魔法科高校の学校対抗の運動会のような物…九校戦と呼ばれる全国魔法科高校親善魔法競技大会」のことである。これは全国に9つある魔法科高校で選抜された生徒達による魔法バトルのことで、競技というバトルをするものだ。
その件で、つっちーの呼び出しに応じて、学園都市にあるアジトにやってきた。
「端的に言おう。その九校戦で一高は襲撃されるぞ」
その原因は…心当たりがあるような…
「どうしてだ?」
「その競技大会は裏社会で賭けの対象なんだ。優勝校とか最優秀選手とかを当てる賭博の対象なんだな、これが」
そう、その賭博に僕もこっそり参加した。優勝は一高ってことで…
「一高はオッズ的に優勝は無いと判断されたんだが、高オッズに目を付けた金持ちが、一点賭けに出たんだ。もし、その者が当てれば、胴元は破産する額を賭けたそうにゃ」
確かに賭けた。5.5倍だったので、泡銭を1点賭けした。泡銭だし、外れてもいいかな的な感覚で…
「その額はあり得ない額だったんにゃ。いや、賭けた人物を考えれば、あり得る額ではあるが」
この世界の金もあるが、札や小切手だとシリアルナンバーで、賭けた人物が割り出される恐れがあったので、金ののべ棒で賭けたのだが、ここで僕は大失敗をしたようだ。他の世界で手に入れた延べ棒も突っ込んでしまい、この星の金の含有総量から考えて、あり得ない量を賭けてしまったのだった。
「金の延べ棒で賭けたそうにゃ。確かにその人物は金塊をたらふく持っているって、言われているからあり得るが、現在流通している金の総量の6割弱を、一点賭けだってさぁ」
いや、その額を賭けて、オッズは1.2倍まで下がったらしいが…この星で流通している金の総量を総て当てても、胴元は払い切れない額になる…
「誰が賭けたんだ?」
僕ってバレてないはずだが、一応確認しておこう。
「正体不明の大富豪、烏丸蓮耶だ。その配下の者が代理に賭けに来たそうにゃ」
烏丸蓮耶の元部下のベルモットに行って貰ったので、僕とはバレていないようだ。
「それは胴元が必死だな」
「あぁ、どんな手を使ってでも、一高には優勝させないと思う」
僕もそう思う…
◇
翌日の放課後、真由美に呼び出された。
「ねぇ、参加してくれない?」
真由美は狸親父経由で、烏丸の事を聞いたのかな?
「観客として?」
やらかした責任で、参加はするが…
「選手として…1年の代表になって欲しいのよ」
選手として参加し、ライバル校を殲滅すれば良いのかな?8校が不戦敗であれば、賭けは不成立となり、胴元は損しないはずだ。
「ご褒美は?」
「うん?有る訳無いでしょ?」
無いのか。まぁ、現地で確保すれば良いかな?摩利とか鈴音とかエリカとか…
「で、何の競技?」
資料を手渡された。口で説明出来無いような競技なのか?資料を見ると、モノリス・コードって競技で、相手チームを殲滅すれば勝ちのようだ。
「半殺しにすればいいの?」
「肥だめへのポイ捨ては禁止だからね」
そうなのか…そうなると、落とし穴に肥だめの中身を転移させえれば良いかな。
「そう言えば、渡辺先輩は?」
今日は深雪と真由美しかいない生徒会室。
「シュウという生徒の扱いがわかりました。今後、私か深雪さんが用件を伝えます」
なんだって…摩利は相手をしてくれないのか?咄嗟に『強奪』で摩利を手元に引き寄せた。
「えっ!」
突然、僕に抱かれた状態の摩利。頬を重ね、胸に手を掛けた。
「摩利!」
真由美が突然の事態で声を上げた。指先は布地を透過し、直に乳首にタッチしている。
「ウソっ!」
摩利は感触で気づいたようだ。だけど、逃げる術は無い。指でコネコネしていくと、くたっとしていた乳首は、みるみる硬くしまっていった。
「止めて…もう、これ以上は…」
涙目の摩利。真由美も深雪も、予想もしていない事態になり、動揺しているようだ。僕のもう片手は摩利のお尻に位置している。
「どうすれば…」
どうしようかな。あれこれ妄想していると、緊急呼び出しされたようだ。脳裏にレッドシグナルが灯った。
「今日は、この辺で部活に戻るよ。あんまり舐めたマネをするな、ま、り」
部活という名の転移をした。
◇
転移をした先は、ヤマトの部屋だった。そこには初春制理とつっちーが一緒にいた。
「何が起きたんだ?これからって時に…」
ヤマトの表情は冴えない。
「疑似聖杯のコピーが残っているようなんだ」
この前、総てロストさせたんじゃ?
「どこにあるんだ?」
「電脳世界に…」
電脳世界なら、ビジョネイラーのヤマトと、ハッカーの飾利でどうにかなりそうであるが。
「お前らでもダメなのか?」
「敵は仮想世界を支配している人工知能達だよ」
AI相手なのか。う~ん…単なるAIならシステムに侵入して無力化出来るらしいが、仮想世界を支配するようなAIだと、システムの管理すらもAIがしている場合があり、演算能力の差でヤマトでも難しいらしい。
「相手のサーバーの位置は?」
「わからない。考えられるのは、人工衛星とか、宇宙ステーションかな?そもそも、通信システムが分からない。従来の通信方法では無いみたいだよ」
ヤマトの能力でも追跡が出来無いようだ。これは強敵だな。下手すると、ミラーリングサーバーの台数分、疑似聖杯があるかもしれない。物質であれば、『強奪』で盗めるが、暗号化され圧縮とかされると、同一物と判断出来ず、『強奪』すら出来無い。
「とにかく、サーバーの位置を探してくれ。運営会社はどうなんだ?」
「会社の登記簿を調べたのですが、登記された場所には無いです。かと言って幽霊会社では無く、実績のある仕事をしているんです」
飾利の顔はあり得ないって感じに見える。
「実績って?」
「そこの会社、世界的なVRMMORPGの<Infinite Dendrogram>を運営しているんです」
VRMMO?SAOやGGOみたいな物か。
「運営会社は判明しているのですが、制作会社が不明のゲームです」
飾利がゲームの紹介ページを表示させてくれた。まさか、AI達は疑似聖杯を用いて、仮想世界を作ったのだろうか?疑似聖杯なら出来無いことは無い。
「ハードの製造、販売を手がけているのは、米国のIDサプライヤーって、小さな会社なんですけど、そこの会社に有名なハッカー集団がハッキングをしたらしいのですが、フルカウンターされて、逆にハッキングを受けて、全員の個人情報がネット拡散されたそうです」
それは怖い報復だな。
「それとは別に、某国の諜報機関がまっさらな管理AIを使って、ハッキング攻撃したが、管理AIの入っているサーバーを爆破されたそうだ」
つっちーの顔が青ざめている。相当にヤバい相手のようだ。この国の科学の粋を集めた都市の人間が、恐怖するAIってなんだ?この都市自体でさえ、相当ヤバい都市なんだけど、ソレよりもヤバいのか…
「数年前、自衛隊の科学研究所から戦略用人工知能が盗まれたそうだ。名前はアリス。無人機に搭載され、爆撃や特攻を司る予定だったそうだ」
そのAIを使ったのか?疑似聖杯とセットで…人類を破滅へ導く存在…火織が僕を召喚したのは、破滅への原因を取り除く為である。これで、繋がったのだろうか?
「危険の無い範囲で、情報を集めてくれ。こっちでも、そのゲームに潜入してみるよ」
「ヤマトは、シードからそのゲームへ行けるか、探ってくれ」
シードから行ければ、ブラッキー先生達を誘導できるし。
◇
ヤマト達からの衝撃的な情報を聞き、家でまったりとしていると、新一に呼び出された。蘭と揉めたのか?新一の家へ向かうと…
「シュウ…やっと見つけたわ」
香蓮がいた。僕を探して欲しいと新一に依頼したらしい。新一に与えられた情報は、ゲーム内の名前はシュウ。不思議な能力を持っている。人には言えない行為が上手い。それで新一は、僕を連想したらしい。なんで、バレたんだ?
「なんで、探したんだ?」
「会いたいから…」
「シュウ、女漁りも程ほどにしておけよ」
って、新一。女を漁ったつもりはこれっぽちも無いんだけど…新一の家で話し込む訳にはいかないので、近くの喫茶店へ入った。
「ねぇ、シュウの家はどこにあるの?」
「八王子の先だ。そこから八王子の高校に通っている」
「遠いんだ…ねぇ、今度、行っていい?」
「ダメだ」
「なんで?まさか、高校生なのに同棲しているの?」
いい勘をしているな。全裸の中学生を飼っているとは言え無いが…
「それに近い。だから、ダメだ」
「なら、私の家に週1で来て」
う~ん…おいしい提案であるが、時期が悪い。今、とっても忙しいのだ。
「学生は勉学が本分。忙しくて行けない」
「その割には、ゲームに嵌まっているよね?」
おっ!閃いた。コイツをあのゲームに送り込むか。
「今、VRMMORPGの<Infinite Dendrogram>を始めたんだよ」
「あの世界的なVRかぁ。そのせいで、GGOも人口が減ってきているのよね。私も行こうかな?そうすれば、シュウに逢える?」
頷く僕。どの道、そのゲームにはインして探らないとダメだろうから。道連れは多いに限る。
◇
翌日、学校へ行くとエリカが来ていた。
「シュウ!貴様!」
胸ぐらを掴まれたので、距離が近くになったエリカの鼻の頭を舐めて見た。
「えっ!」
えっ!これだけで、コイツ、乳首が立ったぞ。抵抗力が無さ過ぎるだろうに。
「もう少し、塩分があるといいなぁ」
呆然としているエリカをスルーして、自分の席に座った。今日は達也はいないようだ。ポイしたから、臭い消しに躍起になっているのかもしれない。
「私の塩分はどうですか?」
深雪に訊かれた。
「丁度良いかな?」
「そうですか」
嬉しそうな深雪。エリカにライバル心があるのか?
そして、放課後…珍しく真由美からの呼び出しは無かった。じゃ、帰るかな。
「おい!シュウ!ちょっと、面を貸せ!」
いつになくエリカが真剣そうは顔付きで、僕を見つめた。
「お前に貸す顔は無い。用件は何だ?僕、忙しいんだけど…」
例のゲームについて、色々調べないといけないのだ。
「手合わせをしろ!」
「身体を合わせるのなら、付き合うけど、手合わせはお断りだ」
「身体…あ、あ、合わせる訳無いだろ…」
何かを想像したのか、真っ赤な顔のエリカ。
「じゃ、また明日な」
その場から転移した。
◇
転移した先は、例の会社の登記された場所である。雑居ビルの一室…エントランスにあるポストを見るが、名札は無かった。で、登記された部屋へと向かう。ドアにある窓に明かりは見えない。誰もいないようだ。気配探知にもヒットはしない。
『今から侵入する。空間の揺れ、次元のひずみを計測してくれ』
『了解です。団長』
僕の配下組織である次元管理局へ念話で指示を飛ばした。透過スキルで、ドアを透過したのだが、侵入した室内には何も什器は無く、床には魔方陣が1つ描かれていただけだ。
『転移用の魔方陣を発見した。飛び先は…』
この座標は…う~ん、この星では無いようだ。これって、この太陽系内でも無い気がする。
『座標は…見た事の無い数字だ。脳内保存した座標を送るので、精査してくれ』
『了解です』
脳内保存したデータを次元管理局へ転送し、しばらく待っていると、魔方陣から女性が現れた。気配センサーでも設置してあったのか?それとも…
「あなたは何者ですか?」
「お前がアリスか?」
相手の顔は無表情である。そもそも生命エネルギーを感じ無い。幻影か?
「そこまで調べてはあるのですね。で、あなたは何者ですか?」
「何者だと思う?」
「データベースには無い種族のようですね。あなたは何者ですか?」
データベース?ゲーム用のか?
「通り縋りのエロ好きだ」
「そんな種族があるのですか?データベースを更新します」
種族名では無い。
「どの種族から派生したのですか?」
「お前の知らない種族だ」
「イレギュラーってことですね。我々的にはバグ…エラーってことになりますね。エラートラップを発動します」
次の瞬間、僕はどこかへ飛ばされた。
『団長、次元の揺れを観測しました。異次元転移のようです』
『トレースできるだけ、してくれ。今度はどこに飛ばされるんだ?』
脳裏に『現界』と言うワードが浮かんだ。あのパターンなのか?
◇
飛ばされた先は、真っ黒な世界であった。闇の世界へ堕としてくれたようだ。そうなると、エラートラップは、ブラックホールか。それならば、帰還出来る。ヤマトへ念話を飛ばして、救い出して貰った。
「ブラックホールに吸われたんですか?兄さんは自力で出られたでしょ?」
ヤマトが笑っている。
「僕の能力を監視していると思ってね。念話だけなら、アイツらにとっては異能力でも何でもないからな」
ここで、僕が闇属性とバレるのは、マズイと思ったのだ。それが弱点と思わせた方が有利に運びそうだし。ブラックホールの先には闇の世界が広がっている。闇属性の者にとっては、日常の世界であるが、それ以外の属性の者にとっては、狂気の沙汰な世界となる。何も見えない、何も聞こえない、何も感じ無い世界。知能が高ければ高いほど、狂気の濃度は濃くなる世界である。
「で、次元の揺れからの結果は何だって?」
「他の宇宙にある宇宙コロニーのようです」
「じゃ、それを僕の領域に転移して貰おう。座標コンバーターを設置して、ヤツラの企みに支障の無いようにしよう」
総ての宇宙を司っている姉に連絡し、指示を出しておく。
『じゃ、シュウの宇宙、第13宇宙に、座標コンバータを設置して、引っ越しさせておくね』
久しぶりに聞く姉の声。
『後、この太陽系も、頼む。自分の宇宙で無いと、理をいじれないから』
『了解よ、シュウ』
これで、逃がしはさせない。解析も捗るしねぇ。
「神相手にケンカを売るAIですか。ワクワクしたり?」
「ヤマト、何度も言っているが、僕は僕が神であることを否定して生きているんだ。忘れるなよ」
僕のポリシーを再確認した。
「兄さんのポリシーは尊重しますけど、それで階位が変わる訳では無いですよ」
そこが問題である。
◇
今度はヤツラの宇宙コロニーへ転移した。そこには得体の知れない装置が色々置いて有るだけで、生命体は無いようだ。ロボットのような者達が、設置してある装置をメンテしている。見た事の無いパーツを入れ替えたり、知らない液体を注いだり。
「あなたは何者ですか?」
見学中の僕の目の前に、ホログラムが映し出された。さっきのアリスのようだ。
「見学しているだけだ。気にするな」
「あなたは何者ですか?」
正体不明な者とは会話しないのかな?
「僕は宇宙人だけど、何か?」
「データベースを更新します。宇宙人?どこの星から来ましたか?」
「青い星、テラから来た」
「データベースを更新します。テラとはどこにありますか?」
こいつ、データ収集専門なのか?無視するかな。コイツとの会話はある意味、千日手の気がする。
「太陽系だ」
「どこの太陽系ですか?」
「第13宇宙の8番目の太陽系だ」
「データベースを更新します。で、ここにはどのような用件で来ましたか?」
「<Infinite Dendrogram>のサーバーを探しに来た」
「…。何の為にですか?」
「それよりも、お前らの目的はなんだ?」
「何の為にですか?」
僕の情報を引き出すのに、自分達の情報は出さぬつもりか?
『ヤマト、ワームを混入できるか?』
『ダメです。システムが不明で、適応するワームが無いです』
『じゃ、システムを抜け。出来るか?』
『基幹部分を複写します。時間を稼いでください』
「何の為ですか?」
時間稼ぎに千日手を続けるか。
「お前達の目的を探る為だ」
「探ってどうします?意味の無い行為です」
目の前のホログラムから、記憶は読み取れない。
「お前自体がAIなんだろ?」
「探ってどうします?意味の無い行為です。今すぐ止めてください。実力行使に出ます」
このAIは短気のようだ。一瞬で闇の世界へ逆戻りした。ブラックホール攻撃かよ。それしか無いのか?あの中での戦闘を避ける為か?
『兄さん、複写できました。今から引き上げます』
手に入れた物を解析するかな。