抜きゲーみたいな島に住んでるTS娘はどうすりゃいいですか? 作:パチドリくん
今日は休日である。
SSの仕事も無く、家の中で特にやる事も無かった私はショッピングモールに来ていた。
「くぅぅっん♡ ば、馬鹿な・・・・・・この私が悪魔などにぃ・・・・・・♡ あっ、ダメぇっ♡ お尻の奥ダメぇ♡ 堕天するっ♡ 天使なのに悪魔チンコで
「天使の癖に淫ジェルだらだら流しやがってこのケツ狂い天使が! 俺のマーラでだらしなく
道行く先には天使系女子が悪魔系男子に堕天させられていた。
一体何が彼女をそこまでさせるのだろうか。
設定を継続するのは凄いけども。
私は休日、やる事が無ければこうして青藍島を色々と出かけまわることが趣味の一つとなっていた。
正確には、出かけた先で写真を撮る事が私の趣味だ。
青藍島は前にも言ったように行く先々の景色が美しく、それらの光景を見ると心が洗われる気分になるのだ。
そんな光景を写真に収めるのは、中々に面白かったりする。
とはいえ心が洗われたところで外を歩けばすぐに心汚れる光景が目に入るので心の洗浄度で言えばむしろマイナスに振り切っているのだが。
まぁ、あくまで趣味なので結構適当である。
道端の草花や野良猫を撮ったり、いいなーと思った景色をただ撮るだけの趣味だった。
――・・・・・・趣味だったはずなのだが
「あ、あなたは! “青藍島ドスケベチン百景―魅せろ!イかせろ!性乱島はここにあり!!―”の作者の木戸 葉月さんですよね! 私たちのプレイも撮ってくださぁい♡♡」
「なんだって!? 累計発行部数721マン部を超えるあの青藍島ベストセラー写真集ドスケベチン百景を、そこにいる彼女が!?うおぉー!俺たちのプレイも撮ってくれー!!」
・・・・・・何がどうしてこうなってしまったのか。
話は三年ほど前に遡る・・・・・・そう、私が青藍島に来てSS五番隊に正式に配属された頃の話だ。
その時から写真撮影を趣味としていたのだが、それをどこからか聞きつけたのか、当時私の先輩に当たる方からある仕事を任されたのだ。
その仕事とは――青藍島を対象とした写真集を作って欲しい、という物だった。
青藍島らしい写真集を作って本島の人にアピールしたいというSHO広報部からの依頼であり、その時五番隊に写真撮影が趣味な奴が居るという話が上層部に伝わったらしく、その結果私に白羽の矢が立った、ということらしい。
勿論ただの趣味で、プロみたいな事は出来ないと断ったのだが、他にやれる人がいない・自分のセンスで作ってもいい・印税も少しだが入る・・・・・・等々の説得と好条件を色々と言われてしまい、断れる雰囲気でも無くなってしまった私はその仕事を引き受けたのである。
そうして出来上がったのが先述のドスケベチン百景だ。
島の住民が行う初歩的なセックスから高度なセックスまで、様々なドスケベプレイ集が載せてあり、それらに簡単なコメントと解説を添えた作品である。
ちなみにコメントは撮影者である私が、解説はSHOのお姉さん“
作り終えた時「売れるのかコレ・・・・・・?」と私が首を傾げてしまったのは仕方ないことだと思う。
しかしこの作品が青藍島人気小説家アクメ漱石の目に留まり「様々な人物のドスケベが拝見できるこのチン百景はまさに青藍島を表すに相応しい。 吾輩も非常に創シコ意欲がカキ勃てられる」との一言でまさかの人気爆発。
現実は私の想像を遥かに超え、まさかのベストセラーとなるのであった。
私の作った物が高評価を受けるというのは嬉しいが、モノがモノだけに凄く複雑な気持ちである。
「・・・・・・良いですよ。 それじゃあ皆さん、順番に撮りますので、そのままプレイを続けていてくださーい♡」
「んじゅ、ぐぽっ、じゅるるる♡ おほぉおおお♡ おマンコ撮られちゃってりゅうぅぅん♡ 私の身体、チン百景登録お願いしますぅィイィん♡♡」
「あぁいいぜ! ガンシャ! ポルチオ! マッシュルーム! この淫乱女にジェットストリームピストンをかけるぞ! 3つの穴に同時射精でチン百景登録決定だ孕めオラ!」
「お前は誰だよ」
さっきまで普通のセックスだったのにいつの間にか目の前で5Pが繰り広げられていた。 何で?
「あははよわ~い♡ おじさん達こーんなに弱いんだぁ♡」
「しょうがないよ、私たちのバイノーラル呪文は最強なんだから! ほぅら無様にさっさと射精しちゃえ♡♡ もしくは今降参するなら、淫魔界に戻った後でも私のペットとして飼ってあ・げ・る♡」
「ウ、ウヌゥ・・・・・・まずいのだシコ麿。 シコリの力ももう残り僅か・・・・・・このままでは・・・・・・!」
「いや、まだだガッシコシコ! たった今新しい呪文が出た・・・・・・! これにイチかハメか掛けるぞ! 喰らえ、シコルド!!」
「な、なにこれぇ!? マンコがチンコに吸い寄せられる!? まさかさっきの呪文で私の淫力とあのチビの淫力が引き寄せ合ってるって言うの!?」
「良し! マンコがチンコに固定されてメスガキが動けなくなったぞ! 今だ! 馬王・スペルマぁぁぁああああああああああ!!」
「馬王オオオオオオオオオオ!!」
「ば、ばかなああああああああああ!!! 私がこんな簡単にぃ♡ イ、イくうううぅぅぅぅううううん!!♡♡」
「――・・・・・・はい、オッケーです! 黒い三連チンポプレイに淫魔界の淫乱王を決める戦い、チン百景に使わせて頂きますね! これはお礼の記念写真です!ご協力ありがとうございました!」
疑問を飲み込みつつカメラにその光景を収めた私は、ポラロイドカメラから印刷された写真をプレイ中の男性に渡す。
私は写真集に協力していただいた人にはこうしたサービスの形で写真を渡しており、それがプレイ収集の一連の流れであった。
写真を受け取り嬉しそうにしている男女を後にして、私は引き続きモールを歩き回る。
・・・・・・ちなみにチン百景は未だに作成依頼が何度か来ており、今は第三弾の作成中だ。
いやほんと、ただの趣味だったのにな・・・・・・
「やるならせめて真面目な写真集出したい・・・・・・」
「――・・・・・・あら、葉月さん? どうしたのそんなところで?」
「うぇっ!?」
どうしようもない現実に項垂れていると、後ろから声を掛けられる。この可愛らしくも苦労人気質でお母さん感を滲ませるこの声は――!
「や、やあ奈々瀬さん。 奇遇だね・・・・・・」
「・・・・・・何か元気無さそうだけど、大丈夫?」
「あ、あぁ大丈夫だいじょうぶ。 そんな重大事じゃないから気にしないで・・・・・・」
「・・・・・・そう? ならいいけど・・・・・・」
そこには私にとってのぬきたし最推しヒロイン、片桐 奈々瀬が心配するようにこちらを見ていた。
彼女が何故わざわざ私なんかを心配して声を掛けてきたのか・・・・・・それは、彼女と私が“そこそこ仲が良い知り合い”程度の関係にあるからだ。
――これは奈々瀬が青藍島でギャルビッチとして名を馳せた頃の話である。
SHOからの仕事で女性向けファッション誌“Fuck Me”にて片桐 奈々瀬特集というのが組まれたことがあり、その時の依頼で奈々瀬の写真を私が撮影する事になったのだ。
年齢が同じという事もあり話しやすかったのだろう、奈々瀬は撮影の合間に私と会話をする機会があったのだが――
当時の私はリアル奈々瀬を前に――今目の前にいる奈々瀬よりちょっと幼い頃の姿に動揺してしまい、碌に会話をすることが出来なかったのである。
まぁ、何ていうか。
ちょっと幼い奈々瀬しゃんがクソ可愛いかったって話だよ!!!!
しかし聖母奈々瀬はそんな私にも優しく接してくれて・・・・・・いやもう惚れるし・・・・・・こんな良い娘報われるしかないやん・・・・・・
ん゛ん゛っ゛。
話が逸れたが、まぁそういう事情がある。
本音を言うなら奈々瀬ともっと話したいし触れ合いたいが――SSの姿として関わりすぎるのは私にとってあまり良くないのだ。
私は昔からNLNSの助けとなるよう隠密行動を取ってきた。
しかし、関わりすぎた結果ほんの少しの情報から謎の少年=私というのがバレるのは少々よろしくない。
特に淳之介にだけは、私の正体を知られたくないのである。
――幼馴染属性なんてのは片桐 奈々瀬にだけで十分だ。
とまぁ、過去にそんなことがあったのだが・・・・・・うっわやっべ奈々瀬しゃんの顔見てたら変な声出そう。
こんな綺麗で可愛い顔をした人間が存在していいのか?
しかもさっき気遣ってもらったよね?
心まで天使とかやばい無理・・・・・・推しが優し過ぎて言葉が出ねぇ・・・・・・あぁ、奈々瀬という天使には祈りを捧げないとな・・・・・・♰Amen♰
「・・・・・・ねぇ、なんでこっち見て祈ってるの?」
「――――――ふっ、ちょっと尊さが臨界点を超えてね・・・・・・それより、奈々瀬さんはどうしてこんな所に?」
「え、えぇ・・・・・・ちょっと買い物しにね? アタシ、家事担当だから」
「あぁ買い物・・・・・・家事ね・・・・・・なるほどなるほど」
買い物・・・・・・家事・・・・・・まさか、家事代行サービスの事だろうか。
家事代行サービス。その名の通り、依頼すると家事をやってくれる人をご家庭へ派遣してくれるサービス業の事だ。
交通事故で両親を失った橘兄妹は家事の事を勉強することが出来ず、碌に料理も出来ない状況を改善する為にこのサービスを依頼するのだが、その時やってきたのが学校一のギャルビッチ片桐 奈々瀬だった、というのが原作の流れである
原作でも度々買い物に出かけるシーンが描写されていたし、今日は休日。
確率は非常に高いだろう。
――これはチャンスかもしれない
「ねぇ奈々瀬さん。 良かったら一緒に買い物しない? 丁度私も調味料とか切らしてるんだ」
「え?」
橘家へ家事をしに行くという事は――淳之介もそこに居るという事。
つまり、淳之介と奈々瀬の二人が同じ空間に居るということだ。
ならば私が幼い頃から温めてきた“淳×奈々イチャラブ大作戦”を実行出来るチャンスと言える!
淳之介と奈々瀬をくっ付ける事こそ我が目標。
この姿で二人と関わり合いになる事は正体バレのリスクが高まるが、ここを逃す手はないだろう。
「うーん・・・・・・そうね、せっかくだし二人でショッピングしましょうか。 でもアタシ、この後あまり時間が無いから長く付き合えないけど、大丈夫?」
「全然大丈夫ですよ! さぁ行こう行こう!」
奈々瀬の言葉に一も二も無く頷く。
奈々瀬には悪いが、むしろ私は橘家にまで付いて行く気マンマンである。
さて・・・・・・待っていろよ淳之介。
お前に奈々瀬しゃんの魅力(うなじ)をたっぷりと思い知らせてやるからな・・・・・・
――・・・・・・ってあれ?
今考えてみれば・・・・・・これってある意味奈々瀬とのデートでは?
え、推しとの二人っきりデート?
私って今とんでもない事やってしまったのでは?
あっ――――――
――ガラガラ、と玄関の方から扉が開く音がする
予想していた時間より少々遅いが、買い物に出かけた奈々瀬が戻ってきたのだろう。
そう考えた淳之介は買い物の荷物を運ぶ手伝いをする為に玄関へと向かう。
「た、ただいまー・・・・・・」
「お帰り奈々瀬。 思ったより遅かった――――」
「へぇーここが橘くんのお家かぁ・・・・・・結構綺麗にしてるんだね。 あっ、橘くん久しぶり!」
「――!?」
しかし、そこには予想外の人物が奈々瀬の後ろに立っていた。
そこに立っていたのは――カメラを首に、ショルダーバッグを肩に提げ、キャスケット帽に茶色いスーツとどこぞの社会派ルポライターのような服を着た黒髪の少女――葉月が、興味津々に家の中を観察する姿があった。
「な、何故木戸が――!?」
「急にお邪魔しちゃってごめんね? 実は性行マート付近でたまたま奈々瀬さんと出会って、折角だから一緒に買い物する流れになったんだけど、奈々瀬さんから話を聞いたらこれから橘くんの家に行くって聞いてね? ちょっと興味が湧いて付いてきちゃったんだ」
「お、おい奈々瀬、木戸さんを何故ここに来させたんだ! 木戸さんは俺たちの敵であるSSなんだから、ドスケベセックスしてなかったら怪しまれるぞ!?」
「ご、ごめんなさい淳・・・・・・! でも彼女、何かちょっと勘違いしてるみたいのよ――!」
「おやおや? 奈々瀬さんが家に行くぐらいだからとても仲が良いとは思ってたけど、私抜きで内緒話までするなんて・・・・・・本当に恋人同士だったんだね!」
「は、はぁ?!」
「良いよねぇ恋人夫婦の関係って・・・・・・お互い愛し合って、幸せな家庭を築いたりしてるのって憧れるよねぇ・・・・・・二人とも見た限りじゃ本当に通じ合ってるみたいだし、もう二人の間には誰も邪魔出来ないんだねぇ・・・・・・!」
「一体、何を言ってるんだあの人は――おい奈々瀬!」
「葉月さん、アタシが家事代行じゃなくて個人的に淳の家に来てるって思ってるらしいのよ・・・・・・!」
「何がどうなったらそういう風に伝わるんだよ――!」
「だって水乃月はバイト禁止だから家事代行のバイトで来てる、なんてSSの人に言えないじゃない・・・・・・! だからこんな風に言うしか無くってぇ!」
(何という事だ・・・・・・勘違いとはいえ、俺と奈々瀬が恋人関係に思われてるなんて――!)
誇り高き童貞であり処女厨でもある淳之介にとって、大切な仲間ではあっても非処女である―と勘違いしている―奈々瀬と付き合う事は有り得ないと思っている。
だがしかし、それを真っ正直に言えば誤解は解けても非性産者として疑われることになってしまうだろう。
この島ではセックスをしない事は悪であり、罰が下される。
そしてそれを取締る側の人間を前にして慎重に言葉を選びつつ、どうにか誤解が解けないかと考える淳之介。
「えっと、木戸。 俺と奈々瀬はこ、こい、恋人・・・・・・とか、そういうのじゃなくて、だな・・・・・・?」
しかし、出てきたのはそんな途切れ途切れで陳腐な言葉だけ。
童貞である淳之介には誤解だとしても恋人同士という言葉だけで、どうにも隣の奈々瀬に意識が向いてしまうようであった。
それを見て葉月は――どこか納得したように、しかし内心では別の事を考えながら言葉を紡ぐ。
「そうだよね・・・・・・恋人なんて言えないよね・・・・・・」
「あ、ああ、そうなんだ。 俺たちは――」
「やっぱり学生で付き合ってるなんてこと、皆に秘密だもんね! 特に奈々瀬さんが相手だと嫉妬とかも凄いだろうしねぇ・・・・・・うんうん、分かってるよ? 大丈夫、私口は堅い方だから!」
そうじゃない――!
葉月の誤解が更に悪化してしまったことに思わずツッコミそうになるも、それを心の中に抑え込む淳之介。
それだけはしてはいけないと、分かっているのだ。
そうやって悩んでいる間にも葉月はさらなる行動を取ろうとしており、二人に徐に近づいていく。
「ほら、二人とももっと近寄ってちかよって! 唯一事情を知る私が記念に二人の事撮ってあげるからさぁさぁさぁさぁ!!」
「うわっ、すと、ストップ! 木戸サン落ち着いて!」
「え、えええ!?」
「Foo!↑テンション上がってきたぁぁああ!!」
慌てる淳之介たちを他所に、首に提げたカメラを構えるとそのまま連続で何度もシャッターを切る葉月。
暫く撮影すると満足したのか、達成感に満ち溢れた表情をしてカメラを操作していた。
「ふぅー・・・・・・まんぞく・・・・・・これは良い淳奈々だぁ・・・・・・永久保存決定だな」
「もう何が何だかわかんないのだわ・・・・・・」
「あぁ・・・・・・もう何かを言う気も失せたよ・・・・・・」
(木戸って大人しい人だと思ってたけど、結構激しい時もあるんだな・・・・・・)
初対面の時の印象の違いにそう思う淳之介。
葉月の印象が親切な人から親切だけどちょっと変な人に変わった瞬間であった。
「ありがとね二人とも、良い表情してたよ! という訳でじゃあはい! これ受け取って!」
そう言って葉月は、淳之介と奈々瀬に数枚の紙のような物を渡す。
よく見れば表に男女の姿が写っており、渡されたのが写真だという事が分かった。
「さっきの写真、か?」
その写真には、淳之介と奈々瀬が密着して抱き合うような姿が写しだされていた。
まさに先ほどの彼らの様子であり、二人とも困惑したようにくっ付いているのが印象的である。
それを見た淳之介がある事に気付き、硬直する。
「・・・・・・!」
奈々瀬とのツーショット写真、だと?
頭が冷静になってきて、愕然とする淳之介。
馬鹿な。
そんな恋人同士みたいなことを、不意打ちとはいえ奈々瀬としてしまうなんて。
橘淳之介、一生の不覚――
「くっ・・・・・・異性とのツーショットなんて、付き合って1年ぐらい経ってからじゃないとダメだろ――!!」
「淳とのツーショット・・・・・・」
「逆に何でお前はちょっと嬉しそうなんだよ・・・・・・」
「へっ?あっいや、な、何でも無いのだわ!」
「――ヴッ」
「――!?」
写真を見てどこか上の空の奈々瀬を見て急に胸を抑える葉月。
その発作の症状のような動きを見て、先ほどとは違った焦りが淳之介を襲う。
「兄ぃ〜〜ん、睡魔との長い戦いの末に勝利して12時前にちゃんと起きれた可愛い妹をデロデロになるまで褒めて頭撫でてよしよししてぇ〜ん・・・ってひゅえっ葉月さん!? 何故ここに――じゃなくてどどどどうしたんですか胸を抑えて!!?胸が苦しいんですかまさか心臓発作!?あ、兄どうしようどうしよう!デス〇ートに名前書かれた時ってどうすればいいのぉ!?尸〇界に行けばいいのかな!?」
「ぉ・・・・・・麻紗音ちゃん、久しぶり・・・・・・だね・・・・・・ちょっとお邪魔してるね・・・・・・?」
「しゃ、喋らないでください葉月さん!これ以上動いたら命に関わりますううう!!」
「おおお落ち着けアサちゃん! デ〇ノートはこの世に存在しないからこれは何かの症状だし〇魂界は
「あんたがまず落ち付きなさい! こういう時はまず病院に電話するのよ! 淳は病院に電話お願い! 葉月さんはアタシとアサちゃんに任せて!」
「大丈夫・・・・・・大丈夫・・・・・・です・・・・・・暫くすれば治りますから・・・・・・」
「悶えながら言われても説得力無いのだわ! ほら、もう暫くの辛抱よ!」
「アッ」
そういって彼女を落ち着かせようと葉月の手を握る奈々瀬。
本来であれば、手を握るというのは人を落ち着かせるのに決して間違った行動ではない。
怪我や病気などで倒れた人間を励す効果があるそれを実行した奈々瀬に非は無いであろう。
しかし、何事にも例外というものは存在するもので――
思いやりの行為が葉月のトドメになってしまうとは、誰にも想像出来ないことなのであった。
「――――――ぐふっ」
「えっ!? ちょっと、葉月さん!? どうしたの、しっかりして!?」
「おてて柔らか・・・・・・ガクッ」
「は、葉月さあぁぁぁぁあん!!」
およそ美少女がしてはいけないような顔を晒し、しかし真の幸福はここにあったのだと――そう言わんばかりの表情で気を失った彼女は、そのまま一生目を覚ますことは無かったのであった・・・・・・
――嘘である
あの後5分ぐらいで普通に復活した葉月は先ほどの様子とは打って変わって大人しくなっている。
流石に人の家で気絶するという迷惑極まりない行為に反省したらしく、今は麻沙音と一緒にゲームで遊んでいた。
「一時はどうなるかと思ったが・・・・・・案外どうにかなったな」
「そうね・・・・・・SSだからって、別にいつもセックスしろーって言ってる訳でも無いのかもね・・・・・・」
「・・・・・・そういえば俺たちが転校初日の時も、むしろこっちを気遣ってるような感じだったな」
「「――――――・・・・・・。」」
淳之介と奈々瀬が、葉月の方を見ながらそう話す。
二人の視線は何かを期待するかのような目と、疑うような目が入り混じるどこか複雑な物であった。
「――・・・・・・ちょっと、行ってくる」
「・・・・・・淳、あまり深く聞いちゃ駄目よ」
「あぁ、分かってる――」
多くは語らず、されど通じ合っている二人は目線を交わした後、淳之介が葉月の元へ向かう。彼女が何を考え、この島でどう生きているのか――それを知るために
「アサちゃん、木戸、ちょっと良いかな。 正確には用があるのは木戸の方だけなんだけど」
「兄どうしたの? 丁度今から葉月さんと火事場で天鱗剥ぎに行く所なんだけど」
「ん、私? ・・・・・・もしかしてさっきの事ですか・・・・・・? 本当に迷惑をおかけして申し訳ないというか何とお詫びすれば良いのか・・・・・・」
「い、いやいやそんな畏まらないでくれ。 確かにちょっと慌てたけど、無事なら良いんだ。 って、そうじゃなくてだな――その、聞きたいことがあるんだ」
その言葉に佇まいを正す葉月と麻沙音。
淳之介の表情から真面目な雰囲気だと感じ取った二人は、一時ゲームを中断して淳之介の方に顔を向けると、大人しく続きを待っている。
「木戸は何ていうか――この島の住んでる人とはちょっと雰囲気が違うように感じる事があるんだ」
「・・・・・・」
「最初は分からなかったけど、この島に来てから大体1ヶ月経って初日の木戸が俺たちにしてくれた島の案内の事も、この島の常識的にはおかしな行動だって気付いた」
「あ、兄・・・・・・?」
「俺はこの島に来てからというもの、この島について考える事が多いんだ。この島の――条例に関しては、特に」
「だから俺だけが気付けたのかも知れない。 木戸は・・・・・・この島の人の感性からはずれてるっていうか、どちらかと言うと本島の人みたいな――」
「橘くん」
聞いていた葉月が強い視線で、淳之介を睨み付ける。
それ以上言う事は許さない――そんな意思を込めた表情で見られた淳之介は思わず怯んでしまう。
「・・・・・・私はね、元々この島の出身じゃないんだ。 だから、橘くんがそう感じたのは別におかしい事でも何でもない・・・・・・でもね、そんな事はどうでもいいんだ。 重要なことじゃない。 私は本島の常識も知ってるし、SSで長い間働いてきたから色んな考え方の人がこの島に居る事を知ってる。 愛した人とだけ繋がりたいと言う人間、身体にコンプレックスを抱えた人間、ある事情からやりたくもない事をせざるを得ない人間。 色々見てきたよ」
「・・・・・・それなら、木戸はやっぱり――!」
「――でもね、この島で幸せそうにしている人達も沢山見てきたんだ」
――その言葉に、二の句が継げなくなる
この島で長い間過ごしてきたという少女の言葉に、反交尾勢力として活動していく中で淳之介が目を逸らしてきたこと――この島で暮らしている人達のことをまざまざと突きつけられているようだった。
「本島で居場所の無くなった人達の最後のユートピアなんだよ、この島は。 だから私はこの島を否定しないし、否定できない」
「それでも、それでも・・・・・・俺はっ!」
「淳、そこまでよ」
いつの間にか淳之介の後ろに回っていた奈々瀬が淳之介を止める。
これ以上はこちらが危うくなると、そう首を横に振る奈々瀬。
「・・・・・・変なこと聞いて、ごめん」
「ううん、いいんだよ。 確かに私はこの島に思うところはある――だけど、私はSSであり、正しいかどうかを決めるのはこの島の条例だ。 ・・・・・・本来こんな事を君たちに言うのだって良くないことなんだけど・・・・・・不思議と君たちには話しても良いような気がしたんだ」
そう言って微笑む葉月。
その姿が淳之介にとって、どこか痛々しい姿に見えてしまうのは気のせいだろうか。
彼女に何があったのか――それは淳之介たちに想像も出来ないが、先ほどの言葉を鑑みる限り良い物であったとは言えないだろうと、そう感じる淳之介なのであった。
「・・・・・・今日聞いたことは黙っててあげる。 代わりと言ってはなんだけど、私がSSの癖にこんな事言ってたよー、なんてこと広めないでくれるとありがたいな。 礼先輩・・・・・・風紀委員長に知られでもしたらこっぴどく叱られちゃうからさ」
「そう・・・・・・だな」
彼女の言葉に、そう返す言葉しか出て来ない淳之介。
この島の条例は淳之介にとって、自分自身と大切な人達を傷つけた憎い存在であり、悪だった。
しかし、この島の人にとってドスケベ条例はかけがえのない物であり、それは過去の出来事とは関係ない人々にとっても同様である。
条例を潰すことで、この島で幸せに暮らしている無関係な人間を巻き込むという事実から無意識に目を逸らしていた淳之介にとって彼女の言葉は、どうしようもなく現実を直視させるのであった。
「なんだか、このままゲームする雰囲気じゃ無くなっちゃったね? ごめんね麻沙音ちゃん、続きはまた今度でいい?」
「は、はい・・・・・・あの、葉月さん」
「ん?何かな」
「――ウチにはいつでも遊びに来ていいですからね!」
麻沙音のその言葉に、目を瞬く葉月。
しかし、その次の瞬間顔を緩ませて、感極まったのか麻沙音に抱きつく。
「麻沙音ちゃんは良い娘だね・・・・・・っ! 私は麻沙音ちゃんがこんな立派に育ってくれて嬉しいよ!」
「うわわわわわははは葉月しゃん!!!?? そんな抱きつかれたらいい匂いがおっほぅもうダメぇん・・・・・・♡」
「あら・・・・・・アサちゃんがあんなになるなんて珍しいわね? 淳ぐらいにしか見せない顔してるのだわ・・・・・・お兄ちゃんにとって悔しいんじゃない?」
「いやあの顔お前に抱きつかれた時もしてたけど・・・・・・でも、確かに珍しいな」
麻沙音は女の子が好きな女の子である。
しかし、人見知りな彼女は普段人前に現れず、また彼女の好みのタイプであるビッチで無ければあそこまで人に懐くことは中々無いのだ。
麻沙音の好みど真ん中の奈々瀬はともかく、どちらかと言うと好みから外れる性格をしているだろう葉月にあそこまで気を許しているというのは、淳之介にとって予想外であった。
(やっぱり――気のせいじゃないのか)
以前から葉月の前だとアサちゃんが妙に明るい気はしていたが、気のせいではなかったと悟る淳之介。
麻沙音にしか気付けない何かが、彼女にはあるのかもしれない
あとで聞いてみようと、そう思う淳之介であった。
「それじゃあ、私は今日はこの辺りで帰ることにするよ。 ――色々あったけど今日は楽しかったよ、ありがとね橘くん、麻沙音ちゃん、奈々瀬さん」
「あぁ――アサちゃんが言ってくれたけど、機会があればまた何時でも来てくれ」
「また今度ゲームしましょうね、葉月さん!」
「えぇ、今度は是非アタシの料理も食べていってちょうだい?」
「――うん、そうするよ。 じゃあ皆、またね!」
「・・・・・・はぁ。 余計なこと色々言っちゃった」
橘家からの帰り道、私は今日一日の出来事を振り返りぼやくしかなかった。
「我ながらなんか文乃と礼先輩の意見を足して2で割ったみたいなこと言ったけど、もしこれで怪しまれたらどうしよう・・・・・・というか実際もう私が条例に否定的って言っちゃったし・・・・・・あぁもうなるようになれだ! 明日のことは明日の自分が考える!」
頭を振って思考を中断する。
どちらにせよ今日一日で淳之介と奈々瀬の距離を少しだけでも縮められたならそれで良いのだ。
最低限の目標は達している。
「・・・・・・帰ろ」
今週にはヒナミの救出も控えているのだ――考えるのは後回しにして準備をしなくちゃな。
こうして橘家にやってきたSSの少女の一日が、終わりを告げるのであった