「帰国命令が来ました」
僕は留学先の学校の校長であるダンブルドアに告げた。
「聖杯が見つかったのかね?」
興味深そうに訊いて来たダンブルドア。
「見つからないです。そう簡単には見つからない。それに、あの国にあるのは疑似聖杯ですし」
日本の冬木市では、聖杯を巡る戦が勃発していた。各国が聖杯を求め、能力者集団を送り込んでいる。そこは結界で囲まれた地であり、あの国の国民の殆どは知らないことである。争うサイドも、それが疑似聖杯とは知らず、本物の聖杯と信じて戦っている。真実を知る者にとって、それは滑稽な事態だと思う。
聖杯とは三対1組の杯であり、1つでも種族変更が可能な聖なる遺物であり、3つ揃えば天地創造までもが出来るとまで言われている。しかし、疑似聖杯では、過去の英霊を呼び出し、使役させることしか出来無い。まったくのまがい物である。
「そもそも聖杯は、人間が手に出来無い物ですよ。触れれば、人体は簡単に発火し、燃え尽きるのが運命。まぁ、事実を知らないから、そこにロマンを感じるんでしょうね」
神なる者の扱う器物は、神なる者にしか扱えぬ。神未満の生物、霊体が触れれば、燃え尽きるのが関の山である。まぁ、そんなことは書物には書かれていないので、知るよしも無いか。
「何故、君は知っているんだね?」
「僕のジョブは大賢者です。人知を超えた知識を持ち合わせている。お忘れですか?ダンブルドア校長」
「聞いていないぞ…」
言っていなかったっけ?全知全能に1つずつ足り無いって…僕の言葉に唖然としているダンブルドアを校長室に残し、僕は一路、帰国の途に着いた。
◇
「英国に未練は無いの?」
隣に座っている、一見童女の女性、インデックスに訊かれた。
「無くは無いなぁ。もっと、魔法学を学びたかったな。って、お前、国外に出ていいのか?イギリス清教の天然記念物だろ?」
高価そうな真っ白な生地で出来たシスター服を身に纏っているインデックスは、教会育ちの世間知らずではあるが、そのオツムの中には、10万3000冊の魔導書を記憶し、現存する魔導書の呪文の殆どを暗記しているという、記憶バカなフードファイターである。インデックス曰く、脳細胞の維持の為には、大量の餌が必要だと言う。現に、コイツ、さっきから機内食を食いまくっている。
「その為に、私がガード兼料理人として、付いて来たんですよ」
と、笑顔の五和がインデックスに新たな料理をサーブしている。五和はイギリス清教傘下の日本支部にあたる天草式十字凄教のメンバーである。僕の留学に際し、僕のお世話係として、英国まで付いて来てくれたのだ。五和の見た目年齢は僕と同じくらいであるが、その真なる年齢は20代だと言われている。勿論、本人には訊けない。歳の話しは女性にはタブーであるからだ。
「シュウは食べないでいいの?」
インデックスが食事をお裾分けしようとするが、
「お前の食いっぷりを見ていると、食欲が減衰していくよ」
なんで、そんなに破壊的な量を食えるのだ?食う寝る食うで運動しない自堕落な生活をして、その童女体型が維持出来ているのが不思議である。シスター服のせいで、実際の体型は見えないのだが、その実体は健康的な小学生の身体である。アンダーヘアの生え具合から10代後半であるはずなのだが。
僕の名前は代羽周太郎、愛称はシュウである。他の世界からの転移者であるが、一応国籍は日本になっている。よくある神様転生のチート持ちでは無く、この世界に召喚された口になる。僕の世界の並行世界であるここにも、僕がいたのだが、同じ時間軸に同じ人物は複数存在出来無い宇宙の理により、僕はこの世界の僕を同化吸収してしまった。まぁ、僕が僕であるので、問題は少ないと思う。
この世界に召喚したのは、五和の上司に当たる、天草式十字凄教のプリエステス『聖人』神裂火織という女性だ。望みは『世界崩壊を止めて』欲しいだったかな?その場で、手付け金の代わりに身体を食してしまったのは内緒である。この世界において、『聖人』とは、異性との行為はタブーらしいので…まぁ、僕も『聖者』の二つ名持ちなので、問題は少ないだろう。
で…僕だけで任務遂行は難しいと思ったらしく、僕の弟であるヤマトと、妹である九重が僕を追ってきて、この世界では代羽3兄妹として、生活基盤を持つこととなったのだが、問題は代羽家が一般家庭では無かったことだ。近代魔法師の代表的な家系である四葉家の流れを汲んでいるらしく、僕達は魔法師サイドにいることに…魔法使いサイドに召喚されたのに、既にライバル組織に組み込まれていたのだ。
この世界は、一般人、科学サイド、魔法師サイド、魔法使いサイドに、人間は分類されていた。一般人は、魔法の存在を知らず、科学的に何かしていることも知らず、ごく普通に生活している者達である。科学サイドは科学の発展により、この世界を征服しようとする勢力、魔法師サイドは魔法師による科学技術に起因する兵器に対抗しようとする勢力であり、魔法使いサイドは昔ながらの神への信仰を有し、他の2つのサイドから人類を護ろうとしているそうだ。聞いた話なので、実際問題として真実かどうかは、まだ把握出来てはいない。
次に魔法使いと魔法師の違いなのだけど、旧来の魔法は古代魔法とされ、魔法使いが使える魔法であり、魔法師の魔法は、超能力を使い、CADなる術式補助演算機(Casting Assistant Device)なるデバイスで術を発動するという、科学の行き着いた先にある魔法である。僕達の場合は、古代魔法使いでありながら、魔法師サイドにいる感じである。
◇
日本に到着する頃、メールが届いた。帰国すると知らせた幼なじみからの返信だった。
『相談したことがある。連絡を待つ 新一』
幼なじみの工藤新一からだった。同じく幼なじみの毛利蘭と結婚するのかな?って、まだ高校2年生だよな。まさか、避妊に失敗か?それは相談されても、無かった事にするのはいいけど、記憶の改ざんまでは無理っぽ…などと、考え先走り…
空港にはヤマトと九重が出迎えてくれた。
「兄さん、お帰りなさい」
弟のヤマト…僕が僕で無かった頃、僕の双子の弟だったらしい。現在の魂の器的には、肉親関係には無い。魂レベルでの兄弟ってことになる。
「お兄ちゃん、おかえり~」
妹の九重。僕の世界において、オヤジの再婚相手の子供である。ラノベにありがちの義理の妹になるが、喰おうって気にはならない。あくまで妹枠である。
「何か、動きはあったか?」
「新一君が、どこかの組織に狙われているみたいだよ」
と、ヤマト。新一が狙われている?その件の相談か。
「ヤマト、調べておいてくれ」
「わかった」
空港を出ると、火織が車で迎えに来てくれた。火織の手配してくれた車の運転席に座る五和。組織のガード役ってことで、自転車から宇宙ロケットまで、なんでも操縦が出来るらしい。そっちの車にはインデックスを乗せ、僕はヤマトが手配してくれた車に乗り込んだ。
「で、家は?」
「駒王町の代羽家の土地に、新築で建てたよ」
駒王町は八王子市の隣にある区域である。東京の西部には、一般人の知らない施設が多くある。立川市には科学サイドの街である『学園都市』があり、八王子には魔法師サイドの学校である『国立国立魔法大学』および『国立国立魔法大学付属第一高校』、通称魔法科高校があり、そして駒王町には人間と人外の共存エリアがあるのだ。一般人の知らない、この国の闇に当たるのでは無いだろうか?一応、この勢力の違う3つのエリアは共存の道を歩んでいるが、それぞれの交流は全くない。唯一あるのは、僕達代羽家の者達だけだ。
人外である僕達3人は、この国の法律により、駒王町に住むことになった。その上で、召喚した魔法使いサイド、家系的に魔法師サイド、そして流れ的に科学サイドと交流を持っている。科学サイドに関してはヤマトの能力である『ビジョネイル』が大きく関わって居る。この能力は、意識をネットへ潜入させることが出来、ハッキング技術の研究に寄与しているそうだ。
◇
車は駒王町に向けて、高速道路を進行中である。
「遠くに見えるタワーがあるエリアが、学園都市だよ」
ヤマトが指差す先には、高い塀に囲まれたエリアが見えた。塀に隠れて全容は見えないが、近未来的な都市っぽい。塀の上をモノレールが走っている。まるで遊園地のアトラクション、そんな感じである。
高速道路を八王子インターで降りる。
「で、僕が通う学校は?」
本家である四葉家の要請で、僕は魔法師高校へ通うことになった。代羽家と同様に、分家である司波家の子供も通うらしく、親交を深めておけ、ってことらしい。
「ここからは見えないです」
見えないのか…う~ん…
そして、車は駒王町にある神社の前で止まった。どうやら、この神社の前の住宅が住処になるようだ。
「ヤマト、お帰りなさい」
神社から巫女姿の女性が、ヤマトに走り寄って行く。彼女か?いいなぁ~。長い黒髪が風になびいている。
「兄さん、彼女でなくて、姫島朱乃さんです。忘れたのですか?」
ヤマトから、説明があった。朱乃さん…あぁ、幼なじみの…いきなり転移してきた僕達の最初の友達になってくれた女の子である。
「へぇ~、こんなに素敵な女性になったのかぁ~」
「シュウ…お帰り」
笑顔の朱乃に抱きつかれた。巫女衣装の下はサラシか?予想よりもちっぱいというか、固いし。
「ただいま」
「九重様の指示で、神社ネットワークは起動してあるわ」
神社ネットワークとは、この地にある鎮守の神様をつなぎ合わせ、結界的な防御をさせるシステムのことだ。因みに九重が敬称呼びなのは、朱乃よりも上位の存在とバレている為だ。基本的に、僕達の本来の身分、種族は隠匿しているが、九重に関してはバラさないと、神社ネットワークを使えなかったのであろう。
英国の天然記念物であるインデックスを匿うには、厳重な防御システムは不可欠である。電子的な防御はヤマトが担当し、魔法的な防御は僕が担当になるだろうな。
新築の家の中は、家具などが既に運び込まれていた。五和は迷わずキッチンへ、インデックスは食堂へ…もう、腹減ったのか?僕は火織と共に、僕の部屋に向かう。僕の部屋は3階層になっていた。1階部分はプライベートルーム、2階部分は書庫、そして、地下には、防音システム入りのプレイルームが完備されている。地下へ火織と共に向かい…火織の自由を奪った。
「いきなり?」
僕の行動に驚く火織。禁欲生活だったホグワーツ魔法魔術学校での生活…火織の着ている物を総て剥がしていく。
「一応…聖人なんですけど…」
真っ赤な顔で俯く火織。
「ヤッタからって、聖なるオーラは減らないよ」
萎えた状態で入れても、火織の中に入ると、すぐに臨戦態勢になる僕の主砲。
「前戯は?」
僕とは違い火織の準備が出来ていないようだ。では…『催淫』を火織に掛けた。
「えっ!魔法で…ダメ…もうダメ…来て!」
もう入っています。火織も禁欲していたようで、『催淫』の掛かりが良すぎる。久しぶりの男女の営み…僕も火織も三こすり半で昇天してしまった。禁欲解禁後は、こんなにも感じ易いのかぁ~