※この作品はR-18です。

優しき日輪と鬼殺隊の美蝶   作:蓮紅

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※キャプション必読・リクエストに関しての説明あり
※原作の展開に私の都合でテコ入れ改変してCP要素増し増しにする予定です。
・鬼滅の刃原作に関するネタバレあり。原作未読の方は閲覧注意。
・鬼滅の刃二次創作小説です。
・原作・キャラクターの性格・設定等改変の可能性大。一部キャラ崩壊注意。
・思い付き次第で何度も編集を繰り返す可能性大。お時間がある時で良いので、良ければ読み返してみて下さい。
・誤字脱字等のミス・内容の矛盾等の指摘は大歓迎。理不尽なクレームは受け付けません。
・コメント・メッセージ大歓迎。創作意欲の燃料になります。コメント・メッセージの返信は必ずさせて頂きますのでどしどし御投稿下さい。
・SS内容に関してはネタパクリと言う名の盗作を間違えてしないよう気を付けてますが、もし私が投稿した作品が既に別の作者様と作品内容が酷似していた場合、メッセージにて御連絡下さい。

※リクエストに関して
メッセージにてリクエスト内容を御連絡下さい。
以下規約
・100%受け付けられると保証された訳では御座いません。創作意欲次第で承諾する場合もお断りする場合も御座います。
・炭治郎×鬼滅女子のみ。
・作者は遅筆。またリアルの都合や他SSの執筆で投稿が遅くなる可能性大。
・CP、全年齢かR作品か、ネタの内容を御記入下さい。ネタの内容が詳細で有れば有る程、筆が進むので御協力をお願い致します。


美蝶自覚編
第弐話 日輪と藤蝶は互いの傷を癒さんとす


東京府・朝田屋

 

大正二年(一九一三年) 三月一日(土)

時間帯:昼

天気:晴れ時々曇り

 

 

「こ、こんにちわ。しのぶさん……っ。」

 

「はい、こんにちわ。炭治郎君。」

 

炭治郎は先程まで食べてた絶品のみたらし団子の味も忘れ、冷や汗を掻きながら笑顔でしのぶに挨拶した。

今置かれている立場を、この状況をお前はちゃんと分かっているのか、お前は何を言っているんだ、と善逸辺りがいたら即座にツッコミたくなるような状況だが、誰もそのような指摘はしない。

 

因みに、隣で炭治郎に昼食を、そしてみたらし団子も強制的に奢らせていた鋼鐵塚蛍は、まだ食べてないみたらし団子を掴んだまま、しのぶを炭治郎に押し付ける事に成功して即座に脱兎の如く逃走していた。今頃は刀鍛冶の里に帰還している頃であろうか。

 

炭治郎はその事を匂いで察したが「鋼鐵塚さん…!、俺を置いて一人だけ逃げるなんて……っ!」と心の中で呟くのが精一杯でそれどころではない。

何故ならば、遥か彼方に逃げ去った蛍よりも、先程穏やかに挨拶してくれたが、噎せ返りそうな憤怒の匂いを放つ眼前のしのぶからどうやってこの窮地を脱するか考えるのが先決だったからだ。

 

しかし、予想だにしない第三の人物が登場してこの状況を変えた事で、炭治郎は一時的にとはいえ窮地を脱する事になる。

 

「おっ、しのぶちゃんじゃねぇかい!? 久しぶりだねぇ!」

 

「あら、哲樹さん。お久しぶりですね。相変わらずお元気そうで何よりです。」

 

しのぶに声を掛けたのはこの甘味処の店主の男性だ。ヤクザの若頭をしていると言われても納得してしまうような、左頬から首にまでかけた大きな傷が特徴のいかつい長身の男性で、初見ではとても甘味処の店主をしているとは思えない。

声を掛けられたしのぶは一瞬で怒気を隠し、浮かんでいた血管を沈めて誰もが見惚れるような笑顔で哲樹に挨拶をして世間話を始めた。

炭治郎はしのぶのその変わり身の早さに茫然としている間に、二人の世間話も終盤に向かっていた。

 

「ほい、みたらし団子だよ。」

 

「ありがとうございます……あら、量が多くありませんか?」

 

「良いんだ。おまけだよ、おまけ。ここは俺の顔を立てて、黙って受け取ってくれや。」

 

「では、お言葉に甘えます。蝶屋敷の皆で美味しく頂きますね。」

 

「おう、アオイちゃん達にもよろしく伝えといてくれ……にしてもその坊主も鬼殺隊の鬼狩り様だったんだなぁ。市松模様の羽織のせいで最初気付かなかったぜ。」

 

哲樹の視線と話題が炭治郎に移る。するとしのぶが嬉しそうに炭治郎の傍まで寄ると腕を組んだ。これには炭治郎と哲樹が驚愕した。しのぶが炭治郎の腕にがっちりと組んだせいでしのぶの豊かな胸が腕に当たり炭治郎は林檎のように顔を一瞬で真っ赤にした。

 

「し、しのぶさんっ!?」

 

「ちょっ!? ええ!? しのぶちゃんっ!?」

 

「哲樹さん、紹介しますね。最近鬼殺隊に入隊した竈門炭治郎君。鬼殺隊の期待の星の一人なんですよ。」

 

「あ、えー。竈門炭治郎と言います。」

 

「お、おう。浅田哲樹ってもんだ。この甘味処”朝田家”の店主をしている。昔、しのぶちゃんに俺と女房を鬼から助けて貰った事があってな、それからの付き合いなんだ。しのぶちゃんが居なかったら、俺は今こうして生きていないぜ。」

 

「こいつぁ俺が鬼から女房を守った名誉の証よ。」と傷を親指で指して自己紹介を終える。そして炭治郎の事を十を数えれる程度の間ジッと見つめた後、しのぶと炭治郎の前にズンッ! と出た。

 

「しのぶちゃん、ちょっとその坊主……炭治郎君を貸してくれないかい? なぁに、ちょっとだけ話をするだけだよ。おっと、男子禁制ならぬ、女子禁制だからしのぶちゃんは此処で待っててくんな。」

 

「おーい、お前ぇ! しのぶちゃん来てるから挨拶してけー!」とお店の奥に向かって叫んだ。おそらく哲樹と同じくしのぶに救われた哲樹の妻だろう。ドタドタと足音を立てながらやってくる哲樹の妻を余所に、炭治郎を”朝田家”の裏に連れて行った。炭治郎は妙に力強く自分の腕を引っ張ってくる事を気にしながら大人しく付いて行った。

 

――何だろう?この人からは怒りの匂いはしない……するのは興奮と期待の匂いだ。どう言う事なんだろう?

 

 

 

♦︎

 

 

 

炭治郎は疑問に思いながら哲樹に引っ張られて行く。そして”朝田家”の裏に到着すると、哲樹は炭治郎と面と向かって口を濁しながら開口した。

 

「坊主、じゃなかった。えっと、炭治郎、君。」

 

「浅田さん、好きな風に俺の事は呼んでくれて構いませんよ。」

 

「そ、そうか。じゃあ坊主、俺の事も哲樹で良いぜ。」

 

「コホン。」と哲樹が咳払いすると改めて話を進めた。炭治郎も身を正して耳を傾ける。

 

「坊主。単刀直入に聞くが、お前さん、しのぶちゃんの恋人か将来を誓った許嫁なんか?」

 

「……はいっ?!」

 

哲樹の思わぬ質問に、炭治郎は顔を赤く染めて狼狽した。そして慌てて否定する。

 

「そんな関係じゃないですよっ! 俺なんかがしのぶさんと釣り合う訳がないじゃないですかっ。哲樹さんの考え過ぎです。」

 

「む、そうかぁ?……でもよ、考えても見な? しがない庶民でしかない俺に、お前さんを紹介するだけで態々腕を組んだりなんて真似なんかすると思うか? 結構前にしのぶちゃんが来た時なんかよ、しつこく声を掛けて来た身の程知らずの野郎の股間、笑顔で蹴り上げてたぜぇ?」

 

「ありゃ死ぬ程痛かっただろうなぁ…………。」としみじみと思い出すように言うと、炭治郎もその光景と男の受けた激痛を想像して思わず顔を歪めながら股を竦めた。

 

「う~ん。やっぱり、哲樹さんの考え過ぎだと思います。しのぶさんみたいな大人の女性が、俺みたいな子供を相手になんかしませんよ。」

 

「い~や、しのぶちゃんがお前さんの事をまだ好きでないにしても、脈は十分、あると思うぜ。”朝田家”の店主として何年も男女の逢引きの様子を見て来た俺の眼に狂いはねぇ!」

 

炭治郎から見れば何を根拠に訳の分からん事をと言いたげだったが、しのぶが自分に好意を抱いていると聞かされたせいか、引いていた赤がまた炭治郎の顔を覆い始めた。そんな炭治郎をおいて、哲樹は話を続けた。

 

「しのぶちゃんはな、カナエちゃんって言うすげぇ美人のお姉さんと一緒に此処で俺の団子を食べによく来てくれてたんだ。」

 

哲樹が昔を思い出すように語り始めた。炭治郎は哲樹から寂しさと悲しい匂いを嗅ぎ取り、またしのぶの最愛の実姉であったカナエの名前が出たのを聞いて、炭治郎は真剣に哲樹の話に耳を傾ける。

 

「そのカナエちゃんが鬼に殺されちまってから、しのぶちゃんは良い意味でも悪い意味でも変わっちまった。」

 

「その後、柱? つう鬼殺隊の偉い役職についた。詳しい事は俺には分からないけどよ、あの若さで人の上に立つって凄ぇ事だし、尊敬する。でもよ、しのぶちゃんはまだ十八歳の女の子なんだ。誰だろうと嫌でも大人になるんだから、もうちょっと我儘言って誰かに甘えたり頼ったりして欲しいんだよっ。」

 

炭治郎は哲樹の言葉にはっとした。そうだ。確かに自分はしのぶの凄いところばかりを見てきたが、蝶屋敷の屋上でのあの夜のやり取りでしのぶが必死でひた隠しにしていた「弱さ」を自分は目撃しているではないか。

炭治郎はその事実に気付かなかった己の鈍さと自身の弱さを恥ずかしく思った。

 

「俺じゃぁ、しのぶちゃんに甘いもんで一時の間、舌を楽しませる事しか出来ねぇ。俺じゃあの娘を守る事も支える事も癒す事も出来ねぇんだ。良い歳した大人があんな子供を守れねぇってのは、恥ずかしい話なんだがな。だから頼む!」

 

哲樹は炭治郎に力強く頭を下げた。

 

「何もしのぶちゃんと恋仲になれって言ってるんじゃないんだ。あの娘が少しでも安らかな気持ちで居られるように、しのぶちゃんが頼れるような、守れるような、強くてでけぇ男に成って欲しいんだよ。坊主とはついさっき会ったばかりだが、お前さんなら出来る気がするんだ。俺ぁ地頭は良くねぇが、客商売してるせいか、人を見る目には自信があるんでな」

 

「……哲樹さん、分かりました。」

 

炭治郎は哲樹の懇願に落ち着いた声で答えた。

 

「はっきり言って、俺がそんな男に成れるかは分かりません。でも俺は尊敬する人のような、強い剣士に、柱に成ると心に決めました。それから俺にとってもしのぶさんは大切な人です。あの人には死んで欲しくない。あの人には幸せになって欲しい。そう心から願っています。だから哲樹さんにお約束します。しのぶさんも他の鬼殺隊の仲間達も人々も全部、全員守れるような強い男に俺は成って見せます!」

 

炭治郎は哲樹に面と向かって力強く宣言した。哲樹は太陽のような眩しさと温かさを炭治郎から感じ取り、笑みを零した。

 

「それだけ聞けりゃ十分だ。ありがとうよ、俺の我儘を聞いてくれて……頼んだぜ、炭治郎。」

 

「お前さんも死ぬんじゃねぇぞ。」と哲樹は右手を差し出した。炭治郎は笑顔で「はい!」と答え力強く握手を交わした。

 

 

 

♦︎

 

 

 

「あら、お帰りなさい。長かったですね?」

 

しのぶは戻って来た二人に声を掛けた。しのぶの隣には哲樹の妻と思われる可愛らしい女性がいて、炭治郎に向かって頭を下げていた。

 

「おう、炭治郎とは息が合ってつい長話をしちまってなっ。」

 

「へぇ、そうなんですか。どんなお話をしていたんですか?」

 

「それを言っちまったら女子禁制にした意味がねぇだろぉ? なぁに、漢の友情を深めてただけさ。なぁ、そうだよな、炭治郎?」

 

「ええ、そうですね。」

 

しのぶの質問に哲樹は誤魔化すように炭治郎に同意を求めると、炭治郎は哲樹の言葉に笑って同意した。

それから哲樹が「ちょっと待ってな。」というと”朝田家”の中へ入り、直ぐに戻って来た。その手には包まれた団子が入っていた。

 

「哲樹さん、これは?」

 

”朝田家”(うちの店)はみたらし団子が自慢だが、草餅も豆大福も自慢なんだ。持って行きなっ。」

 

「哲樹さん……ありがとうございます、後で頂きますね。今度、”朝田家”(お店)に友達を一緒に連れて来ますから。」

 

炭治郎は哲樹に悪いと金銭を払って断ろうとしたが、好意を無碍にするのも無粋だと考え、ありがたく頂く事にした。

 

「おうっ!……でも炭治郎のお友達も良いけどよ、どうせなら今度はしのぶちゃんと恋仲になって逢引きをするのに”朝田家”(うちの店)を利用してくれよなっ! そんときゃ割引するぜ!」

 

「まぁ、そうなったら素敵な話じゃない❤️ しのぶちゃん、楽しみにしてるわね❤️」

 

「あ、あはははははっ。」

 

浅田夫婦の怒涛の茶化しっぷりに、炭治郎は笑って対応する事しか出来なかった。そしてしのぶに視線を向けるとしのぶは予想外の反応を見せていた。

 

「な、なにを言っているんですか!? 二人して!? 私は炭治郎君とはそんな関係じゃないし、なる積もりもありませんから!!」

 

しのぶが顔を真っ赤にして「ほら炭治郎君! 行きますよ!!」と腕を引っ張って”朝田家”を去って行った。

炭治郎はしのぶの反応に戸惑いつつ、浅田夫婦に頭を下げてしのぶに引っ張られて行った。炭治郎としのぶを見えなくなるまで見送った浅田夫婦。そして哲樹から話を始める。勿論、話題の内容は炭治郎としのぶの事だ。

 

「なぁ、お前。」

 

「何かしら、あなた。」

 

「さっきの二人、どう思う?」

 

「そうねぇ、その前にあんなしのぶちゃん、久しぶりに見たわね。」

 

「ああ、良いもんが見れたし、良い漢にも出会えた。」

 

「ええ、とても良さそうな男の子だったわね。それからあの二人の事だけど……。」

 

「うん?」

 

「……時間の問題かしらねぇ。今度会う時が楽しみだわ❤」

 

「だよなぁ、だよなぁ! いやぁ流石は俺の女房だ! 俺の目に狂いは無かった!」

 

「ええ、貴方の女房ですから❤」

 

「「あははははは。」」

 

二人は楽しそうに笑った後、”朝田家”に戻った。また炭治郎としのぶの二人と再会出来る日を楽しみにしながら。浅田夫婦に話題にされている炭治郎としのぶはと言うと、黙って蝶屋敷まで帰っていたが、しのぶが不意に口を開いた。

 

 

 

♦︎

 

 

 

「炭治郎君。」

 

「はい、なんで……っ。」

 

炭治郎はしのぶの返事に返答しようとしたが、一瞬口を紡いだ。何故なら怒っている匂いを感じ取ったからだ。

 

「あんな事があったからって、私の怒りは霧散したわけじゃありませんから、逃げないで下さいね。」

 

「……はいっ。」

 

炭治郎は観念したようにしのぶに返事をした。

 

 

 

♦︎

 

 

 

東京府・蝶屋敷

 

大正二年(一九一三年) 三月一日(土)

時間帯:昼

天気:晴れ時々曇り

 

 

「では、まず絶対安静の通達を無視して何をしていたのか、一部始終話して下さい。良いですか? 「一部始終」ですよ?」

 

「……はいっ。」

 

しのぶの部屋に連行された炭治郎は、しのぶに病室を抜け出してから起きた出来事を包み隠さず話し始めた。

 

病室を抜け出して真っ先に煉獄邸に向かった事。

煉獄杏寿郎の想いを実父であり元炎柱・煉獄槇寿郎へ伝える過程で言い争いになって取っ組み合いになった事。

日の呼吸について知ろうとしたが出来なかった事。

杏寿郎の実弟である煉獄千寿郎に杏寿郎のような柱に成ると誓った事。

蝶屋敷で戻る途中で日輪刀を紛失した事実を知って激昂した蛍に追い掛け回されて鬼ごっこをする羽目になった事。

冷静になった蛍から生前の杏寿郎の逸話を知った事。

蛍に誰よりも強い剣士に、柱に成ると誓った事。

蛍に食事を奢るなら許すと言われ飯屋と浅田家で一緒に食事をした事。

 

「…………」

 

しのぶは炭治郎が語っている間、一言も喋らず両眼を閉じて話を黙って聞いていた。そして聞き終わると、溜め息をついて炭治郎を見た。炭治郎はそれを見て恐る恐るしのぶに質問をする。

 

「あ、あの。しのぶさん……。」

 

「何ですか? 炭治郎君。」

 

「あの、その……怒らないんですか?。」

 

「……何から怒ったら良いのか迷っているから、困っているんですよ。」

 

「……っ。」

 

「絶対安静って言ったその日に病室を抜け出した事から怒るべきか、それともまた傷口が開いて出血するかもしれないのに、槇寿郎(元炎柱)と取っ組み合いをしたり鋼鐵塚さんと鬼ごっこをした事を怒るべきか、それとも数日間何も食べてないのにいきなり固形物をお腹に入れた事を怒るべきか……まぁ全部やるんですけどね。」

 

「……はいっ。」

 

「……決めました。炭治郎君、今直ぐ、目を瞑って下さい。」

 

「は、はい。」

 

炭治郎は覚悟を決めて目を瞑った。殴られるのだろうか、叩かれるのだろうか、そうされても仕方がない事をしたのだから、甘んじて受けよう。そう覚悟を決めた炭治郎だったが。

 

ギュッ

 

「……えっ?」

 

「……ごめんなさいっ。」

 

炭治郎に待っていたのは熱い掌から来る一撃でもなければ、固い拳から来る痛みでもなく、来たのは抱擁としのぶからの謝罪の言葉だった。しのぶの豊満な胸部に顔を埋めながら、炭治郎は予想外の事態に狼狽する。

 

「なっ、何でしのぶさんが謝るんですか?! 今回は全部俺が悪いのに、しのぶさんは何も悪くはっ。」

 

「そんな事は本当はどうでも良いんです。いえ、炭治郎君の性格ならきっとそうするだろうと思ってました………炭治郎君は私は悪くないと言ってくれましたが、私が余計な事をしなければ、貴方はこんなに傷ついて辛い思いなんてしなくて良かった。」

 

「…………しのぶさん。それはどう言う意味なんですか?」

 

炭治郎はしのぶの発言の意味を理解出来ず、説明を求めた。しのぶは抱擁を解いてから語り始めた。

 

「本来なら、無限列車の任務は煉獄さん一人で行われる単独任務でした。その任務に私が炭治郎君と善逸君、伊之助君の三人も同行させるべきだと、私が御館様に進言をしたんです。」

 

「……っ!!」

 

しのぶの言葉に炭治郎は衝撃を覚えたが、何も言わなかった。しのぶはそのまま語り続けた。

 

「煉獄さんは鬼殺隊隊士の鑑とも言える人でした。

強さについては言うまでもなく、卓越した判断力と指揮能力を持ち、公私混同する事無く公明正大でかつ、情けも忘れない人格者でした。

あの人ならきっと炭治郎君に良い影響を与えてくれる。未来への道標になってくれると思ったんです。」

 

そこまで言うとしのぶは一度口籠もるが、意を決して語り続ける。

 

「結果論ですが、禰豆子さんも含めて貴方達五人がいたから、魘夢(下弦の壱)から列車の乗客二百名の尊い命を守る事が出来ました。

それでも、たとえ不謹慎と思われようとも考えずには居られない。私のあの進言が無ければ、少なくとも炭治郎君の心に深い傷を負わせずに済んだのではないか。

無意味だと分かっていても、今でもそう思っているんです。」

 

「……しのぶさん。」

 

懺悔するように胸の内に秘めていた悔恨を吐き出すしのぶに、炭治郎はゆっくりと言葉を返し始めた。

 

「しのぶさん……ありがとうございました。」

 

「……っ!?」

 

炭治郎からの思わぬ感謝の言葉にしのぶは動揺する。そんなしのぶを見て、微笑みながら炭治郎は話を続ける。

 

「確かにしのぶさんの言うように、あの任務に行かなければ俺は傷付かずに済んだのかもしれません。

辛くないと言えば嘘になります。

杏寿郎さんが猗窩座…猗窩座(上弦の参)と戦ってる時、もっと強ければ、一瞬でも良いから杏寿郎さんを助けられるくらい強く成れていたら、待機命令に逆らってでも杏寿郎さんの盾に成れば良かった、杏寿郎さんの代わりに自分が死ねば良かった。杏寿郎さんの代わりに俺が死ぬべきだった。そう何度も、ずっと考えていました。」

 

炭治郎は目を瞑るとあの激戦と自身の不甲斐無さを思い出して、両手を強く握る。もう少し強くやっていたら爪が手に食い込んで流血していただろう。

 

「でも、そんな事を考えても過去(まえ)には戻れない、現在(いま)は変わらない、まだ見ぬ未来(さき)に進むしかないと思ったんです。

それに自分が死ねば良かったなんて言ったら、俺達を命を賭けて守ってくれた杏寿郎さんへの侮辱でしかない。怒った杏寿郎さんに大目玉を喰らっちゃいます。

だから俺はどんなに惨めでも、苦しくても、悔しくても、悲しくても、辛くても全力で前を進みます。進んで見せますっ! それが杏寿郎さんの期待に応えられる唯一にして最大の方法だと思うからっ。」

 

「……炭治郎君は、私を恨まないんですかっ。」

 

「まさか、俺がしのぶさんを恨む訳ないじゃないですかっ。」

 

しのぶは震えた声で炭治郎に質問した。しかし炭治郎はそんな事は有り得ないとばかりにしのぶに再び微笑んで穏やかに答えた。

 

「むしろ、お礼が言いたいです。

しのぶさんが進言してくれなかったら、俺は煉獄杏寿郎という偉大な人を知らないままだった。

杏寿郎さんを誤解したままだった。

杏寿郎さんと出会えて良かった。

杏寿郎さんとお話し出来て良かった。

杏寿郎さんを知る事が出来て良かった。

俺はあの人の強さを、言葉を、気高さを、黎明を、この先一生忘れません。だから……だから、しのぶさん。ありがとうございました。」

 

「~~~~~~~❤️」

 

炭治郎の感謝の言葉にしのぶは泣きながら炭治郎に強く抱き着いた。炭治郎もまた泣きながらしのぶを優しく抱き締め返した。二人は涙が止まるまで、そのままずっと互いを離すまい、離れまいと抱き締め続けた。

 

 

 

♦︎

 

 

 

「しのぶさん、折角の綺麗な目が赤くなっちゃいましたね。ふふっ。」

 

「笑わないで下さい。炭治郎君に言われたくありませんから。貴方だってそうです。お互い様です。」

 

二人は三十分近くお互いに抱き締め続け、そして名残惜しそうに離れていた。二人の眼は赤くなっており、アオイ達に見られたら何かあったのかと確実に聞いてくるだろう。まだ部屋を出れそうになかった。

 

「ねぇ、炭治郎君。私にして欲しい事はありませんか?」

 

「はい? して欲しい事……ですか?」

 

しのぶの唐突な質問に炭治郎は些か戸惑う。しかし、しのぶは構わず続けた。

 

「償いたいとか、お礼がしたいという訳では無いんです。ただ炭治郎君に何かしてあげたい。私はそう思ったんです。私に出来る範囲で、と言う条件付きですが炭治郎君のためなら私は何でもしてあげますよ?」

 

其の辺の男が聞けば一発で理性を失いそうな事をさらっとしのぶは炭治郎に言った。すると炭治郎は顎に手を置いて考え始めた。もしかしたら遠慮して断られるかもしれないと思っていただけに、しのぶは期待感を隠さず炭治郎を待った。

 

「……じゃぁ、一つだけ、良いですか。」

 

「はい、言ってみて下さい。」

 

「いえ、そうではなくてですね。ちょっと失礼しますね。」

 

「え……え?」

 

炭治郎はしのぶの肩に手を置いてそのままさき寝台(ベッド)の上に座らせると、しのぶの隣に座ってからしのぶの頭が炭治郎の膝の上に来るようにした。いわゆる膝枕である。この状況にしのぶは困惑した。

 

「あの……炭治郎君、これは一体……?」

 

「あ、もしかして嫌でした?」

 

「いえ! 決して嫌と言う訳ではなくてですね。むしろ嬉しい……じゃなくて! どうして私は炭治郎君に膝枕されているんですか? 普通、逆じゃないですか?」

 

しのぶはもし炭治郎に膝枕して欲しいと言われたら喜んでやっていたに違いない。しかし自分が炭治郎に甘えているこの状況が理解出来ていなかった。

 

「い~え、間違っていませんよ。何故なら俺の願いは……。」

 

「ね、願いは?」

 

「しのぶさんが俺にたくさん甘えること、だからです。」

 

「……はい?……な、なんですか!? それ!? 意味が分からないんですけど!?」

 

しのぶは一瞬呆けた後、たまらず起き上がって炭治郎をジト目で睨み付ける。炭治郎はフシャーッ! と威嚇する猫のようになったしのぶを見て苦笑を隠せなかったが、直ぐに真剣な顔付きになってしのぶを見た。

 

「しのぶさん。良い機会だから、この際はっきり言っておきます。」

 

「な、何でしょうか?」

 

「俺は、あの一緒に蝶屋敷の屋上に居た夜からずっと気になっていました。しのぶさんから匂う怒りの匂いよりも、そこに隠れていた嘘と悲しい匂いを、いつもピンと張り詰めた糸の様な雰囲気を気に掛けていました。」

 

「………続けて下さい。」

 

「しのぶさんは柱の一人だから、鬼殺隊の上に立つ人として立派でいなきゃいけない気持ちは分かります。

蝶屋敷の主人として、姉としてカナヲ達を守り、導かなければならないという気持ちも分かります。

それでも辛い時は辛い、苦しい時は苦しいとはっきり顔や態度、声に出してもそれは決して悪い事ではないと思うんです。

しのぶさんも、一人の人間、一人の女の子なんですから。」

 

「…………」

 

「しのぶさんが泣いたり、誰かを頼ったり、甘えたりしても誰も失望や落胆なんか絶対にしません。むしろ皆、しのぶさんが自分に頼ってくれる事に、甘えてくれる事に喜び、光栄に思ってくれるはずです。

何故ならこの蝶屋敷にいるカナヲもアオイさんも、すみちゃんも、なほちゃんも、きよちゃんも、善逸も伊之助も皆、しのぶさんが、貴女の事が大好きなんですから。」

 

「……だから、炭治郎君は私に甘えろ、と言うんですか?」

 

「俺にカナエさんの代わりが務まるなんて烏滸がましい事は思いません……それでも俺はしのぶさんを抱き締め支えられる男になりたい。

しのぶさんが泣いていたらその涙を拭える男になりたい。

しのぶさんに安らぎを与えられる男になりたいんです。だって俺も……。」

 

炭治郎は一度深呼吸して、改めて自身の想いを言葉に乗せて告白する。

 

「俺もしのぶさんの事が大好きですから……っ!」

 

「~~~~~~~~~~~~❤」

 

しのぶは歓喜して炭治郎に抱き着いて寝台(ベッド)に押し倒した。炭治郎は抵抗する事無く、流れに任せる。しかし、しのぶが抱き着いたまま何も言わないので声を掛ける。

 

「しのぶさん?」

 

「条件が……有ります。」

 

「はい、何ですか?」

 

「炭治郎君も……私に沢山、甘えて下さい。それが絶対条件です。」

 

「ふふ。はい、喜んで。」

 

炭治郎はそう言うと、抱き着いて離れないしのぶの腰に左手を回し、右手で頭を撫で始めた。しのぶはその手の温もりに再び涙を流し始める。

 

「炭治郎君は、意地悪な悪い子です。どれだけ私の事を泣かせたら気が済むんですか……っ私を泣かせて楽しんでませんか?」

 

「そんな訳ないじゃないですか。微塵もそんなつもりはありませんよ。そこまで言うんでしたらその涙、拭いましょうか? しのぶさんが良かったら、の話ですけど。」

 

「炭治郎君は、やっぱり意地悪な悪い子です。私がどう思ってるかなんて、匂いで分かる癖に……結構ですからそのまま頭を撫でていて下さい。これは嬉し涙ですから……。」

 

――ああ、なんて温かくて優しくて尊い人なんだろう。炭治郎君、生きていてくれてありがとう。出会ってくれてありがとう。私、炭治郎君と出会えて良かった、生きてて良かった。私は……私は……。

 

「すぅ……すぅ……すぅ……。」

 

「……しのぶさん、おやすみなさい。貴女は俺が守りますからね。」

 

そう言うと、炭治郎は眠りに就いたしのぶの頭を寝るまで撫で続けた。

 

 

 

♦︎

 

 

 

炭治郎としのぶが部屋で過ごしている頃。

 

髪の両横に青い蝶々の髪飾りをつけている、一人の美少女が忙しなく動いていた。

 

「この案件は流石に私一人では決められない。しのぶ様に決めて頂かないと……。」

 

そう言って彼女が向かったのはしのぶの自室である。蝶屋敷を抜け出した炭治郎がしのぶと一緒に帰って来た事は既に周知の事実。炭治郎もしのぶにこってり絞られただろうと思い、同情しながらしのぶの自室へと足を進めた。そしてその扉の前にまで立った。

 

「しのぶ様、すみません。アオイですが、今宜しいでしょうか?」

 

ノックをして声を掛ける。しかし一切返事がない。アオイは繰り返しノックして声を掛けるが何も変わらない。

 

「部屋におられないのかしら……医務室にも居なかったし、此処しかないと思ったんだけど……?」

 

いないと判断し、その場を去っていたならアオイは幸運だったであろう。しかしアオイは自らの判断で不幸への道へと足を進めた。

 

「しのぶ様、失礼します。」

 

アオイはそのまましのぶの自室に足を踏み入れる。そして程無くして目撃した。炭治郎としのぶが抱き合いながら寝ている姿を。

 

「……?…………っ!?…………っっ!?!?」

 

アオイは声にならない声を出し、急いでしのぶの自室から出て行った。既に要件の事は頭から消し飛んでいた。そして速足から段々と駆け足になって行き、自分の部屋に逃げ帰っていた。

 

「何……あれ……え……なんで……??」

 

アオイは自室の寝台(ベッド)に飛び込んで困惑に満ちた声を出した。最も言葉にはなっていなかったが。

 

――しのぶ様って、炭治郎さんとそういう御関係だったの……?でも、何時から……?

 

ズキッ

 

「~~~~~~何で、何でこんなに胸が苦しいの……っ?!」

 

アオイは両眼から宝石のような涙を流しながら胸を押さえ続けた。

 




オリキャラ
浅田夫婦
浅田哲樹(あさだてつき)
”朝田家“の現店主。二十代後半の青年。左頬から首にかけた大きな傷が特徴の長身の男性で、初見ではヤクザの若頭と勘違いする程、いかつい人物。かつて夫婦共々鬼に襲われていたところをしのぶに救われた経験を持つ。以来、鬼殺隊には強い敬意と感謝の念を抱いている。年齢に不相応に卓越した人生観と人を見極める慧眼の持ち主で妻の八咲と共に鬼殺隊の隊士達のカウンセラーのような役割を果たしている。炭治郎をとても気に入っている。

浅田八咲(あさだやえ)
哲樹の愛妻。二十代半ばの女性。夫と自分を救ってくれた鬼殺隊、特にしのぶには心から感謝している。人を見る目が優れた慧眼の持ち主でかつ、話し上手なため夫と共に鬼殺隊の隊士達のカウンセラーのような役割を果たしている。

登場人物の性器発言ってどう思います?

  • 有り(エロくなるからばっちこい)
  • 無し(日輪刀、鞘とオブラートに揶揄って)
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