※この作品はR-18です。

泣き虫の白球と明日の天気は?   作:ヨコヨコ

4 / 7
4-咲さん 初めての野球観戦

「ど、どうしよう・・・」昼下がりのオフィス。机に向かってうなだれる私には最大のピンチ。

 

「野球のチケットなんて、どうやって買えばいいかわからないわよー・・・!!」

 

午前中、空くんに自信満々に試合見に行くなんて言っちゃったけどぉ・・・!こんなに席の種類があるなんて聞いてない!!

それに彼のチームがどっちのベンチかもわからないし!遠くだと気づいてもらえないかもしれないし!!

 

「・・・無理かもしれないけど、、気づいてもらいたいな。」

 

寮生活の彼はやっぱり外泊とかには厳しいらしくて。会うときは本当に極わずかな時間になっちゃう。野球選手の奥さんが大変だって話はよく聞くけれど、こんなに大変なのね。

 

そんなとき、私のスマホに着信が。相手は私の友人の立花かざみ。

 

『今日の彼氏が出る試合のチケットあるけどいく?』本当、ナイスタイミング。

行くとだけ返事をして、彼の職場へと向かった。

 

バスに乗り込むとユニフォーム姿の老若男女。いつもはすぐに家に帰ってたから気づかなかったけど、やっぱりファンって多いんだ。

 

・・・初めて見る、彼のもう一つの顔。学生時代の彼の動画を見たとき、普段の彼とはまったく違うことに驚いた。なんていうか、どこか無関心な表情。

私の前ではたぶん、見せてくれない表情。そのためには、もっと彼のことを知りたいって思った。今日は、そのための第一歩。

そんなことを考えてるうちに、彼の球場・・・潮鳴オーションスタジアムにバスは滑り込んだ。

 

「ここが、野球場・・・」その大きさに、思わず言葉を失う。調べたら野球だけじゃなくてコンサートとかもできるらしい。

 

「咲ーっ!」

 

向こうから走ってくる女性・・・私の友人の立花かざみだった。

 

「ごめんね、遅くなっちゃって・・・」

 

「いーのいーの。ほら、早くいかないと!」

 

かざみに連れられて、球場の中に入る。中にはいろんな屋台が出てて遊園地みたいな感じだった。

 

「ね、ねぇかざみ?色々買わなくてもいいの?」

 

「だって指定席だからいつでも買いに行けるし。それよりほらついた!」

 

そこは、まるで大きな公園みたいだった。というより、何も知らずに来たらピクニックに連れてこられたのかと思っちゃう。そんなグラウンドでは、彼のチームが練習してた。・・・空君、以外とすぐわかっちゃう。

声をかけようとしたけど、前の子供たちの声にかき消されちゃって。ふふっ、なんかかわいい。

 

「咲?・・・あら~?彼氏くんに随分ご執心なのね?」

 

「そ、そんなことないわよ!?な、何か買ってくるわね?」

かざみの言葉に思わず顔が熱くなる。その表情を見られたくないから、そのままコンコースへ向かった。

 

コンコースには食べ物とかグッズの屋台がたくさん。ほんと、ここだけで三食過ごせちゃいそう。

 

「あら?これって・・・」そんな中、私が見つけたのはチームのショップ。・・・に飾ってある、彼のユニフォーム。思わず、行きに見た他のファンを思い出す。みんな自分の応援している選手のグッズをこうやってそろえていくのね。

 

思わず、目の前の彼のユニフォームを手に取る。テニスぐらいしかやったことなかったけれど・・・恋人のユニフォームを着るって、変じゃない・・・わよね?

 

「・・・すいません、これとこれください。」

 

彼のユニフォーム。ふふっ、なんだかうれしくなっちゃう。ただ、これだけじゃまたかざみにいじられちゃうわね。何かおつまみでも買っていこうかしら。

 

・・・

 

 

この後、かざみにまたいじられちゃったけど試合が始まった。はじめてみる野球。大歓声に鳴り響く応援歌。あまり私は歌うの得意じゃないけれど、多分あの中で歌ってみたいって思っちゃう。

 

そして最終回。このままじゃ彼のチームが負けちゃう。相手の投げてる人は海外でも野球をしていた人らしい。私も何度かニュースで見たことがある。でも、彼はこんな場面でも出るのか・・・そう思っていた時だった。

 

「咲!あそこ!!」かざみの指の先には、見覚えのある背番号。彼が、そこにいた。

この場面・・・負けちゃうかもしれないこの瞬間。彼は何を思ってるのかな。

 

その時。ふと一瞬、彼と目があった。ふと見せてくれたいつもの彼の笑顔。ああ・・・

 

本当にあなたは、こんな時も私のことを考えてくれていたんだ。

いつも見せる、子犬のような困った顔も、真剣な表情も、柔らかい笑顔もみんな。私の心をすきまなく埋めてくれる。

 

そんなあなたを、私はずっと支えていたい。だから、普段はこんなこと思わないけれど。もし神様がいるなら、私の運を使ってもいいから。彼に、打たせてあげて・・・!

 

パキンっ・・・!そんな音と一緒に、白球は空高く舞い上がって・・・スタンドに入った。

周りが大喜び。そして彼も大喜びする姿。ああ、勝ったんだ・・・!

 

彼へのご褒美、考えておかないと。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。