高く昇った太陽が、大地をあたたかく照らしている。隣を歩く
沛国に滞在してから、三日が経っている。孫権は、おそらく汝南に戻る旅路についたのだろう。それは、かつての仲間との別れも意味している。華雄は、
華雄は、おのれの進むべき道を見つけた。ちょっとした寂しさはあっても、それでいいと詠は思っていた。新たな道を見つけたのは、月も同じなのである。たぶん、自分もそうだった。
一度は敵対した者と、ならんで道を往く。
洛陽で政権を握っていた時は曹操が逃げ、長安では自分たちがそうなった。ある意味、似た者同士と言えるのかもしれない。夢への道筋。それは、きっとひとつではないのだろう。
固執すれば、おのずと視野は狭くなる。連合軍を捨てた曹操。最後は、命すら捨てるような格好となったことを憶えている。だが、活路はそこにあったのだ。その時の印象が残っていたから、恋は曹操の庇護下に入ることを決めたのだと言っていい。
「ねえ。翠は、一刀殿のことが好きなの?」
「んなっ!? い、いきなりなんてことを訊いてくるんだよ、詠」
「べつにいいじゃない。答えて、減るもんじゃあるまいし」
「やっ、それはそうだけど……。というか、急にどうしたんだよ。旅の疲れで、熱でもあるんじゃないのか、おまえ?」
「ちょっと、子供扱いはやめなさいよね」
訝しげな表情をこちらに向けて、翠が額に手をあててくる。
昨日、会談の場であったことを思い出し、詠は心に揺らめきを感じていた。
「なんとなく、訊いてみたくなっただけなのよ。馬家の嫡子という立場があるあなたが、曹操軍の将軍となることを決めた。その理由が、どこにあるんだろうってね」
「んっ……、そっか。確かに、あたしは一刀殿のことが好きだ。中原に出てこなければ、こうなることなんてなかったんだと思う。勢い任せに飛び出してきたようなものだけど、その判断は間違いじゃなかったんだ。あの人の覇道を、そばにいて支えたい。西涼でやんちゃしてるだけだったあたしが、そんなことを考えるようになっているんだから、びっくりするよな?」
「後悔なんて、少しもしてないんだ。その真っ直ぐさは、さすがに錦馬超ね」
「なんだよ、ちょっと引っかかる言い方だな? だけど、あたしにだって迷いがないわけじゃなかった。身内との関係が、どうなるのかってさ。この先、一刀殿が帝を担ぐことになれば、母さまだってさすがに黙っちゃいないだろう。まっ、そうなったらなったで、全力でぶつかってみるだけだな。あたしにできることなんて、そのくらいしかないっての」
翠の見せるかすかな笑みが、いまは眩しいくらいだった。
帝を実際に迎えることになれば、様々な因縁がついて回るようになる。それでも、とまるわけにはいかなかった。曹操は、今頃なにをしているのだろうか。無性に、顔を見たくなってしまっている。湧き上がってくる気持ち。とても、抑えられそうになかった。
「ごめんなさい、翠。ボク、用事があるのを思い出しちゃった」
子供でもしないような言い訳だった。そんなものが、ふと口をついて出てしまう。
なにかを察したように、翠は闊達に笑っている。恥ずかしさから、顔全体が熱くなった。
「あたしのことはいいから、さっさと行ってきなって。へっ……。詠も好きになってしまったんじゃないのか、一刀殿のことがさ?」
返すべき言葉が見つからなかった。
振り向くことなく、詠は逗留先となっている陳家の館に向けて、脚を動かしはじめていた。
†
運良く、曹操は部屋にひとりでいた。
少し前まで、
こんな時、月ならどんな風に振る舞うのだろうか。考えても意味のないことだが、緊張のせいで思考がぶれてしまっているのだ。
いつもと違う自分の様子。気がついたのか、曹操が近寄ってくる。
「あっ、一刀殿……」
心臓の音がやかましい。これから、どうなると決まったわけではない。それなのに、期待してしまっている自分がいるのか。
曹操の手。頬に触れてから、じっとしたままだ。
「……ン。心は決まったのか、詠?」
恥ずかしいはずなのに、視線を外せない。
直臣への誘いのことを、曹操は言っているのか。それとも、べつの意味で心が決まったのかと訊ねてきているのか。出立前に、
仕えることと、自身のすべてを許すこと。その二つは、本来まったく違う意味を持つはずなのである。けれど、曹操はそれを許さない。許さないと言うよりも、自分自身がそう望んでしまっているのだろうか。
眼を閉じ、首を縦に振った。発しようとしても、声が詰まってしまったせいだ。
想像でしかないが、月はもっと堂々としていたのではないかと思う。
「あっ、んむっ……。んはっ、んんっ……。ボク、一刀殿と口づけしちゃってるんだ。あむっ、はうっ……。これ、すっごくどきどきする」
手のひらが、優しげに頭を撫でてくる。想像していたものとの乖離に、詠は思考を揺さぶられ続けていた。
乱雑に組み敷かれ、手篭めにされてしまってもおかしくはない。そのくらいのことは、覚悟していたはずだった。事実、月との交合はいつも激しく行われていて、洩れ聞こえてくる嬌声には、けもののごとき荒々しさがあるのだ。
「んちゅ、ふはっ……。なんで、なんなのよ、これぇ……」
丹念にほぐされた唇。そこに割り入るように、曹操の舌がゆっくりと侵入してきている。
だめだと思っていても、脳内が蕩けていくのを我慢できなかった。
「はふっ、んはあっ……。どうして、こんなに優しくしてくれるのよ。ボク、もうなにがなんだかわからなくって……。月みたいにされちゃうのかもって、ずっと覚悟してたのに、こんなのっ……、一刀殿におかしくされちゃう」
「そんなことを考えていたのか。どちらも、間違いなく俺なのだよ。清と濁。その両方の要素を持ち合わせるから、人は人たり得るのではないかな」
「んくっ、はっ、ちゅむっ。口づけされながら、頭撫でられるの、だめっ……♡ 気持ちよすぎて、ボク、ボクっ……」
熱に浮かされているような気分だった。
曹操がこうした男でなければ、月が心を許すことはなかったのだろう。純真なだけでは、成せることはそう多くない。そのことを、自分たちはよく知っている。
それから、どれだけの時が経ったのだろうか。気づいた時には寝台にいて、詠は下着だけにされてしまっていた。
曹操は、さすがに手慣れている。抗いようもなく持ち上げられた身体。曹操の上に寝そべったような格好となり、少し申し訳なく思えてしまう。尻など、ほとんど顔に乗ってしまっているのだ。男女のまぐわいとは、こんなことをするのが普通なのか。訳もわからないまま、詠は曹操の体温を感じている。
「ふえっ!? えっ、ちょっと、一刀殿」
「ははっ。どうした、そんなに驚いて」
下着を脱がされている。そこまでは、まだよかった。ぬるりとした感触。それは、舌かなにかによるものなのだろうか。あの曹操に、局部を舐められている。そう考えると、顔から火が出そうになってしまう。
「ちょっ……! ほ、ほんとに、だめだってば! そんなとこ、んっ……、汚いからやだぁ!」
「汚くなどないさ。それに、これは俺がしたくてやっているのだよ」
無視される抗議の声。その間にも、曹操の舌が入り口をこじ開けて入ってくる。
自分でさえ、あまり触れたことのない場所だった。そこに、曹操の舌が触れているのだ。おかしなくらいの昂揚を、身体が感じてしまっている。これが、気持ちいいということなのか。
じわりと昇ってくる快感。身じろいでいると、かたいものが顔に触れていることに気がついた。それがなんなのかくらい、知っている。匂いも、ちょっと強くなってきているのか。
「あんっ、んあぁあっ。これっ、一刀殿も興奮してるんだ。すごいかちかちで、こんな……、おっきくなって」
着物を持ち上げて大きくなっているものを、手で擦ってみた。
曹操は、自分のすることに対し、なにも言わないでくれている。好きにすればいい。もしくは、続けることを望まれているのだろうか。着物をはだけさせていくと、太い幹を持った逸物が姿をあらわした。わずかに脈打っており、先端は赤く腫れ上がっているようだった。
触れている指が、やけに熱い。先は、幹と違って意外なやわらかさがある。
「そこっ、んはうっ……♡ はっ、はあっ……。一刀殿、これ、どうすればいいの? 張り詰めていて、なんだか苦しそう」
「んっ……、そうだな。太い部分を手でしごきながら、舐めてみてくれるか」
「え、ええ、わかったわ。しごきながら、これを舐める……。それで一刀殿がよろこんでくれるんだったら、ボク頑張ってみる」
試しに、先端に口づけてみた。
亀裂になっている箇所から、なにやら透明な汁がにじみ出ている。たぶん、これが興奮している証拠なのだ。興奮がずっと大きくなると、男は子を宿すための精液を放つようになる。知識としてだけは、知っていることだった。
どのくらいの強さで手を動かせば、気持ちよくなってもらえるのか。これは、案外おもしろいことだと詠は感じていた。されるがままになっていた自分が、曹操に一矢報いることができるのだ。
おそるおそる、腫れた先を口に含んでみた。やはり、味が濃い。独特な臭気が、鼻から抜けていく。
「これ、んむぅ、んちゅうぅうう……。舐めてると、すごくどきどきしちゃうの。一刀殿の匂いも味も、よくわかる。これ、月もしてるんだよね?」
「ははっ。月と、競争でもするつもりなのか?」
「んんっ、れろっ……。なんだか、意味深な言い方ね。そりゃあ、月に比べてボクは未熟者なんだろうけどさぁ」
自分は、一体なにを張り合っているのだろうか。
きっと、寝所の雰囲気が気分をおかしくさせているのだ。そうでなければ、ありえないことだった。
身体が熱い。下腹部は、もう唾液でべとべとにされてしまっているのだろう。興奮から、大胆にも音を立てて逸物の先端を吸い上げてしまう。それがよかったのか、曹操がかすかに声を洩らしている。もっと、声を聞いてみたい。うれしくなって、詠は奉仕を激しくさせていった。
「んじゅっ、じゅぱっ。えへへっ、一刀殿のおちんちん、はじめた時よりもずっとかたくなってるわよ? これ、気持ちいいんだ」
返答代わりに、曹操の舌使いに変化が生じた。
自分を追い込むような動き。感じたことのないような快感が、下腹部に溜まり続けているのだ。恋に荒々しくされていた時よりも、ゆっくりと湧き上がってくる。一度絶頂を知ってしまった身体が、切なく疼いているのか。
よだれに塗れた亀頭をすすりながら、詠は男根を上下に強く擦っている。脈動は、何度も口内で感じている。これは、なにかの前兆に違いない。そう感じて、口腔による奉仕をとめなかった。
一瞬、身体がふっと軽くなった。言葉にならない声。洩らしながら、詠は男根にむしゃぶりついていた。
限界までふくらんでいた亀頭が爆ぜる。精液が放たれることを知っていたとはいえ、実体験は耳で聞いていたのとはわけが違っていた。
「んぷっ!? んぐっ、んむむっ、じゅぅううう、ふむぅうう……!」
熱い。ただひたすらに熱い液体が、胃の中にまで入りこんでくる。
どうしていいのかわからず、詠は精液を垂れ流す男根を咥えている。曹操は無心で、詠の下腹部に顔を埋めたままだった。
「ふぐぅうう、ぷはっ! んむっ、まだ出すっていうのっ!? んくっ、ごくっ……。ねばねばしていて、こほっ……、飲みにくいわね。でも、なんでだろう。ボク、この味嫌いじゃないのかも」
腹が、次々と放たれる精液によって満たされていく。
こんなに出してしまっても、平気なのだろうか。そのくらいの量を、曹操は惜しげもなく詠に口から注いでいる。
しばらくは、ほかの匂いを感じることができないのではないか。精液の匂いは強烈で、残滓がまだ頬の内側に張り付いているくらいなのだ。
「苦しかったのではないか? まさか、はじめてでここまでしてくれるとは思っていなかった」
「ふえっ!? そ、そういうものなんだ。けど、射精したってことは、一刀殿も悪くはなかったってことよね? だったら、ボクもちょっとは頑張った甲斐があったかな」
座った曹操の腿の上に乗り、抱き合うような格好になった。常用しているのか、持っていた布で曹操が口もとを拭ってくれている。
出したばかりだというのに、逸物は雄々しさを保ったままだった。腹にあたっているそれが、時折跳ねて興味を誘う。交合の本番は、まだこれからだった。
「このまま、自分で挿れてみるか? 加減できた方が、詠も安心だろうと思ってな」
「ボクが、一刀殿のおちんちんを、自分で……。そんなの、うまくできるのかな」
不安に思いかけていた心を、口づけで解きほぐされてしまう。射精したあとだろうと、曹操はお構いなしに舌を絡めてくる。大きな手が、背中を撫で回してくる。
ここまできたのだから、もう覚悟を決めるしかない。かたい男根に指で触れながら、詠はそんなことを考えていた。
口づけは、やめなかった。そのまま腰を上げ、膣の入り口に亀頭をあてる。曹操の愛撫によって、自分の準備は整っている。あとは、これを中に迎え入れるだけだった。
「んっ、んくっ、うあぁああっ!」
押し拡げられるような感覚。抑えきれなかった声が、室内に響いている。
ゆっくりと、しかし確実に、男根は膣内を進んでいる。脇腹を支えてくれている曹操の手が、ちょっと頼もしい。
「あっ、はうぅうっ♡ 一刀殿のが、気持ちいいところにあたってる。もうちょっと……。もうちょっとで、ボクの一番奥までっ! ああっ、くぅううう、んあぁああああっ!」
最後は、自分でも大胆になっていたように感じている。多少の痛みは、興奮の呼び水でしかなかった。それだけ、自分は曹操とつながりたいと思っていたのか。
もどかしさを突き破って、腹の奥底に曹操を迎えることができている。よろこびで、身体がふるえた。そのことは、曹操にも感触で伝わっているのだろう。脇腹を支えていた手。場所を変え、いまでは胸を優しく愛撫している。
「平気か、詠?」
「う、うん、一刀殿。逆に、気持ちよすぎるくらいで、これっ……♡」
上に乗っているせいか、身体が少し揺れるだけで、男根のあたる場所が変わる。それで、期待しきった膣内が擦れると、しびれるような快楽が駈け上がってくるのだ。
余裕は、どこにもなかった。身体で愛し合うということの素晴らしさ。月がのめり込んでしまうのも、わからなくはなかった。曹操に、全身を包み込まれている。その事実が、強い快楽を生み出していると言っていい。
膣肉が、よろこんでしまっている。曹操のかたち。早く身体で憶えてしまいたくて、力を入れて締め上げてみる。脈動。男根が、擦られて感じているのか。もっと快楽を引き出そうと、詠は上下に腰を跳ねさせる。くすぐるように刺激された乳頭から、甘い刺激がやってきていた。
「あぁああっ、んっ、ふあぁああっ♡ 一刀殿のおちんちんが、ボクのいろんな場所を擦ってる♡ これ、すごくてっ♡」
腰を打ちつけていると、意識があやふやになってくる。
これまで持っていた常識が、塗り替えられていくようだった。触れあっている部分すべてが、心地いい。腰の動きが、とまらない。
「動くのっ、一刀殿もいいんだよね? ボクだけ、気持ちよくなってなんかいないんだよね?」
「反応を見れば、わかるだろう? 詠の中がたまらないから、ここまでかたくなっているのだよ」
胸を愛撫していた曹操の手が、尻の方に移動する。
これから、なにをされるのか。抱き寄せられ、密着が強まった。自然と引き合った唇同士。重なり、水音を立てている。
いきなり、最奥を下から突き上げられた。大きく声を洩らしてしまう。尻を固定されているから、逃げることもできなかった。休むことなく、曹操は詠の身体に快楽を流し込み続けている。狂おしいような時間だった。たぶん、絶頂したのは一度や二度ではない。それを知っていて、曹操は自分を徹底的に責めあげている。
「はあっ、あぐぅううっ♡ んっ、ひゃぁああ、んあぁあっ♡ しゅごっ、んんっ、一刀殿のおちんちん、ぱんぱんってしゅごいのっ♡ ボクの中、もうぐちょぐちょにされちゃってる♡ んんっ、んあぁっ、はうぁあああ♡ い、いくの、とまらない♡ ボク、一刀殿のおちんちんで、無理やりいかされてるみたいでぇ♡」
頭の中が、白く染め上げられていく。それでも、快楽の輪から抜け出すことは許されなかった。
乾いた音が、寝所内に響き渡っている。このままでは、
秘部から愛液を垂れ流し、詠は快感に浸っていた。どこを擦られていても、大きな波がやってくるのだ。時折潰れる陰核が、予想外の刺激を撒き散らす。そのたびに、詠は叫びに近い嬌声を放っている。
「も、もうだめぇ♡ はふっ、んんんっ、はあっ、あふっ♡ ほんとに、おっきいのがきちゃいそうなのぉ♡ だから、一緒に……。一刀殿も、ボクと一緒にいってよぉ!」
強まっていく抱擁。快感に身をふるわせながら、詠はだらしなく口を開いてしまっている。
耳もと。曹操のささやきが、聞こえていた。おまえのことを、愛している。短い言葉だったが、いまはそれがなによりもうれしかった。
愛すべき人は、なにもひとりでなくともいい。それを体現しているのが、曹操だった。自分は、月を愛している。そして、曹操のことも同様に愛せばいい。
爆ぜるような感情を伝えようと、詠は男根を懸命に締め上げている。このまま、溺れてしまいたい。身体が痙攣しているのを、とめようとも思わなかった。自分の中で、曹操がふるえている。甘いしびれ。いまならば、天にすら昇ってしまえるのではないか。そう感じてしまうほどに、身体が軽くなっている。
「んあっ、ああっ、んぐっ、んあぁあああ♡ だして、一刀殿♡ ボクの中、さっきみたいにいっぱいにしてぇ♡ びゅくびゅくって、溺れちゃうくらい射精されたいの♡ そしたら、ボクも思いっきりいけるからぁ♡」
「ああ、いくらでもくれてやる。出すぞ、詠」
ほとんど意識を飛ばしながら、詠は射精を受け止めていた。
脈打つ男根が、膣の内側で荒れ狂っている。子宮を満たされていく感覚。ほかでは、決して得ることのできない幸せだった。身体が、言うことを聞いてくれそうにない。曹操がきつく抱きしめてくれていなければ、きっと倒れ込んでしまっているはずなのである。
†
射精が収まってからも、身体の浮遊感はしばらく消えなかった。挿入されたままの男根は威勢を保っていて、すぐにでも動きを再開できると言っているようでもある。
「ねっ、一刀殿」
体重を完全に預けきって、詠は弛緩した身体を揺らしている。
曹操の汗の匂い。それを嗅いでいると、少しずつ気持ちが落ち着いていくような気がしていた。
「ボク、恥ずかしくなるようなこと言ってないよね? その、してる間のこと、途中からよく憶えていなくって」
「ははっ。そのようなこと、気にする必要はない。たとえどんなことを口走っていようと、俺が詠を愛していることは変わらないのだからな」
「ううぅう……。その顔、絶対なにか隠しているのよね!? まったく、誤魔化すのが上手なんだから」
「そんなに知りたければ、教えてやらないこともないのだぞ? そうだな、まずは……」
「や、やっぱりいい! 過去のことなんて、もう忘れましょう! だから、んむっ……」
自分は、いつまで経っても曹操に敵わないのではないか。こんな風に口づけられただけで、なんだって許してしまいそうになるのである。
満たされた腹の奥が、消えない熱を帯びている。こんな関係が続けば、
もしそうなら、急いで祝いを考える必要があるのではないか。桂花には世話になっているし、これからは付き合いだってもっと深くなるに違いない。
そこまで思考を巡らせてから、気がついたことがある。長安を出てから、それまでなら考えられなかったことが、立て続けに起きている。兗州には、腰を落ち着けるだけでいいはずだった。そう思っていたはずの自分が、いまでは曹操という男に溺れきっている。だが、そんな状況に悪い気がしていないのも、また事実なのである。
ひとりでに笑っている詠の顔を、曹操が不思議そうに見つめていた。隙だらけの唇に吸い付き、なんでもないということを、殊更に仄めかしてみる。
入れっぱなしになっていた男根。口づけに反応したそれが、無造作に脈打っている。