抜きゲーみたいな島に住んでるTS娘はどうすりゃいいですか? 作:パチドリくん
時は過ぎ、翌日の放課後。
文乃が俺たちと行動を共にしてから、二日が経過した。
困難だと思われていた文乃捜索という目的も達成され、やる事が無くなった俺たちは待ちの状態とならざるを得なくなっていた。
「いっせーの、いち! ありゃ、外れちゃった」
「次は私か……指スマにィィぃいい!! はい勝ちー! アサちゃん一抜け格付け完了対戦ありがとうございました」
「わっ、わわっ!? もう上がっちゃった!?」
「ふっ、これからは私が上でわたちゃんが下というわけだ……上の言う事は絶対。というわけで、冷えた麦茶を持ってこーい。キンッキンに冷えた麦茶を持ってこぉーい」
「お茶飲みたいの? 分かった、ちょっと待っててね!」
とてちて冷蔵庫のある部屋の方へ駆けるわたちゃん……先輩。
「P.S.絵の好みと性癖が一致するイラストレーターはとても貴重」
「それは概ね同意だが……何してんの?」
「ん? 暇つぶしにわたちゃんと指スマ」
「懐かしいな……けどなんか掛け声違くなかった?」
「あぁいや、最初は合わせてたんだけど普段と違う言い方でやってると段々違和感が凄くなってきてさ……“あれこの遊びの名前何だっけ?”ってゲシュタルト崩壊してきて……」
「そんなことある?」
「ズルッ、ズルルルッ、ほふほふ……でも本当に懐かしいですねぇその遊び。私も昔やる相手が居なかったので周りの人を真似して一人でやってましたよ」
カップ焼きそばを啜りながらそう語るのは畔。
いちいち悲しい過去が付いて回るのは最早恒例なのだろうか。
「アタシも小さい頃はやったわねぇ。アタシの周りでは“いっせーのーせ”って呼んでたけど、地域によって色んな名前があるのってちょっと面白く感じるわよね」
「俺はアサちゃんと同じで指スマだったなぁ、畔は何だった?」
「私は“チンポ”って呼んでましたね!!」
「「「…………」」」
絶句。
「しかしこの遊びには壁尻オブジェ同様呼び方による派閥争いがあってですね。最大支持を得ているのが親指を男性器と見立てる男性器派閥ですが、その中でも“チンポ派”と“チンコ派”に分かれて争っており、それに付け込んで勢力拡大を狙う“クリトリス派”、立てた親指は勃起した乳首だと言い張る“乳房派”など様々な派閥が居て――」
不味い、変なスイッチ踏んだぞ。
そういえば畔は青藍島の生まれだった……クソ、ただの世間話と油断した。
というか何で畔は楽しそうなんだ。
一応反交尾勢力の一員なんだぞ?
もう少しこう……何というか、恥じらいというか……!
と、とにかく畔を止めなければ――と、そう考えたタイミング。
救いの神が、帰ってくる。
「お待たせ! ごめんね麻沙音ちゃん、麦茶無くってアイスティーになっちゃったけどいいかな?」
「――っ、わたちゃん!」
「おおっ、どうしたの橘くん? すごい慌てた顔してるけど……大丈夫?」
「大丈夫です。それよりアサちゃん、アイスティーでもいいよな?」
「えっ、うっうん……」
わたちゃんからアイスティーを受け取り、それをアサちゃんへと渡す。
それを見たわたちゃんのキョトンとした顔が、俺の焦りを解してくれる……――が、ここで一つ疑問も生まれる。
そういえばわたちゃんも青藍島出身だったよな、と。
「……わたちゃん先輩、一つ聞いてもいいですか?」
「先輩……! うん、いいよいいよぉ! 先輩に何でも聞いてよ!」
「さっきの指スマ……親指を立てて数を当てる遊びのこと、何て呼びます?」
「ゆびすま……あぁ“いっせーの”のこと? いっせーのはいっせーのじゃないの?」
その表情に嘘や偽りは見られない。
良かった……青藍島でもロリの純真は守られていた……!
「ロリじゃないですけど!」
「しまった――心の声が」
「わたちゃん。この遊びの名前はチン――」
「麻沙音!!」
「オラァ!!」
「あぁぁ焼きそばが!!」
悪の魔の手からわたちゃんの純真は守られた。
やったよ――父さん、母さん。
俺は子供を守れる強い大人になりました。
だから、安心して天国から俺たちのことを見守っていてください。
「――皆さま、遅くなり大変申し訳……」
「セーフ! 3秒以内に拾ったのでセーフです!!」
「駄目よ美岬! 3秒ルールは迷信だし、床に落とした時点でそれはもうアウトなのだわ!」
「だとしても!!! 女にはやらねヴぁならない時があるんです!!!!」
「ところでわたちゃん先輩、いっせーのは誰から教えてもらったんです?」
「え? うんとね、確か礼ちゃん……基地に来る途中にも会ったSSの子だよ!」
「む、べ……?」
「……無理に理解する必要ないぞ文乃」
「そう、なのですか……? そうなのですね……」
遅れてやってきた文乃を、アサちゃんだけが気遣うのであった。
「さて、全員集まったことだし作戦会議を始めよう」
文乃を含めたNLNSメンバーがタッチパネル台の周囲に集まる。
「皆も知っての通り、文乃が仲間になってくれてから2日が経った。その間俺たちは“彼”からの連絡を待っていた」
「……」
「だが、未だ連絡は来ない。この状況に対して今後どうするべきか決めようと思う」
そう皆に伝えると、各々が考える姿勢へと移る。
とはいえ内容自体はそう難しいものではない。
間を置かず、作戦立案の要である奈々瀬が口を開く。
「まず初めにおさらいをしておきたいんだけど……アタシたちの目的はドスケベ条例の崩壊――即ちドスケベ条例を無くすこと。それを成すには、アタシたちに基地を提供してくれたお爺さんの依頼だった“琴寄 文乃”と呼ばれる少女を探し出して保護すること。ここまではいいわよね」
「問題無い、続けてくれ」
「そして何故文乃の保護が条例の崩壊に繋がるのか……それは、文乃がドスケベ条例の産みの親である仁浦県知事の隠し子だったから。もし戸籍の無い文乃を世間の目に晒せば、それは実の親である仁浦県知事の責任問題となり、ドスケベ条例もやり方次第で無くすことが出来る」
「っ……」
「……文乃、俺は絶対に君を売ったりするような事はしない。例え文乃が県知事の娘であったとしてもそれは関係ない。文乃も俺たちの仲間なんだからな」
表情を僅かに固くした文乃を安心させようと、俺はそう話す。
確かに彼女はドスケベ条例崩壊の鍵になる存在だ。
しかしそれは彼女が望んで手に入れた訳ではなく、むしろ被害者と言ってもいいもの。
そんな彼女の犠牲の元に条例崩壊を成し遂げられた所で俺は嬉しくなんてないし、必ず後悔するだろう。
だから、その手段だけは選べない。
「……とまぁ、リーダーがこの様子だからその案は却下。アタシとしてもそんなやり方はしたくないしね」
「文乃ちゃんは今まで大変だったんだから、これからはいーっぱい幸せにならないと。お姉さん的にも橘くんに賛成だな!」
「私もです! だって文乃ちゃんはもう私の相方で、むべ友ですからね! ねっ文乃ちゃん?」
「むべ……」
「むべハラじゃん……」
そして仲間たちは、そんな俺の甘い考えに協力してくれている。
元々俺の考えは事前に伝えていたが――というか、言う前に察してくれていた――どうやらこの二日間で、それぞれ文乃と関わってより彼女を守らねばという気持ちが強くなったらしい。
気持ちはよく分かる。
文乃は俺たちの中でも最年少であり、儚い雰囲気を持った優しい少女だ。
そんな彼女を放ったままにしておくと、どこか泡沫の如く消えて無くなりそうな――そんな気がしてならないのだ。
「さぁ文乃ちゃん、私の手を取って……? 共に
「島一のデブを決める大会なら優勝間違い無しだろうね」
「ふぐぅ!?」
畔は……うん……。
段々畔の扱いが何となく分かってきた気がする。
悪い奴では無いのだけれど……さっきのも言い方はアレだが、文乃と一緒に居る理由を彼女なりに考えた故の発言なのだろう。
そうでなければただのキチ……いや、やめておこう。
「そういうわけで、文乃を犠牲にせずに条例を無くす方法が必要になったわけだけど……正直、これという手の打ちようが見つからないのよね」
「……やっぱり、奈々瀬もそう思うか?」
「そりゃそうよ。そもそも条例を無くすのもアタシたちがやるんじゃなくて、パトロンのお爺さんがやる話だったのよ? 一介の学生であるアタシたちがSHOなんていう大きな組織を潰せる方法なんて、そう簡単に見つからないわよ」
「だが彼は、文乃がいれば共存を成し遂げられると言っていた。それに文乃を守ってあげて欲しいとも。そんなこと、文乃の事情について知らなきゃ出てこない言葉のはずだ」
葉がかつて俺の前で語ったことは3つ。
共存を望んでいること。
文乃がいればそれが叶うこと。
そして、文乃を守ってあげて欲しいということ。
俺より長く反交尾勢力として潜んでいた彼が、実現させる算段も無くそんな理想を掲げるわけがない。
「文乃を犠牲にしなくて済む方法はあるはずなんだ。それを彼に聞けたら良かったんだが――」
それこそが俺が葉に会いたい理由。
だが、それとは別にもう一つ。
……一人で戦っている彼のことが放っておけないという気持ちもまた、俺の中にはあるのだ。
「連絡が返ってこない以上、俺たちもただ待ちぼうける訳にはいかない。資金も無限にあるわけじゃないし、早急な悲願達成の為にも今一度活動方針を決める必要がある――そこでなんだが」
故にこそ、俺はある考えを思いついた。
それは――――
「……チームを二手に分けて行動する、ねぇ」
「あぁ、幸い文乃も仲間になってくれたおかげでNLNSも人数が増えた。今まで通り全員で行動するのも悪くないが……情けない話、いざという時に俺が全員の指揮を執れるかが分からない。少なくとも、もう少しこの人数に慣れるまで待って欲しいというのがある。そして何より、情報収集には数の利を活かさないとな」
「兄が珍しく理に適った作戦考えてる……」
「おい」
何だその意外そうな顔は。
「いやだっていつも作戦考えるのは奈々瀬さんで、兄のは考え無しの行き当たりばったりじゃん……わたちゃんとそこのブタ娘助けた時とか」
「ブヒッ!?」
「あ、あれはつい身体が――じゃなくて、そうしないと間に合わないと判断したからだし……結果的にはそれで良かったし……」
「結果良ければ全て良しで毎回上手くいくと思ってんのか?心配するこっちの身にもなれってんだまぁでも今回珍しく頭を使えたメガネザルな兄のこと褒めてやるから妹をもっと構っていいぞついでに頭撫でてよしよしして夏バテでしんどい妹の為にアイス買ってきてぇ……」
「構ってもらうのにお兄ちゃん貶しちゃめーでしょ。……ったくほら、これでいいか?」
「何だかんだで妹に甘い兄、好き……!」
我がままばかり言う生意気な妹の頭を抱き寄せる。
全く、失礼可愛い妹め。
俺はいつも真面目に考えてるんだぞ。
……ちょっと勢いに任せ気味なだけで。
「あはは……。えっと……それで橘くん、二手に分けるって言ってもどういう風にするの?」
「わたちゃん先輩……そうですね、取り合えず考えているのは“捜索班”のチームαと、“打倒ドスケベ条例班”のチームβに分けようと考えてます」
「おぉ……あるふぁに、べーた? 何だかいつもより本格的だな! カッコイイな!」
いつもより……いつも本格的なつもりだったんだけど……。
とはいえ、それを口にしたら更に呆れられそうな気がしたので口を噤む。
時には思っていても言わないことが人生には重要なのだ。
「…………」
「……俺の顔に何かついてます?」
「えっ? あっ、うぅん何でもないよ」
「そうですか……」
そうして黙っていると、何故かわたちゃんからじっと視線を向けられる。
ちらちらと俺の顔を見ては、ぼそぼそ唸りだすわたちゃん。
何だかよく分からないが……それはさておき。
「やる内容は名前の通りだ。チームαは連絡の取れない葉を捜索することを目的に、チームβは文乃のこと抜きで条例を打倒する為の情報収集がメインとなる。人選をどうするかだが――――」
「……ねぇ、兄」
「ん? どうしたアサちゃん」
「その…………葉って人を探すのは、私に任せてもらっていい?」
アサちゃんはそう言うと、真面目な顔でこちらを見つめてくる。
そこには先程までの甘える姿や、いつものダラダラとした
妹が俺のことを“お兄ちゃん”と呼ぶ時の――本気の気持ちを示す時にしか見せない表情だった。
「それは……いや、俺としてもアサちゃんに頼もうとは思っていたが……どうしてそんなことを聞くんだ?」
「あ……いや、別に深い理由は無いけど……」
作戦行動の一つとして、俺はIFF*1を活用して葉を探すつもりだった。
そしてそれは、IFFを開発したアサちゃんに任せるのが適任。
故にこうして本人がやる気を見せている状況は、決して悪い事ではないのだが……。
「――橘様」
「っと、今度は文乃か。どうした?」
「……差し支えなければ、私も麻沙音様とご同行させて頂いてもよろしいでしょうか?」
「アサちゃんと?」
頷く文乃。
ふむ……文乃がわざわざお願いしてくるとは。
少し意外だったが、歳が一番近いのも麻沙音だし、チームに入ったばかりの文乃にとっては出来るだけ気の合う人物と一緒に居たいのかもしれない。
昨日もアサちゃんと色々話してたみたいだし……ん?
待てよ、ということは――――
「あのコミュ障ぼっちで人見知りのアサちゃんに、後輩が出来るかもしれない……!?」
「……?」
「……分かった。むしろ俺からもお願いするよ、ぜひ一緒に居てやってくれ!」
「ありがたく、存じます……?」
アサちゃんは幼い頃から人見知りだったせいで、今まで友達と呼べる人物が殆ど居なかった。
青藍島に来てからは、イジメのせいで人見知りがより強くなってしまい東京に戻った頃にはもう家族以外の誰とも付き合おうとはしなかった。
それまでに友達が全く居ないという訳でも無かったが、それは俺たちが青藍島に来る前の……今ではもう、会う事の出来ない相手だ。
今では人見知りもある程度緩和され、NLNSメンバーとも良好な関係を築けている。
だがメンバー全員がアサちゃんより年上。
本人があまり上下関係というものを気にしない性格とはいえ、年下なりの遠慮というものもあるだろう。
しかし文乃が居れば……立場が一番近い麻沙音の友達になってくれるばかりか、甘えてばかりの麻沙音に先輩の自覚を芽生えさせる要因になるかもしれない。
「あのアサちゃんに後輩が……父さん、母さん。俺は遂に二人が死ぬ前に残した約束を一つ叶えることが出来るかもしれない……!」
「……あんがと。取り合えずあのアホな兄はほっといて……んで、そういうつもりで良いんだよね?」
「はい……微力ながら、お力になりたく存じます」
「そ……ならよろしく。あっ、それはそれとしてアサちゃんの妹ポジションだけは譲らねぇからな……!」
「承知いたし……ぽじしょん……?」
気が付けばもう二人だけの空間を作り出している。
たったそれだけのこと、それだけのことだと言うのに――嬉しくて、愛しい。
優しい顔で見つめてしまうほどであった。
「アンタ何泣いてんのよ……」
「うるさい。俺は今、猛烈に感動しているんだ。アサちゃんの成長を……!」
「この兄馬鹿は……はぁ、まぁいいわ。取り合えずアサちゃんと文乃がチームαになるわけね……うちの中でも最年少二人だから、あともう一人ぐらい付けたいとこだけど……」
「ずびっ……う゛んっ! それもそうだな……じゃあ――」
「奈々瀬しゃんでお願いしましゅ!!!!」
「うわっびっくりした」
「んひっ」
耳元でいきなり大声を出すのはやめて欲しい。
先程までと打って変わって、鼻息を荒くしながらフスフスと声を荒げる我が愚妹。
その姿に近くにいた文乃までもが困惑していた――がそれはそれとして。
「却下だ」
「
「奈々瀬はチームβの予定だ。情報収集もそうだが、βは作戦も考えて貰う必要があるからな」
俺はあらかじめチームの人員をαにアサちゃん、βに奈々瀬を宛がうつもりだった。
理由は先ほど言った通りではあるが、まぁ単純にチームβはNLNSの頭脳派でもある奈々瀬が適当だろうと考えた為である。
「あー……えっと、ごめんねアサちゃん?」
「そんな……妹は奈々瀬さんとの作業の合間に訪れるボディタッチや奈々瀬さんと同じ部屋の空気を吸ってナナセニウムを摂取しないと死んじゃうんだぞおい分かってんのかこのクソ童貞」
「はいこれ奈々瀬の作った弁当。本当はアサちゃんの分だけど要らないなら俺が貰おうかな」
「お兄様ぁ~ん♡ わたくしめにどんな指示でもお出しくだしゃいませ~♡」
これほどまでに熱い手の平返しという言葉が似合うのもないであろう猫なで声であった。
「あっ、じゃあ私が麻沙音ちゃん達と一緒に居てあげますよ!」
「畔さんは嫌だ……畔さんは嫌だ……畔さんは嫌だ……ッ!!」
「そこまで嫌がることか……?」
この二人の相性がよろしくないのは知ってはいたが、ここまでアサちゃんに拒絶されると畔が少し心配になってくる。
うちの妹のせいで畔が気を悪くしたら流石に俺も何か言わざるを得なくなるし、仮にそうなったらチームとしての仲も険悪になってしまうだろう。
ただでさえ反交尾勢力という、この島で数少ない価値観を共有する仲間なのだから仲良くして欲しい……そう思い、畔に視線を向けたその時。
「ミサ――」
「グリフィンドォォオオオル!!」
「すりざりんっ!」
気が付けば、イタズラしようとアサちゃんの背後に回った畔の顎にアサちゃんの
「――いや何してんの!?」
「ぐっ……いいアッパー貰っちまいました……」
「頭突きだけどね……? いやそれより顎大丈夫か? うちの妹手加減って物を知らないから……」
「あっいえ、私は大丈夫です! それよりも麻沙音ちゃんの方が……」
「うごごご……」
「何やってんだコイツは……」
……攻撃をした側の方がダメージが大きいという事実に、何となく呆れてしまう。
いや最初に仕掛けたのは畔だから、ある意味これはアサちゃんの方が被害者なのか?
とはいえ攻撃したのはアサちゃんだから自業自得とは言えるのだが……こうも畔がケロリとしているとさっきまでの不安が何だったのかと言いたくなる。
……が、それはそれとして一応聞いておかねばならない。
「……畔は、アサちゃんと仲良くなれそうか?」
「えぇ勿論! ……とは言いづらいですが……でも、麻沙音ちゃんと仲良くなる為なら例え火の中水の中アナルの中! 奥へ進む勇気が無ければアナリストは務まらないんです!」
「アナルとか言わなければ尊敬出来たんだけどなぁ」
いや本当に。
今日だけでアサちゃんに何度も罵倒されているのに、それでも仲良くしようという前向きさは尊敬の念さえ湧いてくる。
ほんの少し言動がアレなのが全てを台無しにしているのだけれども。
「何なんだよお前よぉ……無駄にデカイその胸は飾りかよ何で顎だけそんな硬いんだよぉ……!」
「運が悪かったですね……今の私はカロリーを摂取した後のパーフェクト美岬様なんだぜ!」
とはいえ、畔も良い奴には違いないのだ。
アサちゃんが邪険にしつつも完全に拒絶しないのは、畔の行動の根底には優しさがあるからなのだろう。
そんな彼女だからこそ、アサちゃんとも仲良くなって欲しいと――俺はそう素直に思える。
だから――――
「……チームαには、畔が入ってもらっていいか?」
「え゛っ」
「いいんですか!?」
「あぁ、畔ならその自慢の脚で島全体を回って葉を探せるしな。いざという時は、その脚で二人のことも頼む」
「〜〜〜っ、ラジャラジャです! お二人は私にお任せくださいとも! ……麻沙音ちゃん、文乃ちゃん! 二人とも、よろしくお願いしますね!」
「……よろしく、お願いいたします」
「…………」
花の咲いたような、満面の笑みを浮かべる畔。
どんなに暗い場所でも、まるで太陽の如く皆を明るく照らしてくれるような――そんな、見る者を励ましてくれる姿にどこか心が温かくなる。
道は険しいかもしれないが、二人には是非とも仲良くなってほしいものだ。
「美岬ちゃんがあるふぁとなると、私と橘くんはチームべーたでいいのかな?」
「そうですね、それで大丈夫です。……頼りにしてますよ、わたちゃん先輩」
「!! う、うむっ、どーんと先輩に任せたまえよ!」
最後にチームが決まっていなかったわたちゃんは、フンスッと小さい胸を張る。
頼る胸は皆無に等しかったが、不思議とその姿を見ていると元気を貰える。
「はぁ、無い胸を張るわたちゃん可愛い……っ」
奈々瀬も……まぁ、今はこんなだが頼りになる存在だ。
いつも作戦立案や斥候としての役割を担っている彼女には負けられない。
チームのリーダーとして、いつまでも情けない姿を見せる訳にはいかないのだ。
「決まりだな。――それでは“捜索班”チームαと、“打倒ドスケベ条例班”チームβそれぞれの健闘を祈る。NLNS、出陣だ!」
「……りょーかい!」「ラジャー!」「はいっ!」「お、おー……」
そして、号令を上げたその瞬間こそ。
俺たちの中で新たな結束が誕生し――――運命をともにする仲間が揃った瞬間なのであった。
一方。
「麻沙音様……?」
「…………」
「し、死んでる……!」
この世の終わりみたいな表情をしている妹の姿が、そこにはあった。