※この作品はR-18です。

えっちなダンジョンズ&ドラゴンズもの   作:tbc

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 ボロボロに破壊された家屋の扉。粗末ながらも村にしては立派だ(・)っ(・)た(・)神殿の焼け落ちた跡。

 私たちが煙の下に到着した時、この村は既に廃墟と化していた。

 

「これはひどい」

「まだ煙が立ち上っている。時間は経ってないはずだが……」

「襲撃者も村人の姿もありません。逃げたのか、連れていかれたのか」

 

 略奪を受けた痕跡もあるが、荷車や家具のような重いものは残っている。また畑を掘り返された様子もない。徹底的な略奪を目的とした襲撃ではないようだ。

 地面には多数の足跡と、ところどころ血溜まりが残っているが専門家ではないため区別はつかない。せいぜい人間と同程度の多数の何かがごく最近うろつき、出血を伴う戦闘を行ったことが分かる程度だ……いや、一つ気づいたことがある。

 

「死体がありませんね」

 

 村人の死体がない。まさか全員を生け捕りにしたとは思えないが、殺した死体の残りが一つや二つあっても不思議ではない。食人文化(カニバリズム)を持つ人型モンスターは少なくないが、大抵 食事のマナーがなってない奴らだ。

 それがないのは、襲った奴らがマナーを知っている連中だったか、さもなくばアンデッド作成など別の用途に使ったか。

 

「パラディン様! 生存者がいました……子供です! 子供が家に埋まっています」

「助けるんだ! 落ち着かせて、それから話を聞こう」

 

 だが私の不確かな推理をするまでもなく、ハイローニアスの戦士たちが崩れた建物から生存者を発見していた。

 朦朧としているが、怪我も少なく生きていた少年はパラディン様の癒しの手(レイ・オン・ハンズ)によって意識を取り戻し、怯えながらも襲撃者の正体を語る。

 

「醜悪な顔つきの人型生物(ヒューマノイド)、オークでしょうか?」

「それにしては手口が大人しい。ならホブゴブリンの線が高い」

「どちらにしても、十人以上のモンスターが村を襲い、人を攫っていったのは確かだ。

 どこから忍び込み、どこへ行ったのか、犠牲者を減らすために突き止める必要がある」

 

 口々に自論を語る戦士たちを他人事のように眺めながら、弟子たちに目を向ける。彼らは背負い袋をおろし、日陰にへとへとに座り込で予定にない一時の休息を得ていた。

 パラディン様次第だが、モンスターを追撃するのであれば彼らは村で待機。数名の騎士を置いて、私たち精鋭が主力となってモンスターを追いかけることになろう。

 

「この先に我々の砦があります。そこへ報告を入れて彼らに偵察を頼むべきでは」

「しかし、それでは村人が無事に済むか分からない。彼らの命を助けるなら、今すぐにでも向かう必要があります」

「だが、まず方法がない。森の中を追いかけるのはレンジャーのいない私たちには無理だ。いや、もしかするとリリン嬢には可能かもしれないが……」

「今(・)の(・)私(・)に(・)は(・)無理ですね」

「だ、そうです。アルベルト、ここは急がば回って、砦の兵士たちに告げましょう。

 それに、大勢の村人を救助したところで今の私たちで彼らを守るのは厳しいです」

「大勢の村人……」

(……大勢の村人、か)

 

 パラディン様は瞑目し、悩んでいる様子だ。

 いくら私たちが並のモンスターをひねるように退治できても、攻めと守りではまた話が変わる。避難中の大勢の村人ごと弓矢や投槍を降り注がれてはどうしようもないのだ。

 とはいえ、あくまで今の私たちには無理なだけで、手段はあるのだが。

 しかしわざわざ余計な手間になることを告げる必要はない、そう思って彼らの会話を見守っていると、ふと目を開いたパラディン様がこちらを向いた。

 

「リリン、本当に不可能なのでしょうか」

「アルベルト様?」

「私はレンジャーの真似事は専門外ですよ、閉所の罠を見つけるくらいは出来ますが本職には程遠い。

 私には期待しないでください」

「では、不可能を可能にすることは?」

「………」

 

 確信を突いた質問に、しかし答えたくない内容に私は何も言えない。仮にも仲間相手に嘘をつくことも出来ず、無表情(はったり)を取り繕ったものの、そもそも沈黙が肯定に他ならない。

 パラディン様だけでなく、他の皆が様々な思いを浮かべた目をこちらに向けている。これは御魔化せないなと観念した。

 

「可能ですよ。リスクがありますが」

「危険を背負う覚悟は出来ています。それで村人を救えるのならば」

「いいえ、リスクを負うのは私たちではありません。彼です」

 

 私はパラディン様にそう言って、横を向く。視線を追った先には、疲弊している村の少年の姿があった。

 襲撃者の特徴を掴んだ彼は、足跡を《追跡》できるだけの洞察力はあるだろう。そして子供である以上、今すぐレベルを付与することも出来そうだ。

 

「まさか彼を使うのですか? 神殿の少年たちに魔法を教えたように」

「足りないなら持ってくれば良い。幸い、才能はあるようですから、即席のレンジャーにしてはどうでしょう」

「子供を危険に晒すなど出来るわけがない!」

「私は問われたことを答えたです。やるかどうか決めるのはあなたたちですよ」

「やるわけがない。他に方法はないのか? 私たちならどうだ」

「調べなければ分かりませんが……期待は薄いですね」

 

 村人たちを助ける手段を答えると、神殿騎士たちは口々に私を批難した。だが仕方ないだろう、この場で今すぐレベルを与えられそうなのが彼しかいないのだから。

 一方でクレリックである彼らは十分な判断力を持つが、重装備で身を守りつつ呪文と武器・盾を手に戦うクレリックと、軽装備で二刀流や弓を用いるレンジャースタイルの食い合わせは悪い。

 この場を乗り切るためだけに能力を与えるのは後々 苦労を招くだろう……そして回り回って私への恨みになりかねない。事なかれ主義者としては、否のある選択は取りたくないのだが。

 

 しかし乗り気でなくとも、調べるだけ調べておかねばなるまい。彼らに手を当てて集中し、オウレンにやったようにキャラクターシートを覗き見る。

 結果、誰も次のレベルに十分な経験値を得ていなかった。安心して良いのか悪いのか。

 

「そもそも子供を危険に晒せないと言うなら、私を勘定に入れられないのですが。

 まあそれは別にどうでも良く……一先ずは本人の意思を尋ねるべきですね」

 

 すっと立ち上がり、こちらを見ていた村の少年に顔を合わせて、背後の騎士様方にも聞こえるようによく通る声で話す。

 

「今の私たちの話を聞いていましたか?」

「う、ん。僕は何をすれば良いの」

「私たちではモンスターを追いかけて、村の人を取り戻すことが出来ません。でも、あなたなら私たちの代わりにモンスターを追いかける道を探してもらうことが出来ます。

 私たちは全力であなたを守りますが……あの怖くて恐ろしいモンスターがあなたを食べようと襲いかかってくるかもしれません。

 それでも、あなたが村の人を助けたいと思うなら、私たちに協力してください」

 

 情けないが、私たちが村人を追いかけるには彼の協力が必要だ。しかしパラディン様方は守るべき弱者から協力を得ることに否定的だ。

 だから私は善なる方々に代わって、脅迫にならないよう発言に気を使いつつ、彼が自発的に協力してくれるかどうかを尋ねた。

 じっと見つめる少年は、少し時間をかけて私の言葉を飲み込んでから、こくりと縦に頷いた。

 

「協力、します。でも、僕はどうすればいいんですか」

「ありがとうございます。方法は今から私が教えますが……パラディン様、これで構いませんね?」

「……ああ、頼む」

 

 くるりと振り向いて、パラディン様に確認を問う。許可を得た私は、改めて少年に振り向き、手を当ててシートを書き換える。

 間もなく彼は足跡を《追跡》するクラスを得、少しの練習を経てからモンスターの追跡を開始した。

 

---

 

 廃村に馬車と騎士二人を残し、騎士一人を道の先の砦に伝令へと向かわせて、少年を先頭に私、オウレン、パラディン様とアローナ神官、そしてローラさん―――戦士のお姉さん―――と続く。

 先頭に立つ少年は追跡に集中するため周囲を警戒する余裕がなく、代わりに私が注意を払っている。足跡は道がない道を進んでおり、視界は悪く、風に揺れる木の葉の音に混じっていつ獣が飛び出すかは分からない。

 

 

 しゅるり、と少し先の足元に草が伸びるのを目にした私は少年の首を引っ掴んで後ろに投げ捨てる。

 

「モンスター! 植物に紛れてます!」

 

 アサシン・ヴァイン。その名の通り 植物界に紛れ込み、近づいた生き物を絞め殺す殺人蔦のモンスターだ。

 その本体は非常にゆっくりと地面を伝う、大ミミズのような太い蔦だが、それを中心として周りの雑草も波打つように蠢いている。こいつはただの鈍い植物ではなく、ドルイドの用いる“絡みつき(エンタングル)”と同じ疑似呪文能力によって周辺の植物に獲物を足止めさせ、その間に本体が追いついて締め上げるのだ。

 やつは早速、私と少年の足元の植物を使って足止めしてきている。なんとか絡め取らずに済んだが、それでも植物は今も絡みつかこうと移動を邪魔する。その上、この能力に回数制限はないのだ。

 私は少年を後ろに押し出して、そろそろと少しずつ後退しながらアサシン・ヴァインに相対する。《炎の爆発》を牽制に撃つが、効いた様子はない―――こいつは火や様々な属性攻撃に対する抵抗を持つのだ。しかし武器に対しては見た目通りの植物なので、長弓を持ち出し、ず太い幹に打ち込む。しかし腕並みの太さはあっても細い幹の中心を狙うのは難しい、矢は表面の樹皮で滑ってダメージを与えられない。

 

「こいつは音か酸のエネルギーだけが有効です……火は控えてください」

「あっ」

 

 ついに少年が植物に足を取られ始めた。一度 足を止められると次々に植物が足を縛るため、抜け出すのは困難だ。放っておけば少年が殺人蔦の餌食になること間違いなしだ。

 有効打が少ないオウレンは《魔法の矢(マジック・ミサイル)》を打ち込むが、あまり大きなダメージを与えられずにいる。パラディン様たちも植物の範囲外から矢や飛び道具を打ち込んでいるが、あまり良いダメージになっていない。

 私は覚悟を決めて、長弓を投げ捨ててレイピアを引き抜き、アサシン・ヴァインに突き刺した。刃が幹を切り裂くが、仕返しとばかりにその幹がしなり私へ叩きつけられる。

 

「ぐっ」

 

 叩きつけられた幹をなんとか体で受け止めるが、しかしその幹、いや蔦はそのまま私に巻き付いて強烈に締め上げようとする。

 その直前に間一髪、隙間に身体を滑らせて抜け出すことに成功。だが変わらず蔦の間合いに捉えられており、逃げる隙がない。

 

 が、そこへおぼろげな青い長剣(ロングソード)が私とアサシン・ヴァインの間に割り込み、蔦を切り裂いた。ちらりと後ろを向けば、スクロールを手にしたエルフ神官の姿がある。

 恐らく“心霊武器(スピリチュアル・ウェポン)”呪文のスクロールを使ったのだ。力場で出来た崇拝する神格の武器を出現、攻撃させるもの。浮遊する武器が危険なモンスターに攻撃するため術者が接近する必要はなく、その有効射程も長いので蔦に囚われない距離を保つことも出来る。

 オウレンも弩(クロスボウ)を持ち出して援護射撃を行い、矢と武器の集中攻撃がアサシン・ヴァインに降り注ぐ。やつは変わらず近手の私を絡め取ろうとするが攻撃に耐えきれず、ついに幹が千切れて樹液を垂れ流し、萎びた蔓と化した。

 

 アサシン・ヴァインの本体が力を失ったことで、少年に絡みついた植物もただの植物へと戻る。私は自分自身に“治癒”をかけてから、アサシン・ヴァインが隠れていた茂みのあたりを探る。

 するとアサシン・ヴァインの犠牲者たる人型生物の遺体が転がっており、その装備や衣類もボロボロになっている中で唯一 朽ちていないヴェストを回収する。

 不自然に残った装備を“魔法感知(ディテクト・マジック)”で確かめてみれば、確かに魔法の弱い反応がある。後に脱出のヴェスト(ヴェスト・オヴ・エスケープ)と判明するが、魔法のかかったアイテムは時間経過による劣化へ耐性を持つため、判断をつけやすいのだ。

 

 パラディン様の提案で犠牲者の遺体を葬ってから、私たちは再び村の襲撃者の追跡を開始した。

 

 

 

 しばらくすると、また新たな遭遇があった。今度は、モンスターに区分されるものの、悪性ではなく会話を行える種族だ。

 

『ここは我ら「白羽の矢」の一族の領域の入り口。引き返すならば後追いはしない、立ち去れ、ヒューマンよ』

 

 大柄な馬の下半身に、人に似た上半身を持つ半人半馬のモンスターが数体、高台から私たちを見下ろす位置に立っている。森語(シルヴァン)で警告を述べる彼らは、かの有名なケンタウロスだ。

 善性寄りの彼らは、土地への侵入者である私たちに対してただちに戦いを挑むことはない。しかし私たちは追跡のために、この先に行かねばならなかった。

 なので交渉を行うのだが、そこは森語が理解できるだけの私よりも、彼らの種族神に縁のある狩猟の神(アローナ)の神官で、同じ森に住まうハイエルフたるヴィリルが適している。

 

『我が神アローナの友たるセントール(Centaur)よ、我らは決して、ただ君たちの地を侵そうとしたのではない。我々の同胞の里を襲った何者かがここを通り、連れ去ったのだ。

 侵略者を通し、我々を通さないのは如何なる理由があってのことか。悪に与する行いぞ』

『そのような者がおったのか。ならば我らの名にかけてその侵略者を我らの弓矢で一人残らず射止めよう。

 森の同胞よ、我らに任せてここを去れ』

『疾(はや)き足を持つ者たちよ、君たちは速(・)けれども我らの同胞を救うには早(・)さ(・)が足りない。今すぐに向かわねば、侵略者は同胞を宴の肉にしてしまうだろう。

 だが我々にこの土地を二度横切ることを許してくれたなら、君たちに代わって侵略者に矢を突き立て、同胞を引き連れて速やかに立ち去ることを約束する。

 どうか我らに二度、土地を踏み入ることを許してくれ、「白羽の矢」のセントールよ』

 

 普段と異なった口調で聞こえるのは聞き慣れぬ言語ゆえのこと。

 アローナの名を借りてケンタウロスに通行の許可を願うと、彼らは少し仲間内で相談を行ってから答えを返した。

 

『良いだろう、三日以内に往復することを許す。

 三日を超えてなおお前たちが戻らねば、我らはその侵略者に矢の雨を注ぐだろう。その時、お前の同胞の生命の保証はできない』

「『助かる、森の同胞よ。首級を上げてその恩に報いよう』

 ……三日以内を条件として、往復の許可を得ました。通りましょう、皆さん」

 

 ケンタウロスたちはエルフ神官の威勢の良さを買って、通行を許してくれた。

 失敗が許されない条件をつけられたが、元より急がねばならない冒険(クエスト)である。責める所ではない。

 

 許可をもらった私たちは再び、彼らの領域を横切る痕跡を追った。そうして進んだ先に、地下へ伸びる洞窟の入り口を発見する。

 侵略者たちの足跡も続いているが、それ以上に私たち素人の目にも見える大人数が行き来した足跡が残されている。この洞窟の先に奴らの拠点があるのだろうか。

 しかし地下は太陽の光が届かない領域。明かりなしでは探索出来ず、そして光を灯せば目につく。

 若干の消耗もあり、探索に備えて呪文を再準備するためにもここで一晩休むことにした。

 

---

 

 洞窟から離れたところにキャンプを作り、パラディン様とエルフ神官が瞑想(トランス)(エルフ族は休息に睡眠を不要とする)により休みを取る一方で、追跡役の少年はすやすやと睡眠を取り、そして私とオウレンはというと性行為に励んでいた。

 明日に決戦が予想される以上、可能な限り戦力を強化するため性的行為を経て《Tantrics》特技を稼働させるのは仕方ないだろう。

 しかし、野外で行為を致すのは人の目や耳の他、危険も呼び込む可能性がある……のだがこの展開を予期していたオウレンは貴重な習得呪文枠を費やし、ロープを介して異次元空間の小部屋に繋げる“ロープの奇術(トリック)”を行使した。野営の危険を減らせる呪文なのだが、若干間違った使い方である。

 

「ふぅ、うっ……は、あ、んっ」

「ちゅっ、ちゅっ、ちゅうううぅ」

 

 仰向けに倒れる私の股にオウレンは顔をうずめ、まるで母親の乳房をしゃぶるように秘所の陰核に吸い付いている。

 ゾクゾクと腰の奥を貫く刺激が快感をもたらし、思わず跳ねる私の腰をオウレンは自身の体を使って押し止める。

 またしても良い様にやられてしまっている私は、目の前にふわふわと揺れる小ぶりなお尻に手を伸ばそうとするも、続けざまに与えられる快感に狙いが定まらない。

 本来は二人がお互いの秘所に向かい合う体位なはずのシックスナインは、その身長差から片方の頭が相手の股に届かない、私だけ一方的にヤられる不利な体位となっていた。

 

「ふあ、あー、あーーーっ!

 

 ひ、はっ、はっ、はぁ、はぁ……」

 

 絶頂を迎え、息切れを起こす私を悦びの表情で見つめるオウレン。

 相変わらず女の戦いに勝てない私であったが、もはや慣れた。慣れてしまった。他者から与えられて高まる快楽が最初は恥ずかしく怖かったものの、今は気持ちいいものとしてこれはこれでと受け入れてしまった。元より、私はこの女性の体も嫌いではないのだ。女性だからと男と付き合えなど糞野郎、というだけで。

 でも私の男性的な精神は、女性を征服したいという欲望も持つ。今は私に心を寄せてくれているオウレンは、私が男の本性を曝(さら)け出した時に受け入れてくれるだろうか? 彼女が女性を責めることが上手なのも、レズだからではないか?

 

「オウレンは……」

「なに?」

「私が女でなくなったら、どう思いますか」

「人間やめるの?」

「なんでそうなるんですか」

 

 確かに死霊術師を体現するアンデッド(リッチ)にでもなれば性別の概念はなくなりますが、そうではなく。

 

「男になったら、オウレンがどう思うのか気になって……」

「男になるの?」

「なりたい、というのとは少し違いますが……その……」

 

 前世が男性だったから、というのはファンタジー溢れるこの世界でも中々無い話だ。少なくともデータ的には。

 “転生(リインカーネーション)”という魔法もあるが、敷居の低さと引き換えに種族が変わるリスクが存在する、単なる蘇生呪文の一種である。私が現在進行系で体験している異世界転生とは根本的に異なる。

 

「私、男の快感を得たいんです」

 

 なので私は言葉を濁しつつも、彼女なら受け入れてくれると信じて私の欲求を告げる。

 オウレンは私の暴露に少しキョトンとして、それから返事を返す。

 

「リリンがリリンじゃなくなるの、嫌だな。可愛いのに」

「私だって嫌ですよ」

「?」

「って、あ……これじゃ意味分かりませんよね。私、おちんちんだけが欲しいんです。

 手っ取り早く手に入れるなら“自己変身(オルター・セルフ)”や“性別反転(リバース・ジェンダー)”の呪文がありますけど、あれって身体そのものを別の男性に作り変えるじゃありませんか。

 私は、私……リリンのまま、男のちんちんが欲しいんです」

「ふーん、変な嗜好(フェティシズム)。理解しがたい」

「う゛っ」

 

 痛いところを突かれ、思わず呻く。

 変身魔法で他者の肉体に変化、ないし模倣することが嫌だと言うこだわりは理解されないようだ。

 

「でも、そんなリリンも可愛い」

 

 だけどオウレンは俯(うつむ)く私の背中に、その柔肌を重ねてくる。左手を胸へ、右手を腹に添えるよう、軽く抱きしめられた形になった。

 

「いいよ。私を抱きたいなら、抱いてくれても。

 でも、その代わり……」

 

 その右手がそっと、一糸まとわぬ私の股の秘裂へ降りてきて、人指し指が割れ目に沿って強く押し付けられる。

 その意味を察して、私は強く体をこわばらせた。指の挿入は体験済みではあるのだが。

 

「その時は私もリリンを抱くからね」

 

 そう告げたオウレンは、私から体を離した。どうやら今のは宣言だったらしい。

 だけど彼女はエロにためらいがない性格だ。冗談では済まないだろう。

 

 私はぶるりと体を震わせつつ……しかし、期待に股が湿り気を増した。

 

 




・『Unearthed Arcana(アンアースド・アルカナ)』。他のサプリメントと異なり、この一冊は呪文のMP制やキャラクターの「向き」を定義するなど、ゲーム・ルールやデータの変更案を集めたものである。
 特に少人数のパーティ向けに一人のキャラクターへ複数のクラス・レベルを与えるゲシュタルト・キャラクターなど、ゲームバランスを変えるルールが多いため公式が出版した一冊ながら基本的に使用すべきではない。しかし、パラゴン・クラスやブラッドライン(血脈)・レベルなど、種族やキャラクターに特色を付けるクラスや種族の代替能力が載っていることから半々で使用が認められることもある。
・“自己変身(オルターセルフ)”。術者の身体を変化させる変成術の中で、尤も下級のもの。
 本来の種族に近しい種族(人間ならば同じ人型生物のエルフやドワーフなど)にしか変身できないが、良くも悪くも変化に伴う影響が少なく済む。
 特に蜥蜴人(リザードフォーク)や穴居人(トログロダイト)に変身すると、獲得した分厚い外皮によって下手な鎧を身に纏うよりも高い防御力を獲得出来る。
 持続時間に制限はあるが、単純に回避力や鎧の装甲を強めるよりも手軽なため、魔法戦士が本業戦士よりも強力とされる所以の一つである。

 この呪文に限らず、変身魔法で特定の個人、個体に変化することは実質 不可能で、その種族の平均的な見た目に変化する。
 〈変装〉で姿を似せることは出来ても、根本的に肉体が変装した人物の通りになるわけではない……例えば遺伝子とか。
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