夕刻。居室にもどった曹操はまず見ないてあろう光景に直面していた。
律儀に折りたたまれた女物の衣服。その隣で、紅波が床に平伏しているのだ。指先は頭の前方できっちり揃えられていて、声をかけられるまでそうしているつもりなことが容易に想像できるのである。
少し様子を観察しながら、窓際の椅子に腰かけた。
眼で確認するまでもなく自分の動きを察知したのか、赤く長い髪がぴくりと揺れる。思わず芽生えるいたずら心。読みかけになっていた書物を開き、曹操はそこからしばらく声を発さなかった。
「んっ、はあっ……」
かすかに洩れ聞こえる吐息。紅波がこんな真似をしている理由など、ひとつしか思い浮かばなかった。
衛兵を束ねる詠から報告を受けたのだが、風が昼間出歩いた先で、張邈麾下だった者たちから怨みの刃を向けられたのだという。その場は紅波が制圧し、城郭の住人は何事もなく静かに暮らしている。自分としてはそれで問題なく、紅波は務めを果たしたと思っていたのだ。
「はあっ、ふうっ」
椅子の位置をちょっと動かし、茶褐色の尻に足で触れた。再び洩れる吐息。緊張。あるいは性的な感覚を得ているのか、紅波がわずかに身をふるわす。
誰の入れ知恵でこうなったのかは知らないが、謝罪の意図が含まれていることは確かだった。
集団の入城を防げなかったこと。それとも、他になにか負い目に感じるような理由があるのか。観察に飽きてきたところで、曹操は書物をぱたりと閉じた。鮮やかな夕暮れの日差しが、窓から差し込んでいる。
「紅波。いいから、そろそろ顔をあげろ。話しかけられなければ、朝までそうするつもりだったのか?」
「はっ。殿にお声がけいただくまでは、と決意しておりましたので。謝意をかたちにするのであればこれが一番だと、美花殿が言っておられたのです」
「桃香のところの? ははっ。確実にからかわれているな、それは。とはいえ、美花もまさかそのまま実行されるとは考えていなかったのではないか」
美花こと孫乾は、元をたどれば陶謙に出仕していた女官だった。女としての器量は抜群で、間諜としての腕にも相当長けているのである。後に桃香と同調し、徐州で起きた政変後からは劉備軍の諜報を担当していた。顔を合わせたのは数回だが、掴みきれない凄みのようなものがある女だった。
敵対が長引いていれば、面倒な相手となっていたに違いない。それが間接的に配下に加わっているのだから、自分は幸運だった。
「それで、おまえの格好のことはともかく、なにをそんなに気に病んでいる。」
「ははっ。鄄城に潜む不埒者を炙り出すためといえども、拙者は風殿に囮のような真似をさせてしまいました。それはつまり、殿のお子さまにまで危険な役割を押し付けたようなもので」
「なるほどな。だが、俺の子であれば尚更、なにも遠慮することはない。大義に貢献できたこと、曹家の子としてむしろ誇りに思うべきだ」
「ご配慮に感謝いたします、殿。かようなこと、くれぐれも今後はなきよう……」
顔を上げた紅波が、さらに謝罪の言葉を続けた。
間違いなく、それも大胆な謝罪に及んだ理由のひとつではある。しかしその表情には、まだどこか淀みが残っていることを曹操は見逃さなかった。
「紅波。顔に、別の隠し事があると書いてあるぞ。今更、おまえと風の決定にけちをつけるつもりはない。だから、話してみるといい」
「んっ……。誓って、殿を謀ろうとしたのではないのです。周泰。孫家における間諜の頭領が、あの場にいたのです。危険さだけでいえば、張邈の残党などとは比べ物にならない相手です。ただ、なんと申せばよいのか……」
「周泰の剣が、風やおまえに向けられることはなかった。すべてではないのかな、それが。戦場で手を抜くようなことがなければ、俺はいいと思っている。そうだろう、紅波?」
「は、はいっ……。拙者は殿の剣であり、影であるのです。その誇りだけは、常々」
「ならば、そうして這いつくばる必要はどこにもない。早く、服を着てしまえ」
「えっ……? と、殿が、そう申されるのであれば……」
安堵したのも束の間。紅波の声が、やけにしょぼくれている。
着物に伸ばした手がぴたりと止まる。身体の反応を見れば、どうされたいのかくらいわかりきっていた。
立ち上がり、自らの着物に手をかける。期待に満ちた眼差し。紅波の思考はすでにあらぬ方向に切り替わっていて、顔が少し赤くなっている。
「どうかしたのか、紅波。俺はただ、着替えようとしているだけなのだが」
「やっ、その……。んっ、と、殿ぉ……」
肝心な部分で口下手なところは、昔からちっとも変わっていない。
後ろに回り込み、尻を撫でた。中央にある窄み。物欲しげにひくついていて、男の情欲に訴えかけてきているのだ。
紅波と交わる時は、決まって後ろの穴を使うことになっている。諜報を担当させているだけに、下手に動けなくなるような事態は避けなければならないからだった。戦の佳境が過ぎれば、紅波にも落ち着ける時間が生まれる。小ぶりな尻肉を揉んでやると、紅波はうれしそうに声をあげた。
「んはっ、んうぅ……。よ、よろしいのですか、殿?」
「野暮なことは聞くなよ、紅波。俺のこれが、欲しくてたまらないのだろう? であれば、どうすればいいかわかるな」
「ぎょ、御意……♡ んっ、あっ、んあっ……♡ こ、ここに。薄汚い雌豚の尻穴に、どうかお情けをくださいませ。突っ込んでください、殿のご立派な逸物さまを。前戯の手間など、とらせませぬからぁ……♡」
顔を床に擦り付けた状態で、紅波が下品に臀部を突き出している。両手で割広げられた尻穴。蠢く中身が、男根による快楽をひどく求めているようだった。
薄く笑いながら、曹操は晒した男根の先を窄まりに押し付けた。肉がよろこびにふるえる。こんなことで征服欲がいくらか満たされるのだから、男というのは浅ましいものだと思えてくる。
「うぐっ、お゛っ、んあっ……♡ き、きたぁ♡ 殿の逸物さまが、わが身の深くまでぇ……!」
凄まじい締め付けが男根を襲う。
躾とばかりに、手のひらで尻を打った。紅波の口から淫らな嬌声が洩れる。自分に支配されることで快楽がより強くなるようで、いつ頃からかこうしたかたちで情交を行うのが普通になっている。
「ここまでしていいと、誰が言った。雌豚の穴を使ってもらえるだけ、ありがたいと思うのだな」
「は、はひっ……! んおぅ、んう……♡ ぐ、ぐにって、奥ぐにって押されるの、なりませぬ♡」
「はははっ。いいのか悪いのか、はっきりさせてみろ。ほら、これが好きなのだろう? おまえの淫乱な穴が、掘り返されてよろこんでいるではないか」
「あっ、んあぁっ♡ 好き、好いているのです♡ 殿に尻穴ほじくり返されながら躾けていただくと、至上のよろこびが生まれてしまう♡ はひっ、はっ、はふっ」
後ろから突くだけにも飽きてきて、紅波の身体を抱き起こした。
板のように薄い胸。勃起した乳首だけは立派に存在を主張していて、指でいじられたがっているのだ。
「くふぅ、はあっ……! はーっ、はっ、んーっ♡」
濃い女の匂いが、充満しているようだった。
容赦なく尻穴を責め立てるかたわら、愛液を垂れ流す膣を指でかわいがる。三点に同時に攻勢をかけられ、紅波の守りは早くも落城寸前になっている。
「んっ、お゛っ……♡ だめ、なりませぬっ♡ こんなにされたら、絶対いくっ♡ 殿にいじめられて、間者にあるまじき姿を晒してしまう♡」
「はしたない穴だが、絶頂することだけは許可してやる。むしろ、我慢などさせてやるものか。雌豚らしく、快楽に飲まれるのがおまえに相応しい姿なのだよ」
「おお゛っ、くっ、くるっ♡ 殿の逸物さまにお尻の奥ずんずんって突かれて、気持ちいいことたくさんっ♡ これ以上の幸せなどございませぬ♡ いくっ、いっ、あはぁあああっ♡」
がくがくと全身をふるわせ、紅波が絶頂を迎える。
呼吸に合わせて精液を搾り取ろうとする尻穴。どれだけ飲もうと子を孕めるわけでもないのに、同じ動きをしてしまうのは女としての本能が関係しているのだろうか。
「あっ、あーっ♡ こんな、こんなぁ……♡ いってるのに、まだいかされるぅ♡ 殿の逸物さまが、少しもとまってくれなくてぇ♡」
「いいぞ、紅波。この調子で、俺を気持ちよくしてみせろ。欲しいのだろう、精液が。注がれた熱で、絶頂したいのだろう」
「お、仰せの通りですっ……! 尻穴に、おっ……。殿のせーえきいただきながら、いきたいのですっ♡ そのためにも、はうぅ……♡」
甘い締め上げ。
絶頂による快楽に耐えながら、紅波はほどよい感じに男根に刺激を与えてくる。さすがの精神力で、常人ではまず行えないことだった。お返しに乳首を撫で、浮き出た陰核をこね回す。それでも必死に食らいついてくるのだから、責める甲斐があると曹操は密かに思っていた。
「きてっ、きてくださいませ、殿っ♡ あたたかい精液とぷとぷって、拙者の下品な穴に注いでぇ♡ はっ、あはっ……。逆流してしまうくらい、出されたいのです♡ ああっ、おぐっ……! またいくっ、いっ……♡ 殿、とのぉ……♡」
「ははっ。おまえのがんばりに免じて、今日はこのくらいで許してやるとしようか」
直腸の奥までねじ込み、溜めていた精液を爆発させる。
快楽に歪む紅波の声。それがなにより、自分の心を満たしてくれるような気がしていた。
「んあっ、はあーっ♡ どくどく、気持ちいい♡ 殿に射精していただきながら味わう絶頂は、やはり最高です……♡ んあっ、んっ……♡ い、いってるのに、乳首そんなにされたらっ♡ ひいっ、あっ……。あっ、ああっ、あーっ♡」
赤い長髪に顔を埋めながら、限界まで快楽を引き出すことに務めた。
こうしていると、紅波の匂いに包まれている感じがする。長い射精を続けながら、曹操は女の身体に没頭していた。
†
情交を終えて帰ろうとした紅波を、曹操は寝台に引っ張り込んでいた。
こんな時にまで、影に徹しようとするものではない。ひとりの女として欲しているのだと、示しているつもりではあったのだ。
紅波には余分な肉が少しもない分、抱き合うと強く密着することができる。本人は多少気にしているのかもしれないが、自分としてはどうだってよかった。
「張邈軍残党の引き入れ、長安の手によるものなのでしょうか」
「俺はそう考えている。正面からの戦が、まだこわいのかもしれないな。だからこうして、小賢しい方法を取ろうとする」
「やっ。くすぐったいです、殿」
頭を撫でながら頬に口づけると、紅波が身をよじらせる。
幽州を味方につけたことも、司馬懿には脅威だと思えているに違いない。天の御遣いの噂を含め、もう少し挑発を続けるつもりだった。
「朱里が桔梗をつかまえて、真桜となにか面白いことをしているそうだ。あちらとの戦の備えは、着実に進んでいる。もっとも、紅波には今までどおり、孫家を担当してもらうことにはなるが」
「殿に出仕されるようになって、朱里殿は活き活きとしておられます。水を得た魚、とでも言いましょうや。事態が落ち着くべきところに落ち着き、拙者も安堵していた次第でして。んっ、あむぅ……」
頬から、今度は唇に口づけた。
現実の小難しい話は、もうこのくらいでいいという意思表示でもある。
ゆっくりと互いの舌を味わい、熱を感じる。半ば力を取り戻している男根。やわらかな腿で挟まれ、適度に刺激を与えられていた。
「なんだ、まだ物足りなかったのか?」
「えとっ……。殿さえよろしければ、今少しだけ……」
恥ずかしそうにはにかむ紅波。
どうやら、激しいつながりは求めていないらしい。
ゆったりと続けられる素股。ならばと、染み出る愛液のあたたかさを感じながら、曹操は唇同士での愛撫に耽るのだった。