逸らせば、虐げられる眷属。もう一方を向けば、雌としてライザーに屈した眷属たち。どこを見ても絶望。その原因であるライザーを再び目にして、リアスは理解した。

 ライザーに逆らったのが間違いだった。

 ライザーとの婚約を断ることなく、喜んで受けていれば。敵意を向けていなければ。そうしていたら、今とは少し違った未来があったかもしれない。皆がそれぞれの幸せを掴んで、生きていけたかもしれない。

 ライザーが怖い。悪意に満ちたこの不死鳥が、酷く恐ろしい。

「んぉっ……!?」

 これまでで最大級の乱暴な突き上げ。意識が一瞬薄れてしまう。

 ライザーと深く繋がっている。だからこそ、リアスにはわかった。

 リアスの中で肉棒が激しく暴れている。ただでさえ大きかった肉が膨らんで、膣壁を押し退けて、動きを固定する。子宮口を亀頭で縫い留められ、逃げられない。今からくるものを拒むことは絶対に不可能だった。

「その体に不死鳥の血を受け入れろ」

 心臓を鷲掴みにされるかのような恐怖。

 それを味わうと同時に、リアスの中でライザーが果てた。

 びゅるるるっ、どびゅるるっ、どぷっ、どくっ、びゅーっ、びゅるっ、びゅるるるっ!

 熱い、熱い、不死鳥の精液。リアス・グレモリーという美少女悪魔の子宮を瞬きの間に白濁に染める。射精の勢いは衰えることなく続き、どろどろの粘ついた白濁液の塊が子宮をミッチリと占拠すると、精子に込められた邪悪な力がリアスの体に浸透した。

 内からリアスの体を攻め、胴体は元より、手足の指先にまで伝わっていく。

 さほど間をおかず、その影響は体表にも及んだ。

 リアスの背中から毒々しい紫色の炎が噴き出した。それは翼を形成し、リアスの反応に合わせて揺れ動く。圧倒的な雄に侵略されるという雌にとって至上の幸福を体験しているリアスはイキ狂い、自分の体の変化に気がつかない。

 翼の次は、リアスの髪に異変が起きた。鮮やかな紅色は根本から毛先まで銀色に変わっていく。

 髪色に続いて、リアスの色白い肌が綺麗な褐色に染まり、翡翠の瞳は炎と同じ紫色を宿す。

「ぁあああああああっ!?」

 一際大きな声を上げてリアスが痙攣すると、下腹部に紫色の淫紋が刻まれた。

 ライザーという雄の欲望に敗北し、染め上げられていくリアス。自らの主の成り果てた姿を見て、女の眷属たちは新しい仲間の誕生に祝福の拍手を送り、男の眷属たちは興奮に駆られたのか惨めな射精を始めた。

「体の変化はほとんど試していなかったからな。いい実験になったよ」

 そう言って、ライザーはリアスの褐色おっぱいを揉み解し、銀色の髪を手で掬い上げた。

 実験台。所詮、ライザーにとってリアスはその程度の扱いなのだろう。もっとも、ライザーほどの力があれば失敗などはあり得ず、また、リアスを元の状態に戻すことも可能なのだろう。

 しかし、ぞんざいに扱われたことは事実。

 自分は特別ではない。ライザーの手駒の一つにすぎない。

 それでも構わないとリアスは考えた。この底知れぬ欲望を抱え持つ悪魔、不死鳥のライザー・フェニックス様。この御方にだけは逆らってはならない。へし折られた心を決して治すことはせず、無駄な矜持や過去を全て捨て、リアスはライザーという強者に媚びた。

「ありがとうございます、ライザー様……」

 素直になったリアスの膣内で、ライザーのチンポが満足げにビクンッと震え上がっていた。

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