騒々しいようで、穏やかな時間の流れていた現代。そこから、おおよそ一千八百年ほど時代を遡る。
後漢末期。北郷一刀が憧れを抱き、
早朝。格子窓の向こうから、じわりと朝日が差し込んでいる。宿屋の一室。泊まっているのは、男がひとりに、女が二人だった。至福のひと時だというように、片方の女が男の寝顔を見つめている。顔にそっと触れる指先には、はっきりと慈愛が込められていた。長い前髪に隠れている表情。そこには、確かに笑みをたたえていた。
「ン……んうっ♡ じゅ……う♡ あむぅ、はふぅ、ん……、おっきい……♡ まったく、寝ているというのに、こんなにチンポを硬くしおってえ……♡」
叱責するような言葉。それとは裏腹に、女の声色はとろけきっていた。長い黒髪を揺らしながら、もうひとりの女が男の股座で頭を前後に動かしている。忠犬じみた真っ直ぐな瞳。そこには、男の肥大した男根が映り込んでいる。
汚れのたまっていそうな部分を念入りに舌で舐めあげ、唾液を塗り込んでいっている。時折ぴくりと反応する小鼻が、かわいらしくひくついている。
「ご機嫌ではないか、姉者。くくっ……。一刀のチンポが、そんなに旨いのか?」
「むぐっ……!? ば、馬鹿をいうな、
一刀。夢うつつのまま奉仕を受けている、男の名前だった。ただし、それは真名なのである。
対外的に名乗るのであれば、曹操だった。字を、孟徳という。
「くくっ……。しかし、どうにも姉者ひとりでは埒が明かないようだな。どれ、私も手伝ってやろうか」
爽やかな青みを帯びた髪をかきあげ、秋蘭と呼ばれた女は寝台の上をするすると移動していく。
身のこなしは、あくまでしなやかだった。ざっくりとした着こなしをしている就寝用の袍から、ふくよかな谷間が艶かしく覗いている。
「あっ、こらあ……!? せっかくわたしが奉仕してやっていたというのに、ずるいではないか、秋蘭」
秋蘭が妹で、嫉妬の炎を燃やしているほうが、姉の
そんな美人姉妹が、争うようにして曹操の男根に舌を伸ばしている。妖艶にほほえむ夏侯淵。長い舌を使い、敏感な部分をくすぐっている。
「悔しがっている姉者も、可愛らしいものだ。ふふっ。一刀も、きっと私とおなじような感想を述べると思うがな? んっ、ちゅう……。ぐぽっ、れろっ……」
「くそう……、私だって負けるものか。曹家一の武を誇るのが誰なのか、思い出させてくれるわ!」
そう言って、夏侯惇は血管の浮き出た竿の部分を鷲掴みにしてしまう。まさしく、目にも留まらぬ速さだった。それをみた夏侯淵は、口を丸くして感嘆の声を洩らすだけだった。
「ふふん。どうだ秋蘭、この早業はいくらおまえであっても真似できんだろう。うははっ、残念だったな。これで、今朝の奉仕の役目は私のものだ」
夏侯惇が、得意気になって勝ち誇っている。
剣を握らせれば、曹家一門で右に出る者はいないといっていいくらいの武人だった。曹操も、その豪胆さを好んではいたのだ。誰よりも強く、誰よりも正直に自分に対して仕えてくれている。ただ、時としてその性格が災いする場合があった。
必死になって、夏侯淵は笑いをこらえている。その意味が、夏侯惇にはさっぱりわからないようだった。夏侯淵の視線の先。そこでは、先ほどから曹操が身体を起こしていたのだ。それに加えて、明らかに虫の居所が悪そうだったのである。
†
あまり気分のいい起こされかたではなかった。
張りつめた男根が、力まかせにつかまれてしまっているのだ。それがわかっていて、秋蘭は黙っているに違いない。小さく持ち上げられた口角。それを見て、曹操は深く嘆息するしかなかった。
「春蘭。そろそろ力を緩めてもらえると、俺としては助かるのだが」
「くははっ、そんなに遠慮することはないのだぞ、一刀。遠慮などせずともよい。このまま、私がおまえのチンポを気持ちよくしてやろうというのだからな」
有頂天となっている春蘭が、曹操の言葉を気にもかけず強引に手を上下させていく。
ちりちりとした痛みが、時折下腹部を走り抜ける。はっきり言って、度が過ぎた擦り方だった。もはや、快楽を得るどころではなくなっているのである。表情を歪める曹操。その姿を観察しながら、秋蘭はまたしても薄く笑みを浮かべている。
「秋蘭、おまえも意地が悪いではないか。こうなるとわかっていて、姉のことを焚き付けたのではないだろうな?」
「はて、なんのことやら。私は、文字通り殿に身も心もお捧げしているような女なのですよ? であれば、そのような不忠などするはずがありますまい」
「遊びがすぎるぞ、秋蘭。どうせならば、のんびりと楽しませないか」
「うんうん、そうだろうな。どうだ秋蘭、やはり一刀は、私にこのまま奉仕されたがっていたのだ。だからだな……」
わざとらしく肩をすくめている秋蘭を尻目に、春蘭は自らの正当性を主張してみせた。
純粋そのものな瞳だった。まさか、自分が叱責されることなど、想像すらしていないのだろう。
「もういいぞ、春蘭。おまえは、俺を不能にでもするつもりか」
「へっ……? うあっ!? も、申し訳ありません、殿っ!?」
思わず、厳しい言葉を使ってしまっていた。春蘭は、それでようやく男根の状態に気がついたようなのである。言葉遣いの変化も、それに伴ってのことなのだろう。
限界まで腫れた亀頭が、もうやめてくれと懇願しているようだった。あわてて、春蘭が締めつけていた手を解放する。すると、心底疲れ果てたというように、曹操はため息をつくのだった。
「あの、殿。私の不注意で、取り返しのつかないことをしてしまい……」
「もうよいのだ、春蘭。だが、このままでは収まりがつかぬことくらい、わかっているのだろうな? それが理解できているのなら、はじめからやり直してみるがいい。今度は、姉妹二人でな」
普通であれば、呆れてやめてしまうところなのである。
それでも、曹操はあえて奉仕を再開するように命じたのだ。このままでは、春蘭はしばらく気落ちしたままになりかねない。それは、曹操の望むことではなかった。
「これでよろしいですか、殿……? どうか、私の口を存分にお使いください」
「健気な姉者もいいものでしょう、殿? ふふっ、すっかり元通りに大きくしてしまわれて。さすがは、好きものの曹操孟徳さまといったところでしょうか」
春蘭、秋蘭の二人は、公の場では自分のことを殿と呼び敬ってくれている。先ほどまでのように砕けた言葉遣いになるのは、閨の中か、ほんとうに気を許していい空間にいる時だけだった。
ここで呼び方を変えたのは、謝罪の意思を示すためでもあるのだろう。それと同時に、服従することによって得られる快楽もあるのかもしれない。夏侯の二人が、なにを考えているのか。曹操には、手に取るように理解できている。
やわらかな感触に、竿全体を癒やされていく。従順そのものな舌遣いだった。秋蘭の愛撫は的確に快楽を呼び起こし、雄の昂ぶりを呼び覚ましていく。それで、曹操はようやく一息つくことができている。
「今度は、最初からこうしてもらいたいものだな。春蘭、おまえも休んでいないで、先を咥えてみろ」
「あ、はいっ……! んぷっ、じゅう……。ン……ちゅううぅうううう♡」
唾液で溢れ返っている口内が心地良い。自分に痛みを与えてしまうことを、春蘭は過剰におそれているのか。そんなところも、惚れた弱みでかわいく感じられてしまう。
独特なぬめりのなかに放り込まれて、敏感な亀頭が舌で揉みに揉まれていく。生来、強い刺激は嫌いなほうではないのだ。尖った舌先。それが鈴口をくすぐるたびに、曹操は心地よさそうに声を洩らした。
油断すると暴走してしまう春蘭の手綱を握ってやれるのは、自分か妹である秋蘭くらいなのである。それは、閨でも戦場でも同じだった。上手く扱ってやれば、燦然とした輝きを放つ。それが、春蘭という女だった。
少々汗ばんだ髪を撫で付けてやると、春蘭は心から嬉しそうに相好を崩している。その素直さが、曹操にとってはかわいくて仕方がないのだ。春蘭のほうも、曹操の怒りが解けたことに安心しはじめているのだろう。それで、口淫のやりかたにも、ずいぶんと余裕が生まれている。
「じゅぷ……。じゅる、ン……。くぷっ……♡ はあっ、殿のチンポが、私の口のなかでこんなにも大きくなって」
「むっ……。姉者、少し交代だ。私も、殿にしっかりと気持ちよくなっていただきたいのでな」
いとも簡単に姉から主導権を奪い取り、秋蘭は男根を深々と飲み込んでいく。
絡みつく舌の感触。それに翻弄されていると、男根が半分ほど見えなくなってしまっていた。秋蘭の秀麗な眉根が、少しだけ苦しそうによっている。その様に嗜虐的な感情を揺さぶられ、曹操は思わず腰を浮かせるのだった。
「ははっ、いいぞ秋蘭。深くまで呑まれていると、おまえの喉奥の感触までわかってしまうようだ。ああ、これだけは何度味わっても、たまらないな」
「んっ、うぐっ♡ ぐぷっ、れおっ……♡ ふはぁ♡ じゅぷ、ン、ちゅう、んん……ッ♡ ふふっ。こうしていると、私も殿の熱さを直接感じることがてきてしまうのです。まことに猛々しくて、素敵です」
妹の淫蕩な姿にあてられたのか、春蘭は張りのある睾丸へ舌を這わせはじめた。
「んちゅっ、ちゅぱっ……。ああっ、ここに、殿の濃厚な子種がたくさんつまっているのですね。こんな張り詰めさせて、舌を押し返してくるようなのです」
姉妹の発する淫靡な音が、交互に耳を刺激する。
下腹部にずっしりとした重みを感じながら、曹操は快楽の波に身をまかせていた。
「射精されたいのですか、殿? ちゅう、はむっ♡ このコリコリとした内側にたまった熱い精液を、早く私に味わわせてくださいませぇ……♡」
「加減がわかるようになってきたようだな、春蘭。その調子で、続けるんだ」
「はいっ、承知いたしました。んっ……、チンポ全体がどんどん硬くなって、震えているようなのです♡ もう、秋蘭の口の中が、そんなにも気持ちいいのですか?」
睾丸をしゃぶりながら、春蘭が上目遣いに見上げている。軽く脈打つ男根。息苦しくなってきたのか、秋蘭のもらす鼻息にもかなりためらいがなくなってきている。
熱い塊。それが、もう自分ではどうにもならないくらいにせり上がってきているのだ。ちゅぽん、と動いた拍子に、男根が秋蘭の口内から抜けでていく。
「出すぞ、二人とも。おまえたちの好きなだけ、ぶっかけてやる」
「ひゃ……っ♡ んううっ、熱い♡ 殿の精液、すごい勢いできています♡」
「姉者だけではなく、こちらにもお恵みください、殿……! はあっ、んあっ、温かいです。それに、この濃厚さ……。ああっ、まだまだ出したりないのですね。でしたら、私がまた」
男根のすぐそばに、二人が秀麗な顔を並べている。
その二つの的目掛けて、曹操は膨大な量の精液を放っていった。濃密な雄の臭気。それが、部屋の内部を支配しつつあった。特濃の粘液を顔で受け止めている二人は、それがまるで愉悦なことであるかのように、満足気に笑んでみせている。
「ふふっ……。言うまでもなく、殿の精液で顔中真っ白だぞ、姉者?」
「それは、おまえだって同じではないか、秋蘭。んうっ、あはっ♡ まだ、こんなに出てぇ……♡」
情欲の波が、身体の奥底からふつふつと湧き上がってくる。
いまも二人を白く染め上げたばかりだというのに、男根は硬く反り返ったままなのである。それでも、理性を完全に失ってしまうわけではなかった。その枷がなにもかも外れてしまえば、どうなってしまうのか。それは、自分でもわからないことだった。
「ン……。ここを綺麗にしてくれないか、二人とも? それが終わったら、朝食にするとしよう。せっかく、揚州までやってきたのだ。宿屋で睦み合っているだけでは、意味がないだろう?」
「くくっ……、掃除だけで、ほんとうに収まればいいのだがな。そうやって焦らすのは、おまえの悪い癖だよ、一刀。あむっ、ちゅぱっ……♡ ああっ、たまらない味だな。腹のなかまで、これで満たされたいと思ってしまう。おっと、まだ管の中に残りがあったようだな。どれ、もう少し搾り出してやろう」
「まあ、それならそれでよいではないか。んっ、はあっ……♡ 秋蘭だって、内心期待しているのだろう? このように一刀の硬いものを見せつけられては、どうしてもだな……」
二枚の舌。仲良く、男根に付着した汁を舐めとっていく。
秋蘭が、挑発的な眼差しを送ってくる。それが合図だったのか、衣服を脱ぎ捨てた二人が、ゆっくりと身体をよせてくる。
温かな秘裂。そこに指を這わせてやると、秋蘭は心地よさそうに声をもらしてしまう。いつでも、受け入れる準備はできているようだった。
小さく鼻を鳴らし、曹操は体勢を入れ替えた。期待にふるえる瞳に、じっと見つめられている。二人は、入口を自らの指で開き、挿入を懇願しているかのようだった。
「んあぁっ♡ か、一刀が、奥まできているのがわかるぞ♡ そのまま、もっと私の深い部分を満たしてはくれないか。ああっ♡ これ、ほんとにすごいっ♡」
「こんなになるまで濡らしていたとは、おまえはいやらしい子だな、秋蘭。いいぞ。好きなだけ、絶頂するがいい。俺も、また気分が乗ってきたようだ」
「むぐぐ……。なあ、一刀ぉ……。私は、やはり後回しなのか?」
「ははっ。春蘭は、しばらく指で我慢しているのだな。ほら、もっといやらしく開いてみせないか。触って欲しいのだろう?」
「はっ、そ、それはだなぁ♡ んうぅ、一刀のゆびぃ、なかにきてぇ♡」
情欲の炎が、強く大きく拡がっていく。
結局、部屋から出られたのは、かなり後になってからのことだった。
†
陽光を手でさえぎりながら、曹操があたりを見回している。
笑い話のようであるが、春蘭と秋蘭は情交で満足しきってしまったせいか、朝食にはほとんど手を付けなかった。それでも、楽しんでいたことには違いないのだろう。館にいる時は、食事も従妹たちとともにすることが普通だった。だから、三人だけで過ごす時間というのは、ある意味貴重だったのである。
「この辺りで、一旦わかれるとしよう。日が落ちてきた頃に、また戻ってくる」
「平気ですか、殿。近頃は、以前よりはマシになってきたとはいえ、賊がでないわけではありませんし」
「心配してくれているのはありがたいが、俺とて剣が使えないわけではないのだよ。もっとも、春蘭からしてみれば、それも赤子同然なのかもしれないがな」
「い、いえっ!? 決して、そのような意味で言ったわけでは。賊ごときに、殿が遅れを取られるはずもありませんし」
「わかっているさ。それに、おまえという剣がそばにいてくれるからこそ、俺は安心して闘うことができるのだよ」
剣の腕は、それなりに鍛えてきたつもりだった。それでも、自分の身近には、春蘭という一流の武人がいるのである。本気で打ち合えば、万が一にも勝ちを得ることなどできないのだろう。しかし、それでいいと曹操は思っていた。
それぞれ不足している部分があるから、人は支え合うことができるのである。自分がいくら軍略をたてようとも、それを実行できる力がなければ、なんの意味もなさないのだ。
「ふっ。おおかた姉者は、殿がべつの女を引っ掛けてこないか、心配しているのでしょう。それは、
栄華。従妹にあたる、曹洪の真名だった。
曹家一門の当主として、もう少し節度を保たれてはいかがかしら。栄華のそんな声すら聞こえてくるようで、曹操は大きく
元来、栄華は男に対していい印象を持っていないのである。麾下ならばともかく、生活の中でまともに話しをする男は、自分くらいのものではないか。
「栄華は、少々考えが硬すぎるのだよ。金の使い方に関しても、いまだに口出しをしてくるくらいなのだからな。ともかく、この周辺ほど安全な場所など、この揚州にはないはずだ。孫堅の兵は強く、軍律をしかと守っているのだからな。おまえたちも、よく見物しておくことだ。参考になる部分も、あることだろう」
「はっ、そのように。姉者のほうも、しっかりとな」
「うん? なんだ秋蘭、わたしならばなんの心配もいらんぞ。どんな悪党が来ようと、一撃でなぎ倒してくれるわ」
「むう……。そうしたところが、心配だというに。しからば、殿」
「ああ。気をつけてな、秋蘭も」
豪快に笑う姉のことを、秋蘭は不安げに見つめている。
たまには、単独での行動もしてみるものだ。そう言い聞かせてみたものの、秋蘭のなかではやはり不安が勝っているのだろう。他人の領地で暴力沙汰でも起こせば、それこそ厄介なことになる。恐れているのは、そのあたりのことなのだろうか。
なにかあったとしても、春蘭ならば自力でどうにかしてみせるはずだ。だから、そこまで気を揉む必要はないのではないか。
そう言い残すと、曹操はひとり歩き始めた。その遥か頭上では、陽光が変わらず輝きを放っている。