抜きゲーみたいな島に住んでるTS娘はどうすりゃいいですか? 作:パチドリくん
『あなた・・・・・・最近大丈夫なの? 碌に眠れてないみたいだけど・・・・・・』
『・・・・・・え? 悪い、何だって?』
今世での父さんと母さんが、部屋のリビングで何かを話している。
母は物憂げな表情で父に呼びかけるも、父は別の何かに気を取られているのか、はっきりとした反応を返さない。
そのせいで、母は余計に顔を曇らせて父の傍へと近寄る。
『ほら、やっぱり疲れてるじゃない・・・・・・こっち来て?』
『あ、あぁ・・・・・・』
母は父の腕を引っ張って、すぐ傍のソファに座らせると、父から少し距離を取って座る。
怪訝そうな表情で父は母を見つめるが、母はそれを気にせずに膝をポンポンと叩いて父の方を見返す。
それを見て父はハッとした顔をするが、口を渋らせて母から更に距離を取った。
『さ、流石にそれは・・・・・・俺ももう32だぞ? この年でそれは――』
『・・・・・・はぁ、いいから来な、さいっ!』
焦れた母が父の頭をガシッと掴むと、そのまま自分の膝に乗せる。
母はそのまま父の頭を抑えつけ、父は離れようと慌てふためいて。
されど無理矢理離れる事もできず母の成すがままにされてしまう。
けれど父は決して嫌そうというわけでもなく、どちらかと言えば恥ずかしいという気持ちのようであった。
『膝枕、好きだったでしょ?』
『だからってなぁ・・・・・・俺にも男の面子というものがあってだな・・・・・・』
『何が男の面子よ、アンタの恥ずかしい所なんて散々知ってるんだから』
『うっ・・・・・・』
『・・・・・・だから、アンタが今とっても疲れてるってことも私は分かるのよ。 ・・・・・・面子なんて気にしないの』
『・・・・・・』
母さんの口調は、今まで俺が聞いたことの無い優しい物だった。
今世の母は父に対しては口がキツく、言いたい事ははっきりとしていて、気の強さが全身から溢れ出てるような人だったから。
だけど、今の母はとても優しい口調で父さんに話しかけている。
それは俺にとって意外だったけど――どこか
『よしよし・・・・・・』
『・・・・・・』
『んふ、ふふぅん・・・・・・よちよち・・・・・・♪』
『・・・・・・』
・・・・・・・・・・・・
『よくがんばりまちたねー♡』
『・・・・・・あのさ』
『ん? なによ』
『いや、慰めてくれてるのはありがたいんだけど・・・・・・』
『なによ、なんなのよ』
『――・・・・・・なんで赤ちゃんプレイなの?』
本当だよ。
俺は一体何を見せられていると言うんだ。
『うるさいわね、赤ちゃんは黙ってあやされてなさい』
『いやだから俺今年で32って・・・・・・』
『いいからじっとして』
『はい・・・・・・』
父よ・・・・・・。
優しいかと思ったら、やはり母さんは母さんらしい。
『ぬっふん・・・・・・ふふぬぅん・・・・・・うふん♪』
『もうちょっと可愛い笑い方出来ないのか・・・・・・?』
『あ、十円ハゲ』
『な――っ!? お、おい嘘だよな!?』
『嘘よ』
『なんだ嘘か・・・・・・』
『でも薄いのは本当よ』
『もっと酷いッ!?』
『生まれたての赤ちゃんね』
『上手いこと言ったみたいな顔してるけど全然上手くないからな!?』
二人は、とても仲睦まじそうにじゃれ合う。
・・・・・・両親の思わぬ姿を目撃してしまったけど。
けれどそれは、二人の間に確かな愛がある事が伺えて。
『・・・・・・・・・・・・』
俺にとって今世での両親は、両親だけど、
前世での記憶がある以上、彼らの事を本当の両親だなどと呼ぶことが俺には出来ない。
血縁やDNAは確かに彼らの子を示す“私”の体であっても、心は――精神は、どうしても前世の男のソレで。
“
ただ、それでも俺は子供としての役割を果たさなければならない。
せめて彼らの子供らしく振る舞えるよう、彼らの事をよく知っておく必要がある――その為に俺は、夜遅くに会話する彼らの事を覗き見ていたのだが。
(なんか――こういうのって、憧れるよな)
前世にも両親はいたが、ここまで情熱的では無かった。
それだけに、今の両親の仲睦まじい光景にひどく心が揺さぶられる。
ちなみにだが、うちの両親は結婚をしていない。
俗にいう事実婚という奴で、父が立ち上げた会社で母も働いているらしい。
その影響で俺は母方の姓を名乗っている。
何故結婚しないのか尋ねたこともあるが、複雑な事情があるのか詳しくは教えてくれなかった。
ただ確かなのは「父が良い所の坊ちゃんだった」という事と「籍を入れずとも、二人は確かに愛し合っている」という事だった。
信頼し合う二人が、愛情で結ばれた二人が、ただ幸せそうに日常を過ごしている。
前世ではとことん縁もなく、かといって行動する気力もなく。
しかし憧れだけは捨てきれず、ゲームや漫画の創作の中で求めたそれが今、目の前で繰り広げられている。
これが幸せという言葉を形にしたものならば――なんて綺麗なんだろうと、そう思った。
母さんは父さんの髪を撫でて、穏やかな表情で父さんの顔を見つめる。
『仕事、今が大変なのは分かるけど・・・・・・無茶はしないって、約束してくれる?』
『・・・・・・あぁ』
『無茶しすぎてハゲにならない事も注意してよね』
『髪の事はもういいだろうが・・・・・・!?』
そう言って、笑い合う二人。
それを見て俺は――改めて彼らの娘として恥じないようにしようと、自分に約束する。
この時はまだ、そんな事を考える余裕があった。
それどころか、どうやって無事に青藍島で過ごすか、そもそも両親をどう説得して島に行こうか――そんな甘い気持ちで日々を過ごしていたのだ。
だから私は彼らの話している内容を気に留めることも無く、ただ二人の邪魔をしないようにと、変な気を回す自分に浸っていてさえいた。
それが間違いだったのだと、気付くこともなく――――――
「・・・・・・てっ・・・・・・さい・・・・・・」
・・・・・・今の、は。
・・・・・・随分、懐かしい夢だな。
「は・・・・・・っ、どう・・・・・・れば・・・・・・まり激しく・・・・・・」
まだ私が東京に居た時の夢――これを見るのも久々だった。
つい2,3年前ぐらいまではよく見ていた気がするけど、最近は見なくなってきてたのにな。
そう忘れられる記憶でもないのだから、夢にまで出て欲しくなんかはないのだけれど。
・・・・・・それにしても、さっきから聞こえるこの凛とした声は――
「・・・・・・何か、冷やせるものを――――」
「まっ、痛っ・・・・・・」
「――――!」
聞き覚えのある声に身を起こそうとして、失敗する。
脇腹が酷く痛む。
立ち上がろうとしても、その痛みで体勢がぐらついてしまうせいだ。
「お・・・・・・き上がってはなりません・・・・・・骨は折れてはいないようですが、腹部全体にあざが出来ております・・・・・・」
「だい、じょうぶ・・・・・・これぐらいの痛みには、慣れて――っ・・・・・・」
体を動かして、丁度起き上がった瞬間お腹に力を入れてしまったせいで今まで以上の痛みが腹部を襲う。
「む、無理もいけません・・・・・・それでは、あなた様が・・・・・・」
「うっ、ふっ・・・・・・へ、平気だよ・・・・・・それに、こんな所で寝てるわけにもいかないから・・・・・・」
「とても、そのようには見えませぬ・・・・・・安静にしておかなければ余計に傷が――」
「それよりも奴らが・・・・・・いや、いない、のか・・・・・・」
辺りを見渡す。
暗がりで少し見えづらいが、瓦礫や埃で少々薄汚れた床に、吹きさらしの壁からは月の光が入り込んでいる。
痛みで朦朧としてあまり覚えていないが、どうやら私は無事に軍事施設跡地に逃げ込むことが出来たようだった。
ほっと息を吐いて、その場に座り込む。
座り込んだ衝撃でまた脇腹が痛んだが、それを無視する。
そうして周囲を伺えば奴らの気配はせず、何より彼女がこちらに気を遣っている事で、今すぐにやってくるような危機は無いのだと分かった。
そこまで考え、私と彼女しかいない事を確かめてから気を緩める。
「えっと・・・・・・それで君は大丈夫かい? 頭を殴られていたけど、それ以外に怪我とかは・・・・・・」
「わたし、は・・・・・・大した事はありませぬ・・・・・・あなた様に助けて・・・・・・頂いたので・・・・・・」
「そっか・・・・・・うん、それなら良かった」
その言葉に安堵する。
私のしたことは決して無駄ではなく、むしろ彼女の危機を救う事が出来たのだと達成感すら感じていた。
・・・・・・それを感じて、今更ながら私が来ていなかったらと思うとぞっとする。
最悪の展開を想像する。
文乃がヤクザたちに捕まり、身動きを取らせないように両肩を撃ち抜かれる様子を。
そうして動けなくなった文乃を、奴らは好き勝手に嬲り犯すのだろう。
それが当然だと、搾取されて当たり前なのだと、奴らは考えているから。
もし、あのまま私が出ていなければ文乃は――――
「・・・・・・本当に、良かった・・・・・・っ」
「んひっ――」
「もし君があのままアイツらに捕まってたら私は・・・・・・っ!」
しかし、それはもしもの話で。
現実はそうなる前に、私の力で防ぐことが出来た。
それがどうしようもなく、嬉しくて。
「あの・・・・・・その・・・・・・」
「こんな事、言っても意味が分からない事だと思う――――だけど、聞いてくれ」
文乃とは、これが初対面だ。
今まで会おうと思えば会う事が出来たし、何なら顔だけは学校で何度か見た事がある。
だけど、今この時まで私は文乃に会うことを避けていた。
何故なら、彼女の瞳は全てを見通す事が出来るから。
私の利己的で自分勝手な願いを押し付けるのも、現実の存在である彼女らに空想の存在だと決めつける傲慢な思いも――彼女には全て知られる恐れがあった。
それが怖くて、自分から関わる事が出来なかったのだ。
でも、そんな事は彼女の危機を目の前にして全て吹き飛んだ。
知られたっていい。
頭がおかしいと思われたっていい。
ただ、それでも――彼女たちに不幸な目にあってもらいたくない。
「僕は――――君たちを助けるために、この島にやってきたんだ」
「・・・・・・・・・・・・」
全ては――ハッピーエンドを迎えるために。
「・・・・・・意味は・・・・・・皆目、見当も付きませぬが・・・・・・」
文乃はゆっくりと、会話することに慣れない様子ながらも、その深紅色の瞳でこちらを見つめ。
「あなた様が・・・・・・心の底から、わたしの身を案じていることは・・・・・・とくに伝わってまいりました」
――穏やかな表情で、そう告げるのであった。
文乃と二人、部屋の中で立ちずさむ。
彼女に私の思いを伝えてから、先ほどの出来事やこちらの事情などを軽く語り終える。
「それでは・・・・・・あなた様は・・・・・・SSでありながら、裏では反交尾勢力としても活動している・・・・・・と・・・・・・」
「――・・・・・・まぁ、そういう事だね」
「・・・・・・・・・・・・」
かくかくしかじか――は、冗談として。
文乃に伝えたのは私がSSに入っている事と、反交尾勢力として活動している事。
私がこの辺りで行動していたのは、
そうしていたら、ヤクザたちに襲われている文乃を見つけ、助けようと思った事。
それらをかいつまんで説明した。
すると、文乃はじっと考え込むような素振りを見せ、暫くすると頭を下げ――ってちょ、えっ!?
「大変、申し訳ございません・・・・・・」
「ちょ、ちょっと!? どうして土下座なんて――!?」
「貴方様がSSでありながら、反交尾勢力として活動するのは・・・・・・それは、この島の条例である・・・・・・ドスケベ条例の、強制的な性行為が原因・・・・・・なればこそ、わたしはあなた様に謝罪しなければなりません」
「それは――」
それは。
あぁ。
もう、本当に。
そういう、ことか――!
文乃に土下座させてしまったという状況に後悔する。
ここにきて、私は忘れてしまっていた。
彼女の責任感の強さというものを。
文乃は自身が背負う必要のない責任までも背負おうとする娘だと言うのに。
そんなつもりは無かったが、今の説明だけでは彼女を誤解させてしまっても仕方がなかった。
と、とにかく早く誤解を解かないと――
「ちょ、ちょっと待って。 今のは誤解というか、いや誤解って程でも無いんだけど、何と言うか・・・・・・」
「どうか、お許しを・・・・・・この身で出来る事ならば、かような物でも受け入れる所存で――」
「待った!」
「んひっ」
咄嗟に言いかけた文乃の言葉を遮る。
今、この子は誤解からとんでもないことを言おうとしていた。
それだけは言わせてはいけない。
言わせてはいけないのだ。
「・・・・・・・・・・・・」
「あ、あの・・・・・・な、何か・・・・・・わたしは無礼を・・・・・・? も、申し訳ございませぬ・・・・・・二度もあなた様を煩わせてしまい、何とお詫びすれば・・・・・・」
「詫びはいいんだ。 それよりもいいかい、一つ覚えておいて欲しい」
「む、べ・・・・・・?」
恐縮する文乃の肩に手を置き、顔を上げさせ告げる。
「君みたいな可愛い娘が何でもするなんて言っちゃダメ!!めーなの!!」
「めーなの・・・・・・」
「何でもするなんて言ったら相手は何を言うか分かんないんだよ!?犬の真似をしてみろと3回ワンと鳴かせるも何か犬っぽくないという駄目だしをしたり「ん?」というコメントを誘ってはキッズを大量に呼び寄せ反応が貰えることに承認欲求を満たしたり挙句の果てには日本全国にBBとGBが作られて一生ネットのおもちゃにされるかもしれないんだから!!」
「さんかいワン・・・・・・」
「やだ言葉繰り返すの可愛い!!!!」
「可愛い・・・・・・え?」
首を傾げてこちらの言葉を繰り返す文乃。
分かっているのかいないのか微妙な反応だが、可愛いのでヨシとしよう。
「と、とにかく、何でもするなんて気軽に言っちゃめーだからね?!」
「む、むべむべ・・・・・・」
はぁ・・・・・・。
急に文乃があんな事を言うから焦ってしまった。
・・・・・・とはいえ、ある意味これで良かったのかもしれない。
あのままでは文乃が土下座をし続けていたかもしれないし、それにこの件に関しては――――文乃は全く悪くないのだから。
「・・・・・・確かにね、私はこの島に来た事を後悔してるかって言われると・・・・・・してないとは言えない」
「・・・・・・」
「――・・・・・・まぁ、でもね? ここに来るって決めたのは私だし・・・・・・それに、嫌な事ばっかりってわけでも無かったから」
この島で出会えた人たちは、私にとってかけがえのない人ばかりだ。
仕事が出来るのに日常生活が壊滅的な桐香に、ドスケベに関わるとアレだが実は常識人な郁子、堅物なのに限界オタクと私生活のギャップがありすぎる礼先輩たちだけではない。
それ以外にも、この島にやってきた時に世話を焼いてくれた先輩のSSに、怪我をした時にはお世話になったお医者さん。
SS寮の管理人さんや、美岬に、個性的なクラスの皆。
本編に登場しない
そうして今の私が作られているのだから、この島を全て否定することなど出来るはずもない。
「ドスケベが好きな人が居たって良いとは思う。 ただ・・・・・・それを大切な人とだけ共有したい子、身体にコンプレックスを持つ子、同性しか愛せない子・・・・・・そういう人たちにもドスケベを強制させるのは、辛いよ」
私自身がそうだから、という言葉は飲み込む。
これ以上変な事を言ってまた文乃が謝罪モードに入ったらハラキリでも済まされない。
文乃にはむべむべぬへへと笑っていて欲しいのだ。
「・・・・・・そんな顔しないでくれ。 これは私の問題なんだから」
「です、が・・・・・・」
「それよりも、だ」
文乃はよく見ないと分からないほどに顔を微かに曇らせて、こちらを慮るような気配を向ける。
その優しさは彼女の美徳であるが、いらぬ責任まで背負おうとするのはいただけない。
「君が感じている責任・・・・・・それがどこから来ているのか、私は知っているつもり」
「・・・・・・」
「その上で言わせてもらうけど・・・・・・君がそれを背負う必要なんて一つもないと私は思う」
「・・・・・・っ、ですが、これはわたしの――」
「
「――――っ!」
文乃は無感情だった顔に今度こそはっきりとした吃驚を浮かべ、何かを言おうとして口を塞ぐ。
まるで発言の意味を聞こうとしたが、それ自体が自身の正体を明かすことになってしまうのに気付きそれを防ぐかのように。
そうしてすぐに、元の無機質な表情へと戻ってしまう。
それが自分の事情で他人に迷惑を掛けたくないのだと言うようで。
・・・・・・本当に、優しい子だ。
だからこそ、彼女を助けたいと――本心からそう思える。
「こう見えても私は事情通でね。 だから、隠さなくたっていいんだ」
「っ・・・・・・」
「いきなり現れた私の事を信用出来ないのなら・・・・・・せめて、話だけ」
文乃の考える責任は違うのだと。
文乃が背負うべき責任など何一つ無いのだと、私は伝えたい。
そして、彼女の想いを――満願成就は成し遂げたいと思っているのは、君だけじゃないのだと。
「私は、この島の条例を変える」
「な、にを――」
戸惑う文乃をよそに、私は願いを語る。
「少数を排斥する事なく、かといって大勢を蔑ろにする訳でもなく」
小を切り捨て、大を生かす。
それは決して悪いことではなく、寧ろ大を選ぶのが当然だろう。
当たり前だ、その方が多くの人間を幸せに出来るのだから。
――だが、それは決して小を蔑ろにしていい理由になりはしない。
「大勢が受け入れられなくても、ただそこにあると認めてくれるだけでいい」
殆どが受け売りなそれだが、今の私の本心でもあるそれ。
そんな理想とも言えるような――――大も小も生かす未来を私は知っているのだから、目指さない理由なんてある訳ない。
だから私は、ここで彼女の願いを代弁する――
「ドスケベを愛する者と、そうでないものが共存できるように私はしてみせる」
「そうすれば、島に住む大切な彼らをもっと幸せにしてあげられるから――!」
顔を上げた文乃の透き通るような瞳と真っすぐに視線を合わせ。
一息に告げたその言葉に、彼女は先ほどと同じびっくりとした様子でこちらを伺い。
「あなた、様は・・・・・・」
「うん?」
「恨んで、いないのですか・・・・・・? たとえ事情があったとしても、この島で受けた辛い出来事を・・・・・・その原因となった、かの者の娘であるわたしを・・・・・・」
「さっきも言ったでしょ? 君がそれを背負う必要なんて一つもないって」
言い募る文乃に、再度同じ言葉を投げかける。
もうこれ以上彼女が同じことで悩まないよう、彼女の言葉を遮るように近付いて。
「責任というのは、基本的に行為をした本人が背負うもの――」
「――――っ」
「だったらその責任を持った人を・・・・・・子育てを全部母親に任せて、子供にすら顔を合わせない放蕩迷惑駄目親父な仁浦さんをこらしめよう」
出来るだけ明るく――彼女が気負わないようにこらしめる、なんて幼稚な言葉を使って。
文乃が唯一「駄目な人」だと称する、彼女の父である
野望の為に妻を亡くし、止まれなくなった悲しい男――その人の名を。
「そして――この島の条例の誤謬を、あの人に突きつけてやるんだ」
そう、告げて。
私は彼女に手を差し伸べ呼びかける。
「君はどうする――――
そうして、彼女は。
ようやく微かに震わせていた体を止め、無表情だった顔に小さな笑みを浮かべる。
それは島を想う故の喜びだったのか、それとも熱く語る私に呆れた笑みだったのかは分からないけれど。
彼女が浮かべた笑みは、とても綺麗で、可憐で、可愛くて――――
「――・・・・・・わたしも・・・・・・もし、それが可能であるならば・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「ただの小娘の夢想だと・・・・・・諦めていた望みが・・・・・・叶うのならば・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「わたしは、この島が・・・・・・母が大好きだった、この青藍島が大切ですから・・・・・・っ」
「・・・・・・」
文乃は、私の差し出した手の平を更に小さい両手で包むように掴み取る。
柔らかな感触に右手が包まれ、ほのかに体温が伝わってくる。
先ほどよりも距離が近づいて、見えやすくなった表情をこちらに向けて彼女は口を開く。
その
「わたくしも、あなた様の夢に・・・・・・相伴させて頂くことをお許しくださいま――・・・・・・」
「――――・・・・・・・・・・・・」
「あっ無理」
「・・・・・・――せ?」
ゴポリ、と。
喉の奥から清楚という名の鉄分の塊が溢れ出る。
「見えます、いのちの輝きが飛び出る未来が・・・・・・こふっ」
「――――!?」
あ、やばい・・・・・・これ尊さだけじゃなくてお腹を蹴られた影響もあるかも。
いつもよりも、お腹に響く。
でも・・・・・・
「カミサマは言いました。文乃の笑顔はプライスレス、何事にも代えがたい、と――」
「な、何を仰って――」
そう、この笑顔を見られた幸福に比べたらそんな事は些事である。
この笑顔こそが、私の目標到達地点なのだから。
・・・・・・というか、うん?
何となく流れで手を差し伸べたけど、普通に手を繋いじゃってるな?
あっ――――
「ごふっ」
「――と、吐血・・・・・・! もしや、先ほどの怪我が・・・・・・!」
「山奥の廃墟で文乃が手を握るのは、体力1の私だけ。今わかりました。宇宙の心は、彼だったんですね」
「しゃ、喋ってはなりませぬ・・・・・・! 血が、血が・・・・・・!」
文乃の手から感じ取る体温と、ある特殊な者のみが発する
それが私の体全身に流れ込み体中を活性化させ、多幸感と同時にしんどさを覚える。
あぁ・・・・・・なるほど。
これが、そうか。
「は、早くお医者様をお呼びしないと・・・・・・っ!」
この掌にあるものが。
「あ、あぁ・・・・・・どんどん溢れて・・・・・・! そ、そんな・・・・・・わたしのせいで・・・・・・っ!」
「――――フミノニウムか」
そんな人間の感情を追い求める男のような言葉を最後に。
推しの笑顔で私は夢の世界へと旅立った。
『はい、もしもし
母さんが受話器を取り電話口へと立つ。
我が家では電話に出る時は、常に母方の姓を使用している。
父さんの方の名前を使うと、何かしら問題があるらしい。
そんな特殊な事情を抱えた我が家ではあるが、いつもと同じようによそ様へと向けた明かるげな声で母は話す。
「はい、はい・・・・・・そうですが・・・・・・えっ?」
・・・・・・だが、電話に向かった母の声は不意な言葉と共に段々と小さくなり――次第にぼんやりとした物へと変わっていく。
『――・・・・・・嘘』
『・・・・・・母さん?』
ただならぬ様子を感じ取った俺は子供らしく尋ねようとしたが、母の不安に当てられた影響か――意識していた「お母さん」呼びが崩れ、脳内だけにしていた子供らしからぬ様子で尋ねてしまう。
『何があったの・・・・・・? いきなりそんな・・・・・・』
『・・・・・・葉月』
しかしその子供らしからぬ落ち着いた態度が功を奏したのか、微かに震えていた母さんが俺を見て――視線を左右に震わせて、暫くすると落ち着いた。
・・・・・・いや、よく見れば手元の動きがまだ忙しない。
右の手首を掴んだり、かと思えば反対の手を掴んだりと、先ほどから様子がおかしい。
不安になった俺は、その場に座り込んだ母さんの傍に近寄って屈みこみ、事情を聞こうとして――――
『父さんが・・・・・・・・・・・・父さんが――――』
『――――・・・・・・え?』
感情の伺えない平坦な声で、告げられた。
そうして母さんから語られたのは――やはりただ事ではなく。
でも、この時はまだ大事だと実感も出来なかった俺は、何とかなるよとその場で母さんを励まして。
より詳しい事情を聞くために、母さんと一緒に警察の元へと向かったのだ。
――けれど、これは始まりでしかなくて。
俺の予想がどれだけ楽観的なものだったのかを、向かう先で突きつけられた。
この時、私は初めて知ったのだ。
不幸というものは、幸せを積み上げた数の分だけ――派手に崩れ落ちていくものだという事を。
ちょっと遅漏しちゃって亀頭も下がる気持ちだハメ。
スス子アペとか新しい勃ツシナリオを見てたら楽しくなっちゃって本編を起動してたパチドリくんだパチ。
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【ぬきたし2】スス子アペンドの感想というか日記というか宣伝
あと今日は奈々瀬誕生日!!!!
祝え!新たなる推しの誕生日を!!!