抜きゲーみたいな島に住んでるTS娘はどうすりゃいいですか? 作:パチドリくん
「クソッ・・・・・・おいお前ら起きろ! あのガキどもふざけやがって・・・・・・ぜってぇ逃がさねぇからな!!」
暗闇の森の中を、3人の男と1人の女が騒いでいる。
彼らは皆一様に派手で安っぽい――謂わば大学生風な恰好をしており、どこか物々しい雰囲気を漂わすその風体は島の住民にも、ただの一般客のようにも見えない。
言うなれば、チンピラや小悪党という言葉が似合う集団であった。
「俺はSHOに通報しておくから、お前らはあのガキ二人を追え! まだそう遠くには行ってねぇはずだ!」
「げほっ・・・・・・クソガキが! この借りは何倍にも返してやるからな!」
彼らは皆一様に怒りを露わにしており、男達の口々からは剣呑とした言葉が放たれる。
その言葉に追従するように他の面々も口汚い言葉を吐きながら、彼らは“ガキども”を捕らえる為に森の中を散開する。
山を駆け下りていく仲間の姿を見届け、残った男の一人がSHOへの通報の為に携帯を取り出そうとしたその時――
「――そこまでだ、悪党」
「っ!? なんだテメェは!」
「水乃月学園生徒会、SS五番隊の者だ。 貴様らの先ほどの行動は全て録音させて貰った。 既に応援は呼んでいる・・・・・・大人しく投降するんだな」
茂みからSSの制服の格好をした一人の少女が、ハンドガンを突きつけながら男の前に現れる。
男は少女の言葉に一瞬たじろぐも、周囲を見渡し、相手がこの少女一人だと分かると嘲るような笑みを浮かべ、少女に悟られぬように足に力を籠める。
「お嬢ちゃん1人? SSって事は学生だろうに・・・・・・こんな夜遅くまでお仕事とは大変だ――なぁっ!」
「・・・・・・っ!」
相手はたった一人。
加えて相手は年端も行かぬただの少女。
体格の劣る少女に対し、大人の自分が負けるはずがないと判断した男はSSの少女に襲い掛かる。
「俺は知ってんだぜ? SSってのは上からの許可がねぇと発砲出来ねぇんだろ! だったらテメェみてぇなガキ一人、ここで黙らせちまえば問題ねぇんだよ!」
男は勢い良く走り出し、少女の腕に手を伸ばす。
狙いは少女のハンドガン。
口では発砲出来ないと言ったが、万が一の可能性も考えまずは少女の武器を奪おうとしたのだ。
銃を奪い取ろうと駆け寄ってくる男を目の前にして焦ったのだろうか、少女の反応は鈍く対応が遅れている。
その姿にやはり銃はただの脅しだったかと一人納得した男は遂に少女の腕を掴み取る。
だが――
「――ふっ!」
「なっ――ぐあっ!?」
少女の腕を掴んだ瞬間、少女が目にも止まらぬ早さで動いたかと思うと、男の視界がぐるりと一回転し体中を衝撃が襲う。
気が付けば男の視界は地面と並行にまで下げられ、背中に回された腕と人一人分ほどの重みを感じ、そこで男は何らかの技で投げられたのだと気付く。
「ぐっ、おっおい女! この腕を離しやがあああああ゛あ゛!!」
関節は少女により抑えつけられ、それによって生じた痛みは男の身動きが取れなくさせる。
少女は男の背の上でポーチから拘束具を取り出し腕を縛り付けた後、続けて足も縛り上げる。
拘束具の具合を確かめた少女は男の背から立ち上がると、男の体を蹴り上げるようにしてひっくり返す。
足蹴にされた男は少女の雑な扱いに怒りを覚えるも、縛られている為に反撃は出来ない。
だが、せめて罵声の一つでも浴びせてやると口を開いたその時――男は少女の目と視線が合い、その口を引きつらせた。
少女が銃口をこちらに向けていたという理由もあっただろう。
だが、それよりも。
――少女が、酷く冷え切った視線でこちらを見ていた事。
その事実が、男の口から言葉を奪った。
少女の表情には負の感情しか伺えず、目は暗く澱んでおり、瞳の奥には黒い炎がちらつく。
普段の彼女を知る人物が今の彼女を見れば、まるで別人だと称すことだろう。
少女は男に対しての怒りを露わにしつつも、静かに口を開く。
「・・・・・・本当にさ、私はお前たちみたいな人間が嫌いなんだ。 人を人と思わず、他人の幸せを奪おうとするお前らが、見ていて殺したくなるぐらい嫌いだ」
決して大きな声でない筈の、とも言えば周囲の虫の鳴き声にさえかき消されそうな少女の小さな呟きが、男の耳には何故かはっきりと聞こえた。
少女はハンドガンの銃口を男の目の前に持っていくと、引き金に小さく指を伸ばす。
それを間近で見せられた男は焦りと恐怖に身を襲われながら、先ほどの態度と一転して少女に大きな声でやめてくれと懇願する。
「お、おいやめろ・・・・・・やめろよぉ! その銃がいくら暴徒鎮圧用のライオット弾だからって、そんな距離で撃たれたら死んじまう!」
「・・・・・・だから?」
「は、はぁっ!? だ、だからって・・・・・・お、お前頭イカれてんのか!? 俺を殺したらお前だってタダで済むわけねぇに決まってるだろうが!?」
声を荒げて放った説得の言葉だったが、銃口の先はピクリとも動かない。
それを見た男は確信する。
――こ、こいつマジだ・・・・・・マジでやるつもりだ!!
少女のその言葉と表情に、男はこの場から逃げ出そうと手足が縛られた状態でありながらも、這うようにして距離を取る。
しかし、その程度の足掻きでは少女から逃げられるはずもなく、ただ歩くだけで追いつかれてしまう。
少女は地面を這う男の前に立ち塞がり、男の頭を掴み上げ澱んだ眼差しをぶつける。
「・・・・・・さっきの女の子はさ、私の大事な友人なんだ」
「は・・・・・・?」
「美岬は血も流してたし、多分足も捻挫してた・・・・・・その状態で殴りもした。 優しいあの娘を傷つける輩に、慈悲なんてものは必要無いよね」
「ま、待てよ・・・・・・あの女を殴ったのは俺じゃねぇ! アイツを殴ったのは――」
「うるさい」
少女は男の頭を地面に叩き付け、言葉を遮る。
痛みによる男のうめき声が僅かに漏れ出るが、少女は気にした様子もなく再度男の顔を掴み上げる。
「言い訳は聞きたくないんだ。 時間の無駄だし、単純に腹が立つ」
「わ、分かった! 俺が悪かった! 謝るよ! だ、だから許してくれ!」
男の懇願に少女は数瞬目を閉じ、そして――
「駄目だ、許さない」
迷いなく、銃口を目の前に突きつけた。
「――――なっ!? おっおい何で、ふざけ――」
「お前は嫌がる美岬に、少しでも助けてやろうと考えたか?」
「――――」
「違うだろう? 悪びれもせず、これが当然だと思っていただろう? だったらそれが全てだ――それじゃあ、さようなら」
「ま、待って、あ・・・・・・うわあああああああああああ!!」
男が悲鳴を上げた、次の瞬間。
――――静寂な森の中に、一発の銃声が鳴り響いた。
微かに聞き取れたその音に、少女はハッと動きを止め、音の聞こえた方向を見つめる。
「・・・・・・今の音は・・・・・・」
「っひ・・・・・・ふぐっ、ひっひひ・・・・・・」
あまり聞き慣れない音、されどSSに所属する彼女にはそれがSSやSHOが所持するスナイパーライフルの射撃音だと気付いた。
少女は恐怖で失禁して動けなくなった男を見下ろすと、電源を切っていた携帯を取り出して、どこかへと連絡を取る。
「――・・・・・・もしもし、桐香? うん、私。 SHOの人を数人こっちに寄越してくれないかな。 そう・・・・・・うん、うん、分かった。 こんな時間にごめんね、ありがとう。 ・・・・・・うん。 それじゃあ、また明日」
携帯をしまい、物思いに耽る。
私がこうしたことで、未来はどうなるのだろうか。
美岬と淳之介は無事に逃げ切れただろうか。
二人はちゃんと合流出来るのだろうか。
様々な不安が少女の胸を過るが、ここで呆けていても何も始まらない。
「・・・・・・暫くしたら、SHOの治安維持部隊がやって来る。 それまでに自分の行いを悔いるんだな」
そうして少女は震える男を一瞥すると、あるオブジェクトの元へと向かう。
淳之介の安否と、男の仲間を捕えるために少女は暗い森の中を進んでいく。
彼女の鮮やかだった翡翠色の瞳は、未だ暗く澱んでいた。
――どうしてこうなってしまったのだろう。
葉月の頭の中をグルグルと同じ思考ばかりが巡る。
手足を動かそうにもガッチリと固定されており、携帯もスカートの中に仕舞ってあるので助けも呼べない。
最初はどうにかしようともがいていた彼女だが、その気持ちも最初の30分ほどで消え失せてしまった。
唯一自由が効く頭部を動かし、手首に付けてある腕時計に視線を向ければ、この状態になってからもう1時間が経過しているという無情な事実だけが突き付けられた。
「誰かー・・・・・・誰か助けてぇー・・・・・・」
助けを求めるも、人が滅多に寄り付かないこの森の中ではそれも望みが薄いだろう。
しかし、彼女は諦める訳にはいかなかった。
何故なら、元々は彼らとの遭遇を避ける為にこの時間帯を選んでやってきたのだから。
「うぅ・・・・・・誰か~~~っ!」
しかし、森の中にこだまする叫び声は風の音に流されてかき消えてしまう。
葉月はこのどうしようもない状況にガックリと項垂れる。
――こんな筈じゃなかった。
――私はただコレの修理をしに来ただけなのに。
絶望的な状況に、これで何度目かも分からなくなった思考が再び頭を過る。
しかしそれだけで何かが起こるはずも無し。
泣こうが喚こうが、悲嘆に暮れようが、誰かが助けに来るのを彼女はただ待つしか無いのである。
青藍島で至る所に設置されている、
彼女が何故その設備に囚われてしまったのか、また彼女は何の目的があったのか。
それを語るには、今から2時間ほど時を遡る――
撃墜王3日目。
タイミング的に言うと、淳之介が美岬を裏ビデオ撮影集団から救った翌々日である。
ちなみに美岬だが、私がチンピラのSHOへの通報を阻止した為NLNS加入がどうなるか心配だったのだが、やはり運命というべきか、無事に合流を果たせたようである。
また、私が通報を阻止した影響で淳之介は仙波さんと遭遇せずに帰れたようだ。
いずれヒロインによって克服する事が出来るとはいえ、今の淳之介は未だ男性器を見られる事へのトラウマを抱えているから、それを思い出させなくて良かった。
私も頑張った甲斐があるというものである。
さて、このタイミングで私は今何をしているのかと言えば、山裾の尻壁オブジェの補修を行っている。
本当だったら昨日までに済ませておきたかったのだが、昨日はSSの仕事で時間が無く、あえなく当日となってしまったため出来るだけ急がないといけない。
「まずは動作確認・・・・・・導通ゼロっと。 やっぱり解除ボタンは壊れてるなぁ」
手に持った
尻壁オブジェとはこの青藍島に至る所に設置されているドスケベ設備の事で、誰でもお手軽に尻壁プレイが出来る優れもの(?)である。
見た目は正方形のドーナツのような形をしており、真ん中の部分がジェルの膜で包まれている。
このジェルは“
その特徴を生かしたのがこの尻壁オブジェで、使い方はまずジェルが柔らかな状態で体をオブジェに潜り込ませた後、オブジェのボタンを押すことで中の機構が動作してジェルが硬化する。
これで無事尻壁の完成という訳だ。
なお場所によって壁尻だったり尻壁だったりと表記ブレがあり、数年前に「“壁尻”以外は絶対許さねぇ派」と「どう考えても“尻壁”の方がエロい派」で熾烈な争いがあったりする。
私は正直どっちでも良いと思うのだが、当人たちにとっては大事な事なのだろう、凄く真剣に討論していた。
例えるならきのことたけのこ、それぐらいの勢いだったな。
――ちなみに私はどちらかと言えば尻壁できのこ派だ。
さてこの尻壁オブジェ、察しのいい人はもうお気づきかもしれないが原作にて淳之介が捕まってしまい、またぬきたしヒロインのルート分岐に関わる例のアレである。
昨日のチンピラ集団との戦闘の際に淳之介は美岬を救った後、マンピラ、もとい女チンピラの手によってこのオブジェに囚われてしまうという危機に陥いるのだが、何とか隙を突いて脱出に成功する。
その経緯からオブジェの脅威を知った淳之介は、ヒロイン達にその事を伝える為にオブジェを体験してみようという提案をするのだ。
その流れでヒロイン達に尻壁オブジェに潜ってもらうのだが・・・・・・淳之介が脱出の際に非常時の尻壁解除ボタンを蹴とばした影響か、ボタンを押しても尻壁が解除されず、本来の解除方法で脱出せざるを得なくなってしまう。
そしてここでいう本来の解除方法というのが――――絶頂すること。
イく、アクメ、達する、様々呼び名があるが・・・・・・つまり、そういう事である。
・・・・・・いやほんとこれ考えた人間頭おかしいな??
改めてそう思う。
そしてルート分岐が尻壁というのもホント何なんだろう。
青藍島に来てから5年経つが、ふとした瞬間に考えてしまうものだ。
とまれ、今は補修の続きがある。
しかしここで行うのは解除ボタンを修理する訳ではない。
内部構造をほんの少し改造し、遠隔で解除出来るようにするのが今回の目的だ。
何故そんなことをする必要があるのかと言えば、原作での流れを崩さない上で奈々瀬を選んで貰う為である。
オブジェに捕まったヒロイン達を最初に助けるのを誰にするか――それが原作での選択肢であり、グランドルートを除いてここで選んだヒロインがルートと決定し物語が進んでいく。
つまりここは淳之介の意思ではなく、プレイヤーの意思で物語が変わってくるのだ。
そうなると現実となった今、淳之介がどの行動を取るのか不明なのであった。
そこで私は淳之介が奈々瀬を選んでくれるように、また選ばなくても最低限奈々瀬だけをイかせて脱出させるようにするのだ。
具体的には遠隔操作で尻壁オブジェの解除を出来るようにしておき、美岬とヒナミの脱出の時には私が操作して脱出を行い、奈々瀬の時には本来の手順で助け出すという流れを産み出す。
奈々瀬は死ぬほど恥ずかしいだろうが、しかしこれも乗り越えた上で原作は無事くっついているのだ。
何も問題はない・・・・・・ないのだ・・・・・・。
ちなみに最初の1人を助け出した後、残りのヒロイン2人をどうしたのか・・・・・・そこの描写が原作では描かれておらず曖昧だったりする。
描写が無いだけで、ヒロインの見てる前で別のヒロインを絶頂させるなんてことも有り得るかもしれない。
そんな現場をまともな女性の目の前で繰り広げたら美岬以外はドン引き間違いなしだろう。
永年の恋もそれで冷めてしまったら台無しである。
それを防ぐためにも、私が遠隔で解除出来るようにしておけば問題ないという訳だ。
「ここをこうして・・・っと」
オブジェの後ろに工具箱を置き、ドライバー等を取り出して作業に取り掛かる。
やる事は簡単で、解除ボタンに並列に赤外線式のスイッチを内部に取り付けるだけだ。
これを取り付けると、スイッチに対応したリモコンを操作する事でスイッチが動作し、尻壁が解除される仕組みだ。
問題点として10m以内かつ障害物等があると反応しない点があるが、これに関しては気にする必要は無いだろう。
そうしてまず一つ目の尻壁オブジェにスイッチを取り付ける。
ネジをクルクル、端子を挟んで圧着圧着!
「ふんふん、ふふーん♪」
配線渡らせてーっと。
よし、取付完了。
じゃあ次は動作確認――落としていたブレーカーを投入し、ドライバー片手に尻壁を動作させるためにボタンを押す。
ガコン、という音と共に尻壁が動作したのを確認して――
「スイッチ・・・・・・オン!」
リモコンを操作すると、無事に尻壁が解除される。
よしよし、我ながら良い仕事をしたんじゃなかろうか。
これで無事に尻壁イベントも問題無く進むなと一安心する。
――この油断が、悪かったのだろうか。
さてと、それじゃ引き続き他のオブジェも付けていこうかな。
これを乗り切れば遂に淳之介と奈々瀬は・・・・・・おっといかんいかん。
流石に二人の情事を覗き見するなどというのはちょっと人としてアレなのでするつもりは無いが・・・・・・確認は必要だよね?
うん、確認は大事だ。
これも今後の二人の進展を確かめるのに必要な事であるし、原作との差異を確認するのも満願成就に必要な事なのだ。
そう、これは大事な確認であって決して奈々瀬の感じてる顔を見てみたいとか二人のイチャラブを見たいとかそういう物では決してないのだ。
――こんな事を考えたから、罰が当たったのだろうか。
・・・・・・落ち着け、急いては事を我慢汁とも言うじゃないか。*1
気分は上々で、今の私は誰にも止められないMr.ファーレンハイトなれど、時には立ち止まることも肝心だ。
よし、それじゃあ次はあのオブジェに取り付けよう――そう思ってオブジェに近づいた時だった。
「うわっ――ひゃぁ!?」
足元に転がる何か、多分私が散らかした工具なのだろうが、それを踏んでしまった事で足を滑らせる。
「うぐっ・・・・・・~~~~っ!!」
直後、右腕に痺れるような衝撃と、腹部をグッと抑えつけられるような痛みが走る。
(な、何だ・・・・・・何が起こった・・・・・・?)
ただ転んだだけだったら普通擦ったような痛みや体をぶつけた痛みが走るはずなのに、それが無い。
というかそれよりも、体が動かせない・・・・・・?
起き上がろうとして、手が地面ではなく何かスベスベした物体に触れており、また上半身を反る事しか出来ないことに気付く。
一体何が起こったのか――それを確かめようとお腹に視線を目に向けると、青いジェルに埋もれる私の体がそこにはあった。
「――は?」
・・・・・・え? ナニコレ。
何ですかね、この青いのは。
スゥー・・・・・・ふむ・・・・・・状況を整理しよう。
私、転ぶ。
目の前、尻壁オブジェ。
右手にはドライバー。
右腕に硬い物を打ち付けた時のような痺れ有。
ボタンを押していないのに、固まったジェル。
その特徴は、強い衝撃で分子同士が結合し硬くなる。
これらが示す一つの事実は――
「・・・・・・・・・・・・」
――転んだ勢いでジェルに突っ込み、右手のドライバーの先端が偶然ジェルに突き刺さった衝撃でジェルが硬化した、という事だろうか。
「はぁぁぁああああああああ!!?」
ちょっ、ちょっと待って!?
え、嘘でしょ!?
「ちょっ、ふっ、んぅ~~~~っ!!」
だ、駄目だ動けない!
完全に固まってるし隙間も殆ど無い!
か、解除ボタンは・・・・・・いや駄目だ壊れてるぅ!!
予想外過ぎる出来事に、頭を抱えそうになるが体が固定されているせいでそれも出来ない。
今の私の体は、左腕の殆どと胸の辺りまでがオブジェの前に出ており、右腕の肘から下と胸の辺りから下がオブジェの後ろに突き出ている状態だ。
幸い下半身の方がより多くオブジェから突き出ている為足が地面に着かない宙ぶらりんの状態は避ける事が出来たのだが、それでも今の状況はかなり不味いと言えるだろう。
い、いやまぁあのまま転んでたらより大きな怪我をしてただろうという点では助かってるのだが、そんな事よりこれどうしたらいいの!?
・・・・・・あっ、そうだ!
携帯で助け、を呼べ、ば・・・・・・
・・・・・・スカートの中に入れてるわ・・・・・・
「ま、まさか・・・・・・詰んでる?」
解除ボタンは壊れているため、どうにかして押したとしても無意味。
助けを呼ぼうにも、携帯は手の届かない位置にある。
そして、このオブジェにはまだ遠隔操作のスイッチを取り付けていない。
つまり今の私に残された選択肢は「助けが来るまで待つ」、「d10oの自然解凍を待つ」、そして――
「絶頂、する事・・・・・・」
いや、いやいやいやいやいや。
待て待て私、それは最終手段だ。
というかそもそも今の状況じゃ碌に触れもしない、つまり妄想だけでイかないとイけないんだぞ。
そんな美岬みたいな事私が出来るはずもない。
ま、まだ諦めるのは早いな! ウン!
ほっぺがタプタプのバスケの監督だって言ってるじゃないか。
諦めたらそこで試合終りょ――
――あきらめたら?
ええいコラ画像の方が出てくるんじゃない!!
クソッ、諦めてたまるものか。
今日はこの後淳之介達が来る予定なんだぞ。
取り合えず大きな声で助けを呼んでみなければ。
「だっ、誰かーー!! 誰かいませんかーー!?」
あらん限りの大声を上げる。
しかし反応は無く、帰ってくるのは虫や鳥の鳴き声のみ。
それどころか今の大声で虫たちが驚いたのか鳴き止んでしまった。
――・・・・・・いや、
人が滅多に来ないからと言って、可能性はゼロじゃないッ!
諦めるな私! 頑張るんだ私!
まだだッて言えばきっと何とかなる!
英雄ってのは皆そうやって何とかしてる!
絶望的な状況だからこそ、自分を鼓舞する事が大切。
炭焼き一家の長男だってそうしてる。
熱血プロテニスプレイヤーも頑張れ絶対出来るって言ってる。
助けを求める側で頑張るというのが些か不格好だけど!
私は、ここで諦める訳にはいかないんだーーッ!
そんな彼女が助けを諦めるまで、あと30分――
「――あれ、誰かいる・・・・・・?」
尻壁オブジェへと向かう途中、アサちゃんが示してくれたポイントが表示されているゴーグルに、もう一つの光点が表示されている。
参ったな・・・・・・こんな山奥に人が居るなんて想定していなかった。
こんな人が滅多に来ない場所だからこそ誰にも見られずに済むと思ったのに、宛が外れてしまった。
「淳、どうしたの? そんな所で立ち止まって」
「あぁいや・・・・・・目標地点に誰か居るみたいなんだ」
「えっ、こんな山奥でも人が居るかどうか分かるんですかそのゴーグルって。 ジャミングだけじゃなくてそんな機能まで・・・・・・凄いんですねぇー・・・・・・」
「私知ってるよ! 麻沙音ちゃんが開発したソフトで淫スタのいちじょ-ほーを取得して、この島の人がどこに何人居るか、橘くんには全ておみとーしなんだよ!」
「何もかも分かるという訳ではないが・・・・・・まぁ大体そういう認識でいいな」
このゴーグルは俺と妹の共同開発にて作り上げた、珠玉と言ってもいい代物だ。
だが、その中でもソフト面を担当した妹の作った物が褒められるのは兄として誇らしい気持ちだった。
当の本人が学校をサボってさえいなければとても褒めてあげられたのだけれども。
「ちょっと様子を見てくる。 相手がここをすぐ離れる様子だったら後から呼ぶから、皆はここで待っていてくれないか?」
「それはいいけど・・・・・・気を付けてよね? もし危険そうだったらすぐ戻ってくること、いい?」
「あぁ、そこは弁えてるさ。 それじゃあ行ってくる――」
「気を付けてね、橘くん!」
「無理はしないでくださいね、橘さん」
仲間たちからの声援を受け、慎重に目的地へと向かう。
それぞれが複雑な経歴を持った我がチームであり、初めの頃はこの島で志を同じくする仲間が出来るか不安を抱えていたが・・・・・・望外にも、気の良すぎる仲間を俺は手に入れられたようだ。
それが堪らなく嬉しく感じると共に――彼の事が余計に頭の中に残ってしまう。
今も彼は、この島のドスケベから一人で逃げ回っているのだろうか。
もし彼と行動を共に出来ていたのなら、どれだけ心強かったか――そう思うも、彼の主張はどうしても今の俺には受け入れることが出来なかった。
・・・・・・いや、今考えたって仕方の無いことか。
今はそれよりも、尻壁オブジェに誰がいるのか確かめなければ。
見つからないよう、林の影からこっそりと顔を出して――
「んっ・・・・・・はぁ、はぁ・・・・・・くぅ・・・・・・っ」
なんだアレ・・・・・・。
俺の向けた視線の先には、尻壁オブジェに埋まり、太ももを擦り合わせている一人の痴女が居た。
顔は向こう側にある為一体誰なのか分からないが、服装はSSの隊服である為水乃月の生徒である事は間違いない。
この時点で正直関わり合いたくない存在である事は明白だった。
だが、よく見てみればどうにも様子がおかしい。
周囲には彼女以外誰も居らず、工具等がオブジェ周辺に置かれている。
尻壁プレイをしに来たのなら相手が居ないというのは変だし、仮に放置プレイを楽しむにしろこんな人が来ない所でやるのは些か場違いというものだ。
工具というのも、よほど特殊なプレイでも無い限り必要無い物のはず。
だとすれば、彼女は何を――?
「ふぅっ・・・・・・んっ・・・・・・♡ くっ、あっ・・・・・・だ、駄目だ・・・・・・これじゃ抜け出せない・・・・・・だ、だれかぁ・・・・・・」
様子を伺っていると、切なげ且つ悲壮に満ちた声が聞こえてくる。
それは脳を痺れさせるような甘い物が微かに含まれていたものの、殆どが助けを求めるような声色であり、彼女が今の状況に嘆いている証拠であった。
それに、この声どこかで・・・・・・
「うぅ・・・・・・郁子ぉ、桐香ぁ・・・・・・礼せんぱぁい・・・・・・最悪凛でもいいから、誰か助け――」
「・・・・・・もしかして、木戸か?」
「――ひゅっ」
この声、間違いない。
この青藍島で、ある意味初めて出会ったと言える島の価値観とは異なった見方を持った人。
SSという、島の秩序を守りドスケベを奨励する存在でありながら、この島の在り方に疑問を抱える人物。
そんな木戸が、尻壁オブジェに固定され助けを求めている。
――助けなければ。
彼女は自分から尻壁に埋まるような人ではない。
きっと何かがあったに違いない――そう思い、彼女の傍へと近寄る。
「あ、あぁ・・・・・・その声は、ま、まさか・・・・・・」
「木戸、大丈夫か!? 一体どうしたんだその状況は!?」
「・・・・・・馬鹿な、早すぎる・・・・・・っ!」
オブジェの反対側に回り、木戸の状態を確かめる。
すると、顔を赤らめ半分涙目になっている木戸の姿が、そこにはあった。
紅潮した頬に、口元は息を荒くしている。
その表情はどこか艶めかしく、色気を感じさせる。
それに加え、潤んだ瞳がまるで何かを懇願するかのようで――
「――――!」
なんだ、今の感情は。
なんだ、今一瞬感じた胸の鼓動の高鳴りは。
俺は今、木戸に対して何を感じた?
顔を赤らめた木戸の、涙を浮かべたその表情が。
どこか遠い記憶を思い出させる、ような――
「橘くん・・・・・・こ、これは、その・・・・・・橘くん? ど、どうしたの・・・・・・んっ・・・・・・」
「――はっ、い、いや何でもない」
今、何か大事な事を思い出しそうな気がしたが、それよりも木戸だ。
改めて、周囲の様子を伺う。
散らばった工具に、不自然な体勢でオブジェに埋まった木戸。
オブジェの一部もカバーのようなものが取り外されて置かれており、中の機構部が見えてしまっている。
もしかして・・・・・・
「尻壁オブジェの、整備に来たのか・・・・・・?」
考えが言葉として漏れ出る。
きっと、この考えは間違っていない。
でなければ、彼女が一人で居る理由も、周囲の状況も説明がつかないからだ。
ただ木戸が何故オブジェに埋まっているのかという点だけが不明だが・・・・・・。
視線を木戸に向けると、先ほどの声が聞こえたのか彼女は小さく頷く。
「・・・・・・橘くんの言う通り、私はこのオブジェの修理に来たの。 不具合があるって連絡を受けたから、それの確認の為に――んっ、ぅ・・・・・・」
「・・・・・・それが、どうしてこんな状況になったんだ?」
「っ、ふ・・・・・・修理をしようと近づいた時に足を滑らせて、その勢いで身体が入って、その状態で持ってたドライバーがジェルに突き刺さっちゃって・・・・・・このジェル、強い衝撃を受けると固まる特徴があるから、身動きが取れなくなって・・・・・・それからずっと、このままで・・・・・・はぁ・・・・・・っ」
その言葉に、ある事を思い出す。
強い衝撃で固まるゲル状の物体――この前アサちゃんが言っていたd10oと全く同じ特徴だ。
尻壁オブジェにも同じ物が使われているのなら、つまり尻壁オブジェは動作ボタン以外でもこういう風に固める事が出来るという訳か。
正しく、これは木戸にとって想定外も良い所という事だったのだろう。
だが、それも取り消しボタンで脱出出来ると思うのだが。
そこが気になり、木戸に尋ねる。
「・・・・・・取り消しボタンは、押せなかったのか?」
「・・・・・・壊れてるの」
「えっ?」
「その解除ボタン、壊れてるの」
そんなまさか、一昨日だってちゃんと動作したのに――そう思い押してみるも、木戸の言う通り何の反応も起きない。
・・・・・・まさか、不具合というのはこれの事か。
もしかして・・・・・・俺が一昨日蹴り飛ばしたせい、なのか?
だとすれば、今の状況は殆ど俺のせいで――
「・・・・・・ところで橘くん、もしかして今一人?」
「えっ!? そ、そうだけど!?」
罪悪感のせいか、思わず声が裏返る。
しかし彼女は気にした様子は無く、それどころか深刻そうに表情を歪めている。
「都合が良いのか、悪いのか・・・・・・でも、もうこれしか方法が・・・・・・っ」
「き、木戸・・・・・・大丈夫か・・・・・・?」
「・・・・・・・・・・・・あのね、橘くん。 一つ、お願いがあるの」
「お、お願い?」
「この尻壁オブジェの脱出方法は二通りしか無くって、一つがその非常時の解除ボタン。 そしてもう一つが――絶頂すること」
「絶頂って――ま、まさか!」
木戸の言葉に、嫌な予感がする。
木戸の言う事に間違いが無ければ、脱出の手立てはそれしかないのだろう。
そしてこの状況で、木戸と俺の二人きり。
そこから導かれるお願いとは――つまり
「私一人じゃ抜け出せないから――手伝って、くれないかな」
俺にとってあまりにも過酷で――どうしようもないお願いだった。
おっす!オラパチドリくん!
尻壁から脱出するには、絶頂する事!?
ハヅキドリくん、何だかとっても変態な事になっちゃったパコ。
勃ちばなくんが来るまでは一人で頑張ってたみたいハメが、ケツ果はご覧のありマラ。
勃ちばなくんに協力を求めるも、彼は生粋の処女厨。
一体、どうなっちまうのか胸がパフパフドキ!
次回、抜きゲーみたいな島に住んでるTS娘はどうすりゃいいですか?
「美少女になって推しカプ成立させて人生てぇてぇモードで生きたい!」
ぜってぇシコってくれよな!
どっち?
-
尻壁
-
壁尻