ようこそ櫛田桔梗とイチャコラできる部屋へ 作:しゅー
「何でこうなった……?」
春風が心地好い季節なのに、俺は買い物帰りにため息をついた。
それは何故か……せっかく好きなラノベである『ようこそ実力至上主義の教室へ』の世界に転生したが、目が覚めたら既に二十歳になっていたからだ。
これではよう実の世界の舞台である東京都高度育成高等学校に通えない。
神様から転生特典で色々と能力を貰ったのに……能力使って学校の美少女にエロいことすることができない。
一応この世界で生きていたということになっており、俺は櫛田桔梗の幼馴染みという設定になっている。
しかも俺のことをお兄ちゃんって呼んで慕ってくれていてベタ惚れ状態……なのに会うことができない。
全くもってこの世界に転生した意味が……。
「え? 櫛田桔梗?」
肩まである亜麻色の髪、キャラメル色の大きな瞳、シミ一つない綺麗な肌はどう見てもあの櫛田だ。
高等育成高等学校は在学中、敷地内から出ることが許されないので、敷地外にいるのはおかしい。
部活の試合などで外に出ることはあるが、櫛田はどこか部活に入っているわけではなかったはずだ。
何でこんなとこにいるのだろうか?
そもそも高校に入学していない? いや、年齢差を考えると、もう入学しているはずだ。
それどころか二年生に進級していないとおかしい。
しかも制服じゃなくてニットタイプのトップスにミニスカートと私服だ。
「お、お兄ちゃん?」
櫛田と目が合い、大きな瞳が見開かれる。
俺のことをお兄ちゃんと呼んだことから、きちんと櫛田の幼馴染みとして記憶があるようだ。
「お、お兄ちゃんだよね? 私、桔梗だよ」
「えっと、わかってるんだけど、高度育成高等学校に入学したって聞いてたから……」
「そうなんだけど……」
櫛田の顔が曇ったことから何かあったことは確実。
「どこか落ち着ける場所で話そうか?」
「う、うん」
俺は櫛田を連れて自分の家に向かった。
☆
「ここがお兄ちゃんの部屋……」
昔に良く一緒にいた影響なのか、櫛田は抵抗なく俺の部屋に入った。
俺はこの世界では一人暮らしをしており、間取りは1LDK。
「お茶を入れるからソファーにでも座って」
「うん」
俺は冷蔵庫からお茶を取り出して、櫛田の元に持っていく。
喉が渇いていたのだろう、コップに入ったお茶を一気に飲み干した。
「何で外にいたの? 在学中は出れないんでしょ?」
「そ、それは……」
再度、櫛田の顔が曇る。
外にいることから大体予想がついているけど、念のために櫛田の口から聞きたい。
「あのね……私、退学になっちゃったの……」
「退学?」
「うん……」
やっぱり俺の予想通りだった。
俺が持っている知識はラノベの11.5巻までで、その先は知らない。
原作の主人公である
だからそのせいで退学になってしまったのだろう。
「それでね……高校も卒業できないのと、中学のこともあって、お母さんたちに見切られちゃって……」
櫛田は中学の時にクラスを崩壊させた過去を持つ。
生理的に無理な人でも仲良くしていた櫛田は相当ストレスを溜め込んでいた。
そのストレスをブログで暴言をはくことでストレスを発散しており、それがクラスメイトにバレた。
ブログについて問い詰められたが、櫛田はありとあらゆる秘密を暴露。
それで教室内は暴動が起こってしまい、クラスが崩壊した。
そのことと高校すら卒業できないから、親はもう面倒を見たくないと思ったのだろう。
「私は……もう行くとこがないの……」
櫛田の瞳には涙が浮かんでいる。
今まで学生だった未成年の櫛田には、親のスネをかじらないと生活は厳しいだろう。
寮も実家も追い出されてしまったのだから、住む場所すらない。
「なら、ここに住むか?」
よう実の世界の舞台である高度育成高等学校に入学できない以上、俺は櫛田以外の人と絡むことができないだろう。
唯一絡むことができる櫛田には、ここから離れてもらっては困るのだ。
「いいの? 私の本性は知ってるよね?」
まるで天使のような振る舞いをしている櫛田であるが、本性は極度の承認欲求の持ち主で、傲慢で利己的。
「うん。実は俺にベタ惚れだってこと」
「そ、それは……」
櫛田の顔が一気に紅潮し、少し恥ずかしそうにしている。
「一番大事な時に一緒にいれなくて悪いな」
俺は櫛田を抱きしめ、自分の胸に彼女の顔をうずめさせた。
一番大事な時期とはもちろん櫛田が中学の時。
神様によってこの世界で生きたという記憶を植え付けて貰ったのだが、俺は高度育成高等学校の卒業生ということになっている。
卒業後はここで一人暮らしを始めて、櫛田に会うことがなかった。
子供の頃の櫛田は俺に誉められたいという気持ちが強く、そのために頑張っていたようだ。
でも、俺が櫛田の側から離れてしまったために、中学では周囲から没落……結果的にクラスを崩壊させてしまった。
恐らくは俺が櫛田から離れなければ、こんなことにはならなかっただろう。
本当に記憶の中の俺は何やってるんだ? とツッコミたくなってしまう。
こんな可愛い女の子に惚れられているのだから、付き合えば良かったのに。
「本当だよ。責任取って私から離れないで」
「ああ。ずっと一緒にいるよ」
俺たちは見つめ合うと自然に距離が縮まって……産まれて初めてのキスをした。