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簡単な掃除や、1キログラムも無い非常に軽い物体を動かしたり、火花のような手品の幻を生み出したりと……戦闘において役立つものではないが、一つの効果に留まらない利便性はまさに「魔法」の代表格である。
特に、性行為を果たした後でひどく汚れた寝台を、これ一つでシーツごと清掃するのは他の呪文では叶わない。ただし秘術呪文なので、信仰術者や、何故か
「“
よく考えればやっぱり屈辱的、だけど感じちゃった行為の後、私はリベンジを果たすべく寝屋を共にした。彼女の方も自身の特技を活用すべく乗ってくれるのだが、今のところ私の全敗。
厳密な成長計画を立てている以上、
「良いですね。魔法も、
暫くはあなたと共にいようと思います。よろしくおねがいします」
「ぐぬぬ……」
くやしい、けど感じちゃうビクンビクン。
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彼女、オウレンはウィスパーノーム―――“囁き小人”と呼ばれるノームの亜種で、この火山島に住まう少数部族の出だそうな。それに加えて、そこに伝わる独特な秘術を受け継いだ“
どこか耳覚えのあるオリエンタル・クラスだが、これといって東洋との関係は持たないという。性質としては、ウィザードよりも元素エネルギーを用いる呪文の扱いを得意とするが、一方でウィザードの便利な呪文群は使えない、ピーキーなクラスらしい。
「“爆発”! こっち来るな、“爆発”!」
お返事をもらい、ドワーフの集落から帰る道中にまたも森ゴブリンが襲ってくるが、行きと同様にネットで動きを止めようと近づく彼らに《炎の爆発》の連射をぶちまける。一発でゴブリンが吹き飛ぶ様はボーリングのピン倒しのようで爽快だ。
「すごいな、これは。一人でも片付けてしまいそうな勢いだ……いや、待て。こないだのやっこさんまで現れたぞ」
しかし爆音がさらなるモンスターを呼び寄せたようだ。こないだは逃げるしかなかった、
「“爆発”」
冒険の最中に3レベルに達し、《炎の爆発》を習得したオウレンと私による二重の爆撃がオウルベアを襲う。猛り狂い、突撃してくるオウルベアをイレニアが迎え撃ち、その最中にも回避不可の面爆撃が連続してオウルベアを炙る。たまらず逃げ出したその後背をオウレンの“
「オウルベアの肉って食べられますか?」
「難しい、臭い。毛皮だけが無難」
「森ゴブリンは何も蓄えてなかったよ。山側じゃ誰も襲えなかったのかねぇ」
残念ながら財宝の蓄えなど持たない。ゴブリンたちも大したものを持っておらず、仕方なく人数分のネットだけ回収し、オウルベアからは毛皮だけを剥ぎ取った。
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行きに比べて あっさりと港町に到着した私たちはお返事を渡して報酬金を戴き、毛皮や戦利品を売って分配した後 イレニアさんとは別れた。オウレンはまだ私とパーティを組んで、宿も同室を取っている。島から出立する日は近いのだが、彼女はそこまで付いてくるのだろうか。
「ご機嫌麗しゅうございます、旦那様。この島はとても自然に溢れていて、楽しい冒険と楽しい脅威に晒されることに困りませんでした」
十数日ぶりに旦那様へ顔を出した。出港の日取りの確認と、パトロン(候補)へのご機嫌伺いの挨拶だ。
しかし商館はいつもより武装を纏った人が多く、まるで隊商が出発する直前か、でなければ討ち入りする前の雰囲気を漂わせる。
「は、お嬢様が? 角を持つ獣人に攫われた、と?」
それもそのはず、やってきた私に伝えられた情報は親しくするお嬢様が何者かに攫われたという話。
つい先日、開拓村から少し離れた富農のところへ輸出品の話をつけにしようとしたところ、音がしたと思えば護衛が眠らされ、馬車からお嬢様が攫われた。眠りに誘われる直前、護衛たちが管楽器を持つ角の生えた獣人を目にしたそうだ。
「角の生えた、音……心術使い……」
「サテュロス」
「そいつです。
サテュロス。ヤギ足に角の生えた獣人のようなそのモンスターは、バグパイプによって眠りや魅了を撒き散らす
その中でサテュロスは
「今すぐにも森エルフの傭兵を雇って救助に向かうところだったと……対応策として間違いありませんが、心配ですね」
「どうする」
「救助には私も参加します。もう呼ばれたかもしれませんが、イレニアさんにも呼びかけましょう。それとスクロールの買い込みを……あなたはどうしますか」
サテュロスのバグパイプの音色は心を揺さぶる、
「混じる。心術への備えはないけど……」
「入手次第、そちらに
あとは現地調達でなんとかしましょう。攻撃より妨害を意識した呪文用意をお願いします」
一ヶ月と少しぶりの、懐かしく感じられる味方多数の冒険。
今はレベルが上がり、術者の味方も増え、回復以上の選択肢が取れるようになったものの決して楽勝ではない。この世界のモンスターたちとの戦いは、一筋縄ではいかないのだ。
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目覚めた時、私は見知らぬ森の中にいた。そこで素敵な野獣様に出会った。
悪い魔女に醜い姿に変えられた王子様の話を聞いたことがある。素敵な口ぶりで私を口説く彼は、きっとそうなのでしょうと思った。
彼が自らにかけられた呪いを解くには、女性と体を重ねなければならないと言う。もし呪いが解けた時はぜひ 私を国に招待し、次の王妃様にしたいと言っていた。
私は夢のような出会いに心惹かれ、彼を求めたいと思っていた。
でもそんな蜜時は、野蛮なオークの一団によって引き裂かれた。そして王子様は、それを見て真っ先に逃げ出した。
私にかかった魔法は解けた。私が感じていたロマンスは、文字通り魔法による夢だった。
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「“爆発”! この森には! “爆発”! ゴブリンが!
“爆発”! 多いんですよ!」
旦那様が雇った森エルフの一団と、精鋭の
追跡のスペシャリストたるレンジャーのイレニアさんを再び呼び込めたのは幸いだった。彼女いわく、二本足のヤギの蹄の跡はとても区別しやすく、時間はかかるが問題なく後を追えそうだという……その時間が最大の問題なのだが。
地面に注視しながら後を追おうとすると、当然 移動速度は落ちる。お嬢様を連れた状態ではサテュロスも動きは制限されるだろうが、それでも距離によっては一日かかるだろう。
サテュロスがお嬢様を攫った目的はまあ、碌でもないことに違いない。サテュロスは
「ネットは高く売れる」
「時間を急ぐ必要があるこの状況では喜べませんね」
なお、今回襲ってきた森ゴブリンはリーダーと思しき斧持ちの精鋭が混じっており、傭兵たちの数人が倒れる被害を受けた。
その治療にリソースを費やしたことで、強行軍の疲労解消も含めてどこかで休息を取る必要が出てきた。ただでさえ押している時間が更に伸びることに。
「旦那様には申し訳ありませんが、不幸な知らせを持ち帰ることになりそうですね……」
「いや、良い知らせともっと悪い知らせがある。どちらから聞きたい?」
「良い知らせをどうぞ」
「お嬢様と思しき足跡が増えた。サテュロスたちはこのへんで休憩を取ったようだな」
「では、ここにお嬢様が見当たらないのがその悪い知らせの中身ですか」
「新たに多数の人の足跡が増えた。サテュロスの足跡だけが別方向に向かい、お嬢様の足跡はその人の足跡に混じっている」
「はぁ」
だがここに来て新たな災難にぶつかった。なんとお嬢様はサテュロスではなく別のなにかに攫われたようだという。
貞操の危機が遠ざかったと喜ぶべきか、より死の危機が近づいたと悲しむべきか。
「人と同じ程度だな。靴も履いている……いや、この作りは見覚えがあるぞ。オークのものだ。人数は十前後」
「オークだと!あの品性の欠片もない輩がまた我らの邪魔をしたのか!」
「奴らの残った目も
「……オークって人を食べましたかね」
「おおむね、食う」
お嬢様の行く末は暗いが、嘆いてばかりもいられない。
一方でオークと聞いて血気だつエルフたち。エルフとオークは古来より確執があり、互いを旧敵としている。標的は変わったが、この様子だとエルフたちも追跡し続けるのだろう。彼らの戦意が高いことは良いことだ。
「休息を取りませんか。オークとの激戦を控えるなら、万全の調子で挑むべきです」
しかし、士気だけでは戦い続けられない。
戦いを控える上で、流石に呪文リソースはしっかり回復したいと申し出た。エルフの一団に
明日に予想される激戦を控えて、私は数少ない選択肢の中から呪文を考える。オークの群れはゴブリンや狼以上の脅威を持つ、私の準備できる範囲内で出来ることはあるだろうか……。
(えっちしよ)
(いやです)
なおオウレンは体を合わせたがっていたが、流石に人目のある場所で恥ずかしい真似は出来ないと拒否した。
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「野営を挟んだな。敵は近いぞ」
「お嬢様は見当たりませんね。骨一つ残さず死んでないことを祈りましょう」
木の根で起伏激しく、生い茂る木の葉の天井と木陰が日差しを遮るジャングルを進む。
私に出来ることを探した結果、少しでも追跡速度を早めることが状況を改善するとイレニアに“
そして追跡開始から5時間、昼を過ぎた頃にオークの一団の姿と接敵した。大人数だったのと、また少々の荷物で速度が落ちた差がもたらした成果のようだ。
「ひのふの……二十超えてますか?」
「二十三匹だ。二、三匹手強い奴がいる、覚悟しろ」
『高く止まった耳長が我らの後背を追ってきたぞ!』
『殺されに来るとは、お望み通り我らの刃を飾る錆にしてやろう!』
だがこちらも相手ほどではないが大人数、既にあちらにも発見されていた。彼らも荷物をおろし武器を抜き始める。
距離を詰められる前に森エルフたちが弓の連射を開始する。当たりどころの良い数本がオーク一、二体を昏倒させるが津波のように押し寄せる彼らの数は減らない。
「奥に荷物運びが残っていますね。お嬢様がいるとしたら、あっちか……私は奴らの後ろに回ります。
仮面さんはここに、皆さんはオークの主力をお任せします」
「ん。派手に引きつける」
“
オークたちとすれ違い、後ろでは爆炎が上がるが振り向かずにひた走る。既にオークの群れを越え、荷物の姿が見えている。手押し荷車に乗った食料、ずだ袋を肩に背負って戦場を離れる荷物持ち、一際 強そうなオークの精鋭
部下に怒鳴り、指揮を取っていた精鋭が手を止めて怪訝そうにこちらに振り向く。姿は見えなくとも私の近づく足音は隠されていない。足元を注視すれば土模様から位置も見破れるだろう。
『何かが来たぞ! 姿を隠す臆病者のネズミが来たぞ!』
オーク語で叫び、敵の接近を告げるバーバリアン。私は燃え盛る炎をあげるレイピアでそいつに切りかかり……
『馬鹿め、姿を隠したところで当たる俺ではな……ぐぅっ!?』
「“エメラルド・レイザー”。不意を突くだけが私の剣ではない」
しかしバーバリアンはまるで見えているかのように躱そうとする。バーバリアンの“直感回避”―――大自然の中で鍛えられた直感は、完璧な不意打ちも避けられるのだ。
だが私の剣も従来の剣ではない。その回避運動を承知の上で先読みし、バーバリアンが身につける
前日に4レベルに達し、新たな“
「まあ、倒しきれないか……」
『不可思議な剣技を使う小娘よ、蜂のように鋭き針、よくも我が鎧を貫いてくれたな。しかし俺を殺すにはあと十刺しは要るぞ!
敵を殺す一撃とは、こう振るうのだ!』
尤も、サフアグンの戦士に対して以前示した通り……この世界のモンスターたちは一撃二撃の刃では倒れてくれない。ことバーバリアンは防御より体力に重点を置いた戦士クラス。奴らを殺し切るには致命傷を三度打ち込む必要があるだろう。
加えて、一撃を与えたことでかけてもらった“透明化”が解ける。この幻術は他者に直接 害を与えると勝手に解けてしまうのだ。これにより、バーバリアンの精鋭の目の前、また周囲に多くのオークたちが見つめる中に私一人が残された。
当然のごとく反撃として、縦に振るわれる斧。
バーバリアンの尋常ならざる腕力は見てからでは避けられない速度と理力を持つが、不思議なことに私に当たる直前で見えない何か妨げられ、僅かに速度が落ちる。
その僅かな間に私はバーバリアンの側面に回り込もうとするが、それよりも早く、強引に守りをぶち抜いた斧が右肩に迫る。
鎧に食い込み、皮を切り裂こうとする斧。
だが斧はそこで威力を失う。まるで第二の鎧があるかのように。
目をみはるバーバリアン。レイピアを引き戻す私。尖剣の先に再び炎が灯る。
「“エメラルド・レイザー”!」
第二撃が兜と胸当ての隙間、首のど真ん中を貫く。
どす黒い血がゴポリと穿孔から漏れる。再度レイピアを引き抜けば、力の抜けたバーバリアンが白目を向いてドサリと地に倒れた。
バーバリアンの本領は
「さあ、お前たちはどうする雑魚オークども。運が良ければ一撃当てられるぞ」
最大の敵だったバーバリアンを倒した今、ここにいるのは1レベル
だが、彼らは撤退よりプライドを選んだようだ。
「“爆発”」
そんな彼らを吹き飛ばす《炎の爆発》。炎属性、少範囲の通常攻撃と言ってもよいこの特技は雑魚散らしにこそ最も活きるものだ。初撃で挟撃の片面を散らし、片面を素で凌いでもう一爆発をかませば、かかってきたオークたちは全て吹き飛んだ。
敵が残ってないことを見回し、エルフたちの趨勢を見るが向こうも既にオークのリーダーを残して片付いているようだ。そのリーダーもドルイドの唱えた“
「あちらはもう大丈夫ですね。……お嬢様、ご機嫌いかがですか? 良いわけはありませんね」
エルフたちは放っておいて、ひどい有様のお嬢様を助けに入る。逃げられないよう手と腰をロープで縛られ、荷車に繋がれ一晩歩かされた彼女は服も顔も汚れ、疲弊していた。
少しでも二晩の疲れが取れるよう“治癒”をかけ、ロープを切っていくと彼女は泣き出して私に抱きついてきた。
「うぇえええん」
私より大きな背丈で胸元に泣きつく彼女を、よしよしと背を叩いて慰めた。
まもなくエルフたちが合流し、とても歩けない様子のお嬢様を見て 野営の準備を始めてくれた。
リリン 人間(human)の女性、ゲシュタルト・アーキヴィスト4Lv/ファクトタム2Lvソードセイジ2Lv
イレニア ウッドエルフの女性、レンジャー3Lv
仮面さん(オウレン) ウィスパーノームの女性、ウーイァン3Lv
・エルフはご存知耳長のすごくつよくてかっこいい人型生物。しかしD&Dにおいては体力が低い代わりに敏捷力が高いだけで、トールキンのような万能種族ではない。
睡眠が不要な代わりにトランスと呼ばれる瞑想を行う。他、心術に耐性を持ち、目と耳がよく、剣や弓を例外なく使いこなす等の特徴を持つ。
ウッドエルフはエルフの亜種で、上記に加えて知力が低いが高い腕力を持つ。グレイエルフという筋力が低いが高い知力を持つ亜種もいる。
・オーク。イノシシ面ではあるが別に豚頭ではない。ものすごく高い腕力を誇り、オークのバーバリアンといえば最強の戦士である。
しかし頭は悪く、オークの術者は非常に少ない。彼らは侵略癖を持ち、侵略した土地の人間に子を産ませてハーフオークを作ることがある。
そんなハーフオークはオークよりマシな術者の適性を持つため、彼ら部族の
・アーマークラス。ACとも略され、鎧や盾、モンスター頑丈な皮膚、敏捷性やクラス能力により高まった防御力による攻撃の「当て辛さ」を表す。
一定の手段以外からの物理ダメージを減少させる「ダメージ減少」というまんまの特殊能力もあるが、こちらは主にモンスターの性質や魔法による防護でしか得られない。