※この作品はR-18です。

えっちなダンジョンズ&ドラゴンズもの   作:tbc

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指輪物語的な

21/08/02 姉と妹の名前がごっちゃになってたので訂正 姉の名前書いてなくない?


5-1

 パラディン様のありがたいお誘いを、私はその場できっぱり断った。誰が好みでもない厄ネタを持つ相手に好んで付いて行くか。

 

「ま、待ちなさいオウレン、息が……ひぐっ」

「……♪」

 

 幽霊船の襲撃を凌ぎ、ようやく港町に戻った私はオウレンと共に二人部屋の宿を取り、溜まった不満を爆発させた彼女の求めに応じた。

 そう、爆発した彼女の性欲をぶつけられた私は蹂躙され尽くした。《Tantric》により性的エネルギーを供給する上で、きちんとお互いに交わり、エネルギーを循環しなければならないのだが、私の体力がバテた後半は完全に一方的なエネルギーを失うだけだった。

 まあ、私の性技が未熟ゆえに彼女を満たしきれないことにも問題はあるが……そこは趣味にパラメータを割いているオウレンと、戦闘面へガチガチに割り振っている私の違いだ。

 

「ぜぇ、ぜぇ……お、覚えてろ……いつかやり返すからな」

「是非、楽しみにする」

 

 尊厳を取り返すには、やはりちんこがないと無理だ。そう、ちんちんさえあれば優位に立てるのだ。しかし材料費三千金貨の余裕が出来るのは遠い未来になるだろう、おのれ、おのれ……。

 そんないざこざの後、身だしなみを整えた頃に訪問があったが、またも例のパラディン様だった。

 即座に断りの返事を入れようとしたものの……ある人物が同行していた手前 断り切れず、とんでもない厄介事を聞かされる羽目となる。

 

---

 

「私はこれをあるべき場所に納めるか、砕かなければいけないのです」

 

 アーティファクトというアイテムがある。魔法であるか否かを問わず、現在の定命の人の手で作ることが出来ない遺物、オーパーツのことをそう呼ぶ。

 その中にまた下級(マイナー)、上級(メジャー)アーティファクトという区切りもあるが、基本的にアーティファクトと呼ぶのに性能の大小は関係ない。例えばピストル一丁がこの世界に持ち込まれても、この世界の知識や技術、素材では到底 生産できないためアーティファクトと呼ばれるだろう。

 ……作ろうと思えばその銃火器(アーティファクト)を私は作れるのだけど、それはこの際置いておく。

 

 そんなアーティファクトのうち、名実ともにアーティファクトと呼ぶに相応しい一品が私の目の前に存在した。

『オルクスの魔杖(ワンド・オヴ・オルクス)』。先端に頭蓋骨を据えた金色の杖は、悪魔の貴公子(デーモン・プリンス)オルクスが持つはずの唯一無二の上級アーティファクト。武器としても強力な魔法の力を秘める上に、その杖で触れた相手に容易く死をもたらす効果を持つ。

 本来 創造主であるオルクスが手にする武器だが、彼はなんとはた迷惑なことに人の世界にこの落とし物をすることを好むという。簡単に人を殺害してまわり、争いを招くそのアーティファクトは厄介なことに人の手で決して破壊することが出来ない。善神のお膝元の神聖な泉に浸すとか、ドラゴンの最長老のブレスでなければ焼ききれないとか、神話に語られる手法を取ることでのみ壊すことが出来る―――オーバーパワー相応のオーバーな冒険、ようやく低レベルから抜け出した程度の私の手に余るのは言うまでもない。

 

「その重大性は分かります。私も秘術を齧るもの、神秘の深淵に近いアイテムの一つに多少興味を惹かれますが、あくまで興味だけ。

 生きている強大な悪魔(アーク・デーモン)がずっと目を光らせているだろう、そんな物に関わりたいとは思いません」

「ですが、これをど(・)う(・)に(・)か(・)出来るのは、私たちしかいないのです。

 この邪悪なアーティファクトを人の手の届くところに置いておけば、デーモンの悪意による混乱と破滅がこの地に呼び込まれるのです。

 先日ご存知の通りオルクスの手の者が現れたように彼らはこのワンドを求めて次々とやってくる……それをなんとしても回避しなければなりません」

「だから、そこで何故 私の助力を乞うのですか。先日言ったでしょう、大人を差し置いて立てるような実力ではないと。

 秘術が必要なら、『象牙の塔』の魔術師でも尋ねれば良い。それとも何か、私でなければならない事情があると」

 

 が、だからといって誰が神に等しい相手に立ち回れるのかといえば、そんな人間もそうそういないのが事実。いたとしてももっと厄介事を抱えていたり、自由に動ける立場でないのが常だと、偉い魔術師が記していることを私は知っていた。この世界は、プレイヤー……才能あるキャラクターが無理を承知で偉大な任務(クエスト)を果たさなければならない構造なのだ。それが成功するか失敗するかは別として。

 そんな失(・)敗(・)の影響に巻き込まれることを恐れて、脅威から逃げられるだけの力を得ようとしてるのに、それで当の私が任務(クエスト)を課されては本末転倒だ。

 

「“神託(ディヴィネーション)”を受けたのです。これから向かう先に待ち受ける脅威において、小さな術師が助力となるだろうと。

 今、あなたの力を借りることが私たちの旅に必要なのです」

「ああっ、もう……神ってやつは!

 まあ、理由はそれでいいでしょう。ですが私はタダでは動きません。

 目的、期間を定め、危険に値する十分な報酬がなければお断りします」

「それ次第で助力してくれるのですね」

 

 だが実際、彼らの言うとおりこの地に破滅が訪れれば、逃げる間もなく死ぬだろう。街を軽く滅ぼせるクリーチャーや魔法の儀式は数多く……そのうちの一つがどこか起こらないと思う方がおかしいほどに豊富な種類がある。

 それなら神託を受ける彼らに力を貸した方が、大変ではあるけど神の加護を受けられるだけ安全だったりする。なんだかんだ言って信仰呪文を用いる私としては、神様を無下にできないこともあるし。

 結局、私はパラディン様に力添えすることとなる。しかし勿論タダでは転ばない、報酬の交渉も行う。

 

「金貨一千枚をそ(・)れ(・)だけと言うのなら。

 全額を貨幣で支払う必要はありませんが、少なくとも半分は金貨で要求します。

 もう半分は相当品で構いませんが、権力や名誉といった責任や負担の大きいものでの支払いは受け付けません。

 あなたにそれらの支払いを用意出来ますか?」

「ハイローニアス神殿は、そのクエストを支援すると決定した。

 必要なものがあれば私に言ってほしい、限度はあるが用意する権限を持っている」

 

 そこで口を割りこませたのが、私がパラディン様の訪問を断れなかった一因の、聖印を首に提げる女性神官―――私に海を渡る仕事を紹介してくれたあの戦士っぽいお姉さんだ。

 この街のハイローニアス神殿はパラディン様のクエストを支援すると決め、彼女はその代表者になったらしい。

 陸鮫(ブレイ)に狩場を荒らされ、燻っていた私が大きく成長するきっかけを作ったのも彼女だ。その彼女がパラディン様を助けるというなら、借りを返すために私も助けなければいけない。

 

「では遠慮なく、報酬に五百金貨、少なくとも百を前金で望みます。

 それと完全充填(フルチャージ)の“治癒”の短杖(ワンド)に加えて、可能なら“下級回復術(レッサー・レストレーション)”のスクロール……クレリックでなく、パラディンの書いたものを」

「遠慮がないな。スクロールは探してみよう、しかしワンドを要求するなら金の方は減らせないだろうか。

 あれは金貨七百枚するものだろう」

「それはパラディン様のクエストの最中にも使うので、必要経費です。報酬はまた別に戴きますよ」

 

 だがそれはそれとして金銭交渉を行い、“治癒”呪文を込めたワンドと幾つかのスクロール、それと金貨百枚の前金をせしめた。オウレンの分もこれに含むのだが、ワンド代が浮いて余裕ができた私の手持ちから出す。金貨七百枚に比べれば、三百金貨くらいは安いものだろう。

 

「リリンさん、よろしく。……いや、これから長い旅になるだろう、今のうちにリリンと呼んでもいいかな。

 君も私のことをアルベルトと呼んでくれて構わない」

「ご自由に。私も勝手に呼ばせてもらいますパラディン様」

 

 私が仲間になることを承諾し、パラディン様は頷いてまた明日 旅の打ち合わせをしようと言って部屋を去っていき、後には戦士のお姉さんが残された。彼女は彼女で別に話があるようだ。

 

「たった一ヶ月で見違えたな。ハイローニアスの託宣を受けたパラディン様と交友を深めるのもそうだが、魔法の力量も伸びたようじゃないか。しかし……“詩人(バード)”ではなかったのか?」

 

 どうやら、何かしらでお姉さんは私がバードでないと知ったようだ。使える呪文レベル、使った呪文幅、あるいはそれ以外の要素から判断することはたやすいだろう……そもそも一切呪歌(まがうた)を歌わないバードなど普通にありえないのだから。

 でも、今の私は5レベル。酒場に屯(たむろ)していた冒険者たちと並び、あるいは超え、攻防ともに成長し、並の相手なら撃退できる。バレたところでもはや怖くないと、私は強気になって彼女に正体を明かすことにした。

 

「バードのように、神秘的に技術を用いるもの、とは言いました。

 実際、私が修める魔法は……“蔵書人(アーキヴィスト)”と言い、信仰の奇跡や伝承を書に収め、記録し、学び、技術的に呪文を用いるウィザードに近いものです」

 

 背負い袋から祈祷書(プライヤーブック)―――アーキヴィストがその日の呪文を準備するのに必要な、信仰呪文を編纂した呪文書―――をパサパサと見せて伝える。

 そこには“治癒”や“祝福(ブレス)”などクレリックが用いる呪文が大半だが、ボカブに仕えるクレリック専用の“鑑定(アイデンティファイ)”、ドルイドの“樹皮(バークスキン)”呪文が記されたページが混じっている。

 

「聞いたことがないな。まさか信仰の奇跡を盗む“原初の神官(ウルプリースト)”に近いものか?」

「いいえ。主な呪文は信徒に寛容な魔術の神(ボカブ)から授かっており、それ以外の呪文にしても元々の術者と同様の心構えを持った上で神から授かっております。

 ドルイドであれば自然を尊重、あるいは畏敬する心を、パラディンならその秩序と善と『聖騎士道』への理解を十分に学ばねばなりません……が、このへんは言葉だけでは示せませんね」

 

 アーキヴィストは結局、その元々の信仰呪文を授かった術者と同じように信仰を理解する必要がある。クレリックのように一柱や幾つかの限られた概念に強い信仰を向ける必要はないが、ちょっと呪文を使いますね、という軽い気持ちだけでは授かれない。

 のだが、アーキヴィスト当人の体感でしかわからない話。彼女に説明するには根拠が足りない。

 

「ですが、もし私が悪人ならパラディン様は協力を拒み、悪辣な行為で呪文を奪っているならば神託は私の悪事をほのめかしたでしょう。

 パラディン様は私に協力を申し込んだ、それが悪事を働いてない証拠になりませんか」

「む……そうだな。分かった、そこはアルベルトを信じよう」

 

 そこはパラディン様の社会的信用を使わせてもらった。なんせパラディンは善と秩序の守護者にして貫き通す者、悪を見抜くことに関してはトップレベルであり、またそれを破った時には神の視点から罰せられる。人の良し悪しがシステム的に決まっているこの世界ならではの判断要素だ。

 とはいえパラディン様を私の試金石にすることも不敬な行為に違いないので、善い人間ではないと判断されたろう。元から善人じゃないが。

 

「では……話は戻しますが、この度は良い経験になりました。

 遅れましたが、旦那様を紹介してくれたお姉さんに感謝を」

「良い。父も妹も世話になったと聞いた。

 礼は散々尽くしたろうが、むしろこちらこそまだまだ礼が言い足りない立場だ」

「……父に妹?」

「知らなかったのか。紹介した『旦那様』は、私の父だ。

 リリィ(妹)は……また違う意味で世話になったと聞いた。こちらは手放しで褒められんが」

「ああ、少々魔法を教えてしまいましたね。

 お姉さんが聖職者だと知っていたら、信仰の方をお教えしたのですが」

「止めてくれ、リリィまでアーキヴィストなる未知の術者になられては、私の手に負えない」

 

 なるのはクレリックの方なのだが、と否定したかったが本来は偶発的に授かる奇跡をポンと与えることはアーキヴィストより大問題なのでお口をチャック。

 

「魔法を教えた師として悪用せぬよう、責任取って注意しますよ」

「当然だ。だが、魔法を教えられる能力があるとは聞いていなかったぞ。

 それならもっと良い仕事を教えられたろうに……」

「私は先の仕事で満足してますよ。余裕があれば、そちらもやって良いですが。

 ……そういえばお嬢様とは、本土に帰ってから先生をするかどうかとも約束をしましたね。あの後 大変な目に遭って、忘れているかもしれませんが」

「そんなことまで。いや、それは私が手配しよう。

 神殿の管理下で秘術を教えるなら、怪しい動きをしてるなどと問題にはならない」

「良いのですか? 何かと大変と思いますが」

「リリィの影響が大きくなるよりはマシだ。

 それにクレリックには使えない、街の守りに役立つ秘術の呪文が沢山ある。それを唱えられる魔術師が増えることは喜ばしいことだ」

 

 要するにお姉さんはハイローニアス神殿直属のウィザード、それも防御術者(アブジュラー)をお望みのようだ。

 あまり面白い構成にはならないが、人の役に立って、金になるならお教えする分には構わない。その中であわよくば更なる魔術を学びたいと、私の従者(フォロワー)になりたいと望ませられれば尚良し。

 

「パラディン様が出立するまで、せいぜい数日でしょうか。

 一日あれば初歩を仕込めるので、それまでに呼んでいただければ十分です。場所は神殿の一画を間借りしますけど」

「分かった。用意が出来たら神殿にご足労願うが、構わないか」

「はい。スクロールの件も早めにお願いします」

「……そうか、パラディンのものを指定したのはあのためか」

 

 お嬢様との約束は違えることになったが、私が得することに変わらないので謝っておけば良いだろう。

 懸念だった異端審問沙汰は避けられ、お姉さんの信頼も失わずに済んで幸い。おかげで安心して私は今後の準備に取りかかれる。

 

「分かった。少し無理をして早急に取り寄せる。代わりにそちらも十分な働きを期待しているぞ」

「ええ、十二分の成果を見せましょう」

「だからってやりすぎるなよ。……良い時間だ、では私は行こう。また明日か明後日に」

 

 ガチャ、とここで部屋の扉が開き、いつもの仮面を被って外に出ていたオウレンが戻ってきた。

 お姉さんは沢山の用事を済ませるため入れ替わりで立ち去った。

 

「先生を、するの?」

「ええ、守りの役に立つウィザードを増やしてほしいと言われました」

「でも……リリン、教えられるの」

 

 途中から聞いていたのだろう、オウレンが私に先ほどの話について疑問を口にした。

 秘術術者である彼女は真っ先に不思議に思うのだろう。ウィザードどころか秘術術者でない私に、秘術を教えられるのかと。

 

「教えられませんよ。でも、オウレンはもう体験したでしょう? あれを子供に使えば、呪文の力を身に付けさせることは簡単に出来ます」

「あれ。秘術でも、信仰とも思えない……何の力?」

「さあ。まあ神か、悪魔……はありえませんね。どこぞの何かの気まぐれで与えられたものでしょう」

 

 勿論、そんなことは出来ない。転生チート能力……私の成長を操作する能力を使用することが前提だ。

 はっきり言って、この世界ではありえない力だ。下手するとこの世界の神様にすら、出来ないかもしれない能力。

 だが世界の外、ゲーム外のメタ視点から見れば、これに関して心配はいらないと私は断言できる。

 

「神殿でそんなもの使うの……」

「大丈夫ですよ。この力に善悪はありませんから。

 なんならパラディン様だって増やせますよ。あなたもなってみますか? パラディンに」

「ならない、やめて」

 

 この世界の神様は、司る属性や領域の権能により力を得ている。そんな神様が権能を超越した能力を与えられるわけがないのだ。

 与えられるのは……この世界の仕組みを外れた、得体のしれない存在だけだ。

 




 リリン 人間(human)の女性、ゲシュタルト・アーキヴィスト5Lv/ファクトタム3Lvソードセイジ2Lv
 オウレン ウィスパーノームの女性、ウーイァン5Lv
 アルベルト ハーフエルフの男性、パラディン4Lv
 アローナ神官(ヴィリル) ハイエルフの女性、クレリック4Lv
 戦士のお姉さん(ローラ) 人間の女性、クレリック1Lvファイター2Lv

・『ワンド・オヴ・オルクス』。人間たちが住まうこの物質界の外、外方次元界のうち666階層(あるいはそれ以上とも)の無限の地獄からなるアビスの一階層を支配するデーモンロード、オルクスが作ったアーティファクト。
 この杖は魔法の武器としても破格ながら、杖頭で触れた相手に即死をもたらす力を持つ。そしてオルクスはこの杖をわざと人間の世界に落とし、混乱を引き起こすことを好むという。たびたびオルクスの手から離れるにも関わらず、いまだかつて完全な破壊に成功した者がいないのは、この杖が存続していることから明らか。
 ちなみに持っているだけで所有者に悪影響を及ぼしたり、なんてことは全くない。データ上は強力な武器で、だからこそ、この悪と混沌の強力なアーティファクトにキャラクターは惹かれるだろう。
・この世界の悪魔は大きく分けて二種類に分かれる。
 厳格な悪の階級社会が存在し、堕落させた相手の魂を契約によって奪うことでのし上がる、秩序にして悪のデヴィル。
 そして残虐性の塊で人間を恐怖に落とすと共に、また人間を自分たちと同じ存在に堕落させることを好む、混沌にして悪のデーモン。
 彼らは同じ悪だが、悪ゆえに争い合う相手である。もちろん、それは同族相手でも変わらない。悪であり続けることが彼らの強みである。

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