※この作品はR-18です。

悪の不死鳥   作:早見 彼方

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第40話

 ミリキャス・グレモリーが目を覚ましたのは、静寂が漂う暗い牢屋の中だった。ここはどこなのか。なぜこの場所にいるのか。判然としない意識で思考を巡らせながら体を動かそうとして、自由に動かないことに気がつく。

 ミリキャスは床に膝を突き、天井から伸びる鎖によって手枷を嵌めた両手を頭上に引っ張られていた。足にも枷が嵌められ、巨大な鉄球と繋がれている。身に纏う衣服はなく、十代前半の華奢な柔肌が曝け出されている。

 叔母であるリアスのように就寝時に全裸になる習慣のないミリキャスにとって、現状は恥ずべき事態であり、柔らかそうな頬に朱が差した。短く切り揃えた紅髪を乱しながら、ミリキャスは枷の拘束から逃れようと手足を動かすが、鎖の音が響くばかりで全く外れる気配はない。

 腕力では無理なのであれば、魔力ではどうか。ミリキャスは、父であるサーゼクスから受け継いだ滅びの魔力を駆使して枷を消滅させようと考えた。

「どうして……?」

 だが、当たり前のように使えるはずの魔力が、使えないことに驚きを隠せなかった。

「え……、え、なんで……?」

 普段通りの感覚を頼りにして何度も試すが、魔力は発動しない。ほんの小さな魔力の玉すらも出現せず、ミリキャスの中にあった心の支えが急速に薄れていく。冥界を統べる魔王の一人であるサーゼクスと、彼の女王であるグレイフィアの間に生まれたミリキャスは、両親から譲り受けた膨大な魔力があれば、ある程度の状況でも乗り越えられると思っていた。経験はないが、何者かに誘拐されそうになったとしても、単身で逃げ出せるのではないかとも考えていた。

 しかし、それは魔力があればという前提の上での話だ。

 魔力がなければ、体を鍛えているわけでもないミリキャスが鉄枷から逃れる術はない。細い手足を必死に動かしたところで、手足首に冷たく硬い感触が食い込むばかり。

「早く、逃げないと……」

 ミリキャスは自分が置かれている状況を理解し始めた。どういった経緯かは不明だが、誘拐されたのだろう。ミリキャスを生かしていることから、身代金目当てだろうか。これからか、それとも既に交渉は始まっているのだろうか。犯人がグレモリー家に連絡を入れているのではと思うと、居ても立っても居られない。

 逃げ出して自分が無事であることを伝えないと、迷惑を掛けてしまう。それだけは避けなければならないというのに、枷は無慈悲にもミリキャスの体の自由を奪い続け、鎖の音が喧しく響き渡った。

「うるさいぞ」

「だ、誰……?」

 突然聞こえてきた自分以外の声に驚き、ミリキャスは手を止めた。

 声の先、鉄格子の向こう側に、ミリキャスよりも年下に見える少年が立っていた。

 少し長めの金髪と、意地の悪そうな顔立ち。見掛けで判断するのもどうかとは思ったが、あまり性格が良さそうには見えない。耳を両手で押さえて表情を不機嫌そうに歪めていた少年は、音が止むと手を下ろした。

「騒ぐなって。どうせ逃げられないんだ」

「君は、誰……?」

 ミリキャスは一瞬、その少年が自分と同じく誘拐された子供の一人かと思った。全裸で服を着ていないのがそう思った理由だ。だが、少年が誘拐された側であれば、鉄格子の向こう側に立っているのはおかしい。逃げることもせず、悠然と立ち尽くしてミリキャスを眺める様は誘拐した側の態度だった。

「俺か? 俺はライザーだ」

「ライ、ザー……」

 聞き覚えがある名前。それは、リアスの婚約者の名前だったはずだ。最近、リアスとの間でいざこざがあったようだが、ミリキャスは詳しい事情は知らない。正式に話が纏まってからミリキャスにも事情を説明すると、グレイフィアに言われていたから。

 ミリキャスは事情を知らなかったが、相手のことはある程度知っていた。

 ライザー・フェニックス。フェニックス家の三男で、純血悪魔。血を重んじる傾向が強い悪魔たちからすれば、純血同士の結婚というのが理想的だろう。フェニックス家とグレモリー家は昔から親交があり、年も近い子供がいるとなれば、なおさら婚約話が上がってきてもおかしくはない。

 そうやって、両家の間で話が進められたのだと思う。そこにはリアスとライザーの意思は殆ど介在していない。十中八九、リアスのほうから反発したに違いない、とミリキャスは瞬時に分析した。

「ライザー・フェニックス様、ですか……?」

「ああ、そうだ」

「その、なぜ子供の姿に……?」

「ん? 変か? 別にたまにはいいだろ?」

 言われてみれば、おかしなことなどはなかった。成人に達した悪魔は、魔力で外見年齢を自由に変更できる。普段のライザーは二十代の外見年齢を保っていると認識していたが、別にそれに拘る必要もない。

 だが、それではなぜ裸なのか。ミリキャスは、ライザーの股間から垂れ下がる、見たこともないほど大きな男性器を視界に収める。圧巻の一言だった。竿は極太で、浮かぶ無数の血管が凶悪さを醸し出している。亀頭の皮はズル剥けで、丸々としている上にエラが高く張っているのがわかった。

 また、竿には無数の紫色の何かが付着していた。それは唇の形をしているように思えたが、ミリキャスにはよくわからなかった。

 僕と全然違う。同じ男として、格の違いというものを見せられた気がする。まだ年齢相応に小さく皮被りな肉棒を隠そうと内股を擦り合わせようとしたが、拘束されていてはそれすらも敵わず、ミリキャスはそこで脱線した思考を元に戻した。

「あの、ライザー様。僕を、ここから出していただけませんか?」

 あらゆる疑問をひとまず飲み込んで、このよくわからない窮地を脱するためにミリキャスはライザーに頼む。ライザーとは直接の面識はないとはいえ、家族同士繋がりのあるフェニックス家の悪魔だ。助けてくれるだろうと信じて疑わなかった。

「は? 出すわけないだろ?」

「え……」

 返ってきたのは、拒絶の言葉だった。

 断られるとは思っていなかった。ライザーに断る理由がないと思っていたから。

「どうして、ですか……?」

「あ? 言わないとわからないか?」

 ライザーの口元がゆるりと吊り上がる。ミリキャスが知る同世代の悪魔たちが見せることはない、邪悪な意志を宿した笑み。目の前の悪魔を信じて頼んだミリキャスを突き放し、その心に冷や水を浴びせる。

 本当に、ライザー様が? 何のために。

 考えるが、理由が浮かばない。フェニックス家の財政面に問題はない。むしろ、あらゆる傷を癒す『フェニックスの涙』の販売によって他の名家よりも潤っている。身代金など要求することなど絶対にあり得ない。

 であれば、何らかの私怨なのか。しかし、それは心当たりがない。ライザーとミリキャスがこうして面と向かってまともに話したのはこれが初めてであり、恨みを買われるようなことなど起きるはずもなかった。

 聡明なミリキャスの脳が思考を働かせる。

 いくら時間を掛けても、答えは出ない。

 ミリキャスには、経験が足りていなかった。

 ミリキャスは、大人の汚さというものを知らなかった。

 だから、コツコツというヒールの足音と共にライザーの横に現れた女を見ても、理解が追いつかなかった。

 女の格好はミリキャスの目には特に異質なものに映った。黒いハイヒールと、エナメルのロングソックスで包んだ肉付きのいい太もも。同じく、両腕にはエナメルの黒い長手袋。そして、同じ材質のボディスーツ。しかし、スーツの面積が小さいせいで恥部を隠すことはできておらず、全裸よりも恥ずかしい有り様だった。

 イヤリングから垂れ下がるデフォルメしたチンポ型のアクセサリー、乳首に通したピアス、下腹部に彫られたライザーの名前のタトゥーと、その直下に浮かぶハートと子宮を組み合わせたような紫色の紋様。色白い裸身をドスケベに仕立てるその装飾たちを晒した痴女。

「無様な姿ね、ミリキャス」

 立ち止まって、ミリキャスを見た女は嘲り笑う。綺麗な紫色に彩られた唇の端を持ち上げ、細めた目の内側に宿る銀の瞳に冷ややかな感情を宿す。しばらくはミリキャスを眺めていたが、やがて急速に興味を失ったのか、ライザーへと楽しげに話しかけた。

「ライザー様。裸で寒くありませんか?」

「ちょっとだけ寒いな」

「では、僭越ながら私の体で温めて差し上げます。お背中、失礼いたします」

 その女は小柄なライザーの背後に回ると、ゆっくりと両手を回してライザーを後ろから抱きしめた。胸の谷間で後頭部を誘い、ライザーの顔がむにゅにゅと押し寄せる乳房によって左右から挟み込まれた。

「ぅ、ぁ、これは、いいな……」

 ライザーが胸に頭を預けていると、垂れ下がっていた肉棒が亀頭を持ち上げ始めた。おそらく、女の口づけを何度も浴びたと思われる紫色のリップ痕を残した竿を直立させ、腹にペチンと亀頭をぶつける。

「うふふ、こちらも温めますね?」

 女は両手を伸ばし、ライザーの肉棒を優しく撫で擦り始めた。

 見たことはおろか、想像したこともないような光景。これが見知らぬ男女であっても思考を停止させるほどの淫らな様子だというのに、片方の女がよく知る相手とあっては、ミリキャスの脳が過度な混乱をきたすのは必然だった。

「か、母さ、ま……?」

 呆然とし、絶望に染まった声を発するのが精いっぱいだった。

 現れた女は、ミリキャスの母であるグレイフィアに他ならなかった。涼しげな美貌も、いつもと違ってポニーテールに結われてはいるが、綺麗な銀色の髪も、安心するような声音も同じ。だが、とてもではないが、信じられない。信じたくない。

 どうして、なんで。

 そんな疑問すらも抱く余裕もないくらいに、ミリキャスは終わりのない思考を続ける。途中でエラーを吐き続け、意識を強制終了したくなるが、それすらも敵わぬほどに強烈な光景だった。

「こうしていると、まるで親子のようですね」

「ははっ、全裸で息子を抱きしめてチンポを扱く母親がいるか?」

「ええ、ここに」

「俺よりも、本物の息子が目の前にいるわけだが、あっちは触ってやらないのか?」

 ライザーの言葉で、グレイフィアの目線が再びミリキャスに向けられる。

「ああ、『あれ』ですか」

 それまで楽しげだったグレイフィアの顔に険が出て、ミリキャスの全身に視線を這わせる。隅々まで観察することが酷く不快に感じたようで、グレイフィアはもはや睨みつけるような勢いでミリキャスを視線で射抜いていた。

「ゴミですね。私から生まれたとは思えない。きっと、雄の種が劣悪だったのでしょうね。父親そっくりで、貧相で、男らしさは欠片も存在しない。生まれてくる性別を間違えるだなんて、愚かな生物としか言えません」

 グレイフィアの口から飛び出た言葉は、呆然としていたミリキャスの心を容赦なく刺し貫く。喉が詰まり、呼吸をするのも難しい。氷水を浴びせられたように体感温度が下がって、暗い絶望の底に叩き落される。

 嘘、母様がこんなことを言うわけない。あれは、母様じゃない。

 ミリキャスは、自分にそう言い聞かせることしかできなかった。

 仮に本物だとしたら、グレイフィアは正気を奪われているのだろう。

 そして、母をこんな目に遭わせている元凶は一目瞭然であり、ミリキャスの敵意がライザーに向かうのは当然の帰結だった。

「なんだ、その眼は……」

「ぅ……」

 外見年齢が年下の子供とは思えないほどの、濃密な威圧感。気を抜けば泣き出してしまいそうになるのを堪え、ミリキャスは気丈に振る舞い、自分の怒りを正面からライザーに叩きつけることに徹した。

 逃げられなくても、理不尽な目に遭っても、この状況では絶対に泣かない。

 唇を噛み締める痛みで気を張り続けながら、ミリキャスはライザーを睨み続けた。

 ライザーは無言でそれを受け止めていたが、やがて、軽薄な笑みを戻した。

「そうやって強がっていられるのも、今のうちだ」

 そう言ってライザーが指を鳴らした直後のことだった。

「な、なに……?」

 牢屋の床から透明な粘液が滲み出てきた。正体不明のそれに恐怖し、距離を取ろうと体が咄嗟に反応するが、拘束されているせいで何の対抗もできない。床を這ってきた粘液がミリキャスの体に纏わりついてくる。

「っ、やめて……!」

 ミリキャスの体表を伝っていくそれは、幾つかの箇所に重点を置いて集まっていた。

 耳、口、胸、ペニス、尻。

 何か、よくないことが起ころうとしている。粘液が蠢いて、ミリキャスの体の要所を攻め立てようとしているようだった。

 ミリキャスは口を閉ざし、歯を食い縛った。きっと、痒みや痛みで拷問をしようというのだろう。経験はなくても、何となく察することができた。自分を攻めて何をどうしようというのかはわからないものの、負けるわけにはいかない。

 これに耐えて、母様を助けて、ここから抜け出さないと。

 脱出できるかどうかはさておいて、今はこれに耐えることだけを考える。

 絶対に、耐えてみせる。

 ミリキャスは何度も意気込み、気合を入れ、身構えた。

 程なくして、粘液が拷問を開始する。

 最初の一撃は、粘液によるペニスの丸呑み。

 それは、ミリキャスの想定していた拷問とは全く異なるものだった。

「ん、へぇぇえっ……!?」

 びゅぶ、びゅぶ、びゅる。

 包み込まれただけで、ミリキャスは尿道から精液を放った。白濁が次々と粘液の中に滲み出て、一瞬のうちに消化される。糧を得た粘液が活発に動き始め、ただ包みだけでなく、絡みついて締め上げるように刺激を加える。

「ぁああぁぁっ!?」

 上げたことのないような大声を出すミリキャス。

「んむぅぅっ!?」

 それによって口が開き、体の一部を男性器の形に変えた粘液が中に突き入る。本物の肉棒を挿入されたような熱と、硬さと、臭いがミリキャスの口内を襲う。思わず吐き出しそうになるが、押し返すことはできない。

「スライムの味はどうだ?」

 意思を持つ粘液。スライムによって蹂躙されるミリキャスを、ライザーが面白そうに観察していた。そのライザーを恍惚の眼差しで見つめるグレイフィアは、ライザーの肉棒をゴシゴシと丁寧に扱いていた。ミリキャスを一瞥することなく。

「ぢゅぶっ!? んぐっ!? おぇっ!? ふぐっ!? うぅんんっ!?」

 スライムが攻めるのは口だけではない。バッキバキに勃起したスライムチンポがミリキャスの尻穴に押し当てられる。先端でこじ開け、中を突き進み、体の内側からチンポで蝕んでいく。

「んぐぅうぅぅっ!?」

 耳と胸に纏わりついていたスライムも攻撃を開始した。耳の穴に触手を伸ばし、本来入るところを想定していない部分まで侵入する。小刻みに激しく振動するそれがミリキャスの鼓膜を、脳を揺さぶる。

 胸を舐めるスライムが、先端に無数の小さな針を宿した吸盤の形をとると、乳輪に張り付いた。しっかりと針を突き差し、そこから何かをミリキャスの中へと送っている。ドクン、ドクンと鼓動に似た音が鳴り響く。

 スライムに犯されるミリキャス。まだ幼く、整った容姿は中性的だ。逞しいスライムチンポで口と尻穴を犯され、自身の小さなペニスをしゃぶられる。初めて味わうだろう凄まじい快楽に身を捩る姿は、男とは思えない淫靡さがあった。

「ふぐぅっ!? んんんっ!? ぢゅぶっ!? ぐぶっ!? ぐぼぉっ!?」

 呻きながら、イラマチオの水音を立てるミリキャス。

 犯されるミリキャスは面白い見世物のようだ。

「く、ははははっ!」

 ライザーが少年の声で爆笑している。グレイフィアによる手コキの快楽で涎を垂らし、気持ちよさそうに体を跳ねさせている。相変わらず、ライザーを大切に抱き留めているグレイフィアはミリキャスに興味を向けていない。

「悔しいか? 苦しいか? だが、こんなものじゃないぞ?」

 ライザーが指を鳴らすと、新しい地獄がミリキャスを襲った。

「っ……!?」

 ペニスにしゃぶりつくスライムが、ペニスと陰嚢に針を突き立ててきた。そこから内部に何かが注入されたかと思えば、ペニスが高熱を帯び、ムクムクと勃起を始めた。瞬く間に、どんどん竿と陰嚢が大きくなっていく。

 皮を被っていて可愛げのあった亀頭が、皮から頭を出して露出する。完全に剥けるとさらに膨張し、竿に血管が浮かぶ。バッキバキに反り返って、ずっしりと重たい陰嚢を携えたそれは、チンポと呼ぶに相応しい威容を示していた。

 二十センチを超える長さと、それに相応しい厚み。

 ミリキャスが白目を剥いている。常軌を逸した急成長を遂げたデカチンポから感じられる快楽はミリキャスの脳を壊す。だが、耳奥に入り込んだ触手から翡翠の光が発せられることで即座に治癒された。

 破壊と治癒。スライムによって囚われた状況でそれを繰り返され、ミリキャスの脳に快楽が刻みつけられる。子供の脳が段々と鍛え上げられていく中、その肉体にも早速変化が生じていた。

 子供ながらも、尻は女性特有の柔らかい曲線を描く。胸はわずかではあるが膨らんでいた。

 体を改造しているのだ。男ではなく、女の体に。

「っ……!? っ……!?」

 ミリキャスがビクビクと体を跳ねさせる。抵抗ではなく、快楽による反射的な行動なのだが、逃がすまいとスライムチンポがアナルを奥まで蹂躙し、口から入るスライムチンポもまた喉奥まで掻き毟る。

 どくっ、びゅるるっ、びゅるるるっ、ぶびゅっ、どくどくどくっ!

 射精の連続。全自動オナホールとして、スライムがミリキャスの精液を搾り取り、遺伝子ごとを溶かし尽くす。男としての役目を果たせずに精子が死んでいく。そして、また新しい精子をひり出させようと愛撫を繰り返す。

 なんで、こんなことに。

 ミリキャスは大粒の涙をこぼし、ライザーを見る。

 そこには悪魔がいた。種族としてという意味ではなく、人間界で使われるような邪悪な物を指す言葉。何の恨みもないはずの相手が犯され、体を弄り回される光景を見て哄笑する者など、悪魔と呼ぶのが相応しい。

 怖い、怖い、怖い、怖い、怖い!

 子供の身で体験してきた恐怖体験と比にならないほどの、本物の恐怖。未知なる事象を当たり前のように引き起こし、他者を滅茶苦茶にし、笑い続けるライザーを見ているだけでこの場から逃げ出したくなる。

 だが、逃げられない。抵抗できない。蹂躙は止まらない。

「んぅぅぅううううっ!?」

 ミリキャスが腰を前に突き出し、また精液を噴き出した。スライムの中身が白濁に染まるほどの精液の量。それでも一瞬で消化され、なかったことにされる。

 気持ち良かった。他に何も考えていたくないと思えるくらいに、魅力的で、依存性のある快楽。射精という形だけでなく、耳に入ったスライムから送られてきたものが、ミリキャスの脳を再び壊し掛けた。

 送られてきたのは、グレイフィアが歩んだライザーとの日々。ライザーに弱みを握られ、メイドとしてフェニックス家に送り込まれた日から続く、凌辱の記憶とそのときに感じた生の感情。

 それが息子の中に直接流し込まれる。

 グレイフィアがそのときに何を思ったのか。体がどう感じてしまったのか。余すことなく伝達された。大人でさえ耐えがたいそれは、ミリキャスの子供の脳で耐えられるものではなかった。

「っ!? うぅっ!? んんっ!?」

 あっという間に壊されて、スライムの触手に治療されて、また壊される。

 脳を内側からぐちゃぐちゃにされる。自分という存在が曖昧に感じられるほどの感情の奔流に揉みくちゃにされる。段々と、快楽一色に染まっていくグレイフィアの思考がミリキャスの中に広がっていく。

 最低な男。快楽を与えてくれる雄。愛情を教えてくれた雄。本物の雄。ライザー様。愛する夫。

 グレイフィアが辿った思考の変遷に沿って、ミリキャスも導かれていく。

 この人に逆らってはいけない。絶対に敵わない。

 従ったほうがいい。絶対に幸せになれる。

 ミリキャスは堕ちていく。急激な変化によって少年の部分が置き去りにされたまま、雌としての自覚を得る。それに応じて肉体の変化も如実となり、元々可愛らしかった容姿から少年として要素が一つずつ丁寧に調整され、雌化を遂げた。

 もう、男の子だった面影は、股間以外に残されていない。

 その股間も、絶え間のない射精の後、萎んでいった。ミリキャスの中で雄としての自覚を保てていれば、きっと小さくなることもなく射精に狂うことができたのだろう。小さくなっていくことで、ミリキャスが雌になっていくことが視覚的に伝わりやすくなっている。

「グレイフィア。もうじき『息子』が死ぬが、どう思う?」

 これすらも、ライザーの楽しみ要素の一つなのだろう。

 問われたグレイフィアはライザーの一物を愛おしそうに扱きながら、ミリキャスを見下す。その眼差しは凍えるような冷たさを残したままだが、口元は柔らかい微笑みを刻んでいた。

「とても喜ばしいことだと思います。紛い物の雌ですが、不本意ながら私の血も継いでおりますので、ライザー様の玩具くらいにはなるかと。どうぞ、お好きなだけ遊んであげてください。飽きて処分が必要でしたら、私がゴミに出しておきますので」

 所詮、自分は余興。ライザーに気に入られ続けなければ、ミリキャスはグレイフィアに殺されるのだろう。その事実を知って、もはや絶望すら感じない。グレイフィアの記憶を通じてライザーの偉大さを実感してしまったから。

 グレイフィアがこうなってしまった気持ちも、わかってしまった。

 ミリキャスは頭を垂れた。

 この方の、ライザー様の前ではこうするのが正しい。

 弱者として、拘束された状態でも可能な限りひれ伏すミリキャスに向けて、生温かいものが降りかかってきた。それは、グレイフィアによって搾り出されたライザーの精液。ミリキャスの射精がお遊びと思える大量の白濁液が、祝福するようにミリキャスを濡らす。

「ひひっ、ははははっ!」

 ライザーの品のない笑い声。今となっては、それすらも心地いい。

 頭から被った精液をスライムが補食し、悦びながらミリキャスを雌に改造していく目の前で、ライザーは見せつけるようにグレイフィアを抱いた。しっかりと見るように命令されたミリキャスは、ただ言う通りにした。

「あはっ、あんっ、ぁっ、ライザー様ぁ、あっ、あんっ!」

 鉄格子を両手で掴んだグレイフィアが、ライザーに立ちバックで犯されている。膣内を激しく掻き回されていて、その反動でグレイフィアの乳房がたぷん、たぷんっ、と弾む。そんな卑猥な様を眺めながら、ミリキャスは射精をした。

「んぉっ、おっ、おんっ、ん、ぉ、ぉ、ぉ、おぉぉっ!」

 冷たい床にも関わらず、グレイフィアが仰向けになってライザーを受け止める。種付けプレスの体勢で好き勝手に貪られている。ライザーはグレイフィアの胸に頬ずりをし、舐め回し、乳首にしゃぶりついた末に、谷間に顔を埋めて深呼吸をしながらグレイフィアの子宮に子種を撒いていた。

 本来、夫であるサーゼクスだけが味わえるグレイフィアの女体は、ライザーの手垢と涎、精液によって汚されている。これを父は知っているのか。考えながら、ミリキャスはまた射精をした。

 愛する母を奪われながら射精。

 愛する母に罵倒されながら射精。

 続けているうちに、ミリキャスはグレイフィアに深く感情移入するようになった。

 ライザーに抱かれるのがグレイフィアではなく、自分だったら。そう思いながら、目の前の光景に見惚れ、達する。だが、そのときの射精量は随分と乏しいものだった。それでも満足感が得られたのは、雌としてイクことができたからだろう。

 胸の改造を終えたスライムがいつの間にか下腹を這っていた。下腹越しに体内を弄られている気がしたかと思えば、先ほどから今までになかった感覚を体の内側に覚えた。

 子宮。膣。女にとっての性器が、強く熱を発して存在を主張していた。

 肉棒が萎んでいく。もはや棒と呼べるものではなく、元の大きさよりもさらに小さくなっていく。あったはずの陰嚢はいつの間にかなくなっていて、残された突起物も遂に、女性器の一部として鳴りを潜めた。

 かつてペニスだったことが嘘のように、クリトリスとして変貌を遂げた。ピッタリと閉ざされた縦筋がスライムによって開かれ、未使用の花弁を咲かせる。そこには尿道口の他に膣口も当然存在し、発情したように雌の蜜を垂らしている。

 紅髪の幼い美少女がそこにいた。

「実験成功だ。短時間でもできるものだな」

「おめでとうございます、ライザー様」

 これがたとえ、面白半分の実験の結果だろうと、ミリキャスにはどうでも良かった。自分の体がライザーの役に立てた。そのことが嬉しくて、床に届かない額を限界まで垂れて、ライザーに礼を捧げる。

「ありがとう、ございます……。ライザー様……」

 そんなミリキャスへ、グレイフィアが声を掛ける。

「ミリキャス。あなたは雄として死に、雌として生まれ変わったわ。あなたはこれからライザー様にお仕えするのよ。一応、仲間としてあなたの支援はするけど、もう私のことを母親とは思わないで頂戴ね? 私の夫はライザー様で、私の子供はいずれ生まれてくるライザー様の可愛い赤ちゃんたちだけなの。あなたはもう、私の子供じゃない」

「お前によく似た人形は既にグレモリー家に配置してある。これからは、そいつがミリキャス・グレモリーとして生きてくれるだろう。お前は安心して、俺の下で過ごせ。俺が気に入れば、お前もリアスたちと同じように可愛がってやるよ」

「は、い……」

 ミリキャスは震える声を搾り出す。

 震えの原因は怒りでも恐れでもない。

 実験体として扱われた自分に、機会が与えられたことへの歓喜だった。

 ライザー様の下で、生きていけることが嬉しい。改造される前は露ほども思わなかったことが、堂々と胸中に横たわっている。この気持ちを、大切に育んでいきたい。そして、ライザー様に認められる雌になりたい。

 ミリキャスは雄の心を失った。だが、もはや何の後悔もない。

 ライザー・フェニックスには、誰も敵わないのだから。

「ライザー様に、僕の全てを捧げます……」

 この屈強な雄の下で、ミリキャスは雌として仕えることを宣言した。それを歓迎するように、床からスライムたちが現れる。今度は最初からデカマラチンポの形を作り、ライザー自身の精液をその身に充填させた状態で。

 牢屋を埋め尽くす数え切れないほどのチンポスライム。それに一斉に襲われて群がられる直前に見せたミリキャスの顔は、確かに笑っていた。

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