※この作品はR-18です。

この世界でそれはアカン   作:榊 樹

7 / 8
息抜きに書いてたら出来ました。




勘違い

目が覚めたら自室のベッドで、何があったのか思い出せない・・・・・・なんて都合良くいかないんだなぁ、これが。

 

 

「うぐぉおぉ ぉぉ・・・・・・お、俺は何を・・・!」

 

 

夢ならば、どれだけ良かっただろうか。

 

ちんぽに残る柔らかな手の感触、何度もイかされ、感度を上げられた乳首、性欲に呑まれて淫魔化した代償に襲う倦怠感がその可能性を否定する。

 

達郎や凜子さんは分からないが・・・目が覚めてゆきかぜと顔を合わせた時のあの反応。頬を染めて目を逸らすとか、バッチリ覚えられてるじゃないか。

 

恥ずかしいと言うのもあるが、それ以上に少し厄介な事になった。なんせ、ゆきかぜは・・・・・・俺が淫魔とのハーフだと知らないからだ。

 

 

「・・・・・・・・・説明、しないとなぁ・・・」

 

 

実を言うとこうして水城家に居候し、対魔忍をしているとは言え、俺が魔の者である淫魔と人間のハーフだと知る者は意外と少ない。

 

知っているのは爺やと現在、行方不明中のゆきかぜの母、それから俺の出自を知ってるアサギ校長・・・・・・くらいか?

 

凜子さんは・・・どうなんだろ。前に見せた事があったけど、意識が朧気だったし、覚えてないかもしれない。その後も触れられる事は無かったし・・・。となると凜子さん・・・それから、達郎にも説明しないとだな。

 

 

正直な所、俺も親とは会った事が無いので俺自身の事は人伝に聞いた程度の知識しか無い。なぜなら、父は俺を産んですぐに死んだからだ。

 

出産に耐え切れなかった、と周囲は言うが・・・恐らくそれは嘘だろう。

 

なんせ、相手は淫魔だ。精気を吸い取る為には苦痛よりも快楽を与えた方が効率が良いし、簡単に死なれては面倒にも程がある。

 

魔の者、特に淫魔はそういった技術に長けているのだから、子供一人産むくらい尿道をガバガバに調教する事なんて朝飯前だろう。

 

つまり、俺の産みの親は・・・・・・任務に失敗し、淫魔に孕まされ、魔の血を引く俺を産んだという事実に耐え切れず、自ら命を絶ったのだと思う。俺の両親は表向き、任務で死んだと捏造しているのがいい証拠だ。

 

ハーフってのは基本的に迫害され易いからな。

 

 

「・・・・・・まぁ、別にどうでもいいけど」

 

 

そう、どうでもいい。

 

頼んですらいないのに産むだけ産んで、自分勝手に死んだ顔も知らぬ他人だ。そんな女々しい野郎の事なんかどうでもいいんだ。

 

問題は、今の俺の身体にある。

 

ハッキリ言って、さっきからムラムラが止まらない。凜子さんの黄金比のような身体の感触が今でも全身に鮮明に残ってるから、というのもあるが・・・・・・何よりも淫魔の特性がヤバいのだ。

 

 

「うぅ・・・♡」

 

 

俺が頑なに淫魔の姿を嫌う理由、それは性欲にある。

 

淫魔にとって、精気を吸い取るのは人間で言う所の食事のようなものであり、つまりは人間で言う所の空腹が淫魔にとっての性欲に当たる。

 

きちんと吸い取っていれば、適度な性欲しか湧かないが・・・逆に吸い取っていなければ、性欲が時間の経過と共に増していく。

 

勿論、その原因は精気の不足なのだから、自慰で治まるようなものでは無い。幸い、ハーフの俺は人間の姿であれば、淫魔の衝動に駆られる事は無いが今まで全く使っていなかったが故に淫魔化の制御が殆ど出来ないのだ。

 

平時であれば、人間の姿を保とうと意識すれば基本的に問題無いが・・・性欲を過度に我慢したりすると途端に淫魔の本能が疼き出し、本能が理性を凌駕してしまう。

 

今までは幼い頃に力に目覚めた時以来、淫魔化そのものを一度もしていなかったので割と抑えが効いていたのだが・・・・・・仕方無かったとは言え、凜子さんが病んだ時に淫魔化してからは、今までの分が一気に溢れ出すように抑えが効かなくなった。

 

セックスをせず、ただイかせるだけの関係に不満を持っていたのは何も凜子さんだけでは無いのだ。下手をすれば、このまま我慢し続けていると性欲に支配され、手当り次第に食い散らかす性欲魔人になり兼ねない。

 

正直、その・・・性欲抜きにして、凜子さんの事はそれなりに・・・・・・好きだから・・・・・・うん。裏切りたく、無いんだよなぁ・・・。

 

だから、精気を吸い取るなら凜子さんとがいいし、凜子さん以外は嫌だ。本人も性欲に流されたとは言え、子作りしよって言ってくれたし、もうこれ頼んだら普通に行けるのでは・・・?

 

 

「いや、でも・・・流石に・・・・・・・・・ぬぉおぉお っ・・・」

 

 

でも、今はもう冷静になってるかもだし。そんな状態の凜子さんに発情した俺が子作りしましょうって態々頼みに行くのも・・・なんか、違うじゃん?

 

それに俺、まだ中学生だし。どれだけ配慮しても絶対暴走する自信があるのに、セックスなんてしたら確実に妊娠してしまう。

 

産める身体とは言え、まだ子供。出来れば、成熟してから産みたい・・・・・・。

 

 

「・・・じゃなくて!」

 

 

違う。子供じゃなくて精気だ。なに、子供を産む前提で考えているんだ俺は。大体、避妊なら水遁で子宮をコーティングするなり、洗うなりすれば問題無い。

 

そもそも淫魔は卵子からも精気を吸い取るから、自身が望まない限り、妊娠する心配は無いんだ。

 

だから、今考えるべき事は妊娠どうこうではなく、どうやって凜子さんと性行為をするか、またはそこまで至るかだ。

 

恐らく、凜子さん自身に頼む事は差程難しい事では無い。いや、俺の精神衛生上かなりの大問題だがそこは取り敢えず置いておく。

 

問題・・・というか、最大の壁は達郎だ。今まで達郎は俺の淫魔の姿を知らなくても、凜子さんと二人きりになる事をあまり良く思っていなかったのだ。

 

そういう知識はあっても、自身の姉は他とは違って淑女であり、純潔で気高い存在だと崇拝すらしている。本当はただの処女を拗らせたドスケベ対魔忍なのだが。

 

そんな風に慕っていると凜子さん自身も知っているからこそ、あの人は何かと弟の前だと格好を付けたがる。

 

だから・・・うん。場合によっては、俺が凜子さんに冷たくあしらわれる可能性があるという訳だ。当人の本音は別として。

 

そして、そのような裏事情を知っていたとしても、俺はショックを受けて二度と誘う事は無くなり、仮に凜子さんから誘って来ても何か裏があるのではと勘繰るようになるだろう。

 

前まではゆきかぜを盾にして、割となんとかなっていたが・・・・・・俺が本人の意志を無視して性行為に及ぶ事が出来る淫魔だと達郎が知れば、何がなんでも阻止して来るだろう。

 

それに十中八九、事情を知っているゆきかぜは俺が凜子さんと何をしようとしているのか勘付く。

 

だからと言って、邪魔をして来るとは思えないが・・・・・・ほぼ家族同然の異性に、今からセックスするので二人きりにして下さいと言える程、開き直れてもいない。

 

 

どうしたものか、と布団に包(くる)まって悩んでいると部屋の扉がノックされる。誰かと気配を探れば、爺やだった。

 

 

「どうかしたの?」

 

『秋山のご令嬢様が居らしています』

 

「・・・・・・凜子さんが?」

 

『どうやらお見舞いの様ですが・・・お通ししますか?』

 

「・・・・・・・・・達郎は?」

 

『いえ、お一人の様です』

 

 

・・・・・・・・・・・・ほーん?

 

 

「準備するから、合図したら通して」

 

『かしこまりました』

 

 

扉の外から気配が遠ざかって行くのを感じてベッドから出る。

 

部屋に飾ってある花瓶の水を窓から巻いて、水遁で作った水を入れる。序に花の方にも細工をして、元あった場所に飾り直す。

 

いつ使うのか、要らないと言っているのに爺やが頑なに置きたがった食器類一式が入った棚から、ティーカップを取り出す。

 

何事も準備しておくものだな、と爺やの頑固さに感謝しつつ紅茶を入れる。

 

テーブルに並べた湯気を立てる紅茶、その内の一つに掌に浮かべた飴玉程のサイズの水を混入させる。無色透明なので、俺が何かしたとは少なくとも視覚的には分からない。

 

 

「・・・・・・あ」

 

 

いつの間にか、出てしまっていた翼と尻尾を仕舞いつつ、クローゼットを開ける。そこは普段使うクローゼットとは別の場所であり、所謂勝負下着やら服が入っている場所で・・・透け透けのパンツやハイレグ、バニーボーイ等を見付けてソッと閉める。

 

これも爺やが用意した物だが、流石にハードルが高かった・・・・・・ので、履いていた下着を隅の方に脱ぎ捨て、適当にダボッとした服を着て、尾骶骨辺りに穴が空いたユルユルのショートパンツを履く。

 

一度、部屋を見渡し、窓から入り込む風に目を閉ざす。花瓶から感じる無味無臭の芳香に口端を歪め、ベルを鳴らして爺やに合図を送る。

 

 

落ち着いてテーブルの椅子に座り、細工をしていない方の紅茶を少しずつ傾け、凜子さんが来るのを待つ。

 

喉を通う暖かな液体に少し冷静になって、自分は何をしようとしているのかと我に返り、羞恥心が湧き上がるが・・・もう一口飲むと頭に熱が上る。

 

自覚している分、まだマシだと思うが・・・・・・本当にヤバい。これから起こるであろう必然に、ズボン越しの勃起が治まらない。テーブルの下とは言え、バレたりしないだろうか。

 

そんな期待を込めて脚を広げようとして・・・・・・ノックの音に我に返る。

 

 

『私だ。・・・入っても・・・・・・いいだろうか』

 

「どうぞ」

 

 

考えてみれば、凜子さんを部屋に入れるのは初めてかもしれない。小学校低学年頃からの付き合いだったが遊ぶ時は基本的に外か、秋山邸、水城邸のリビングだったからな。

 

声に硬さを感じるから、緊張しているのだろう。斯く言う俺も、途端に緊張しだしたのだが・・・そんなのお構い無しにドアは開いた。

 

 

「っ!?・・・そ、その・・・・・・見舞いに来た、のだが・・・大丈夫、か?」

 

「っ・・・え、えぇ・・・お陰様で。・・・・・・あの、お茶を用意したので座っては?」

 

「そ、そうする」

 

 

凜子さんは俺の部屋着を見てか、俺は凜子さんの私服姿を見て、互いに息を呑む。

 

半袖のシャツに前を開いたパーカーが巨乳の所為で脇に寄せられ、七分丈のズボンから綺麗な足首が覗く。ポニーテールの下に覗く首元は、暑かったのだろうか、少し汗ばむ様子が非常に艶かしい。

 

今の俺にとって猛毒にも程があるが、気合いで抑え込む。出会って即襲い掛かるとか、もうそれレイプじゃんか。

 

大丈夫、細工はきちんと施した。落ち着いて、焦らず誘導すればいい。

 

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

 

・・・・・・な、何から話したものか。誘導せずとも手持ち無沙汰からか、勝手に紅茶を飲んでくれるのは有難いが・・・効果が出るまで少し時間が掛かるしな。

 

ただ黙ってたら、何をせずとも発情してしまうだろうから、俺が盛った事は簡単にバレてしまう。なんとか、自然な流れでそういう空気を作らねば。

 

 

「・・・・・・?・・・・・・・・・っ!?・・・!!?・・・??・・・・・・!!?」

 

 

なんか急に百面相しだしたんだけど・・・。え、なに?何かを見付けたみたいだけど・・・・・・あ、下着放ったらかしだ。

 

・・・・・・いや、確かに狙っていなかったと言えば嘘になるがこうも効果覿面とは。思った以上にチョロいぞ、これ。

 

 

「・・・えっと・・・気になり、ますよね?」

 

「えぁ!?・・・・・・ぁ、あぁ・・・まぁ・・・一応」

 

 

ちらちらと視線が部屋の隅に行くが、今そっちの話では無い事くらい理解してるよね?きっと理解していると信じよう。

 

煮え切らないのは多分、触れていい問題なのか迷っているからだろう。本当、変な所でお人好しなんだから。

 

 

「取り敢えず、何から・・・・・・そうですね。まず、改めて見せましょうか」

 

「み、見せる!!?な、ななな何をだ!?」

 

 

顔真っ赤にして滅茶苦茶慌てふためいているけど、変な意味じゃないからね?一体、何を想像してんだか・・・。

 

椅子から離れて、上の服を脱ぎ始める。服で視界が塞がるが、声だけで凜子さんの様子が分かる程に彼女は挙動不審となった。

 

 

「へはぁ!?ほ、ほほ本当に・・・え、えぇいや、今日は・・・・・・そんな・・・・・・つもりは・・・・・・で、でもそうだな。秋がそこまで言うなら、私も・・・」

 

「何を勘違いしてるんですか。いいから、顔を隠してないでこっちを見て下さい」

 

 

今更とは思うが、耳まで真っ赤にしてこんなにも初心だったろうかと疑問に思う。まぁ、でも目の前でいきなり脱がれたらそりゃビックリするか。寧ろ、慣れていた方が・・・なんか腹立つし。

 

 

「へ・・・?み、見ても・・・いいのか?本当に見るぞ?」

 

「・・・・・・いいから、早くして下さい。結構恥ずかしいんですよ」

 

 

幾ら翼で上半身を隠しているとは言え、恥ずかしいものは恥ずかしい。一応、対魔忍スーツは淫魔化用に背中が開いてるが、着る余裕なんて無かったからこうするしかない。

 

何度も確認し、漸く決心が着いたのか、俺の声で恐る恐るこちらを見遣る凜子さん。何処か期待したような、それでいて緊張した面持ちだったが、俺の姿を視認すると目を見開いた。

 

 

「夢では・・・なかったのだな」

 

「・・・まぁ、はい」

 

 

・・・夢だと思われてたのか。あの状況で夢って・・・いや、気持ちは分からなくもないけどさ。そこまで神妙な顔付きになるのだろうか?

 

あと、シリアスに見せ掛けて、翼に隠れた俺の胸をガン見するのやめて。真面目な顔なのに、目が一切ブレないんですけど。

 

 

「・・・その・・・すまなかった」

 

「・・・・・・・・・??・・・え、どうして謝るんです?」

 

「あの夜、お前には・・・その・・・かなり酷い事をした」

 

 

あの夜・・・?

 

・・・・・・・・・え、待って。もしかして、勉強中の事じゃなくて、俺が寸止めされまくった夜の話してる?えっ、え・・・ちょ、タンマ。

 

 

「ぉ・・・ぉ、覚えて・・・いたん・・・ですか?」

 

「・・・覚えていたと言うより、思い出した。先日、その姿のお前を見て・・・その日の夜に夢で・・・・・・・・・って、秋!?」

 

 

待って。本当に待って。あれはダメだ。あれを覚えられてるとか・・・・・・ヤバい、めっちゃ恥ずかしい。

 

あまりの羞恥にベッドに逃げ込み、布団に包まる。淫魔化したまんまだが、そんな事を配慮する余裕すらない。文字通り、穴があったので入ってる状態で、傍から見れば素で恥じている・・・・・・・・・と見えるだろうが実は結構、余裕がある。

 

いや、確かにあの日の事を覚えられてるとか、誤算もいい所だけどさ。そんな事、どうでもよくなる程に淫魔化した所為で性欲が急激に上昇してるんだよ。

 

心配して近付いて来た凜子さんを布団の中に引き摺り込む程、今の俺は制御が効きそうに無い。

 

 

「しゅ、秋・・・?大丈夫・・・・・・かぁ!?」

 

 

暗いけど、流石に二人分だと布団の隙間から光が差し込み、僅かに見える。俺に覆い被さるように引き摺り込んだから、何も着けていない胸を両手で鷲掴みにされる。

 

 

「す、すまない!?今、退くか・・・」

 

「んぁっ♡」

 

「・・・ら」

 

突然の事態に、早くも状況を把握した凜子さんは慌てて退こうとするが・・・手に力を入れて俺の薄い胸が揉まれる。

 

今や、性欲の所為で全身性感帯状態の俺はそれだけで気持ち良くなってしまい、思わず声が出てしまう。

 

その声に一瞬硬直する凜子さんだったが、自分が何をしているのか瞬時に理解して、今度は布団を捲る程の勢いで起き上がった。

 

 

「あっ、あっ・・・えっと・・・すまないっ・・・!?」

 

「ん・・・だめ・・・」

 

 

馬乗りとなった凜子さんを逃がさないように尻尾で巻き付ける。本気を出せば、この程度の拘束など一息で解けるだろうが・・・どうやら媚薬の効果が効いてきたのか、その瞳に逃げる意思は欠片も感じられない。

 

なんせ、細工をした花瓶が真横に飾ってあるのだ。無味無臭とは言え、その効力は濃くなっている筈だ。

 

きっと、今から俺は性欲の赴くままに犯され尽くすだろう。やめてと泣き叫んでも許してもらえず、力尽くで何度も何度もイカされ、孕まされる。

 

尊厳という尊厳を踏み躙られ、明日の朝には清い所など一つとして無くなるまであらゆる場所を堪能されるに決まってる。

 

・・・・・・それでも俺は・・・それを想像してちんぽが一層固くなる。ショートパンツと太腿の隙間から顔を出し、直接凜子さんのズボンに擦り付けてしまう。普段ならその痴態を恥じ入るのだろうが、今の俺は寧ろ誘うように腰を擦り寄せ、その存在を主張する。

 

男の勃起は前世で言う所の女性がおまんこを濡らしているのと同義。事実、尿道の中はもうおツユでトロトロに解れている。

 

例え、処女だとしても俺が興奮しているくらい、ここまですれば凜子さんだって理解する。後は・・・・・・凜子さんにおまかせ、かな。

 

 

「・・・・・・っ」

 

「・・・・・・♡」

 

 

固唾を飲む音が聞こえ、『あぁ、遂に我慢の限界か』と胸が高鳴る。ちんぽに仄かに感じる湿り気がそれをより実感させて来て、思わず翼を開いてパタパタと忙(せわ)しなく動かし、尻尾の拘束を強めてしまう。

 

 

 

凜子さんの右手が上げられる。

 

今から俺を蹂躙する尖兵となるであろうその手に目が離せなくて、熱の篭った視線で追い掛ける。

 

ゆっくり、ゆっくりと伸ばされたその右手が近付いて来るのに比例して、俺の胸も高鳴っていく。

 

 

あと少し。あと少しでその手と俺の体が触れ合う。あと十数センチ・・・あと数センチ・・・・・・・・・そこで凜子さんの手は止まり、横に飾ってある花瓶を掴んだ。

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え・・・」

 

「ふむ、これだな。それから・・・紅茶にも何か淹れたな?」

 

 

 

心臓が止まった気がした。あれだけ火照っていた身体が冷水をぶっ掛けられた様に熱を失い、冷や汗が背中を伝う。

 

あまりの出来事に、尻尾は力無く拘束を緩め・・・・・・いや、そもそもの淫魔化が解除されていく。皮肉にも快楽に溺れていた身体は、焦りや恐怖により、文字通り快楽を失う事でその制御を取り戻したのだ。

 

だが・・・それがなんだと言うのか。

 

呼吸すら危うい状態の俺など露程も気にせず、凜子さんは続ける。

 

 

「お前に散々迷惑を掛けてしまったあの任務以来、媚薬に対する訓練は相当積んだからな。それでなくとも、つい最近まで快楽に悩まされていた身体だ。制御が効く今、この程度なら理性を保つ事など造作も無い」

 

「・・・ぇ・・・・・・・・・ぁ・・・・・・ちがっ・・・」

 

 

何を言いたいのか、何を考えているのか。俺自身も分からないけれど、それでも嫌われたくないからと、こちらを鋭く睨むその視線に弁解しようとする。

 

・・・・・・だけど、俺のやった事は弁解の余地など無い程にどうしようもなく事実で、バレた今となっては嘘を重ねる程に嫌われてしまう。

 

結果、俺が出来たのは無意味に口をパクパクし、意味の無い言葉を零す事くらいだった。

 

 

「・・・秋、お前がどういうつもりでこんな事をしたのか、私には分からない。だけど・・・・・・私は、お前とそ(・)う(・)い(・)う(・)事をする関係になりたい訳じゃないんだ」

 

「ぁ・・・ぃや・・・・・・待っ・・・て・・・・・・!」

 

 

重さが消える。俺を抑え付けていた、安心させてくれていた身体が俺の上から消える。

 

部屋を出て行こうとするその背中に手を伸ばす。行かないでと抱き着いてでも止めようとするが・・・感情がごちゃ混ぜのあまり、力が入らなくて、ベッドの上に倒れ込む。

 

いつもなら、こんな状態の俺を放っておく事は無くて、即座に心配して駆け寄って来るのに・・・・・・無情にもその背はこちらを突き放すように遠ざかる。

 

 

「・・・・・・すまない」

 

 

その一言を残し、凜子さんは扉の奥へと消えて行った。

 

 

◇

 

 

凜子さんに薬を盛った。

 

例えそれが、相手の判断力を僅かに弱らせ、性欲を発散させなければ身体に篭もり続けるような。雰囲気作り程度の効力しかなく、殆ど自分の身体任せのアロマやお香程度の薬であったとしても、『薬を盛った』という事実は変わらない。

 

薬の力を使って、本人の意思とは無関係にその肢体を貪る。

 

それは俺が見下す存在、糞にも劣る外道共蔑んだ者達と全く同じやり口だった。罵倒されても仕方無かった。暴力に訴えられても何もやり返せない。

 

なのに・・・凜子さんはただ立ち去るだけだった。けれど、その瞳は怒りのような、なんらかの激情を押さえ込んでいて・・・それが一体何から来る感情なのか、嫌でも分かってしまった。

 

裏切ったのだ。凜子さんの信頼を。

 

その事実が・・・どうしようもなく、重く伸し掛る。

 

やるべきではなかった。やってはいけない事だった。考えれば、考える程に後悔の念が溢れ出す。

 

 

「―――ぁぁ・・・・・・〜〜〜っ・・・!・・・・・・っっ!」

 

 

胸が張り裂けそうで、溢れる涙が止まらなくて・・・声にならない叫びが喉を痛める。

 

性欲なんて欠片も湧かないのに、俺の身体は発情を続ける。

何一つ快楽を感じないのに、ちんぽは変わらず勃ち続ける。

 

それが俺の罪を象徴しているようで、なんて浅ましいのかと自分を蔑ます。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 

もう泣く力も、声を出す力も無くて、死んだようにベッドで横になる。泣き疲れて瞳を閉じようとしても、去って行く凜子さんが脳裏に浮かび、その恐怖に目を閉じれない。

 

何をするでもなく、ただ延々と先の出来事が頭を巡る。思い出したくないのに、傷付くだけなのに、そう思えば思う程に強く鮮明に思い出す。

 

 

『お前とそ(・)う(・)い(・)う(・)事をする関係になりたい訳じゃない』

 

 

去り際に放った一言。

 

それが本当だと言うのなら、今までの情事は一体何だったと言うのか。確かに最初は罪滅ぼしだった。性欲を発散させるだけの、身体を重ねてすらいない清い関係だった。

 

それでも・・・それでもさぁ。・・・好きって・・・言ってくれたじゃん。子作りしよって、言ってくれたじゃん。

 

嬉しかったんだよ。あんなに真っ直ぐ想いを伝えられたのが。

 

俺の容姿じゃない。俺自身を見てくれて、その上で俺を好きだと言ってくれて・・・・・・本当に、嬉しかったんだ。

 

なのに・・・あれは全部、嘘だったの?

 

 

「・・・・・・・・・ぁ・・・」

 

 

違う。違う違う違う違う!!

 

嘘を吐いたのは俺の方だ。優しいあの人に嘘を吐かせたのは俺の方なんだ。俺が薬なんて盛るから、俺が先に裏切ったから、凜子さんは・・・・・・。

 

 

「・・・・・・は・・・・・・はは・・・」

 

 

どうしたら、許してくれるのだろうか。

どうしたら、償えると言うのだろうか。

 

元の関係には・・・・・・きっと、もう戻れない。

 

浅ましい淫魔らしく、性奴隷としてあの人に使ってもらうなんてどうだろうか。使って、使い倒して、飽きるまで道具のように使い潰されて、飽きたらその辺に捨てられる。

 

何処までも惨めな存在に堕ちたら、それで許してもらえるのだろうか。

 

・・・・・・・・・いや、無いな。

 

ああ見えて、弟が思う通りに淑女な人だ。きっと、同情されて余計に苦しませるのがオチだ。

 

そもそも最初に出た案がコレとか、もうホント・・・・・・終わってるよ。

 

この調子だと、何をしても逆効果。無意識に淫魔としての本能に突き動かされ、また取り返しの付かない事をしてしまう。良かれと思った事が全て裏目に出て、余計に凜子さんを傷付かせる。

 

 

なら、もういっそ・・・・・・あの人の前から、消えてしまおうか。

 

 




途中で媚薬に気付いた秋山凜子(脳内)

淫魔とは言え、あの秋が媚薬・・・・・・もしや、試されてる?
↓
今すぐにでも貪りたいけど、ここで『媚薬に流されない女』を演じれば、信頼度やら好感度やらが鰻登りなのでは?
↓
「薬を使わずに健全でエッチな関係になりたい」(キリッ
↓
でも、やっぱり我慢出来そうにないので早々に退散
↓
家に帰って秋型オナロで発散しよ



なんか、水無瀬君が急にメンヘラっぽくなったけど、『割と自信があったのに凜子さんに全く相手にされていなかった』という事実(勘違い)に羞恥やらショックやらで情緒不安定、自暴自棄になってる状態です。

セックスすれば治る。
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