抜きゲーみたいな島に住んでるTS娘はどうすりゃいいですか? 作:パチドリくん
「催眠とおちんちん整理と媚薬と絶頂バイシクルの1200マンコパワーでアンアンのイキイキ!」
拝啓
ぬきたしヒロインの皆様方
青藍島に降りしきる喘ぎ声に夏の盛りを感じる頃、皆さまはいかがお過ごしでしょうか。
この度は皆さまに謝罪しなければならない事態が発生した件と、反省の意味も込めてこのような文を手に取らせて頂いております。
さて、今回謝罪に至った経緯ですが——単刀直入に申しますと、本来のヒロインである皆様方を差し置いて私如きが橘 淳之介氏のナニにちょっかいを出してしてしまいました。
いえ、決して故意という訳ではないのです。
純然たる事故だったのです。
偶然と予想外の出来事が重なったことで起こった不幸な事故であり、責任は誰の物かといえば半分ぐらい桐香のせ――全て私の責任です。
さりとて、起きてしまったことは覆しようがございません。
ここは先人の例に習いまして
ダメージが薄いと仰られるかもしれませんが、この傷を表に出すわけにもいかないという点をご了解頂けますと幸いです。
弊社と致しましては、今後も引き続き皆様方のご支援を通常の2倍3倍の準備と情熱をかけて取り組んで頂きますので、何卒ご寛恕の程頂けますと幸いです。
それでは、皆様方の健やかな毎日と幸せを祈って
木戸 葉月より
敬具
明かりが少ない夜道を、私は淳之介と二人で歩いている。
先ほどから会話という会話は無い。
ただ、無言である。
「「・・・・・・・・・・・・」」
私と淳之介の間には、如何とも形容しがたい空気が流れている。
いつもだったら聞こえてくる喘ぎ声も時間帯のせいか静まっており、それが一層私たちの間にある空気を冷えさせる。
それもこれも全部、私がやってしまったことが原因ではあるのだが・・・・・・
『葉月へ』
『SS代表兼水乃月学園生徒会長の冷泉院 桐香です』
『電話をかけても出なかったので、メールで連絡します。 実は、さっきのお薬がかくしかまるうまで――』
――・・・・・・いやなんだよ媚薬になるサプリメントって!?
馬鹿じゃないの!?
そんな物だと知ってれば絶対服用なんてしなかったのに・・・・・・!
というかそんな物気軽に渡すんじゃないよ桐香のばか!あほ!スカポンタン!緑の悪魔!!
おかげでこっちは淳之介のチ、チン・・・・・・チン・・・・・・ん゛ん゛っ゛!!
いや、何も無かったんだ・・・・・・何も・・・・・・!
そう。
私のログには何もないし口の中の違和感なんて知らない。
まだちょっと苦味が残ってるなんて知らないったら知らないんだ。
・・・・・・それに、よく考えなくたって桐香は全く悪くない。
悪いのは桐香の好意だからと油断して服用した私と、桐香に薬を渡した人物だ。
誰がどんな理由で渡したか知らないが、媚薬を平気で配る奴だ。
青藍島に相応しい変態野郎に違いあるまい。
『くちゅん! う~ん、誰か噂でもしてるのかしら・・・・・・』
『あら、光姫さん風邪ですか? 馬鹿は風邪を引かないとは言いますが、最近は流行っているみたいですし気を付けないと・・・・・・そうだ♪ 私今マスクを持ってるんです。 良かったらこれを付けてげろげろげろえろ』
『れ、冷泉院さーーん!?』
・・・・・・いや、自分のことよりもだ。
私の方は慣れてるから別に、いい。
だけど淳之介は違う。
淳之介は拗らせ童貞で、処女厨で――何より、愛というものを大切にしている。
それだけなら、ただ愛の重い奴だと笑い話になるだろう。
だけど、今回のような押し付けになるのだけは絶対に駄目なんだ。
だって、淳之介にはこの島での過去の出来事が・・・・・・・・・・・・
淳之介の味方であると誓っておきながら、この有様。
・・・・・・本当に私は、どうしようもない奴だ。
顔には出さないように気をつけながら、内心ではどんどん気が落ち込んでいく。
罪悪感と情けなさ、僅かばかりの羞恥心のせいで、淳之介の顔を見る事が出来ない。
――怖い。
淳之介が今、何を考えているのか――想像するだけで背筋が凍る思いだった。
あんなことをしてしまったのだ。
いくらふざけた様子だからって、無かったことにしようと言ったって、淳之介にとって苦痛であったことには間違いないのだ。
見も知らない他人との性行為の苦痛は、私自身知っていた筈なのに。
もしこのせいで淳之介に嫌われていたら、私は――――
「・・・・・・・・・・・・あ、あのさ!」
「――っ、な、何!?」
そんな中、淳之介が気を紛らわせようとしたのか、大きめの声でこちらへ話しかけてくる。
その声に驚いて素っ頓狂な返事を返してしまうが、淳之介は気付いていないのか、気にしていないのか――構わずに話を続ける。
「あー、えーっと、その・・・・・・そう、名前!」
「・・・・・・え?」
「君の名前を教えて貰ってもいいかな。 いつまでも君、とかじゃ呼びづらいし・・・・・・」
名前――・・・・・・確かに、今まで名乗って無かったな。
名乗るつもりも無かったし、影からこっそり手助けする予定だったから今まではそれで良かった。
しかし、淳之介にとって今の私は反交尾勢力であり、不本意ながらあんな事をしてしまった同士。
名前を尋ねるのはおかしくないだろう。
・・・・・・ただ、ここは素直に名乗るべきではない。
ここで「葉月です」と答えることは出来ないし、何よりこれ以上関わりを持ったら私であることがバレるリスクもある。
私の正体がバレれば淳之介が気に病むことは目に見えているし、そんな思いを淳之介にはさせたくない。
だけど、私は――
「・・・・・・ヨウ、僕の名前は葉だ」
「ヨウ・・・・・・あぁ、分かった。 それじゃ、俺のことは知ってるみたいだけど改めて名乗らせてくれ。 俺の名前は橘 淳之介――宜しくな、葉」
「・・・・・・うん」
淳之介に名前を聞かれて、思わずそんなことを口走ってしまう。
頭ではそんな馬鹿なことをしたら今後に差し支えると分かっているのに、止める事が出来なかった。
――・・・・・・あぁ、本当に情けない。
仮の姿でさえ淳之介に嫌われたままでいたくないという女々しさが本当に救えない。
名前を偽ってでも、仲を取り戻そうとする女々しさが、本当に。
「あー・・・・・・そうだ! それにしても、この辺り静かだよな! ・・・・・・街の中は性触者も居ないし、昼間とはえらい違いだ」
淳之介が気を遣ってくれたのか、こちらに話を振ってくる。
・・・・・・ありがたいな。
こういう時に、ただの世間話が気持ちを安らげてくれるから。
「あぁ・・・・・・この時間帯は人も滅多に通らないから、SHOも別の所に人員を割いてるんだよ。 だから、この辺りは人目を心配する必要もない」
「そうなのか・・・・・・まぁ、そんなの俺たちには関係無いけどな!」
「・・・・・・随分、強気だな」
「そりゃそうさ。 俺たちには秘密兵器のT-A-Eに、妹との愛の結晶である“アリアドネー・プロトコル”もあるからな! それに何より――葉は今まで一人で頑張ってきたんだろう? だったら、俺も頑張らないと」
「――・・・・・・あぁ」
・・・・・・そうだ。
全ては淳之介と奈々瀬、そしてヒロイン皆の幸せの為に今まで私は頑張ってきたんだ。
例えそれが自分自身のエゴだとしても――・・・・・・満願成就、ただそのためだけに――
(幾重にも辛酸を舐め 七難八苦を超え 艱難辛苦の果て 満願成就に至る――うん・・・・・・そうだ)
私がやってしまった事は最早どうにも出来ないが、だからといって、それに後悔して足を止める訳にはいかない。
私が立ち止まらない限り、道は続くのだから――
キィーッ! がしゃぁんっ!
「ん?」
決意を新たにしながら淳之介の家へと向かう途中、急ブレーキをかけたような音と、何かが
何事かと音が鳴った方向へ顔を向けると、その先には――
「おーっと“勃起団団長”ケツガ・キツカ選手コースアウトです! カーブを曲がり切れず、そのままガードレールへ衝突してしまいました!」
「団長、何やってんだよ! 団長!!」
「何て声、出してやがる・・・・・・
・・・・・・なにこれ。
団長と呼ばれた
その近くには少しだけ凹んだガードレールと、ぶつかった衝撃で破損したであろうサイドミラー等が転がっていた。
結構派手に転倒していたが、思ったよりも怪我は無いらしい――じゃなくて。
「そして次にやってくるのはぁーー? “淫が逆転のチンポ”ヤリサー選手だぁー!」
「そのアナル、貰い受ける――!」
やや右曲がりのチンポの形をしたマシンに乗った全身青タイツの男がとてつもないスピードで突き進む。
「ねぇ
片方向にしか曲がれないの」
「あーっとぉ!? ケツガ選手に引き続きヤリサー選手も同じカーブでコースアウトだぁーッ!」
「ヤリサーが死んだ!」
「この人でなし!」
「だからよ、止まるんじゃねぇぞ・・・・・・」
「団長ぉぉおおおおお!!」
・・・・・・どうやら、青藍島の走り屋達がレースをしているようだ。
しかも結構派手で過激な奴。
ガードレールに突っ込んでいった走り屋の車は奇跡的に爆発も炎上もしていないが、あんなスピードで事故を起こして怪我が全く無いという事はないだろう。
「これ、通報した方がいいんじゃないか・・・・・・?」
「・・・・・・匿名でSHOに通報だけでもしておこう。 流石に危ないし、近所迷惑過ぎる――」
何だか急激に気勢が削がれたが、それはともかく。
淳之介の言う通り、こんな過激な行為は流石にSSじゃなくても見過ごせない。
SHOに通報を掛けようとポケットから携帯を取り出したその時、聞き覚えのある声が聞こえてきて思わず体を止める。
この声は、まさか――
「ミサミサミサミサミサァーーーーッ!!」
「もっと激しく、無様にイきなさいマラ号! あの地味なモブ顔女に抜かれるような失態を犯したらオシオキですわよ!」
「ぶおぉぉおおおん♡ ぶおぉぉおおん♡」
「アナルのことなら、誰にだって負けませんから! アナルでイケねぇ豚は、ただの豚だぁぁぁあああああ!! んほぉぉぉおおおお♡♡」
「すげぇぞあのリトルマラ! 騎乗してる女王様がバイブのギアを巧みに操ることで前立腺を刺激し、それによって圧倒的なスピードを生み出してやがる! これはもう勝負が決まったんじゃねぇか!?」
「い、いやあっちの絶頂バイシクルに乗ってる嬢ちゃんもすげぇぞ! 絶頂バイシクルは速くなればなるほどバイブの抽挿も早くなる・・・・・・普通だったらあの速度はアナルへの刺激で碌に動けなくなるっていうのに・・・・・・一体何者なんだ!?」
「あの走方――まさか」
「知っているのか、ヒョウ柄ボディペイントの姉ちゃん!」
「いや、分からん・・・・・・猥トはどう思う?」
「猥トもそう思います」
「さぁ残るは“ハメー・クイーン”マーキュリー選手と、“藤色の豚”アナルマン選手の二名! 勝つのはどっちだぁーッ!?」
白のタンクトップにチョビ髭が特徴的な男性に跨った女王様と、濃厚な豚骨ラーメン屋の匂いを漂わせる少女が私たちの横を通過していく。
紫色の髪を二つ結びにした髪型に、太ももが眩しい健康的な肉体をした少女が自転車に乗ってアヘ顔をしながら猛スピードで駆けていく姿はまさに、猪突猛進ガール。
やる気と元気が生き印、
「この世の終わりか?」
「――・・・・・・ふっ、ふふっ・・・・・・」
「ど、どうした・・・・・・?」
「いや・・・・・・ちょっと、知り合いを見かけて・・・・・・」
「・・・・・・そ、そうか・・・・・・」
淳之介の目がこちらをそっとするかのような、哀れみを若干含んだ視線に変わる。
気持ちは分かるが止めてくれ。
ちょっと頭がおかしいだけで、とても良い娘なんだ・・・・・・。
それに数日後にはあのラブリーキチガイもNLNSに加入予定だから、淳之介もいつまでもそんな目で見ていられないからな。
「ふぅ・・・・・・取り合えずSHOに連絡はした。 早く行こう」
「良かったのか? 知り合いが居たんじゃ・・・・・・」
「・・・・・・まぁ、大丈夫でしょ・・・・・・美岬だし・・・・・・」
「美岬・・・・・・?」
「――近いうちに分かる」
淳之介と二人、気を取り直して帰路へ向かう。
うだうだと色んな事を考えたけど、淳之介の言葉と美岬の奇行のおかげで何だか悩んでいるのが馬鹿らしくなってしまった。
美岬ほどぶっ飛んだことは出来ないけど、あんな風に馬鹿やって悩みを吹き飛ばすのもアリかもしれない。
「・・・・・・ふふ」
ただ、それとは別に・・・・・・こうして淳之介と昔のような、男友達みたいな感じで接することが出来るのは、ほんの少しだけ嬉しかった。
「た、ただいまー・・・・・・」
「あ」
僅かに疲労を滲ませながらも漸く橘家に戻ってきた淳之介は、静かに玄関の扉を開く。
そこで偶然目が合った二人を出迎える金髪の少女――奈々瀬は帰ってきた淳之介の姿を見てホッとした表情を浮かべる。
「おかえり、淳。 ・・・・・・ちゃんと無事に連れて帰ってこれたのね」
「あぁ、この通り――奈々瀬もアサちゃんとあの娘の面倒ありがとな」
「別にいいわよそれぐらい・・・・・・ほら、アサちゃんが寂しがってたから早く顔を見せてあげなさいな」
淳之介にそう言うと、奈々瀬はリビングの方へと移動する。
その奈々瀬のいつも通りの姿に、漸く日常に戻ってこれたのだと淳之介は人知れず心の中で安堵する。
(これでもうあんな空気になることも無いんだ・・・・・・!)
隣に立つ少年との情事を行ってしまったのが今から30分ほど前のこと。
ここに戻ってくるまでの30分で淳之介の精神は色んな意味でやつれてしまっていた。
何故なら――
『じゅるっ、ずずっ、んぷっ♡ 出してぇ♡ 口に中に精液ぴゅっぴゅって、金玉の奥の精子一匹残らず吐き出してぇ♡♡』
『うっ、ぐぅぅう! なんてバキュームだ! これが息子を死に追いやる吸引力の変わらないただ一つの口マンコ、Die sonって奴か――あぁっ! 駄目だ我慢できないッ・・・・・・射精るっ!!』
『――!!』
『・・・・・・』
(気まずすぎるって・・・・・・!)
街の方まで戻ってくると性触者の数も少なからず現れて、見つからないように通り過ぎながらも、見かけるたびに淳之介は“あの出来事”を思い出してしまっていた。
なにせ自分たちもほんの少し前に似たような事をやってしまったばかり。
時間が経てばまだマシだったろうが、つい先ほどのことを忘れろというのは中々に難しいことであった。
(しかしそれも最早これまで・・・・・・家に戻りさえすれば本当の俺を見せることが出来る!)
だが、家の中という安全が確保された場所ならばもう心配の必要は無い。
この帰り道で彼と気まずい雰囲気は多少あったものの、これから挽回していけばいい。
あのような情けない橘 淳之介は本物の姿ではなく、実際の橘 淳之介はもっとカッコよくてクールでしっかりとした頼れるナイス・ガイなのだと。
そう自分を説得させる淳之介なのであった。
「――ほら淳之介、行くぞ」
「えっ、あ、ああ」
仮面の少年――葉は物思いに耽っていた淳之介に声をかけると、勝手知ったると言わんばかりに橘家の中を進む。
初めて訪れた筈の場所で迷いなく進むその姿に違和感を感じる淳之介だが、家屋の構造などどこも似たような物だから気にしすぎかと考える。
そうして二人は奈々瀬達が待つリビングへと足を進め、リビングへの扉へと手をかける。
「あっ、皆おかえり! ほらほら麻沙音ちゃん、大好きなお兄ちゃんが帰ってきたぞ!」
「うぅ~・・・・・・遅いじゃないかよ兄ぃ~・・・・・・せっかく奈々瀬さんとの二人っきりという神が与え給うた蜜月の時間をこのロリが母性とバブみで無限におぎゃらせてくるせいでアサちゃん赤ちゃんになっちゃったよぉ~おぎゃぁ~ん!おっぱい欲しいよ〜〜〜!!」
「おーよちよち、元々赤ちゃん並に手がかかるアサちゃんがアカちゃんになっても変わらないし兄からおっぱいは出ないから哺乳瓶で我慢だぞー」
「やぁ~哺乳瓶やだ~。 兄のおっぱいじゃなきゃやだ~。 もっと言えば兄が奈々瀬さんと付き合って妊娠した新妻奈々瀬さんの母乳を直で飲みたい・・・・・・!」
「奈々瀬と付き合う予定はないし仮にしたとしてもそんなことはさせないからなー」
「でも赤ん坊みたいに甘える妹が・・・・・・?」
「手がかかる分余計に愛おしいぜ・・・・・・!」
「駄目な子ほど好きになる兄好き!抱いて!」
がしっ、と。
橘兄妹はお互いの愛情を確かめ合うように、熱い抱擁を交わす。
「うっうっ、美しい兄妹愛なんだな。 兄妹いつまでも仲睦まじくいて欲しいんだなぁ・・・・・・!」
「何でアタシこの兄妹の仲を取り戻す出汁に使われてるのかしら・・・・・・」
「奈々瀬Goッ! アサちゃんの発言を使って『へぇ~ふぅ~ん』とか思わせぶりに淳之介に詰め寄るんだほらいけっ!!」
「え?」
「・・・・・・・・・・・・」
「――と、こんなことをしてる場合じゃない」
麻沙音の体を離しながら、こほんと咳払いをして全員を見渡す淳之介。
妹との愛を確かめる抱擁は大切だが、今はそれよりも大事なことがあるのだと気を引き締める。
「役者も揃ったことだし始めよう・・・・・・我ら秘密結社“NLNS”の会同をな――!」
「なに格好つけてんのよあんたは・・・・・・」
「おぉ・・・・・・ひみつけっしゃ! 何だかかっこいい響きなんだな!」
「説明の前にまずはアレからだな。 麻沙音、アレの用意を」
「うぃうぃ。 アレだね、アレ」
淳之介がそう言うと、麻沙音は部屋の奥からある物を持ち出してくる。
その一連の様子に呆れる奈々瀬と、凄い事が始まるのかと目を爛爛と輝かせるヒナミ。
そして葉月はポーカーフェイスを貫きながらも、内心ではNLNSの面々が徐々に集まっていく光景に感動と尊さで悶え苦しんでいた。
「スクリーンヨシ! 投射角度ヨシ! 照明設定ヨシ! ・・・・・・投映せよ!」
「りょーかい・・・・・・カタカタ、ッタァーン!」
麻沙音が持ってきた物は自立型のプロジェクタースクリーン。
パソコンの映像などを白い壁に映すアレである。
そして麻沙音の操作によって、スクリーンにはNLNSの旗幟である赤い背景に黒鷲の顔と翼が描かれた映像が投射され、それと同時に部屋の光量が落とされたことで、部屋の雰囲気は淳之介の想像する秘密結社らしい様子へと変貌していた。
「・・・・・・それでは、まずは俺たちの組織の事から説明しよう。 我々はこの島のドスケベ条例に抗う反交尾勢力であり、愛なきセックスと無秩序なドスケベに裁きの鉄槌を下す者――チーム“NLNS”」
口角を上げ、ニヤリとした表情でヒナミに話しかける淳之介。
本人としては爽やかな微笑のつもりなのだろうが、その表情はどうしようもなく悪役のそれであった。
「そして俺がその“NLNS”を導くリーダーにして、誇り高き童貞の橘 淳之介だ。 こっちのPCを操作している愛らしくも憎たらしい奴が、我が最愛の妹でありNLNSきってのシステムエンジニアである――」
「あ、えっと・・・・・・麻沙音ちゃんだよね? それと、こっちの綺麗な女の子が片桐 奈々瀬ちゃん!」
「・・・・・・――え? な、なぜそれを」
「えっとね、実はもう、大体の事情は二人から聞いてるんだ・・・・・・」
「何だと――!」
折角格好良い名乗り口上とかそれらしい説明を考えてたのに――
「ほんと無駄に格好つけたがるんだから・・・・・・淳たちを待ってる間にある程度はもう話してるに決まってるじゃない」
「まぁまぁ奈々瀬さん、兄というどうしようもない生き物はこういうシチュエーションに憧れるんですよ・・・・・・兄が中学生の時のノートなんかもそりゃあ凄いですから。 学校にテロリストがやってきた中やれやれ系を気取りながらテロリストをサク―っと打倒して“じゃ、世界救っちゃいますか”なんてThe・テンプレ妄想のショートショートを――」
「おい待てアサちゃん、お前が何故それを知っている」
「あ、やっべ・・・・・・これ兄がベッドの下に隠してた秘密のノートの内容だった」
「俺の妹でありながら貴様何という事を――! ぶっ殺してやる!」
「おお!? やれるもんならやってみろ厨二童貞! 闇の炎に抱かれて消えろぉぉおおおお!!」
「あわわ・・・・・・ケンカ始めちゃった・・・・・・大丈夫かなぁ・・・・・・」
「ま、まぁ二人はいつもこんな感じで・・・・・・仲は悪くないのよ? ・・・・・・おいこら淳! 今はお客さんもいるんだからケンカしちゃめーでしょ!」
「うっ、ぐぅ・・・・・・くそっ、今日はこのへんにしといてやる!」
「こ、こひゅー、ふひゅー・・・・・・こ、この程度でくたばるアサちゃんじゃないもんね・・・・・・今度はノートの内容をA4用紙にコピーして学校の掲示板に貼り付けてやるからなぁ・・・・・・ふひっ!」
「もしそれをやったら今度こそ貴様の命は無い物と覚悟しろよ――!」
「ほら、アサちゃんもその辺にして? 淳にいつまでも付き合ってたら疲れるだけなんだから」
「仲が良い・・・・・・んだよね?」
「ケンカするほど仲が良いという典型的な例でしょう」
「わ、そういえば君も居たんだったね・・・・・・ええっと、なんて呼べばいいかな・・・・・・君の名前は?」
ヒナミの言葉に、全員の視線が仮面の少年――葉の方へと向けられる。
黙っていたせいで存在感が完全に無くなってしまっていた少年の姿を見て、淳之介はハッとしたように表情を改める。
「葉、違うんださっきのは――少し黒歴史を穿られて冷静さを欠いたが、本来の俺はもっとクールなんだ」
「フールの間違いでしょ・・・・・・」
「黙りなさい――それに、葉も男なら分かるだろう? 男なら誰しも一度はヒーロー願望というか、俺は皆とは違うんだ的な思いが所謂第二次性徴期に湧き出てくるあの気持ちが!」
「え? あ、うん・・・・・・まぁ分からなくもないが」
今世は女だし精神年齢ももうとっくに30超えてるから今世では無かったけど前世では覚えがあるなぁ――と過去を思い出しながら頷く葉月ならぬ葉。
「だろう!? つまりそういう時期があることは立派に成長してきているという証でありそれを乗り越えてようやく一人前の男になれる訳でだから黒歴史ノートは過去の自身を乗り越える為の必要な犠牲であり――」
「ジュン♰サンクチュアリ・・・・・・タチバナー伯爵・・・・・・エターナルファランクス・・・・・・」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
「・・・・・・淳之介が呼んでくれましたが、僕は葉、と言います。 あなたは渡会 ヒナミ先輩ですよね。 わたちゃん先輩のことは知り合いから聞いています、宜しくお願いしますね」
「――・・・・・・先輩! ほあぁぁぁ・・・・・・今先輩って呼んでくれた!? 私が、先輩・・・・・・! 分かったよ葉くん! 何かあったら先輩である私を何時でも頼ってくれていいからね! 仲良くしようねっ!」
「ンギッ」
ヒナミが手の平をその小さな胸に当て、ふんすっ、といった様子で誇らしげにした後、すぐさま葉の手を取ってニコニコと微笑みかける。
その幸せオーラ満開のヒナミと、手を握られて微笑まれるという状況に誰にも聞こえないぐらいの音量で呻き声をあげる精神クソ雑魚ナメクジ。
そういうとこやぞ。
「・・・・・・え、先輩?」
「そ、先輩。 信じられないだろうけど、A等部の3年生なんですって・・・・・・」
「・・・・・・いやいや、そんな訳ないだろ。 皆して俺を騙そうとしてるのか? あんな小っちゃい子が年上な訳ないじゃないか」
「小っちゃい子じゃないですけど! 正真正銘3年生なんですけど!」
「えぇ・・・・・・マジで・・・・・・? ・・・・・・でも、二人がそう言うんだったらそうなんだろうな・・・・・・」
信じられないといった様子でヒナミを見る淳之介。
だが、葉と奈々瀬の言葉と、ここで否定しても仕方ないと感じたのか一旦口を閉じて、そしてすぐさま開く。
「ま、まぁそれはともかく! 説明が省けるならそれはそれでいい――けど、本題はここからだ。 我々NLNSの目的はドスケベから逃れること、そして最終的にはドスケベ条例を――ぶっ潰す。 それが我らの悲願」
「・・・・・・」
「だが・・・・・・今の俺たちでは力が足りない、人が足りない、何もかもが不足している。 この島でドスケベから逃れるというだけでも一苦労――そんなザマでは条例の崩壊など、夢物語でしかない」
「勿論やれることの限りはやるつもりだが、それでも一人でも多くの仲間が欲しいというのが本音だ。 そんな中、偶然にも君を――悪漢に襲われて、怯えている君を見つけた」
「傍目から見て、それはこの島の条例の上での合意には見えなかった・・・・・・だから俺は君を見逃せなかった。 だからというわけじゃないが、もし君が本当に・・・・・・この条例を嫌だと感じているのなら、俺たちの仲間になってもらえないだろうか?」
一息にそう語る。
嘘一つ混ぜずに、真摯に語るその言葉を聞いてどう思ったか。
その返事を、ヒナミの返答を、淳之介は静かに待つ。
「ん・・・・・・うんとね、橘くん。 私ね、えっちなのが嫌な訳じゃないんだ」
「――っ! なら・・・・・・」
「あっ、待って! 仲間になるのが嫌なわけじゃないの。 ――・・・・・・私ね、奈々瀬ちゃん達から話を聞いて、迷ってたんだ・・・・・・だって、ドスケベから逃げるってことは、条例を破る悪い子になっちゃうって、そう思ってたから」
「でもね・・・・・・う、ううぅぅ・・・・・・私、ロ、ロリだから・・・・・・誰にも誘われないし、襲われないしぃ・・・・・・ぐすん」
若干涙ぐむヒナミ。
しかし、すぐさま目をパシパシとさせて、キリッとした表情に切り替わる。
「それならやっぱり初めては好きな人と一緒が良いなって、私も思うから・・・・・・だからね、今の橘くんを見て決めたよ」
「私、そのえぬえるえぬえす?ってチームに入るよ! 後輩の頼みは断れないもん! 先輩と一緒に、えっちな事から逃げられるよう頑張ろうねっ!」
元気よく両手を胸元でぐっと握って、太陽の様な笑みでそう告げるヒナミ。
その笑顔と返事の内容を聞いた淳之介は、新たな仲間が出来た喜びを噛みしめるように、拳をぐっと握りしめる。
そしてその手をゆっくりと開いて、ヒナミの前に手を出し――
「――・・・・・・あぁ、よろしく! ・・・・・・えっと、わたちゃん、先輩?」
「うんっ、よろしくねっ! それにしても、はぁぁぁー・・・・・・! 先輩、いい響きだなぁ・・・・・・! それに後輩もこんなに増えて・・・・・・嬉しいなっ、嬉しいなっ」
ヒナミは差し出されたその片手で覆い切れない手を、両手でしっかりと握り返すのだった
「はぁっ・・・・・・喜んでる姿も可愛いのだわ・・・・・・!」
「・・・・・・!? もしや、奈々瀬さんの寵愛を独り占めするつもりかあのロリ・・・・・・! くっ、許せねぇ! その立場と妹ポジションだけは絶対に譲らないんだ・・・・・・!」
「●REC ・・・・・・麻沙音ちゃん、どうどう」
「ほひょえっ!? な、何奴っ!? あ、あれ・・・・・・? 今に背後に誰か居たような・・・・・・」
反応は三者三様であったが、誰もがヒナミのNLNS加入に否定する様子はなく、快く受け入れる様子であり――こうして、NLNSに新たに頼りになるロリ先輩が仲間に加わるのだった。
本当は葉月くんちゃんのNLNS対話まで挿れたかったけど、カリ首が長くなっちゃったから聖母ヒナミママまでだパコ
お話が全くススまなくてパチ自身焦らしプレイされてる気分パチねぇ・・・・・・