仕事に区切りをつけた曹操は、居室に諸葛亮を呼んでいた。机を挟んで椅子に腰掛ける。女中に用意させた茶を、曹操は一口だけすすった。
もう少し、踏み込んだ話をしてみたくなったのである。どのような方法で、東郡を狙う賊を一挙に撃滅するべきなのか。当然、自分の中でこうだという考えは出来あがっていた。ただ、それを諸葛亮にも尋ねてみたくなったのである。
澄んだ瞳。それが、じっと自分のことを見つめている。部屋に二人きりだという状況が、どうしても緊張を生んでしまうのだろうか。諸葛亮の表情はやや強張っていて、口も真一文字に結んだままだ。
静寂を打ち壊したのは、鈴の音だった。それは、諸葛亮がいつも首につけているものだ。
淡くて、深い色をしている瞳。それが、少しだけ見開かれる。荀彧の持つ、四方全てを刺すような鋭さ。諸葛亮からは、そこまでのものは感じられなかった。けれども、気にかかってしまうのである。
今はまだ、素質が眠り臥せているだけなのか。それを知りたくて、曹操は諸葛亮の顔を見つめ返した。
「水鏡……
「修めるなどと……。ですが、先生のもとでは、多くのことを学ばせていただきました。時にはわたしたちと共に悩み、答えを模索する。水鏡先生がそんなお方だから、門下生が絶えないのだと思います。わたしも
「俺は、橋玄さまから生きる術を教わった。なるほど、考えてみればあの方も、俺にとっては母のようなものか」
「橋玄さま? えっと、それはあの三公を歴任された、橋玄さまのことなんでしょうか?」
「ほう。さすがに、よく存じているようだな。師は厳粛だったが、どこか母のような優しさも備えているお人だった。それに時折、閨に招かれては様々な手ほどきを受けてな」
「はわっ!? ね、閨にですか!? 厳しいだけでなく、大胆な部分もあったんですね、橋玄さまには」
興奮気味に、諸葛亮はまくし立てた。
父との対立。そこにも、橋玄の影響があったのかもしれない。
性質の異なる、父と母。その狭間にあって、曹操はここまで歩んできたのである。そして、それはこれからも続いていくことだ。
諸葛亮の肩の力が抜けたところで、曹操は本題を切り出した。
「諸葛亮。この東郡が、賊につけ狙われていることは知っているな。おまえも襲われた、あの賊どもだ」
「はい。曹操さまが打ち払われていなければ、もっとひどい状況になっていたと聞き及んでいます」
「賊将である于毒は、いま河内郡の朝歌に滞在しているそうだ。そこから、反撃に移ろうとしているのだな」
「いつまでも、ご領内を不安定なままにしておくわけにはいきません。曹操さまは、一度にその危険を取り除いてしまおうとされているのでしょうか」
「その通りだ。賊軍は、近いうちにまた攻め寄せてくるのだと思う。その時に、どう動くべきなのか。諸葛亮、おまえならばどう考える」
曹操が拠点としている東武陽は、東郡でも東に寄った地だった。
西方、河内郡にいる賊軍は、それを好機と捉えているはずである。それに、荀彧に命じて、餌を撒かせているところでもあった。郡境に点在している城。そこに、曹操は兵糧を集めさせているのだ。少々罠の匂いがしようが、賊は必ず飛びついてくるに違いない。曹操は、そう確信していた。
「根城がある限り、賊は何度でも集結し、郡内を荒らすことでしょう。ですから、ここでそちらを徹底的に叩くべきだ、とわたしは思います。中入りに使えるような部隊があれば、いいのですが」
「部隊については、心配無用だ。しかし、やはりおまえもそう考えるか。司馬徽殿は、よい弟子を持たれたようだな」
「ええっと……。ということは、曹操さまもわたしと同様のお考えを?」
「ふっ。結果が出れば、答えは自ずとはっきりしてくるものだ。そのための仕込みを、麾下の者に行わせている最中でな」
諸葛亮が、平べったい胸を撫でている。軍師の真似事のようなやり取りではあったが、それなりに手応えをつかめたのだろう。
好感触を得ていたのは、曹操も同じだった。
実戦で磨けば、諸葛亮はさらなる輝きを放つはずだ。司馬徽のもとを飛び出したのは、仕官先を求めてのことではないのか。もしそうなのであれば、このまま放っておくこともない、と曹操は思っていた。
一旦敵軍を領内に引き込んでおき、別働隊を使って本拠地を陥落させる。それが、曹操の思い描いている、戦の段取りなのである。
本拠地を攻撃するためには、とにかく別働隊を迅速に動かす必要がある。そのための間道の選定を、荀彧や夏侯淵は担っているのだ。
「あの、曹操さま」
胸の前で結んでいた手。それを両膝の上に置いて、諸葛亮は言った。
「曹操さまは、将来的にこの国をどうするべきだとお考えなのでしょうか。不躾な質問ですが、ぜひお聞かせ願いたいのです」
「国についてか。ン……、そうだな」
試されている。思い切ったことをしてくるものだと、曹操は感心していた。
存外、度胸はあるようだった。思い返してみれば、賊に囚えられていた時から、その片鱗を覗かせていたのである。囚われていた状態で戦に巻き込まれてしまったのだから、もっと喚き散らしていてもなんらおかしくなかったのである。粗相をしていなかっただけでも、褒めてやれるくらいだった。
「この国には、支配者たる帝がいる。世の乱れが、どこから来ているのか。それは帝の力が衰えているせいだと、俺は思っている」
「曹操さまは、長安に移る董卓に、単身挑まれたようなお方です。それは、身動きできずに苦しまれている帝を、お救いしようと思われての行動だったとお聞きしているのですが」
諸葛亮の表情に、疑念が浮かんでいる。
董卓を単独で追撃したことで、曹操の勇名は拡がっていた。曹操は、帝救出のために身を投げうった忠臣である。そんな尾ひれがついた話を、諸葛亮はどこかで耳にしたのかもしれない。
「力の衰えた帝では、国をまとめるていくことなど不可能だ。太平道による叛乱は、将軍たちの奮戦のおかげでなんとか退けられた。しかし、そんな幸運が二度も続くとは限らないのだよ。烏丸や匈奴といった連中も、外からこちらを狙っている。国を守護していくためには、新たなる覇者が必要なのではないか。諸葛亮。その時、飾り物になり果てている帝は、どうなると思う」
「そんな……。覇者が必要だという意見には、わたしも賛同いたします。ですが、帝はこれからも、帝でいていただくべきなんです。長く続いている帝の存在は、わたしたちの心に浸透しています。それを破壊してまで、新たな王朝を建てる意味などありません」
「覇者となった者が、いまの帝を支えていけばいい。そう思っているのだな、おまえは。だが、そんな体制がいつまでも保つわけがあるまい。きっと、岐路に立たされているのだよ、この漢という国は」
現状だけで考えれば、帝にも価値がある。それがわかっているから、董卓も新帝を擁立するなどして、体制の維持につとめているのだ。
誰もが認めるような覇者。それが世に現れたとき、この国はどうなっていくのか。諸葛亮は、それでも漢を生き永らえさせるべきだと主張している。
「覇者が生まれるたびに帝が変わっていたのでは、乱世は永久に終わりません。それは、曹操さまも理解されているはずです」
「未来永劫に続くものなど、どこにもありはしないのだよ。それに淘汰がなくては、淀みを消すことすらできなくなるのだぞ」
「ですが、曹操さま」
「議論はこれまでだ、諸葛亮。あたりを散歩でもして、気分を変えてくるといい」
熱っぽく論じていた諸葛亮が、うつむきがちに息を吐いた。
このまま国の行き着く先を論じていても、平行線をたどるだけなのである。諸葛亮の意見は、恐らく変わらないのだろう。もっと世をよく知れば、あるいは軟化する時が来るのかもしれない。だが、それは自分の願いに過ぎなかった。
「安心しろ。意見が合わないからといって、おまえに危害を加えたりはしない」
「承知、しています。曹操さまのお優しさを、わたしはこの身で知ってしまっているのですから。そうでなくては、こんなに胸が苦しくなるはずがありません。それだけに、ほんとうに残念でならないのです」
諸葛亮の声。最後の方は、ほとんどかすれてしまっていた。
居室で、曹操は一人きりになった。足音。引きずるようだったそれが、徐々に遠くなっていく。
結局、述べたことが撤回されることなかった。諸葛亮は、自分との決別を悲しんでくれていたのだろうか。その眼の端には、光るものがあったような気がしていた。
言いようのない疲労。それを全身に感じて、曹操は椅子に深く座り込んだ。自分は、まだこのような気持ちになることがあったのか。それが意外で、曹操には滑稽にすら思えていた。
窓の外。一羽の鳥が、いずこかへ飛んでいくのが見えている。
†
荀彧と入れ違うようにして、諸葛亮は東武陽を去っていった。
あのような議論を、するべきではなかったのか。だが、いずれにしろ自分は、諸葛亮の才を欲していたのだと思う。
共に旅をしているくらいなのだから、鳳統にも相応の才知があるはずだった。それがわかっていながら、自分には諸葛亮たちを送り出すことしかできなかった。二人は、やがてどこかで翼を広げることになるのだろう。
曹操は、荀彧を閨に呼んでいた。なんとなく、心に隙間が空いてしまったような気がしていたのだ。荀彧を抱けば、それを忘れることができるはずだ、と曹操は思っていた。
入ってくるなり、荀彧に服を脱ぐことを命じた。白い肌。すぐに、あらわになっていく。心構えは、できていたのだろう。それに、曹操を求めているのは、荀彧もおなじなのだ。
「んっ……。それで、よかったのかしら? その諸葛亮って子を、すんなり行かせてしまっても」
「殺しておくべきだったといいたいのか、
「だって、そうじゃない。諸葛亮は、アンタの戦略だって読んでいたんでしょう? 危険な芽は、摘めるうちに摘んでおくべきなのよ。あんっ、ちょっと……。んっ、ちゅう、ちゅく……」
荀彧の肌を、手のひらで撫で回した。小ぶりな尻。揉み込んでやると、荀彧は小さく声をもらす。
諸葛亮を、始末しておくべきだ。荀彧であれば、そう言うに違いないと曹操はずっと思っていた。
この鋭さが、自分にとってはきっと心地いいのだ。唇を吸い上げながら、曹操はそんな風に感じていた。ためた唾液を、口内に送り込んでいく。それを、荀彧は喉を鳴らして飲み込んでいった。
「ふはあっ、んくっ……♡ まったく、あとで後悔したって、わたしは知らないんだから」
「言うな、桂花。それに、考えてもみろ。意見の相違から逆上した曹操が、旅の少女を惨殺した。そのような風聞が一度でも立てば、これは致命傷にもなりかねん。そうなっては、俺は数多のものを失うことになる」
「表面的な事情はなんにせよ、ほんとはその子のことが可愛くなってしまったんじゃないの?
「それも、ないとは言い切れないのだろうな。ただし、そうだな。諸葛亮を、ひとりの女というよりも、年の離れた妹のように感じていたのかもしれん」
「なによ。それって、結局おなじことじゃない。やっ、ああっ……」
荀彧が悪態をついた。
湿りを帯びた秘裂。そこに指を差し込みながら、曹操は寝台に腰を下ろした。
狭い膣内。それが、柔軟に二本の指を咥えている。どうして、動かしてくれないのか。荀彧の潤んだ瞳が、そう非難しているようだった。
「俺は、少し疲れた。物足りないのであれば、勝手に動いてもよいのだぞ?」
「はあっ? 誰が、そんな淫乱女みたいなこと……っ♡」
気丈にしているつもりなのだろうが、口からは甘い声がもれてしまっていた。
全身の昂りは、口づけをした時から継続しているのだろう。可愛らしくふくらんだ乳首が、赤く色づいている。
滑るような感触。それが、秘裂に差し込んだ指を包み込んでいる。感じたくないのであれば、動いて指を抜いてしまえばいいだけなのである。それをしないということは、荀彧もどこかでこの状況を楽しんでいるということなのだ。
腰。わずかに、左右に揺れている。快楽を得たがっている本能が、理性を超越しようとしているのか。温かさが、少しづつだが熱さに変わっていく。内股に力が入ったせいか、愛液がぐちゅりと音を鳴らした。
「はあっ、ゆびぃ、一刀のゆびがはいってぇ……♡」
「この程度で、満足できるのか? しっかり動かなくては、身体はいつまでも辛いままだぞ」
「やあっ。そんなの、いやなのっ♡ んっ、ああっ♡ これ、気持ちいい……っ♡ 自分で気持ちよくなってるとこ、一刀に見られるなんてぇ♡」
「ふふっ。桂花、その調子で、どんどん気持ちよくなってみるがいい。自慰をしているおまえを見ているのは、ただひとり俺だけなのだ。なにも、恥ずかしがることはないぞ」
「そんな、自慰なんて言わないでよっ♡ わたしは、一刀の指で気持ちよくなってるだけなんだから♡ アンタにされてるから、仕方なく感じてあげてるに決まってるでしょ♡」
息遣いが、荒くなっていく。それに伴い、腰の動きも激しくなっていった。
指が、上下に擦られている。そのままでいるのが辛くなったのか、荀彧は曹操の肩に両手を置いている。
「俺の指は、そんなにいい具合なのか? ふっ。汁が、腕まで垂れてしまっているな」
「いやっ、見ないで。ああっ、わたしのおまんこ、ぐちゅぐちゅいってるの♡ 動いてるとこ、一刀に全部見られてるのぉ♡」
「ここも、触れてほしそうにしているな。少し、手伝ってやろう」
片方の乳首を、指でつねりあげた。嬌声。荀彧の腰が、がくりと崩れ落ちる。
落下の反動で、挿入されている指が奥の方まで入り込んでいく。膣肉を割り裂き、刺激を与えていくのだ。絶頂に近い快楽を、荀彧は得ているのだろう。唾液が、だらしなく垂れ落ちている。それでも、腰の動きだけは止めたくないようだった。
「あぅう、んぐっ……♡ これ、これだめなの。アソコも乳首も、一刀にいっぱいされたら♡」
「されたら、どうなるのだ? ぜひとも、教えてもらいたいものだな」
「んあうっ!? ひゃふっ、んんっ♡ ああっ、気持ちいい♡ はあっ、それ好きなの。乳首、かりかりってされるの好きぃ♡」
腰を揺らしながら、荀彧が絶叫する。
溢れ出た愛液が、手首まで伝ってきている。しばらく会えなかった分、昂りを抑えられないでいるのだと思う。
締め付け。切なく、指を包み込んでくる。荀彧の自慰に合わせて、緩急をつけて乳首に愛撫を加えていった。また、腰の動きが怪しくなり始めている。蠢動する膣肉。それは、大きな絶頂の前触れなのだろうか。
快楽を貪ることに没頭していた荀彧が、突然顔を上げた。
その表情には、焦りすら見られるのである。膣内の締りが、さらにきつくなっていった。荀彧が、内側から突き上げてくるなにかを我慢しようとしている。曹操には、そうとしか思えなかった。
「くくっ。どうかしたのか、桂花。かなり、苦しそうにしているようだが」
「んっ、やっ……。だめ、だめなのっ♡ ひゃふっ、んあっ♡ ほんとは……わかってるんじゃないの、アンタ……!?」
苛立ちと焦り。その両方が混在している顔が、快楽によって歪んでいく。
閨では、全てをさらけ出せばいい。荀彧の唇を吸い上げながら、指で快楽を送り込んでいった。悲鳴に近い喘ぎ。それが、室内に響き渡っている。
「あむっ、んちゅっ♡ んむぅ♡ いやっ、ほんとに、でちゃうからあ……! これ以上されたら、わたしでちゃうのよぉ♡」
「出る? 一体、なにが出るというのだ」
「ううっ、ばか! 一刀の、ばかぁ! んうっ、ふあぁあっ♡ おしっこ、おしっこでちゃうの……っ♡ 絶対見られたくないのに、一刀の眼の前でおしっこもらしちゃうよぉ……♡」
叫びを上げる荀彧。その瞬間、膣内の締め上げが一層きつくなった。
悪寒でも走ったかのように、熱っぽい身体の肌がざわついている。締め付け。少しの間を置いて、また強くなっている。
陰核に責めを加えながら、曹操は荀彧の股ぐらが見えるように床に膝をついた。今度は、指ではなく舌で刺激を与えていく。荀彧による最後の守りを崩すには、それで十分だった。
「だしてみろ、桂花。おまえのすべてを、俺が受け止めてやる」
「ああっ♡ でるっ、もうでるのっ♡ 一刀に、おしっこするとこ見らて、わたし気持ちよくなっちゃうのぉ♡ ひゃふっ、んっ、んあぁあ……っ♡」
愛液よりも熱い液体が、陰部からほとばしった。
よほど我慢していたのだろう。その流れは、激流と表現するべきなのかもしれない。
尿道に口をつけ、放出される液体を飲み干していく。何にも比することのできないような味が、舌を駆け抜けていく。小水をぶちまけながら、荀彧の身体は絶頂を迎えていた。
放尿しながら、膣内を擦り上げられている。以前であれば考えられないような痴態が、興奮を後押ししているのだろう。
「はあっ、あはっ、はああぁあっ……♡ おしっこ、止まらない♡ んんっ、そんなっ、音を立てて飲まないでよ♡ 一刀に、ごくごく飲まれちゃってる……♡ なんで、こんなのが気持ちいいのよぉ♡」
かなりの量を、曹操は飲み干していた。肩で息をする荀彧。さすがに、勢いは弱まってきていた。
舌を使って、割れ目全体をよく舐め回していく。脳髄まで突き抜けていくような刺激。それを、曹操はじっくりと味わっていたのである。
洪水の収まった秘裂を撫でる。荀彧は半ば放心しているような状態で、続きはまだできそうにもなかった。
「あはっ、んうぅ……。だめだっていったのに、かじゅとの……ばかぁ♡」
放心したまま、荀彧が罵声を絞り出している。
小水で汚れた口もとを手で拭って、曹操は立ち上がった。
立っているのもままならない荀彧を抱き上げ、寝台にゆっくりと下ろしてやる。法悦によって上気した頬。そこを、曹操が愛おしげに手の甲で撫でるのだった。
夜は、まだ当分のあいだ終わらないのである。余韻が身体を襲っているのか、荀彧はまだ下腹部をひくつかせている。その様子を見ながら、曹操は不敵にほほえんでいる。