抜きゲーみたいな島に住んでるTS娘はどうすりゃいいですか? 作:パチドリくん
俺がこの世界に生まれて5年、俺はここがぬきたしの世界であることに気付いた。
生まれてから暫くは目もあまり見えず、ただ流されるままに乳児期を過ごした後に生まれ変わったことによる身の振りようの違いや、周囲の把握などに集中していた為気付くのが遅れてしまったのだ。
ここが年代こそ少し違うものの、以前とほぼ変わらない環境であった日本であること。
二度目の人生に女として生まれ変わり今後の人生目標を考えていた時に、何気なく見ていたニュースで見た青藍島の文字に驚いたのを今でも覚えている。
そこからの行動は自分でもとても早かったと思う。
とにかく今覚えている原作の記憶をひたすらノートに書き写し、現在の青藍島の状況を親のタブレットを借りひたすら調べたりもした。
ここから私はぬきたしの世界に関わることを人生の目標に定めたのである。
とはいえ問題も多くあった。
まず原作開始の年代が分からないこと。
これが分からなければどうしようにもならなかった。
5歳の時に調べた時には仁浦県知事が未だ県知事として働いている事、ドスケベ条例が既に施行されてから数十年経過していることだけは判明したが、もしこのタイミングで原作開始だったら何も出来ずぬきたしの物語は終わっていたことだろう。
しかし幸いにも俺の運はツイていたらしい。
若しくは俺を転生させた存在――存在するのか不明だが――がそうさせたのか、俺の家の近所には「橘」という苗字の家族が一軒だけ存在した。
母に話を聞いてみると、家族構成は父と母、そして俺と同い年の淳之介という男の子と麻沙音という1歳下の女の子が住む四人家族というでは無いか!
その事を知った俺は早速確かめることにした。
母に休日に近所の公園へ出かけようとお願い――この年齢では一人で遊びに行くのを許されなかった――し、それらしき人物を探すことにしたのだ。
公園に着いて母から離れ、周囲を見渡す。
母は他の子供連れと思しき母親と話しており、その中に茶髪で金眼の女性を見つける。
――・・・・・・周囲の人はその女性を愛衣梨さんと呼んでいて・・・・・・これはほぼ間違いなさそうだな。
心の中で軽く安堵する。
もしかしたら凄い偶然で同姓同名家族という可能性もあったが、あの見た目に母親まで名前が一致するとなれば間違いなくぬきたし主人公の橘一家で間違いないだろう。
そうなるとあとは淳之介か
そこには先ほどの愛衣梨さんと呼ばれていた女性に似た雰囲気を持つ男の子が混じっており――
「――ねぇ! 僕も混ぜてよ!」
そう声をかけると男の子たちが一斉にこっちを振り向く。
うおぉそんなに同時に見られるとちょっとビビるが・・・・・・ここで臆してはいけない。
これは今後の人生の目標の行動を決める上で大事なことなのだ。
もっと毅然としなくては。
「えっと、君・・・・・・誰? 僕たち今鬼ごっこしてるんだけど・・・・・・」
「僕は葉月。 ついさっき公園に来たんだけど、その鬼ごっこに混ぜてよ!」
一番手前にいた男の子が話しかけてくる。
少し反応は鈍いが、この年頃の男なら適当に話して遊ぼうと言えばすぐ遊びに混ぜて貰えるから問題無いはずだ。
「へー、そうなんだ。 んー・・・・・・ねーみんなー! 一緒に遊びたいんだってー!」
「いんじゃなーい? 人が多い方が楽しいだろうし」
「いいよー! ぼく幸成って言うんだ、よろしくねー!」
「フッ、入るのは構わないが・・・・・・俺の俊足から逃げ切れなくても文句は言うなよ?」
「うん、いいよ。 よろしく」
(・・・・・・コクリ)
なんか一人5歳児にしては妙なセリフ吐いてる奴が居たが入るのは問題ないらしい。
取り合えず遊ぶ前に皆に自己紹介をしようという流れとなった為改めて名前を名乗る。
「さっきも言ったけど僕は葉月って言うんだ。君たちは何て言うの?」
集まった男の子たちがそれぞれ自己紹介をする。
一通り全員の名前を聞いた所で、淳之介と名乗った一人の男の子の方を見る。
――短い茶髪に金眼、まだ幼いから分かりづらいが、そこそこ整った顔立ち。
この男の子が原作主人公の橘 淳之介か・・・・・・幼い姿だが画面越しで見ていた顔の面影を感じる顔に思わずじっくりと見てしまう。
この可愛い男の子が12年後には拗らせ童貞と化すのか・・・・・・時の流れって残酷なんだな。
と、大分失礼なことを内心で考えていると、見られていることが不思議だったのか
「――・・・・・・?」
こちらを見て、首を傾げる淳之介なのであった。
「ねぇねぇ知ってる? 今日1組に転校生がやってくるらしいよ?」
「えー、ほんとー? 男の子かな、女の子かな? どんな人なんだろ~~?」
クラスの女生徒たちがキャピキャピと楽しそうに話している姿を見かける。
・・・・・・そうか、今日がその日か。
今日は5月の頭、GWが明けてから最初の登校日であった。
やってくるとしたら今日だと予想していたが、間違いはないらしい。
「噂で聞いた話だと、東京からやってきた男の子なんだって! もしかしたら久々に初物が味わえちゃうかもよ~?」
「やだぁ、そんなの想像しちゃったらすぐオマンコ濡れてきちゃうんですけどぉ♡」
「も~早すぎるってば。 ま、アタシも実はこの話聞いてからそうなんだけどね・・・・・・♡」
「そうだよねぇ。 あ、葉月! 転校生の話聞いた? もう楽しみでしょうがないよねぇ。どんな男の子なんだろ~?」
クラスメイト達が私に嬉しそうに話しかけてくる。
「あぁ、そうだね。 楽しみだ・・・・・・色んな意味で凄い人だと思うよ、きっと」
そう返す私。
・・・・・・嘘は言っていない。
楽しみなのは本当だ、今日からようやく物語が始まるのだから。
とはいえあちらが言う“楽しみ”とは少し意味が異なってくるのは仕方がないことだろう。
しかし今日からは忙しくなるな・・・・・・日頃の業務に原作の手助けも加わって体が持つだろうか・・・・・・訓練で鍛えているとはいえ少し対策を考えた方が――
「――・・・・・・はーづーきーちゃん♡」
「ひうっ!?」
ゾクゾクッと耳の辺りが震え、思わず変な声が出る。
き――き――
「急に耳に息吹きかけるの止めてっていつも言ってるじゃん郁子!」
「えー?でも息かけると毎回ハヅキちゃんイイ反応してくれるから面白いし・・・・・・それにひうっ!? だって。 かーわいいんだからハヅキちゃん♪」
「~~~~~ッ!//」
そう言って水色のクルクルした癖っ毛ショートの女の子がこちらを見て微笑む。
こいつめ・・・・・・そういういたずらっぽく笑ってるお前の方が可愛いよ!!
たった今私を辱めたこの女の子は“
この水乃月学園に通う学生の一人で、SSと呼ばれる組織の一番隊、通称:
郁子との付き合いはB等部1年の時からで、同時期に転校してきたという共通点から仲良くなった。
その時から何の偶然かずっと同じクラスだったこともあり、最早腐れ縁と言っても過言ではない程になってしまっている。
・・・・・・初めは原作キャラとしての色眼鏡でしか見れなかった私だったが、様々なことに付き合い、実際にこうして話すと自由奔放ながらも、細かい所に気が配れる良い娘だと実感した。
ある意味郁子は私にとって、この世界の人たちは決して物語のキャラなどでは無く、実在する人物なのだと示してくれたかけがえのない友人なのだが――
「とにかく!もうしないでよね。 こっちは本当に恥ずかしいんだから」
「はーい♪」
本当に分かってるのかコイツ・・・・・・?
郁子とのこういうやり取りはB等部1年からの5年間でもう慣れたものだが、未だに耳に息を吹きかけられることだけは慣れないのだ。
もし次やったら髪の毛の癖っ毛が更に酷くなる呪いをかけてやる。
「ねぇそれよりも葉月ちゃん転校生だって転校生。 楽しみだよねぇ~・・・・・・放課後味見しに行こうと思ってるんだけどぉ、ハヅキちゃんもどう?」
「・・・・・・そうだね、顔ぐらいは見ておきたいかな」
「・・・・・・えっ?! 珍しいねハヅキちゃん。 誘ったあたしが言うのもなんだけどハヅキちゃんの事だから初物に興味ない~なんて言うと思ったのに・・・・・・どういう風の吹き回し?」
「いや、別に深い理由は無いよ。 ――ただ少し気になっただけ。 それより郁子は放課後狙うのもいいけど、礼先輩に出す作戦計画書は忘れないようにね。 この前みたいにまた怒られても知らないよ?」
「やぁんレイちゃんみたいな事言わないでよぉ~。 あたしデスクワーク嫌いなんだもぉ~ん」
嫌いだなんだと言いつつも、優秀な郁子ならそう時間はかからないだろうに――まぁそういう性格なのだと思うしかない。
それにこの後の行動を考えると、出していると困るのはこちらなのだから深く突っ込むことは出来ないしね。
ともあれ今日は転校生――橘淳之介がこのドスケベパラダイスにやってくるのだ。
普段なら転校生などあまり興味が無いが、今回だけは別だ。
ここから約三ヶ月の間でドスケベ条例に抗う少年少女の物語が始まる。
これから起こりうる出来事――原作知識を纏めたノートは今は擦り切れる程読み返し頭に叩き込んでいる。
これまでもぬきたしの物語が問題無く進むよう――水引ちゃんを生徒会副会長に推薦したり――取り組んできた。
・・・・・・私のエゴで他人の人生に口出しするのは腰が引けたが、今更止まることなど出来ないのだった。
――放課後
周りがドスケベ一色の中、私と郁子は並んで校舎の玄関に向かっていた。
転校生が現在どこに居るかは分からないが、靴箱の所で待機していれば会えるだろうという郁子の提案のもと向かう流れとなったのであった。
「待ってぇ♡ まだダメ、ダメなのぉおん♡ 大腸でアクメキめるまでは待機と言ってるのぉおん♡」
「俺のチンコはもう限界まで搾り取られて精液半分流れてるんだよ! セックスはアナルで起きてるんじゃないマンコで起きてるんだ孕めオラ!」
「太さヨシィ♡ 長さヨシィ♡ 硬さヨシィ♡ 3つのヨシで今日も一日イックぅぅうううん♡」
「何だそのヨシは! 大きな膣締めと指差喚呼出来てねぇじゃねぇかそんなんじゃ安全セックスは守れねぇぞ!教育精子出してやるから有難く受け取って孕めオラァ!」
この島の住民はセックス中はとにかく実況を行う風習がある。
それはこの水乃月学園も変わらず、相も変わらず孕めオラのバーゲンセールだ。
画面越しで見ていたあの時はただ笑うだけだったが、実際その光景を目にすると思わず目を塞いでしまいたくなる程に悲惨な光景が並ぶのは中々にクる物がある。
いつもの光景を横目に郁子の様子を伺うと、転校生を探しているのかキョロキョロと辺りを見渡していた。
「ん~まだ居ないねぇ~転校生。 ちょっとだけ待ってみよっか」
「そうみたいだね。 転校生は初日に職員室で書類を書く必要があるけど、特に何も無ければそろそろ来る時間だろうしね」
郁子と雑談を交わしながら、噂の転校生がやってくるのを待つ私たち。
5分ぐらいだろうか、そうやって待っていると廊下の奥からどこか見覚えのある顔をした男子生徒がやってくるのが見えた。
「――――――――っ」
ドクン、と心臓が小さく胸を叩く。
身長は180㎝ほど。
日頃から鍛えているだろうと思わせるガッチリとした体つき。
ちょっと暗めの茶髪に、強い意志を感じさせる金色の瞳。
眼鏡をかけ、少し童顔で整った顔立ちをした男子生徒が物思いに耽るようにこちらへ歩いてきていた。
5年前に見た時の面影を軽く残した男の子は少年、とも言えば青年と呼べるほどに成長を重ねていた。
その事実にどうしようもなく胸が高鳴ってしまう。
私のこの長年の想いが実現出来るのだと思うと感情が高ぶって仕方がない。
・・・・・・落ち着け、初っ端から興奮して失敗なんてしたら今後の行動に支障が出てしまう。
あくまで初対面を装って、私は陰から手助けをするだけでいい。
私という存在はぬきたしという物語に本来居てはいけない存在。
分を弁えて行動し、そして何より淳之介のためにも私だと知られるのは絶対に阻止しなくてはならないのだ。
そう、私は観葉植物・・・・・・淳之介とヒロイン達の絡みを傍から眺めるだけの存在・・・・・・
「あっ、もしかしてあの子かなぁ? よぉし行くよハヅキちゃん。初物のあっじみ~♪」
「――えっ」
あっ・・・・・・し、しまった!
郁子を先に行かせては淳之介の貞操が奪われてしまう!
原作では礼先輩が作戦計画書を出していない郁子を回収しに来たが、時間帯は不明だし万が一来ないという可能性も含めて行動しなければならないのに先手を取られては状況はこちらが余りにも不利。
と、とにかく今は郁子を止めなければ――!
「い、郁子、いきなりどこかに行かないでよ~!」
「もうハヅキちゃん遅い~。 ハヅキちゃんも一緒なんだからぁ、遅れちゃダメだよ?」
「郁子はいっつもふらふらしてるから追うのも大変なんだよ・・・・・・。 郁子の場所を把握しておかないといけない私の苦労も知ってるよね・・・・・・?」
「ふ、増えた――――!?」
郁子は既に淳之介の体に抱きついており、もし私が声をかけていなけば今頃はズボンも脱がされていたことだろう。
とにかく話題を上げて気を逸らすか、礼先輩がやってくるまで時間を稼ぐしかない。
「えっと、君が噂の転校生・・・・・・で良いんだよね?」
「は、はい。そう・・・・・・です」
「・・・・・・そっか、うん、いきなり郁子がごめんね。 私はA等部2年の木戸 葉月。 それでこっちの水色の女の子が――」
「はいはーい♪ あたしの名前は女部田 郁子。 気軽にイクちゃんって呼んでねぇ~♪」
「・・・・・・俺は橘 淳之介です。 お二人は俺を探してたそうですが、一体何の用ですか」
「え~? それはも・ち・ろ・ん、君のこと味見させて欲しい――っの♡」
「――――――!!?」
郁子がより淳之介へと抱きつく。
さり気なく体に胸を押し付け、耳元に口を近づけて睦言を交わすかのような距離で囁いていた。
こいつ淀みの全くない自然な流れで抱きついたな・・・・・・って感心してる場合ではない。
「こら郁子。 初対面の人にいきなり迫ったら相手の人も混乱するでしょ! それに相手は転校生なんだからここに慣れない内は抑えて行動してあげないとめーでしょ」
「いいじゃーん、この後もっと凄い事た~っぷりしてあげるんだからぁ、これぐらい軽いスキンシップだってぇ。 それにぃ、女の子に抱きつかれて嬉しくない男の子はいないよ?」
「だとしても! そもそも私は今日顔を合わせる程度だって言ったよね?」
「えー、つーまーんーなーいー。 ハヅキちゃんも一緒に初物味わおうよぉ~。 この人多分凄いの持ってると思うんだよねぇ~。 だからきっとハヅキちゃんも楽しめるってぇ♪」
くっ・・・・・・知ってはいたが中々手強い・・・・・・。
こうなった郁子はヤるまで梃子でも動かないだろう。
こうなったら最終手段を使うしか――
「おい郁子! そんなところで何をしている? 作戦計画書の提出は終わったのか?」
そう考えた折に聞こえるのは天啓の声――この声は!
「あっレイちゃんだぁ! ちょっと待っててねぇ、今から楽しい試食があるのぉ~。 一緒に味見しちゃう~?」
そこには郁子を睨み付けるようにして見る我らが風紀委員長、
それを見た郁子が淳之介から離れ礼先輩の方へ意識を向ける。
するとその隙に淳之介が軽く離れるも、私が見ているせいか完全には離れず、かといってすぐさま逃げられる距離に移動していた。
「するか馬鹿! それよりも郁子! お前のせいで一番隊のメンバーが帰れないんだぞ! 早く風紀委員室に来い!」
「いたたたっ! 耳引っ張っちゃいやだぁ~! 引っ張るならお股のバイブのヒモを引っ張ってぇ♡」
「郁子・・・・・・結局計画書出してなかったのか」
「あっ、ハヅキちゃん助けてぇ~! この泣き虫な鬼教官がイクのことイジメるのぉ~!」
「い・く・こ~~~? 誰が何だってぇ? 追加で説教も必要みたいだなぁ・・・・・・それに、元はと言えばお前のせいなんだから大人しく付いてこい!!」
「いったぁい~~~っ!」
そうして郁子は礼先輩に引き摺られていくのであった。
ここは原作通りになったか・・・・・・まぁ、何事も無くて良かったというべきか。
あのまま礼先輩が来ず、郁子が離れてくれなかったら上手いこと淳之介を逃がす方法が一つしか無かったから助かった・・・・・・ありがとう礼先輩。
さて、これで取り合えず今日やる事は無くなったわけだが・・・・・・
「――・・・・・・えっと、色々と迷惑かけちゃってごめんね橘、くん?」
「いえ・・・・・・気にしてないので大丈夫です」
そういう淳之介の顔はどこか疲れたような表情であった。
無理もないだろう。
この青藍島にトラウマを抱えている淳之介にとって、この島はただ住むだけで耐え難い場所でしかないのだ。
「・・・・・・ねぇ、この後時間ってある?」
「え――――――?」
だからだろうか、暗い表情の淳之介を見ていられないと思ったのは。
「この島に来たばっかりで分からないことだらけだと思うから、もし良かったらこの島の案内をと思ったんだけど・・・・・・どうかな?」
淳之介の姿に私は何を思ったのか、ついこんな提案をしてしまう。
・・・・・・この私の行動で未来が変わってしまう可能性もあるというのに。
しかし、私は淳之介の味方であると誓ったのだ。
淳之介が困っているならば、それを私は手助けしなくてはならない。
「えっと、それは――有難いですけど、この後妹も迎えに行かないといけないので・・・・・・」
「じゃあ妹さんも一緒にどうかな・・・・・・? 妹さんも一緒に引っ越してきてまだ島のことは分かんないだろうし・・・・・・あっ、勿論案内だけだから安心して? ここに来たばっかりの人は本島での頃の常識でまだ慣れないってのは分かってるから」
「――――――!」
・・・・・・どう、だろうか?
もし駄目だったらそれでもいい。それはそれで原作での流れをそのまま踏襲するのだから私としてはどちらでも問題は無いのだが――
「えっと・・・・・・それじゃあよろしくお願いします。 ――木戸さん?」
「――――っ! 了解されました! それじゃあよろしくね、橘くん? あと、同い年だからさん付けなんてしなくて、普通にタメ口で大丈夫だよ・・・・・・それじゃあ行こっか!」
そうして私は淳之介と転校初日に青藍島の案内をしていくのであった――。
この学園に転校してきた初日に、俺はある少女と出会った。
その少女はドスケベだらけの他の住民と違ってどこか違う雰囲気を感じさせ、こんな島でもまともな人は居るのだと、そうほんの少しの期待を抱かせる少女だった。
その少女の名前は木戸 葉月。
黒髪のショートカットに淡い翡翠色の瞳が印象的で、中性的な雰囲気を漂わせる少女であった。
「・・・・・・どことなく、似てるような気がするんだよなぁ」
そうごちる。
彼女の姿が東京に居た頃の“アイツ”の姿を思わせる。
名前は同じ、しかし苗字も性別も異なるし、雰囲気も記憶にあるものと違うため別人であることは間違いないのだが。
ただ――どことなく引っかかるのは拭い切れないのだ。
「君が橘くんの妹さん? 私は木戸 葉月って言うんだ。 よろしくね」
「へっ・・・・・・? 兄、いつの間にこんな綺麗な女の人捕まえてきたの・・・・・・? もしかして兄はもう負けちゃったの・・・・・・? 酷いじゃないか兄ぃ~~~!ビッチとセックスする時は混ぜてっていつも言ってたのに早すぎだろ即落ち二コマやってんじゃねぇんだぞこのクソ雑魚ヘタレ童貞~~~~!!」
「はっ倒すぞお前」
まったくこの妹は・・・・・・こうしてすぐ勘違いする妹の世話をするのは大変だが、可愛い妹の世話はいつになってもやめられないものであった。
妹の勘違いを正してから、事の経緯を伝える。
「へぇ~じゃあ葉月さんは私たちのために島の案内をしてくれるんだね・・・・・・世話焼き年上系ビッチ・・・・・・最高か?」
「初対面の女性にそんなこと言っちゃめーでしょ」
「相変わらずだなぁ・・・・・・ふふっ、随分仲が良いみたいだね?」
「えぇそりゃまぁ・・・・・・たった一人の大切な家族ですから」
「私たちは二人で一人の兄妹ですからね・・・・・・!」
そんなこんなで俺たちの青藍島案内ツアーは始まった。
途中、同じクラスの女子たちが俺のことを狙いにやって来るという一幕もあったりしたが――
「ごめんね、この人はもう私が予約済みなんだ」
そう彼女が言うと、クラスメイトたちは
「ちぇー、もう先越されちゃってたかー」
「あーあ残念。じゃあさ葉月、今度代わりに感想聞かせてよねー!」
このように彼女たちはあっさりと俺のことを諦め、どこかへ去っていくのだった。
彼女曰く、この青藍島の女子たちは肉食系が多く、特に初物が大好物なため転校生が来た時には常に競争となる――そう彼女は茶目っ気を含めて言うのであった。
「あの――さっきの予約済みっていうのは?」
「ああ、あれ? この島は基本的にドスケベセックスは特別な理由が無い限りは断れないんだけど、用事や事情がある程度あればああいう風に断ることも出来るんだ。 まぁ予約済みっていうのはそういう意味だけど・・・・・・あっ気にしなくていいからね? さっきのは追い払うための適当な方便なんだから」
そう言うと彼女は「じゃあまずはどこから案内しよっかなー」と楽しそうに微笑んでいた。
――――やっぱり彼女はどこか、この島の人間の中でもどちらかというと本島寄りの、まともな感性をしているように感じられた。
もしかしたら。
もしかしたら彼女は本当は――?
そう思うも、彼女の着る服がどうしようもなく、そんなことはあり得ないと表していた。
青と白を基調とした露出が多めの制服に、腕には風紀委員の腕章。
それは俗にSSと呼ばれる、SHOの奨学金を受け取る代わりに、生徒の模範且つSHOの下部組織として仕事を行う――性的な物も含まれる――者たちを示す制服だったからだ。
どんなにまともそうな感性をしていようと、この島の住民である限りそれは幻想でしかないのだと、そう俺に訴えかけてくるようであった。
「――――――・・・・・・。」
とはいえ親切な人であることは間違いないのだ。
今もアサちゃんに話しかけており、人見知り気味であったはずのアサちゃんが楽しそうに笑っている。
それだけを取り上げれば、仲良く出来る人間であることはすぐに分かることであった。
こうして俺の転校初日は最初は慌ただしかったものの、一日として見れば穏やかなものとして終えるのであった。