卓。向かいには、曹操が椅子に腰掛けている。
吹き込む夜風。報告の書かれた紙が舞い上がりそうになり、それを急いで桂花は止めようとしている。部屋の入り口が開け放たれているから、風が自由に
こうして二人だけで話をするのにも、随分馴れたものだと思う。碗に入った白湯で唇を湿らせながら、桂花は曹操の仕草を観察していた。
下唇を撫でる親指。なにか考え事をしている場合に、よく見られる動作だった。
曹操の視線が、こちらを向いている。見られていることに、気がついたのだろうか。もっとも、二人きりなのだから、対峙している相手を見るのは当たり前のことでもある。
「なによ、あんまりジロジロ見ないでよね。アンタのねちっこい目でずっと見られていたら、孕んでしまうかもしれないでしょ。もしそうなったら、どう責任とってくれるのよ」
「どうと言われたら、そうだな……」
「ちょっと、そこで本気で悩むんじゃないわよ!? いいから、次いくわよ、次」
閑話休題。放っておけば、曹操はこちらが恥ずかしくなってしまうようなことを、延々と語り続けるにきまっている。
結局、からかわれているのは自分なのだ。書面に目を落とす曹操。その表情は、もう真剣なものへと変わっている。このあたりの変わり身の早さは、さすがというべきか。
「この調子ならば、あと五日もすれば予定していた三千は集まりそうだな。この三千は、軍の中核となっていく兵だ。俺や
「兵の調練を、あの腕力馬鹿がすることになるのよね。
「心配など無用だ。やると決めれば、春蘭はやる。まあ、決心が強すぎるために、多少行き過ぎてしまう場合もなくはないがな」
「あっそ。だったら、そっちの件はアンタに任せるわよ。あとは……、武具の買い付けについてかしら」
「武具か。
「一刀の想像している通りね。あんまり高い品は買うな、ってうるさいくらいに言われているのよ。だいたい、急ぎの用件なんだから仕方がないじゃない。諸将の集まる場所に行くんだから、外面だってそれなりに大切だと思うわよね?」
「わかった。それに関しては、俺から栄華に話しておこう。金庫番として真面目に働いてくれているのはいいが、いまはそうも言っていられない状況だ」
「頼んだわよ? 檄文を送りつけた当人が遅れて行く羽目になるだなんて、考えたくもないもの」
曹操の用意していた檄文。その効果もあってか、董卓に反感を持つ諸将が、参集に向けて動き出していた。
ただし、形としては袁紹が発起人である。曹操は、それに賛同する者として、名を連ねているに過ぎなかった。
「少しよいか、一刀? 夜も更けてきたことだし、姉者も呼んで景気づけに一杯やろうと思うのだが……」
扉の向こう側から声がする。夏侯淵だった。
言って、すぐに入ってくる。既にひとりで何杯か飲んできたのか、顔はほんのりと赤らんでいる。普段かしこまっている口調が砕けているのも、きっとそのせいなのだろう。
「……っと、申し訳ありません。
「気にするな。俺の方も、そろそろ休もうかと考えていたところだ」
軽く頭を下げる夏侯淵。曹操は、椅子の背もたれに体重を預けながら、笑いかけている。
曹操と夏侯姉妹。自分が想像しているよりも、深い絆で結ばれているのだと思う。普段馬鹿をやっていることが多い夏侯惇でさえも、曹操の側にいるときは、引き締まった顔つきになるのである。戦場ともなれば、それは尚のことだろう。
「でしたら、ご一緒に? つまみも、いくつか用意してあるのですが」
「ふん。さて、そうだな……」
探るような視線。曹操は、自分になにかを期待しているのか。もしくは、勘づかれているのかもしれない。背筋を、ぞくりとするような感覚が駆け抜けた。そこには、かすかに甘さが入り混じっている。
思い残しを、するべきではない。陳珪から、聞かされた言葉だった。それがまるで、喉に刺さった小骨のように、ずっと引っかかっている気がしていた。
考える素振りをしていた曹操が、小さく頷いた。自分の心の中。そこで、なにかが膨らんでいっている。それは、どこか焦燥にも似ているのかもしれない、と桂花は感じている。
ありえないと思うことは、もうできなくなっていた。それだけ、自分は曹操という男に毒されている。毒されることを、望んでしまっている。
「秋蘭。すまないが、今夜はもう少しするべきことがあるようだ」
「ふっ。そういうことでしたら、仕方がありませんな。では、邪魔者は早々に去ることにいたしましょう」
「そうだ。蔵に、寝かせてある酒がある。星に嗅ぎつけられる前に、開けてもよいのだぞ?」
「ほう。ですが、遠慮しておきましょう。上等な酒であれば、なにかよい事があった時分に、また殿と姉者と三人で空けたいと存じますので」
「ははっ、そうか。ならば、酒はもうしばらくそのままにしておこう」
「では、失礼いたします。いい夜をお過ごしください、殿。それに、桂花も」
意味ありげに目配せをしながら、夏侯淵は退室していった。
優美な所作。それも、相変わらずのことだった。これが、あの夏侯惇の妹なのか。ともすれば、疑いたくなるような事実ですらある。
「桂花」
曹操の声。優しげな響きの中に、なにか別のものが混じり込んでいる。どことなく、そのような雰囲気があった。
その正体は、何なのか。立ち上がり、桂花は曹操の近くに寄った。今の自分は、赤々と燃える炎に飛び込んでいく、羽虫のようなものなのだろう。腕。伸びてくる。曹操の指が、髪をやんわりと撫でている。見つめられると、もう眼を離せなくなった。
「お前を手にしようと思えば、無理やりにでもすることができた。どうしてそうしなかったか、わかるか」
「ン……、ひゃう……っ。そんなの、わたしが知るわけないでしょ……?」
「俺の思いの丈をぶつけるのは、簡単なことだ。お前のことを愛しているし、欲してさえもいる。だが、それでは意味がないと思ったのだよ」
今まであった出来事を、思い返していく。
初対面のときは、どうして自分がこんな男の話を聞かなければならないのか、と憤ったものだ。それでも、母は曹操の来訪を歓迎し続けたのである。曹操の器量。その時の自分に見えていなかったものが、母には見えていたのかもしれない。曹操も、母には特に気を許していたように思う。
そうして、時が経った。屋敷から連れ出され、二人して裸になって水を浴びたことさえ、懐かしく感じてしまう。想像していた以上に、逞しかった身体。それに、恐ろしいほど大きくなった男のモノ見たのも、あの時が初めてだった。
あれだけのことをしておいて、曹操は今更なにを言っているのか、と桂花は思う。しかし、それらは自分もどこかで望んでいたことではないのか、という気持ちが同時に湧いてくる。
毒。これは、きっと曹操の毒によるものなのだ。
時間をかけて全身に行き渡り、なにもかもを絡め取っていく毒なのである。曹操の指。耳の輪郭を撫でるように動いている。痺れ。身体に回った毒が、未知なる感覚を引き起こしにかかっている。
「お前は頑なだよ、桂花。いや、頑なであろうとしていた、と言うべきか。その心が、融ける時。桂花自身が欲してくれる時が来たら、お前を抱こうと俺は決めていたのだ」
「一刀、なに言って……。んんっ、ああっ……」
「肌を見せてくれないか、桂花。あの時のように、もう一度な」
「なに馬鹿なこと、んあっ……言ってんのよぉ……!? んっ、あんっ、そんな、耳ばっかり……」
服を脱いでみせろ。つまりは、そう命じられているのだ。曹操は耳への愛撫を続けながら、こちらの様子を伺っているだけである。
「その気になってきたようだな。嬉しいぞ、桂花」
「んっ……。わたし、どうしてこんなこと……」
上着が、床に落ちている。ほとんど無意識のうちに、脱いでしまっていたのだ。
自分の中。そこで、なにかが置き換えられていくような感覚が生まれている。羞恥の気持ち。それが、快楽に繋がっていくことがあるのか。
肌を撫でるような視線。鼓動が、高鳴っていく。着物を脱いでいる間、曹操は自分から一度たりとも目を離さなかった。
「以前にも増して、美しくなったのではないか? 隠していては、勿体ないと思うが」
「うう……。わたしの貧相な身体を見て悦ぶ奴なんて、アンタみたいな変態くらいじゃないの……?」
「そう卑下することはないぞ、桂花。それに、すぐにお前は俺のものとなるのだ。ならば、この俺ひとりの情欲がその身体に向けば、少しも問題はないはずだろう?」
「なによ、それぇ……!? いやっ、一刀の手、すごく熱くて……っ」
曹操の発する言葉。耳を通じて、身体に染み渡っていくようだった。
胸、それに脇腹。手で触れられている箇所が、際限なく熱くなっていく。
切ない痺れ。思わず、唾を飲み込んでしまう。曹操に、服従させられている。その事実が、自分に興奮を与えているのかもしれない。優しさと凶暴さ。その相反する両面を内包した手のひらが、肌を蹂躙していった。
「愛している、桂花」
「んうぅ……。そんな、何度も言わなくたっていいからぁ……!」
背中から抱き寄せられ、曹操の膝に座るような形となった。耳にかかる吐息。身体の中心に、ゾクゾクするような疼きが生まれていく。
「胸は、感じるのか? この前は、ほとんど触れてやれなかったが」
「んぅ、ふあっ……!? そこ、強すぎるからぁ……♡」
腋の下から出ている二つの手。胸を撫で、乳輪の付近をなぞっている。
痺れというより、強烈な快楽が走り抜けていくようだった。曹操の指。それが、敏感な乳首を無遠慮に刺激し始めたのである。
自分で触れてみたときとは、全く違う感じがしていた。声。洩らしてしまえば、もっと気持ちよくなれるという予感があった。
「ああっ、一刀ぉ……。それっ、気持ちいい♡ 指で転がされるの、気持ちいいの……♡」
「そのようだな。桂花の可愛らしい乳首が、もっと触ってくれと主張しているようだぞ」
「んぐっ……、そんなこと……っ!? はぁ、んふっ……、んうぅう♡ 一刀の指、すごくてぇ……」
鋭敏な感覚。それが、さらに研ぎ澄まされていくようだった。
優しく転がすような動き。段々と、強いものへと変化していく。二本の指。挟み込んだかと思うと、乳首を甘く絞り上げてくる。普通であれば、痛みが先行してしまってもおかしくはない動きだ。それでも、今は圧倒的に快楽のほうが勝っている。
「はっ、ああっ、はあっ……♡ くりくりってされるのも、気持ちよすぎてぇ♡ 一刀にされると、なんでも気持ちよくなってしまいそうで、こわいくらいなの♡」
「ふっ……。いい子だな、桂花は。だったら、これはどうだ?」
「うあっ……♡ あんっ、んうっ♡ それ、気持ちよすぎるからっ♡ 乳首から、びりびりって、身体に伝わってきてるみたいで♡」
何度も引っ張り上げられて、充血してしまった乳頭。その先端を、爪で執拗に引っかかれてしまっている。
思考。どこまでも、融かされていく。乳首による快楽。それだけが欲しくて、懇願するように背中を押し付けてしまっている。
「いつでも、イッていいのだぞ。桂花が可愛く感じているところを、もっと見せてくれ」
「ひゃ、んんっ!? かりかりされるの、しゅごいのっ♡ んあっ♡ もっと、もっとわたしの乳首いじめてよぉ……♡」
「これほど赤くなっているのに、まだ足りないというのだな、桂花は。いいだろう。跡が残ってしまっても、知らないぞ」
「いい、いいからぁ! 一刀の指で、ぐりぐりっていじめてほしいの♡ んあっ!? ああっ、きたぁ……♡ これぇ、すごくいいっ♡」
赤く腫れ上がった乳首。爪で挟まれ、さらに赤みを増していった。
限界まで膨れ上がった先端。そこを乱暴なほどに掻き乱されるのが、狂おしいくらい心地よかった。股の間に、湿り気のようなものを感じている。曹操に責められれば責められるほど、その湿り気は強くなっていく。
「いけ。イッてしまえ、桂花。お前の内なる叫びを、俺に聞かせてみろ」
「一刀、かずと……ッ♡ んんっ、もうわけわかんない! 大きいのが、ずっと拡がってくみたいでぇ……♡」
「その感覚に、身を任せればいい。安心しろ、どれだけ飛んでしまおうが、お前は俺の腕の中だ」
「うん、うんっ……! はぁ、ああっ、かずとっ、ひゃあッ♡ んあっ、んぐうぅ、いくっ、いっちゃうぅううううう……♡♡♡」
なにかが、弾けていく。そんな感覚に浸りながら、腹の底から嗚咽を洩らしてしまっていた。
思い切り捻り上げられる乳首。馬鹿みたいに、気持ちがよかった。
これまで、知ろうとしてこなかった快楽。それを、次々に与えられてしまっている。自分は、幸せなのだろう。心も身体も、満たされ融かされていく。快楽という、毒にも似た劇薬。それが、身体の隅々にまで達しているのだ。
「う……、ああっ♡ はっ、んっ、ふうっ……」
「上手くイケたようだな、桂花。しばらく、休んでいるがいい。その間に、準備は済ませるつもりだ」
「じゅ……んび? ふえっ、かずと……?」
指先を動かすことでさえ、億劫に感じられてしまう。そんな力の抜けきった身体を抱き上げ、曹操はなにかをするつもりのようだ。
背中にあるのは、寝台の感触なのだろうか。全身を伸ばしていると、眠気すらやってくるようだった。それでも、意識を引き戻されてしまう。割り拡げられた股。そこに、滑りを帯びたものが入り込んで来ているのだ。
「んうっ、なにしてるの、かずとぉ……?」
「ン……。休んでおけと、言っているだろう? まだまだ夜は長いぞ、桂花」
「んっ、わかったからぁ♡ んあっ、それ……気持ちいいかも♡」
まだ、思考を巡らすことはできなかった。言われるがままに身体を弛緩させ、曹操の行為を受け入れる。
ぬるりとしたものが、陰部を這いずり回っているようだった。先程とは違って、じんわりとした快感が拡がっていく。身体が、ずっと緩んでいくようだった。汁をすすり上げているような音。それだけが、耳に届いている。
†
天井。目を開くと、それが真っ先に飛び込んできた。
ぼんやりとしている意識。快感に慣れてきたせいで、少し眠ってしまっていたのかもしれない。
「そろそろいいか、桂花」
「いいって、なにが……よ」
腹の上。そこが、やけに温かかった。温かいというよりも、もはや熱いくらいなのである。着物を身に纏っているわけでもないのに、それは有りえないことだった。
上半身を起こしてみる。温かいのは、腹になにかが乗っているせいだ。桂花は、そう考えたのである。
股の間に感じている湿り気。寝ている間にまたなにかされていたのか、遥かにしっかりとしたものとなっていた。
「ひゃっ……!? こ、これ、一刀の……っ」
「そう驚くなよ、桂花。これが、今からお前の中に入るのだぞ? 待たされていたせいで、少々大きくなりすぎてしまったようだがな」
ずっしりと重い、肉の塊。それが、腹の上に横たわっている。
勃起した男根をはっきりと見るのは、これが二度目のことだった。赤黒く、張り出しのある先端。まるで、槍先のようにこちらを向いている。
「んっ……、やだっ。お腹の上で、いま跳ねさせたわよね……!?」
「お前の中に入りたくて、うずうずしているのだよ。わかるだろう、桂花」
雄々しいくらいに、太い幹。そこから、熱が伝わってきているのだ。曹操の熱。そう思うと、少し愛おしくもなる。
「ふ、ふんっ。したいのなら、さっさとすればいいでしょ。アンタだって、その……辛いだろうし……」
「ならば、そうさせてもらおうか。痛みが出るかもしれないが、我慢できるな?」
そう言って、曹操は先端で陰部を擦り始めた。
ねちょねちょと、はしたない感じの音が鳴っている。擦れた部分から、拡がっていく快楽。滑る汁を、塗り拡げられているようだった。それが、準備の最終段階だったらしい。
貫かれる。守ってきたものを、曹操に明け渡すときが来たというのか。息を呑んで、桂花は固く目を閉じた。
「いくぞ桂花。あまり、緊張しすぎるなよ」
「んんっ……!? んぐっ、んあぁあっ……!? 入り口から、きちゃってる……っ♡ あっ、んあぁ……っ♡」
「桂花も、手加減などされたくはないだろう? このまま、一番奥まで進めるぞ」
「あ、ああっ、入ってくる♡ 一刀の太いのが、わたしのお腹のなか、ぐいって拡げて♡」
凄まじい圧迫感。あれだけ巨大なものが入ってきているのだから、当然の感じ方だった。人間の身体というのは、よくできている。そう思わざるを得ないほど、膣口は柔軟に拡がり、曹操の男根を受け入れている。
熱。火傷させられてしまうと思うくらいの、熱だった。自分の内側。太い男根が、肉を押し拡げて入り込んできている。目指しているのは、最奥なのだろう。じりじりとした進み方だったが、その意思がはっきりと伝わってくるのだ。
「よく解しておいて、やはり正解だったな。すごい締付けだぞ、桂花」
「んっ、はうっ……! でもこれっ、痛いけど、その分アンタをすごく近くに感じられるようで……っ。ねえ、一刀もそうなの……? わたしのこと、感じてくれているの?」
「当然、そうに決まっているだろう。力に任せた締め付け方など、不機嫌なときのお前そのものだよ。しかし、探ってみるとどこかに柔らかさがある。その辺りも、桂花そっくりだな」
「な、なによそれ!? んっ……、ばかっ。かずとは、ほんとにばかなんだから……ッ」
意識を集中させてみると、わかることがあった。引き裂かれるような痛みの中。その中に、かすかではあるが快楽が存在しているのだ。
自分は、やはりおかしくなってしまったのだろうか。毒され、組み敷かれ、最後には貫かれてしまっている。それなのに、身体は悦びを得始めているのだ。
曹操の手のひら。頬のあたりを、撫でられている。そのくらいのことで、安心してしまっている自分がいた。
「あ……ああっ……、か……ずとっ」
「桂花、あと少しだ。それまで、耐えてみせろよ」
「んっ、わかった……。はあぅ、ぐいって、入ってくるぅ!? ひゃ……んんっ、うあぁあっ……!」
多分、それが最後の関門だったのだろう。全体重をかけてくる曹操。その瞬間を見計らって、桂花は唇を強く結んだ。
腹の最奥。間違いでなければ、そのはずである。そこで曹操の熱を、はっきりと感じているのだ。
身体の芯。早くも、疼き始めている。曹操に侵略されることを、自分は待ち望んでいたというのか。ない混ぜになっていく感情の中で、桂花は瞳から涙を零していた。
「無理をさせてすまなかった。けれども、確かに届いたぞ。おまえの最も深い場所に、俺はいる」
「なにも、悲しくって泣いてるんじゃないわよ。だけど、自分でもわけわかんなくてぇ……」
溢れ出す感情。自分では、どうすることもできなかった。
曹操が、黙って頭を撫でてくれている。あやされる子供のようだったが、気にしている余裕がなかった。嬉しさ。痛み。それと、ひとつになれたという達成感のようなもの。それらが、荒波となって琴線に触れてくる。
「落ち着いたか、桂花?」
「んっ……。ええ、平気よ。けれど、本当にしてしまったのね、わたしたち。んんっ……。一刀のが大きすぎて、ちょっと苦しいくらいなのかも」
「そればかりは、どうにもならないな。桂花の中が気持ちよすぎるから、俺のそこもつい反応してしまうのだよ」
笑いながら、曹操は小さく腰を動かした。そうやって、自分の反応を見てくれているのだろう。
確かに、まだ痛みはある。しかし、不思議な気持ちよさが、それを上回ろうとしているのだ。ずるりと、曹操の男根が半分ほど抜けていった。腰が浮く。自分は、その熱を無意識に追ってしまっているのか。恐らく羞恥のせいで、顔は真っ赤になっているはずである。
「あっ……。わたし、なにして……」
「心配せずとも、抜きはしないさ。くくっ……。腰を引かなくては、打ち付けてやることもできないだろう?」
「やんっ……!? い、いきなりなにするのよ!? 少しは、優しくしなさいよね」
「ははっ、悪かった。桂花は、多少乱暴にされたほうが感じるのかと思ってな」
「一刀のばかっ……。んっ、ちゅうぅう。じゅうう、じゅずぅうう……」
吸い付いてくる唇。謝罪でも、しているつもりなのだろうか。
口づけをするのは、嫌いではなかった。互いの熱が、混じり合っていく。その感覚が、身体をより熱くしていくのである。侵入してくる舌。それに吸い上げている間に、曹操は腰の動きを再開させた。
「んぐっ、じゅぷっ♡ じゅるぅうう……♡ んむっ、ちゅぱっ、ふんぅっ♡」
曹操の唾液を飲み込む度に、腹の中が熱を帯びていく。それはきっと、思い違いではないはずだった。
鉄の塊。それを突っ込まれていると錯覚してしまうくらいの、硬さと太さだった。曹操の息が荒い。意図的に締め付けているわけではないが、気持ちよくできているのかもしれない。
「ぷはっ……♡ ん……、すごいっ♡ 一刀のがわたしのなか、んくっ……めちゃくちゃにしてるみたいでっ♡」
「みたい、ではなく実際にそうしているのだよ。これがいいのだな、桂花? ははっ、可愛いらしく、中が反応してしまっているぞ?」
「そんなの、お互いさまでしょうが……! 一刀のだって、さっきからびくびく震えているの、知っているんだから」
「ああ、それもそうだ。桂花のいじらしい締め上げ方が、心地よくて仕方がない。おまえとの相性がよすぎて、狂ってしまいそうになるくらいだ」
曹操が、両手で腰を固定するように掴んでくる。重々しい腰使い。それによって、快楽が強く引き出されていく。
壁を擦り上げられる度に、眼の前で火花が散っていくようだった。荒々しい出っ張りと、幹の太さ。それを、覚え込まされてしまっているようでもある。
行為を始めた当初よりも、曹操の男根は大きくなっているのではないか。突かれながら、桂花はそんなことを考えていた。自分が、それだけの興奮を与えている。泥濘に落ちようとしているのは、互いに同じなのである。
「桂花。子種はどこに欲しい。お前の望むように、してやろう」
「こ、子種♡ かずとのっ、こだねっ……♡」
思考が、麻痺しかかっている。切ない疼き。それがまた、全身を覆っていく。
曹操の子種。どろどろとしており、独特な匂いを放っていた白濁液である。肌に浴びただけでも、あれだけの快感があったのである。それを直接胎内で受けた時、自分はどうなってしまうのだろうか。少しでもそう思ってしまった時点で、既に答えは出ているようなものだった。
「んっ、んあぁあっ♡ なかっ、なかに出していいから……っ♡」
「本当に、いいのだな? わかった。ならば今夜は、空になるまでお前の子袋を満たすとしよう」
「な、そんなっ、空になるまでってぇ……!? んっ、ふむっ、んじゅるぅううう♡」
曹操は、今夜のうちに自分を完全に染め上げてしまうつもりでいるのだろう。早まっていく抽送。思考が、かき消されていった。
まるで、地面に杭を打ち付けるかのような動きである。身体の内側から快楽の波が拡がっていき、意識を真っ白に変えていくのだ。抗いようのない快楽。まさしく、そういった類のものだった。
曹操に抉られ、突き上げられていく我が身。腰をがくがくと揺らしながら、桂花はそれを全て甘受している。
「射精するぞ、桂花。油断なく、締め上げておけ……ッ!」
「ひゃうっ……♡ ふぁうっ♡ かずとのが、なかでどんどん膨らんでっ……♡」
一際強く、火花が散った。弾けたのは、曹操も同様だったはずだ。
「愛している。俺の子を孕んでくれ、桂花」
曹操によるささやき。胸の奥。たまらなくなるほど、熱をもってしまっていた。
わたしも、あなたを愛してる。そんな想いは、絶頂の嗚咽のなかにかき消されていく。
脈動。自分の中で、達した男根が子種を吐き出しにかかっている。熱い。ひたすらに、熱い塊をぶつけられてしまっている。その熱が、自分に幸せをもたらしてくれているのだ。そのことに気づいてしまうと、また結合部が甘くしびれはじめた。
「んんっ、まだ出てる……♡ こっ、これ以上は、入らないからぁ……♡」
「ふっ、馬鹿を言うな。締め付けてきているのは、お前の方なのだぞ」
腰を押し付けるような動きをしながら、曹操は機嫌よく笑みを浮かべている。
搾り取っている、というような感覚はあまりなかった。ただ快楽に身を任せ、曹操の熱を受け止めているだけに過ぎないのである。それでも、雌の本能がそうさせてしまうのかもしれない。
自分は、確かに女となったのだ。曹操の女。今夜のことは、永久の契りを交わす儀式のようなものなのだろう。桂花は、思考の鈍くなった頭で、そう理解していた。
†
あれから、何度抱かれたのだろうか。さすがに曹操も休む気になったようで、今はともに寝台で横になっている。
枕代わりにした、曹操の腕。その位置を変えながら、桂花は寝返りを打っている。腹の奥。上から擦ると、熱さがわかってしまうようだった。飲みきれないほど注がれた子種。それが、じんわりと蠢いている。
流れ出した余韻。内股を伝うようにして、下腹部を汚しているのだろう。穿たれた穴は、まだ芯棒を求めて疼きを放っていた。
「まったく、どうしてくれるのよ。わたしのここ、ちゃんともとに戻るんでしょうね?」
「なに、そのうち熱も引くさ。お前の口調に、棘が戻っているようにな」
「はあ……? なによ、それ……。んむっ、ちゅうぅ、んふうぅ……♡」
抗議の言葉。それは、無理やり封じ込まれてしまう。
曹操の舌遣い。いくらか、労いが込められているような気がしていた。思わず身体に抱きついてしまったのは、その甘さに釣られたせいに違いない。自分にそう言い訳をしながら、桂花は曹操の背中に腕を回している。
「今夜は、夢見がよさそうだ。そうは思はないか、桂花」
「んっ……♡ 恥ずかしいこと言わないでよね、ばか一刀」
ぴたりと身を寄せ合う。鼓動の音すら、聞こえてしまう距離だ。
夢。曹操は、どのような夢を見ているのだろうか。
覇者への道。それはずっと遠くにあり、まだ
天命。夏侯惇や夏侯淵も、それを感じているはずだ。今となっては、自分にもそれがはっきりと見えている。
「どうかしたのか、難しい顔をして」
「な、なんでもないわよ。いいから、もう休みましょうよ」
「ン……、そうするか。おやすみ、桂花」
「ふんっ。はじめから、素直にそうしていればいいのよ。……おやすみ、一刀」
目を閉じる。不思議な安らぎ。それがずっと、側にあるのだ。
全身に温もりが拡がっていく。自分は、そこに幸せを感じているのか。戸惑いは、もうなかった。まぶたを閉じる。子種を注がれたばかりの腹。そこが、まだ熱を帯びていた。