ドアが開き、現れたドラゴンの姿を見た狼と豹人はお迎えに参りましたと緊張した面持ちで答えた、どうぞ、こちらへと声をかけようとしたが、ドラゴンの隣に少年の様な狼人がいることに違和感を感じた。
「失礼ですが、司令官殿、その少年は」
この星の住人なのは明らかだ、それも毛色からして高位ランクの狼人ではないのは一目瞭然だ、二人の顔が険しいものになるのも無理はない。
「彼は私の案内役を努めて貰っている、ここに滞在中の市井の事情など知る為にね」
「そ、それは、でしたら、こちらで案内役を」
「遠慮しておく、今の現在の実情を知りたいのだ、彼は二階層だの住人だが、父親が誰か知っているのかね」
そう言われて二人の獣人は、まじまじと青年を見た、首から下がっているプレートに豹人が気づき、先だって歩こうとしたときだ。
通路の向こうから黒い毛並み狼人がやってきた、二人の狼人を従えているところを見ると高官なのは明らかだ。
「ようこそ、アロイド殿、ところで」
少年が萎縮したのも無理はない、だが、ドラゴンは先程と同じ言葉を繰り返した。
「貴公の案内役なら、私の直属の部下を用意しよう」
「ありがたい申し出だが、君の仕事に支障が出ては大変だ」
ドラゴンはわずかに肩を竦めると、続けて猿人族がと口を開いた。
「半年ほど前に、こちらを訪問された際のことだが」
狼人は無言になった、だが、それは、ほんの一瞬だ。
「実は猿人族を迎えるのは、私の代では初めてで、何か問題が」
「いや、とても満足しておられた、ただ、ヒューマンの資料を見ることができないのをとても残念がっていた、スケジュールの調整も難しかっただろう、今回の訪問の結果を楽しみにしているようだ」
その言葉に狼人は黙りこんだ、こちらの事情を知っているのか、それとも自分たちは他の獣人達とも密接な関係だという牽制か、伺う様な視線を相手は気づいていないのか、このとき気づいた、ドラゴンの視線は廊下の向こうへと向けられているのだ、狼人は顔を上げて、そちらを見た。
人間の女がこちらへ向かってくる、部屋にいたのではなかったのか。
「来てくれたのね」
声のトーンが違う気がする、これは人間の女は喜んでいるのかと狼人は察した、というのも表情や態度というのは獣人からしてみれば区別、いや、感じ取ることが難しいのだ
この数日で接したとして何を考えているか正直わからない、なのに。
「約束した筈だ、それに相手が女性なら尚更だ」
そう言ってドラゴンは持っていた荷物を少年に手渡すと軽く両手を広げた。
「再会を祝して、抱擁とキスをしてくれないかね、あなたから」
「それは、この星の挨拶なの」
「ご想像にお任せするよ」
女の体かすっぽりとドラゴンの腕の中に収まった、すると女は口元に自分の顔を寄せた。
高官の狼人は怒っているように見える、同族だからわかるなるべくなら観たくないと少年は視線をそらし、すっと隣へ耳と視線をわずかに傾けた。
すると、うっすらと目を開けたドラゴンが自分を見た、ここへ来る前に人間について教えて貰ったのだ。
これは、わざと、このセンターの役員、いや、高官達を挑発しているのだろうか。
「どういうつもりだ、あれは」
「我々に対する、何らかの意思表示ですか」
「まさか、あのヒューマンを連れ帰るつもりでは」
「そんな事は許さん、そもそもドラゴン族は」
モニターを通して、この様子を見ていた狼、熊、虎人の三人は互いに顔を見合わせると、再び、視線を移した。
ヒューマンが現れたことは秘密の筈だった、だが、情報というのは簡単にどこからでも漏れるものだ、ドラゴンの高官の訪問、市井の報道局が知っていたというのも、当人が事前に流していたのかもしれない、もし、そうだとしたらドラゴン族はは侮れない。
「あれは本当の事なのかもしれないな」
ぽつりと、独り言の様に虎人が漏らした。
「ヒューマンの血肉を食べると病気や怪我だけでなく寿命が延びるという」
「なんだ、それは」
「聞いてみるか、当人に」
それはヒューマンの女、いや、ドラゴンにかと言いかけて、虎と狼は黙りこんだ。