嫌われたくないからって自分の意見を出せない自分が嫌いだ。
自信がないのが嫌いだ。
なんていうか。いつも僕の中には雨雲が漂っていた。
僕には、何もない。
歓声轟くスタジアム。鳴り響く応援歌と舞い踊る選手。
ここは潮鳴市。すぐそばに海が隣接し、最近大きな発展を遂げた地方都市・・・の中にある、潮鳴マリンスタジアム。平たく言えば野球場。
そしてここが、僕の職場だ。
「8回の裏、ドルフィンズ選手の交代をお知らせいたします。9番三原に代わりまして、小鳥遊。バッター、小鳥遊。背番号33.」
名前がコールされ、バッターボックスに向かう。点差は一点。ツーアウトランナーなし。
とりあえず、塁に出ることだけ考えよう。うん。
相手投手が振りかぶる。やるしかないなら、それしかない・・・っ!!
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「で、結果デットボールか。」
ところ変わってその日の夜。とあるレストラン。先ほどとは別の盛り上がり。いわゆる合コン会場ってやつ。
「そもそもルーキーに何を求めてるのさぁ・・・」
小鳥遊空。それが僕の名前。潮鳴ブルードルフィンズに所属するルーキーだ。
隣にいるのは朝比奈翔、大学時代の同期。・・・今日は数合わせで合コンに来たけど。正直早く帰りたい。
「で、彼女持ちのリア充くん。僕帰っていい??」影薄いからかな。まったく相手にされてないんだけど。というか、泣きそう。
「お、おう・・・ま、また今度!また今度な!!!」
店にを出ると、夏にしては少々涼しい風が頬をなでる。最近昼間が暑すぎるし、たまには日中もこんな風ふかないかなぁ。
「だからっ!~・・・」
・・・あれ?なんか聞き覚えのある声。振り返ると40後半ぐらいの男性ときれいなブランドががtt・・・あっ!あの人この間一緒に飲んだ人!?
確か、あの時は待ち合わせドダキャンされた挙句、人間違いしちゃって結局いい感じで落ち着いたけど。・・・まさかまた会えるなんて。でも、なんか様子が変?
「だから、毎回いきなりあって決めるなんて乱暴すぎない?」
「いいたいことはわかるけどよぉ・・・で?肝心な理由を聞かせろよ!今度は何が一体駄目だったんだ!?」
「確かにいい人だったわ?お仕事の話よりプライベートのお話も多くて、緊張している私にもすごくよくしてくれたし。」
ええ、逆タマレベル断っちゃったの!?僕だったらホイホイいきそうだけど。
「それに、父のことは気にしなくて結構です。恋愛ぐらい自分でできますので。」そういって彼女はどこか・・・海の方へ歩いて行った。うわ、あのおじさん周りから白い目で見られてる。うわぁ・・・
けど。なぜかはわからないけど、僕の足は彼女の向かった先に歩いていった。
「あ、あの!」
声をかけた彼女は振り返って、一瞬間をおいて一言。
「どちら様でしょう?」
うわ、絶対わざとらしい笑顔!覚えてるよこの人!!
「ふふ、冗談。・・・もしかして聞いてた?」
ちょっと困ったような顔でこっちを向く彼女。そりゃそうか。誰だってそういうのは聞かれたくないよね。
「・・・ねっ、ちょっと付き合ってくれない?そこの海辺まで。」
潮鳴の海岸は、この街の観光地の一つだ。時間関係なくカップルや学生たちが騒いでいる。夕日の名所の一つだ。
そんな目の前の彼女は、寂しそうな顔をしながら・・・とても、きれいだった。特に首筋。
「え、えっと・・・」しまった。
よく考えたら名前知らないじゃん!!!
「咲よ。鳴瀬、咲。」
「咲さんは、その・・・付き合いたくない理由とかあるの?」
咲さんの話は、どこかやっぱり寂しそうで。確かに、異性とあまり付き合いがないと誰かと恋愛するなんて、考えにはあまりならないよね。どこかのやつに教えてあげたい考えだ。
・・・けど、僕も同じ。付き合うとか考えたことなかった。けど・・・
「咲さん。・・・僕と、付き合ってもらえませんか。」
なぜか、この人だけは。勘違いで会話したあの日からずっと
自分の中で特別になったんだ。
「僕もあまり恋愛とかわからないけど、たぶん一目ぼれで・・・!だから!」
「ええっ、それもいいかもしれないわね。」
・・・えっ?
「あら?女性に冗談で告白したの?・・・少なくとも私はもっとあなたのことを知りたいって思ってる。これは事実よ?」
・・・夢みたいだ。憧れの人と、恋人になれる・・・?
こうして、二人の恋愛初心者は晴れて恋人同士になった。
そして、物語は動き出す。