抜きゲーみたいな島に住んでるTS娘はどうすりゃいいですか? 作:パチドリくん
『こちらB-10! 負傷者6名、反交尾勢力が校門前へ向かっています! 至急応援を!』
校舎の中を、SSの生徒達が慌ただしく動いている。
それもそのはず――この二か月間頻出していた反交尾勢力が、遂に水乃月学園の校舎の中で現れたのだから。
ここで捕えなくては何するものぞと、多くの隊員が必死の表情で駆け回っている。
しかし反交尾勢力も必死だ。
SSと違い人数も少なく、碌な戦闘訓練も積んでいない筈の彼らが逃げ切るための武装――T-A-Eを駆使し、追っ手を巧みに躱し、時には打倒している。
その被害は、決して無視出来る物では無かった。
「四番隊は負傷者を運べ! 二番隊は私たちが来るまで持ち応えろ! くそっ、撃墜王期間中に仕掛けてくるとは分かっていたが、こうも面倒だとは――!」
「礼先輩、落ち着いてください。 まだ郁子たちストライクフォースが残っています。 彼女たちならきっと捕えてくれるはずです」
「ああ、分かっている・・・・・・だが、さっきの狙撃を見たか? ただでさえ校舎の中に居る連中も厄介なのに、あんな山奥から狙撃出来る仲間が居るんだ――油断は出来ん」
「・・・・・・えぇ、そうですね」
私は今、反交尾勢力を捕えるために礼先輩と二人で行動していた。
先ほど起こった出来事――文乃の狙撃を礼先輩は警戒しているようである。
撃墜王最終日――いつもなら校舎裏から密かに下校していたNLNSは、撃墜王イベントの影響により抜け出すのが難しくなり、正面からの脱出を決行する事となる。
彼らは様々な逃走用スパイアイテム“T-A-E”*1を用い正面からの逃走を図るも、小さな失敗が積み重なり窮地に追い込まれてしまう。
退路を塞がれ、SSの手によって動けなくなった淳之介を救ったのは――淡色の髪の少女、
彼女が山岳からの狙撃によりSS隊員を討ち倒し、その隙を淳之介たちは活かして校舎から脱出するのだ。
現在は、文乃が淳之介たちを助け出した直後。
日は既に落ち、ここで彼らを食い止められなければ最早止める術は無いだろう。
本来ならばもっと多くの人員を動員しているのだが、先ほどの狙撃により別動隊の存在を懸念して一番隊と三番隊の半数を割かざるを得ない状況になっており、また撃墜王の最終日という、イベントが最高潮の時間に反交尾勢力が現れた事で不安がる一般生徒達を誘導する為にも人員が割かれてしまっていた。
それらが重なった影響で、反交尾勢力“NLNS”の追撃には最低限の人員しか居ない。
「ジャミングの復旧は問題無く完了――礼先輩、そろそろ私も出ます」
「何? ・・・・・・しかし、お前は五番隊だろう。 お前が居ないと通信網の対応が――」
「ジャミングに関してはもう私が居なくてもあとは部下が何とかしてくれます。 それに、今は後方支援より現場の人間の方が足りてないんでしょう? だったら、今一番人員を割けるのは五番隊です」
礼先輩にそう提案する。
現状私たち五番隊――電子戦闘部隊は麻沙音ちゃんが行っている通信妨害の復旧を行っていた。
NLNSの逃走は出来るだけ手助けしたかったが、彼らは逃走する際には必ずECMを起動している為、対策を何一つ行わないというのは流石に不自然過ぎたのだ。
そして対策も既に完了し、私たちがやる事は各所への連絡しか残されていない。
となれば、私がやれる事は現場に向かう事しか無いのだ。
・・・・・・まぁ、これは私が現場に向かいたいだけの方便でしかないのだが。
「うぅむ、だが・・・・・・」
礼先輩はやや渋るような様子を見せるが、NLNSが校舎から脱した以上捕えることが難しいのは礼先輩も分かっているはず。
説得の為にそれらの事情を諸々伝えると、礼先輩は暫く考える素振りを見せるが――
「いや、やはりお前にはここで――」
・・・・・・駄目か?
説得空しく、礼先輩が提案を否決しようとしたその時。
「――いいわ礼、行かせてあげて」
「っ、桐香様!」
全てを見通すかのような、
ストールをたなびかせ、おっとりとした表情ながらも周囲に放つプレッシャーが私たちの背筋を正させる。
おとぼけした私生活とはかけ離れた様子の今の桐香は、SS代表兼生徒会長の肩書に相応しいカリスマを身に纏っていた。
「相手は今までの戦闘の傾向からこちらの指揮を攪乱し、現場を混乱させる戦いを得意としている様子。 二番隊の中隊長がやられた今、現場には郁子しか指揮出来る人間が居ないし、それに郁子はあくまでも突撃尖兵――指揮を任せるより戦闘を任せた方が良いでしょう。 礼が現場に出てもいいけれど、今は相手を留める為の遅滞戦闘中。 それに最終的な指示は礼がしなければならない。 ――なら、現場の指示は五番隊の隊長である葉月に任せるのが適任だと思わない?」
「それは・・・・・・いえ、桐香様がそう仰るのであれば私はその指示に従います」
「ありがとう、礼。 という訳で葉月、現場の指示お願いしてもいいかしら?」
「――勿論だよ、桐香」
桐香のその言葉に異も無く頷く。
礼先輩の説得が上手くいかなそうだったから、桐香のこの申し出はありがたかった。
善は急げと、身に着けた装備品を整え、礼先輩たちへ顔を向ける。
「それでは、行ってきます――後を頼みますね」
「・・・・・・分かった。 だが、くれぐれも気を付けろよ。 郁子たちも居るんだから、決して無茶はしないようにな」
「お気遣いありがとうございます。 でも、私だってSSの隊員ですから――」
礼先輩からの忠告を受け取り、外へと向かう。
目指すは水乃月学園の校門、郁子たちが待ち伏せている場所だ。
急がなければ。
私が居ようと居なかろうと、逃走に支障は無いだろうが――ここで文乃に出会っておく事が後々重要になってくるのだから。
「――待っていてくれ、淳之介」
この世界がぬきたしの世界だと気付いたあの日から。
私は、全てを擲ってでも彼を助けると――味方になると誓ったのだ。
そして、その果てにあるものを――――ヒロイン全員の幸せを、私は願っている。
「それじゃあ礼、私も少し出かけてくるわ」
「桐香様!? 桐香様はイベントの混乱を収束させるはずでは・・・・・・」
「そっちはもう粗方片付いたわ、あとは彼らをどうやって捕らえるかに専念してもらって大丈夫――でしょ?」
「はい、三番隊から一般生徒の避難は完了しているとの報告が上がっています! あとはあの憎き反交尾勢力共を捕えるのみです!」
桐香の言葉に、葉月の後を任された五番隊の隊員が声を上げる。
その顔はやる気に満ち溢れており――葉月に任務を任された期待に応えるのだと、そう告げるかのようであった。
無論、反交尾勢力の確保の為にも張り切っているのだろうが。
「・・・・・・そういう事でしたら、私も一緒に――」
「礼、ここは私一人で行きたいの。 少し気になることもあるから・・・・・・ね?」
「し、しかしです! 桐香様がお一人で行動するのは些か問題があると言いますか、正直心配というか・・・・・・あ、い、いえ桐香様の事を疑っている訳ではなくてですね!?ただ私は桐香様が階段の目の前で動けなくなったりしないかが心配で――」
わたわたと、言葉を捲し立てる礼。
後半の言葉は桐香のカリスマに配慮したのか、周りに聞こえないように小声で話している。
だが――――
「・・・・・・大隊長、会長もう行っちゃいました」
「と、桐香様ぁーーーーーーーっっ!!」
礼の悲鳴が校舎に響き渡る。
そんな中、エレベーターを利用して一階へと辿り着いた桐香は口元にいつもの薄い笑みを浮かべながら一人呟く。
「さて・・・・・・あの人はどうするのかしら・・・・・・あぁ、気になるわ、本当に気になります」
桐の花が香るほどの、美しい笑みを咲かせられるように――そう両親から願われ付けられた桐香の名の通り、見る人全てを魅了する美しい笑みを深めながら、桐香は心底楽しそうに校舎の外へと躍り出る。
校門の方角から聞こえてくる銃声と、戦特有の剣呑な空気を感じ取った桐香はそちらとは違う方向――静寂に包まれた、人の気配が感じ取れない筈の森の奥へと向かう。
まるでそこに、目的の物があると確信しているかの如く。
「葉月の想いと、願いを知ったとして――」
脳裏に過る、二人の人の姿。
一人は、自分を初めて理解してくれた、自身と同じ色の瞳を持った特別な少女。
一人は、条例に仇なし、個人的にも興味の尽きない少年。
「――・・・・・・あなたはどうしますか、先輩?」
闇夜を照らす月の下、桐香は目を瞑る。
人の心が分からない少女は、彼が何を思い、何を成したいのか、それを知る為に行動する。
そしてそれが、彼女の想いを汲み取ってくれるものであることを――桐香は願うのだった。
『それで畔、相談っていうのは何なんだ?』
『あ、はい・・・・・・実は、ですね――』
「オラオラオラオラーーーーッ!!」
道という道を一台の自転車が縦横無尽に駆け回る。
そのあまりの勢いと、常識外れの運転は熟練のSS隊員を軒並み翻弄していた。
「わりぃが、こっから先は一方通行だぁあああ! 大人しく尻穴締めつつ鳴いて、無様に元の居場所に引き返しやがれぇ!!」
「おびょぼぼぼぼぼお前マジでふざけんな止めろ止めろやめろぉぉおおおお!!」
自転車の後部座席に座らされている茶髪の少女が悲鳴を上げる。
しかしそれも無理もない。
ギリギリで避けているとはいえ、とてつもない速度で人の群れに突っ込もうとする運転に怯えない方がおかしいだろう。
しかもそれが自分では止めようが無いなら尚更――しかし運転する当の本人はというと。
「ふははははは!! 私、今とっても見られてます、輝いてます!! こんなに注目されるのなんて初めてぇ・・・・・・!!」
凄く楽しそうにしていた。
「おい! 誰かあのキチガイを止めてくれぇ! このままじゃ殺されちまう!!」
「くそっ、動きが激しすぎて狙いが定まらない・・・・・・もっと応援を呼んで!」
「そっ、それよりもこっちの方を――うぐっ!」
「美岬! こっちは粗方片付いたわ! 早く行くわよ!」
「美岬ちゃん、麻沙音ちゃん! お待たせなんだな!」
「ラジャラジャです! 麻沙音ちゃん、行きますよ!」
「アンタマジでふざけんなよぉ・・・・・・! 後で絶対泣かせてやるぅ・・・・・・!」
「な、鳴かせるなんてそんな・・・・・・ふ、不束者ではありますが、どうぞよろしくお願いいたします・・・・・・!」
「そのふざけた幻想ぶち殺してやろうか・・・・・・っ!!」
美岬がSSを押しとどめている間に、奈々瀬とヒナミが逃走ルートを切り開く。
それが自然とSSから逃走する為のルーチンと化しており、リーダー不在ながらも奈々瀬たちが何とか見出した方法であった。
なお麻沙音はただただ美岬の暴走の被害者である。
先頭を奈々瀬、中央をヒナミ、殿を美岬&麻沙音が務めながら、切り開かれた道をNLNSが駆け抜ける。
SS達は慌てて追いかけるも、奈々瀬が道端にEggと呼ばれるT-A-E*2をばら撒いた事でトリモチやローションに足を取られ、そして偶発的に飛んでくるフラッシュバンにより行く手を阻まれるのであった。
「――ここを抜ければ・・・・・・!」
後方を確認しつつ、SSの視線が外れた瞬間を見極める奈々瀬。
そうして掴み取った逃走の道程、もう少しで追手を振り切れる――そんな時だった。
「――!? 奈々瀬さん、ストップ!」
「――っ、アサちゃん!?」
「・・・・・・チッ、気付かれましたか」
学校を抜け、住宅街に繋がる一歩手前の交差点。
ヌーディストビーチへと繋がる道から、隊服を纏った複数のSS隊員が現れる。
その先頭に立つは、吊り目を尖らせ長髪を靡かせる少女――花丸 凛であった。
「こんばんわ、反交尾勢力の皆さん。 ここまで逃げ切るだけでなく、潜んでいる私たちにも気付くとは流石と言っておきましょう――ですが、貴方たちの活躍もここまで。 我らSSをここまで愚弄した罪、体で支払ってもらいます!」
「
「落ち着いてアサちゃん! まだこの人数なら何とか――!」
狼狽える麻沙音を宥め、Eggを取り出し戦闘態勢を取る奈々瀬。
しかし――
「おっと、私たちを倒した所で無駄です。 今の私たちには貴方たちを何処までも追いかける事が可能なんですからねぇ・・・・・・!」
「そ、そういえば私たちより先回りしてたな・・・・・・もしかして、私たちの向かう場所がバレちゃってる!?」
「そんな、ECMはちゃんと起動して・・・・・・まさか――っ」
「アーハッハッハッハ! えぇ、その通りです! 貴方がたの通信妨害は既に対策されてるんですよぉ!! いつまでも私たちが貴方たちにやられっぱなしな訳がないじゃないですかぁお馬鹿さぁん!?」
高笑いを上げながら、朗々と語る凛。
その表情は相手を甚振ることしか考えておらず、嗜虐性に満ち溢れた物であった。
「一体、どうやってこっちの動きを――」
「知りたいですか? えぇいいでしょう、冥途の土産に教えて差し上げます。 なぁに簡単な事ですよ――」
そうして少女は意気揚々と語りだす。
曰く――
『反交尾勢力が淫スタの位置情報を頼りにこちらの動きを探っているのは把握済み』
『SSは自身らの淫スタの位置情報を逆手にとり、人員を動かして反交尾勢力の移動しそうな方向へと誘導する』
『あとは五番隊から街中に設置してあるカメラからの映像情報を伝達してもらい、事前に反交尾勢力が通りそうな場所へ潜伏する』
『これを思いついた私は天才だ』
等々あらゆる限りの罵倒と自身への賛辞を交えつつ、彼女は偉そうにふんぞり返る。
「こーんな単純な事に気付かない貴方たちはなんておぽんちな頭をしているんでしょうねぇ・・・・・・・ククッ」
「おちんぽ?」
「なんておちんぽな頭をしているんでしょうねぇ・・・・・・」
「言い直すんだ・・・・・・」
「――・・・・・・この豚は置いといて、ああいう意気揚々とネタバレするキャラって漫画とかじゃ大抵すぐやられちゃうんだよねぇ・・・・・・」
「というか、おぽんちって言葉今日日聞かないわよねぇ・・・・・・」
「えぇいうるさいですよおちんぽども!! いいでしょう、いい加減無駄話をする時間も無くなってきた所です――皆の物、かかれぇーっ!」
「――っ!」
痺れを切らした凛の掛け声と共に、待機していたSS隊員がNLNSへと襲い掛かる。
「はんこうびせいりょく、かくごー^^」
「とっ、とにかくここを切り抜けないと――はぁっ!」
「母神の居りて淫るる心、されば人 かくも小さな者なり――乱交割膣打!」
「小さな者じゃないですけど! ってうひゃあごめんなさいっ!?」
奈々瀬がコンバットナイフ片手に棒読み気味で突っ込んできたSSの少女を器用に避けた後、会話の最中で指に装着していた粘着式コンドームを用い、類稀な運動神経から繰り出されるジャンプによって壁を掴み、引っ付いたコンドームを起点として少女の後ろへと回り込む。
突然の動きにSSの少女は奈々瀬を見失ってしまい、辺りをキョロキョロと見渡す。
そして奈々瀬はその隙を見逃さない。
奈々瀬はすぐさまローター型ショックガンをSSの少女に向けると、引き金を引いた。
「ふぎっ、きゅう・・・・・・」
「よしっ――わたちゃんそっちは大丈夫!?」
SSを一人倒し、もう一人の仲間の無事を確かめる。
ヒナミは一番年上ではあるが、その見た目はどう見てもロリ。
奈々瀬が心配するのも当然の事ではあった。
だが――こと彼女の戦闘に関しては、無用の心配というものである。
「うわっ、うわわわっ――あれ? また私何かやっちゃった!?」
「やだっ、このロリ怖いよーっ!!」
「仁浦様・・・・・・今こそ・・・・・・貴方様のもとへ・・・・・・」
「か...かあ...さん...」
「・・・・・・無事みたい――ね?」
ヒナミの傍には多くのSS隊員が倒れ伏しており、残ったSS隊員たちがその実力に恐れをなしていた。
ヒナミの戦闘方法――それは、パイプ椅子による絶対護身術。
彼女は幼い頃からずっとパイプ椅子を片手に持って生活してきた。
高い所の物を取る為という理由だったそれは、普通であれば成長と共に無くなるはずの物。
しかし、彼女はこの年になってもずっと身長が低いまま――つまりパイプ椅子を手放す機会が無かったのだ。
そうして長い間同じ時を過ごしてきた彼女のパイプ椅子は最早彼女のアイデンティティ、或いは体の一部と称しても良いほどである。
そして何時からか――パイプ椅子には加護が宿る。
とある未来で椅子の加護と名付けられるソレは――椅子と名の付く物を持っている限り、彼女はいかなる外敵にも侵されない無敵の巫女となったのだった。
その戦闘能力はいかなる敵も押し付けず、襲い掛かった敵は全て椅子のオートカウンターにより打倒される。
ニュータイプもびっくりの性能であった。
「何やってるんですか貴方たち、それでもSSですか! あぁもう、こんな使えない奴らは私の部下には要りません、即効クビですクビ! クビクビクビクビ!」
凛が一瞬でやられてしまったSSを罵る。
倒れているSSの中には彼女の先輩なども含まれているのだが、お構いなしである。
そもそも偉そうに命令しているが、彼女はこの部隊のリーダーでも何でもない。
ただの平隊員である。
何故ここまで偉そうに出来るのか、それは凛が凛故であるからとしか言いようが無かった。
そしてその言動が、彼女の首を絞める――
『――凛にそんな権限ないでしょ・・・・・・そもそも凛の部下じゃないし・・・・・・』
「ひっ! こ、この声は・・・・・・葉月中隊長!? 一体どこから――」
『SSの問題児には特別な発信機を付けてるんだよ。 勿論非常時でしか使用しないんだけど・・・・・・で、全部聞いてたよ凛・・・・・・ペラペラと作戦内容を喋ってたみたいだけど?』
「そ、それは――」
先ほどまで憤っていた凛が、慌てて発信機を探す為に体をまさぐる。
そうしていると発信機を見つけたのか、何かを引っ掴む様子を見せた凛はそれに向かって語り掛ける。
どうやら、凛に指示を出している人物と連絡を取っているようであった。
そして、凛が口にしたその人物と思しき名前に――麻沙音と美岬は反応を示す。
「「・・・・・・」」
『凛、説教は後でするとして、何でもいいからとにかくそこは抑えて。 私は郁子・・・・・・一番隊の中隊長を呼んでくるから、それまで反交尾勢力の足止めに努めること――いい?』
「~~っ! クッ、これも昇進の為・・・・・・分かりましたよ! ただし、別にあいつ等を倒してしまっても構いませんね!?」
『あぁ、構わないよ・・・・・・出来るならだけど。 それじゃあ、吉報を祈ってるよ』
プツン――と、通信の途切れる音と共に、凛がNLNSへと向き直る。
それを見届けたNLNS――とくに美岬と麻沙音は視線を交わし、言葉も無く頷いた。
「あぁもう、何で私がこんな事に――っと、そういう訳になりました反交尾勢力の皆さん。 本当は私が戦うなどしたくないのですが・・・・・・せめて私の昇進の生贄に――」
悪態を吐いたと思えば、すぐさまこちら嘲る表情となった彼女が言葉を告げようとした、次の瞬間――
「猪突猛進! 猪突猛進ィ!!」
「おら行けイノシシ女ぁ!! あのメスガキを徹底的にぶちのめしちまいなぁ!!」
「うぎゃぁぁぁああああ!!?」
美岬の運転する自転車が、凛の体を直撃する。
思い切り撥ねられ、宙を舞う凛の体は――すぐ近くにあった壁尻オブジェへと飛んでいく。
そして、自転車によって跳ねたのか――都合よく飛んできた石がオブジェの動作ボタンの上に落ち、凛の体を固定するのであった。
「ひぎっ・・・・・・」ピクピク
「ヒューッ! 見ろよやつのあの無様な姿を! まるで下半身だけのオナホみてぇだぁ!!」
「麻沙音ちゃん、それはオナホに失礼というものですよ? それにあの子だって好きであの無様な格好をしたわけじゃないんですから・・・・・・ぷふっ・・・・・・」
「へ、平気で人を撥ねるなんて、なんて奴らなの・・・・・・こ、この鬼!悪魔!ハメドリくん!」
「「んぅ~? 聞こえませんなぁ~? ちょっと声が小さいんじゃなくって~?」」
あまりの所業に震えるSS達の前で屈伸煽りをする麻沙音と美岬。
SS達は怒りのあまり飛び出しそうになるが、先ほど受けた足止めの命令と、キラリンと目を光らせる美岬の視線に体を強張らせるしかないのであった。
「・・・・・・何でアタシたちって、いつもこう悪役っぽいのかしら・・・・・・」
「な、奈々瀬ちゃん、元気出して・・・・・・? あの二人も本当は良い子だって、私たちは知ってる・・・・・・よ?」
「そこは疑問形にして欲しく無かったのだわ・・・・・・」
「よっしゃぁっミサ助ぇっ! この勢いで兄の所まで突き進むぞぉい! 10時の方向、50m先に直進だぁー!!」
「がってんラジャラジャです! いよーっし、美岬、イっきまーす!!」
「おーうイけイけー! ただしミサゴン、オホライドは使うなよー!?」
「了解! オホライド!」
「えっ――ああぁぁぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!?」
「んっ♡ んほぉぉおおおおおおお♡♡」
「ちょっ、美岬、アサちゃん!?」
「あっ、もう見えなくなっちゃった。 すごいなぁ美岬ちゃん・・・・・・」
「言ってる場合じゃ――あぁもうなのだわなのだわ!!」
「ハッ――お、追えーっ! 反交尾勢力を逃がすなーっ!!」
青藍島の夜闇の中を、反交尾勢力とSSが駆け回る。
通信妨害を何とかした――そうは言っても麻沙音の技術も生半可なモノではない。
すぐさま対抗手段を構築し、追手の追跡を振り切るのであった。
そうしてSSとの追い掛けっこは月が空の真上に上がるまで続き――結果は反交尾勢力の逃走という形に終わる。
少女たちは今日も、純潔を守り切る事が出来たのであった。
――ただし、リーダーの淳之介を除いて。
「・・・・・・結局これ、必要ありませんでしたねぇ」
「ぜ、ぜひゅー・・・・・・こひゅー・・・・・・」
「はぁ、はぁ・・・・・・も、もー走りたくないのだわ・・・・・・」
「んっ、はぁ・・・・・・あ、麻沙音ちゃんだいじょうぶぅ・・・・・・?」
SSから逃れ切った後、淳之介との待ち合わせの地点で彼女らは休憩を挟む。
それぞれが疲労困憊といった様子を見せる中、唯一体力に余裕のあった美岬は懐から取り出した紙袋を見つめて、小さく呟く。
『葉月ちゃんは、私の友達です・・・・・・だから、顔を隠す物が必要なんです』
『美岬は地味だから顔が見られても大丈夫って・・・・・・あぁ、そうか・・・・・・』
秘密基地で話したそれは、美岬が唯一懸念していたこと。
反交尾勢力として活動する上で、地味でモブな事は正体がバレないという利点があった。
――ただ一人を除いて。
「・・・・・・」
葉月ちゃんは、私が反交尾勢力だと知ったらどう思うのでしょうか。
彼女はSSで、島のドスケベを守る存在。
なれば、反交尾勢力である私は友達である彼女の邪魔をしていることになる。
(いえ、これも私が決めた道ですから)
そう、こうなるのは分かっていたこと。
それに元々ずっと非性産者として隠してきたのだから、今更でもあると彼女は考える。
淳之介に危ない所を助けて貰った恩もある――だから、ここで逃げるのは違うのだと自分に言い聞かせるのであった。
「ん、ぬぐっ・・・・・・あれ、これって・・・・・・」
「あれ、どうしたんですか麻沙音ちゃん?」
麻沙音が何かに気付いたのか、腕に抱えていたタブレットをじっと見つめる。
それに気づいた美岬がスッと近寄るが、麻沙音は気付いた様子も無く画面に集中しているようだった。
「麻沙音ちゃん、おーい? ・・・・・・気付かれませんね、どうしましょう・・・・・・あっそうだ!」
「・・・・・・」
「そ~・・・・・・っ、えいっ! だ~れd」
美岬が背後から麻沙音の両目を手で覆い――
「ふんっ!!」
「ぶえ゛っ!!」
――飛び退いた麻沙音の頭部が美岬の顎に直撃する。
「う、うぅ・・・・・・酷いです麻沙音ちゃん・・・・・・」
「黙れよ豚がよぉ・・・・・・お前みたいなおっぱいがデカくて地味めで童貞が好きそうな顔つきをした女は私は嫌いなんだよちょーっと一緒に行動したからって私はお前を認めたりしないからなぁガルルルゥ・・・・・・」
「ヒッ、あ、麻沙音ちゃんが私を肉食獣のような目で・・・・・・た、食べないでくださぁい・・・・・・」
「誰もそんな目で見てないやい! お前みたいな脂ばっかりの豚なんて美味しくないんだい!」
「あっ、性的に食べるなら私はオッケーですよ!」
「もうやだこの肥満ちゃん・・・・・・サバンナに帰れよぉ!」
「まぁまぁ、アサちゃん・・・・・・その辺で、ね? ところで、タブレットを随分熱心に見てたけど何かあったの?」
「あっ、奈々瀬しゃん! いいいえっ大した事では、ううぇへへへぇ・・・・・・」
「・・・・・・そう? ならいいんだけど・・・・・・」
奈々瀬の問いにだらしない笑みを返しつつ、問題無いと告げる麻沙音。
そのいつもの様子に、奈々瀬は先ほどの何かを憂うような目をした麻沙音は気のせいだったかと、ほっと胸をなでおろす。
彼女の大好きな兄――淳之介が居ない今、麻沙音が精神的に不安定にならないか奈々瀬は不安だったのだ。
(早く戻ってきなさいよね――淳)
麻沙音もそうだが、奈々瀬自身も彼の帰還を待ち望んでいる。
心の中で淳之介の無事を願いつつ、彼女らは淳之介がやってくるのを待つのであった。
「美岬ちゃん、さっきの凄い音したけど大丈夫・・・・・・?」
「心配には及びません! この畔 美岬、多少の怪我は何ともありませんとも!」
「うーん、でも・・・・・・あっそうだ、お姉さんが“痛いの痛いの飛んでイけ”してあげるよ!」
「えっそんな、わたちゃん・・・・・・悪いですよぉ」
「いーのいーの、美岬ちゃんは後輩なんだから、お姉さんである私が少しでも癒してあげないと」
「そ、そうですか・・・・・・? ・・・・・・それなら、ぜひお願いします・・・・・・!」
「よーし、痛いの痛いの・・・・・・じーすぽっとにとんでイけー!」
「んっ、んほぉぉおおおお♡ 痛気持ちいぃぃいん♡」
「私の知ってるおまじないと違うけど、おまじないで何とかしようとするわたちゃん、可愛いのだわぁ・・・・・・」
「正気か・・・・・・?」
青藍島の独特の文化で育った二人と、三年前に転校して島に染まりつつある一人。
そして、つい最近青藍島にやってきたばかりの麻沙音はおかしな仲間たちの姿を横目で見つつ、先ほど届いたメールをもう一度見返す。
宛先不明――されど、誰から届いたかなど一目瞭然であるソレを、麻沙音は口を結んで出そうになる言葉を必死に飲み込む。
『淳之介は無事だ。 あとはこっちで何とかするから、麻沙音ちゃん達は先に家に戻ってて』
「――――」
約束を破るわけにはいかない。
たとえそれが、自分の望みでは無くても――彼女の頼みだから。
でも、いつか――いつか、条例を気にする必要が無くなった時。
――その時は、昔みたいに甘えに行ってもいいですか?
大切な人を思い麻沙音は、タブレットを強く握りしめるのであった。
※特に深い意味はありません。