『偉大なる
丘の向こうからやってきた人間の騎士が槌を持ち込んだ。その槌は我らに力を与えるだろう』
邪悪なるオークの族長が低く唸るような声で配下のオークたちへ吠える。その背後には神官が控えている。
『騎士は
燻り、引きずり出し、死体をバラバラに引き裂いて、槌を奪うのだ。我らが栄光のために!』
『オオオオオ!』
族長の戦いの宣言にオークたちは狂乱の叫びを上げ、敵の姿も見えぬというのに山へ向かって突進していく。
煽られて突っ込んでいく、人間が見ればバカと言い放つだろう蛮勇、無謀、無鉄砲な姿……しかしそれが津波のように押し寄せる戦い方こそがオークの恐怖だ。
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ドワーフの王国へ来て4日。
旅の疲れを落としたところに、災難が私たちを追いかけてきた。
カン、カン、とドワーフの地下空洞に何度も銅鑼の音が響く。
時を知らせる音ではない。この王国で銅鑼が設置されているのは、内と外を隔てる城壁だけだ。
明日には出ようと思っていたところに漂う不穏な空気に、誰から言い出したわけでもなく集合するパラディン様御一行。
そこにドワーフの将軍の使いが伝令にやってくる。
「オークどもが攻めてまいった。今は外に出られぬ、出立は後日にせよ」
「オークですか……」
「ひょっとして尾けられましたか?」
「いや、パラディン殿。オークどもがやってくるのは毎度のこと、気にすることはない。
しかし奴らも暗闇で目が利くのでな、どこからか忍び込んでこんとも限らん。戦の備えはするように」
オーク侵攻のきっかけになったのは我々だろう。しかし彼が言うようにドワーフたちにとって生息圏が被るオークやゴブリンとの戦いは、私たちが狼や獣を退治するのと同じくらいよくある事だ。
彼らの言葉に甘んじて休むことも出来るが……我々のリーダーはそういうタイプではないし、こんな騒がしい状況で休めるほど豪胆でもない。
愛用の長剣に手をかけた彼に声をかける。
「砦とは違い、ここは地下です。加勢は難しいですよ」
「それでも黙って立っていることは出来ません。支度はしましょう」
私たちの中で一番活躍し難いのは他ならぬ貴方なのだが、と言いたい気持ちをこらえてリーダーの趣向に従うことにする。
忙しない中 将軍の間にお邪魔し、協力を申し出たパラディン様。
唐突な申し入れに渋られるが、なんやかんや交渉の末に幾つかある山の出入り口の一つ、側方面の守りの助けに入った。
石の分厚い城壁は何度 武器を打ち付けられても壊れる気配はない。しかし敵が攻城槌が持ち出し、ドンと城壁にぶつかるとピキピキとヒビの入った音が鳴る。
弩で
硬い鎧に身を包んだドワーフの戦士たちと、力任せに斧を振るう多数のオークの蛮族たち。
矛と盾の戦いは一見 盾が優勢だが、しかし終わりが見えないオークの波に、数が限られたドワーフたちは押されつつある。
だが調子に乗りつつあるオークたちの中にドワーフ側から松明が投げ入れられたかと思うと、突然 冷気の霧が噴出し、体にまとわりついた。
生気を奪う“
それもごくわずかな時間の
パラディン様とエルフ神官は交代で下がったドワーフの戦士たちを
駆けつけた矢先の呪文一発以外に目立った消耗はないものの、オークの波はトンネルの暗闇の向こうに続いて、全く終わりが見えない。《爆発》を放り込み続ける私たちの精神力が一番の消耗だ。
とはいえ、村人を護送した砦と比べると段違いに楽な戦いだろう。
味方の戦士は数こそ少ないが腕の立つファイターが揃っており、戦場の狭さが投入できる敵の数を制限するためオークの攻撃力が活かしきれない。
根比べとなれば、オーク以上の
この堅牢な守りを破るには事前に潜入、破壊工作などを行うのが定石だが、オーク好みではない。だとしたら、オークが取る手段は……
後方からドワーフの伝令が駆け込んできて、何かを伝えているのが目に入る。
「地下から
「側面から崩して来ましたか」
ドワーフ語を解するオウレンが訳す。オークはドワーフの守りを崩すため、回り道することを選んだらしい。
この世界の様々なクリーチャーの中には、
しかしそちらへ応援に向かうべきかと懸念して、少し戦場から目を離していた矢先に一人のオークがドワーフの壁を上から飛び越えて城壁に近づいた。
慌てて《炎の爆発》を向けるも、オークは爆煙を無傷で突き抜けた。不思議に思う間もなく、オークは一枚のスクロールを広げ 記された文を唱える。
するとあれだけ矢、斧、ハンマーを叩きつけられても揺るがなかった石の城壁が、まるで木の幹を引き裂くようにビキビキと音を立てて自ら左右に
「“
一定サイズの石をある程度 好きな形に捻じ曲げる呪文だ。接触した物体にしか効き目を及ぼさず、状況次第で役に立たない欠点もあるが、大半の建築物が石や木で出来ているこの世界ではうってつけの攻城呪文でもある。
尤も、それを仕掛けるために強引に飛び出したオークの
……なんて偉いことを言える立場ではないが。このドワーフの国が攻め落とされると私たちも困るので。
たった今 オークの神官に切り込まれた壁の亀裂を見る。出入り口が空いてしまったのは、ある意味で私たちにとっても好都合である。
後方支援に徹していたパラディン様に視線を送り、オウレンを手招きする。
「“
ちょっと通りますよドワーフの戦士たち!」
続いて自己
城壁越しよりも要領よく敵数を減らす私の攻撃をオークたちも黙って許しはしないが、ドワーフの戦士以上に硬い防御を持つ私を雑兵ごときが傷つけることは叶わない。
囲もうと、武器破壊を狙おうと、足払いを仕掛けようと、圧倒的にレベルで負けるオークたちがいっそ私を無視しようにも、散発的な攻撃ではドワーフの戦力を削れないし、少し集まって突っ込んだらそこへ《炎の爆発》が飛ぶ。
“盾”の呪文が切れるまでの数分間で30体近いオークを蹴散らした。打ち漏らした分も背後の仲間たちが片付けている。
事前の削り合いも合わせて100体弱は倒したからか、自慢のオーク津波の密度も減ってきた。しかし雑兵が倒れても、オークの精鋭は健在だ。
途切れずに攻め込んでいたオークの津波が途絶え、僅かなインターバルが挟まれる。
私たちは
そして暗闇の奥からやってきたのは数体の雑兵オークを連れた、高品質の
その姿を見た私の感覚が奴の危険性を訴えているが、それとは別に引っかかるものがある。オークの神、グルームシュはエルフの神コアロン・ラレシアンと太古の戦において左目を失った憎悪から、復讐の信奉者を募ったという―――それが
自らの右目を捧げ、己が神の見る目を得ると共に、残る自らの見る目で神の目を補うという熱狂的な信者にしてオークを束ねる族長にふさわしい上級クラス。
『
貴様らを血祭りに上げ、その首を我らが神祖に捧げよう、グオオオッ!』
重い鎧を着込んでいながら、バーバリアン由来の高速移動で急速に迫り 突出する私に一撃を入れる族長。
“盾”の守りを失ったところに加えられる高筋力の攻撃は流石に受けきれず、ダメージを負うが、いかにパワーがあろうと所詮は等身大のオーク。
「巨人とは比ぶべくもないっ!」
人間と同サイズのオークでは、巨人やトロルほどの出力はない。クラス・レベルからなる技巧の差はあれど、単純な筋力、耐久力はどうしても純粋なモンスターに近い彼らにオークは劣る。
一歩下がって、“
自らの鎧が負担になり、族長を支援しようと続いてオークたちがやってきたところにオウレンの“
残った族長が自慢のタフネスで暴れまわろうとするも、“
力を削がれ、数を失い四対一となったオークの族長はもはや怖いものなどない。満を持して登場した邪神の下僕は、その畏怖を知らしめることなく地に伏した。
「片目の神の使徒ごとき何たるものぞ! ハイローニアスの剣に、秩序の刃に討てぬものなど無し!」
名乗りを上げるパラディン様を横目にオークの族長の息の根を止め、そのお高そうな装備を剥ぎ取って城壁の内に撤収した。
城壁に穴が開きましたが、この場の軍勢は退けたので全く問題ありません。
その穴も駆けつけたドワーフの
しかし一方でオークの大攻勢はまだ続いている。ここを攻めていたのはドワーフの国を攻めるために連合したオークの一部族だろう。
だが人手が空いたことで、その分が援護に入ることが出来る。もちろん、余力の残る私たちも他の城壁へ駆けつけた。
アース・エレメンタルに後方を突き崩された城壁は手が空いたドワーフの戦士たちが駆けつけ、城壁の内側に入り込んだオークを外に押し返した。
また別の城壁には私たちが援護に入り、ドワーフの精鋭たちと組んで一転攻勢、オーク軍を完璧に殲滅する。こちらにも
半日も経てばさしものオークたちも攻勢の手が休まる。彼らも疲労が溜まったか、あるいは兵員が底を尽きたか。
ドワーフの斥候が外に出ている間、私たちは明日あるかもしれない戦闘の再開に備えて休息を取っている。
侵略者であるオークたちの装備類はドワーフたちが接収し、私たちには報酬という形で支払われることになる。戦場に転がる装備の総額からしたらちんけなものだが、重い荷物を運ぶ必要がないことを考えれば納得の行くもの。それに今回の最も大きな収入は目に見える物ではなく、大量の雑兵オークを殲滅したことによる多量の経験値だ。
自分と同程度の敵を倒すよりも、レベル差補正を受けるほどの強敵を倒すか、数多くの雑魚を倒した方がレベリングになるRPGの常識はこの世界でも通用する。
おかげでこの前 レベルが上がったばかりの私も早々に新たなレベルを獲得した。
---
“
もちろん必要な前提を満たさなければならないが、これは呪文能力と同様、日毎に変更できるため、一日を街の中で過ごす日であれば戦闘に関わらない特技を習得しても問題ない。
そしてカメレオンで既に得ていた、好きな呪文を調達できる能力と組み合わせれば、魔法に関することで出来ないことは殆どないくらい相性は抜群だ!
「ところでオウレン。私のこれを見てください、どう思います」
「……
「確かに魔法ですが、本物ですよ! 私自身のちんちんです!」
「はぁ」
そう、念願の〈
それを聞かされたオウレンの反応は淡白なものであったが。念願のちんこだぞ、喜べよ!
リリン 人間(human)の女性、ゲシュタルト・アーキヴィスト7Lv/ファクトタム3Lvソードセイジ2Lvカメレオン2Lv
オウレン ウィスパーノームの女性、ウーイァン6Lvインカンタトリックス1Lv
アルベルト ハーフエルフの男性、パラディン7Lv
アローナ神官(ヴィリル) ハイエルフの女性、クレリック7Lv
戦士のお姉さん(ローラ) 人間の女性、クレリック2Lvファイター3Lv
子供たち 人間の男女、2Lv
・特技は、
あるファイターは〈跳躍〉技能を用いて3メートルの壁を一足で飛び越えられるようになったが、たった“
一方で特技はこれを習得することで初めてその行動を行える、そうでなければ行うことが出来ないという代用しがたいものだ。ある熟練のファイターは命中精度を犠牲に打撃力を高める《強打》特技を得たならば鉄の扉を容易く殴り壊せるようになるし、1レベルのバーバリアンが《激怒回数追加》特技を得ることで一日一戦闘限りだった“激怒”を三回以上行えるようにもなる。
特技を習得するチャンスは数レベルに一回と少ないため、よく考えて選び、身に付けねばならない特徴だ。
・アイテムは、通常の装備や道具、錬金術アイテム、そして魔法のアイテムの三種類に分けられる。
通常装備や道具は〈製作〉技能のみで作成でき、錬金術アイテムも呪文の使い手でなければ作成できない以外は通常の道具同様 〈製作〉技能が必要となる。
一方で魔法のアイテムは、《魔法の武器防具製作》、《巻物作成》といったアイテムの分類ごとに特技を習得した上で、それぞれのアイテム自体に作成に必要な呪文を用意しなければならない。
更に作成にかかる材料費は非魔法のアイテムの数十、数百倍することもザラな上に、経験点をコストとして費やす必要もあり、非常に敷居が高い。
とはいえ魔法のアイテムがなければ多彩な能力を操るモンスターの能力に抵抗できないし、魔法の武具がなければ強力なモンスターと接近戦を繰り広げられないので どうにか自作、または調達しなければならない。
呪文使いは何かと役目重大で世知辛いのじゃー。
・
このペニスを着けている間、その女性は妊娠能力を失うと共に、他の女性を妊娠させる能力を得る……そう、つまりふたなりになることが出来る魔法のアイテムなのだ!(特に穴はなくなると書いてない)
なお戦闘に影響を及ぼすような効果はない。お金に余裕がないってのにこれ買う奴は馬鹿だと分かっていたが、我慢ならなかった模様。