表情を強張らせた
その中に、何者が待っているのか。それについては、あらかじめ見当がついていた。
董卓。
侍女のような服装をした女が、ひとり椅子に腰かけている。
小さな体躯。記憶の中にある董卓は、もっと気圧されるほどの闘気を有していたように思う。それが現在は散漫としていて、刺すような気配がまるでなかった。
女と、董卓と眼が合った。
真っ直ぐな強さと、なにか悲壮めいたものを感じさせる瞳なのだと思う。自分からは声をかけずに、曹操は対面に配されている椅子に座った。董卓は、曹操の一挙手一投足をじっと見つめている。
「いつぶりなのでしょうか、あなたとこうしてお会いするのは。あなたは、あの頃から少しも変わられていないようですね、曹操殿。それで、どこか懐かしさを感じてしまうのでしょうか、私は」
「そうかな。それで言うと、貴殿は以前よりも優しい顔をするようになったのではないか、董卓殿?」
「曹操殿。詭弁と思われても仕方ありませんが、ここにいる女はすでに董卓ではありません。いまの私は、どこにでもいる
「……ン。恋には、貴殿の命以上に大切なものなど、なにもなかったのだろうな。だが、その行いのおかげで、俺はかつての宿敵と決着をつける機会を失ってしまったとも言えるのだよ。結局、一度も勝つことができなかった。洛陽でも、
本音と冗談の入り混じった言葉を、曹操は紡いでいく。
戦場で見事に死ねるのであれば、あるいは恋も月の行く道を阻みはしなかったのかもしれない、と曹操は思う。
宮殿の政の中で、じりじりと身体を締め上げられていく大切な人を、見てはいられない。そんな思いがあったからこそ、恋は政権に対する叛逆を決めたのではないか。
静かに聞き入りながら、月は机に置かれていた酒器に手を伸ばした。二つの杯が、静かに並べられていく。
抗うべき対象だった女。それが、いまとなってはこれほどまでに小さくなってしまっている。
一歩踏み外せば、誰にでもありえる道なのかもしれない。ただ、それをありのままに受け入れているのが、かつて強権を振るった董卓という女なのが、興味深くもある。
「すまないな。月殿、とでも呼べばよいか?」
「私のことなど、月で構いません。それよりも、お酒だけしか用意していなくて、気が利きませんでしたね」
「ははっ。そのようなことを気にしてくれるのだな、月は。よい。そなたとはじめて交わす酒に、無粋なものは必要ないのではないかな。それでは、いただくとしようか」
「ふふっ。お優しいのですね、曹操殿は。想像していたよりも、ずっと。恋さんが心を許したくなるのも、わかる気がいたします」
「一刀でいい。恋や
月の注いでくれた杯を手に持ち、曹操はちょっとほほえんだ。
かつての宿敵と、酒を酌み交わす。洛陽を脱出し、反董卓連合軍として闘っていた時には、まさかこうなるとは考えもしなかった。
最初の一杯を、ひと息に呷る。悪くない味だ。だが、どこかに隠しきれない苦さがある。月から感じる儚さが、酒をそんな味に変えてしまうのか。不思議に思いながら、曹操は余韻に浸っている。
揺らめく酒杯の表面を、月はじっと見つめている。その儚げな表情を眺めていると、万感の思いが込み上げてくるようなのである。
この酒には、きっと様々な感情が溶け込んでいる。
果たしきれなかった夢。小さなものでは、なかったのだと思う。夢とは、叶わないから夢と言うのか。ならば、自分はそれを追うべきではないのか。
自問。心の中で続けている間に、月はややゆっくりと、何度かにわけて杯を空けていく。
「美しいな」
「どうかなされたのですか、一刀さま?」
一時は相国、そして太師の地位にすら就いていた月が、へりくだって自分のことを『一刀さま』と呼んでいる。
本人からしてみれば、当たり前だと思ってそうしているのだろう。それだけ、月は努めて董卓としてのおのれを捨て去ろうとしているのか。
呼び方の変化とともに、口調も下女同然のものとなっている。
これでいい、と月の瞳が言っているようだった。野心は、董卓の名と一緒に捨ててきたのか。いまの月にあるのは、仲間たちと変わらず過ごしたい、というささやかな願いだけなのか。
「そなたも見てみるがいい。今宵は、空にある月が健気に光り輝いている」
「まあ……。ほんとうに、きれいですね。お月さまの光は、穏やかに大地を照らし続けてくれています。私は、そうはなれなかった。血を流し、壊し、焼き尽くす。そうすることでしか、この国を変えられないと思っていたのかもしれません」
立ち上がった二人は、夜空に浮かぶ月を窓から見上げていた。
自虐を感じさせる言葉。それを吐くと、月は床に視線を落としてしまう。
忸怩たる思いが、そこにはあるのか。焼け落ちていく洛陽は、諸将すべてに衝撃を与えたものだった。自分もその中のひとりであり、董卓軍に追いすがったが完膚なきまでに敗れた。
顔をあげた月が、少し身体を離す。どこか、意を決したような面持ちだった。
懐に忍ばせていたのだろう。その手には、鞘に納められた短刀が握られている。
「月。その短刀を、どうするつもりなのだ」
「ご安心ください。これで、一刀さまをどうにかしようというわけではありませんから」
そう言って、月は握りしめた短刀を差し出してくる。
害意がないのはわかっていた。殺すつもりであれば、間髪入れずに自分は刺されていたはずなのである。だとすれば、導き出される答えはただひとつしかない。
「お会いする前は、これで刺し殺されてもいい、と思っていたんです。一刀さまに、私を保護する利点などありません。それに、もっと憎まれているものだと思っていましたから。それが、詠ちゃんたちのためになるのなら、私はどうなったっていい。そう、考えていたのです」
「ははっ。見当違いなことを言うのだな、月は。たとえ俺が董卓を憎んでいたとしても、ここにはもうその当人はいないのだろう? であれば、俺は誰を罰すればいいと言うのだ、月よ」
「恋さんから聞いていたように、一刀さまはやっぱり変わったお方なんですね。ですが、私はそのお優しさに、甘え続けていてもいいのでしょうか。安堵しているのと同時に、これでほんとうにいいのか、と不安になってしまうんです。私は、罰されて当然の行いをいくつも積み重ねてきました。そして、その重さに耐えきれなくなって、こうしてみんなに大きな迷惑をかけてしまっている。そんな自分が、許せないでいるんです」
月の白い頬を、涙が伝っていく。
旅路の間、溜め込んでいた思いがあったのだろう。それは親しい仲間たちには、ぶつけることのできない思いだった。
転がり落ちた短刀が、からからと音を立てている。衝動的に、曹操は月の身体を抱きしめてしまっていた。ほんとうに、小さな身体なのである。
「あの、一刀さま?」
「聞け。そなたは、生きよ。生きて、この曹操の築く治世を見届けるのだ。それこそが、俺がそなたに与え得る、最大の罰なのではないかと思う。安易に死ぬることなど、許しはしない。それは、その身を救ってくれた者たちに対する、裏切りにもなるのだからな」
ふるえる身体を、さらに強くかき抱いた。
途方も無い話だった。なにがなんでも、月に次代を見せてやる。そんな気持ちが、腹の底から湧き出すようだった。
「ありがとうございます、一刀さま。あなたさまがそうおっしゃるのであれば、私はそのお考えに従おうと思います。これがきっと、わが身に下された天命なのでしょうね」
湧き出した思いが、激情へと変化しつつあった。
罰せられることで、救われる心がある。そのことを、曹操は知ってもいるのだ。
指を使って、月の頬についた涙を拭ってやる。揺れる瞳。戸惑いからきているものではない。なぜなら、その奥にはかすかな期待が映し出されているのである。
「いいのか、月」
「はい、一刀さま。あなたさまの手で、私にたくさん罰を与えてくださいませんか。どうしても、心がそのことを欲してしまうのです。いけないことだとは、理解しているのですが」
部屋で見つけた紐で、月の腕を後ろ手に縛り付けた。
元来、被虐的な思考の持ち主だったのかもしれない。少しの抵抗もすることなく、月は壁に押さえつけられている。
拘束する過程で、服はすべて剥ぎ取っていた。無垢な印象を放つ、白い肌。それが月光に照らされて、より蠱惑的な魅力を放っているのだ。
「こんなにふるえて。男に抱かれるのは、はじめてなのか?」
「んっ、はあっ……。お恥ずかしいかぎりですが、殿方との経験などありません。ですが、それでよかったのだと思います。こうして、一刀さまにはじめて汚していただけるのですからですから。覚悟は、できています。だから、あなたのお好きなように」
「よい心がけだな、それは。ははっ……。小さな尻だが、触った感じは悪くない」
「んっ、ふうっ……。あ、ありがとう、ございます。んっ、あうっ、きゃあっ……!?」
悲鳴に近い月の嬌声。それが、心地よく耳朶を打っている。
弾力のある尻肉を、曹操は力まかせに手で打っていた。そのせいで、白い肌のうえには手の跡がくっきりと浮き出ている。
「はははっ。痛いか、月?」
「いいえ、平気です。このくらい、きゃうっ……! んっ、んふっ……。なんとも、ありません……!」
話している途中に、また尻を張った。
痛くないというのは、嘘なのだろう。だが、痛みとはべつに、身体が感じているものがある。声にかすかな甘さが出てしまっているのを、月は気づいているのだろうか。
虐げられてなお、快楽を得ることのできる体質。それはもう、一種の才能と言ってよかった。
「おまえのような淫乱な女は、きっちり躾けてやらねばな。さあ、今度はその肉を使って、俺を気持ちよくしてみるのだ」
「ああっ、熱い……。お尻に、かたくて熱いものがあてられているんです。もしかして、これが一刀さまの?」
「ご名答だぞ、月。これがおまえの中に入りこみ、最後には子種を放つのだ。よもや、俺の子を孕みたくないとは申すまいな?」
「はあっ、んうっ♡ い、言いません。一刀さまとの子作りだなんて、考えるだけでどきどきしてしまいます」
やわらかな尻肉。それを左右から持ち上げて、間に男根を挟んでいった。
少しひんやりとしていた肌に、熱が拡がっていく。言葉と感覚。その両方から責められて、月は気分を昂揚させているようだった。
「んっ、へうっ……♡ ぐにぐにって、すごいです。一刀さまのかたいのが、私のお尻を荒々しく擦り上げていて」
「これが、チンポの感触というやつだ。今日より何度も相手をすることになるのだから、しかと覚えておくといい」
「はいっ、覚えます♡ 一刀さまの、おチンポさまの感触、私にもっとよく教えてくださいませ♡」
「勉強熱心な子は、嫌いではない。月、顔をこちらに向けてみろ」
「はい、一刀さま。んっ、ちゅぱっ……。じゅずっ、んぷっ……」
振り向いた顔を手で固定し、口内を余さず汚していった。溜め込んだ唾液。すかさず送り込んでやると、月は歓喜に頬を染めて飲み下していく。
尻肉に擦りつけた男根が、気持ちよさからふるえている。感じているのは、月も同じなのだ。秘部に手を伸ばし、陰毛の感触を指で愉しみながら、膣の入り口をくすぐっていく。すると、ぴたりと閉じていた肉扉から、ぬるりとした愛液が染み出してくる。
「ははっ。いやらしい声をとめられないようだな、月。そんなに、尻を叩かれるのが気持ちいいのか?」
「はい。んうっ、はいっ♡ 一刀さまにお尻をぶたれると、身体がびくってしてしまうんです。それに、んくっ♡ 口づけも、とってもすごくって」
「これでは、まるで躾にならないではないか。ならば、次に進むぞ。中まで突っ込んでかき回してやるから、愉しみにしておくといい」
「も、申しわけありません、一刀さま♡ この淫らな雌を、どうかお許しください。気持ちよくなっていただけるように、精一杯努力しますから」
月の嬌声は、きっと詠たちのいる廊下にまで、洩れ聞こえてしまっているのだろう。
だが、それはあえてやっているようなものだった。自分たち二人の中だけで完結させていたのでは、なんの意味もない。月の心からの叫びを、詠や恋にも聞かせてやるべきだった。
「んっ、おっ、んおおっ……♡ いっ、ぐうっ、はあっ……! こ、これが、罰せられるということなんですね。ですが、痛みの中に、一刀さまのお優しさを感じてしまうのはどうしてなのでしょうか。これが、おチンポさまのほんとうの熱さ……。あっ、があっ……♡ 私の、一番奥にまで一刀さまがきています……!」
「ああ、そうだぞ月。これが、おまえのはじめてを奪った、俺のかたちだ。しっかりと記憶できるように、刻みつけてやろう」
「はふっ、んあうっ♡ ぜひとも、そうしてください。私は、耐えてみせますから」
「だったら、はじめから遠慮なく突いてやろうか。おまえも、そうされたいのだろう、月?」
月の身体を強く壁に押しやり、腰をぶっつけていく。
小さな尻が、男根に突かれて幾度となく跳ね回っている。膣奥を突きあげながら、尻を打つことも忘れなかった。ちょっと腫れあがった肉が、痛々しいくらいになっている。その光景が、より気持ちを昂らせるのだ。
苦悶の声。洩らしながら、月は声を喜悦に身体をうちふるわせている。締めつけてくる膣肉。ほとんど、必死の様相なのである。
「そうだ。今度会う時までに、首輪をこしらえておこう。それをつけていれば、おまえが誰のものなのか、一目でわかるようになる。どうだ、嬉しいか?」
「んんっ、ひゃふっ♡ それ、んあっ♡ すごく、嬉しいです♡ 私は、一刀さまだけの所有物♡ そう、んあっ、なるべきなんです♡」
腕を結んだ紐。それをつかんで、乱暴に腰を振っていく。
がくがくと身体をふるわせ、月は痛みと快楽に耐えている。つま先立ちとなった脚。ほとんど、浮き上がってしまっている。
「ああっ♡ もう、気持ちいいのがとまらないんです♡ かたいおチンポさまが、とっても気持ちいい。ふあっ、それっ♡ ぐるってされるの、だめなんですっ♡ これっ、ほんとにおかしくなる。一刀さまに、おかしくされてしまうんです」
「絶頂しそうなのだな、月。乱暴にはじめてを奪われたというのに、狂おしいくらいに感じてしまっている。おまえは、疑うまでもなくいやらしい女だ。ほら、いけっ。尻を真っ赤にしながら、いってしまえ」
尻をぶったたく手が、さらに激しくなっていく。
月のこぼした唾液と愛液。それが、床に染みをつくってしまっていた。膣肉の収縮も、かなり極端なものになっている。間違いなく、月の絶頂はすぐそこにまでやってきている。
「んあっ、んぐうっ♡ 私イク、もう……イキますっ♡ だから、一刀さまもぉ♡」
不意に、強い射精感が押し寄せてくる。
絶頂を迎えた月の中が、精液を求めて男根を絞り上げているのだ。
求められるがままに、曹操は精液を吐き出していく。うねる膣奥。子宮が、送り込まれた精液を次々に取り込んでいっている。
「んっ、んおっ、くふぅうっ……! これっ、これが、男の方の射精なんですね……っ♡ おチンポさまが、ずっと中でふるえています。その度に、一刀さまの子種が、びちゃびちゃって私の中で跳ね回っていて♡」
「もっと、かき混ぜてやろう。月の子袋に、俺の味を覚え込ませてやらねばな」
「はひっ♡ はひぃいっ♡ これっ、しゅごい……っ♡ 一刀さまに突かれるたびに、私、イッてるみたいでっ♡ はっ♡ ひゃふっ、んんうぅう♡」
「はははっ。いいぞ、月。少し前まで処女だったとは信じられないくらいの、締め付けではないか」
「一刀さま、んんんっ……、ご主人さまぁ♡ もっと、もっとしてください……♡ 私の、月のいやらしい穴の中、かたくて素敵なおチンポさまで、おかしくなるまでいじめてくださいっ♡♡♡」
片足で揺られながら、月は淫らに表情を歪ませている。懇願されるほどに、射精中の男根は硬度を増していく。
まだまだ、終わらせてやるものか。
月のか細い腰を抱き上げ、曹操は粘液に溺れた膣内を犯していった。
反響する喜悦。たがの外れた月と口づけを交わしながら、曹操は部屋の入り口を、鋭い眼差しで見つめている。
†
信じられない、という思いが強く湧き上がってくる。
室内から声が洩れ聞こえるようになってから、恋はずっとうつむいたままだ。
曹操と月が、なにをしているのか。そんなことは、とっくにわかりきっていた。月の発する、苦痛と歓喜の入り混じった声。まさか曹操は、その声を自分たちにも聞かせるつもりで、月と交合をしているのか。
「なんなのよ、これぇ……。ボク、もうどうしていいのかわからない。こんなのって、絶対変だよ」
両腕で自らの身体を抱き、詠は嘆いていた。
曹操という男のおそろしさを、間近で見せつけられているようだった。自分や恋に対してのぞかせていた、優しげな一面。それがいまや鳴りを潜め、月を身体の奥底からなぶっているのだ。
やはり、二人を会わせるべきではなかったのか。
しかし、声だけで判断するのであれば、月に嫌がっているような素振りはなかった。むしろ犯されることを積極的に求め、それに曹操が応えている、というような雰囲気ですらあるのだ。
それこそ、思い過ごしであって欲しかった。けれども、月の発する声は時が経過するごとに、より大胆なものへと変わっていった。
「はあっ、ああっ。どうしてボク、こんな気分になってしまっているのよ。ああっ、もう……! 月の声、すごくいやらしくなっちゃってる……。こんな、こんなのって……!」
親友が犯されているところを想像して、興奮を得てしまっている。
そんな自分が、ひどく浅ましく思えてきてしまう。それでも、一度火がついた気持ちは、簡単に消えることはない。
月は、望んで曹操の毒牙にかかっている。
もはや、そうとしか考えられなかった。それによって、満たされるなにかがある。ならば、月のしていることに対して、自分はなにもするべきでない。邪魔立てなど、する意味もない。
「詠」
不意に、恋が真名を呼んでくる。それで、詠はようやく顔をあげるのだった。
気分が昂揚してしまっているのは、たぶん恋も同じなのだ。
自分よりも遥かに無垢な存在だと思っていた恋が、やはり月の艷声に心を悩ませている。それがわかっただけでも、少しだけ気分が軽くなった。
「月、とっても気持ちよさそう。一刀にちんちんでしてもらうと、もやもやしてたのが、すっと消えていく。きっと、月もそう」
「ちっ、ちんちん……!? ま、まさか恋、ボクの知らない間に、あの男と……?」
「んっ……。一刀は変なやつだけど、恋にいつも優しくしてくれる。かわいいって、言ってくれる」
薄暗い闇の中。
よく観察してみると、恋はもぞもぞと身体を動かしているようだった。
「はあっ、はふっ……。こうやってお股を擦ると、ちょっとずつ気持ちよくなって、どきどきを抑えることができる。これも、一刀から教えてもらったこと。ああっ、んっ、んふっ……。詠も、苦しいならやってみるといい」
くちゅり。粘液をかき混ぜたような、粘り気の強い独特の音が聞こえている。
ねねが恋のこんな姿を見れば、卒倒してしまうのではないか。女の香り。それを濃厚に漂わせながら、恋は自身の指で疼いた秘部を慰めている。
自分だけが、取り残されようとしている。どこかで、そんな気がしているのも確かだった。
硬直したままになっていた身体を、懸命に動かしてみた。
狂おしいほどのあえぎ声。室内からは、情事に没頭する月の声が洩れ聞こえ続けている。
「少しだけ。少しだけなら、きっと大丈夫」
身体も心も、もう十分に昂りきっていた。
恋の言葉に背中を押されるようなかたちで、詠は下着のうえから熱くなった秘裂をなぞっていく。
「んっ……♡ や、やだっ。ボクのここ、こんなに濡れちゃってる」
粘っこい液体が、指に絡みついている。少し押し込んでみただけだというのに、これなのである。内側は、もっとひどい状態になっているに決まっている。
戸惑いを感じていても、触れることをやめられない。気持ちよさが、次々に溢れてくる。
意識をぼんやりとさせたまま、詠は下着を脱いでいく。そして、月が声を発するのに合わせて、入り口に軽く指を挿入していくのだった。
強いしびれ。それによって、詠は足先までふるわせてしまっている。
気持ちいい。ひとりでは、ここまで感じることなどできないはずだった。
「詠。恋も、月と一緒に気持ちよくなりたい」
「はへっ……!? ちょ、ちょっと、なにやってるのよ、恋。んっ、やっ……。そこ、擦り合わせちゃだめぇ……」
「こうやって、気持ちいいところ同士をくっつけると、もっとよくなれる。んっ、ふあっ……」
かたい床が、背中にあたっている。
覆いかぶさってきたかと思うと、恋はおもむろに濡れた秘裂を合わせてきたのである。
体勢だけで言えば、恋に無理やり犯されているような格好になっていた。頭の中が、燃えるように熱くなっていく。快楽が勝ちすぎているのか、恋の腰使いには微塵の余裕もない。
「はうっ、はふっ……♡ 詠と、くちゅくちゅってするの気持ちいい。一刀にちんちんでされるのとは、ちょっと違って……♡」
「こ、こらあっ♡ あんっ、ふあっ♡ そんなに、がっついちゃだめだってば、恋。こんな、こんなに激しくされたら、ボクだってぇ」
肉と肉が、淫らに絡み合っている。
肌に擦れる、陰毛の感触。そんな小さなものであっても、いまは自分たちに興奮を与えてくるのである。
わけもわからないまま、嬌声を発し続けた。
敏感な突起が潰されるたびに、強烈な快感が全身を走り抜ける。それは恋も同じであり、だらしなく開いた口からは、唾液が一筋こぼれ落ちている。
「ああっ、はっ、はうんっ♡ だめ、こんなの、絶対に考えちゃだめなのに♡」
絶頂に身をふるわせながら、恋がまた淫靡な肉を押し付けてくる。
こうされていると、ついひとつの考えが脳裏を過ぎってしまうのである。
月のように、自分もいつかは曹操に組み伏せられてしまうのではないか。見てわかるとおり、女に苦労している節はない。それでも、欲しいと思えるものを貪欲に欲するのが、曹操という男だとも教えられていた。すでに、臣下となるように誘われている。ならば、その先の展開も時間の問題なのかもしれない。想像を膨らませるには、十分すぎる状況だった。脳髄が、興奮によって焼ききれそうになる。恋も同じなのか、けだもののような喘ぎを何度も洩らしていた。
そうなった時、自分は曹操を拒絶しきれるのか。肉欲に溺れながら、考えることではなかった。
壁越しに聞こえる月の甲高い声が、脳内を揺さぶってくる。
拒絶など、できるはずがない。軽い絶頂を味わいながら、詠はそう感じてしまっている。月と恋。その二人が、曹操からもたらされる快楽に満たされることの凄まじさを、これでもかというくらいに誇示してくるのである。
「んっ、んんっ♡ 詠も、こうしてると気持ちいい? お股のところ、すごくぬるぬるになってきてる」
「はっ、ひゃふっ♡ んあっ、あっ、ああっ♡ これ、ほんとにおかしくなる。ボクが、ボクでなくなるみたいでぇ♡ 考えたくないのに、一刀殿のことが頭から離れない♡ あ、ああっ、くふうぅううう♡」
「詠、すごく身体がびくびくってしてる。恋も、もうだめっ……!」
「ああっ、ぐちゅぐちゅすごいよおっ……! ボクも、月みたいにイッちゃうんだ♡ あっ、あぐっ♡ いやらしい声、とまらない♡ こんな、こんなの……。んぐっ、んんんんんっ♡」
意識が、隅々まで塗り替えられていく。
もう、元には戻れない。戻ることなど、できるはずがない。
生暖かい感触。下腹部が、快感のせいで馬鹿になってしまっているのだろう。
荒い息を吐きながら、恋は豊かな胸を上下させていた。絶頂を迎えたことで少し落ち着いたのか、けものじみた求め方はぴたりと止んでいる。
「んんっ……。ちょ、ちょっと、恋?」
「気持ちよくなったあとは、ぎゅってする。これで、詠も安心?」
「なによ、そんなのいいってば!?」
「だめ。しばらく、このままでいる」
恋に抱きしめられながら、詠はしばらく瞳を閉じていた。
ほとんど断続的に、月は曹操によって啼かされ続けている。
いつまでも終わる兆候を見せない、二人の交合。その気配を背後から濃密に感じながら、詠は恋のやわらかな乳房に甘えている。