さて。今日のゲームをがんばったらご褒美という咲さんからの釣り餌に見事に引っ掛かり(いやなくても普通にやってたけどね。)期待を胸に僕は咲さんの自宅マンションへ。
「・・・えぇ、ここ最高級マンションじゃん・・・」
潮鳴市の中心部から少し離れたところにある高層マンション。少なくとも今の僕の年俸じゃ一年も住めないであろうその場所の玄関に思わず立ちすくんでしまう。・・・いや確かにお金持ちとは聞いてたけどさぁ・・・
「気象予報士ってやっぱりお金持ってるのかな。」なんていうか、年上とは恋人の方が稼ぎがいいって少し複雑。咲さんはきっと何も思ってないと思うけれど。
とりあえず、咲さんの部屋に行かないと。とりあえず、管理人さんに言えば大丈夫・・・
「いや大丈夫すぎじゃない!?」思わずエレベーターの中で独り言を漏らしてしまう。だって名前伝えたらすんなり入れたけど!?咲さんなんて伝えたのか聞いておかなくちゃ・・・そうこうしているうちに、エレベーターは咲さんが住むフロアへ到着したことを告げる。20階かぁ・・・高いとこ、だめなんだよなぁ・・・
なんていう暇もなく。咲さんの家のチャイムを鳴らす。すぐに中から足音が聞こえる。
「ふふっ、いらっしゃい。」
前の私服と違って今日はスーツ・・・どうしよ、下のバットが素振りし始めた。
「疲れてるでしょ?早く入ってごはんにしましょ?」
ご飯・・・咲さんの手作り?それだけでご褒美のレベルを軽々越してやがる!!!
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「ごちそうさまでしたっ!」「お粗末様でした。ふふっ、本当によく食べたわね?」
今日の夕食はシーザーサラダにカルパッチョ、メインにビーフシチューだった。いや、咲さんの料理これお金払わないといけないやつじゃない?
「本当に男の子ってよく食べるのね。足りなかったら何か作るけど・・・」
「十分です!?いやほんt咲さん?冷蔵庫から何だし・・・咲さんストップ!!咲さん!!」
冷蔵庫から何出したかと思えば牛肉の塊出してきたんだけど!?え、あんなの本当に変えるの!?
「あらそう?・・・私の作ったご飯なんて、一流の寮母さんが作ってくれるご飯より美味しくないわよね・・・」
ああっ、ハイライトさん仕事して!咲さん打たれ弱すぎない!?
・・・
「ふぅ・・・本当に美味しかった。咲さんって料理すごく上手なんだね。」食後のひと時。僕はコーヒーで咲さんは紅茶。ソファーで隣同士並んでひと時を過ごす。
「ふふっ、たくさん食べてくれる姿みたらうれしくなっちゃうもの。今日はいつまでいれるの?」
「そうだね・・・咲さん明日仕事なんでしょ?それまでいれるかな。・・・さみしんぼさん。」
そういうと、咲さんは何も言わず僕の肩に顔を乗せる。お互い忙しくて今日の朝が初めての電話だった。どうやら相当寂しかったらしい。そっと頭を撫でてあげる。
「・・・ふふっ、親以外でこんな風に頭を撫でられるなんて初めてだけど、なんだか癖になっちゃいそう。」
「咲さんがそう言ってくれるなら、いつだってしてあげるよ。このぐらいしかできないから。」
お互いにこういったことには縁がなかったらしく、どこか顔が赤い。でも、咲さんって本当に美人だし、すっごくいい匂いする・・・
「どうしたの?私の顔に何かついてる?」
「え?あ、ううん。なんかいい匂いがするなって思って。アロマか何か?」そう聞いてみると、彼女はどこか気まずそうに一度頭を下ろし、部屋の奥にあったであろう機械に触れた。
「ごめんなさい、苦手だった・・・?」
「ううん。むしろ、咲さんがなんでこんなにいい匂いがするのかなって思ってたから。アロマなら納得。」むしろ、僕なんて汗かいた後の制汗剤ぐらいしか気にしてなかったし、香水なんて考えたこともなかった。こういうところやっぱり女性なんだなぁ。
その後も、アロマについて饒舌に話す咲さん。どんな人でも好きなことを話している瞬間っていい笑顔するんだよね。
「ところで咲さん。渡したいものがあるんだけど・・・」
きょとんとする咲さんを横目に、僕はカバンの中からとあるものを取り出した。
「これ、今日のホームランボール。咲さんにもらってほしいんだ。」
取り出したのは、今日の初ホームランボール。本当なら、実家とかに置くのが一番なんだろうけど、これは咲さんに渡したかった。
「え、ええっ!?駄目よそんな・・・これはあなたが持ってないと!」
「ううん。これを打てたのは咲さんがいてくれたからだよ。だから、最初のホームランボールは咲さんに渡そうと思ってたんだ。・・・もらってくれないかな?」
膝をついてボールを掲げる。
「・・・もう、年下なのに女性の喜びそうなことはちゃんとわかってるのね。じゃあ・・・これはちゃんと飾らせてもらうね。」
受け取ってくれた時の彼女の笑顔を見ると、ああやっぱり、僕はこの人が好きなんだって改めて感じることができた。
これからの長いシーズン。彼女がいればきっとなんとかなる。そしていつかは伝えるんだ。