※この作品はR-18です。

えっちなダンジョンズ&ドラゴンズもの   作:tbc

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 クトゥルフ神話生物。

 作家ラヴクラフトが生み出した、かつて地球には異形のものがいて、彼らは地上から姿を消して地下や宇宙の果てに潜伏し、眠っているとされた架空の神話物語。

 

「ショゴスは、かつてある地を支配する異形が作り出したほぼ不死の奴隷生物です。

 武器に強く、火、冷気、雷、酸、音波……多くの元素に耐性を持ち、内臓がないため急所がなければ毒も意味をなさず、またトロルのような再生能力を持ち、弱点もないため傷で死ぬことはほぼありません。また窒息、溺死することもありません。

 しかし種別は粘体ですが、例外的に知性ある生物です。かつての支配者が奴らを支配するためか、心術や死霊術への耐性は特にありません。

 優れた術者がいれば心術で動きを止め、死霊術で弱らせることが叶うでしょう」

 

 そんな地球で生まれた架空の存在がどうしてこの地で実体を持っているのか、私にも分からない。

 しかしこんな異郷で地球の怪物に出会うことは偶然ではないのだろう。何者かの作為を感じるし、私の行動が誰かの手のひらの上にあると思うと、とても不快だ。

 ……尤も、転生者である時点で、誰かの作為が入らないわけが無いけれど。

 それが文字通り神か邪神かはたまた悪魔の仕業か。少なくともただの善神の所為でないことは違いない。

 

「古代魚(アボレス)、大目玉(ビホルダー)、脳食らい(マインド・フレイヤー)の類か。

 ドゥエルガルが如何にして奴を手懐けたか、疑問は残るが、突破口は示された。奴らの愚行は奴ら全ての血を以って贖ってもらう」

「だが、我らの同胞、下僕は散り散りになった。取り返すには時間がかかることになるだろう。

 そして我らを解放したのは、忌まわしき聖騎士殿と来た。恥ずべきことだが、まずはそこを解決せねばなるまい」

 

 さておき、救出されたドラウ貴族たちは私の説明を受けてショゴスのことを一種の知性的モンスターであると認識したらしい。

 そんな彼女たちはダークエルフだけあって当然 悪人だ。

 パラディンに助けられて恩義を感じることもなければ、礼を返すこともないどころかいずれ悪行を再開してパラディン様が助けたことを後悔させるだろう。

 確かにドゥエルガルに酷い仕打ちを受けていたが、それで悪から善に改心するほどの出来事とは思えない。私はそう思っていたのだが……

 

「私は物や金のために助けたのではありません。

 たとえ悪人であっても、囚われた人が虐げられ、命が失われることがあってはならない故に手を差し伸べたのです」

「そうだ、無(・)礼(・)を申し出たのはそこの“幽蜘蛛”である。

 ロルスの僕たる我らを救うためにそなたらの助力を求めた……、ロルスの子でありながら何たる恥晒しよ」

(幽蜘蛛(ゴーストスパイダー)?)

 

 後に知ったが、悪人にもまた悪なりの矜持がある。

 クレリックはただ神格に祈りを捧げるだけでなく、神格が持つ概念―――領域(ドメイン)に身を尽くすこともまた力を得る条件なのだ。

 だから彼女らが悪逆非道を尽くすことは手段ではなく目的そのもの。パラディン様から無償の奉仕を受け入れることは、悪の矜持を傷つけ力を弱めることに繋がる。

 タダより高いものはない、というわけだ。

 

「ロルスの忌み子グウェンよ。そなたをイリニダの名において影の国(ドラウの共同体)から追放する」

 

 その代償を押し付けられる形で追放宣言を受けたのは、私たちと共に救出に当たったドラウ部隊の、ローブで姿を隠していた推定秘術師の女性ドラウ。

 今も顔を見せない彼女は、宣告を受けても俯くだけで黙るままだった。

 なぜ彼女に責任に降りかかるのだ、とパラディン様がその宣言に食い下がるも当の被告人が何も言わないのでは話は進まない。

 救われようとしない者を救うことは、いかにパラディン様でも出来ないのだ。

 

 

 そんなドラウの秘術術者を置いて、ドラウ貴族たちは残る戦士たちを全て引き連れて去っていった。

 一団に取り残された秘術術者―――幽蜘蛛グウェンと呼ばれた女性をどうするか困ったが、同行の誘いをかけると口数少ないままに乗ってきた。

 残した子どもたちらと合流し、再び一団はハイローニアスの聖都を目指して北上する。

 

「大丈夫なのかよ、ダークエルフって悪いことするんだろ?」

「パラディン様がいるからきっと大丈夫よ。悪いことする前にとっちめてくれるんだから」

 

 同行するとなっても変わらずローブで姿を隠す彼女に関して、一つ分かったことがある。

 幽蜘蛛……彼女が呼ばれた名は、どうやら「ザカイ」、ドラウのアルビノを指すそうだ。

 アルビノで色素を失ったドラウ特有の黒肌はエルフの白い肌に似通うため、地上へのスパイとして大事に育てられるそうだ。

 しかし彼女の現状はその説話に反している。更に特殊な事情があるのか、あるいは何らかの策略なのか。

 私に関わることではあるまいが、希少なドラウの女性というだけあって心惹かれるものがある。性的な意味で。

 

 

 

「むおおおお! あびゃああああ! おグッ……」

「ガッデム! なんてこった……」

 

 さてドラウのことがあって忘れちゃいけないが、ここは大いなる地下の外縁とはいえ立派なアンダーダークの一角。

 地下のトンネルを跨ぐようにこっそり仕掛けられた落とし穴。それに落ちた斥候のドワーフ戦士を助けるべく降りた私の前に現れるは、大きな甲殻がついた鉤爪腕に、ノコギリのようなギザギザ刃を尖らせたハサミ状の牙を持つ、二足歩行する海老のようなモンスターが4体。

 瞼を閉じたような眼はよく見れば細かい模様があり複眼であることが伺え、そのブツブツ模様が妙に心を煩わせる。

 それもそのはず、このアンバーハルクというモンスターはオーガ並のパワーに加えて混乱を引き起こす凝視の複眼を持ち、罠をこしらえて待ち構える知性も備える地底でもトップクラスの厄介者だ。

 

 哀れ、その厄介者の集団に囲まれたドワーフの戦士はその複眼を見るや発狂し、やみくもに殴りかかろうとして一瞬でタコ殴りの返り討ち、混乱中に上げた奇声が断末魔となった。

 ローパーにショゴスにと様々な脅威を瀕死になりつつも耐えてきたドワーフの戦士の片割れも、流石にパワー型モンスターに囲まれ、不意打ちを受けて生き延びるのは無理だった。私が助けに入ったときにはとうに手遅れで、体の半分がミンチと化していた。

 そんな中に飛び降りてしまった私は、その凝視と爪、ハサミの洗礼を引き続き受けることになる。

 しかしこのアンバーハルク、パワー型といってもジャイアントほどの膂力を持つわけでもなく、凝視と奇襲さえ凌げば後はオーガに毛が生えた程度。

 挟み撃ちにしようが常に防御呪文を張り巡らせた私の装甲を抜くことは出来ず、かろうじて当たった一撃も体力(ヒット・ポイント)の1割削ったかすり傷に過ぎない。

 

「アンバーハルク、錯乱の瞳を持っているモンスターです。覗き込むときは慎重に、いえ、もうその必要はありませんが」

 

 背中でチラつく熱波に気を取られたアンバーハルクを二体、燃え盛るレイピアで甲殻の急所をエグり中から蒸し焼きにすると、残る二体は一瞬で料理された仲間を見た途端にサッと地面に潜って私の視界外に逃げ出した。

 遅れて覗き込んだ仲間たちは無残な姿となったドワーフの戦士を見て、息を呑む。

 残念ながら命を落としてしまった彼だが、幸いにして9レベルに達した私たちパーティは“蘇生(レイズ・デッド)”の呪文に手が届く。

 手持ちの物質要素が足りないため今はまだ使ってあげられないが、聖都にさえ着けば生き返らせることも不可能ではない。

 

「聖都はハイローニアスの、信仰者の本山。蘇生の触媒もきっと手に入るでしょう」

「話を聞くに、現地なら蘇生を施せる術者も少なくないのでしょうがね」

 

 聖都アバロン、東の不浄なる荒野と最北の冷気と影に閉ざされたアイスデヴィルの地を睨む山頂に立てられた都は過酷な大地に鍛えられ、今も挑む聖戦士が多く集うと言われる。

 勿論、尋常ならざるその邪悪な地は様々な財宝、そして名誉を得る機会が眠っており、善悪問わず多数の冒険者たちも集まっている。

 商人の行き交いも激しく、オークの軍勢さえいなければシルクロードを辿り到着していた頃合いだったのだが。

 旅にアクシデントはつきもの、しょうがないことだ。

 

“安らかな眠り(ジェントル・リポウズ)”呪文にてドワーフ戦士の死体の腐敗と蘇生の時間制限を抑えながら、私たちはトンネルを北へ進み、ついに地上の山脈を超えたあたりに立ち入った。

 オークや巨人との遭遇地域を抜けたことですぐに地上に抜ける道を探し、ようやく三週間ぶりに陽を浴びることが出来た。

 寒々とした雪景色も添えて。

 

---

 

 粉雪とはいえ、積もった雪は足を鈍らせる。

 本来の用途での“足袋(スノー・シューズ)”呪文の恩恵を受けた私たちは聖都を目指すが、人里離れた山の麓に獣やモンスターはつきもの。

 早速、ウィンターウルフ―――狼型だが、冷気のブレスを吐く魔獣―――に襲われるが、所詮5レベル相当の格下。

 折角だからと、仲間を説得して少年たちの経験値にした。

 

 2レベル、かつどちらかといえば後衛寄りの少年たちには通常 厳しい相手だが、信仰の加護で幅広い強化を与える“朗読(リサイテイション)”、“意気高揚(イレイション)”、加えて“元素抵抗(レジスト・エナジー)”で冷気への耐性を受けた状態なら殴り合いで五分五分まで持ち込める。

 合間には“治癒(キュア)”や“衰弱光線(レイ・オヴ・エンフィーブルメント)”を飛ばせば、あとは自力でウィンターウルフを退けることに成功する。

 ウィンターウルフは劣勢を悟った時点で逃げ出し、それを追い打ちする余力までは残らなかったので介入したが。

 

 その後 積雪の途切れる平地に下ると街道を発見し、随分と歩きやすくなったが同時にモンスターの目につきやすくもなる。そのモンスターに目はなかったけど。

 

「緑色の竜(グリーンドラゴン)?」

「いえ、もう少し頭が平べったい……アーサックですね」

 

 爬虫類じみた細長い体型(フォルム)に翼を生やしたその姿は、遠目にはグリーンドラゴンに見える。

 しかし緑竜は森林地帯を好むもので、寒冷地の山肌を飛ぶことは滅多に無い。よく目を凝らして見れば、それはトカゲ頭ではなく角の生えたワニ頭を持っていた。

 アーサック、ワニに似た魔獣だが、翼で空を飛び、目が見えない代わりに敏感な舌で音を感知し、音波の槍を撃ち下ろす。さながらブレスを音波に持ち替えた亜竜だ。

 

「アーサックは盲目で、空から音を感じ取って獲物を探し、そのまま空中から振動波を発したり、ひっつかんで上空に攫おうとします。

 鱗はさほど強固ではないものの、体力があり、飛行速度もそれなりに速いことから弓だけで倒すのは大変ですね」

「目は見えていないのですね? では“静寂(サイレンス)”で避けましょう」

 

 地下入りたてに遭遇したデストラカン然り、音を擬似視覚に用いる生物は共通して無音空間内のものを見(・)る(・)ことが出来ない。

 備えの巻物(スクロール)で無音空間を作り出せば、不審に思ったように多少速度を緩めたものの そのままアーサックは飛び越して行った。

 空飛ぶワニを見送った私たちは街道を進み、一晩野営を挟んだ後にまた街道を進む。

 狭い地下では気づかなかったが、広い地上ではドワーフの足の遅さが目立つ。予想より到着に時間がかかったものの、ようやく雪溶けの荒野に立った城壁が目に入る。

 

 城壁の囲いに守られた都市が昼間にも関わらずキラキラと光を撒き散らす様は、まさに光の聖都。

 暗闇に親しいオウレン、ドワーフ衆はパチパチと目を瞬きさせ、特に光に弱いドラウは煩わしい源を遮断すべくフードを目深に被る。

 街に近づいてその百を超える光の正体が、満遍なく街路に吊るされた“消えずの炎(コンティニュアル・フレイム)”の明かりであると気付いた。

 尽きぬ魔法の炎を一つ灯すのにルビーの粉末一握りを必要とし、あれだけの街灯を揃えるには単純計算で一万金貨を投じなければならないだろう。

 秩序属性であるハイローニアス神殿がまさか魔法の抜け道を用いて法の番人の来訪者(イネヴァタブル)の不興を買うわけもあるまいし、盗難や紛失もあるだろう。

 それを賄うだけの財力があるのか、あるいは盗まれても突き止め、取り返すだけの自信と実力があるのか。

 いずれにせよ、善神でも一、二の武勇を誇るハイローニアス神の聖都は名ばかりではなさそうだ。私ら冒険者にとっては富と危険に巡り会える絶好の場所になりうる。

 

 

 さて、そんな聖都の入り口にはただの雑兵(ウォリアー)ではなく、まばゆいオーラを放つ神官(クレリック)か聖騎士(パラディン)であろう実力者が門を通る者を検(あらた)めている。

 ここで困るのが、悪であるドラウが同行者にいることだ。たとえ一見はアルビノでただのエルフに見えようと、“悪感知(ディテクト・イーヴル)”の目はごまかせない。

 まさか置いていくわけにもいかず、街を目前にして一同は協議し、どうすべきか考える。

 

 言うまでもなく誤魔化す選択肢はパラディン様にはない。かといって今すぐ改心させるなど出来ようもなく―――改心しろと脅迫するのは善の行いではない―――善人の研修中、とあまりにもお粗末な言い訳だがドラウの彼女に条件を飲んでもらう。不快そうな表情を浮かべたが、街に入るためと彼女は承諾した。

 しかしその心配はなかった。私たちはもっと強力な悪のオーラを放っているのだから。

 

「その反応……何を持っている!」

 

 守衛はすぐに悪の気配に気づき、声を上げる。しかしドラウの彼女のものではなく、パラディン様の背嚢を指し示してのこと。

 私たちがここへ来た目的である“オルクスの魔杖(ワンド・オヴ・オルクス)”は、そんじょそこらの呪文やアイテムよりよっぽど強力な悪のオーラを発する。

 勿論“悪感知(ディテクト・イーヴル)”によってその強大な悪の気配はすぐに知れ渡り、門の詰め所からわらわらと応援の衛兵がやってくる。

 

 大騒ぎになったが、この邪悪なアーティファクトの破壊を遂げるにはむしろ話が手っ取り早い。

 聖騎士と善神アローナの神官の身分を明かして邪悪な一団でないことを証明したが、事情聴取のために私たちは直接 ハイローニアスの大神殿へ招致されることになる。

 

 

 

 

「“病気除去(リムーブ・ディジーズ)”の呪文は、不浄に病気、魔法により感染した病気の他に、寄生虫……種や卵を植え付ける生物に犯された時にも有効です。

 混沌の次元(リンボ)に棲まうカエル人間スラードがまさにその攻撃の使い手で、取り返しのつかなくなる事態を避けるためにも冒険には病気対策のポーションか巻物を一、二つ常備しなければなりません。

 奇跡を授かる術者であれば日を変えて治療することも可能ですが、異形の古代魚アボレスのように一日も待たずに侵食する特性の前には不準備が命取りとなります。

 秘術呪文の使い手には縁のない呪文であっても、信仰と秘術の異なる魔法系統はたびたび交差し、お互いの共通点、あるいは差異を感じることがあります。

 今は実感できなくとも、いずれ学ぶ機会が来ます。その時に」

 

 パラディン様とエルフ神官、ドワーフ戦士とその関係者が聞き取りを受ける一方、ドラウ、秘術者、そして子どもたち一団の残りは別部屋に軟禁された。善である者とそうでない者の扱いの差だ。

 とはいえガチガチに拘束されてないだけマシだと、暇つぶしに子どもたちに呪文学を教える。

 子どもたちは主に秘術術者で、私は信仰術者。扱える呪文の範囲は異なれど、私の“蔵書人(アーキヴィスト)”クラスが使える呪文は幅広く、魔術師(ウィザード)に通ずる。

 変わり種ではあれど秘術師巫人(ウー・イァン)、ハイエルフのアローナ神官(クレリック)とそれぞれの専門家に囲まれて使う必要は少なかったが、聖都に着き今一度 野良の冒険者をやっていくなら再び希少な術者の役割を求められるだろう。

 私自身への自戒、復習の意味も込めつつ、彼らに呪文と魔法の知識を授けて時間を潰す。

 そこで一夜を明かした翌日、解放された私たちはパラディン様から無事『オルクスの魔杖(ワンド・オヴ・オルクス)』を大神殿に預けたと報告される。

 旅(クエスト)は完遂されたが、今後も協力してほしいと要請を受けたものの、断った。トラブルと臨時収入―――経験点と金に事欠かなさそうだが、今の私は上がったレベルに相応しい装備を整える時間が全く足りてない。

 装備と呪文のラインナップを揃えるのに半月。加えて、子どもたちの面倒も見なければならないのにパラディン様の冒険に付き合う暇はない。

 冒険中に得た財宝や金銭を分配し、亡くなったドワーフ戦士の蘇生にかかるパラディン様御一行withドラウと別れた私は、同じくオウレンにも当面のパーティ解散を告げた。

 

「別行動を取りましょう。

 不本意ながらこの弟子のようなものたちを鍛えねばなりませんし、二人きりになるのも難しい。

 見せつけるのは好みじゃありませんし……」

「むう。分かった、二週間で済ませて」

「それはちょっと。一ヶ月は見てください」

 

 彼女も思うところはあるようだが、しぶしぶ納得させた。

 早々に生活基盤を整えなければ、彼女の欲求にも満足に答えてやれない……そも宿すら取ってないのだから。

 

 旅の仲間たちと別れた私は、子供たちを連れて宿屋を探す。

 大神殿の方を出る間際に紹介された、『熟したエールハウス』なる高級宿を表通りで探すと、 なみなみと発泡酒を注がれたジョッキを象(かたど)った看板を掲げた酒場を発見した。

 そこの二階が宿屋になっており、一部屋5金貨と高額ながらも綺麗に清掃の行き届いた寝室には、この世界では大変珍しい水風呂(シャワールーム)までついており、頼めば洗濯も請け負ってくれるそうだ。

 まるで新しいおもちゃを手にしたように目を輝かせる子どもたちへ警告を与えつつ、産まれて初めて、前世ぶりにシャワーで体を洗い流した。

 旅の垢を落として溜まった疲れがぶり返す中、偉そうな人物になったロールプレイする男子二人を風呂に叩き込む。

 まるで母親のようにタオルでわしゃわしゃと垢する私の体は裸のままだが、その股間にぶらぶらと揺れる象(・)さ(・)ん(・)を見て男子どもは男であったかと誤解するも、特に誤解を解く理由もないので答えをはぐらかす。

 男子二人を今度はベッドに叩き込んだ私は続いて残る女の子の体を風呂に呼び、彼女の肌から髪まで丁寧に洗う。

 “奇術(プレスティディジテイション)”でなめらかに梳かし、乾いた髪を湿らせ、決して十分にも満たないが申し訳程度に身なりをケアする。これくらい呪文一つでパパッと出来そうで、しかしこういうお肌や髪をケアしてくれる魔法や呪文は少ないのだ……魔術師(ウィザード)という輩は真っ先に対人の印象(魅力)を切り捨てている存在なので、身綺麗とは縁が薄いのだ。

 

 風呂を上がった私たちは“ロープの奇術(ロープ・トリック)”で繋がる異空間へ毛布(ブラケット)を引き上げ、そこを寝室にする。

 流石の私も寝ている最中は隙だらけなので、性欲あふれる男の子が強行に及ぶ前に隔離するのだ。

 せっかく街へ着いたのにベッドで休めないのは物哀しいが、彼らが独り立ちするまで多少の辛抱である。

 性術者(タントリスト)の男の子には樹精(ドライアド)を宛がい、呪文準備の行為をさせる。

 

「師匠、私の準備も手伝ってください」

「……そうでした」

「しっかりしてください。師匠しかいないんです」

 

 だが、ここにも性術者(タントリスト)がまた一人。

 召喚術で呼べる竿役はどれも癖が強く、そもそも女の子が相手するのに厳しいガチムチイケメンか、小悪魔(インプ)のように妖精じみた小さすぎるものばかり。

 かろうじてサテュロス、次点でドッペルゲンガーが候補に上がるが、どちらも倫理観に問題がある種族。

 となれば私自身が相手するしかないのだが、オウレンの時と違って私がリードすべき立場にある。

 しかし性技に自信のない私は、弟子、そして女性である彼女へ少しでも見栄を張るためにドーピングに手を出した。

 

「あ、ああっどこ触ってるんです、ひっ」

「そんなことを言って。私を舐めてはいけませんよ……ここか。ここがええんか?」

「いっ、イキますぅ!」

 

“美人の愛撫(ビューティ・カレス)”。肉体と精神、両面の魅力(カリスマ)を大幅に向上させる呪文を施すことで、私は今や彼女の性感帯を容易く掌握した。

 さっと彼女の背筋を撫でるだけで彼女は股をビショビショにし、触れただけで絶頂に導かれた。まさにナデポチートである。

 弟子をあっという間に満足させた私の師匠としてのプライドは保たれた。

 しかし外道に手を出さねば女性をイカせられなかった惨めさで、私の内心はズタボロだ。

 満足し、気絶するように眠った女子の横で私はふて寝した。

 




 リリン 人間(human)の女性、ゲシュタルト・アーキヴィスト8Lvメタフィジカル・スペルシェイパー1Lv/ファクトタム3Lvソードセイジ3Lvカメレオン3Lv
 オウレン ウィスパーノームの女性、ウーイァン6Lvインカンタトリックス3Lv
 子どもA(男の子) 人間のヒューマンパラゴン1Lv/タントリスト1Lv
 子どもB(男の子) 人間のヒューマンパラゴン1Lv/イマージスト1Lv
 子どもC(女の子) 人間のヒューマンパラゴン1Lv/タントリスト1Lv

・全ての神格は自らの霊的方向性を体現する「領域」を複数所有する。領域は神格の性質を縛る一方で、神格が力を振るうための大きなパワーソースにもなる。
 クレリックも同様に信仰する神格が持つ領域を選び、呪文と特典を得ると共に己の信仰の方向性を定めることになる。
 また、パラディンやドルイドのように神格を信仰せず、代わりに領域の概念そのものを信仰する異端のクレリックも存在する。

・アンバーハルク。類人猿とカブトムシの間の子に見えるとも言われる、知性持つ地下の昆虫モンスター。
 大型相応のパワーに加えて、混乱を引き起こす凝視の瞳を持ち、そして罠や地面を利用した待ち伏せを行うなど、奇襲や不意打ちで“事故”を引き起こすことに特化した厄介者である。
 地下に生息する知性的なクリーチャーの中で高い筋力を持つが、巨人の領域には至らず、足は遅いし、混乱の凝視しか絡め手を持たないために厄介ではあるが格別 強力とは言えないレベルである。




オンセニウムが満たされたおかげでだいぶ滞った
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