抜きゲーみたいな島に住んでるTS娘はどうすりゃいいですか? 作:パチドリくん
ようこそ、ザーメンハウスへ。
このミルクセーキはサービスだから、まず飲んで落ち着いて欲しい。
うん、「股(月1投稿)」なんだ。済まない。
仏の顔射もって言うしね、謝罪オナニーして許してもらおうとも思っていない。
でも、この
ぬるぬるとした膣の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しい。
そう思って、このSSを作ったんだ。
じゃあ、注文を聞こうか。
胸元に潜ませていたネクタイピン型の小型カメラをこっそりと停止させ、NLNSの面々を眺める。
ヒナミ限界Botこと礼先輩ほどではないが、ヒナミが嬉しそうにニコニコしているのを眺めるのはやはり良いものだ。
私にとっての最推しは何と言っても奈々瀬だが、だからといってヒナミや麻沙音ちゃん達が嬉しそうにしているのを見て嫌になるはずが無い。
それになんてったって、ヒナミは可愛いからな。
声が可愛いし見た目も可愛い。
アホ毛が感情と呼応して動くのも可愛い。
動きもわたわたしてて可愛い。
しかも先輩且つお姉さんなヒナミはバブみの塊で無限にオギャれる。
――――なんだこいつ最強か?
願わくば橘家の観葉植物になって、ヒナミ達の幸せそうな姿を一生見て過ごせられるように祈りたい・・・・・・――が、祈るだけではそう上手くいかないのがこのぬきたし世界。
以前にも言ったが、元々がエロゲーなこの世界はヒロインの数だけルート分岐――つまり世界線が存在する。
しかもぬきたしの続編であるぬきたし2では平行世界が登場するのだ。
オナホのあまりの気持ち良さに扱く手が光の速さを超えて平行世界へ転移する——そんな正気を疑うストーリーがぬきたしの続編である、ぬきたし2の物語だ。
そんな性器末な世界だからこそ未来がどうなるかなんて誰にも分からない。
私だけでなく、淳之介たちの行動一つでさえ世界は如何様にも変わるのだから油断は禁物である。
まぁそんな事は当然と言えば当然で、今更の事なのだが・・・・・・
「――っと、そういえば今日は元々葉が俺たちに用があったんだったな。 わたちゃんのことですっかり忘れてたけど、一体何の用だったんだ?」
淳之介がそう問いかけてきたことで、私はここに来た目的を思い出す。
ヒナミの危機にいざという時救出するのが今日の主な目的であったが、それとは別にもう一つ目的があるのだ。
そうでなければ、わざわざ淳之介たちとこうして一緒に行動するリスクを取る理由がない。
・・・・・・これを言えば、淳之介は混乱するだろう。
だけど、淳之介には出来るだけ早く私の目的を打ち明けておきたかった。
僅かに緊張している心を落ち着かせ、手汗をズボンで拭き取る。
「僕が今日君たちを呼び出した理由は、君たちに伝えたい事があったからだ」
「伝えたい事――?」
「あぁ。 僕と君たちでは目指す目標が異なる、という事をな」
「・・・・・・え?」
淳之介が呆けたような声を出す。
困惑した表情で一体どういう事かと問うような視線をこちらに向けており、奈々瀬や麻沙音ちゃんも淳之介と似たような反応をしながらこちらの様子を伺っている。
そして、ヒナミが戸惑ったようにこちらへ語り掛ける。
「え・・・・・・え? どういうコト? 葉くんって、NLNSの仲間なんじゃないの?」
「いえ、僕は反交尾勢力ではありますがNLNSには加入していません」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。 目標が異なるってどういう事だ? 葉も反交尾勢力なら条例を潰すのが目的なんじゃ――!」
「――・・・・・・それは、少し違う」
淳之介の言葉を遮るように告げる。
――そう。
淳之介達と私は同じ反交尾勢力であるが、その目標には決定的に異なる点がある。
そして、その相違はきっと、今の淳之介にとって受け入れがたい物なのだ。
「僕が以前君たちに遭遇し、目的は何だと問われた時にこう言ったね――条例の誤謬を正す者、と」
「あ、あぁ・・・・・・」
「少数の意見を封殺し、性を強要する今のドスケベ条例は間違っているけれど、僕は条例の全てが間違っているとは思わない」
この島に住んでる人の殆どは、ドスケベを楽しんで暮らしている。
加えて、条例によってドスケベが推進されているこの青藍島は、犯罪率がほぼ0%だという。
それは、表立って公開されていない犯罪――裏風俗の問題等に関しては含まれていないという正確性に欠ける情報ではあるものの、それ以外の一般的な犯罪は殆ど起こっていないという事だ。
無論SHOやSSによる過剰な取り締まりの効果もあるだろう。
だが、根本的な理由として――この島は条例によって性的欲求が満たされる事でストレスを抱える人間が少ないせいなのか、犯罪に手を染めるまでの悪人が少なく、大らかで優しい人間が多い。
大切な仲間であるSSは勿論のこと、クラスメイトやご近所さん一人一人に至ってまでもが親身になって接してくれる。
だから、この島で暮らす生活は基本的にとても楽しく、過ごしやすい。
「僕はこの島の人たちに恩義がある。 それは、この島で暮らしていく中で沢山の良き人たちに巡り合えたという結果だ」
――ただ一つ、少数派の意見を否定し、性行為を強制させるという状況を除いて。
「確かに僕はドスケベ条例のせいで嫌な思いもした――けれど、恩がある。 だから僕は、この島の人たちの優しさの根本であるドスケベ条例を破壊するのではなく・・・・・・変えたいんだ」
それらの思いを込めて、淳之介に告げる。
今言った事に嘘偽りはない。
まぁ、それ以外にも色々理由はあるが・・・・・・共存の未来を知っているという荒唐無稽な話と、実際の所は共存がどうとかよりただ推しの不幸な顔は見たくないとかいう自分の我儘な理由だ。
そんな事をわざわざ言う必要など無いだろう。
そして、そんな私の言葉に淳之介は顔を曇らせてしまっている。
こうなる事は分かっていた筈なのに――その顔を見てどうしようもなく心がざわつく。
私は遠回しで淳之介に「復讐を諦めろ」と言っているのだ。
それは、淳之介にとって耐え難い事であるのは分かっている。
だとしても――
「淳之介。 君はこの条例を許せない、許せないから潰す――そう言ったな」
「・・・・・・それ、は・・・・・・」
「君に何があって、何を思ってその決意を抱くに至ったまでは知らない――知らないが、君たちに条例を潰させるわけにはいかない」
勿論理由は知っている――だが、これは私のエゴだ。
私のエゴで、淳之介の気持ちを蔑ろにしている。
それは淳之介の想いを傷つけ、もしかしたら反発してくる可能性もあるだろう。
だが――私はそれを貫き通す。
原作での文乃の願いから、過去に囚われた復讐ではなく、希望の未来への選択を選び取った淳之介なら諦めてくれるだろう――等という甘い期待はない。
私がそうすると決めたから、それを押し通させてもらう。
例えそれが、淳之介の想いを踏み躙ることになったとしても。
「――・・・・・・・・・・・・っ」
「淳・・・・・・――っ、ねぇ、葉くん。 だったら、貴方に聞きたいことがあるわ」
「何かな、奈々瀬さん」
奈々瀬が淳之介を支えるように寄り添って、私に問いかける。
そのさり気ない気遣いが淳之介の気持ちを僅かに持ち上げたのか、淳之介が顔を上げるが、その顔色は未だ苦虫を嚙み潰したような暗い表情であった。
その顔を見てしまうと決意が鈍りそうになるのを自覚した私は、奈々瀬から問いかけられた事を理由にして淳之介から視線を逸らす。
「条例を変えるって言っても、どうやって変えるつもりなの。 貴方たった一人で条例を変えるなんて、とてもじゃないけど信じられないわ。 それに、条例をどう変えるつもりなのか――それを教えて」
当然の懸念だった。
私が条例を潰すつもりが無いのなら、どうするつもりなのか。
それは勿論、決まっている。
「――・・・・・・僕が望むのは、共存。 ドスケベを望むものはそのままに、ドスケベを拒否する者には拒む権利があるのだと、そう主張する」
「共、存・・・・・・」
「そして、条例を変える方法はある――君たちだって、知っている筈だ」
「“琴寄 文乃”――彼女こそが条例を変える鍵であり、この島の全員が血眼で探している少女」
「彼女が居れば――この島は変わる、変えられる。 より良い未来を築くことが出来ると、僕は信じている」
そこで一度言葉を区切り、彼らの反応を伺う。
・・・・・・文乃が居れば、とは言ったが正確には文乃はきっかけになる存在であって、実際には文乃を狙う勢力――条例を生み出し、性によって世界征服を企む仁浦県知事と、条例を憎み青藍島を崩壊させようとする防人老人、そして青藍島を風俗島とし勢力拡大を狙う手嶋 俊英率いるヤクザ共を退ける力が無ければ共存を成し遂げるのは難しいだろう。
そしてそれは、私一人では力不足であることは明確であり、NLNSの協力が不可欠――だが、防人老人からNLNSへ同様に伝えられている文乃の存在を明かせば、こちらの言葉に僅かながらの可能性があると思ってくれるはずだ。
奈々瀬たちは皆思う所があるのか一様に考え込み、淳之介へと視線を向ける。
そして淳之介は――
「・・・・・・だと、しても」
「・・・・・・」
「だとしても、俺は・・・・・・条例を、潰す」
絞りだすように出した声は、徐々にだが大きくなる。
「性を金に変えて非処女を生み出し、少数の意見を否定し虐げる、こんなふざけた条例を許すわけにはいかない」
「もう二度と、あの時のような出来事を起こさせない為にも・・・・・・大切な仲間と、俺自身の為にも――」
「俺は、条例を潰す――ッ!」
「――・・・・・・そう、か」
・・・・・・なんとなく、そう答えるだろうと思っていた。
私が今、淳之介に復讐を諦めろと言った所で止まらないだろうとは。
淳之介が抱える事になったトラウマと怨恨――イチモツが大きいから、という些細な理由でイジメを受けた過去と、初恋の少女と大切な恩人を傷つける原因になった条例は、淳之介にとって決して許せるものでは無いのだろう。
だが、この会話で今の淳之介の意思を確認出来たのは良かった。
そう――今日私がこうして目的を語ったのは、淳之介の意思を再確認したかったからだ。
もし今の段階で淳之介が復讐を諦めて共存への道へ手を貸してくれるというのなら、それは必ずこの先のアドバンテージになった筈だから。
だけど結局、今の段階ではリーダーの淳之介が共存の道を拒んだことで、NLNSの舵を共存へ持っていくことは出来なかった。
やはり淳之介の復讐という意思を変える事が出来るのは、恩人の娘である文乃だけ、という事なのだろう。
「だったら、僕は君たちと同じ行動を取る事は出来ない」
「・・・・・・」
淳之介は何も答えない。
「これから君たちとは、どちらが先に文乃を見つけるかの競争になるだろう――だが、もしも君の気が変わったのならこの番号にかけてくれ」
「これは・・・・・・」
「僕の連絡先だ。 今日みたいなやり方だと手間がかかるからな」
淳之介へ私への連絡先が書かれた紙を渡して、そっと距離を取る。
こうなってしまった以上、あまり長居する訳にもいかない。
長居すればするだけ、淳之介を悩ませてしまうだろうから。
ただ、その前に一つだけ。
「それじゃあ、今日はこれで失礼させて貰う。 最後に一つ、お願いがある・・・・・・もし君たちが先に文乃を見つけたら――僕の事は気にせず、彼女の事をよく見て、話して・・・・・・そして、何があっても彼女を守ってあげてくれないか」
私じゃ駄目だったけど、文乃なら――淳之介の意思を変える事が出来る筈だから。
「もしかして、君は・・・・・・いや、分かった。 その願い、守ってみせる」
その言葉を最後に、私は橘家を去るのであった。
「淳・・・・・・本当に良かったの?」
「・・・・・・良いも悪いも無いだろう。 俺たちと彼とでは最終的な目標が違った――それだけだ」
「でも、あの子も同じ反交尾勢力なんだよね? だったら、仲良く出来るハズだよ・・・・・・?」
「・・・・・・」
彼は共存を目指している――そう言った。
彼だってこの島の条例の被害者である筈なのに、恩があるという理由だけで彼はそれを許せたという事なのだろうか。
・・・・・・分からない。
そもそも、俺たちは彼の事を詳しく知らない。
なにせ、出会ったのは今回を含めてまだ2回しか無いのだ。
たったそれだけで、彼の何が分かるというのか。
その当たり前の事実に納得する裏で――恩人である彼の気持ちが分からないというのは、何とも歯がゆい気分だった。
・・・・・・ただ一つ、分かる事があるのは。
彼は共存という未来を見据え、俺は復讐という過去に囚われている、という事だった。
そしてその違いは、俺にとって眩しすぎて――
「――・・・・・・ま、アタシ達はアンタの判断に従うわ。 協力は得られなかったけど、同じ反交尾勢力なんだからきっと分かり合える日も来るわよ」
「奈々瀬――?」
「淳。 リーダーはアンタなんだから、アンタがこうだと思った道を進めばいいの。 だからいつまでもウジウジしてないで、しゃきっとしなさい? 童貞のリーダーさん」
「――・・・・・・あぁ、そうだな」
その言葉に、揺らいでいた気持ちが落ち着いていく。
奈々瀬の言う通り、リーダーである俺がいつまでもこうしてはいられない。
彼は共存を目指し、俺たちは条例を潰す。
今でも心の奥にドスケベ条例と彼の願いに対する複雑な思いはあるが――今は仲間と最愛の妹の安全と、誇り高き童貞としての矜持を貫き通せれば、ただそれだけでいい。
そうして前に進み続ければ、この感情に対する答えもまた見えてくる筈だから。
――それはそれとして。
「まさかビッチに気を遣われるなんてな・・・・・・俺もまだまだという事か」
「おいコラ」
「何だ、人を童貞呼ばわりする失礼ビッチよ」
「アンタねぇ・・・・・・煽られたらやり返さないと気が済まない訳? てゆーか童貞はホントの事じゃない」
こいつ、言ってはならないことを――っ!
「童貞の前に“誇り高き”を付けろ! 誇り高き童貞とただの童貞では天と地ほどの差があるんだぞ!!」
「めんどくさい童貞なのだわ・・・」
「まだ言うか! そして何度も童貞童貞言うな傷つくだろうが! ビッチの癖に男心も分からないのか!?」
「んなっ・・・・・・だからアタシの事をビッチ呼ばわりするのは止めなさいって言ってるでしょうが!」
「あぁぁ二人とも落ち着い・・・・・・あっ! これって、確か・・・・・・えーっと・・・・・・二人とも、仲良しさんなんだね!」
「「良くない!」」
「ひえっ、さっきケンカするほど仲が良いって聞いたのにぃ・・・・・・間違えちゃったのかな・・・・・・」
そんな突拍子もない発言に思わずわたちゃんに大きな声を出してしまう。
しまった――そう思った時には手遅れで、アホ毛をしなしなとしおらせてしょぼくれるわたちゃんを生み出してしまった。
「ああぁぁごめんなさい・・・・・・泣かないでわたちゃん。 さっきのはちょっとした言葉の綾というか、何と言うか――」
「――あっ、ああ! わたちゃん違うんだ。 さっきはあんな風に言ったけど俺と奈々瀬にとってあれぐらいはただのじゃれ合い程度だから、気にしなくて良いんだ」
「・・・・・・本当?」
「あぁ本当さ、なあ奈々瀬!」
「え、えぇ!」
奈々瀬と目線を合わせてお互い頷き合う。
先ほどの確執も忘れ、急に仲良くなるのは傍から見て違和感しか感じないだろうが、とにかく今はそれよりも優先すべきことがある。
そう、わたちゃんの機嫌を直すことだ。
頼む、これで騙さ――通じてくれっ!
「・・・・・・はぁぁ、良かったぁ~・・・・・・ホントにホントのケンカだったらどうしようって思ったっちゃったよ」
「たっちゃった」
ヨシ!
ふぅ・・・・・・それにしても舌足らずなわたちゃん、先輩。
・・・・・・本当に先輩か?
そう疑問を浮かびそうになったが、とにかく機嫌を取り戻してくれて助かった。
この人が泣きそうになると凄く罪悪感が湧くからな・・・・・・。
「はぁ・・・・・・まぁ、その、さっきは悪かったわ」
「え? あ、いや・・・・・・俺の方こそ・・・・・・」
わたちゃんの喜怒哀楽に気を取られていると、奈々瀬の方から謝罪される。
・・・・・・素直に謝られると調子が狂うな。
何だかんだ奈々瀬とはいつもこうして言い合うのはおふざけの延長戦みたいな物だったから、こうやってケンカみたいに見られてしまうと、どうにも背中がむず痒くなってしまう。
「「・・・・・・・・・・・・」」
「・・・・・・!」
二人して何とも言えず押し黙っていると――わたちゃんがハッと何かに気付いたようにアホ毛をピンと立たせる。
「――よし! じゃあ二人とも、仲直りのキスをしよう!」
「ええっ!?」「はぁっ!?」
何言い出すんだこのロリ先輩――!?
「例えケンカじゃなくても、二人とも悪かったって思ってるなら、そのトキは仲直りするべし、だよ! これは先輩命令ですっ!」
「待ってください合法ロリ先輩っ! あなた今何言ってるか分かってるんですかっ!?」
「合法ロリじゃないですけど!」
「そ、そうよわたちゃん? 言ってる事は分かるし大事な事なんだろうけど、キ、キスっていうのは、ちょっと・・・・・・」
「え? でも島の人たちはいっつもキスして仲直りしてるな・・・・・・?」
「あれはこの島特有・・・・・・って訳でも無いんだけど・・・・・・と、とにかくキスは駄目!」
「わたちゃん先輩、奈々瀬の言う通りキスは駄目です。 俺達は反交尾勢力NLNS・・・・・・No Love No Sexを掲げるチームなんだ。 それ故に愛の無いセックスは断じて認められないのです」
「そ、そっか・・・・・・うーん、でもなぁ・・・・・・」
俺たちを余程仲直りさせたいのか、うんうんと悩む素振りをするわたちゃん。
正直、心臓に悪いからもうこの辺で勘弁して欲しいのだが。
「な、なぁもうその辺で・・・・・・俺と奈々瀬は大体いつもこんな感じだし、今更無理にそんな形どって仲直りする必要も無いんじゃ――」
「あっ! じゃあ、握手とかじゃダメかな?」
「・・・・・・!?」
「・・・・・・まぁ、それぐらいなら・・・・・・?」
握手、だと?
それは、つまり――
「だっ、駄目だ駄目だ! 握手って事は手を繋ぐって事だろう!? そんなふしだらな行為、付き合って2年ほど経って婚約をした男女程の仲で無ければ母さん許しませんことよ!?」
「あんたは誰目線なのよ・・・・・・」
「え、ええぇ・・・・・・握手も駄目だったら、もうハグぐらいしか・・・・・・」
「ハグはもっと駄目――!」
「とうとう何もかも嫌がりだしたわね・・・・・・」
だって、手を握るって――手と手が混じり合って、触り合うんだぞ!?
それはもうエッチだろう!?
「はぁ・・・・・・淳、もうこの辺で終わらせましょ? ちょっと手を合わせればすぐ終わるんだから、ほら、手出して?」
「う、ぐ・・・・・・しかし・・・・・・」
「・・・・・・それとも、アタシと握手するのは、嫌?」
奈々瀬が目線を少し下げ、伺うように俺の事を見る。
そ、そんな言い方ずるいだろ・・・・・・。
そんな口ぶりで、そんな顔をされたら、何も言えなくなってしまう俺だった。
そして、俺だけが悪いという雰囲気が、最早俺の行動を決めざるを得なくなって。
「・・・・・・わ、分かったよ・・・・・・やるよ・・・・・・」
「――・・・・・・ん、じゃあほら、アンタのタイミングでいいから」
奈々瀬がすっと手を出してくる。
その手を取るために俺はゆっくりと、奈々瀬と極力目を合わさないように、慎重に・・・・・・そうして、奈々瀬の手に、俺の指先が触れた。
その瞬間――
「っああぁやっぱり駄目だっ!! 付き合ってもいない男女が手を繋ぐなんて俺には出来ないっ!!」
やはり、誇り高き童貞としての矜持が、どうしても奈々瀬の手を取る事が出来ず。
「・・・・・・ヘタレ童貞」
そしてそうやって騒いでいる俺には、奈々瀬のその小さな言葉は聞き取れないのであった。
何やかんやどうにかして奈々瀬との仲直りの儀式を行った後――今後の行動を考える。
わたちゃん先輩という新たな仲間も迎い入れ、NLNSは計4名となった。
今までは逃走活動と人員不足で文乃捜索はまだ本格的に行えていないが、この調子でもう一人ぐらい仲間が増えれば文乃捜索に必要な人員は足りるだろう。
そう考えていただけに、彼の協力が得られないというのが残念だったが――
「・・・・・・あれ? そういえばアサちゃんはどこだ?」
「え? あら、ほんとね・・・・・・」
「麻沙音ちゃんなら、さっき部屋から出て行ってたような気がするけど・・・・・・何かあったのかな?」
気が付くと、リビングから麻沙音の姿が消えていた。
折角新しい仲間が増えて、丁度都合よく俺の家に集まっているという状況だから軽く歓迎会でもしようと思ったのだが・・・・・・どこに行ったのだろうか我が妹は。
流石にお客さんが来てる状況で連絡も無しに勝手な行動はしないと思うのだが・・・・・・。
そう考えていると、丁度リビングの扉が開いてアサちゃんが姿を現す。
「はぁ~・・・・・・って、あれ、何で皆さんこっちを見てるんですか・・・・・・」
「いや、アサちゃんが気が付いたら居なくなってたからどこ行ったんだろって話をちょっとな。 どこ行ってたんだ?」
「え? あ~、そうなの・・・・・・ちょっと落とし物をしてたから玄関の方探してたんだよ」
「ん、そうなのか。 俺も一緒に探そうか?」
「んにゃ、もう見つかったからだいじょぶ」
「そ、そうか・・・・・・」
・・・・・・何か様子が変だな?
それに、アサちゃんが若干冷たいような・・・・・・。
こう、「こいつアホだしな・・・・・・」みたいなそんな諦観のような感情をアサちゃんからひしひしと感じる。
ストレスでも溜まっているのだろうか。
「アサちゃん、もっといつもみたいにキレキレの罵倒とか言わなくて大丈夫か?」
「え、どしたの兄・・・・・・罵倒されて興奮するマゾ豚みたいなこと言い出して・・・・・・ドン引きなんですけど」
全然違ったしガチトーンで言われてしまった。
割と凹む。
「なぁ、俺何か悪い事でもしたのか・・・・・・?」
「いーや、べっつにー? ・・・・・・思い出せないなら、妹としてはさっさと頭ぶつけてその腐った脳味噌から記憶掘り起こしてこいって感じかなー」
「えっこわ・・・・・・」
俺そんな事してまで思い出さないといけない記憶を忘れてるのか?
「・・・・・・まぁ、仕方ない部分もあるし気にしないで・・・・・・おら妹は腹が減ったぞ早く飯の用意と甘やかし態勢を整えて精一杯のもてなしをしろエロゲ純愛厨鈍感童貞!」
「エロゲのジャンルと童貞は関係ないだろ!? ったく・・・・・・ほら、これでいいか?」
「オホホホ、くるしゅうないですわぞ~」
アサちゃんの態度はよく分からなかったが――元通りになったし、本人も言ってるし気にする必要は無いのだろう。
今は、そういうことにしておこう。
「そんな変な言葉遣いしたらめーって言ってるでしょ。 正しい日本語が身に付かなくなるでしょうが」
「ハッ、日本語なんて日本人ですら完全に理解出来てないのに正しい日本語なんてあるもんですか。 それに私の場合は毎朝SHKの楽しい日本語講座*1見てるから一般人より語学力あるもんね・・・・・・!」
「あれを日本語と認識したら日本人として終わりなんだぞ」
課題セリフと称して未開の言葉を操る青藍島ならではの番組を楽しんでいるアサちゃんであった。
「・・・・・・さて、これからどうしよっかな」
橘家の玄関を出て一人、ぽつりと呟く一人の少年(?)。
「あとは美岬の安全と、文乃の出会い方をどうするか――計画通りに事が進めばいいけれど」
彼の独り言は誰にも聞かれることは無く、静かな住宅街へと吸い込まれていく。
誰にも聞かれていないだろうと思っているのか、あるいはただ単に気分だったのか知らないが、彼はぽつぽつと独り言に集中する。
「結局は、仁浦県知事が一番の問題になるんだよな・・・・・・あの人だけは、淳之介になんとかして貰わないことにはどうにも――」
そんな重要な事まで言いそうになったその時――
「――待って、くだしゃいっ!」
彼を呼び止める声が一つ。
その声に反応して少年が振り向いた先には、茶色の髪で片方の目を隠した少女が立っていて。
「・・・・・・麻沙音ちゃ・・・・・・さん。 何の用かな」
なんで――なんで、麻沙音ちゃんが?
人見知りで、普段知らない人の前に立つことも出来ない筈の彼女の姿を見て、驚きを覚える少年。
しかし、それを決して表に出さないようにしながら彼女へと問いかける。
「えっと、そ、その、間違ってたらごめんなさいぃ・・・・・・でも、その・・・・・・どうしても確かめておきたかったんです・・・・・・」
「・・・・・・? 一体、何を――」
麻沙音は人見知りである事を懸命に堪えるようにして、ポケットからある一枚の紙を取り出して少年へと見せつける。
それを見た彼は――今度こそ驚きを露わにし、その仮面の奥の瞳を大きく開いて。
「こ、この写真・・・・・・見覚え、ありますよね?」
そう、彼に告げるのであった。
※パチドリくんの中の人の最推しは奈々瀬パチ