※この作品はR-18です。

優しき日輪と鬼殺隊の美蝶   作:蓮紅

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※キャプション必読・リクエストに関しての説明あり
・鬼滅の刃原作に関するネタバレあり。原作未読の方は閲覧注意。
・鬼滅の刃二次創作小説です。
・原作・キャラクターの性格・設定等改変の可能性大。一部キャラ崩壊注意。
・思い付き次第で何度も編集を繰り返す可能性大。お時間がある時で良いので、良ければ読み返してみて下さい。
・誤字脱字等のミス・内容の矛盾等の指摘は大歓迎。理不尽なクレームは受け付けません。
・コメント・メッセージ大歓迎。創作意欲の燃料になります。コメント・メッセージの返信は必ずさせて頂きますのでどしどし御投稿下さい。
・SS内容に関してはネタパクリと言う名の盗作を間違えてしないよう気を付けてますが、もし私が投稿した作品が既に別の作者様と内容が酷似していた場合、メッセージにて御連絡下さい。

※リクエストに関して
メッセージにてリクエスト内容を御連絡下さい。
以下規約参照
・100%受け付けられると保証された訳では御座いません。
・炭治郎×鬼滅女子のみ。
・作者は遅筆で怠惰癖あり。またリアルの都合や他SSの執筆で投稿が遅くなる可能性大。
・CP、全年齢かR作品か、ネタの内容を御記入下さい。ネタの内容が詳細で有れば有る程、筆が進むので御協力をお願い致します。


第拾玖話 日輪への想いで赫蝶は暴走す

東京府・某所

 

大正二年(一九一三年) 三月十三日(木)

時間帯:朝

天気:曇り

 

 

人類の宿敵・鬼を狩る戦闘者集団"鬼殺隊"の重要施設である蝶屋敷に二人の隊士が向かって歩いていた。

 

一人は、三角模様が無数に描かれた黄色の羽織を隊服の上に纏う金髪の青少年、我妻善逸。

 

もう一人は、剥製にした猪の頭を常に被っている上半身裸の青少年、嘴平伊之助だ。

被り物のせいで素顔は見えないが、その素顔は美女と見間違えんばかりの美貌を誇る。

 

二人は炭治郎の同期に当たる新進気鋭の精鋭隊士であり、知っている者からは期待されている逸材である。はっきり言ってしまえば、才能だけなら炭治郎を超える天才達だ。

 

また、炭治郎と同様に二人とも五感の能力の一つが突出して優れている。善逸は音で種族や感情すら聞き分けられる程の超感覚の聴覚を持ち、伊之助は集中して使えば広範囲で周辺を探知可能な程の超感覚の触覚を持っている。

 

尤も、性格に難があるため事情を知らぬ者や初見の者は、一見しただけでは見抜くのは極めて難しいのだが。

 

「もう直ぐ蝶屋敷だっ。また可愛い女の子に治療して貰える~♪」

 

「おい紋逸っ! 朝飯喰わずにずっと歩いたせいで、俺ぁ腹減ったぞっ! 本当に天ぷらがあそこで食えるんだろうなっ!?」

 

「俺もお腹空いたよ。それから善逸、な? 一応チュン太郎に手紙持たせたから間違いないとは思うぞ。結果は着いてからのお楽しみって奴だ。」

 

善逸はそう言って伊之助を静かにさせると、足早に蝶屋敷へ向かう。伊之助もそれに付いて行った。

 

 

 

 

 

 

東京府・蝶屋敷

 

大正二年(一九一三年) 三月十三日(木)

時間帯:朝

天気:曇り

 

 

そして二人は朝の十時前に蝶屋敷の門前にまで到着し、門前の中を通ると善逸は鼻の穴を名一杯広げてそこの空気を吸った。

炭治郎程、善逸は嗅覚は優れておらず常人のそれと変わらないのだが、善逸は思い込みから蝶屋敷の匂いで一人勝手に舞い上がっていた。

 

「やっぱり花と可愛い女の子の匂いがするなぁ~~あぁ~~良い匂いだなぁ~。」

 

「そ、そうかぁ? こっからじゃ花の匂いなんてしねぇだろ? お前。何時から権八郎みたいに鼻が良くなったんだ?」

 

「何言ってんだよ! 蝶屋敷からは元々素敵な匂いと音が……あれ? なんか前に見たキリスト教の教会の鐘みたいな音が蝶屋敷中から聞こえて来るんだけど……リンゴーンリンゴーンって感じの。確かこの音って……。」

 

「音の事なんか言われても分かんねぇよ! 何時までもこんなところにいないでさっさと行くぞ紋逸!」

 

「だーかーら善逸だって言ってるだろー!」

 

蝶屋敷へ先に入って行く伊之助に、善逸は何時までも名前の呼び間違えを訂正しながら付いて行った。

 

 

 

 

 

 

広間に机を並べて今回の朝昼兼用食を頂くと決めて蝶屋敷の面々は集まっていた。其処に善逸と伊之助が合流する。

 

「アオイちゃん久しぶり! 俺が居なくて寂しかった? 会えて嬉しい?」

 

「寂しいなんてちっとも思いませんでしたけど、再会出来て嬉しいですよ。善逸さん。」

 

「嬉しいだなんて、いひひひひぃ!」

 

善逸は身体をクネクネさせてながら一人喜ぶ、そして視線はアオイの豊満な乳房に思い切り目線を落としていたが、アオイは手慣れていると言わんばかりに、気にせず無視して伊之助の下へ足を進める。

 

「おっ!? 天ぷらがちゃんとあるじゃねーか! どれ、まずは一つ……あいてっ!」

 

「伊之助さんっ! 摘み食いは止めて下さい!!」

 

伊之助が大皿に盛られた天ぷらを摘み食いしようとして手を伸ばしたところ、アオイがパシッ! と手を叩いて阻止する。その事に怒って伊之助は抗議する。

 

「何だよっ!? ちょっとぐらい良いじゃねぇーかよ!?」

 

「しのぶ様に怒られて挙句、ご飯抜きがご希望ですか?」

 

「うっ……分かったよ。待てば良いんだろ、待てば。」

 

伊之助はしのぶに怒られるのが怖いのか、しのぶの名前を聞いた途端、静かになって座り込む。

善逸も伊之助に倣って、同様にその隣に座る。するときよ達の様子が気になってアオイに質問する。

 

「なんか、皆ソワソワしてない? 皆から鳴る音が何時もと違うんだけどさ?」

 

「……私の口では説明しにくいので直接、ご覧になって下さい。直に分かりますよ。」

 

「むっ? アオイちゃんがそう言うなら……。」

 

善逸もアオイにそう言われて、納得して黙り込む。すると善逸の耳が、三人分の足音を聞き取る。

すると間も無く一人目が現れた。それはこの蝶屋敷の主人たる蟲柱・胡蝶しのぶであった。

 

「あっ! しのぶさんっ!? お久しぶりで……すっ!?」

 

善逸はしのぶに声を掛けたが、動揺して思わず口籠る。しのぶの美しい顔には青痣が見え、治療した痕が有った。またしのぶから憤怒の音を聞き取ったからだ。するとしのぶが善逸に声を掛けた。

 

「あらっ、お久しぶりですね。お帰りなさい、善逸君。」

 

「は、はい。ただいま帰りました……っ。」

 

善逸は怯えた様子でしのぶに返答する。伊之助はそんな善逸を見ながら、ヒソヒソとアオイに話し掛ける。

 

「な……なぁ? なんでしのぶはあんなに怒ってんだ? 肌がビリビリすんぞ。しかも怪我してるし。ってお前も何怒ってんだよ?」

 

「もう直分かりますよ。もう直……ねっ。」

 

アオイは伊之助の質問に対してそう言って双眸を閉じた。その整った顔に青筋を立てながら。

すると、残り二人の足音が広間にやって来た。それは栗花落カナヲと竈門炭治郎だった。

 

「おっ!? やっと来たんだ。ただいま、炭……はああぁぁぁぁぁ?!」

 

「善逸さんっ! 五月蠅いですよっ!!」

 

善逸が怒りに満ちた奇声を上げると、アオイがそれを聞いて抗議する。それは善逸が見たものに理由があった。

 

「~~❤」

 

「や、やぁ。善逸、伊之助。二人ともお帰り……っ。」

 

それは炭治郎の右腕をがっちりと掴んで幸せそうに腕を組んでいる、左眼に医療用の白い眼帯を着け、顔に青痣があるカナヲと、困惑気味な炭治郎の姿が有った。

 

 

 

 

 

 

大正二年(一九一三年) 三月十三日(木)

時間帯:早朝

天気:曇り

 

 

時間は今から早朝の蝶屋敷にまで遡る。

 

炭治郎と結ばれたアオイは、今までに無い程に上機嫌になっていた。一方のしのぶは嫉妬しつつもアオイを祝福していた。

 

朝食を終えた炭治郎と蝶屋敷の面々はそれぞれ己のするべき事を行うべく行動に移し始めた。

 

炭治郎は肉体の鍛錬を、しのぶは患者の診察を、アオイとなほ達は蝶屋敷の雑務と何時も通りの平和な日常を謳歌していた。

 

そしてそれが終わり、昼食後を終えての小休憩でしのぶとアオイはある事について話し合っていた。

 

それは炭治郎との情交(セックス)の順番である。しのぶはアオイに禰豆子の件を話そうか悩んだが、カナヲと合流してから話すべきと判断して黙っていた。

 

話し合いの結果、炭治郎の情交(セックス)は交代制による順番に決定したのである。

 

蝶屋敷に炭治郎としのぶが帰還した日の夜にアオイが担当したため、自動的に二日目はしのぶに順番が巡って来たのだ。禰豆子は眠っていたため、好機を逃すまいと一人で炭治郎と愛し合ったのだった。

 

一方、蝶屋敷に現在不在のカナヲは、三件の鬼討伐指令を終えて蝶屋敷に帰還中だった。この三件の任務の内、二件は下弦級の強敵であったが、カナヲは難無く討伐した。

 

その後、鎹烏から帰還許可を貰ってカナヲは急いで蝶屋敷の帰路へと着く。そして炭治郎としのぶが蝶屋敷に帰還して二日目の、まだ朝日が昇ったばかりの早朝に蝶屋敷への帰還を果たしたのである。

 

カナヲは蝶屋敷に到着して、身体を拭いて着替えた後、途中で眠たそうにしているきよと出会った。

 

「あっ……カナヲさん……おかえなさぁい。帰られたんですね……。」

 

「ただいま、きよ。それからおはよう。炭治郎って帰ってる?」

 

「はい、帰ってますよ。一昨日くらい前から。」

 

「……っ!」

 

きよからそう聞いて、何故自分はもっと早く戻れなかったのかと悔しんだ。

しかし、カナヲは直ぐに気持ちを切り替えて炭治郎の、竈門兄妹に充てられた部屋へと向かう。するときよがカナヲに声を掛けた。

 

「お部屋に行っても今はいませんよ、炭治郎さん……あっ!?」

 

「……部屋に居ない?……こんな時間に?……だったら炭治郎は今、何処に居るの?」

 

きよは思わぬ失言に思わず手を当てて閉口するも、時すでに遅し。カナヲは疑問に思いつつきよに炭治郎の居場所を尋ねた。

 

「あの、えーと……さぁ、私には何処に居るのかは……あ、朝練に出てるかもしれないですよっ!」

 

「……きよっ。」

 

「ひっ!?」

 

きよは適当な指摘でその場を逃れようとしたのだが、カナヲは据わった目できよを見詰めつつその両肩を掴んだ。

その事にきよは怯えた声を出して竦んだ。

 

何故、カナヲがそうしたのかと言うと、きよが嘘を吐いていると看破したからだ。

カナヲは悲しい過去の経緯により、超人的な視力を所持している。

 

普段のきよの仕草から彼女が嘘を吐いているか否か見抜くなど、カナヲにとっては造作も無い。

カナヲは目を据わらせたまま、きよに顔を近付けて質問をする。きよの恐怖心はますます上がった。

 

「炭治郎が何処に居るのか知っているなら、素直に教えて?」

 

「え、えーと……き、昨日の夜っ! しのぶ様のお部屋に炭治郎さんが入って行くのを見ましたっ!」

 

きよは顔を赤く染めてそう言った。きよだけでなく、すみもなほも患者から艶本を没収する過程で、その知識を年齢不相応に得ているのだ。

炭治郎としのぶが、そしてアオイがどう言った行為をしているか理解している。

きよの反応を見て、カナヲは嫌な予感に駆られ、そして怒りで赤く染まる。

 

「ちぃっ!?」

 

「きゃああっ!?」

 

カナヲはきよを突き飛ばすと、しのぶの部屋まで駆け出して行った。

突き飛ばされたきよは背中から壁に激突し、その痛みに悶絶する。しかしそんなものに構ってられないとばかりに急いで起き上がった。

 

「い、急いでアオイさんに知らせないと……っ!!」

 

きよは背中の痛みに顔を顰めながら、アオイの部屋に向かって駆け出した。

 

 

 

 

 

 

カナヲはしのぶの部屋まで駆け出していたが、部屋に近付くに連れて歩みが遅くなっていった。そして足音を殺して歩くようになっていた。

 

それは想像する最悪の想定を目にしたくないと言う考えから歩みが遅くなっていたのもあるが、僅かだが声が聞こえて来たからだ。

その声は部屋に近付くに連れて徐々に大きく聞こえて来た。そしてカナヲが(ドア)の前まで来ると事は起こった。

 

「ああああああああぁぁぁぁっっっ❤❤❤!!!」

 

「っ!?!?」

 

しのぶの部屋から、一際しのぶ本人と思われる声が扉越しからでもはっきり分かる程、色気に溢れた大声が聞こえて来た。

カナヲは思わず驚きからビクッ! と身体を震わせた。しかし、カナヲは焦燥感を抱きながら、膝を曲げて利き足である右足を胸まで上げると、思い切り力を込めて(ドア)を蹴り出した。

 

(ドア)は破損しながらバァン! と大音を立てて思い切り開き、付け根の金具が外れて再びバァン! と大きな音を立てて室内へと倒れ込んだ。

 

この(ドア)は鍵が掛かっていたのだが、カナヲの蹴撃を受けて鍵は壊れ(ドア)を固定していた蝶番は千切れる様に破損していた。

 

「っ!?」

 

「……っ。」

 

「師範っ! 炭治郎っ!!…………っ!!!??」

 

カナヲはしのぶの部屋に入って驚く事になる。

しのぶが全裸で同じく全裸になって寝台(ベッド)に寝ている炭治郎の上に跨っていたからだ。

 

カナヲからはしのぶ顔は見えなかったが、しのぶが顔を横に向けた事で室内は薄暗くとも断片的にだがその表情が見れた。

 

しのぶの整った美貌は真っ赤に染まり、涎を口から絶え間無く垂れ流させていた。尊敬する師範の見た事も無いだらしの無さ過ぎる、かつとてつもなく幸せそうな顔をしているしのぶと目線が合った。

 

敬愛する師範と最愛の想い人が愛し合っている姿を見たその瞬間、カナヲの頭の中で何かが切れる音がした。

 

 

 

 

 

「うわあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」

 

 

 

 

 

カナヲは絶叫しながら腰の日輪刀を抜刀してしのぶに斬り掛かった。

このカナヲの蛮行にしのぶと炭治郎は慌て始める。

 

「ちょっ!?」

 

「カナヲっ!? っ!?」

 

「うわっ?!」

 

炭治郎は反射的に寝台(ベッド)から起き上がろうとしたが、しのぶに突き飛ばされて再び寝台(ベッド)に寝転がった。

 

しのぶは炭治郎を寝台(ベッド)に突き飛ばして倒すと、寝台(ベッド)から頭を低くして飛び降りる。

カナヲの頭より高く振り翳した日輪刀の縦斬りの斬撃が、寝台(ベッド)に深く喰い込んで終わる。

 

「っ!……ああああああっ!!」

 

「カナヲっ!! 頼むっ! お願いだから落ち着いてくれっ!!」

 

炭治郎は三度、寝台(ベッド)から起き上がると、全裸のままカナヲの右腕を掴んで、カナヲの暴走を止めようとする。しかし、その行為もカナヲの怒りを助長するだけで終わってしまう。

 

「邪魔っ!?」

 

「ぐっ!?」

 

カナヲは寝台(ベッド)に喰い込んだ日輪刀から手を離すと、炭治郎に掴まれた右腕をそのまま掲げる。

すると炭治郎の腹部が無防備になり、其処へすかさずカナヲが空いた左手の拳を丸めて、強烈な正拳突きを炭治郎の腹筋に叩き込む。

 

カナヲの正拳突きを受けて、炭治郎はその激痛でカナヲの右腕を離してしまう。

右腕の自由を取り戻したカナヲは間髪入れずに下から炭治郎の顎へ目掛けて掌底打ちを叩き込んだ。

 

「がはぁっ!?」

 

炭治郎は宙に浮かんで、後頭部から床下に叩き落された。

 

「炭治郎君っ!? くっ!?」

 

炭治郎がカナヲに殴り倒されている間に、しのぶは自身の日輪刀を手にしていた。宙に舞う炭治郎と、直ぐに自身に標的を切り替えたカナヲを見て、しのぶは瞬時に判断した。

 

「ちぃっ!!」

 

しのぶは鞘に収めたままの日輪刀で、神速の刺突撃を繰り出す。しかしその刺突撃はカナヲにではなく、自室の窓に向かって放たれたものだった。

窓はその神速の刺突撃を受けてパリンッ! と甲高いと共に粉々に砕け散った。

 

しのぶは硝子片を踏まない様に注意しつつ、全裸のまま蝶屋敷の庭へと飛び出した。

 

「待てっ!?」

 

カナヲはしのぶの行動に仰天しつつ、憤怒の形相でしのぶを追跡した。

 

炭治郎は倒れて失神し、少ししてから目を覚ました。失神していた時間は数秒か数十秒か、はたまた数分経過していたのかは分からないが、そんなものを悠長に確認する余裕など、炭治郎には無い。

 

「……しのぶさんっ! カナヲっ!!」

 

炭治郎は倒れたまま、頭だけ上げてしのぶとカナヲの名前を呼ぶ。そして二人の後を追跡しようとした。

 

しかし、現状の自身の姿を見て、更に残されたしのぶの寝間着が目線に映る。炭治郎はしのぶが現在、どの様な格好でいるのかを考えた。

 

「……くそっ!!」

 

炭治郎は苛立ちながらそう悪態を吐く。そして焦りながら、祈りながら急いで洋袴(ズボン)を履き始めた。

 

――頼むから、最悪の事態にはならないでくれっ。

 

 

 

 

 

 

「てやぁぁぁっ! はあぁぁぁっ!! だああぁぁぁぁっ!!!」

 

「ちょっとっ!……待ってっ!!……待ちなさいっ!!……カナヲっ!!……っ!!!」

 

剣技のキレなど一切無く、ただ我武者羅に振り回しているだけの斬撃をしのぶは必死で躱しながら、カナヲを必死で説得を試みる。

しかしカナヲは一切しのぶの説得に耳を傾ける気は無い。その事実にしのぶは遂に怒りを覚える。

 

 

 

ガキィン!

 

 

 

しのぶは隙を見て、鞘に入れたままの日輪刀でカナヲと鍔迫り合いを行う。

 

「待ちなさいって言ってんでしょうが!? あんた良い加減にしなさいよっ!? 私にだって我慢の限度ってもんがあるんだからねっ!?」

 

「五月蠅いっ!! 黙れ黙れ黙れっ!!!」

 

「っ!……っ。」

 

しのぶの最終通告とも言える言葉を、カナヲは無下に振り払う様に叫ぶ。

しのぶはカナヲの言葉に動揺していると、カナヲが再び日輪刀を高く掲げ、一気に振り下ろす。

 

 

 

バキィッ!!

 

 

 

カナヲが叩き付けた日輪刀は、根元からへし折れる。そしてしのぶの日輪刀もまた、鞘もろともへし折れて鞘に内蔵されている毒液が蝶屋敷の庭に撒き散らされた。

 

愛刀を破壊されたしのぶは、遂に堪忍袋の緒が切れる。両眼を血走らせ青筋を破裂せんばかりに濃く浮かべながら、カナヲを罵倒する。

 

「こ……のっ……馬鹿継子(でし)っ!!」

 

「泥棒猫っ!! 淫乱師範!!! 淫売のアバズレ!!!!」

 

「「がああああぁぁぁぁぁっ!!!!」」

 

猛獣の咆哮の如き雄叫びを上げると、斬られた口火の如く雄叫びと共に、互いに向かってしのぶとカナヲは殴り合いを始めた。

 

殴り合いからの殴打に始まり、時に蹴撃、組手、掴み合いで転げ回ったり、更には髪を引っ張られたらそのまま頭突きを浴びせる事もあった。

 

しのぶとカナヲはその容姿端麗な美貌に青痣を作り、鼻と口から一筋の血を流していた。

 

しかし、純粋な肉弾戦となるとカナヲに分がある。しのぶは小柄で非力と言う弱点を、これまで戦闘経験で補っていたがそれにも限度があった。

 

何より、今のしのぶは全裸である。通常の鬼の爪牙すら通さない高品質な隊服を着用しているカナヲと、全裸で無防備なしのぶとでは蓄積される傷痍(ダメージ)が違う。

 

このままカナヲに優勢かと思われたが、そうは問屋が卸さなかった。

 

「だあぁっ!!」

 

「っ!……シィッ!」

 

カナヲが右手でしのぶを殴ろうとしたが、しのぶは前に出たままそれを躱す。

しのぶの顔を掠める様にカナヲの右手が通り過ぎると、すかさずしのぶも右手でカナヲに殴り掛かった。

 

「ぎゃぁっ!?」

 

「っ!……ふんっ。」

 

しのぶの正拳はそのままカナヲの左眼を殴り付ける。するとカナヲはその激痛に悶絶して、両手で殴られた左眼を抑えた。

殴られる直前に瞼を閉じていたため、眼球そのものに傷など無い。しかし、急所をやられて平然とはしていられなかった。

 

しのぶはカナヲの様子を見て鼻を鳴らすと、畳み掛けるために、拳を振り上げながら前に出た。

カナヲに殴り掛かる直前、しのぶはカナヲがニヤリと嗤う瞬間を見た。

 

「っ!!……がはっ!?」

 

カナヲが薄気味悪く嗤うのを見て、しのぶは一瞬動きを止めるも既に手遅れだった。

しのぶの腹部に目掛けて、カナヲの前蹴りが炸裂したからだ。しのぶは一瞬、身体をくの字に曲げて後方へと吹き飛んだ。

 

「っ!……げほげほっ!!」

 

「フ―――ッ! フ―――ッ! フ―――ッ!」

 

しのぶは地面に倒れ込んで咳き込むと、カナヲが左眼を抑えながら勝利を確信した様子で息を荒くしつつ、笑みを浮かべてしのぶに接近する。

 

しかし、その前に二人に声を掛ける者達が現れた。

 

「しのぶさんっ!?」

 

「カナヲっ!?」

 

駆け付けたのは上半身だけ肌蹴て半裸の炭治郎と、きよの報告を受けて駆け付けたアオイだった。

 

「あんたしのぶ様に何やってんのよっ!?」

 

「っ!……。」

 

アオイはカナヲに怒号を浴びせながら羽交い締めにする。一方の炭治郎は、カナヲに一瞬だけ視線を向けると、そのままカナヲを通り過ぎてしのぶの下へと駆け寄った。

 

「しのぶさん、とりあえずこれを羽織って下さい。」

 

「炭治郎君……ありがとう……っ❤」

 

「いいえ、遅くなってすみませんでした。」

 

しのぶは炭治郎が持って来た毛布で身を包み、自身の全裸を覆い隠す。炭治郎は贖罪の意味も込めて、しのぶを優しく抱き締めた。

その光景を、アオイに羽交い締めされたままのカナヲが愕然とした様子でその二人を見ていた。

 

「た、炭治郎っ! あのね、私……。」

 

「カナヲっ!!」

 

「っ!!」

 

カナヲは炭治郎に声を掛けようとしたが、それを遮る様に炭治郎が大声でカナヲの名前を呼んだ。

怒気の混じった炭治郎の声を耳にして、カナヲは震えて黙り込んだ。炭治郎はしのぶを抱き締めたまま、カナヲに向かって言い放った。

 

「しのぶさんは……しのぶさんは俺の大切な恋人(ひと)だっ! しのぶさんを傷付けるなら幾ら君でも許さないぞっ!!」

 

「っ!……あぁ……うっ……っっ。」

 

「……っ❤」

 

しのぶは炭治郎の言葉にうっとりとしながら、その鍛えられた逞しい身体に身を寄せた。そして刹那の一瞬、しのぶはカナヲと目線を合わせると、口元だけニヤッと静かに嗤った。すると自身の中で何かが粉々に砕ける音を、カナヲははっきりと耳にした。

 

 

 

「いやあああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!! やああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!」

 

 

 

「「「っ!?」」」

 

カナヲから発せられた、蝶屋敷全体に響いたのではないかと思われる程の絶叫が上がった。魂の絶叫とも言えるカナヲの叫声に周囲は絶句する。

 

「やだあああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!! いやあああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!」

 

「ちょっ!?……カナヲっ! 落ち着きなさいっ!!」

 

「たんじろうをとらないでえええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっっ!!! とっちゃやだああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!」

 

カナヲが暴れ始めたため、アオイが必死でカナヲを抑え付ける。カナヲはしのぶを睨み付けながら、滝の如く涙を流しながら泣き叫び続ける。

 

「かえしてえええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっっ!!! わたしのたんじろうをかえしてよおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっっ!!!」

 

「うええええええええええええええええええええええええええええええええんっっっっ!!! えええええええええええええええええええええええええええええええええんっっっっ!!!!」

 

カナヲの嫉妬と絶望に満ちた絶叫は、カナヲが失神するまで続いた。カナヲが失神するまで、アオイもしのぶもその場を動く事が出来なかった。

カナヲの絶叫が弱まったのを見て、炭治郎がカナヲに近付くとカナヲは飛び込む様に炭治郎に抱き着き、そして失神して意識を失ったのだった。

 

カナヲの最初の絶叫を聞いて、きよもすみもなほも現場に集結し、更に蝶屋敷に入院していた隊士達も集まって一部始終を見て聞いていた。

 

しのぶはすぐさま緘口令を敷いて事態の収拾と隠蔽を試みた。

しかし、"人の口に戸は立てられぬ"の故事曰く、しのぶのその試みは失敗に終わり、"蟲柱が継子と竈門炭治郎(おとこ)を巡って殺し合いをした"とその噂は尾鰭だけでなく背鰭や胸鰭まで付く勢いで瞬く間に鬼殺隊全体に広まる事になる。

 

更には"蟲柱が継子の想い人を寝取った"などと言った事実の様で事実でない噂まで広がり、蝶屋敷はその誤解を訂正する日々に追われ、しのぶは骨身に堪える日々を送る羽目になった。

 

最後にその想い人である炭治郎の噂も加わり、本人は"鬼殺隊一の女たらし"と言う烙印(レッテル)を押され、炭治郎も否定出来ない悪評に頭を抱える事になる。

 

尤も、炭治郎の人柄の良さや人格者としての評判も既に鬼殺隊では広まっていたので、噂を真に受ける者と噂を嘘だと捉える者で別れ、大半が後者であったのが不幸中の幸いであった。

 

 

 

 

 

大正二年(一九一三年) 三月十三日(木)

時間帯:朝

天気:曇り

 

 

「すぅ…………すぅ…………すぅ…………。」

 

「「「………………」」」

 

カナヲは炭治郎に抱き着いたまま眠っていた。騒動の後、全員でアオイの部屋まで避難していた。黙ってカナヲを見ていた炭治郎としのぶ、そしてアオイの三人だったが、最初にアオイが開口した。

 

「とりあえず、しのぶ様の治療をしましょう。カナヲはその後で……炭治郎さん。申し訳ないのですが、暫くそのままでお願い出来ますか?」

 

「うん、良いよ……と言うかカナヲを引き剥がそうとしても出来ないみたいだから、先にしのぶさんの治療をしてよ。」

 

「炭治郎君、ごめんなさいっ。こんな事態になってしまって……っ。」

 

「俺にも責任の一端を担ってますから、しのぶさんも謝らないで下さい。」

 

しのぶの謝罪を炭治郎はやんわりと受け止める。それを見てアオイは、しのぶの治療を始めた。

カナヲに時折気に掛けながら、炭治郎はその様子を眺め続ける。

 

そうしている内に、アオイによるしのぶへの治療が終了し、今度はカナヲへの治療を試みようとする。

因みにだが、しのぶは既に隊服に身体を通してある。

 

「カナヲ。治療したいから炭治郎さんから離れてっ。」

 

「…………」

 

しかし、カナヲが炭治郎に顔を埋める様に抱き着いて離れないため、治療の実行が出来ないでいた。

見かねた炭治郎はカナヲに話し掛けた。

 

「カナヲ。俺はカナヲから離れたりしないから、ちょっとの間だけ、離れておくれ。」

 

「……んっ……んんっ。」

 

するとカナヲはゆっくりと炭治郎から離れて寝台に寝転がった。しかし、不安そうに、または泣きそうになりながら何かを求めて探している様に手をもぞもぞと動かしていた。

炭治郎はそれを見て優しくその手を握ると、カナヲは安心し切った様子で落ち着きを取り戻していた。

 

しのぶとアオイはそれを見て、カナヲの治療を始める。些か治療しにくかったが、何とか出来た。

薬品を塗る際に沁みる筈だが、カナヲはそんなものは微塵も感じる素振りを見せなかった。カナヲの治療後、アオイとしのぶが炭治郎に話し掛けた。

 

「炭治郎さん。お手伝い頂きありがとうございました。」

 

「炭治郎君、迷惑掛けてごめんねっ?」

 

「いいえ、お礼を言われる様な事も謝られる様な事もしてませんよ。寧ろ俺が謝らなければならないくらいで……。」

 

炭治郎は申し訳なさそうに二人に答えた。其処から三人そろってクスクスと小さな笑い声が部屋中に響く。

笑い声が収まってから、アオイが再び開口する。

 

「すみません。私はそろそろ食堂で患者達の朝食の配食を終わらせてこようと思います。」

 

「アオイ、私も手伝いますよ。せめてものお詫びです。」

 

「俺は……此処に残りますね。カナヲを置いてはいけないので。」

 

アオイが朝食の配食に向かうと、しのぶがその手伝いを買って出る事を進言した。一方の炭治郎はカナヲが再び暴走しない様に、傍にいる事にした。

 

「お願いします……皆で朝ご飯食べたかったのに、それどころではなくなってしまって残念です。」

 

「俺もそう思うけど、後で皆でお昼ご飯を一緒に食べようよ。カナヲにも誤解を解いて貰ってから一緒に……さ。」

 

「そうね、是非そうしましょうっ。」

 

しのぶはそう言って話を閉めると、アオイと共に部屋から出ようとした。しかし、部屋を出る寸前で身を翻して炭治郎に接近する。

 

「炭治郎君、カナヲに向かって堂々と私を大切な恋人だと言ってくれて……凄く、嬉しかったわっ❤」

 

「これはそのお礼です❤」しのぶはそう言って炭治郎に口付け(キス)をした。

 

「「っ!」」

 

炭治郎は一瞬驚いたが、直ぐに眼を閉じてしのぶからの口付け(キス)を受け入れる。

アオイはその光景が見たくなかったのか、直ぐに視線を二人から反らした。

 

「ふふっ❤ 炭治郎君、またね❤……アオイ、行きましょうか?」

 

「はい……では炭治郎さん。また来ますので、どうかカナヲをよろしくお願い致します。」

 

「了解っ、カナヲの事は任せておいて。行ってらっしゃい!」

 

炭治郎に見送られて二人は部屋から出て行った。炭治郎は寝台に座った状態でカナヲと手を握っている。

カナヲは炭治郎の手を握ったまま未だに寝ていた。

 

 

 

 

 

 

「「…………」」

 

しのぶとアオイが出て行ったため、炭治郎とカナヲの二人だけになった部屋は沈黙に包まれていた。

聞こえてくるのは、カナヲの寝息だけだ。すると炭治郎はカナヲに向かって静かに言った。

 

「ごめんねっ。カナヲ。」

 

炭治郎としては頭を撫でてあげたかったが、態勢が不自然に成るため言葉による謝罪だけに留めた。

そうして静かに待っていた炭治郎だが、暫く時間が経つと問題が生じ始めた。

 

「……厠に行きたい……っ。」

 

尿意を催して来たのである。炭治郎はカナヲから手を放そうとしたが、そうする度に強さを増して握って来るのだ。

これでは厠に行きたくても行く事が出来ない。ましてや、カナヲを連れて厠に行く訳にも行かないからだ。

炭治郎にとって、これが便意ではない事が唯一の救いであった。

 

「どうしよう……困ったなぁ……っ。」

 

炭治郎が困り果ててると、(ドア)からコンコンとノックする音が聞こえて来た。炭治郎はノック音に答える。

 

「どうぞ。」

 

「失礼しますね。炭治郎さん。」

 

其処に入って来たのは寺内きよ、中原すみ、高田なほの三人だった。炭治郎は意外な訪問者に少し動揺する。

 

「三人共、どうしたんだい?」

 

「はい。カナヲさんのご様子が気になったので見に来たんです。」

 

「あんな目に遭ったから、カナヲさん大丈夫かなって……。」

 

「炭治郎さんも、大変でしたね。」

 

「うん、俺は大丈夫だよ。カナヲも……今は寝ていて落ち着いてるかな。こうして手を放してくれないけれど。」

 

炭治郎はきよ達に足をモジモジさせながら答えた。するとその様子を見たすみが炭治郎に指摘した。

 

「炭治郎さん……もしかして、その……おしっこに行きたいんですか?」

 

「っ!?」

 

すみからの思わぬ質問に、炭治郎は動揺を隠せない。そんな炭治郎を見てきよとすみが行動に出た。

 

「きよちゃんっ。」

 

「うんっ!」

 

すみがきよに声を掛けると、きよはすみが言わん事を理解していると言わんばかりに部屋を飛び出して行った。

 

すると三十秒も経たない内に、きよが部屋へ戻って来る。両手に尿瓶を大事そうに抱えて。

きよが両手に持っている物を見たせいか、これには炭治郎が慌て始める。

 

「待ってくれっ!? そ、其処までしなきゃならない程のものでもないからっ!!」

 

カナヲが寝ている事も忘れて、炭治郎は大声を上げて抗弁する。しかしなほ達は気にも掛け様ともしない。

 

「炭治郎さん、我慢はお身体に毒ですっ。」

 

「寝たきりで動けない患者さんを相手に私達、慣れてますからっ。」

 

「それとも余計な我慢をして、最後にお漏らしするのが炭治郎さんのご希望ですか?」

 

「うっ……っ。」

 

すみ達の洪水の如き怒涛の正論を前に、炭治郎は反論する糸口を見失う。

そして炭治郎にとって永遠に等しい葛藤の末、白旗を上げて無条件降伏する道を選択した。

 

「分かった……よろしくお願いしますっ。」

 

「「「はいっ!!!」」」

 

そこからきよ達の行動は素早かった。

 

きよがそのまま尿瓶を持って炭治郎の真正面に立ち、なほとすみが炭治郎の両側に立ち、洋袴(ズボン)を脱がせようとする。

 

「「行きますっ!……せーのっ!」」

 

なほとすみが阿吽の呼吸で洋袴(ズボン)を脱がせた。すると洋袴(ズボン)から炭治郎の日輪刀が姿を現した。

 

「「「きゃあっ!!!」」」

 

きよ達は炭治郎の日輪刀を見て驚愕から悲鳴を上げた。その様子を見て炭治郎は空いた手で思わず顔を隠す。

 

「くっそ……やっぱり恥ずかしいなぁ……っ。」

 

「「「…………」」」

 

すみ達は呆然としながら、炭治郎の日輪刀を凝視していた。見兼ねて炭治郎がなほ達に声を掛ける。

 

「あの……もうそろそろお願いして良いかな?」

 

「っ!!……は、はいっ!」

 

「「すみませんでしたっ!!」」

 

炭治郎に声を掛けられて、其処からきよ達の行動は手早かった。

きよは尿瓶を日輪刀に当てて準備をする。すみとなほは日輪刀が尿瓶から外れない様に掴もうとしたが、其処は炭治郎が断固として拒否した。

 

ジョロロロロロ、と発射された尿が尿瓶に当たる音が部屋に響く。炭治郎は早く終われと念じながら、この一時を耐えた。

そしてやっとの事で排尿が終了する。

 

「す、棄てて来ますねーっ。」

 

「あ、私達もそろそろ戻らなきゃ……こ、これで失礼します。」

 

「炭治郎さん、お邪魔しました。」

 

「うん、お疲れ様。ありがとうね。」

 

すみ達は一礼するとそそくさと部屋から退室する。残された炭治郎は溜息を吐いた。

 

「……洋袴(ズボン)、履かせて行って欲しかったなぁ……。」

 

なほ達は慌てた様子で出て行ったため、止める間も無かった炭治郎。

炭治郎は一度カナヲから手を放そうと試みたが、逆に痛みを感じる程に強く握り返して来た。

何度試しても失敗に終わったため、炭治郎は仕方なしに片手で洋袴(ズボン)を履き直す事にした。

 

一方、部屋から退室し、炭治郎の排尿を棄ててから業務に戻る途中のきよ達は沈黙したまま、廊下を歩いていた。

 

「「「…………」」」

 

沈黙していたすみ達だったが、きよが立ち止まるとすみとなほも立ち止まった。そしてきよが開口する。

 

「炭治郎さんのあ、あれ。大きかったね……。」

 

「う、うん。他の患者さん達のと同じものだなんて信じられないよっ。」

 

「凄かったなぁ……。」

 

なほ達が脳裏に炭治郎の日輪刀を想像させると、顔を赤く染める。今度はすみから話し始めた。

 

「あれがしのぶ様やアオイさんの膣内(なか)に入るんだよね? い、痛くないのかな?」

 

「ちゃ、ちゃんと膣内(なか)に入るんじゃないかな? 女の人の膣内(なか)から赤ちゃんが生まれるんだからっ。赤ちゃんの方が大きいだろうし。」

 

「勃起すると更に大きくなるって艶本に書いてあったけど……炭治郎さんのはどれだけ大きくなるんだろう?」

 

なほの疑問に再び、三人の間に沈黙が訪れる。そして何を脳裏に想像したのか、きよ達の顔が林檎の如く赤く染まる。

しかし、直ぐにきよが悲しそうな顔をして話し始めた。

 

「炭治郎さんと一緒に過ごす時のしのぶ様とアオイさん。前より幸せそうに笑う様になったよね……。」

 

「しのぶ様達は美人だし、お身体もとってもお綺麗で、炭治郎さんとお似合いだよね……。」

 

「私達なんて子供じゃ全然……炭治郎さんには見向きもされないよね……。」

 

「「「はあぁぁぁっ。」」」

 

すみ達は一同に溜息を吐くと、業務に戻るべく歩み出した。この時奇しくも同じ事を思っていた。

 

――早く大人になりたいなぁ。

 

そう思いながら歩いていたなほ達。この時、きよもすみもなほも、自身のある部分が湿っていた事に気付く事は無かった。

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……はぁ……っ。」

 

炭治郎は汗を流しながら、やっとの事で片手で洋袴(ズボン)を履き直す事に成功する。

安堵感と不思議な達成感が、炭治郎に満ち溢れていた。

すると再び(ドア)からコンコンとノックする音が聞こえて来た。炭治郎はノック音に答える。

 

「っ……どうぞっ。」

 

「失礼しますね。炭治郎さん。」

 

部屋に入って来たのはアオイだった。その手にはおにぎりとお茶が乗ったお盆を手にしている。

 

「どうしたんですか? そんなに汗を掻いて……っ?」

 

「……ちょっとした運動だよ。退屈だからねっ。」

 

アオイに汗を掻いている理由を尋ねられて、炭治郎はそう答えた。

ある意味では運動の様なものだったので、炭治郎は普通に答える事が出来た。

 

「そ、それより。アオイさん、そのおにぎりは?」

 

「朝食抜きは炭治郎さんにはきついと思いまして。余ったご飯で作って来たんですよ。」

 

「それは……凄くありがたいよ。ありがとう、アオイさん。」

 

先刻の騒動のせいもあって、蝶屋敷史上でも稀に見るドタバタとした朝に炭治郎は朝食に在り付けないと諦めていた。

炭治郎はアオイの心遣いには平伏して感謝する事しか出来ない。

 

「はい、どうぞ召し上がれ。」

 

「お言葉に甘えて……頂きますっ。」

 

炭治郎は空いた片手でおにぎりを食べ始めた。炭治郎好みの塩加減の効いた塩昆布と梅干のおにぎりで握っていないおにぎりだ。

 

米は強い圧力が加わると時間の経過と共に餅の如く固くなってしまう。

如何に圧力を加えないかが美味しさの鍵だとアオイは炭治郎に教わり、実践すると言葉通り格段に美味しくなった。

 

その時の様子を懐かしく思いながら、炭治郎の食事風景を微笑ましくアオイは見ていた。

 

「ご馳走様でした。ありがとう、アオイさん。」

 

「お粗末様でした。どういたしまして、炭治郎さん。」

 

アオイはお盆を下げて机に置いてから、(ドア)に向かい鍵を掛けた。そして炭治郎の隣にピタッと密着する様に寝台(ベッド)に座る。

炭治郎はアオイの行動を嬉しく思いつつも、モジモジソワソワとした様子のアオイを見て疑問に思った。

するとアオイが炭治郎に話し始める。

 

「その……ですねっ! しのぶ様ばっかり口付け(キス)したり色々するのは、公平性に欠けると私は個人的に思うんですよっ……だから……そのっ。」

 

「……っ!……ぷっ、あはははっ。」

 

「わ、笑わないで下さいよっ! わ、私は真面目に「ごめんねっ、アオイさん。」んんっ!?……っ❤」

 

炭治郎は喋っている途中のアオイに口付け(キス)をした。

アオイは唐突な炭治郎からの口付け(キス)に最初は驚きから戸惑ったが、直ぐに嬉しそうに両眼を細めて口付け(キス)を受け入れる。

更に飢えを満たさんと言わんばかりに、アオイの方から舌を入れて炭治郎の口内を舐め尽くす。

 

「ちゅうううぅぅ❤……好き❤……炭……治郎さぁん❤……しゅき❤……んちゅ❤……好きぃ❤……っ❤」

 

「んんっ……俺も……アオイ……ちゅ……さんが……ちゅぅぅ……好きだっ……っ。」

 

炭治郎もまた、アオイの想いに応えるべく想いを口にしながら舌を絡ませる。アオイは更に快楽を得ようと炭治郎の両頬を掴む様に添えて更に激しく口付け(キス)をして行く。

 

アオイの部屋は水音が叩く音とカナヲの寝息だけが響いて行く。炭治郎もアオイも口付け(キス)して行く内に理性の壁が削れ、目が虚ろになって行く。

 

そうしていると、ガチャガチャと言う音が(ドア)から鳴ったため、慌てて二人は、正確にはアオイが炭治郎から距離を取った。

 

「は、はいっ! 今開けます!!」

 

アオイが(ドア)を開けると、其処にはニコニコと笑いながら青筋を浮かべたしのぶが立っていた。

 

「し、しのぶ様っ。」

 

「開けてくれてありがとう、アオイ。おかげでまた(ドア)を蹴破らずに済んだわ……それから貴女、口元と胸元が涎塗れよっ?」

 

「っ!?」

 

しのぶの指摘を受けて、アオイは咄嗟にバッ! と手で涎で汚れた部分を覆い隠そうとした。そんなアオイを見て、しのぶは「ふんっ。」と鼻を鳴らすと炭治郎とカナヲに近付いて行った。

 

炭治郎はしのぶとアオイのやり取りの間に袖で涎跡を拭き取っていた。しのぶが炭治郎の前に立つと、カナヲについて尋ねた。

 

「炭治郎君、カナヲの様子はどう?」

 

「まだ目を覚ましません。眠ったままです。手を放してくれませんしね。」

 

「そうみたいね、ふふっ。」

 

「はい、はははっ。」

 

炭治郎としのぶは可笑しそうに笑い合う。するとその声を聞いてカナヲに動きがあった。

 

「んっ……んんっ~~。」

 

「「「っ!!」」」

 

カナヲが眠たげな声を上げながら、起き上がってゆっくりと目を開けた。それを炭治郎達は静かに見守る。

 

「…………」

 

「カナヲっ! 大丈夫っ!?」

 

カナヲは黙ったまま、静かに周囲を見渡すと、最後に炭治郎と視線を合わせた。

何も言わないカナヲを心配して、炭治郎が声を掛けた。

 

「……えへへっ❤」

 

「えっ?」

 

「っ!?」

 

「カ、カナヲ?」

 

突然普段しない様な笑い声をしたカナヲに、炭治郎達全員が困惑する。そんな三人を余所に、カナヲが動き出した。

 

「おはようっ❤ たんじろぉ❤❤」

 

そう言ってカナヲは、愛おしそうに炭治郎に口付け(キス)をした。




お待たせして申し訳ありません。

カナヲをぶっ壊してしまいました……(汗)

カナヲ中心による炭カナを書いていた筈なのに、割合的に炭しの>炭アオ>炭カナになってしまった……カナヲが主役の筈だったんだがなぁ……

更新予定ですが後一、二話ぐらい炭カナssが続きます。

強いショックを受けて精神が幼児化(?)してキャラ崩壊を起こしているカナヲが炭治郎はもとい、蝶屋敷の面々を翻弄して振り回します。

今月の更新は厳しいので、来月辺りになると思って気長にお待ち下さい。

予告でこう書いたけどちゃんと書けるかなぁ……(滝汗)

それから深刻な悩みなんですが、炭蜜好きだけどハードル高過ぎて拙作で出せるか心配です。おばみつも応援しているので(書く勇気ないが)。

希望は沢山来ているんですがね。頑張って出したい……ネタ……ネタはないか……。
現状では彼女含め、「若干」ご都合な展開に持ち込むかもしれないです。
ご了承ください。

登場人物の性器発言ってどう思います?

  • 有り(エロくなるからばっちこい)
  • 無し(日輪刀、鞘とオブラートに揶揄って)
  • 作者にお任せ
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