一 母ふたり(桂花、恋)
空が、夜に近づきつつあった。
心が、少々ざわめき立っているのか。絶影の馬腹を蹴って、曹操は人通りのまばらとなった
悪い知らせがあったわけではない。帰城した曹操を出迎えたのは、
ひとつは、兗州西部で起きている反乱についてのことだった。二日前、陳留にいる
稟の調べによれば、それほど大規模な反乱ではなく、張邈の軍勢だけでも対処できる程度のものではあるらしい。そこには、自分を兗州牧として立てようという、張邈の意図があるのだと曹操は感じていた。
青州兵や、新たに組み込んだ兵らがいる。ぶつけてみるには、ちょうどいい相手だと曹操は思った。曹操が率いることを前提に、稟は将兵に対し出撃の通達を行っている。そのあたりの呼吸は、さすがによく合っていると言っていい。
「少し遅かったようですね、一刀殿。
そう話す稟の声色は、いつになくやさしかった。
産まれた赤子の姿を、先に見ているせいなのか。どのような顔をするべきなのか、曹操にはわからなかった。
桂花の暮らす館についた。門前には、見知った馬がつながれている。燃えるような体毛。薄闇でも、それがよく目立っている。曹操を認識して、赤兎が小さくいなないた。賢い馬なのである。まるで、こちらに挨拶でもしているかのようだった。
「あっ。一刀、おかえりなさい」
「来ていたのだな、
自分の気配を察知したのか、使用人よりも早く恋が駈けつけた。
ほかの者は、いまは来ていないらしい。騒がれるのは、桂花もあまり好きな方ではない。それがわかっているから、ほどほどに距離をとって様子を見ているといったところなのか。
恋に連れられて、曹操は館の中を進んでいく。いまでこそ静まり返っているが、当日はさぞ賑やかだったに違いない。
桂花の部屋から、少し明かりが洩れていた。恋が先に行って声をかけ、自分の到来を知らせている。返事は、よく聞こえなかった。
赤子がそばにいる手前、桂花も大声を出すことは控えているのだろう。子を産んだばかりの身体への負担を避ける、という意味もあるのかもしれない。
「ふんっ、帰ってたんだ。案外、早かったじゃないの」
寝台の端に腰掛けて、桂花は赤子を横に抱いていた。稟から男子だと聞いていたが、顔を見ているだけでは正直わからない。輪郭にどことなく桂花の面影を感じるのは、そう思い込んでいるせいなのか。
はじめて授かった自分の子。実感は、まだ薄いように思えている。しわくちゃの顔が、こちらに向いているような気がしていた。恋は赤子に興味があるのか、近くに寄って仕草を観察している。
「ちょっと、なんとか言ったらどうなのよ?」
「ほんとうに父となったのだな、俺は。それで、桂花が母か」
「はあ……? 当たり前のことをなに感慨深そうに言ってるのよ、アンタは」
呆れ顔の桂花を余所に、曹操は赤子の手に触れていた。
やわらかで、まだ芯が通りきっていない。加減を間違えれば、壊れてしまうのではないか。そう感じてしまうくらいの儚さが、そこにはあるのだ。
「この子は、
「昂? まあ、アンタにしては上出来なんじゃないの。それより、あんまりべたべた触らないでよね。昂が機嫌を悪くしたら、どうしてくれるのよ、一刀」
「ははっ。それは、すまないことをしたな。そういえば、御母堂はどうされているのだ?」
「母さまなら、少し休んでもらっているわ。使用人も増やしてもらっているんだし、張り切りすぎないでいいとは伝えてあるんだけど、ほとんど付きっきりの状態でね」
「仕方があるまい。それだけ、桂花と昂のことを思ってくださっているのだろう。それで、いまは恋が代わりをしているのか?」
曹操の言葉を聞いた恋が、不思議そうに首を傾げている。
大それたことなど、考えてはいない。ただ、純粋に興味があって恋はここにいる。男女が交わることによって、小さな命が産まれてくる。理屈ではなく、人に宿った本能がそうさせるのか。限りなく、神秘的なことだった。
桂花の、母親然とした表情。それを見ていると、細かいことなどどうだってよくなってくる。
「赤ちゃん、昂って呼べばいい? 恋も抱っこしてみたいけど、桂花がまだだめって言う」
「ちょっと恋、そんな泣きそうな顔で言わないでよ。でも、しばらくは我慢なさいな。私にだって、わからないことの方が多いんだもの」
「むう……。だったら、一刀を抱っこしてもいい? それだったら、桂花も安心」
「か、一刀を抱っこですって? 意味がよくわからないけど、こいつだったら好きにしてもいいわよ、恋」
桂花から許可を得られて、恋はうれしそうにほほえんでいる。
とはいえ、自分はどうするべきなのか。そもそも、大の大人を抱えあげて、恋は満足できるのか。
「一刀、こっちにきて? 恋が、よしよしってしてあげる」
「恋のお願いには、逆らえないな。ならば、厄介になるとしようか」
寝台に上がり込み、恋は膝を軽く叩いている。
その上に、寝てみろと言っているようだった。見るからに肉づきがよく、寝心地は悪くなさそうなのである。桂花のため息が聞こえているが、自ら許可した手前、断れとも言えないのだろう。
膝の上に寝転んだ。日中外を駈けていたからなのか、恋からは大地の匂いがかすかに漂っていた。
穏やかな笑み。桂花が昂をあやしているのを真似て、恋が頭を優しく撫でてくる。母の情愛。これが、そうなのか。
「ふふっ。かわいい、一刀」
「かわいい? そいつのけだもの染みた本性を知らないから、恋はそんな風に思えるんじゃないかしら。ねっ、あなたもそう思うでしょう、昂?」
案外気に入ってくれたのか、桂花は何度も昂という名を呼んでいる。
真名は、冠礼の時までに考えておけばいい。昂には、たくさんの母親ができることになる。産みの親は桂花はひとりであっても、そこから先を限定する意味もない。自分は、母というものをほとんど知らなかった。父のことがわかっているのかも、定かではない。遠く彼方にしかない、産みの親の記憶。手繰り寄せようとしても、届きはしなかった。幼い頃の時点で、そうだったのである。いまとなっては、さらに遠い。
「んっ……。どうしたの、昂? そろそろ、お腹が空いてきたのかしら」
慈愛に満ちた声だった。ぐずりだした昂を、桂花があやしている。恋の感じさせてくれる温もり。それが、ちょっと切なかった。
「こっちを見ないでよね、一刀。アンタは、恋と遊んでいればいいのよ」
衣擦れ。たぶん、桂花は胸を露出させているのだろう。
いまさら見るなというのも、おかしな話だった。薄かった乳房も、少しはふくらんできたのかもしれない。その変化を知られたくなくて、桂花は恥じらっているのか。
寝転んだまま上を向き、曹操はくだらないことを考えていた。眼前には、恋の豊かな乳房が見えている。乳を授けてもらう感覚。それが、どういったものなのか。気にならないと言えば、嘘になる。
「今度の戦は、恋が一刀を守ってやる。だから、心配しなくていい」
「それは頼もしいな。稟には、出ることを伝えてあるのか?」
「うん。行きたいってお願いしたら、いいよって稟が言ってくれた。だから、平気」
自分がどこか不安がっているようにでも、恋には見えていたのだろうか。
呂布軍は、まだ半ば独立を保ったままでいる。少数精鋭でいることを、崩されたくないという思いがあるのかもしれない。恋がいまの立場でいる以上、
「一刀、ちょっといい?」
「なんだ、恋」
「んっ……。恋も、お母さんになった時の練習してみたい。だめ、一刀……?」
「桂花には、恋と遊んでいろと言われているのでな。だったら、俺に断る理由などありはしないさ」
「よかった。それじゃあ、桂花みたいにおっぱいあげてみる」
胸を覆っている布が、たくし上げられていく。下から見ていても、肉がたっぷりと詰まっていることがよくわかる。乳先はつんと尖っていて、いかにも吸い付きやすそうだった。
無関心を装っているが、桂花もこちらの様子が気になっているのだろう。時折、振り返ろうとしてはやめている。笑いそうになるのを堪えて、曹操は恋の動きを待っていた。
「ふふっ。吸っていいよ、一刀」
「これほどの眺め、そう得られるものではないな。では、いくぞ? んむっ、んんっ……」
ちょっと乱雑に、豊満な乳房が顔に押し当てられている。このあたりの加減は、恋はもっと知るべきなのだろう。それでも、苦しさなどはなかった。
少しかたくなった乳首を、口に含む。母の真似事をしながら、恋は身体を昂揚させているのだろうか。優しく突起を吸い上げてやると、甘さの混じった声が恋からかすかに洩れた。
乳こそ出てこないが、悪くない気分だった。撫でられている頭が、心地いい。温もりに包まれて、昂は幸せを感じているのだろう。それに近しいものを、自分も理解できているはずだった。
「いい子、いい子ってしてあげると、赤ちゃんはよろこぶ。一刀も、それと同じ?」
「恋……? んっ、んぐっ……」
授乳遊びとは無関係な、甘美なしびれが全身を駈け抜けた。
恋は、どこまで意図してやっているのだろうか。頭を撫でている方とはべつの手が、着物越しに男根を撫で付けているのだ。こんな状況で愛撫をされて、興奮するなと言う方が無理がある。
桂花は自分たちのしていることを知らずに、昂に乳を飲ませ続けている。そのことが、余計に背徳感を煽り立てる。
「一刀、とっても気持ちよさそう。恋、ちゃんとおっぱいあげられてる?」
「上手にできているぞ、恋。ちゅぱっ、むぐっ……」
「えへへ。なら、よかった。いい子いい子も、もっとする」
「ああ……、これは凄まじいな。まさか恋に、このような才能が秘められているとは」
少しもいやらしさを感じさせない手付き。それでも男根は敏感に反応し、着物の内側で跳ね回っていた。
乳を吸っている曹操のことを、恋は伏目がちにあたたかく見守っていた。その性欲とは相反する視線が、より興奮を大きくする。もちろん、恋は意識などしていないはずだった。
「一刀にちゅうちゅうって吸われるの、ちょっと気持ちいい。桂花も、そう?」
「んくっ……。あんまり、おかしなことを考えさせないでよね、恋。私は、昂にお乳をあげてるだけなんだから」
「んっ……。恋が気持ちいいのは、一刀がおっぱい吸ってるから? どきどきも、一刀のせい?」
「し、知らないわよ、そんなこと。はあ、どうしてこんなことになっちゃったのかしら……」
上下に擦られた男根が、快楽に喘いでしまっている。
乳房を軽く絞り上げながら、曹操は乳首を吸っていた。突起は、明らかに大きくなっている。吸い付き、舌での愛撫を加えてみる。いけないことだとは思っていても、情欲はやはり湧いてくる。
紅潮している、恋の顔。見つめていると、恥ずかしそうに視線を外されてしまう。自分は、無心に乳を吸っていればいい。先走りに濡れた男根が、射精をしたいと着物の中で懇願しているようだった。
「んっ、んあっ……。一刀、そんなっ……。ひゃうっ、んんっ……!」
赤子が、我慢などできるはずがない。そこまでなりきる必要があるとは思えなかったが、曹操は奔流に身を任せている。
恋の甘さに塗れた声。誘発され、射精が開始されていく。独特な快楽を味わいながら、乳頭を強く吸った。ほのかな甘さが、口内に拡がっていく。快楽に侵された脳が、そう錯覚してしまっているのか。
恥ずかしげもなく、着物の中で精液をぶちまけてしまっていた。おかしな解放感に、腰のふるえがとまらない。それを知ってか、恋は男根を擦り続けていた。
「一刀のここ、すごくびくびくってしてる。恋、ちゃんとできた?」
頷きながら、また乳を吸った。
濃厚な精臭を、隠し通せるはずがない。それに、着物はしとどに汚れてしまっているのだ。
しばし、無言の時が続く。先に動いたのは、桂花の方だった。
腹いっぱいになって、昂は眠ってしまったらしい。その昂を寝かしつけると、桂花はのっそりと寝台に上がってきた。
「ほんっと、アンタって馬鹿なのね……。恋が無知なのをいいことに、こんなこと」
「むう……。ここまでするつもりは、なかったのだが」
「いいから、脱がせるわよ。こんな大きな赤ん坊の世話、恋には任せていられないでしょうが」
粘液で汚れた着物を剥ぎ取られる。どうしていいのかわかないのだろう。恋は、桂花の様子を見ているだけだった。
外に出された男根が、すぐに桂花の口内に包み込まれる。
「んむっ、はむっ……。こんな、ばかみたいに射精しちゃって……。ぐぷっ、れろっ……。んんっ、一刀の匂いが、すごく強い……♡」
「桂花、一刀のちんちんきれいにしてる? それも、お母さんの仕事?」
「馬鹿言ってんじゃないわよ、恋。ほら、アンタもこっちに来て、後始末の手伝いをなさい。じゅるるっ、ぐぷっ……」
白濁で汚れた男根。そこに、桂花が小さな舌を懸命に這わせている。
飲み込んだ亀頭を、吸い上げてきれいにしようというのか。絡みつく舌に、また興奮を大きくしてしまう。
「一刀の、すごい匂い。恋、こんなの嗅いだことない。んっ、ちゅぅうう」
「ああ……、桂花、恋っ……」
桂花の舌技は、熟練の域に達していると言っていい。絡みつくような動きが絶妙で、敏感になった亀頭に何度も快楽を与えてくるのだ。
それに比べれば、恋のやり方はかなり拙かった。そもそも、口での奉仕を一度も教えていないのだ。その恋が、見様見真似で肉竿に吸い付いている。そのかわいらしさに、男根がびくりと跳ねた。
「はあっ、あむっ。ああっ、一刀のおちんちん、どんどんかたくなって……。んむっ、私がお掃除してあげてるんだから、んあぁあっ、ちょっとは静かにしていなさいよね♡」
「一刀の味、癖になる。恋も、もっと飲んでみたい」
「いいわ。次は、恋がこっちを舐めてみなさいよ」
「くぷっ、ぐぷぷぷっ……。ちゅっ、んはっ。一刀、これいい……?」
恋には、おそれという感覚がない。
ふくらみきった亀頭を、強引に喉奥まで咥え込んでしまうのである。それと荒々しい舌使いが相まって、強烈に快楽が引き出されていくようだった。
遠慮のない水音が、幾度となく響いている。
恋が疲れを見せると、また桂花が。その繰り返しで、絶えることなく男根は責められているのだった。
桂花が、物欲しそうな視線を飛ばしてくる。そろそろ、口内に精液をぶちまけて欲しい。そうやってねだられているように、曹操は感じていた。
「奥まで咥えてくれないか、桂花」
「んっ、ぷあっ……! もう、いちいち注文が多いのよ、アンタは。んぐっ、ぐぷっ。じゅぅうう、じゅずずずっ……♡」
「恋は、つけ根のあたりを舐めていてくれるか。もうすぐ、また出そうでな」
「うん、わかった。ちんちん、ちゅうってしてる」
二人の与えてくる快楽が、とまらない。昇ってくる精液を恋が押し上げ、桂花が吸い出しにかかっているのだ。
甘いしびれが、下腹部を駈け抜けた。一瞬ちくりとするような感覚があったかと思うと、堰を切ったように精液が流れ出していく。
「んぷっ、んじゅずぅうう……♡ ふむっ、んんっ、ごきゅ、ごきゅっ……♡」
「一刀のちんちん、すっごくふるえてる。桂花のお口の中に、子種出してるの?」
「正解だ、恋。おまえにも、後で好きなだけ飲ませてやるからな。乳を吸わせてもらった、お返しだ」
「んっ……。精液飲ませてもらうの、ちょっと愉しみ。それまで、恋はここを舐める」
濁流を飲み下す桂花の姿を、恋はうっとりとした表情で見つめている。
恋のやわらかな舌。頼んでもいないのに、陰嚢をやさしく愛撫しているようだった。本能的に、どうするべきか理解してきているのか。それに伴って、桂花への口内射精は続く。
「んはっ、んむぅうう……。まったく、どれだけ溜め込んだら、一度にこれだけの量を射精できるのかしら」
「何度味わおうが、桂花の口は格別でな。気持ちがいいから、いくらでも出してしまえるのだよ」
「桂花のお口は、気持ちいい。恋も、たくさん練習すればそうなれる?」
「んっ、こくっ……。ううっ……。そうさらっと言われると、ちょっと困ってしまうわね」
桂花が、照れくさそうにそっぽを向いている。いつもの気の強さも、恋の前では霧散してしまうらしい。
心地のいい疲労感の中、曹操は桂花を抱き寄せた。しばらく感じていなかったやわらかさ。それが腕の中にあることに、どこか自分は安堵しているのか。
寝ている昂の姿が、眼に入った。次代は、もうすぐそばにあるのだ。そのことが、曹操にはよりはっきりと感じられるようになっている。