※この作品はR-18です。

えっちなダンジョンズ&ドラゴンズもの   作:tbc

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 まだ日も高いうちに焚き火を取り囲み、休息を取る森(ウッド)エルフと私たち。その傍らにはオークたちからの戦利品、沢山の武器防具と貨幣の一部が積まれている。載り切らないものはエルフたちが個々人で背負って運搬している……私たち非力な術者組は手ぶらなのが少しだけ申し訳なく思う。

 そんな戦利品の山と共に救出されたお嬢様は、焚き火に背を向けて毛布(ブランケット)に包まりすやすやと寝息を立てている。呪文で体の疲労と傷は癒やせても、心の疲れは溜まっているのだ。それに半端に癒えたまま残る擦り傷も沢山残っていて、一生残るこれらは女性には手痛いダメージだ。大事な貞操が守られたことを幸いと思ってもらうしかない。

 

「本当に無事で良かった」

「ああ、傷物は避けられないと思っていたが取り返しのつく傷で済んだのは幸いだ」

 

 この度の依頼(クエスト)の感想を交わす。お嬢様はとても不幸な目に合ったが、この世界的にモンスターに襲われることは珍しいことではない。動物なら可愛いもので、罠を張るゴブリンなら面倒臭く、それ以上のモンスターに当たれば逃げられることを祈るばかりがこの世界の住人の大半だ。突然 赤龍(レッド・ドラゴン)が飛来して死ぬか必死で抗うかの二択を突きつけられることは、本当に珍しくないのだ。サテュロスなどほんと可愛いものよ。

 安らぎをもたらす静寂が木陰に満ち、子守唄の幻聴の下で穏やかに一眠りしたくもなるクエストインターバル。帰るまでが遠足なのだから、ここで一休みしよう……

 

などと考えるのは危機感が足りてないと言わざるを得ない。

 

「ファッキンガイ!野郎ぶっ殺してやる!」

 

 子守唄は幻聴ではなかった。管を吹き抜ける音色を耳にしてすぐさま巻物入れから“保護(プロテクション)”のスクロールを引っ掴み、冷たい鉄(コールド・アイアン)製ダガーを抜いて音源にかっ飛ぶ。

 ヤギ足の獣人の姿がすぐに見えた。奴は慌てて逃げ出そうとするが木の根に足を取られ、一方で風のように障害物を踏み越える私はあっという間に距離を詰める。

 またたく間に炎を纏う冷たい鉄の刃がサテュロスを血祭りに上げた。

 

 有言実行。だがお嬢様の知らぬところで不埒者を殺してしまったことに気づく。とはいえ不意打ちという性根悪い手段を取った相手に与える慈悲などないのも正しい。

 生かした方が金になっただろうか、と若干 省みつつ まんまと“睡眠”に陥っているオウレンを蹴り起こした。

 

---

 

 旦那様はお嬢様の姿に一喜一憂といった様子だったが、私たちの仕事ぶりにケチをつけることはなく、むしろ森エルフたちを商船の護衛に加えたいと申し出た。

 しかしイレニアさん含む当の森エルフたちは水の上の仕事が不服だと断った。好んで逃げ場のない水の上に行きたがる陸の民はそういないということだ。

 

 そんな商船で私は再び術者を務めている。オウレンは私に付き合って船に乗ったが、彼女は船上で特に役立つ呪文を覚えていないため、金を払って正規の客として乗っている。若干 申し訳ない気持ちもあって全額を支払った、この間のオークの戦利品はエルフたちと山分けしてなお金貨一千枚近い収入となり、船賃の支払いは一割にも満たない。これだけで半年は遊んで暮らせるが、これを元手にさらなる力を得るのが冒険者。

 レベルアップにより、呪文の回数と質の二つが上がったことで私は行きよりも多くの水を樽に満たせるようになっている。賃金は据え置きだがノルマもそのままなため、戦闘、非常用に振り分ける呪文の余裕ができた。今ならサフアグンの群れの全てを……とまでは言えないが、危険を冒さずに撃退できる。

 

 

「……ッ、……!」

「…………♪」

 

 尤も、変わったのは私の能力だけではない。この島の冒険を経て、私はオウレンという仲間を良くも悪くも得てしまった。彼女は初対面の無愛想さが嘘だったかのように、積極的に私へアプローチをかけてくる。わずか100平方メートルの広さしかない船の中にも関わらず。

 彼女が持つ《Tantric》特技を発動させるためには二十分の性交が必要となる。客に充てられた船室内で人目を避けることはできるが、音はどうしたって漏れる。無音空間を作り出す“静寂(サイレンス)”呪文の備えはあるが、今の魔力では五分も持たず、バレずに彼女を満たすことは不可能だ。

 

「ぷはぁ……もっと可愛いとこ見せて」

「だ、ダメです。呪文 解けてますから、もう今日は終わりです。続きはまた明日」

 

 それでも我慢できないという彼女の訴えに、わずか五分間で着衣越しに事を済ませるという約束でしぶしぶ納得させた。内面的には男に近い私が純粋な女性の彼女からガッツかれている、なんとも納得しがたい現状である。まんざらでもないけど。

 

「陸についたら、一杯可愛がろうね」

 

 約束の時間を超えても行為を続けようとする彼女を止めて、今日の逢瀬を終える。出港から数日、騒ぎは鮫が船に近づいたくらいのもので至って平和だ。

 

 客室はオウレンに割り当てられた部屋なので、出るのは私の方。

 乱れた衣装を整えて、“奇術(プレスティディジテイション)”で汚れを払い、扉を引いて出たところで別の客と鉢合わせる。

 

「あ……と、失礼」

 

 短いながらも性交の直後でノボせた頭では、一瞬 客か船員かの判断がつかずに立ち呆けてしまった。

 

「大丈夫ですか? 何か不調でもあるのでしょうか」

「いえ、心配は無用です。癒(・)や(・)し(・)手(・)の不養生など、笑い話にもなりません」

 

 しかし金髪碧眼のハーフエルフで、秩序にして善(ハイローニアス)の聖印を首に提げ、滑らかな生地を糸の目立たないよう綺麗に仕立てられた服を着る、いかにも生まれ育ちの良さそうな雰囲気を漂わせる青年をまさか船員と間違えるはずがない。

 彼はオウレンと同じく客として乗船するハーフエルフの“聖騎士(パラディン)”だ。アルベルトと名乗っていたはず。

 パラディンは他のクラスと異なり規則を持つ―――権威や法を敬い、助けの求めに応じる、秩序と善を守るものの規範とならなければならない。立ち居振る舞いからは優しさと厳しさが感じ取れ、パラディンか、それに準じる厳格な戦士であることが察せられる……もしそうでないとしてもよほどの演者、実力者には変わりないのだ。厳しい道を進む者への尊敬と警戒して注意を払うに値する。

 

「この船の癒やし手を務めている話でしたね。その歳で一仕事を任されるのは大したものです」

「魔法しか仕事がないのですよ。腕に覚えはありますが、大人を差し置いて立てるような実力でも、見た目もありませんから」

 

 どこかデジャヴュを感じる会話だ。同じハイローニアスの聖印を掲げているし、あの一月前のお姉さんと繋がりがあっても不思議じゃない。が、本物のパラディン相手の会話やりにくい。なんせ秩序と善の使徒様は交渉術に長けるし、悪を見抜く目を持っている。戦闘面においても高い呪文抵抗力と耐性を持ち、下手な絡め手は通じない防御面トップクラスを切り崩すのは非常に難しい。

 だがまだ戦うと決まったわけではないし考えるのは早い。パラディンの務めの一つに、善の模範を示して悪を改心させることも含まれているが、幸い私は悪(イーヴル)ではなかったので目をつけられはしないだろう。

 

「たとえ腕に自信があると言われても、子どもを前に立たせたいと思う大の大人はいません。

 本当なら、危険が存在する場に立たせることも避けるべきですが……」

「危険な場こそ魔法を奮う一番の機会です。それにこの船に乗ることを船の主(旦那様)に認めてもらった以上は。他者にそこまで言われる筋合いはありません」

「でしょうね。それにこの私がいる限り、みすみす危険に晒すことは許しません」

「勇ましいことですね。その言葉が真実なら頼りにさせてもらいます」

 

 軽い会話を交わすうちに、やがて客室から彼の道連れ―――森と狩猟の神(アローナ)の聖印を掲げるハイエルフの美しい女性が迎えに来た。金属品を徹底的に排し、皮や木、植物による装飾を身に着けた様子は森司祭(ドルイド)に見えるが、ドルイドとレンジャーの神たるアローナの神官(クレリック)もそのような装いを好むため一目では分からない。

 

「アルベルト、このようなところで何をしているのです。女性に声をかけて、もしや?」

「ヴィリル様、そんなことはありません。私はただ……」

「その通り、彼はよろめいた私を気になさっていたのです。そのような不埒なことはありませんでした」

 

 彼女たちエルフは年を重ねても見た目が変わらないことで有名だ。長命種同士では、彼らが持つ独特の生気を感じ取って年齢の判別がつくそうだが、人間には難しく推し量ることができない。

 だが見た目や生気以外でも判別のつく要素はある、彼女の口調だ。エルフ種自体が落ち着きのない(混沌属性の)傾向を持つものの、気にしている男性の周りを心配する彼女は若い。おそらくエルフの成人年齢(110歳)に近い歳だろう。

 

 しかし私が彼女を観察しているうちに、彼女も私を見返している。オウレンとの短い事後で崩れた調子を彼に対する興奮とでも勘違いしたのか、口ではアルベルトを責めるもののその視線は私を過剰に警戒している。男性を好く気がないので無用な心配なのだが。

 

「あら、そうでしたか。では、次からは気をつけなさい」

「アルベルトさん、それにヴィリルさん、どうもご心配をおかけしました。失礼します」

 

 私は人に定められた命を超えて転生した身なので、善なる彼らに問われたとき自らが潔白とはとても言い張れない。それにこの船が到着したらもはや会うこともないだろう、そう思って私は彼、彼女との関わりを避けようとした。

 しかしこの世は犬も歩けばドラゴンに当たる世界。案の定、またもこの船は襲われ、彼らと関わることとなる。

 




 リリン 人間(human)の女性、ゲシュタルト・アーキヴィスト4Lv/ファクトタム2Lvソードセイジ2Lv
 オウレン ウィスパーノームの女性、ウーイァン4Lv

・フェイ。自然と強く結びついた種族で、自然を利用したり、あるいは心術系の呪文を用いて自然を侵すものに攻撃を加える。
 他のクリーチャーに比べると肉体能力は低いものの、動物を前衛として味方につけ、自身は援護や撹乱に回ることも多い。
 またフェイや混沌属性の種族の中には、冷たい鉄(コールド・アイアン)と呼ばれる特別な金属で出来た武器でなければダメージを軽減する性質を持つことがある。それがD&D世界における、「妖精は冷たい鉄を嫌う」という伝承の所以である。
・属性。ここではアライメントと呼ばれる、個人の倫理観や人生観の傾向、人となりを指す。
 属性には善と悪、秩序と混沌の二つの軸があるが、詳細は省く。属性はあくまでキャラクターにとっては方針なのだが、ゲーム的には属性から力を得る手段がある。
 バーバリアンのように混沌の爆発的なパワーを得たり、モンクのように秩序的な修練により鍛えられた回避力を得たり、パラディンは秩序にして善の規則を守らねばならない代わりに悪に対する特攻能力などを持つ。
 力を得るために属性を選ぶプレイヤーは少なくないが、属性はそう簡単に変えられるものではなく、変えられるべきでない。そもそも数値に限界がなく、強者の境地の果てに辿り着く前に寿命が来るこのD&D世界では、徹底的な自己の存続よりも己が何を為すかが求められる。
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