※この作品はR-18です。

恋姫異天記~曹操伝~   作:KKS

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閑話 外史の狭間(愛紗、桃香)

 居並ぶ兵卒。戦陣特有の高揚が、伝わってくるようだった。

 周囲には、見たことのない軍旗が林立していた。十字と、丸を組み合わせたようなもの。字ではなく、これはなにかを表す紋様なのか。それが、旗のすべてに描かれているのだ。

 ここは、どこなのだ。愛紗(あいしゃ)はそう叫ぼうとしたが、うまく声にならなかった。

 自分の身体が、他人に支配されているような感覚。これは、きっと夢を見ているせいなのだろう。

 一瞬だけ訪れる目眩。その間に、場面がべつのものに入れ替わっていく。

 

「ああ、ここにいたんだね、愛紗(あいしゃ)

 

 誰かに、声をかけられた。

 聞き覚えのある声。振り返った先にいたのは、やはり見知った人物だった。

 曹操。しかし愛紗は、どこか風貌に違いを感じてしまっている。着ている服が、まず見たことのないものだった。やけに真っ白く、陽光を反射して輝く上着。それに、表情も幾分か優しげであるように思えていた。歳に関しても、自分の知っている曹操よりもたぶんいくらか若いのだろう。

 曹操に似た男が、近づいてくる。

 不思議と、笑みがこぼれてしまう。夢のなかで、自分は曹操と同じ顔をもつ男と、ずっと懇意にしているのか。現実では、とても考えられないことだった。自分は桃香(とうか)の臣で、曹操とはたまたま共通の敵と闘っている。それだけの、はずだった。

 

「これは、ご主人様」

 

 夢のなかで愛紗は、曹操に似た男のことをご主人様と呼び慕っている。自分の意志とは関係なく、口だけが動いているようだった。呼ばれて、男のほうもほほえんでいる。

 温かな感情。どうして、自分はこんな気持を得てしまっているのだろうか。そもそも、眼の前にいるのはほんとうにあの曹操なのか。そんな疑念が、次々に湧いて出ては消えていく。

 出陣の時が、近づいているようだった。

 感覚的にわかったことだが、先鋒を受け持っているのは、たぶん自分の手勢なのである。それで、曹操そっくりな男は、激励に訪れているのかもしれない。

 

「敵には、あの曹操がいる。わかっているとは思うけど、気をつけて」

「承知しております、ご主人様。この一戦で、やつらに北郷軍の精強さを見せつけてやりましょう。連合軍は、一枚岩ではありません。そこに、必ずや付け入る隙があるはずです」

「ははっ。それでこそ、愛紗だな。期待しているよ。だけど、無理だけはしないように」

 

 夢の中の自分は、北郷軍と言ったのか。

 記憶にない名称。それでも、十文字の旗を見上げていると、なぜだか心が熱く燃えたぎっていくのである。

 それだけではなく、敵軍には曹操がいるようだった。混乱が、よりいっそう深くなる。自分と話している男は、感じていたように曹操ではないのだ。

 北郷。それが、この男の名前なのか。

 断片的でしかなかった欠片同士が、結びついていく。

 北郷一刀。曹操の真名と合わせてみると、やけにしっくりきて、それが正解のように思えてくるのだ。表現しようのない確信。それが、愛紗の胸の内にはあるのだった。

 視界。揺らめいていく。ここにきて、急激に意識が薄くなっていく。夢の終わり。ここが、そうだというのか。

 息苦しさに、愛紗はもがいていた。自分とは、いったいなんなのだ。この夢は、なにを暗示しているのか。わからないことが、あまりにも多すぎる。

 

「うっ、はあっ、ふうっ……。北郷。北郷とは、なんなのだ。それに、わたしは」

 

 目覚めた時には、寝台の上にいた。駆け巡る自問自答。そのせいで、軽く頭痛がしているようだった。

 横になったまま、身体を少し動かしてみる。支障はない。それで、夢から抜け出したことを愛紗は理解していた。

 寝ているのは、陣屋のなかだった。

 曹操は、黄巾軍が音をあげるまで、締めつけを緩めないつもりでいるのだ。起伏を利用して構築された陣の堅牢さは見事であり、疲弊した軍勢ではまず落とせないような代物となっていた。

 眠り始めてから、あまり時間が経っていないのだろう。陣屋内部は暗く、あたりも静まり返っている。起きているのは、交代で警固にあたっている歩哨くらいなのである。

 近くでは、桃香と鈴々(りんりん)が眠っている。どちらも、いまは熟睡している時間のはずだった。

 

「んっ、んあっ、ああっ……♡」

 

 はじめは気のせいかとも思ったが、確かに声が聞こえてくる。

 ここに寝ているのは、自分たち三人だけだった。耳を澄ましてみたが、鈴々の寝言ではない。残るは、桃香だけだった。

 

「一刀さん……♡ やっ、だめ、そんなっ♡」

 

 性知識にうとい愛紗ですら、行為の内容を理解してしまえるほどの(あで)声。

 確かめるまでもなく、桃香は曹操のことを想って、みずからの身体を慰めているのだった。

 こんなことを知るくらいなら、あの夢の続きを見せられているほうがよっぽどましだった、と愛紗は唇を噛む。

 桃香が、曹操に心を寄せている。そんなことくらい、わかっていたはずだった。だが、よもやこれほどまでに思慕が強くなっていたとは。

 戦場での心労が、あるいは影響しているのかもしれない。いままで以上に、桃香は戦に対し果敢さを発揮しつつあった。そのこと自体は喜ばしい変化だったが、同時に桃香は心を苛んでいたのかもしれない。

 

「あんっ、やあっ♡ もっと、もっと触ってほしいの♡ 一刀さんの太い指で、わたしのおっぱい、もっと苛めてくれたっていいんだよ♡」

「くっ……。申しわけありません、桃香(とうか)さま。わたしは、少しも理解できていなかったようなのです。あなたさまが、こうなってしまうほど苦悩されていたことを。それなのに、あのような夢を見てしまうなんて、わたしは……」

 

 (ひと)()ちながら、愛紗はおのれの認識の甘さを痛感していた。

 考えるほどに、逃げ場のない坩堝に閉じ込められていくようなのである。

 自分や鈴々、それに義勇軍という存在が、桃香の選択肢を狭めてしまっているのではないか。もっと言うと、苦しめてしまっていることすらあるのかもしれない。

 身ひとつで動けるのであれば、桃香はいまごろ曹操に帰順していてもおかしくはないのである。

 曹操には、力がある。それに、乱世の平定を志してもいるのだ。その姿勢、闘志には、英雄と表現しても過言ではない力強さを宿してもいる。乱世の奸雄、とは言い得て妙な表現なのたろう。むしろ乱世を食い尽くそうとしているのが、曹操という男なのだ。

 そんな曹操を慕っているのは、鈴々も同じだった。自分だけが、独立を保とうと躍起になっている。そんな気すら、いまとなってはしてしまう。

 これまで、自分たちはずっとひとつの方を向いてやってきたはずだった。そこに、少しずつ食い違いが生じつつあるのか。

 こんな思考を、得てしまうこと自体がおかしいのだ。きっかけをつくっているのは、間違いなく曹操だった。夢で見たあの男とは、異なる厳しさを備えている。苛烈に乱世を断ち切ろうとしているのが、曹操という男だった。

 どうすれば、もっと桃香に寄り添うことができるのか。愛紗が思っていたのは、おそらくそのことだけだった。

 

「はっ、はあっ……。わたしは、愚かだな。こんな、こんなことで、なにがわかるというのか」

 

 気づいた時には、胸に触れてしまっていた。

 先ほどまでの夢。それに、知ってしまった桃香の痴態。その二つが、自分をおかしくしてしまっている。そうとしか、考えられなかった。

 桃香は、どのような慰め方をしているのか。

 無為に大きくなってしまっている、自分の胸。それを服の上から、やや乱暴に揉みしだいていく。感覚が、まだつかめていない。気持ちいいと感じるところまでは、到達していなかった。

 

「一刀さん♡ それ、そこ好きなのっ♡ そこ、クニってされると♡ んっ、ふあぁあっ♡」

「桃香さま、すごく気持ちよさそうにされていて。こうしてみれば、よいのだろうか……?」

 

 鼓動。緊張によって、妙に高まっているようだった。

 そばにいるのは、桃香だけではないのだ。こんな馬鹿げたことをしている自分を、鈴々に見られるわけにはいかない。その気持ちが快感を生むことを、愛紗はまだ知らなかった。

 

「これ、さっきと少し違う……。自分で擦っているだけだというのに、一刀殿に触れられていると思うと、あっ……んあっ♡」

 

 自分の口から出た声だとは思えなかった。

 左右の手。それを曹操のものに見立てて、乳房を揉んでいく。不快だとは、なぜだか思えなかった。桃香と一緒に、かわいがられている。そんな風に想像すると、興奮がまた一段と高まっていくのだ。

 

「あっ、ああっ……。一刀殿ならば、もっと強く握られるのだろうか? くそっ、こんなにも、もどかしく感じてしまうとは」

 

 胸を覆っている部分の衣服を、緩めていく。

 後戻りなど、とうにできなくなっている。乳房を指で絞り上げながら、乳頭に指で触れていった。しびれるような快感。それが、突起からじんわりと伝わってくる。

 桃香は、自慰に夢中になっている。もれ聞こえてくるあえぎ声。かなり、感じてしまっているようだった。

 

「ひ、ひあっ♡ これ、いいよぉ……♡ おっぱいぎゅってされながら、おまんこくちゅくちゅってされるの、好きぃ……♡」

「ん、はあっ、ああっ♡ 桃香さまの声、いやらしい。こんなの、ずっと聞かされていると、わたしだって」

 

 指に唾液をつけて、乳頭を責めていく。

 あの曹操であれば、必ず執拗にやってくるはずだ。二本の指。勃起してつまみやすくなった乳頭をつまんで、刺激を与えていく。

 考えられないほどの淫行だった。それでも、とめられない。気持ちいい。ぬめった指に、凝り固まった思考をほぐされていくようだった。

 

「やあっ♡ おまんこ、やらしい音しちゃってる♡ 一刀さん、そんなにしちゃやらぁ……♡」

「ここに触れると、わたしも桃香さまのようになってしまうのだろうか。一刀殿。わたしにも、教えてくださいませんか」

 

 いないはずの曹操に、愛紗は語りかけてしまっている。

 倒錯的な快楽。それが、毒となって全身に拡がっていく。下着をずらし、指で入り口に触れてみた。濡れている。話には聞いていたが、実感するのははじめてだった。

 少しこわい。それでも、我慢することなどできなかった。唾液とはまたべつの滑り。指にまぶし、ゆっくりと挿入していった。声。思わず、もれてしまう。それを受けて、乳房も感度が増していくようだった。

 

「これ、こんなの、知りません♡ はあっ……。桃香さまは、このような快楽をずっと……」

 

 関節ひとつぶんくらい、指が内側に入り込んでしまっている。

 臆せずかき回してみると、知らなかった快楽に身体をもだえさせてしまう。こんな風になった自分を見て、曹操はきっと笑うのだろう。それとも、優しく髪を撫でてくれるのだろうか。握った手。大きくて、力強かったことを覚えている。

 

「ぐちゅぐちゅ、とまらない♡ 一刀さん……♡ ひゃあっ、一刀……さん♡」

「一刀殿は、ほんとうにいけないお方です。わたしや桃香さまをこんなになるまで惑わし、狂わせてしまうのですから♡ ああっ……。こんな、こんなこと、知るべきではなかった♡ それなのに、心地よさがあふれてくるのです♡ ん、はあっ、んあぁあっ♡ わたし、もう……っ♡」

 

 身体が、どこかに登りつめようとしている。直感的に、愛紗はそのことを悟っていたのだ。

 愛液があふれだす蜜壺。かき混ぜる指の動きは、いよいよ大胆になっている。いじられ続けているせいで、赤くなってしまった乳頭。そこから拡散されていく断続的な快感が、未熟な秘部の感度まであげていく。

 もう、どうなったっていい。自分も桃香も、同じ男の指で絆され、限界まで喘がされているのだ。

 感極まったような、桃香の声。それを耳にしながら、愛紗は愛撫の手をさらに強めていく。

 

「いいの、これっ♡ わたしイク、もうイクからぁ♡ 一刀さんの指で、最後まで気持ちよくなりたいのっ♡」

「んあっ♡ うあぁあっ♡ 一刀殿、そんなに強くされるとわたし、わたしはっ♡ はっ、はあっ……。んくっ、ふあぁあ♡」

 

 身体全体が、甘美な痙攣に包み込まれていく。

 声が、おさえられなかった。何度も秘部に指を出し入れし、快楽を貪ってしまう。浅ましい欲望。そう否定し続けてきたものに、自分は飲まれようとしているのかもしれない。

 桃香のあえぎ声が、耳をついた。とろけきったなかに、ちょっとした悲しさがある。そう思えるのは、自分が桃香と近しい心境に至ることができているからなのか。挿入していた指。顔の前にもってくると、女の匂いが鼻についた。

 武人としての生。そこには、快楽など必要ないはずだった。主君のかかげる理想のために邁進し、ただ武器をふるう。それだけで、いいはずだったのだ。

 

「眠られたのかな、桃香さまは」

 

 すっかり静かになった陣屋の中。愛紗は、絶頂の余韻を感じながら寝返りをうっていた。

 淫欲にまみれた汁の付着した指。口に含んでみると、背徳感から身体がふるえた。

 

「なにをやっているのだ、わたしは。んっ、ああっ♡ はあっ、一刀、どの……」

 

 わたしは、いつからこんな風に変わってしまったのだろうか。変わってしまっても、よいのだろうか。

 闇の中。見つめていても、答えが返ってくることはなかった。

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