超人高校生たちは催眠術には屈してしまうそうです 作:ざくろねこ
パーティは村のとある一室にて執り行われた。
七光聖教の面々とルー、エルク、リルルの計10名である。
数々の料理が並び勝人が取り寄せた様々な産地の料理が並ぶ。
司会の司がパーティーを取り仕切り、つつがなく事が運ばれる。
「次はリルル君の出し物だ。よろしく頼む」
「はい」
どこか元気がない様子で微笑んだ彼女を訝しんだ一同だったが、場の盛り上がりに対してその流れを壊すようなことは言えなかった。
「りんごさん。お願いします」
テーブルから少し離れた場所にリルルは自身の座っていた椅子を置き、りんごに座るように促した。
りんごは椅子へちょこんと座った。
「これから何をするんですかリルルちゃん」
「それはお楽しみです」
リルルはりんごと目を合わせてとても柔らかな笑みを向けた。
りんごもそれにつられて笑う。
(え、いつものリルルちゃんと違う…… 気がする)
りんごはリルルに違和感を感じた。
いつもの立ち振る舞い、いつものリルルだったがその瞳に明るい輝きがなかった。
これは普段あまり人の顔を見て話すことがないりんごだからこそ気づけたことだった。
普段彼女が目を合わせていないのは何を思われているのか不安だから。しかし、今日のリルルの目はすんなりと合わせることができた。
(まるで機械を見ているみたい)
りんごが魔術師だったならばすぐに答えを見つけることはできただろう。
しかし、彼女の専門はそこではない。そして、このパーティの出席者に魔術を扱えるものはいない。
唯一気づく可能性があったのはりんごだったが、もう催眠術の術中にかかっていてそれ以上彼女の思考を進めることはできなかった。
(なんだか、リルルちゃんの目から逸らせない…… 頭が……何も考えられない)
リルルの中に宿った精霊は誰にもその違和感に気づかれることなくりんごへ催眠術をかけていった。
「りんごちゃんに今魔法による催眠術をかけました。これでりんごちゃんに色々面白いことができますよ。何かやってみたいことはありますか」
「ちょっといいかな」
司は真っ先に手をあげる。
「おっ、やったれ!」
勝人はひやかしの掛け声をあげる。
「ちょっとやめなよ」
暁がそれをなだめる。しかし、暁の手品の中にも催眠術は存在するため気にはなる。
ましてやそれが地球には存在しない魔法という概念ならなおさらだ。
司は勝人の冷やかしを意にも介さず質問を続ける。
「これはヤマトの国のような記憶改竄の魔法とは違うのかね」
リルルはそれに笑顔で答える。
「はいっ! こちらの催眠術は精神のあり方を捻じ曲げるだけで、強制力は低いです。本人の欲望を解放する程度です。ですから、生命の危機など
生存本能などに対する働きかけはなかなかできません」
「そうか。りんご君。右手を挙げてくれ」
試しに司はりんごへ指示を出す。
りんごは「はい。右手を挙げます」と復唱して右手を挙げた。
それに対して勝人がダメだしをする。
「そんなんじゃ催眠術にかかってるかわからないだろう。立ち上がって一回転してからにゃんにゃんと言ってみてくれ」
「はい。立ち上がって一回転してからにゃんにゃん」
普段なら恥ずかしがってしないそのような行動も、りんごは顔色一つ変えずやって見せた。
いつもかぶっている帽子が回転で下に落ちても意に介さない様子だった。
「にゃんにゃん」
「おお」
勝人は笑って拍手を送る。
「拙者も気になるでござる」
葵は近づいてりんごの目の前で手をひらひらとさせる。
何も反応がない様子を見て不思議に思う葵。
とりあえず床に落ちた帽子を葵は拾い上げ、りんごの頭へ帽子を乗せようとした。
「うん、りんご殿の目が……あっ」
葵がりんごの目を見つめると催眠魔法が発動した。
葵の瞳から輝きが失われる。
「どうした。まさか」
異変を感じた司が状況を察する。
「フフフ。司さん。もう気づいても遅いですよ」
右手を頬に当て笑うリルル。
「……リルル君、いや、君は誰なんだい?」
「司さんは察しがいいですわね。別に名乗る必要もございませんが催眠術の精霊とでも名乗っておきましょうか」
「あちゃー。ここは変わり身の術で退散。にんにん…… って、うわ」
今唯一逃げられる状況であろう忍が逃げようとした。しかし、葵に素早く間合いを詰められた。
「逃がさないでござる」
「ですよねー。あー、頭がぼーっとしてきた……」
忍の筋肉から力が抜けて腕がだらりと垂れ下がった。
「さあ、催眠パーティを始めましょう」
虚ろな目をした4人はこのパーティの出席者を催眠にかけていくのだった。
次回更新は6月20日です。
忍が逃げれた世界線が大乱闘の世界。髪ピンク色だし。しかし彼女はピンク玉の悪魔ではない。