寒い朝だった。
外に出ると、思わず手と手を擦り合わせたくなってしまうくらいなのである。眼前に舞い落ちる、白い雪の粒。掴もうとしても、すぐにとけて消えていってしまう。この調子で降り続ければ、しばらく兵を動かすことも難しくなるのではないか。だとすれば、雪解けまで十分に調練を重ね、軍勢としての働きを鈍らせないことが肝要だった。
雪の粒が、まぶたに触れる。ちょっと表情をほころばせ、曹操は白い息を吐いた。思考を巡らせれば、物騒なことばかりが浮かんでくる。役目と言ってしまえばそれまでだが、美しい雪景色を見ていると、そんなことが馬鹿らしくなってくるのも事実だった。
こんな時に、どうして誰もそばにいてくれないのか。そんなわがままな気持ちが、心の隅からもたげてくる。
「殿」
「ああ、おまえたちだったか」
背後から聞こえてきた声に、曹操が振り向いた。
夏侯の二人。いつもより厚着をしているせいで、肌の見える部分が少なくなってしまっている。だが、それはそれで普段とは違った魅力を感じさせてくれるのである。
屋根の下の縁にまでかかった雪を払い、
「殿の寂しそうなお背中が見えましたゆえ、姉者とあたためて差し上げようと話していたのです。たまには三人で、雪見酒と洒落込むのも悪くはありますまい」
「ささっ、お早く。殿のためにあたためてきた酒なのです。冷えてしまっては、もったいないではありませんか」
「世話をかけるな。それでは、いただくとしようか」
酒が注がれていく。立ち上る湯気が、いかにも美味そうな香りを放っている。急いで準備をしてきたためか、酒肴までは手が回らなかったようだった。それでも、今はあたたかな杯が手もとにあり、二人の顔がすぐそばに見えている。ならば、ほかになにを求めることがあるというのか。
酒杯の中身を一度で飲み干し、曹操はまた息を吐いた。やはり白い。だが、不思議とあたたかさを感じさせる白さだった。
「この雪景色、
「やめておけ、秋蘭。桂花にも声をかけてみたのだが、昂が風邪でもひいたらどうしてくれるのだ、と一喝されてしまってな。それで、ひとり寂しくしていたのだよ」
「あやつめ、ほかならぬ殿のお誘いを断るなど、結構な親馬鹿ぶりではありませんか。曹家に生まれた男子として、昂には強く育ってもらわねば。殿も、そうお思いでしょう?」
「しばらくは、桂花の方針に任せよう。時が来れば、春蘭には昂を鍛えてやってもらいたい。まだまだ、時代は乱世だ。剣術のひとつくらい、覚えておいて損はあるまい」
「はい、是非に。殿の御子であろうと容赦はいたしませぬゆえ、お覚悟を」
「ははっ。俺はいいとして、桂花がどんな顔をするのかが愉しみだな。秋蘭も、よろしく頼む」
「ふふっ。承知いたしておりますよ、殿。それと、もう少し落ち着いてからで構いませぬが、われらにも殿の子をお授けください。姉者など、桂花が昂を生んでからというもの、毎晩のようにそのことを語っているのです」
「ななっ!? 秋蘭だって、日頃桂花が羨ましいと洩らしているではないか? この前だって、
「むっ……。私としたことが、余計に藪を突っついてしまったようですな」
春蘭に言われたことが恥ずかしかったのか、秋蘭は横を向いて酒杯に口をつけている。
覗くうなじが、薄く朱色に染まっていていかにも鮮やかだった。
「秋蘭のこんな顔を見るのは、久しぶりだな。それこそ、小さな時以来なのではないか?」
「からかわれるのは、よしてください。私とて、恥ずかしいものは恥ずかしいのですから」
「あははっ。確かに、これほどまでにかわいらしくなった秋蘭を見る機会など、あまりないことと存じます。しっかり、目に焼き付けておかねばなりませんな」
「むう……。そんなことを言ってもよいのか、姉者? 私は、姉者が誰にも知られたくないと思っている恥ずかしい話を、いくらでも存じているのだぞ。ふむ、ちょうどよい。酒の席の笑い話として、ここは殿に余さず聞いていただこうではないか」
「ななっ!? そ、それはいかんぞ、秋蘭!? ほら、酒をもっと飲め。そうすれば、今あったことなどすぐに忘れられよう」
焦ったように、春蘭が妹に酒を勧めている。その姿を見て、溜飲を下げたように秋蘭がほほえむ。どれだけ大きくなろうとも、変わらない関係だった。
時間が経つにつれ、自然と身体が近くなってくる。擦り合う手。肩に感じる頭の重み。その全てが、自分に穏やかな温もりをくれている。
「ふっ……。思い出話のついでではありませんが、殿はあれを覚えておいでですか?」
空に視線をやりながら、秋蘭がそう言った。
最初あたたかかった酒は、随分と冷え込んでしまっている。だが、それとは別の温もりが自分たちにあることを、三人は知っている。
「あれというと、あれか? 小さな頃、殿が肌身離さず持っておられた人形があったことを、覚えているぞ。全身真っ赤で、なにやら厳しい具足を身に着けているような意匠をしていたな。それに、われらの知らない素材で作られていて、叔父上が殿を天からの授かりものだと話されていたのを、信じる気になった」
「さすがに、殿のこととなると姉者もよく覚えているのだな。懐かしい話だ。あの人形、どこへ行ってしまったのだろうな。あれば、昴もきっと気にいると思うのだが」
秋蘭の言うように、小さな時分はいつもあの人形で遊んでいたように思う。手のひらを広げたくらいの大きさで、どこに行くのにも一緒だった。興味を抱いた春蘭に取られそうになって、危うく喧嘩になりかけたこともある。
唯一、自分が持っていたもの。そこに『一刀』という名が書かれていなければ、どのような字であるのかもわからなかったことだろう。
いつからか遊ばなくなり、思い出すこともなくなっていた。そんなことをはっきり覚えているのだから、よほど二人の方が自分のことを知っている。
「案外、叔父上がお持ちになられているのかもしれませんよ。こっちに来られたら、お聞きになられてみては?」
「馬鹿らしい。訊ねてみても、笑われるのが関の山だ」
養父が
ほんとうに、人の気持ちというのはわからないものだ。これまでほとんど音信不通だった養父が、自分のもとに来ることを決めた。気持ちが変わったのは、老いのせいなのか。はたまた、昴の存在がそうさせたのか。
かけるべき言葉は、まだ見つかっていなかった。
黄巾の乱が起こって以来、自分は曹家を思うがままに動かしてきた。それが、間違っていたとは思わない。事実、それで曹家は
「あまり、気負われますな。叔父上にだって、意地を張られていた部分が多少なりともありましょう。それは、殿も同じです」
「言ってくれるな、秋蘭。だが、おまえの言う通りなのかもしれん」
それ以上は、言葉が出てくることはなかった。
いくらでも、酒を飲めてしまいそうな気分だった。二人が、そろそろ部屋の中に入って暖を取ろう、と言ってくる。自分の中で駆け巡る、寂しさに似たなにか。二人は、それを癒やしてくれようとしているのか。それとも、単にもっと深い部分で交わりたくなってしまったのか。そんなことは、きっとどうだってよかった。
寝台の上。左右から二人に挟み込まれると、甘い香りが鼻を覆った。口移しに酒を飲まされ、腰のあたりを弄られる。穏やかな熱ではない。ここから生まれるのは、狂おしい情念だけなのだろう。
「んっ……。来てくれ、一刀」
秋蘭の温もりを最も感じる部分。そこに、自分自身が飲み込まれていった。
深々と声が発せられる。溶け合うと言えばいいのか。回らない頭では、そのくらいの表現しか浮かんでこなかった。
激しい交わりは、どちらも欲してはいない。ゆっくりと中をかき混ぜ、互いの熱を感じた。背中に抱きついている、春蘭の乳房の柔らかさ。感じながら、曹操は腰を何度も揺さぶっている。
「秋蘭め、嬉しそうに声を出しおって。一刀、私のこともちゃんと感じてくれているのか? んっ、んふっ……」
「無論だ、春蘭。おまえが俺たちの交わりを見ながら感じていることも、承知している」
「えへへっ、そ、そうなのか。はあっ……。一刀の身体、あたたかくて気持ちがいいな」
ともすれば、このまま眠ってしまうのではないか。そんな緩やかな交わりを、曹操は続けた。
秋蘭が、ちょっと強めに口づけてくる。それの意味することくらい、わかりきっていた。最奥に押し付けるように、腰を隙間なく密着させる。背後にいる春蘭も、その動きを後押ししてくれているようだった。
「んくっ、んあぁあっ……。一刀、私もう……」
「いいぞ、秋蘭。俺も、おまえの中で果てたくなっている」
心で深くつながっていれば、激しい交わりなど必要ないのかもしれない。
秋蘭の身体は熱を持ち、濃い女の香りを撒き散らしている。狭まる膣内。曹操は、いつになく穏やかな吐精の瞬間を迎えていた。
「ああっ。出してもらっているのだな、秋蘭。一刀の子種が、びゅくびゅくって子宮の中に注がれているんだ。心地よくて、あたたかくって。まだしてもらってもいないのに、私もなんだかおかしな気分になってきたぞ」
「んんっ……。あっ、姉者ぁ、そんなに見ないでくれ。なんだか、恥ずかしいではないか」
「なにを今更。二人一緒に抱かれたことなど、それこそ数え切れないくらいあるではないか」
「だ、だってぇ……。んっ、はあっ、ああっ……。一刀の精液、気持ちいい……」
ぬかるんだ秋蘭の中から男根を引き抜き、曹操は寝返りを打った。
待ちきれずに、自分で秘所をいじっていたのだろう。春蘭のそこは、男を受け入れる準備がすっかり整ってしまっている。
「いやらしい子だ。そんなに、感じている妹の姿に興奮してしまったのか?」
「ふっ、んうっ、ふはっ……。一刀だって、わかるだろう? あんなになった秋蘭を見せられて、我慢なんてできるはずがあるかぁ……!」
「道理だな、それは。待たせた、春蘭」
「ああっ、くるっ、きてるっ……。一刀の太いのが、私の中を押し拡げて……っ。んっ、んむっ、ちゅぅう」
深く舌を絡ませながら、中をゆっくりと解していった。
包んでくる膣の温度を感じながら、春蘭の感じる点を突いていく。余裕が消えるまでは追い込まない。それでも、身体の昂りは確実に感じている。今は、そのくらいの交わりがちょうどよかった。
「ちゅっ、ちゅぱっ……。えへへっ、気持ちいいな、一刀。ずっと、おまえとこうしていられればいいと、そう思ってしまうくらい、私……っ」
「俺だって、変わらないさ。こんなにも馴染んだ中に、いたくないはずがないだろう」
「ははっ、そうなのか? だが、それも当然なのかもしれんな、一刀。私と秋蘭ほど、おまえと交わってきた女はおらんのだ。んっ、んあっ……。なあ、もう出してくれたっていいのだぞ? 欲しいんだ、私も。一刀の、どろどろになった子種を、出してもらいたくってしかたがないんだ」
「春蘭にそう強請られて、断るわけにもいくまい。いくぞ、しっかり飲んでみせろ」
「う、うんっ。ああっ、くるっ……! 一刀の大きいのが、またぷくって膨らんで……。ふあぁあっ、くるっ、射精きちゃう……!」
二本の腕で春蘭の身体を抱き寄せながら、最後は奥の奥に精を放った。
精液の熱さを受けて、春蘭が全身をぶるっとふるわせる。逃しはしない。そんな思いで、曹操はより強く腰を押し付けた。
「ふふっ。いい顔をしているな、姉者。まあ、一刀に愛してもらっているのだから、当然と言えばそうなのだが」
「んあっ……。しゅ、しゅうらん……」
「先程存分に見られた分、私もじっくりと姉者の絶頂を見届けてやろう。ほら、もっと感じてもいいのだぞ? 一刀に射精してもらって、気持ちいいのだろう?」
「やっ、やあっ……。こんなの当たり前なのに、どうしてこんなにどきどきしてしまうんだぁ……!」
錯乱しかかる姉の姿に気をよくしたのだろう。その豊満な乳房に手を伸ばすと、秋蘭はゆっくりと揉みしだいていく。達しているところに追加の刺激を与えられたせいで、春蘭の膣肉が締め上げを強くする。男根に残った精液。吸い上げられ、種となって消えていった。
「あっ、ふあぁあっ、んんっ……♡ か、かずと、しゅうらん……」
「なんだ、疲れてしまったのか、姉者? だったら、一刀。もう一度、私が相手になるとしようか」
秋蘭がおのれの秘部を指で開く。ついさっき出したばかりの、真新しい精液。流れ落ち、寝台を汚していった。
流れ出た分は、また埋めてやればいい。柔らかさと、滑らかさ。その両方を増した肉を割りながら、曹操は心地よい快楽に浸っていた。