※この作品はR-18です。

恋姫異天記~曹操伝~   作:KKS

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二十 夢想を越えて(麗羽)

 これはほんとうに現実なのだろうか。夢見心地のまま、麗羽(れいは)は天井をぼんやりと見上げている。抱きしめられたのは、陣屋に入ってすぐのことだった。背中で、曹操の存在を強く感じている。吐息。鼓動。些細な動きでさえ、今は手に取るようにわかるようだった。

 試しに、自分の手の甲をちょっとつねってみる。痛み。小さく走り抜けていく。やはりこれは現実であり、自分は思いを遂げることができたのか。笑い声。曹操のものだった。おかしな女だと思われてはいないだろうか。不安を隠すように、麗羽は顔を下に向けた。

 こんなに気安く触れ合っているのは、小さな頃以来なのである。娶るように言い出したのは自分だったが、いきなり距離が縮まるとは思いもしなかった。心の準備ができていない、とでも言えばいいのだろうか。とにかく、複数あったはずの壁が、全て突き破られているような状態なのである。そして、簡単にそれができてしまうのが、曹操という男の卓越した部分なのかもしれなかった。

 

「今思えば、ひどく遠回りをしていたような気がしてくるな。おまえとこうなる機会など、いくらでもあったはずだ。それなのに、俺はかたくなに受け入れようとしてこなかった」

「そんなこと、もう忘れてしまえばよろしいのです。わたくしだって、至らない所業をいくつも重ねてきましたもの。だから大事なのは、いつだってこれからなのではありませんか、一刀さん?」

「ははっ。麗羽に、道理を説かれてしまうとはな。だが、それも悪くはあるまい」

 

 曹操の指に、顎をくすぐられている。

 このまま、自分たちは行くところまで行ってしまうのだろうか。目線の先。そう考えてしまうと、嫌でも寝台が気になってくる。

 

「ああっ……。女性の扱いがお上手ですのね、わが君は。そ、その、わたくし、覚悟はできておりますわよ……? ですから、わが君に求められればいつだって……」

「ン……。それよりも、麗羽にわが君と呼ばれるのはさすがにむず痒いな。どうにかならないのか、それは」

 

 うなじに、熱っぽい感触が生まれている。

 軽くついばまれているだけでも、いけない気持ちに苛まれてしまうのである。だとすれば、その先の交わりにはどのような昂揚が待ち受けているのか。想像しただけでも、身体の芯がふるえてしまいそうになる。

 

「だって、仕方がないでしょう? この世にわが君足り得るお方なんて、曹操孟徳を除いてどこにもいませんもの。ですが、そうですわね……。わが君が変えろとおっしゃるのであれば、わたくしも折れるしかないのかもしれません」

 

 うなじへの愛撫が続いている。まるで、それでいいと曹操が言っているようだった。

 頭の奥が、ぼうっと熱くなっていく。溜めに溜め込んだ思いが、爆ぜようとでもしているのか。それでもいいと、麗羽は艶っぽい吐息を洩らした。

 

「それでは、貴方さまとお呼びするのはいかがかしら。んっ……。わたくしは、旦那さまとお呼びしてもよろしいのですけど」

「からかっているのか、麗羽? だったら、これはどうかな」

「んあっ、やあっ……。貴方さまの指、とてもたくましくって。んんっ……。わたくし、これだけでも感じてしまいます」

 

 手のひらで持ち上げられた乳房。ごつごつとした指が、搾り上げるように食い込んでいる。

 着物越しでも、自分で触れているのとはわけが違うのだ。疼き。もっと深くまで触れてほしい。そんな欲望が、胸の中心部からとめどなく溢れてくる。

 

「座ろうか、麗羽。おまえも、立ったままでいるのはつらいのだろう?」

 

 曹操の意のままに、寝台に腰掛けた。

 後ろから抱かれているのは同じだが、先ほどまでよりも密着するような格好になっている。熱くて硬いなにか。押し付けられている。想像通りのものであれば、曹操も自分との交わりで昂揚を得てくれているのだろう。そんなことでさえ、今は嬉しいと思えてしまう。なるべくして、自分たちはこうなったのだ。確信に近い思いが、ずっと強くなっていく。

 

「きれいな肌だ。手入れは、いつも欠かさないのか?」

「んんっ、そうですわね。幼い頃から習慣のようにやっていましたけど、これからはもっと精進いたします。そうしたら、貴方さまもたくさん褒めてくださるでしょう?」

「ははっ。何事も、ほどほどがちょうどいいのだよ。それに……」

「な、なんですの? っく、んあぁあっ……んっ」

 

 半開きになっていた胸元。いきなりあらわにされたかと思うと、曹操がやや乱雑に両手で掴んでくる。

 突然やってきた大きな刺激に、慣れていない身体が驚いてしまっている。生々しい指遣い。乳房をもみくちゃにされているだけだというのに、情欲の炎が激しくそそり立つようだった。

 

「今でさえ、おまえの肌は俺の指を狂わせているのだぞ? それを、これ以上よくしてどうするつもりだ」

「わ、わかりました。わかりましたから、んうっ……、はあっ、はあっ……!」

 

 乳房を搾り上げる動きを継続させたまま、曹操が先端に触れてくる。

 この愛撫だけでも、どうにかなってしまうのではないか。意図せずこぼれ出た唾液が、胸の上に垂れ落ちた。指で拾い上げ、曹操が乳頭に塗り拡げていく。身体が跳ねる。緩急のある刺激が、たまらなかった。甘い痺れ。全身を包み込んでいく。

 まるで、乾いていた器に水が注がれていくようなのである。ゆっくりと、だが確実に。ずっと求めていた快楽が、すぐそこにあるのか。

 指の腹。爪の先。いじめられる感覚を、好きになってしまいそうだった。曹操自身の熱さも間違いなく増している。独りよがりの快楽でないことが、麗羽もそれでよくわかっていた。

 

「これっ……。わたくし、これっ、だめなのです……! 貴方さまの指が、想像よりも遥かにいやらしくて、くっ、はあっ……!」

「悪かったな、それは。しかし、想像よりも遥かにいやらしいか。ははっ。俺に犯される妄想で、自分を慰めたことがあるような口ぶりだな、麗羽?」

「い、いやっ……! そんなこと、答えられるはずがないでしょう!?」

 

 絶頂に届きそうで、届かない。そんなもどかしさを、火照った身体が味わわされている。

 女の扱いを心得ている曹操のことだから、あえてそうしているに決まっている。身をくねらせてみたところで、器に溜まった水は溢れてくれそうにもなかった。

 羞恥すら、快楽に変えられてしまうのか。乳輪を弄んでいる指先。乳房を搾る動きも、ずっと緩慢なものになっている。いきたい。曹操の指で、いかされたい。この状態が続けば、自分はきっと気が触れてしまう。ならば、選択肢などあってないようなものなのではないか。

 

「い、言います。白状しますから、貴方さまぁ……!」

「かわいいな、麗羽は。いいぞ、好きなだけ気持ちよくなって」

 

 約定を交わした途端、控えめだった刺激が強いものへと転じていった。

 つまみ上げられた、乳首がおかしくなってしまいそうだった。駈け抜けていく悦楽。乳房だけにとどまらず、影響は指先にまで拡がっていく。ぬるりとした感触。自分と曹操の唾液が、乳首の表面で混じり合っている。耐えられるはずなどなかった。腰が浮く。恥ずかしげもなく、嬌声を放ってしまう。気を良くしたのか、曹操からの愛撫がさらに激しくなっていく。

 思考が真っ白になるまで、時間はほとんど必要なかった。

 

 

 あれから、自分はどうなっていたのか。

 見上げた先には、いつもと変わらない天井があった。寝台に寝かされている。ともすれば、軽く意識を飛ばしていたのかもしれない。あれだけ心地が良かったのだ。そうだとしても、なにもおかしくはなかった。

 そういえばと思い、麗羽は上体を起こし曹操の姿を探した。

 

「落ち着いたのか、麗羽?」

「え、ええ。でも、すごいのですわね。愛するお方との交わりが、あれほどまでに凄絶なものだなんて。わたくし、ちっとも知りませんでした」

「ン……。満足してしまったのなら、今日はこれまでにしてもいいが。となると、これの収まりのつけ方が問題になってくる」

「ああっ、熱い……。貴方さまのものが、とっても大きく膨らんでいて」

 

 腹の上に、曹操の男根が鎮座している。

 ここまで大きくなるものなのか、と感心するくらいだった。反り返り。脈打つ姿がやけに雄々しくもある。突き上げられれば、奥の奥までえぐり取られてしまうのではないか。そのくらいの凶悪さを、眼前の男根はたぶん秘めている。

 口ではやめてもいいと曹操は言ったが、それは方便に過ぎいのだろう。それに、自分の身体も曹操そのものを強く欲している。やめようなどとは、少しも思わなかった。

 

「くださいませ、このまま。夢にまで見た、貴方さまとの交わりなのです。ですから、わたくし最後までやり通したくて……。あむっ、はあっ……」

 

 互いの陰部が擦り合わながら、口づけを交わす。

 とてつもなく甘美な味で、自分は間違いなくこれに夢中になるのだろう。

 膣口を開かれる感覚。曹操にされていると思うと、昂りがまた大きくなった。下着をずらした箇所に、熱いものがあてがわれている。入り口をちょっとだけ男根の先がくぐり、様子を確かめているようだった。

 早く。早く、もっとも奥まで曹操のもので埋められたい。そんな欲求が、時間を追うごとに強くなっていく。

 

「いいな、麗羽」

「わたくしはいつでも。来てください、貴方さま。はっ、はあっ、んぐうっ……!」

 

 曹操の声。いつになく優しかった。

 本質的には、いつだってそうだ。ただ、乱世で生き抜くためには非情になるしかない部分がある。激情に囚われた時には、考えなしの戦をする場合だってある。それを含めて、自分は曹操という男を愛している。愛しているから、掛け値なしに徐州まで駈け続けることができたのだと思う。

 

「あ、あれっ? 女の初めてというものは、もっと痛いものだとばかり思っていましたのに。案外、すんなりいってしまいましたわね」

 

 不思議な感じだった。

 自分の腹の中に、曹操がいる。反り返りや脈打ちも、眼で見ていた時よりもかなり鮮明にわかってしまうのだ。

 痛みのようなものは、ほとんどなかった。それだけ、自分と曹操との相性がいいということなのか。想像していた初めてとはかなり違っているが、喜びがあることには違いない。

 

「ははっ。遊びが過ぎたのではないか、麗羽?」

「ち、違いますわっ!? わたくし、貴方さま以外の殿方と遊んだことなど一度たりとも……! 信じて、くださいますわよね……?」

「なにか勘違いをしているのではないか、おまえは。遊びは遊びでも、俺が言っているのはひとり遊びのことなのだよ。そろそろ、聞かせてくれるのだろうな。自分を慰めながら、どんな妄想をしていた?」

「んっ、はっ、はあっ……! そ、それはぁ……!」

 

 安心と恥ずかしさ。様々な感情が入り混じって、身体が縮こまってしまう。

 余裕を持った抽送を行いながら、曹操は笑っていた。乳房が邪魔になって少し見えにくいが、陰部を男根が出たり入ったりしている。指とは段違いの快楽に全身がふるえる。これがほんとうの交合なのか、と麗羽は感じいっていた。

 

「貴方さまに優しく抱っこをされながら、今のようにこうやって……。あんっ、んあっ、んあぁああっ……!」

「ほう。そうやってされるのが、麗羽の好みか」

「はうっ!? あ、貴方さま……っ?」

 

 浮き上がるような感覚。

 曹操の膝の上に乗るようなかたちで、繋がっていた。胸同士が触れている。こうしていると、ずっと顔が近く見えるのだ。興奮を得ているのか、曹操の顔がちょっと赤味がかっている。自分だってきっとそうだ。隠すものなど、もうなにもない。さらけ出して、自分たちはひとつになっている。

 

「これ、とっても素敵ですわ。先ほどまでとは、はあっ、擦れ方がまた変わって。子宮のそばまで貴方さまが来ていらしているのが、よくわかるのです」

「この体勢だと、おまえの感じている表情がはっきりと見える。気持ちいいのだな、奥を突かれるのが」

「はっ、はっ、はうっ……! だって、指ではどうやったってそんな奥までかき回せないんですもの。それに、嬉しいんですの。こんな風に愛してもらっていると、貴方さまに求められているのだと、思えてしまうのです。勘違いなんかでは、ありませんわよね……?」

「当然だ。俺は、自分自身が欲しているからおまえを抱いている。使命感や、損得を考えてしているわけではない」

 

 そう言って、曹操は小さく笑った。

 感情がどうしようもなく昂ぶってしまう。口づけたい。動いたのは、どちらからだったのだろうか。わからないまま、舌を絡ませた。その間も、男根による突き上げは絶え間なく行われている。半分嗚咽にも似た喘ぎが、麗羽の口からは洩れている。

 

「んうっ、ちゅむっ……。はむっ、んっ、んんっ、ちゅう、はふっ……」

 

 ぞくりとするような痺れ。わずかに背中をのけぞらせ、麗羽は軽い絶頂を味わっていた。

 挿入された瞬間から、長く保たないことなどわかっていた。欲しい。このまま腟内で、曹操の子種を受け取りたい。ほんものの射精も、想像とは大きく違っているのだろう。聞いた話では、たった一度の交わりで孕まされてしまうこともあるのだという。それでもいいと麗羽は思った。子を宿し、母となる。それを、愛する人との行為によって知ることができるのだ。それ以上の幸せなど、どこにあるものか。

 

「くっ、ふっ……! んあっ、はっ、はあぁあっ……! 貴方さまも、感じておられるのですね。わたくし、わかるのです。貴方さまの雄々しいものが、中でさらに太くなっていて……!」

「聡いのだな、麗羽は。おまえの中に、溜まったもの全てを吐き出したい。受け止めてくれるか、俺を」

「はい、もちろん。いつでも、射精してくださって構いませんわ。わたくしの準備は、いつだってできていますから」

 

 繋がったまま、寝台に押し倒された。

 膝の上で揺られている時よりも、曹操の力強さをよく感じられる。交合には、体勢によっていくつもの愉しみ方があると耳にしたことがあった。曹操の妻になるのだから、閨房の術もよく学んでおくべきなのかもしれない。家格や今ある力だけで一番になったところで、なんの意味があるのか。そんな考えさえも、やがて快楽の渦中に消えていった。

 

「あっ、あっ……! んうっ、ふっ、ひゃあっ……!」

 

 腰を打ち付ける乾いた音。陰部から鳴る粘っこい響き。

 両極端な二つが折り重なり、境界を壊していく。膨らむ男根。曹操の絶頂も、すぐそこにあるようだった。自分も、これ以上は我慢できそうにない。男根を締め上げる力。どうやったって、緩められそうになかった。

 

「くっ、麗羽っ……!」

「ああっ、貴方さまのものが、きゅうってして……! あっ、はあっ……! これっ、すごいのです……っ♡」

 

 熱い。子宮になにかを直接流し込まれているようなのである。

 消えていく。曹操との繋がりが曖昧なものになっていき、ひとつになるという感覚がより強くなった。下腹部を密着させたまま、曹操は動かないでいる。射精がまだ収まらないでいるのだろう。感じながら、麗羽も何度目かの大きな絶頂を味わい続けていた。

 

「あっ、はあっ、はあっ……。これっ、これが、殿方の射精なのですわね。出されただけで、わたくし幾度となくいってしまいますっ♡」

 

 一度馬鹿になってしまった下腹部が戻ってくるまで、しばらく時間がかかりそうだった。

 戦場にいたせいで、かなり溜め込んでいたのだろう。立ち上がって揺らせば、音が聞こえるのではないかと思えるくらいの量を注ぎ込まれているのである。鬱憤や悔しさのようなものも、そこには溶け出しているのかもしれなかった。自分が、それら全てを受け入れてみせる。いや、周囲に自分と同じような考えを持つ者がいるから、曹操は立ち直ることができたのか。

 

「どうかしたのか、そんな顔をして」

「うふふっ、なんでもありませんわ。けれども、ようやくひとつになれたんですのね、わたくしたち」

「回り道がなければ、もっとつまらないものになっていたのかもしれん。これでよかったのだ、きっと」

「ええ。わたくしも、貴方さまと同じ意見です。ですから、どうか今後とも」

「ああ。頼りにしている、麗羽」

 

 まぐわったまま、とめどのない会話が続いていく。

 せめて明日の朝までは、なにも考えずに交わりだけを愉しんでいたいと思った。それとも、曹操も似たような考えでいるから、挿入をやめないでいるのか。

 雑談の中、男根が硬度を取り戻していく。もどかしくなって、羽織っているだけになっていた着物を脱ぎ捨てた。

 

「あんっ、ふうっ、んあっ……! 貴方さまのもの、まだまだたくましいままですのね」

「麗羽をかわいく思っているから、自然とこうなってしまう。ただ、それだけのことだ」

 

 言葉のひとつひとつが、身体に染み込んでいくようだった。

 深く長い、二人の間に横たわっていた溝。互いを避ける壁として機能していたそれは、急速に埋め立てられ頑強な道になろうとしていた。

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