※この作品はR-18です。

若草の花嫁   作:茜 空

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恋愛物初挑戦。
短編です。3、4話くらいで終わる予定。
あらすじにも書きましたが、今話含めてラストまで大人なシーンはないのでご了承ください。



出会い、絶望、一縷の望み

「好きです!つきあってください!」

 

 俺は今、勇気を振り絞り、ある人に告白した。

 ああ、心臓がドキドキする!今にも口から飛び出してきそうだ。

 

「ごめんなさい」

 

 即答でした!

 

 やっぱりだめか。さすがに初対面の相手に告白は事を急ぎすぎた。

 俺の名前はグリーン。いや本名。っつっても中身は別人。いわゆる転生者ってやつ。

 ある日、朝起きたら件のグリーンになってた。

 もちろんアーティストの方じゃない。ましてや歌の方でもない。初代ポケモンのライバルキャラにしてオーキド博士の孫。あのグリーンだ。ちなみにシゲルじゃなかった。つか親は何を考えてこんな名前つけたんだろうな。ちなみに姉ちゃんはすっごい美人だった。

 そんな俺は初代ポケモン世代のアラフォー間近の普通のおっさんである。いや、だった、かな。どうも俺、過労で倒れてそのまま死んじまったらしい。そんな死に方したもんだから、今世ははっちゃけた。顔はまあ悪くないし、才能も血筋かなんでもそつなくこなせたし、何よりオーキド博士の孫っていう権力持ち。ようは図に乗って乗って乗りまくったわけだ。で、ストッパーもいなかったから好き放題やってたわけで、気がつけば恨み妬みも買いまくり。

 さらに調子に乗りまくってた俺は、もちろん原作通りにポケモンをもらって旅立った。ゲームと現実じゃやっぱ全然違うけど、そこは才能でカバー。そうすると、当時ゲームをやりまくった俺は色々知ってるわけで、いわゆる知識チートで無双。稀代の才能だの未来のチャンピオンだの持て囃されまくってさらに増長。とここまでサクサク進んできたわけだが。

 

 そんな俺の転機がここ、タマムシジム。

 これで大体のやつは事情を把握できるだろう。そう、俺がたった今告白して、見事に玉砕した相手はタマムシジムのリーダー、エリカだ。

 元々ゲームでもかわいいキャラは多かった中で、当時も一番のお気に入りはエリカだった。その影響で草タイプのポケモンを愛用し、今世でもそれを引きずってレッドがヒトカゲ選んだのに対し、俺はゼニガメを選ばずフシギダネを選択した。

 まあおかげでタケシとカスミは楽勝だったんだけど。

 で、まあエリカに会うのを凄く楽しみにしていたわけだが、実物は想像を上回る美人。それなのにぽわぽわ空気を醸し出しつつ、笑顔がかわいくて、ほぼ一目惚れしてジム戦ほっぽりだして即告白。で、現在に至る。

 そうだよな。あれだけ綺麗だったら、告白なんてされまくりだろうし、相手なんて選び放題だし、確かお嬢様だったはずだから下手すりゃ許嫁なんてのもいてもおかしくない。

 だが、だからといって俺も引き下がれないし引き下がらない。そんな軽い気持ちじゃあないし、諦めきれない。

 

「あの、失礼ですが恋人や許嫁などは……」

「おりません。ですがすみません、あなたの気持ちには応えられません」

 

 ぐはっ。お、おいうちのダメージが心に痛い!だけど今エリカに決まった相手はいない!つまりフリー!ライバルは多いだろうが俺にもきっとチャンスはある!

 

「では、友達からお願いで」

「すみません」

 

 がふっ。言い終わる前にお断りするほど俺の事嫌いですか。終わった。前世も含めて一目惚れも初めてなら告白だって初めてだ。けど結果がこれ。苦しさ、辛さ、虚脱感とかマイナス感情が次から次へと溢れてくる。これが本当の絶望感ってやつなんだろう。普段の俺ならカッコ悪いって思う膝をつきながら泣くっていう行為を恥も外聞もなく晒しているのに全然気にならない。なんだか生きててすいません。

 

「あの、えっと、どどどどどうしましょう!?」

 

 なんでフった相手がこんなに動揺してるんだろう?ふと顔を上げて見れば、めちゃくちゃ動揺しているエリカさんがいた。

 

「だっ、だってあの色んな噂の絶えないグリーンさんですよ?新規精鋭で実力者のグリーンさんですよ?そんな人が私に告白断られたくらいであんな世界に絶望したような顔で泣いてしまわれたんですよ!?」

 

 そうか。俺、今そんな酷い顔してるんだ。でも否定しない。その通りだから。彼女の言った色んな噂っていうのはきっとろくなもんじゃない。自業自得だってわかってる。今までの行いが今自分に返ってきてるだけだって。だから悔やんでも悔やみきれない。

 でも俺のそんな顔を見て彼女がこんなに動揺してくれるのがちょっと嬉しかった。深淵にあった気分が、絶望が、そんな小さな喜びに少しずつ塗り替えられて、気力が戻ってくる感触を感じることができた。彼女の言葉や仕草で変わる急激な気分、こんなことは初めてだ。そうか、これが「恋」ってやつなのか。

 ……チャンスかもしれない。今なら変なイメージなしで俺の話を聞いてくれるかもしれない。一縷の望みをかけて俺は彼女に話しかけた。

 

「エリカさん、お願いがあります。俺にチャンスをください。まずはこの勝負、勝ったらバッジと一緒に俺のこれからを見ていて欲しいんです」

「……これから、ですか?」

 

 慌てふためいていたエリカさんの動きが止まって、聞く態勢に入ってくれた。

 

「はい。エリカさんがさっき言った色んな噂って、あまりいいものがないはずです。自覚もあります。でも俺、今エリカさんに会って、心の底から変わりたい、あなたに相応しい人になりたい、って思いました。それをあなたの目で見て欲しいんです。もし、あなたの目に変化が見られないようならそのまま放っておいてもらって構いません。ですが、もし認めてもらえたら、その時は……恋人候補、いえ、友人、ちょっと親しい知り合いでも構いません。そのチャンスが欲しいんです!」

 

 俺は必死になって頭を下げた。ほんの少しでいい。地獄に垂らされる一本の糸を俺にください!

 

「……ふふ。私に告白してくださった殿方は大勢いますが、こんなに情熱を持って口説かれたのは初めてですわ。わかりました。もしこのバトルで私に勝てたらバッジを託し、あなたの想いを見極めさせて頂きますわ」

「ありがとうございます!」

 

 気づけばエリカさんはいつものぽわぽわした空気の彼女に戻っていた。だがそんなことよりも大事なことがある。チャンスをもらえた。それはとても小さな可能性。今にも切れてしまいそうな細い細い糸。だけどゼロじゃない。それを本人から直接言ってもらえたのだ。喜びと感謝で胸が一杯になり、その場で頭を下げた。

 

「では落ち着いたら勝負を始めましょう」

「いえ、今すぐお願いします!」

「え?……すごい気迫です……」

 

 当たり前だ。こんな俺に優しい言葉と可能性をくれた彼女にいいところを見せる最初のチャンスであり、試練だ。さっきの喜びと感謝の相乗効果もあって、今俺の中じゃやる気という名のエネルギーが荒れ狂っている。

 俺は今持っている手持ちのボールを抱えて語りかける。

 

「みんな、今まですまなかった。これからは心を入れ替えてお前たちに接していくつもりだ。勝手な言い分だとは思う。けど、これからも助けてほしい。力を貸してほしい。俺の進む道にはお前たちが必要だ」

 

 もちろん俺の手持ちのポケモンたちも俺の被害者だ。横暴な態度で道具同然の扱いをしてきた。常に俺の側にいたこいつらは辛かったと思う。こんな言葉だけじゃ謝罪にもならないだろうし、勝手すぎるお願いをしている自覚もある。でも今すぐ俺にできることはこれが精一杯。

 そんな中、一つのボールがガタガタと揺れていた。

 

「……フシギソウ」

 

 俺の初めてのポケモン。一番付き合いの長い分、酷い時期も一番長い。だからきっと怒っているんだろう。その怒りは当然で、俺はそれを受け止める責任がある。

 俺はフシギソウをボールから解放する。フシギソウは真剣な眼差しでしばらく俺を見たあと、ゆっくり近づいてくる。俺は覚悟を決めて目を閉じて、来るべき衝撃に備えた。

 

 すりすり

 

 え?

 

 俺は恐る恐る薄眼を開けると、フシギソウが俺に擦り寄ってくれていた。そして俺が見てるのにきづくと、笑ってくれた。

 

「……なんで」

 

 なんであんな酷いことしたのに笑ってくれるのか。恨んでないのか?怒ってないのか?……俺を、許してくれるのか?

 フシギソウは一際大きな声で鳴くと力強く笑ってフィールドへと駆けて行った。

 

「よいポケモンと出会えましたね」

 

 そんなフシギソウを褒められたこと、それも惚れた相手に言ってもらえたことが嬉しかった。

 

「……はい!」

 

 俺はいつのまにか流れてた涙を拭き、精一杯応える。

 

「ありがとうフシギソウ。いや、お前さえよければ翠(スイ)ってニックネームで呼ばせてくれ」

 

 フシギソウはこっちを振り返って嬉しそうにひと鳴きして、正面に構えた。

 

「すいません、すぐなんて言って時間をとってしまって」

「構いませんよ。あなたとポケモンの絆というよいものを見せていただきましたから。しかし、だからといって手加減はしませんし負けませんわよ?」

「望むところです!」

「それでは、始めましょう」

「はい!」

 

 俺の人生において重要な一戦が始まる!

 

 

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