Bella Notte - 美しい夜 - 作:ウィル・オ・ウィスプ
#1 いつか死に行く運命を先送りにしただけ
#1 いつか死に行く運命を先送りにしただけ
コードネーム:コラソン。
彼の名前はドンキホーテ・ロシナンテ。海軍に所属する元天竜人であり、兄のドフラミンゴの海賊団へと潜入捜査をしていた。
しかし、手に入れた機密文書を海軍に届けようとして、悪魔の実の取引をめちゃくちゃにしたり、敵であるヴェルゴに見つかってしまい、怒りを買ったまま敵の目の前に転がり落ちてしまった。
ほぼ一方的な状態で銃を撃ち、撃ち返されて、自身は死んだものと思っていた。
起き上がろうとして、痛む体に鞭を打つことも出来ずにもう一度横になったまま視線を彷徨わせる。
「起きた?」
小さな影が覗き込んでいる。なんとかピントがあった為に、その子供がお粥を手に持っていたことに気付いた。
少し喉が渇いていたコラソンが、一瞬だけ目が釘付けになったのを見たのか子供は満足そうに頷いた。
「身体、起こせるか?無理なら、ゆっくりになるけど食べさせてやる」
「ぁ、あ…っ」
けほ、と咳き込んだコラソンを見兼ねて子供は傍らのカップからお茶を含むと、不慣れそうにしながら口移しでお茶を飲ませる。
求めきっていた体が潤って、より欲しいと要求する。
子懸命に足を頭の下へと滑り込ませた子供が、 ふー、ふー、と息を吹きつけながらも一口食べて熱さを確認してから食べさせようとお粥ののったスプーンを押し付けて、上手く食べるといたわるように撫でられるものだから思わず頬に熱が溜まる。
子供はふと振り返ると置いていた木の枝を焚き火へと放り込んで、じっと火の様子を見ていた。
腕をあげれば、シャツはあのピンクのハートの己の血で真っ赤に染め上がっていたものではなく、いつの間にか白いワイシャツとズボンに着替えておりドフラミンゴと色違いのコートが掘られた溝の上で乾かされている。
コラソンは痛みもなく今まで通りに動けるようになった体で肘をつきながらこの五日間で仲良くなったと思われる自分を助けた子供…ローを撫でて、慈愛のあふれる笑みでその寝息を見守った。
痛みに呻くことも無くなった三日目から、お湯を炊いてコラソンの身体を二種類のタオルで拭いてやったりと甲斐甲斐しく世話を焼く小さな命。
たったひとつだけしかない毛布をお腹にかけて、293cmの巨体で潰さないようにと何度も気にかけている。
助けられると思ったから、とただ一言告げた少年は二年前にひょんなことからオペオペの実を食べた能力者だった。
元から医者の親を持っていたが、白い町・フレバンスと呼ばれる政府の闇から唯一逃げ出したと思われる。
伝電虫で報告したコラソンは、現在はなんとか海軍中佐としての地位が生きてるだけの、ただの怪我人だった。元帥たるセンゴクは無理はしては行けないとか、出来るなら子供を保護するとか、親のように心配されながらも、この子は間違いなく海賊団でも作って海へ渡りそうだと笑ってしまった時のセンゴクの仕方がないと言わんばかりの溜息に余計笑ってしまったのは事実だった。
有給休暇と言って、センゴクはローと共に居るよう命じた。
そのため、コラソンことロシナンテ海軍本部中佐は動けるようになるとローと共に生活を始める。ローは嫌がる素振りも見せずにロシナンテと共に居られることを喜んだ。
上着にくるまって眠っていた、今は寄り添って眠っているほどだ。
ローは時折絡んできた海賊なんかで色々オペオペの実の練習や医学書なんかを読み耽っては勉強をしている。仕舞いにはロシナンテが海軍を続けられなかったら養うとまで言い始めたので軽く叩いたほどだ。
12歳の子供を撫でて、ロシナンテは眠りすぎた体を動かした。洞窟の向こうは自然の雪が積もってバリケードのようになっているけれど、その向こうの夜空が色をつけている。
ぱちっ、と火の粉が飛んだ。
ありがとうございました