体に纏っていた白いローブを外し、ゼノヴィアとイリナの身を包む黒いボディスーツが晒される。体に張りつくそれは女体の起伏を浮き彫りにしている。揉み潰すと柔らかそうな乳房も、きゅっと締まった腰回りも、程よく大きな臀部も。健全な男が見れば下心を抱いてもおかしくない。だからこそ、普段はローブを羽織っていたのだろう。
「所持品は全部ここに入れておけばいいのかしら?」
「ええ。籠の中にお納めください。全てこちらで管理いたしますので」
出入口の傍にある棚に置かれた籠を見ながらイリナが問いかけると、職員の女が答えた。
イリナは脱いだローブを籠に納め、装飾品を外していく。胸元に下げていた十字架、ツインテールに結んでいた髪留め、懐に忍び込ませていた長い紐。
イリナは、プロテスタント教会の信徒だ。十字架は彼女にとってただのアクセサリーには留まらないのだが、それを外して出会ったばかりの者に託すことに躊躇いはない。
百歩譲ってそれだけならばまだしも、大切に持っていた長い紐まで手放すのは、あってはならないことだった。
一見、用途不明に見える長い紐。その正体は、『
エクスカリバーは現在、七本に分かれてしまっているが、その一本一本が他に替えの効かない逸品。聖剣が扱えるようにと後天的に適性を与えられた教会の戦士である彼女に、教会から託されたもの。
手の平に乗せたそれをじっと見つめていたイリナだったが、籠の中に入れてしまった。
たった数秒の思案の末、託すことを選んだのだった。
イリナが大事な決断を容易に済ませているすぐ傍で、ゼノヴィアは布に巻かれた獲物を持ち上げていた。
イリナと同様に、教会の関係者である彼女。イリナとは違ってカトリック教会の所属ではあるが、教会の戦士であることには変わりはない。その戦士である彼女にもカトリック教会から聖剣が託されており、それこそが布に巻かれた獲物、『
「まあ、仕方がないか」
ゼノヴィアはイリナよりも躊躇なく、籠に入りきらない聖剣を棚に立てかけた。
この場において、職員の指示に逆らうという考えは二人の脳裏に過ぎらない。
二人が駒王町を訪れた理由、各教会にて管理していた聖剣エクスカリバーのうち、三本を奪って駒王町へと持ち込んだ者を追跡し、聖剣を奪還するという使命も、この場では些事に等しい。二人が最優先で遵守すべきと考えているのは駒王町に敷かれている規則だ。
女職員は二人の手から聖剣が離れたのを確認したが、不思議そうに首を傾げ、探るようにゼノヴィアを見遣った。
「こちらの獲物と同等、いや、それ以上の力の塊をあなたから感じられるのですが。まだ、何か武器を隠し持ってはいませんか? 所持品というのは手元にあるもの以外も含まれますので、全てこちらにお渡しください」
「なに? そうだったのか。すまない、すぐに渡そう」
思い違いをしていたゼノヴィアだったが、慌てた様子で右手を横合いの宙に掲げた。そして、呪文のように言葉を紡ぐと同時に、手の先にある空間が歪み始めた。ゼノヴィアがそこへ指先を沈めていき、中に収められていた一本の剣を引き出した。
鮮やかな青色に染まる剣身。金色に縁取られた身の丈ほどはある長剣は聖なるオーラを濃く帯びている。内包し切れずにオーラは外部に漏れていて、近くに寄るだけでも悪しき存在を滅してしまいそうな危険な空気を纏っていた。
それを見て、一瞬だけ女職員の表情が不快げに歪んだ。
「……この剣、名前はなんと?」
「ん? デュランダルだが」
聖剣デュランダル。エクスカリバーと同じく伝説の聖剣だ。しかも、七本に分かれてしまったエクスカリバーとは違い、砕けた様子もない。完全体の聖剣だった。
「……なるほど」
女職員は納得したように頷き、小さく呟いた。
「……不穏な気配を察知して、慌ててこちらに来た甲斐がありました」
「何か言ったか?」
「いえ、何も。そちらの剣も、棚の横に置いてください。あとはそのスーツも脱いでいただきましたら、身体測定に移りたいと思います」
「わかった」
デュランダルを床に置いたゼノヴィアは、着ていたボディスーツを脱ぎ始める。
その横で、既にイリナはスーツを脱ぎ終えていた。体を覆い隠していた黒い生地がなくなり、少女の柔肌が露わになっている。髪を解いて真っ直ぐ伸ばし、全裸になったイリナは少し落ち着かない様子だった。
「お風呂に入るわけでもないのに裸になるのって、なんだか変な感じね」
「そうか? 私は気にならないが」
「はぁ。ゼノヴィア、あなたはもうちょっと常識を学んだほうがいいわ」
「イリナも私と大差ないと思うが」
そんなやり取りをしながら、ゼノヴィアは体をピッチリと覆ったボディスーツを脱ぐと、籠の中に入れたローブの上に放った。イリナの横で堂々と全裸で並び立つ。
どちらも、スーツの上からわかってはいたが、スタイルの良い女体をしていた。傷や染みのない白い肌色。胸も尻もしっかりと出ていながらも、戦士としての日々の鍛錬で全体的に体は引き締まっている。
同性からも憧れられるような美しい肢体。
「こちらにどうぞ」
まさしく身一つのまま、二人は女職員に続いて歩き出した。
「そこで止まってください。壁を背にする形で」
部屋の壁際まで寄って、二人は壁に背を向けて真っ直ぐ立った。
「ん? なんだ……?」
「触っちゃ駄目よ、ゼノヴィア。それ、たぶん撮影用の機材だから」
立ち止まったままゼノヴィアは床に設置されたカメラを見つけ、小首を傾げた。
「触らないよ。ということは、これがさっき言っていたカメラか」
女職員の話では、定点カメラによって身体測定時のやり取り全てが撮影されるということだった。大勢の人間が映像を見るとも言っていた。
「これから撮影を行います。そのまま、両手の平を後頭部につけ、両足をできるだけ真横に開いてしゃがんでください」
言われた通りに二人が両手を後頭部に当て、その場でしゃがむ。自然と両脇を見せ、ガニ股になる体勢だ。背筋を真っ直ぐ伸ばしたまま体勢を維持し、次なる指示を待って待機している。
二人の姿を確認し、女職員が壁に埋め込まれていた端末を引き出し、何やら操作をし始めた。すると、床や壁、天井の至るところに設置されたカメラがせり出してきて、自動的に角度を変えて被写体である二人をレンズに収める。
「これは……」
「ゼノヴィア、静かに……」
呟いたゼノヴィアにイリナが沈黙を呼びかけ、二人は黙り込む。
そんな二人を、カメラは撮影し続けている。正面から、背後から、真下から。他のカメラよりもさらに二人にレンズを寄せ、秘所や尻の穴を撮影しているカメラもあった。至近距離で撮影されているという事実にイリナの顔に羞恥が宿る。それでもゼノヴィアはまだ動じていなかったが、次の行動にはさすがに驚いたようだ。
「っ……」
「えぇっ……?」
床に穴が開き、機械のアームが計四つ飛び出してきた。人間よりも細い五本の指を有するそれが人間のように両手を伸ばし、ゼノヴィアとイリナの秘所を余すところなく衆目に晒そうと、閉ざされた陰裂を左右にこじ開けた。
くぱぁと花開く乙女の花園。それが、画面いっぱいに映し出されるほどにカメラに捉えられる。さすがのゼノヴィアもこれには恥じらいを覚えたようで、隣にいるイリナと視線を交わし合う。
イリナは顔を真っ赤にしながらも、ゼノヴィアに向かって静かに首を横に振る。
これは身体測定。拒否することも、検査を妨害することも許されない。ゼノヴィア自身もそれをよく理解しているのだが、ここまで筒抜けな検査を前に冷静さを保ち続けることはできなかった。
早く終わってくれないだろうか。
そう願うゼノヴィアの願いは虚しく、撮影は長引いた。ときには、レンズが膣穴や尻の穴に触れてしまいそうなほどカメラの先端が詰め寄ることもあった。
二人の裸身が足の爪先から頭の天辺まで撮影されて数分後。二人がそろそろ体勢を維持するのが辛く感じてきた頃だった。
「では、本格的に身体測定を始めます」
女職員が再び端末を操作したとき、天井に穴が開き、それが垂れ下がってきた。
それは、生き物の臓器に似た見た目をした縦長の肉塊だった。
ただの内臓と明らかに違うのは、それが意思を持っているということ。
そして、向こう側が透けてみえるような透明な肉体を持っていながら、備わっている内蔵は生物の肉のように赤色を宿していること。天井の空きスペースを根城に巣くっていたのだろうか。人など容易く呑み込める大きさの肉塊が二体。
「え!?」
「なっ……!?」
二人が驚きの声を上げた瞬間、肉塊ががぱりと口を開き、二人を頭から飲み込んだ。
「~~!?」
「……っ!?」
粘液を垂らしながら、イリナとゼノヴィアの頭部に食らいつく。二人は咄嗟のことに呻き声を漏らすが、その声はくぐもっていて外からでは聞こえない。足をばたつかせて反射的に抵抗するが、それも肉塊の前では無意味だった。
ぢゅるぢゅると音を立て、二人の体が徐々に呑まれていく。首から胸元、腰、臀部から足先まで。カメラの向こう側にいる人間に見せつけるようにじっくりと、二人の裸身を肉の内側に収納した。
二人が招き入れられた肉塊の内側には、無数の触手がビッシリと生えていた。細長い触手やイボがついた触手、男性器に酷似した形状の触手まである。食らった雌の体を苛め抜くには十分な種類の触手が二人に迫る中、数本の触手が真っ先に二人に襲いかかった。
「ひぃっ……!?」
「ぉおおっ……!?」
両耳の穴にずぷりと侵入した触手。奥まで入ったそれが、耳の穴を塞ぐように先端を大きく広げると、先端の穴から音波が発せられる。聞くだけで頭の中をぐちゃぐちゃにされ、正気ではいられなくなる音の波状攻撃。
「ぐむぅっ!?」
「ぐぽぉおっ!?」
悲鳴が漏れそうになる二人の口に、肉棒型の触手が容赦なく侵入する。喉奥まで攻め入られ、二人は口から触手を取り出そうと足搔くが、他の触手がそれを許さない。
横から伸びてきた別の触手が、二人の頭に巻きつき、頭部の可動範囲を固定しながら目元を覆う。バイザーのような形をしているそれの役割は映像を投影するものだ。バイザーの内側から伸びてきた小さな触手が二人の目蓋を開かせ、映像の視聴を強制させる。
文字や数字、記号、図形などが目まぐるしい速度で表示されていく。音波と同様に、意味を成しているものとは思えない。だというのに、二人は余人が立ち寄れない心の奥に接続されるような感覚を抱き、直後には、心の内を書き換えられるような不快感に襲われた。
「むぐぅううっ!? んんんぅううっ!?」
「んんぉおぉおっ!? んぐぅうううっ!?」
二人が暴れるが、肉塊は拘束を解かず、二人を弄ぶために触手を動かす。
乳首に吸いつく吸盤型の触手。
アナルを開発するアナルビーズタイプの触手。
陰核や膣穴を攻める超振動ブラシを備えた触手。
二人の全身を取り囲む、百種類以上の様々な形をした肉棒。人間の肉棒だけでなく他の生物の生殖棒も用意されていて、二人の女体に擦りつけられる。鼻が曲がりそうな醜悪な雄の臭いが広がって、二人の鼻を犯し尽くす。
処女を奪わないという前提の下、心と体を穢される二人の美少女。
二人は知る由もないが、透明な肉塊の内側で犯される二人を、カメラの向こう側にいる駒王町の男たちが眺めていた。専用の動画サイトで、予告なしのゲリラ配信となったにも関わらず、大勢の男たちが視聴画面を開き、映し出される二人の凌辱ライブ配信を見ながら欲望に塗れたコメントを送っている。
目で追うのが難しいほどの速さで投稿されたコメントが縦方向に流れていき、動画に高評価がついていく。
その画面の横では、二人の個人情報の全てが表示され、二人のコピー体を購入するためのオークションも同時に行われていた。今も落札金額が上昇を続けていて、二人の価値が跳ね上がっていく。
程なくして、落札者が決定するのだろう。
その者の下に送り込まれる予定のコピー体が今、誕生を迎えようとしていた。
二人を丸呑みする肉塊の根元から四本の触手が長く伸び、大きく膨らんだ。肉塊の内側に受精卵に似た小さな塊が漂っていたかと思えば、急激に成長し、瞬く間にゼノヴィアとイリナに酷似した同世代の少女の体を象った。
二人のゼノヴィアと、二人の紫藤イリナ。
触手の子宮の中で胎児のように体を丸めていた四人はやがて、ゆっくりと目を開く。
本人と見分けることのできない、完璧なコピー。彼女たちはオリジナルが今も犯されている横で、触手の子宮に開いた穴から自ら這い出て、ぼとりと床に落着する。
落ちた瞬間は、まだ何が起こったか理解できていないようだった。
「あれ?」
「私たちは、いったい……」
自分の存在意義に悩んでいた四人だったが、すぐに自分たちの使命を思い出したようだ。
「思い出したわ! 私たちは、男性に抱かれるためだけに生み出された性奴隷だったわね」
「ああ、そうだ。で、そっちの私たちはなんだ?」
一組のイリナとゼノヴィアが、もう一組の二人に問いかける。
「私たちはオリジナルに成り代わって人生を送る個体だ」
「つまりはこれまで通りってわけね。オリジナルの代わりに頑張るわ」
役割を自覚し、自分の意思で行動する偽物四人。
「んぉおおぉおおぉおっ!?」
「んぐぅううううぅうぅうっ!?」
オリジナルは、自分の偽物が生み出されたことも知らず、喉を震わせる。映像と音波で脳を調整され、数百本にも上る触手たちに犯される。アナルビーズ型の触手に這い回られ、粘液で解されたアナルにイボ付き極太チンポ触手がズプンッと根元まで挿入され、二人がガクガクと全身を痙攣させる。
その様子を眺め、下劣なコメントを投稿する視聴者たち。
まずはお試しにと生み出された販売用のコピー体一組の所有権を掛けて、資金を投入する者たち。
二人が訪れた駒王町は、穢れた欲望が渦巻く魔界だった。既に逃げ場はなく、二人の命運は他者に握られている。その決定権を握る女職員は艶然とし、二人がただ堕ちていくのを見守っていた。