抜きゲーみたいな島に住んでるTS娘はどうすりゃいいですか? 作:パチドリくん
「改めて自己紹介をしよう。俺の名前は橘 淳之介。そっちで寝転がってるのが妹の麻沙音だ」
「…………」
吹上くんを連れ、俺たちは橘家へと集合した。
そこで俺たちは吹上くんを迎え入れる歓迎会を開くことにしたのだ。
「こっちのギャルっぽいのが学園一のビッチこと片桐 奈々瀬で――」
「よろしく。あと、ビッチっていうのは周りが勝手に言ってる事だから気にしないでね?」
「こっちの小さい子が渡会 ヒナミことわたちゃん先輩だ」
「小さくありませんけど!」
「いやどう見てもロリでしょ……」
「ロリじゃないですけど!!」
「そしてもう一人が――あれ?」
俺はもう1人の仲間――畔を紹介しようとして、その姿を見失う。
一体どこに――――
「……もう一人の御仁は、そちらに」
「え?」
「うーらー飯ー……屋ゃぁぁぁああ!」
「うおぁぁぁああああ!!?」
「ほわたっ!?」
ガガッ、ギッ、ゴしゃぁん!!
「ああっ、兄が変な音立てながら椅子ごとスッ転んだ……」
「机のコップ――っ! セ、セーフ……淳の頭の上に落ちる間一髪だったのだわ……」
「凄い勢いだったな、まるで映画とかで見る脱出装置みたいだったなぁ」
「感心している場合では、無いのでは……?」
「うぐ……な、何だったんだ今のは!? 幽霊か!?」
「いえ、畔です……」
「え、あ、畔か……びっくりした……」
「すみません……影が薄いモブなりに精一杯アピールしてみようと思って……」
「そ、そうか……次からは気を付けてね……?」
後頭部はズキズキ、鼓動はドキドキとしていたが、そんな悲しいことを言われると怒るに怒れない。
「おいおい情けなくも怖がりな兄は幽霊が怖くて夜中に一人でトイレも行けない弱虫なんだぞこの年でお漏らしなんてしたらミジンコ以下の兄の尊厳が可哀想だろ分かったら二度と兄に近づくなよこのキングデブタ」
「今度から一緒に行ってあげないからな」
「あぁん一人じゃ怖いよぉ~~!」
「ふっ、俺もだぞ……!」
震える妹を抱きとめる俺。
兄妹そろって、幽霊が苦手なのであった。
「それより、さっきは気付いてやれなくて悪かったな……もう仲間になって暫く経つのに、これじゃあ駄目だよな」
「そんな、気にしないでください! 橘さんが悪いわけじゃないですし……」
畔からそう言われるも、このままにはしておけない。
畔の存在感の無さは性触者から逃げるのには有利だが、逆に言えば俺たちも彼女の危機に気付けない可能性があるのだから。
今後の為にも、対策はしなければならない。
「……よし、じゃあ今度から集まった時に俺のことを“インポ野郎”と呼んでくれ」
「っ!?」
「えっ!? で、でもそれって橘さんのコンプレックスで、一日に三回しか呼んだらいけない奴じゃ……」
「だからこそだ。流石にそんな事を言われたら俺も見過ごさないはず……俺だって畔に気付いていない状態なわけだし、お互い様になるだろ? 大丈夫、分かってたら怒ったりしないさ」
「! わ、分かりました……橘さんがそこまでの覚悟を持っているなら、私もそれに応えて見せます!」
ぐっと拳を胸の前にやって奮起する畔の前に、俺も親指を立てる。
仲間との絆の前では、俺のチンケなプライドなどチリ屑同然。
これで畔を守れるのなら安いものだ。
「た、橘様は、い……いん……なのでございますか……?」
「ごめんねあの子馬鹿だから……あぁやだこっちまで恥ずかしい……!」
「すみません奈々瀬さん、うちの兄がご迷惑を……」
一方で、そんな俺たちを白い目で見る二つの視線があることに俺たちは気付けないのであった。
一拍置いて、畔が「あっ」と思い出したように声を上げたことで話は元に戻る。
「そういえば自己紹介が途中でしたね、えっと……畔 美岬です。水辺って意味の畔に、美しい岬と書いて畔 美岬です。美岬お姉ちゃんって呼んでいいミサよ!」
「みさ……」
「美しいじゃなくてかふとましいの間違いだよね」
「ひぐぅ! うぅ……前々から思ってましたけど、麻沙音ちゃんって私に対して遠慮が無いですよね……」
そう言って人差し指を突き合わせてもじもじとする畔。
あざと可愛い。
じゃなくて。
「……俺は健康的な体つきで良いと思うぞ?」
「お世辞はいいんです、自分の体は自分が一番知ってますから……ははっ、苗字も畔じゃなくて太りの方が似合ってるかもしれませんね……」
褒めたつもりだったのだが、卑屈になっているせいで逆効果に。
俺としては「ちょっとぐらい肉付きが良い方が男は喜ぶ」などと
欲を言えば、是非ともサイハイソックスかニーソを履いてもらいたい。
「……兄、今畔さんにニーソとか履いてみて欲しいって思ったでしょ」
「なっ――俺はニーソからはみ出た肉付きの良い太ももに欲情するなんて一言も!」
「聞いてないのに性癖まで語りだす兄、好き……!」
再び抱擁を交わす俺たち。
「あの二人はいつも仲が良いわねぇ……っと、ごめんね。置いてけぼりにしちゃって」
「いえ……皆様は、仲がよろしいので……ございますね」
「……拍子抜けさせちゃったかしら?」
「それは……いえ、それよりも……」
この時、俺はアサちゃんと抱きついて気が付かなかったのだが。
奈々瀬から後で聞いた話によると、俺たちの姿を見て彼は――――
「ここは、笑顔が満ちる素晴らしい場所なのだと……それを、実感しておりました」
「吹上くん……」
何かに納得し、どこか安心したような微笑みを――吹上くんは浮かべていたそうな。
「……また話が逸れちゃったわね。こんなだけど、アタシたちが一応――」
「待て奈々瀬、そこからは俺が話す」
妹との抱擁から離れ、奈々瀬が再開しようした自己紹介を引き留める。
気を利かせてくれた奈々瀬には悪いが、こういうのはリーダーである俺の務めだ。
俺は吹上くんの前に立ち、彼と顔を合わせると先ほどまでの ◇いつもの件 *1を払拭し、気を引き締める。
「以上5名。俺たちが、俺たちこそが愛無きドスケベセックスに仇なし、鉄槌を下す者――反交尾勢力“NLNS”だ」
「えぬえるえぬえす……」
「NLNSはNo Love No Sexの頭文字を取っている。愛なきセックスなど有り得ないという意味で――」
「橘さんのアレ、私の時もそうでしたけどいつもやってるんです?」
「私の時も似たような感じだったな。きっと橘くんははりきりやさんなんだな!」
「淳はカッコつけたがりだから……好きにさせてあげましょ?」
「…………」
いいじゃないか、張り切ったって……!
徹夜で考えた名乗りなんだぞ……こうげきが1.5倍なんだぞ……!
今の流れは ◇しーーーっ! 若しくは ◇管を巻きたいお年頃 。
奴らのことは今は無視しろ……気を、引き締めるんだ……!
「ごほんっ。事情はそれぞれあるが、俺たちは皆性行為を避ける為に行動している。ここまではいいだろうか?」
「むべむべ……」
「むべ?」
「っ……いえ、なるほどなるほど……」
そう言い直し、コクリと頷く吹上くん。
口癖……いや、訛りか?
むべと言うと……むべ山風と~、の“むべ”*2、だろうか。
「……まぁいい。とにかく、俺たちはドスケベ条例に相反する存在だ」
「……」
「それで、だな……その……君に聞きたい事がいくつかあるんだが、いいか?」
「……ボクに答えられるものでしたら、如何様にも」
「そうか、じゃあ……」
彼には聞きたいことが山ほどある。
ここに来るまでにある程度は彼の身の回りの話を聞いたが、重要な話まではしていなかった。
何せ内容が内容だ、「君って反交尾勢力なんでしょ?」なんて聞いて、それを巡回のSHO職員にでも聞かれた日には通報からの即ドスケベである。
そんな危険な真似は出来るはずも無い。
しかし、俺たちしか居ないこの家の中でならその心配も必要無い。
そうして俺は最も重要で――――俺にとって最も聞きずらかった、あの質問を彼に投げかける。
「……君も出会ったことがあると言っていたが――……葉とは、どういう関係なんだ?」
「それ、は……」
「……やっぱり、ただの知り合いという訳では無いみたいだな」
ビクリ、と難しい反応を返す吹上くん。
あくまで推測だが、彼はあまり人と話すのに慣れていないのだろう。
嘘や誤魔化しというのが苦手なのか、先ほどまで低価格帯のエロゲによくある差分の少ない立ち絵のように動かなかった彼の表情が、今ではハッキリと迷うような感情を伺わせるものになっている。
やはり、そうなのだろう。
吹上くんは「条例のおかげで多くの人が笑って過ごせるのなら、それは良い事なのだと」そう語っていたのだから。
それはある意味で、彼の言っていた内容と合致するのだ。
かつてそう語った、葉の言葉。
この島に恩が有る彼は、条例を潰すのではなく共存させたいのだと。
その言葉は間違っているとは思わないし、むしろ彼の想いを理解する気持ちもないわけではない。
けれど、やはり俺は――――
「もし答えれないのなら、答えなくてもいい」
「え……?」
「……俺は、ドスケベ条例を潰すつもりだからな」
「――っ!」
ドスケベ条例の崩壊。
それは、島の繁栄を根本から覆すことを意味している。
都会への人口流出による過疎化と衰退。
それを何とかする為に生まれたのがドスケベ条例であり、それの成功は今も右肩上がりの人口数が示している。
それを潰すというのだから、俺たちの活動はどれだけ美辞麗句を並べ立てようが、島にとっては悪なのだ。
「それを実現するのは困難で、多くの壁が立ちはだかっている。……だとしても、俺はそれをやってみせる。大切な仲間たちと、俺自身の矜持を守るために」
「ですが、それは……」
「あぁ、そうだ。条例が無くなれば島は大きく変わり、多くの不幸も生まれるだろう。だが少なくとも俺は、人の尊厳を踏みにじり、愛なき性行為を生む条例を許すわけにはいかないと思っている――……その禍根を、憂いの目を断つべきだと、俺はそう信じているんだ」
「……」
脳裏に過るのは、この島で初めて俺を肯定してくれた一人の少女と、一人の女性。
そして同時に思い出す過ちの記憶と、条例が齎した悲劇。
もう二度と、あの子のような思いをする人間がいないように。
もう二度と、あの人のような条例による犠牲者を生み出さないために。
その為に、条例は潰すと誓ったのだ。
……例え、それが誰かにとっての不幸になろうとも。
「君も葉と同じで、条例を全て否定するつもりは無いんだろう?」
「ボクは……」
「私もお腹さえ見られないのでしたら……」
「今そういう場面じゃないから黙ってろモブナスビ!」
「だから、君が葉とどういう関係であっても俺は気にしない。言えない事があるのなら言わなくてもいいし、困ったことがあれば遠慮なく俺たちを頼って貰っても構わない。木戸にも君の事を見て欲しいと言われたし……その……」
そこで言葉に詰まる。
不味い、ここで話すのを止めれば俺の想いが上手く伝わらなくなってしまう。
それは分かっているのに、色んな言葉が頭に浮かんでしまい自分でも何を言いたいのか分からなくなってきた。
クソ、俺はこんなに口下手だっただろうか。
妹との口喧嘩で鍛えられた俺の弁舌は、いつもなら淀みなく動いてくれる。
それなのに、簡単に出てくるはずの言葉が今の俺には出て来ない。
「俺は、君たちと条例のことはまた別の話じゃないかって、そう思って……――」
ただ俺が伝えたいのは――たった独りで抗う彼らの助けになりたいということだけなのに。
「……橘様」
言葉を探していた俺に、声が掛けられる。
「お気遣いいただき、ありがとうございます……ですがボクの……いえ、わたしのことは……どうかお気になさらないでくださいませ」
「吹上くん……?」
それに目を向けると――彼の様子は一変していた。
先ほどまで迷いを浮かべていた彼の表情は決意を秘めた鋭いものに変わり、空気や雰囲気といった、周囲を支配するカリスマのようなものさえ漂わせている。
その小さな体から放たれる神秘的とも言える気配は、背が大きいはずのこちらが思わず見上げてしまうような錯覚に陥らせる。
「我が身は一度、あなた様に助けられた身空。志が違えど他者を救いたいと願い、顔も知らぬわたしを躊躇なく救おうとしたあなた様だからこそ……これ以上の隠し事は失礼かと存じます」
彼はそう言うと、その言葉の意味を問おうとした俺よりも先に被っていた帽子を下ろす。
すると、その中からは彼の特徴的とも言える淡色の髪が――三つ編みと赤いリボンで纏められた長髪が、肩の下までサラリと現れた。
その見覚えのある姿は俺から言葉を奪い取り、思考を停止させる。
「お初にお目にかかります……私の名は“琴寄 文乃”――島を愛した父と母のもとに生まれた我が身は、如何なる時もこの島と共に」
恭しく身を縮め、お辞儀をする彼――いや、彼女は。
「幾重にも辛酸を舐め 七難八苦を越え 艱難辛苦の果て 満願成就に至る――我が豊玉の加護は、今よりあなた様の元へ。如何様な命令も、ご命じくださいませ」
撃墜王で俺たちを救ってくれた少女は――そんな突拍子もない、衝撃的な事実を俺たちに告げるのであった。
「君が……琴寄 文乃……?」
驚天動地な事実を告げられてから暫くして。
コクリ、と静かに頷く吹上くん――改め文乃は、様々な事実を俺たちに語ってくれた。
彼女には戸籍が存在しないこと。
その代わりに彼女には偽の戸籍が存在したが、その戸籍上での性別は“男”となっており、それ故に彼女は普段から男として振舞ってきたこと。
それ故に性行為を受けるわけにもいかず、ずっと逃げ続けてきたこと。
そして、一番肝心で本質的な真実を――彼女に何故戸籍が無いのか、ドスケベ条例を崩壊させる鍵とはどういうことなのか。
途中途中で俺たちの質問を交えながらも、彼女はそれら一つ一つを丁寧に答えてくれた。
話し慣れていないせいか言葉を詰まらせながらだったものの、精一杯なその姿にきっと嘘は無いと確信出来るもので。
そうしてそれら全てを聞き終わった後――俺は、明かされた事実に得も言えぬ感情に包まれていた。
「文乃が仁浦県知事の実の娘……ドスケベ条例を崩壊させる鍵になるって、そういうことかよ……!」
「でも、これでハッキリしたわね。まだあのお爺さんがそうと決まったわけじゃないけど……県知事の隠し子という特大のスキャンダルの元となる文乃を利用すれば、条例は……潰せる」
初めに感じたのは、怒り。
俺たちが探していた文乃が何故ドスケベ条例を潰す鍵になるのか。
その理由が今、ハッキリと分かったからだ。
「確かに性行為を奨励するドスケベ条例を生み出した仁浦県知事本人が、戸籍の無い文乃ちゃんの実の父親だと分かれば……大きな責任問題になりますよね」
「けどそれが皆にバレちゃったら、文乃ちゃんは……」
「まず間違いなく、ある事無い事言われてタダでは済まないだろうね……」
文乃と呼ばれる少女は、それらの言葉にただ顔をジッと伏せている。
理不尽な環境に身を置かれ、更には自身が政治に利用されかねないという状況にも関わらず、彼女は一言も不平や不満といったような言葉を出さなかった。
それどころか、こんなにも小さく、俺よりも年下の少女はこの島を愛しているのだと言う。
『わたしは母が愛し、自分の居場所をくれたこの島を……守りたい。あの駄目な人が生んだ条例も……性の開放を島の皆々様が受け入れ、各々が自分にとっての幸せを見つけていました。……それはきっと、尊いものなのです』
『ですが、条例によって苦しむ方が……あなた様のような人々が居る事もまた、事実でございます。ですからわたしは……その方たちの力になりたい。その想いもまた、尊重されるものだと思ったから』
『たとえ夢物語だと笑われようと、非現実的であったとしても――お互いが共存できる、皆が笑って過ごせるような未来が見てみたい。……それが、わたしの望みです』
……俺は、どうすればいいのだろう。
あれだけ探していた少女が目の前にいるというのに、素直に喜べないでいる。
確かに、彼女の存在は条例を潰す鍵となる。
皆が言ってくれたように、彼女の正体が世間に明るみに出れば仁浦県知事を失墜させ、延いてはドスケベ条例の崩壊にも繋がるだろう。
本来であれば実現に困難を極めるそれが、彼女が居れば簡単に叶う。
だがそれをするには、この小さな少女を犠牲にしなければならない。
しかし、逆に言えば――――
(――この子一人を犠牲にすれば、条例を潰すことが出来る)
条例が無くなれば、俺たちは平穏な生活を取り戻せる。
俺の矜持は守られ、妹や奈々瀬、畔やわたちゃんも本当に好きな人との恋愛が出来るようになる。
俺はずっとそれを望んでいた。
悲願だったそれが叶うのならば、たった一人の犠牲で済むのならば。
選ぶべきは、むしろ――――
「……兄?」
そこまで考えて、隣から聞こえてきた声に思考が打ち切られる。
声を掛けてきたのは、心配そうな表情を浮かべる最愛の妹の姿。
「――っ、なっなんだアサちゃん?」
「いや兄、凄い顔してたから……どーせまたなんか変な事でも考えてたんだろうけど難しく考えない方がいいぞ兄は頭よわよわのクソザコなんだから」
「あ……お、おう……」
「ダメだよ麻沙音ちゃん。大好きなお兄ちゃんが心配だからってそんなこと言っちゃったらせっかくの気持ちも伝わらないよ」
「べ、別に大好きじゃないですしおすし……アサちゃんのことが好きすぎるシスコンブラザーにはこれぐらいで丁度良いんだよ子供なわたちゃんには分からないかぁ」
「子供じゃないですけど!」
からかわれてプンスコとしながらも「お兄ちゃんを励まそうとしたんだねぇ、えらいねぇ」と、よしよしアサちゃんの頭を撫でるわたちゃん。
その和やかな光景はどこか緊張感を奪い、空気が抜けてくるようで。
それに釣られてなのか、知らず知らずのうちに強張っていた表情も緩んでくる。
「……ははっ」
……だが、それのおかげで俺は間違いを犯さずに済むことが出来た。
アサちゃんの言う通り、俺はそれほど頭が良くない。
機械工学とオナニーの知識に関しては誰よりも優れている自信はあるが、それ以外のこと――特に英語なんか――はてんで駄目な人間だ。
そんな俺が変に賢しいことを考えたって上手くいくはずがないのだ。
反省と自戒を籠め、俺は先程考えてしまった下種な思考を頭から放り出す。
文乃は俺の恩人で、俺のことを信用して正体を明かしてくれた。
そんな彼女を裏切るような真似はしたくない。
「――みんな、聞いてくれ」
「……なに?」
「……これから、俺はお前たちにもっと迷惑をかけることになる……――それでも俺についてきてくれるか?」
「……何言ってんのよ。前にも言ったじゃない、アンタが思った道を進みなさいって」
「あぁ、そうだったな……――ありがとう」
俺の言葉に奈々瀬がそう答えると、畔やわたちゃんも同意だと言うように頷いている。
ならば、もう迷うまい。
確かに文乃は条例崩壊の鍵となる存在だが、それがどうしたというのだ。
俺のやりたいことは最初から決まっている――条例による被害者を救うこと。
文乃が条例のせいで虐げられ、大人たちの悪意に晒されるというのなら、それを俺は守らねばならないのだから。
それに、文乃だけが条例崩壊の方法では無いはずだ。
つい目の前に切っ掛けが現れ気が逸ってしまったが、何も結論を急ぐ必要はない。
きっと、文乃を犠牲にしなくても済む方法が必ずある。
仮に無かったとしても、創ればいい。
いや、創ってみせる。
その為にも――――
「文乃、君は葉とも会っているんだろう? 葉は君と同じ目標を持っていた……それなのに君はこうして俺たちと合流する事を選んだ」
「……」
「そこにはきっと何らかの理由があるんだろう。そこについては、また後でいいとして……」
そこで言葉を区切り、ポケットからスマートフォンを取り出す。
開かれた画面には、予め電話帳に登録してあった番号が表示されており――コールを示す受話器のボタンを、俺は躊躇いなくタップした。
「――まずは、葉と会って話をしないとな」
皆に聞かせる為に、スピーカーモードにしたスマートフォンを机の上に置く。
これから話す内容は、きっと俺たちの今後の運命を左右する。
コール音が鳴り響く部屋の中、通話を待つ僅かな時間がもどかしく感じる。
…………だが、その結果は。
『ただいま電話に出ることができません。ピーと言う発信音の後に、お名前ご用件等を、お話しください』
機械音と共に流れたその音声は、無情にも俺の決意を不意にするのであった。
結局その後、葉とは連絡が取れなかった。
二度三度時間を置いてかけてもみたが、どれも留守電に繋がってしまうのだ。
格好はつかないが、それだけなら都合が悪かったのだろうと納得出来るのだが……問題は折り返しの連絡が未だに来ないこと。
一応会いたい旨を留守電に入れてある為、気付いていないということは無いと思うが……留守電を取るのが何となく億劫というあるある話であればまだいいのだが、取れない状況になっているというのなら困ったことになる。
まぁこの件に関してはもう暫く様子を見なければならないだろう。
そしてこれよりも深刻な問題がもう一つ。
それは、昨夜文乃を迎えに来る予定だった木戸が訪れなかったということだ。
木戸はビッチばかりのSSの中でもかなり常識的で、まともな性格をしていた。
島を案内してくれた時も、俺たちが慣れていないからと優しく気遣い、今まで性乱島の部分しか見せられていなかった俺たちにまともな青藍島を教えてくれた。
そんな彼女が何も言わずに……それも、自身から預けた文乃を放っておくなど考えづらい。
何かあったのではと裸INのIDを持っていた畔に連絡を取ってもらうも、既読すら付かない状況。
不安は募るが、時間も遅くなっていた為にその日は一旦解散となり、また後日秘密基地で作戦会議ということになった。
文乃捜索を依頼してきた老人の用意した基地を使うのも危ういと感じたものの、未だ真意を問い質していない事と、安全に過ごせる場所がそこしかないという点もあり未だ使用することになった。
文乃は木戸を探しに行きたそうにしていたが、夜遅く少女一人を出歩かせる訳にもいかず、明日確認しようと説得した後、話の流れでウチに泊まることになった。
万が一木戸が遅くにやってきた場合と、家に帰っても誰もいないという文乃の環境も考えてのお泊まりだ。
『えっウチに泊まんのヤタヤダ兄と妹の聖域である我が家に泊まっていいのはビッチと奈々瀬さんと葉月さんだけって決まってるんだい!』
アサちゃんだけが物凄くゴネていたが、奈々瀬が説得をすれば最終的には折れてくれた。
なんだかんだではあるが、アサちゃんも文乃の境遇には思うところがあるのだろう。
文乃をチラ見しながら何事か呟いた後、あの人見知りのアサちゃんが自分から話しかけに行く程には気にかけているようであった。
そんな事があった翌日。
早朝は文乃の甲斐甲斐しいお世話による快適な目覚めと、高級旅館に迫るほどの豪勢な朝食という想定外なイベント――本人曰く、一宿一飯の恩との事――を迎えた。
どこでこれほどの技術を身に着けたのかと聞けば、全て母親から仕込まれたことらしい。
一体文乃の母親は何者なのかと聞きたくなったが、既に亡くなっているという話を昨日の時点で聞いていた為深くは聞けなかった。
……彼女の母について、どうしても一つだけ気になることがある。
ただそれは、文乃が語ってくれるまでは尋ねるべきではないだろうと、そう考えている。
俺は気遣いの出来る人間だから、ズケズケと他人を過去に踏み込まない――と。
――いや、これは言い訳だ。
本当は……それを尋ねるのが怖いのだ。
聞いたが最後、俺の気持ちが変わってしまいそうな……彼女の意思に負けてしまいそうな、そんな気がしてならないから。
学園に到着した。
文乃を連れて登校したということを除いて特に変わらない時間を過ごし、文乃とは玄関で別れたあと昼休みの時間まで特に何事もなく過ごした。
昨日のことが心配だったので木戸の姿も探してみたが、クラスを覗いた限りでは見つからない。
今日は休みなのだろうかとクラスの男子に尋ねると――――
「木戸? あぁ、何でも体調不良って聞いたぜ?」
……そういえば、そんなことを言っていた。
昨日の大感射精祭にも体調不良で参加出来ないと――。
それが悪化して、迎えに行く所では無くなったと考えるなら……あり得ない話では無いか。
ただあの木戸が連絡を寄越さないレベルになると、かなり不味い状況なのではないだろうか……。
「絶頂した! CERO-Aに伴いデザイン修正と言いながらタイツ追加というフェチ要素を増やす昇天堂に絶頂した!」
「お、絶頂先生がまた絶頂してる」
性行為をしていない女子たちを、糸色 頂先生の叫び声を隠れ蓑にしながらその場を立ち去る。
先程の話を聞いて少し不安になったが、こうして欠席の連絡がある以上悪すぎるということは無いだろうと無理矢理納得させ、昼休みの購買戦争を終えた後秘密基地に向かう。
するとそこでは、奈々瀬がT-A-Eを机の上に広げ何かの作業をやっていた。
「ここがこう、で……ここを捻って……んん?」
「よう、お疲れ。何してるんだ?」
「んー……? あぁ淳、ちょっとスパイアイテムの使い方をね……」
「どこか分からないものでもあるのか?」
「それもあるけど……これ使ってるのって主にアタシだし、構造まで知っておいた方が何かの役に立つかなって……」
ということらしい。
実は、という程でも無いが。
意外なことに奈々瀬はこういった機械の類が滅法苦手なのである。
それこそ、テレビのリモコンの使い方が分からないレベルで。
元々T-A-Eは俺たちが性触者から逃げることを目的に作ったものだ。
だが水乃月学園の厳しい荷物検査*3で怪しまれないようにするには、アダルトグッズを模すしかなかった。
ただ当然大量に持ち歩けば怪しまれる――しかし、学園一のビッチと誉れ高い奈々瀬ならば怪しまれることはない。
故にT-A-Eを主に使用するのは奈々瀬なのだが……しかし彼女は機械音痴。
そんな奈々瀬がT-A-Eを過不足なく使用するためには、こうして取扱説明書(製作:アサちゃん)をうんうん言いながら一生懸命覚えないといけないわけだった。
いかにも奈々瀬らしい、真面目な悩みである。
「……それなら、俺が教えてやるよ」
「え……ホント?」
「あぁ、そのT-A-Eを作ったのは俺だから詳しい説明も出来るしな……勿論、お前が良ければだけど」
「それは……えっと、じゃあ……お願いしても、いい?」
遠慮と期待が入り混じったような表情を浮かべる奈々瀬。
いつも家事代行のお世話や戦闘での斥候役として活躍する頼もしい姿か、ビッチとして自信ありげに振舞う姿しか見ていなかったが。
奈々瀬もこんな表情するんだな――そんなことを今更ながら知る。
そういえば同い年なんだよな、俺と奈々瀬って。
……本当に今更すぎるな。
「……よし、任せておけ! お前にはいつも世話になってるから、ここらで借りを返さないとな」
「もう、急にどうしたのよそんなに意気込んで……」
「いいからいいから、じゃあまずはこれからだな――」
俺はそう捲し立てながら奈々瀬の横に座り、手近にあったアイテムの説明を始める。
先程の勢いの下、上手く説明しようと思っていたのだが――自分で思ったよりも使う方法は難しく、説明に手間取ってしまう。
おかしいな、自分で作ったはずなのに……いや、落ち着いてやれば分かるはずだ。
「あぁ何だこういうことか……ほら、ここをこう回せばいいんだよ」
「へぇー、そういう構造になってたんだ……」
少し手間取ったが、それほど時間をかけずに説明をし終える。
そうして奈々瀬の方に向き直ると、どこか微笑ましそうな笑みを浮かべる奈々瀬の姿が。
……その笑みに、少しだけどきりとして。
「やっぱり男の子はこういうのが得意なのねぇ……ふふっ」
「ま、まぁ俺はオナホール製作のプロであり、芸術家だからな……!」
「そこを褒めたつもりはなかったんだけど……」
嘯いて誤魔化そうとするも、どこか嬉しさを感じるのを隠せないのであった。
そうして暫く奈々瀬と話していると、秘密基地の入口であるエレベーターの扉が開く音がする。
誰か来たのかと目を向けると――――
「はいどうもー! ミサミサでーす!」
「……みさみさの舎弟1号……むべむべで、ございます……」
「マヂミサラブリーでーす! ミサッ☆彡」
「むべ……☆」
「…………」
変なのと、変なのに付き合わされる可哀想な文乃の姿がそこにはあった。
「文乃……付き合う人間は選んでいいんだぞ……?」
「文乃は平気でございます……文乃は、強い女ですから……」
声震えてるじゃん……
「むぅ、やっぱり私には気付いて貰えないんですね……では! オイ童貞インポ野郎、何シカトしてんだあぁん?」
「なんだァ? てめェ……」
「ひえっ、インポ野郎さんめっちゃ怒ってますぅ……!? そう呼べって言ったのはインポ野郎さんなのにぃ……」
「テメェ!!」
二度ならぬ三度までも――!
「はいストップ」
「ぐえっ」
首根っこを掴まれ、潰れた蛙のような悲鳴が漏れる。
「……美岬、呼び方普通に戻していいわよ」
「え、でもイン……あ、はい戻します」
「淳もいい加減その顔止めなさいよ……美岬さえ引いてるわよ」
「クッ――命拾いしたな!!」
「これ、私が悪いんですか……?」
「……」
厄介毎に巻き込まれた文乃に問いかける美岬だったが、文乃は目を逸らし何も答えないのであった。
生徒会。
よくアニメや漫画等のフィクション作品では「〇〇部の予算を△×部に回します」や、「あなた達の部活は定員に足りていないので、来月より廃部です」といった、生徒会が様々な権限を生徒たち及び学園側に振りかざすシーンが印象的なソレ。
現実にはそんな生徒会は存在しないというのは周知の事実であるが……ここではそんな現実の話をしたいわけではなく、水乃月学園の生徒会についての話だ。
水乃月学園の生徒会はまさしく、そのフィクションで登場するような権限を持っている。
というのも、水乃月学園の生徒会及び風紀委員――すなわちSSは、公益社団法人SHOの下部組織であるためだ。
正式名称をSHO Student、もしくはStudent of SHO。
青藍島を統治する組織の一つである以上、島の中では一定の権限を持っている。
それゆえ学園内部の自治もある程度認められており――とある世界線では性帝と呼ばれる存在によりSSの権力を強め、一部上位組織のSHOにまで発言出来るほどというのだからその影響力はさもありなんといった所か。
場面はNLNSの秘密基地から打って変わり、水乃月学園の生徒会室。
その場所では現在、SSビッグスリーの3名がある件について話し合っていた。
「……それじゃあ、トーカちゃんのとこにも来てないの?」
そう問いかけたのは、水色のくるくるパーマに刀を腰に下した少女。
SS一番隊隊長――女部田 郁子。
「えぇ、今朝も起こしに来てくれるはずだったのだけど……もし礼が気付いてなければ今頃私は大遅刻ね」
郁子の言葉に返事をしたのは、SS代表兼水乃月学園生徒会長の冷泉院 桐香。
遅刻しかけたにも関わらず余裕そうな笑みを浮かべる桐香の姿に、もう1人の少女――風紀委員長の糺川 礼は諦めの表情で補足する。
「起きたらリビングに誰も居なくてな……本当に慌てたよ……。いつもなら朝食と桐香様の準備が終わってるはずなのに何一つ進んでないから……って、今言う事じゃなかったな」
「いやいいよ……凄く大変だったんだろうなって分かるから」
『桐香様、いーしてください。いー』
『いー……』
『はいゴシゴシゴシゴシ……じゃあ次はうがいですよ桐香さまー』
『くちゅくちゅ……』
『桐香様?』
『……ごくん』
『あっ飲んだ! 駄目です桐香様ぺっです、ぺっ!』
『……れい、
『こまっ……歯磨き粉を飲み込むなんて、宇宙飛行士ぐらいなんですよ? 桐香様は宇宙飛行士じゃないんですから、ね?』
『そんなん当たり前やんかぁ……なに言うてんねん……』
『…………!!』
「……それより、やっぱり誰も知らないってことでいいんだよね」
「あぁ、仲の良かった連中にも当たってみたが全員知らないみたいだった」
「礼、あなたが言っていた彼女の用事についてはどうだったのかしら」
「それが、ある生徒と会う約束をしていたようなのですが……ここに来る途中、その生徒から直接『約束の時間に来なかったので、何か知らないか』と聞かれまして……」
「つまり昨日の業務が終わってから、その方たちに会いに向かう途中で何かがあった――と」
様々な予想が桐香の頭脳を巡るも、情報が足りていない現状では例え私生活以外で優秀な頭脳を持つ彼女でも答えは出ない。
今の桐香に出来るのは、最悪に備えて行動するということだけ。
「如何しますか、桐香様」
「……暫くの間は体調不良ということにしましょう。懸案事項が複数ある中、皆を不安がらせる情報は極力抑えます」
「それは……よろしいのですか? 最近の行方不明者の件もありますし、それに彼女のことは桐香様が一番……早く見つけた方が――」
「――レイちゃん、そこまでだよ」
「あっ――も、申し訳ありません桐香様……! お気が回らず、出過ぎた真似をいたしました」
「……いいのよ礼、心配なのは皆一緒だもの」
ニコリと、気にしていないと言うかのように微笑む桐香。
その笑みは礼から見てもいつもの様子と変わらないものに感じたが、彼女が本当はどう感じているかは礼には分からない。
彼女なら今の表情からでも読み取れるのだろうか――そう思うも、当の本人が居ない以上考えても仕方の無いことだと頭を切り替える礼。
しかし、胸にしこりが残ったかのような気分になるのもまた事実で。
「この件に関しては私の方で調べます。礼と郁子はいつも通り訓練と性指導に専念してもらっていいかしら?」
「はっ――承知しました」
「了解」
しかしそれを表に出すほど礼も落ちぶれてはいない。
例え普段ヒナミヒナミとオギャっていようが、隙あらば特撮語録を並べ立てようが、彼女はSSの風紀委員長だからだ。
桐香の言葉を最後に二人は生徒会室を退出する。
退出の一瞬、郁子がチラリと振り返り桐香を見やるが――それに対し桐香はニコニコと手を振って応えるのみ。
それを最後に、郁子も礼に続いて部屋を出た。
部屋に残った桐香はそれを見届けると、先程までとは一転ぼうっとした雰囲気へ移り変わる。
身じろぎとせずじっと黙っている姿は、傍から見れば精巧な人形のようにも見える。
「……」
「ねぇほしいのぉ……甘くて濃厚な、たくさんの雛あられぇ……♡」
「ははは、食いしん坊さんだなぁ。ようし、じゃあお望み通り俺の雛あられをたらふく食わせてやるよ! 俺のお内裏様チンポで溜まった厄も流してやるから菊の花上げて孕めオラ!」
部屋の外からはひな祭りックスに精を射精す男女の声が聞こえてくる。
それすらも聞き流していた桐香だが――雛あられという言葉にふと、頭の片隅にある記憶が思いうかぶ。
『桐香が初めて来た時も思ったけど、桐香って着物が似合うよねぇ。お雛様みたいでホントにかわい――え、お雛様が何かって? ほら、ひな祭りで飾る人形の……ひな祭りをしたことがない? えっマジで』
青藍島にやって来てまだ一年も経たない頃。
ひな祭りをしたことがないと話す桐香に素で驚いた後、ならば私が体験させてあげねばと奮起していた彼女。
彼女は子供が成長し家で飾ることも無くなったと話す島の老人からひな壇を譲り受け、ほぼ身内とも言えるSSの先輩や同級生を呼べるだけ呼んで臨んだひな祭り当日。
精一杯楽しんでもらいたいと思っていた彼女であったが――桐香の「お雛様の顔が怖い」の一言で撃沈。
桐香としては、無表情な顔が怖いくらい自分に似ていて共感出来ますねぇという気持ちの一言である。
その内心をも理解はしていた彼女であったが、分かっていてもそれはそれなんだよぉと机に項垂れていたのを桐香は今でも覚えている。
そして、今思えばあれは桐香のことを皆に少しでも理解してもらう為だったとも。
そこまでを思い出し――桐香はいつもの笑みを浮かべると、傍に置いてあった書類に手を差し伸べる。
「……さて、今日は仕事をいつもより早く終わらせないと――はいこちらSS代表兼水乃月学園生徒会長の冷泉院 桐香です♪」
速読で資料を読みながら、二重三重にかかってくる電話の受け答えを行うというマルチタスクに特化した彼女でなければ不可能なスピードで仕事をこなす桐香。
そのスピードでさえ、いつもなら日が沈むかどうかの時間まで続くのだが――――
「……これで終わりですね」
――彼女が仕事を終えたのは、未だ部活動の生徒が残っている時間帯。
グラウンドを見れば、礼が新兵を相手に指導を行っている姿が見える。
「さっさと走れ新兵ども! まだグラウンド45周だぞ! 喉が渇いたなら互いの愛液と精液を吸ってでも走れ! そうすればいつまでも精力が湧いて走れるだろう!?」
「ずぇ……ずぇ……SSマジヤバイ……訓練もあの教官も何言ってるかウチにはサッパリ分かんねぇ……!」
「SSの訓練がこんなに厳しいなんて、僕のデータに無かった……!」
それを眺め――桐香は考えを纏めるために作成した資料を持って、生徒会室を立ち去る。
その資料には直近発生している青藍島の行方不明者の詳細や、発生地点が日付順で記載されていた。
そしてページの最後には――
『木戸 葉月』
その名前が、書かれているのであった。
ハヅキドリくん視点は淳奈々の尊さで消えたハメ。