※この作品はR-18です。

えっちなダンジョンズ&ドラゴンズもの   作:tbc

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 “見習い(コモナー)”、“戦闘家(ウォリアー)”、“専門家(エキスパート)”、“魔法人(アデプト)”、そして“貴族(アリストクラート)”。

 これらは全て非「冒険者」とされる職業(クラス)で、剣と魔法とモンスターが存在するこの世界で、戦闘を前提とした場合 冒険者用クラスに劣る―――より上質、あるいは上位互換が存在する―――扱いとなる。

 勿論、戦いに関わらず普通に生きていく分にはエキスパートは魔術師(ウィザード)よりいろんな技術を身につけられるし、蛮族(バーバリアン)はいくつかの仕事をやりこなそうとするとコモナーにも劣る。

 だが、それでも同じ分野において殆どの非冒険者クラスは冒険者クラスに劣る。ウォリアーは戦士(ファイター)ほどの巧みな技術を得ておらず、アデプトは魔術師(ウィザード)ほど大した呪文を使えない。商人や文官のエキスパートだって盗賊(ローグ)よりも少ない技能しか持たないだろう。アリストクラートすら貴族という称号がなければ、政治家としては戦術家(マーシャル)や神官(クレリック)の方が優れているのだ。

 勿論、経験を積めば同じ分野でも非冒険者クラスが勝ることはある……が、やはり同じ経験、同じレベルであれば冒険者クラスを持っていて損はない。

 

 つまるところ何が言いたいのかというと、商人として必要な技術は得られるのだからお嬢様をエキスパートでなくビガイラーにした私はそこまで悪くないと思うのだ。

 

 

 あの後、お嬢様は調子に乗って船の甲板にも光を飛ばしたことで、誰が魔法を無駄に使ったのかと騒ぎになった。狭い帆船の中ではすぐに私たちのことが突き止められて、仕方なくお嬢様の魔法をバラして、すると当然 彼女のお父上……旦那様に伝わり、呪文を覚えたこと、教えたことが。

 呪文、特にウィザードたちの用いる秘術系統の呪文は心を操ったり、死体からアンデッドを生み出したり、人を殺したりと恐怖や害を与えることが可(・)能(・)なため、地球における格闘家のように例え振るう気がないとしても恐ろしい存在だ。当然、秘術術者というわけで評判が悪くなる。そして商人というのは評判が売れ行き、売り上げに関わるため よろしくない。

 そこんところはお嬢様も分かってるだろうし、だから念押しに説明して承知させようと思ってた矢先に呪文バレするんだからー、んもー。

 

 こってりと叱られたものの、子どものやったこと、船上の貴重な魔法使いと言うことで許された代わりに清掃や荷物運搬を命じられた。許されてないと言えなくもない。

 子どもの体格でも、数値上は大人並の力があるので体力仕事も苦ではなかったが、いかんせん何の実利も得られないのが堪えがたい。お金にもならず、経験値にもならず、さりとて目に見えて誰かの役に立つ行いでもない。船の者にとっては肉体的な懲罰なのだろうが、私にとっては非常に精神的な懲罰になった。

 なので私はこの航海が早く終わること、あるいは何かが起きることを望んでいた。だからではないが、航海に出て一週間、旅程の4分の3を経たかどうかというところで襲撃が起こった。

 

---

 

「モンスターだ!船を登ってきているぞ!」

 

 不寝番の上げた声を聞いて目を覚ます。被る毛布を蹴飛ばし、手近に置いてあった鎖帷子(チェインシャツ)を取り寄せ、下に挟んであった刺剣(レイピア)を踏んづけながら防具を着込む。今は殆ど治癒と非戦闘用の呪文の備えしか無いが、どうせあっても戦いの最中では使う暇もあるまい。

 呪文用のポーチを腰へ手荒に巻きつけ、木盾を片手に拾い上げ、もう片手にレイピアを鞘から抜きとり呪文の“光(ライト)”を灯す。船室を出て、暗い船倉を魔法の明かりを頼りに急いで階上に上がる。

 夜闇に加えてちょうど曇り空で真っ暗の甲板に上がると既に船員の一人が血を流して倒れ、縁にかかったロープからモンスターが続々と船上に乗り込み始めていた。全身に魚鱗を生やし、ヒレのついた手で三叉槍(トライデント)握る、トカゲか魚が陸に上がったような人型のそのモンスターは海の悪魔(シーデヴィル)とも呼ばれるサフアグン。あるいはサハギンとも訳される、海に住まいその他全ての生き物を襲う魚人だ。

 既に私以外にも各々武器を携え革鎧(レザー)に身を包んだ船員たちが駆けつけているが、サフアグンは既に4、5体乗り込んでいる。船員たちはそれなりに頑強で荒事にも備えているとはいえ、サフアグンは2レベルの戦士に等しい脅威を持つ。今は僅かに数の利が勝るとはいえ、質の差は向こうにあるだろう…………私を除けば。

 

 狭い甲板の上を駆け、船員と睨み合う手近な1体に近づく。奴も小柄な私に気づき、トライデントを軽く払って追い返そうとしたのだろう。

 だが、私は盾を掲げて槍を逸らしつつ懐に入り込み、レイピアを波のように左右へ素早く揺らし、複雑な軌道を描かせた。すると何かが擦れるような音と共に、剣より吹き上がった炎が刃を覆う。左右へ揺れる火を纏ったレイピアは残像を生み出し、サフアグンめがけて突き出すと本物と残像、二つの刃が襲いかかった。サフアグンはその瞼(まぶた)が開いたままの眼球を驚かせたようにギョロリと分身剣に見やるが、やがて力を失ったかのように倒れ伏す。

 レイピアは奴の硬質な鱗を焼き貫き、サフアグンに一撃で二(・)つ(・)の大きな風穴を開けていた。2レベルになり、私が新たに取得した“剣の魔術師(ソードセイジ)”、巧みな剣の技術によりもたらされる超常現象からなる、剣に炎を灯す“バーニングブレード”、そして実像あるエネルギーの刃が実体ある剣と共に襲いかかる“シャドウ・ブレード・テクニック”の二技を組み合わせた必殺技である。

 その一撃(二撃)は並の傭兵でも致命傷を負い、人より多少強靭な程度のサフアグンにも死を覚悟する威力を与える。そしてその誉れ高い最初の餌食となったサフアグンは耐えきれず、致命傷となったようだ。

 唐突に登場し、一瞬にしてサフアグン一体を派手に斬り伏せたことで、奴らの注目が私に集まったのを感じる。中でも一際大きな、魚鱗製の鎧を着込んだサフアグンが私に目をやった。あれは不味い、間違いなく私より格上の戦士(ファイター)だ。

 サフアグンのファイターは奇声を上げて、周りの船員の攻撃による制止も厭わず私へ突っ込んできた。私も奴の突撃に応じて突っ込み―――そうな素振りを見せると共に、後ろへ滑るような歩法によって下がると、やつは間合いを見誤り、何もないところにトライデントを空振りした。“カウンターチャージ”、突撃を空振りさせるこの返し技によって得た隙を見て階段から船倉に下がる。中には多くの非戦闘員が残っているが、あの戦士がいる限り時間の問題だろう。奴はここで私が殺す。

 サフアグンの戦士は私を深追いし、階段までやってきた。だがその下り階段の途中で待ち構える私を見つけ、少し首をかしげる。わざわざバランスの悪い階段の途中で待ち構えるなど怪しさ極まりないだろう。そして勿論、これは私の罠だ。

 だがやつは私など捻り潰せるという自信があるようで、罠に乗って階段を下り、トライデントを突き出した。先のサフアグンよりも速さ、重さ共にずっと鋭い一撃は私がかざす盾を潜り込み、その肩に突き刺さって血しぶきを撒き散らす。重傷だが、まだ戦える。呼吸を整え、先の技の再準備(リチャージ)を終えた私は、トライデントの間合いを潜り込み炎と幻の二重の一撃を繰り出す。戦士は階段の上で重心を落とし、二つの刃を自らの鱗と鎧で受け流そうとするがそれに合わせて私もレイピアの狙いを上に上げる。階段の下から上を攻撃するには、長柄の武器でも使わない限り、間合いと高さの差を埋めるために不安定な階段の段差を登らなければならない。ただでさえ高さが足りないのに更に上を狙うなど、無茶な動きだ……だが私は軽やかな風のように難なく階段を二段上り詰め、サフアグンの鱗を正しく貫いた。“ステップ・オヴ・ザ・ウィンド”、地形によらず移動し戦える構え、私の最後の隠し種だ。

 しかしただでさえ人間より強靭なサフアグンの肉体に加えて戦士の我慢強さを兼ね備えたこのサフアグンのボスは、この程度では倒れない。格上とは私一人では倒しきれないのだ。攻撃を加えた時と同じく軽やかに階段を下り、船倉の床に降りて間合いを取る。地形の悪さが私の味方だったが、相手が有利な近距離(インファイト)へ足を止め続けることは出来ない。非戦闘員を巻き込むためにこれ以上 階段を降りることも許されず、技の種は呼吸を落ち着かせるまで再使用は不可能と来た……やつは十分に傷ついているが、私も次の一撃を喰らって耐えきることはできそうにない。もう一撃を避けられるかどうか。

 

「“命令(コマンド)”! 伏せろ!」

 

 だが、サフアグンは私を追撃できずにその場に叩き伏せられた。

 窮地の助けは後ろからやってきた。他の船乗りたちより遅れて船室から出てきた術師の御老体が、階段に居座るサフアグンを見て戦闘用の呪文の巻物(スクロール)に記された呪文を唱えたのだ。いかに頑強な人外の戦士といえど、所詮は脳筋のサフアグン。呪文に対する抵抗力、ことさら実体を持たない、意思に干渉する魔法への抵抗力は低いものだ。

 わずか一つの命令に従わせる呪文。数秒の時間稼ぎといえども私にとっては呼吸を整えるのに大きな時間だ。

 サフアグンの戦士は奥の術者に目をやるが、一旦無視して目の前の私にとどめの一撃を加えようとするが、次の攻撃を見切るために防御を固めていた私はなんとか重撃を逸らし切る。そして再三、繰り出される炎と幻の一撃がサフアグンを貫いた。

 痛恨の一撃(クリティカル)! 防具の継ぎ目、更には鱗の合間を偶然にも抜けて魚肉をじゅうじゅうとミディアムに焼き焦がす音が響く。ギョエエと、サフアグンが例えがたい奇声を叫ぶが、それでもまだトドメには至らない。間違いなく致命傷を負わせたはずだが、あとわずかに削りきれなかった。

 急いで駆けつけた御老体も、今度ばかりは呪文もスクロールの準備も間に合わない。詰んだか、と覚悟しかけたが……階段の上に光る刃を見て、僅かに一歩下がる。

 たった一歩ではサフアグンの戦士の間合いから逃れきれず、奴は階段を降り、安定した船倉の床の上で今度こそ私をトライデントと爪によって確実に仕留めようとした。

 だが、そのたった一歩が乱戦を避けて狙いをつけるのに十分な間合いとなる。

 階段の上、甲板から降ってきた銛が後方の警戒を怠ったサフアグンの戦士の背中を串刺しにし、船倉の床の上に張り付けにした。サフアグンの戦士は何がどうなったか分からないようでその手ヒレ足ヒレをジタバタさせていたが、やがてその手足を地に落とし動かなくなった。

 

「やったぞ! 倉に降りた奴は殺した、あとは登った奴らだけだ!」

 

 とどめを刺したのは甲板にいた船員の投銛だ。上のサフアグンを減らし、手の空いた彼の援護射撃のおかげで間一髪、私は生き残った。トライデントにえぐられた肩に“治癒”をかけ、負傷を回復しながら甲板に戻る。サフアグンが乗り込んできたロープは誰かによって切り落とされ、既に登ってきていた八体のサフアグンも過半数が倒れ、残りも船員が二、三人ずつ当たっている。しかしそのサフアグンも、無事に登ってきた私を見てあのボスの敗北を悟ったのか、縁を乗り越えて海へと逃げて行った。

 助勢はもう不要と知った私は安心して息を吐き、甲板に倒れ伏す船員たちを診て回る術者たちの間に参加した。

 

---

 

 六名の船員が死んだ。他にも私含め沢山の負傷者が出たが、そちらは応急処置だけを済ませ、日ごとに“治癒”をかけてまわり全快に至っている。

 サフアグンとの戦闘で船は大きな損を被った。人命的にも、金銭的にも。サフアグンたちの持っていた装備は回収したが、魚皮の鎧とトライデントばかりで大した売り物にならない、売れても大した稼ぎにならないような武具だ。代わりに、この船のオーナーである商人の旦那の懐から金貨5枚の報酬金が出た。サフアグンの中でも強力だった戦士を倒した私と、トドメを刺した船員には追加で2枚もらった。スクロールを消費した術者の御老体も別に経費をもらっていた……魔法の道具(マジック・アイテム)は高価なので、そちらの方が金額は大きい。羨ましい。

 それはそうと、子どもの身で戦い(既に十分癒えているが)傷を負った私は、着港までの残り数日は呪文以外の雑用を免除された。お嬢様に関する懲罰も含めて。

 

 

「リリン、なんて無茶をするの! 魔法もなしに、モンスターと戦うなんて……せめて私の力があれば、あなたに傷を負わせることもなかったでしょうに」

「自惚(うぬぼ)れがすぎますよ、お嬢様。低級心術師なんぞ雑魚ちらしにしかなりません」

 

 だから報酬を頂いた当日には、早速お嬢様がお話にきた。私の呪文があれば~、などと供述しているが、ビガイラーの低レベル呪文の多くは有効距離が短かったり、そもそも効く相手のレベルが限られていたり、と戦いでは極めて役立て辛いものばかりだ。流石に無茶を言うお嬢様に、以前に言っておくべきだった秘術術者に関する注意も含めて、術者としての立ち回り等をまとめて叩き込んだ。

 そして、襲撃から四日が経った。船員たちの減少や負傷により予定から一日伸びたものの、無事に目的地である開拓地……密林のジャングルが広がる火山島へ到着した。

 

「あなたはこれからどうするの?」

「契約がありますから次の出港にもまた乗りますが、それまでの一ヶ月の間は冒険者を再開します。

 神殿の縛りはきつくありませんから、治療師としても振る舞えます」

 

 元は別種族の遺跡だった場所を占領して港を作り、開拓したこの港村は今や熱帯で手に入る特産物を求める商人たちによって街といっていい規模に発展している。

 また、未開の地に眠る遺跡と財宝があるということで私のように渡航した冒険者も多く、きっと仲間には事欠かない。それに国元を離れた法の緩い土地ゆえに神殿の立場もまた緩いので、ここなら大っぴらに呪文で稼ぐことも出来るだろう。

 

「それなら、また私に魔法の講師をしてくれないかしら」

「そう言われましても……きっかけを与えたので、後は研鑽あるのみ、そちらで勝手に頑張っていただければ。

 勿論、いいお家のお嬢様なんですから無茶は控えてくださいな」

 

 船から出立しようとした矢先、挨拶の合間を抜ってやってきたお嬢様が声をかけてきた。生憎だが、私が出来るのは基(・)本(・)的(・)に(・)は(・)レベルを与えることだけ。

 彼女自身で十分な経験を積み、次のレベルに至るだけに必要な経験点を得なければいけないが、かといって冒険など決して旦那様が許さないだろう。当分 私から彼女にやってあげられることはない。

 

「分かってる。でもあなたなら、私に教えてくれたようにもっと多くの人に魔法を教えられると、きっと冒険者よりとっても素敵だと思ったの」

「ふむ……」

 

 しかし、自分が駄目なら他の人にどうか、という彼女の意見にはちょっと唆られるものがあった。

 実際、可能ではある。あるが、この付与に忠誠心だとか強制力だとかは欠片もないので、このお嬢様のように見返りを得られる算段がなければ私の利益にならないし、与える義理がなければ与えようとは思えない。

 だがこのお嬢様の紹介や旦那様の伝手があればどうだろう。この国では売買が禁止されているから断念した、夢の異世界テンプレ奴隷ヒロインも叶うのではないか。

 

「大陸に戻ったときにまた考えます。手遊びならまだしも、先生を名乗るにはまだまだみっともないもので」

「言ったわね、約束よ!」

「信頼を損なわぬよう努力は致します」

 

 たった1レベル高いだけで先生を名乗るなど、すぐに追い越されたら恥ずかしいのでとても言えない。しかしこの島で経験値と金をどれだけ稼げるかが今後の先行きに反映されると思えば、努力しがいがあるものだ。

 さあて、早速 ここの酒場へ行ってみよう。子どもだからと一見お断りされなければいいが。

 

---

 

 魔法のアイテムは、見ただけでは普通のアイテムと変わりない。勿論、武器防具や飲み薬(ポーション)のように単純に使ってみると鑑定できるものも多いが、物によっては呪いのアイテムだったり消耗品であることを考えると、別名漢鑑定とも言うくらい危険な手段だ。

 魔力の有無は殆どの術者が使える“魔法感知(ディテクト・マジック)”で調べられるが、中身を改めるには“鑑定(アイデンティファイ)”呪文を唱える必要がある。ただしこの“鑑定”、一回あたり金貨100枚する真珠を触媒に消費する。

 ただしそれは一般的な“鑑定”呪文の使い手、秘術術者の話。魔術の神(ボカブ)を信仰するクレリックならば、聖印といった祈りを捧げるアクセサリを代わりに利用して“鑑定”を唱えることが出来る。しかし魔法使いが決して多くない世界で特定の神を信仰するクレリックなど一つの街に一人いるかどうか。やはり希少であることには変わりない。だが術者本人は見つけられずとも、術者が作った巻物(スクロール)は流通に載っていることがある。スクロールは通常、呪文一回分のパワーを書き留める消耗品だが、私が取得している“蔵書人(アーキヴィスト)”と呼ばれる信仰術者クラスは、直接 神格から呪文を授かることが出来ず、呪文の会得法を書に記す必要がある代わりに、信仰系統の呪文であればスクロール等から何でも習得することが出来る特徴を持つ。

 

 

「はい、鑑定終わりました。右から順に変成術の長剣が下級魔法武器(+1ボーナス)のロングソード、中の変成術の長靴(ブーツ)は早足・跳躍の(ブーツ・オヴ・ストランディング)長靴(&スプリンギング)、左の鎧は魔法なしです。

 魔法のアイテムがあったので探知代はおまけして、2個鑑定したので金貨100枚になります」

 

 冒険者が高額な物品を手に入れるとしたら、それは十中八九 魔法のアイテムだ。私は収入の大半を費やし、他の呪文よりも真っ先に“鑑定”を習得した。

 そのため、アイテム一個あたり50金貨で鑑定サービスを行っていても、ウィザードの鑑定屋と比べて真珠の差額でボロ儲けできる。毎日 鑑定依頼が入ってくるわけでないが、それでもこの開拓村では遺跡探索や原住民と諍いの末に魔法のアイテムの遺産が手に入ることも多く、一日平均一つは依頼が舞い込んだ。

 鑑定仕事に一週間徹し、冒険者たちへ顔を繋ぎながらお金を稼いだ。余った時間を“鑑定”や“治癒”のスクロールの自作に徹する。報酬の幾らかは金貨の代わりに重さが嵩張らない宝石で頂いたので、布に包んでそのまま保管する。

 

 そうして一週間かけて、碌な装備も持たない術者から一端の装備に身を包んだ冒険者となったことで、ようやくこの地で冒険を行う下準備を整えた。

 

「何それ、サフアグンの変装?」

「歴とした防具ですよ、鉄防具は重いんですから仕方ないでしょう」

 

 だがサフアグンの戦士が身につけていた鮫の革鎧(シャーク・スキン)を買い戻し、身につけた姿はお嬢様から酷評された。防具としては鎖帷子(チェイン・シャツ)が理想なのだが、あれは私には重すぎたのだから仕方ない。

 




 リリン 人間(human)の女性、ゲシュタルト・アーキヴィスト2Lv/ファクトタム1Lvソードセイジ1Lv
 お嬢様 人間の女性、ビガイラー1Lv

・貨幣の価値は一般に1金貨=10銀貨=100銅貨。ただし両替では基本的に手数料として1割取られる。
 貨幣50枚で1ポンド(=約0.5キログラム弱)なので、ゴブリンの巣などで銅貨の山を見かけても重さの割に価値はしょぼい。
・体一つで旅する冒険者にとって、重さは敵。
 人間の平均である筋力10のキャラクターが負担なく持てる重さは33ポンドまで。これに武器防具、旅の荷物に加えて財宝の重さを計算に入れると余裕でオーバーする。
 後衛に隠れるウィザードですらゴブリンの投げ槍やコボルドのクロスボウを凌ぐため、10ポンドする防具を着込もうと思えば積載に余裕は全くない。
 価格以上の世話や手間がかかっても馬やロバによる運搬を考慮に入れるのは冒険者として当然である。
・ヤードポンド法は悪い文明、破壊したい。
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