・鬼滅の刃原作に関するネタバレあり。原作未読の方は閲覧注意。
・鬼滅の刃二次創作小説です。
・原作・キャラクターの性格・設定等改変の可能性大。一部キャラ崩壊注意。
・思い付き次第で何度も編集を繰り返す可能性大。お時間がある時で良いので、良ければ読み返してみて下さい。
・誤字脱字等のミス・内容の矛盾等の指摘は大歓迎。理不尽なクレームは受け付けません。
・コメント・メッセージ大歓迎。創作意欲の燃料になります。コメント・メッセージの返信は必ずさせて頂きますのでどしどし御投稿下さい。
・SS内容に関してはネタパクリと言う名の盗作を間違えてしないよう気を付けてますが、もし私が投稿した作品が既に別の作者様と作品内容が酷似していた場合、メッセージにて御連絡下さい。
※リクエストに関して
メッセージにてリクエスト内容を御連絡下さい。
以下規約
・100%受け付けられると保証された訳では御座いません。創作意欲次第で承諾する場合もお断りする場合も御座います。
・炭治郎×鬼滅女子のみ。
・作者は遅筆。またリアルの都合や他SSの執筆で投稿が遅くなる可能性大。
・CP、全年齢かR作品か、ネタの内容を御記入下さい。ネタの内容が詳細で有れば有る程、筆が進むので御協力をお願い致します。
「最初に縁壱さんと黒死牟の
縁壱さんが呼吸術を齎したあの戦国期は、鬼殺隊にとっての黄金期だったのでしょう。九人の柱以外にも、痣者の鬼狩りが多数居ました。痣者の鬼狩り達は、怒涛の勢いで次々と鬼を狩り続けたそうです。」
其処まで珠世は語ると、暗い顔をして溜息を吐いてから語り続けた。
「しかし……それは消える寸前の蝋燭の炎が放つ、最後の灯の様な儚い物でした。
痣を発現出来れば、身体能力や反射神経などが急激に向上するのは事実です……しかし、それは寿命を前借りにして得られる両刃の剣……発現したら最後、
『っ!?!?』
痣の代償の大きさを聞いて、炭治郎達は驚愕する。
「珠世さんっ! それは本当!?」
その中でも一際、焦燥していた女性が居た。それは意外にも、カナヲであった。
「信じたくないでしょうけど、本当の事です。」
珠世は罪悪感を抱きつつも、心を鬼にして残酷な事実を断言する。
「じゃあ……じゃあ炭治郎はもう、後十年しか生きられないの!?」
『!!』
珠世の説明を受けてカナヲは叫ぶ様にそう言うと、双眸から涙を溢れ出した。カナヲは勿論、しのぶとアオイからも悲しい匂いが漂って来ていた。
「カ、カナヲ……泣かないで?」
「っ!……無理よぉ……だ、だって炭治郎がぁ……っ!」
炭治郎が身体を起こして
最愛の恋人の余命を何の前触れも無く唐突に聞かされて、動揺しない者などいない。それがたとえ、明日の命も保証が無い鬼殺隊の隊士であろうとだ。
「炭治郎さん……っ!」
「うぅ……。」
涙を流して悲しむカナヲを見て、アオイと禰豆子も双眸に涙を浮かべながら二人揃って炭治郎に寄り添っていた。しのぶもまた悲しかったが、必死で泣き出さない様に堪えていた。
「……」
しかし、この質問に関しては珠世から別の反応が有った。
「……炭治郎さんに関しては、悲観的になるのはまだ早いと思います。」
『っ!?』
珠世がしのぶ達にとって一筋の光明と成り得る発言をしたため、しのぶ達は一斉に珠世に注目した。
「っ!?……珠世さん。それはどう言う意味でしょうか?」
「っ……嘘だったら……承知しませんよっ?」
アオイは珠世の言っている内容の意図が理解出来ず、怪訝な表情を浮かべる。
しのぶに至っては、脅迫じみた言葉を吐いて珠世を睨み付けた。
これは殊更、炭治郎の件に関しているためだ。その表情は、真剣そのものであった。
そんな視線だけで何ものも射貫きそうな鋭いしのぶの視線を、珠世は微笑を浮かべて受け止めるだけであった。それから珠世は、全員の顔を見渡してから語り始めた。
「これから語る内容の中には、少しばかり楽観的で希望的観測を交えた話も含まれます。御了承下さい。……先ず始めに、皆さんは炭治郎さんが"ヒノカミ神楽"と言う独特の呼吸を使っている事は御存知でしょうか?」
「っ!……それは知っている。無限列車でも、その呼吸で
珠世が口にした質問に、義勇が代表する形で答えた。同時に疑問を感じたので質問をすると、行冥達にとって驚くべき回答が待っていた。
「はい、この"ヒノカミ神楽"ですが……この呼吸の正体が、実は縁壱さんが使っていた"日の呼吸"だと言う事実が判明しました。」
『!?』
珠世の報告を聞いて、行冥達は驚愕する。それも無理は無かった。"始まりの呼吸"と称される"日の呼吸"は、失伝されて久しいと言うのが鬼殺隊の定説だったからだ。
「炭治郎の"ヒノカミ神楽"を珠世さんに見て貰い、縁壱が使っていた"日の呼吸"そのものだったと断言しているからね。珠世さんが言っている事は、間違いないと思うよ。」
嬉しそうに耀哉が珠世を援護する様にそう言うと、行冥達も納得して信じる他無かった。
耀哉に援護された珠世だったが、その頬は少し赤みを帯びていた。炭治郎の"ヒノカミ神楽"を初見した時の様子を思い出して、羞恥心が少しばかり湧いたからだ。
炭治郎が珠世に"ヒノカミ神楽"の剣舞を確認して貰っていた時まで時間が遡る。
この時、炭治郎は想定以上の時間が掛かった事に罪悪感を感じていた。可能ならば、一度に"ヒノカミ神楽"の全ての型を綺麗に舞いたかったのだが、体力と呼吸が続かず小休止を取りながらの剣舞だったからだ。
申し訳無く思う中、炭治郎は珠世から二種類の匂いを嗅ぎ取っていた。それは興奮と歓喜の匂いである。
表情こそ平静さを保って変わりはしなかったが、型を一つ舞う度にその匂いは強くなって行った。
そして炭治郎が漸く"ヒノカミ神楽"の剣舞が終わった直後に、珠世が全身を震わせながら言葉を発した。
『た、炭治郎さん……い、今貴方が舞ったその"ヒノカミ神楽"は……縁壱さんが無惨を斬り刻んだ"日の呼吸"そのものです!! 間違いない間違いない間違いない間違いない間違いない!!!!』
その場に居た全員が双眸を見開いて驚愕する程、珠世が興奮しながら断言したため、"ヒノカミ神楽"は"日の呼吸"であると認定した。
そしてこの時、誰にとっても想定外の出来事が発生した。
『嗚呼っ! あの美しい御業が失伝する事無く、此の世に残っていただなんて……ありがとうございますっ! 炭治郎さんっ!! 本当にありがとうっ!! 嗚呼っ! なんて素晴らしい奇跡なのかしらっ!!』
『た、た、珠世さんっ!?』
大興奮した珠世は炭治郎に強く抱擁して、"日の呼吸"を継承していた事を心から感謝していた。
珠世のこの突発的な行動は愈史郎を気絶させる程の
一方で炭治郎は尊敬している珠世からの抱擁を受けて、動きが取れず固まっていた。
挙句の果てに無意識に珠世の細い腰に両腕を回して抱き締め返していた事が、しのぶ達の憤怒の業火に油を注ぐ結果となった。
因みに耀哉はこの混沌とした状況を止める事はしなかった。
今まで生きて来た二十三年間の人生で初めて腹痛が起こるぐらいに大爆笑して、炭治郎達を眺めるだけで終始貫徹したのだった。
あまねもまた、そんな耀哉を見て微笑するだけで炭治郎達を止める事は無かった。
珠世は脳裏で自身が生み出してしまった黒歴史を脳裏に葬り去ると、頬を僅かに赤く染めてコホンと一度咳払いしてから再び語り始めた。因みに、しのぶ達もその時の醜態と苛立ちを思い出して、炭治郎の腕や膝を軽く抓っていた。
「炭治郎さんは間違い無くこの世で唯一無二の"日の呼吸"の選ばれた使い手です。
何故、一介の炭焼き職人でしかない竈門家に"日の呼吸"が伝えられたのか、皆さんは疑問に思われる事でしょう……その経緯について、これから私の方から説明させて頂きます。」
『!』
『……っ。』
大広間に居る者達の中には、何名かが生唾を呑み込んで珠世の開口を待った。
珠世が説明した継国縁壱と竈門家の交流は以下の通りだった。
・縁壱は鬼殺隊追放後、打ち捨てられた亡き妻・うたの生家へ出向いていた。
・其処に炭治郎の祖先である"炭吉"と"すやこ"と言う夫婦が鬼に襲われていたため、縁壱が鬼を斬って救った。
・話を聞くと、戦火で故郷を追われて放浪していると、打ち捨てられていたうたの生家を見つけて住んでいたらしい。
・すやこは身重で出産を間近に控えていた事から、縁壱が三日三晩往復して産婆を連れて来たため、無事に長女・すみれが誕生した。
・それ以来、深い交流を果たし別れ際に炭吉は縁壱の"日の呼吸"を後世に残すと誓い、縁壱もまた自身が着けていた母の形見である耳飾りも預けた。
「以上が、縁壱さんと竈門家の繋がりの顛末になります。……縁壱さんは炭吉さんの事を『此の世で唯一の親友。』と呼び、また『全てを託して来た。』とも言っていました。
まさか、私が聞いていたこの炭吉さんが炭治郎さんの御先祖の方だったとは、気が付きませんでしたよ。」
『……』
「……っ。」
「炭治郎さん、大丈夫ですか?」
炭治郎の様子が気になって、アオイが尋ねた。炭治郎はアオイに顔を向けて答える。
「うん。俺の御先祖様は、なんて凄い人に認められていたんだろうって思ったんだ。
それから思ったんだけど……もし縁壱さんが居なかったら、俺も禰豆子もこの世に生まれていなかった。御先祖様の炭吉さんが"日の呼吸"を"ヒノカミ神楽"として伝承していなかったら、後世に残っていなかったんだと思うとね……何て言うか、言葉に表せないよ。」
『っ!』
炭治郎は多謝の念を抱いて、心から感動していた。炭治郎の目元には、潤んで涙が溢れそうになっている。
アオイはそんな炭治郎の様子に気付いて、
「それから珠世さんの話で、黒刀は"日の呼吸"の適合者の証であると言う事実も判明した。
『黒刀の使い手は出世が出来ない。』などと言う逸話は昔から有ったけれど、無惨が黒刀持ちの
『!!』
そう推察すると、珠世も耀哉の推察に強く頷いて同意する。
「無惨ならば、有り得るかと思います。あの臆病者にとって"日の呼吸"は恐怖の代名詞そのものですから。」
「なぁ、
『!』
今まで沈黙していた伊之助が突如、疑問を抱いて珠世に質問した。
「痣が出来た奴は二十五で死ぬって言ってたのによ、その縁壱って奴が五十過ぎた
『!?』
伊之助の疑問に、耀哉達は珠世の説明に矛盾が生じている事に気付いて驚愕した。一方の珠世は、伊之助の指摘に対して嬉しそうに笑みを零しながら答える。
「良く気が付かれましたね、伊之助さん。その矛盾に答える前に……炭治郎さん、貴方にお聞きしたい事が有ります。」
「っ!……はい、珠世さん。俺に何が聞きたいんですか?」
炭治郎は珠世から唐突に尋ねられて、少し動揺したが直ぐに冷静さを取り戻して確認を取った。
「貴方の一族は"ヒノカミ神楽"を……"日の呼吸"を四百年以上に渡って使い熟し代々伝えて来たと聞いています。その一族の中に、痣を持っていた方は居ませんでしたか?」
「居ました。死んだ父が、俺の額の痣と同じ位置に痣を持っていました。」
『!』
珠世の質問に対して、炭治郎は即答した。何故ならこの質問をされたのは、今が初めてでは無いからだ。
実は炭治郎が"ヒノカミ神楽"を披露した後に、珠世がこの質問を炭治郎に尋ねているからである。それは産屋敷夫婦としのぶ達も直接、耳にしている。
珠世は何故この質問を再びして来たのか、炭治郎は疑問に思いながらも答えていた。珠世は続けて、炭治郎に最後の質問をする。
「失礼だとは思いますが……炭治郎さんの御父上は、御幾つの時に亡くなりましたか?」
「父さんは、四十歳を迎える前に肺の病気で亡くなりました……あっ!」
『!!!』
炭治郎は自身の答えを聞き直して、有る重大な事に気付いた。それは耀哉達も同様であった。
珠世はその時と同様の回答を得られた事と、炭治郎達が自身の質問の意図に気付いてくれた事に微笑を浮かべながら、珠世は自身の自説を語り始める。
「皆さんもお気付きでしょう? この"日の呼吸"を使っていた縁壱さんと炭治郎さんの御父上……二人は痣者で在りながら、二十五歳で死なずに生きている。ですので、私はこう仮説を立てました。
『"日の呼吸"の選ばれた使い手の体質の者だけが、痣の呪いを受けない。痣の呪いに対して免疫を持つのではないか。』と。」
『!!!』
珠世が立てた仮説に、大広間に驚きの声が広がった。特にしのぶ達、炭治郎を愛する女性達の反応は顕著だった。
「でしたら珠世さんっ! 炭治郎君は……っ!」
「はい。油断は出来ませんし、我ながら楽観的な仮説ですが……炭治郎さんなら、痣について心配は無いかと。」
「しのぶ様っ!……っ!!」
「やった……やった!!」
名医たる珠世の診断結果に、しのぶ達は歓声を上げる。最愛の恋人が短命で死なないと分かったのだから、その歓喜の程は一入だ。
そんなしのぶ達に微笑みながら見ていた珠世だったが、今度は責める様な視線で耀哉を睨み付けて愚痴を零した。
「私は痣の呪いに免疫が有ると思われる、炭治郎さんの身体をもっと調べて特効薬を作ってから……せめて作れる可能性の有無を確認してから、痣の件について話すべきだと思っていたのですが……それもこれも全てが台無しです……っ!」
「……珠世さん、ごめんね。」
珠世に凄まれて、耀哉は思わず謝罪の言葉を口にした。
「っ!……珠世殿の御心遣い、痛み入る。」
『!』
珠世の言葉と耀哉の謝罪を聞いて、行冥が感謝の言葉を口にした。それから、行冥は力強く宣言の言葉を口にする。それは自身の覚悟を、改めて決意する様子であった。
「なれど、珠世殿。たとえ痣が出なかったとしても鬼殺隊である限り、明日の命の保証は無い。何を今更、己が命など惜しもうか。
その様な生半な覚悟で柱に、鬼狩りになる者などおらぬ。私達を慮る御優しさは嬉しく思うが、その様な気遣いは無用です。どうか、無惨を倒す事にだけ集中して力を注いで頂きたいと私は考えています。」
「悲鳴嶼さんの言う通りだ。痣者を助けるためでは無く、無惨を倒す事にのみ専念して頂きたい。珠世殿、貴女が痣の発現方法を御存知ならば、是非とも俺達に御教授して欲しい。」
行冥の宣言に義勇が賛同し、二人揃って珠世に頭を下げて痣の発現方法について尋ねた。そんな行冥と義勇を見て、天元達他の柱もまた痣の発現方法を知るべく、珠世に一斉に平伏して頭を下げた。
珠世は鬼殺隊の最高戦力である柱が一同に頭を下げて鬼の自分に頼み込むのを見て、一度だけ小さく溜息を吐いてから痣の発現方法を話す事を決意した。
「確かに、私は痣の発現方法を知っています。」
『!』
珠世の言葉に、行冥達は無意識に身体が僅かに前のめりになった。それ程、興味の有る話だからだ。
回想する様に、ゆっくりと珠世は語り始める。
「縁壱さんと再会した時に痣の力を発現させて頂き、その時に診察させて頂いた結果……縁壱さんの体温は三十九度以上を、心拍数は二百以上を超えていました。」
「!?……そんな状態で戦えと言うんですか? 命に関わりますよ?」
医道に精通している者として、しのぶはその状態が如何に危険かを良く理解していた。
そんなしのぶに同意する様に、珠世が頷くと話を続けた。
「常人ならば、身動き一つ取れないでしょう。ですがそれが痣者になれるか否かを、篩に掛ける目安となるのでしょうね。」
珠世の言葉に、最初に反応したのは実弥だった。
「チッ……そんな簡単な事で良いのかよォ。」
「これを簡単と言ってしまえる、簡単な頭で羨ましい。」
実弥の言葉にボソッと呟いたのは義勇だった。本心からの言葉で義勇に悪意や他意など無いのだが、実弥にそんな義勇の心情を察する力は無かった。
「何だと?」
実弥は青筋を立てながら、義勇を睨み付けた。これを見て愈史郎が仲裁に入る。
「おい、冨岡。そんな事を言ってやるなよ。馬鹿の頭は構造が単純だからって、本当の事を言ったら流石の不死川も怒るぞ。」
「テメェらァ!」
愈史郎の一言が逆に火に油を注ぐ形になり、実弥の憤怒の炎は益々燃え上がって行く。
そんな愈史郎達三人を無視して、しのぶが結論を口にした。
「では、今後は痣の発現が柱の急務となりますね。」
「それに関してですが……悲鳴嶼さん
『!』
珠世がしのぶの結論に対し、そう言って行冥に強く警告を発した。
「何故、私
行冥は怪訝な表情を浮かべながら、その理由を知るべく珠世に尋ねた。行冥の声色には、苛立ちは一切無かった。
「はい。
『……っ!?』
『なっ……っ!?』
思わぬ情報を耳にして、炭治郎達は絶句する。
「それは本当なの? 珠世さん。」
動揺していた無一郎だったが、真偽を確かなものにするべく珠世に質問する。
「これも直接、私が目撃した訳ではありません。緑壱さん曰く……当時、齢二十九歳だった水柱が漸く痣を発現させた後、次の日の朝には死亡していたそうです。尤も、その当時は痣が原因で死亡したとは思っていなかった様ですが……。」
『……っ。』
珠世の情報に、炭治郎達は事実が確定されて沈痛する。しかし、当人である行冥には動揺は無かった。
「南無……私は一体どうなるのかと気になったが……道理と言えば道理である。」
「……冷静だね。流石……と言うべきかな? 行冥。」
まるで他人事の如く言ってのける行冥に、耀哉は感心した様子で話し掛けた。対して行冥は、平伏して耀哉に返答する。
「私の痣の件は私自身が何とか致します故……御館様と珠世殿は何卒、御気になされませぬよう。」
「良いだろう、行冥。」
「……其処まで仰られるなら……っ。」
行冥に其処まで断言されては、珠世もこれ以上何か言うのは憚られた。珠世は意を決して、痣について新たなる情報を提供する。
「皆さん。此処まで話した以上、先に御伝えしておきます。……痣の発現に成功し、更に極めると二種類の能力を得る事が可能になります。」
『!?!?』
珠世の新たな痣の情報に、大広間は色めき立った。耀哉もまた、痣の更に先に隠された情報が有ったとは思わず、興奮を隠せなかった。
「珠世さん、痣の力を極めると……どんな能力がっ?」
耀哉の顔が綺麗ならば、顔が紅潮しているのが分かっただろう。尤も、そうでなくても良く目を凝らせば、身体が僅かに震えている事が良く分かった。
「痣の力を使い熟す事で得られる二種類の能力とは……その一つが"赫刀"。そして更に痣の力を境地の境地にまで極める事が出来た一握りの痣者……"覚醒者"と呼ばれる存在にのみ、獲得が許された能力が"透き通る世界"と言います。」
『!!』
珠世は二種類の能力の名称を報告すると、炭治郎は驚愕で双眸を見開いた。
――"透き通る世界"!?……あれっ? この言葉、何処かで……??
当惑する炭治郎を余所に、珠世は二種類の能力の説明を始めた。
「先ず一つ目の
「!……赫くなると、どうなる? 炎の呼吸の使い手も
小芭内が怪訝そうに、珠世に自身が投げ掛けた異なる点の説明を求めた。
「"炎の呼吸"は"水の呼吸"と並ぶ"最古の呼吸"にして最も"日の呼吸"に近いらしいな?……聞いたところによると、『"炎の呼吸"を"火の呼吸"と呼んではならない。』なんて厳しい掟が有るとか?」
「それは"日の呼吸"と勘違いされて、殺されるのを防ぐためでしょうね。……たとえ見た目が少しばかり似ていようと、その二つの間では天と地ぐらいの大きな差が有ります。決定的に違うのは、
「
蜜璃は珠世が言っている言葉の意味が理解出来ず、首を傾げた。
そんな蜜璃を見て、珠世は微笑を浮かべた後に説明を始めた。
「はい、
ですが、赫刀で鬼を斬れば……その鬼は内臓を炎で直に炙られている様な激痛に襲われ、再生が遅延します。それは無惨であろうと例外ではありません。」
『!!』
珠世が説明した赫刀の能力に、炭治郎達は驚愕した。其処へ炭治郎が珠世に尋ねる。
「赫刀で斬られた鬼は、強烈な激痛を覚えて再生が遅くなる……"日の呼吸"が使えない剣士でも、無惨に対抗出来ると言う事ですか?」
「そうです。赫刀ならば、無惨の再生力を阻害して消耗を強いる事が可能です。」
『!!!』
無惨への数少ない対抗手段の一つを、珠世から知る事が出来た耀哉達は思わず色めきだった。
「派手に良い事が聞けたぜ……けど珠世さんよ。その赫刀って奴は、どうやったら出来るんだ? 痣者ってだけが条件じゃねぇんだろう?」
天元が珠世へ冷静に、赫刀の発動条件の方法を尋ねた。
「痣者以外の条件として……それは圧倒的な圧力、万物を握り潰せる程の、"万力の握力"が必要になります。」
「っ!?……万力の……。」
「握力……?」
珠世が伝えた赫刀の意外な発動条件を聞いて、その意味が良く理解出来ていないのか炭治郎達は首を傾げた。
珠世は疑心の孕んだ視線を受けて、苦笑しながら説明を続けた。
「私が縁壱さんから発動条件を聞いた時は、もっと酷かったんですよ? 『この様に
『……』
珠世はその当時の自身と縁壱のやり取りを思い出して可笑しそうに、楽しそうにコロコロと笑い始めた。
――こんな楽しそうな珠世様は始めて見たぞ……これもまた美しい……。
愈史郎は脳裏に直接焼き付ける勢いで、珠世がコロコロと楽しそうに笑う姿を記憶し始めた。
「……」
炭治郎もまた、珠世の様子を見て頬を赤くしながら見惚れていた。
『……っっ。』
一見すると間抜け面を晒す、そんな炭治郎に彼女達が気付かない訳が無い。彼女達は素早く、行動に移った。
「いたただだだだっ!?!?」
『!!』
しのぶが炭治郎の左頬を、アオイとカナヲは炭治郎の耳を、そして禰豆子は炭治郎の髪の毛を背後から両手で引き千切らんばかりに引っ張り出した。
アオイとカナヲが炭治郎の耳飾りを直接引っ張らない辺りは、せめてもの慈悲なのだろう。
「「むぅ――。」」
炭治郎の様子に、頬を膨らませて蜜璃と何故か無一郎まで不貞腐れて拗ねていた。
『ふんっ……。』
炭治郎を制裁して少しばかり気が済んだのか、しのぶ達は不機嫌ながらも炭治郎から手を離した。
炭治郎は涙目になりながら、抓られた箇所を優しく撫でる。
しのぶ達による炭治郎への制裁が終わるとほぼ同時に、珠世も真面目な表情を取り戻して赫刀の話を再開する。
「この結論は、私なりの解釈です。その理由ですが、縁壱さんに頼んで込める力を知るべく、私の手を思い切り力を込めて握って貰ったのですが……。」
『!』
――珠世様の白くて美しいその御手を握っただとっ!? なんて羨まけしからん奴だっ!?
愈史郎が青筋を立てて、縁壱の行った所業に憤怒する。
別に咎められる様な事は縁壱はしていないのだが、其処が愈史郎と言う男である。
珠世以外の関する案件に関しては冷静沈着なのだが、珠世が関わった瞬間ポンコツと化すのが、この愈史郎の最大の弱点にして所以である。
そんな愈史郎に気付かず、珠世はその後を語り始めた。
「その結果、私の腕が握り潰される程の握力でした。」
『!?』
人間より遥かに強靭な鬼の身体を握り潰す程の膂力とは、炭治郎達には想像しがたかった。
『……』
炭治郎達は赫刀の発動条件を知って、難しい顔をする。珠世はそんな炭治郎達を見て、慌てて補足する様に説明を付け足した。
因みに愈史郎は珠世が縁壱に腕を砕かれたと知って、その表情は名状しがたきものになっていたが、全員からものの見事に無視されていた。
「いえ、その……何も赫刀を発動させるのに、其処までの握力は必要無い筈です!……因みにもう一つだけ、赫刀の発動方法を縁壱さんから聞き出す事に成功しました。」
『!!』
驚く炭治郎達は先刻の発動条件に関しては頭の隅に一先ず追いやり、もう一つの発動条件を知るべく珠世に再び視線を集中させた。
「そのもう一つの発動条件ですが……
『……!』
炭治郎達は珠世から二つ目の赫刀の発動条件を聞いて、思わず面食らった。内容だけを聞けば、其処まで難しい方法では無かったからだ。
珠世は再び補足するために、説明を始めた。
「衝撃と言っても、ただ
そうね……一番理想的なのは、痣者同士が持つを
「南無……そちらの方が現実的では有るな。」
「だなぁ……強く握りゃ良いってんなら、とっくの昔に誰かが地味にやってんだろうよ。」
行冥と天元は握力よりも、日輪刀に衝撃を与えると言う方法を肯定した。そちらの方が現実的だと、そう判断したのだろう。
二人の判断に他の何人かが同意する様に頭を縦に振って頷き、話の流れが握力より衝撃への支持が上回りそうになったところへ、静観していた耀哉が開口した。
「赫刀の条件だけを聞くならば、痣が無くても出来そうなものだけどね……そうだ。此処に日輪刀を持って来て、検証してみるのはどうだろう?」
『!!』
耀哉が思い付いた赫刀の検証に、炭治郎達は驚いた。しかし、直ぐに否定的な意見が出る。
「っ!……耀哉。そんな検証をする意味など、とても有るとは思えんな。」
耀哉の提案に対して、先ず否定したのは愈史郎だった。愈史郎は続けてその否定する理由を話し始めた。
「第一、お前は珠世様の御話を聞いていなかったのか? 痣者でも何でも無い奴が、赫刀を引き出せる訳無いだろう? 時間を無駄に消費するだけで、何の成果も無く終わるのが目に見えているぞ?」
そう言って愈史郎は、耀哉の提案を時間の無駄と否定して鼻で嗤い飛ばした。
「確かに愈史郎さんの言う通り、無駄で終わるかもしれない。」
耀哉は愈史郎の否定的な意見を聞いて、怒る事無く起こり得る可能性は十分に有ると肯定した。
しかし、次に耀哉は赫刀の検証を行う意味について、その肯定的な意見を話し始める。
「でもどうせ無駄だからと決め付けて最初から何もしないのは、果たして正しい行動なのだろうか? もしかしたら、少しでも何かの手掛かりを得られるかもしれないとは思わないかい?」
「……っ。」
愈史郎は耀哉の正論と取れる言葉に、否定も反論も出来なかった。何も答えられない愈史郎に対して、代わりに珠世が答えた。
「私も正直に言うと、愈史郎と同意見です……けれどその検証を行えば、最低でも『赫刀は痣者でなければ使えない。』と言う結論が得られるのもまた、紛れも無い事実です。」
『!』
珠世の意見を聞いて、炭治郎達は双眸を見開いた。実験をすれば如何なる結果が待っているにせよ、確実に成果が約束されている事に気付いたからだ。
「耀哉さん。その赫刀の検証、やってみましょう。」
「うん。そうと決まったなら、善は急げだ。」
珠世が赫刀の検証に同意した事で、検証が決定された。耀哉が言い終わったと同時に、行冥が立ち上がった。
「御館様。では私が『隠』達と共に、皆の日輪刀を持って参りましょう……私の
「分かった。頼んだよ、行冥。」
「御意、直ぐに戻ります。」
行冥は一礼してから、大広間を退室した。それから間も無く、行冥が『隠』を連れて中庭の方から日輪刀と天元達の履物を持って来た。
「お待たせ致しました、御館様。」
「ありがとう、行冥。」
耀哉は行冥に礼を述べた後、炭治郎が身体を起こして行冥に話し掛けた。
「悲鳴嶼さんっ!」
「!……どうしたのだ、炭治郎。」
突然、炭治郎に名前を呼ばれた事に内心驚きながらも、行冥は応える。
「その……悲鳴嶼さんがこの赫刀の検証に参加して大丈夫なんですか……これでもし痣が発現するなんて事になったら……。」
「っ!」
炭治郎が遠慮しがちに、自身が考えうる懸念を行冥に伝える。炭治郎が抱く懸念を理解した行冥は、微笑みながら炭治郎を宥め始めた。
「炭治郎。これしきの事で痣が発現すると言うのなら、寧ろ僥倖だ。その時は君達、後進に後を託して御館様達と今生の別れを笑って出来ると言うものだよ。」
「っ!!……でもそれだと沙代ちゃんが……っ。」
「……その時は、君にあの娘宛の遺言を残そう。私は御館様の御役に立ちたいのだ。どうか、頼まれて貰えないか、炭治郎?」
「……分かりました。」
炭治郎は行冥に押し切られる形で、渋々承諾した。こうして鬼殺隊による赫刀の検証が始まった。
♦
「はぁああああああぁぁぁぁぁっっ!……っ!!」
小芭内が深く呼吸をしながら、自身の桔梗色の愛刀を握っていた。鏑丸も応援する様に、小芭内を静観する。
「フウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥッッ!!」
無一郎が青筋を浮かべる程、深い呼吸をして自身の純白に染まった愛刀を強く握っていた。
「があああああああああああぁぁぁッッ!!」
実弥は青筋を浮かべるだけでなく、双眸を血走らせて緑色の愛刀を握っていた。
「……っっ!……っっ!!……っっ!!」
義勇は何も言わず、されど力を込めて愛刀の柄を握り締めていた。
「冨岡ァァァァァァッ!! 本気でやってんのか、テメェェェェェェェッッ!?」
無言の義勇に対して、実弥が激昂して怒鳴り付けた。それでも愛刀を握り締める力を緩めはしなかったが。
「んにいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃっっ!!」
密璃が顔を引き攣らせて、両手で渾身の力を込めて愛刀の柄を握った。
「ぬおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉっっ!!」
天元は両腕の上腕が盛り上がる程に力ませて、愛刀の柄を握った。
「ぬうんっ!…………ぐぅっっっっっっ!!」
行冥は愛刀の柄を、片手で握って力を籠める。片手なのは両手で握れるだけの柄の長さが無いからだ。因みに、『紙眼・視』は外してある。
因みにしのぶは自身の非力さを理由に、この赫刀の検証への参加を辞退している。
「凄い……悲鳴嶼さん達から凄まじい気迫を感じる……っっ!!」
「半々羽織はともかく、気合の入りっぷりを肌で感じるぜぇ……っ!」
「伊之助、良く見て。水柱様の手首、血管が浮かんでるわ。それだけ水柱様が力んでいる証拠よ。」
「て言うか、柱の皆の日輪刀……半分以上が"
炭治郎と伊之助とカナヲが感嘆する中、善逸だけは行冥達の持つ日輪刀の形状にツッコミを入れていた。
義勇・実弥・無一郎の三人が所持する日輪刀は、通常の"日本刀"の形状をしている。
しかし、行冥・天元・小芭内・蜜璃の四人が所持する日輪刀は"日本刀"の形状から逸脱していた。
しのぶの刺突特化の日輪刀も含めれば、柱の半数以上が"日本刀"の形状から逸脱している。これは杏寿郎が生きていても、結果は変わらない。
行冥達の中で最も"日本刀"に、最も近い形状をしている日輪刀が天元の愛刀だ。
とは言え、二振りの大刀で全長は炭治郎の身の丈に匹敵する。その巨大さは、"日本刀"の範疇から大きく逸脱していた。日輪刀の色は橙色に染まっており、柄尻は頑丈で太い鎖に繋がれていた。
日輪刀の鍔は、金色をしている。天元はその内の一振りを両手で握って、赫刀の検証に挑んでいた。
小芭内の日輪刀は一目で刀剣だと理解出来る物だが、その形状は"日本刀"では無く西洋に実在する刀剣の一種"フランベルジュ"の如く波を打った形状をしている。日輪刀の色は桔梗色で、鍔は緑色をしている。
蜜璃の日輪刀は、非常に特殊な形状をしている。しのぶと同様、刀鍛冶の里の長である鉄地河原鉄珍が自ら製作した自身の"最高傑作"と呼ぶ日輪刀である。蜜璃の愛刀は鬼殺隊で二番目の長さを誇り、薄鋼は布の如くしなやかで有りつつ振っても折れない剛柔併せ持つ名刀である。
常人が扱えばその長過ぎる刀身で扱う自身が斬り刻まれかね無いが、其処は非常に柔軟な身体を持つ蜜璃だからこそ扱える名刀である。日輪刀の色は桃色で、鍔はハート状の
行冥の日輪刀は、そもそも刀剣ですら無かった。片手用の戦斧に大鉄球を非常に太い鎖で繋いだ"鎖鎌"ならぬ"鎖斧"である。盲目の行冥はこの鎖の金属擦過音を全周囲へ響かせる事でアクティブソナーとして用い、広域空間を立体的に把握するための“目”としても利用している。
そんな行冥達を見て、伊之助が強い刺激を受けるのは無理ならぬ話であった。
「おいお前らぁっ!! 俺達も負けてねぇでやんぞおらぁ!!」
「ちょっ!? 伊之助ぇ!?」
行冥達に感化された伊之助が、炭治郎と善逸を大広間から引っ張り出して中庭に飛び出して行った。
しのぶはそれを見て溜息を吐きながら、カナヲとアオイにも赫刀の検証に参加する様に命令を下した。
「うらあああああぁぁぁぁぁっっ!」
飛び出した伊之助は、刃毀れが特徴的な二振りのノコギリ状の日輪刀を両手に持って叫声を上げた。
「…あいつ、二刀同時にやるつもりか?」
柱である天元ですら、一刀だけ両手で持って赫刀の検証に挑んでいるのだ。それを伊之助が片手でするなど、無謀の極みであった。善逸はそう思って、怪訝そうな表情で伊之助を見ていた。
「伊之助!
「お、おうっ! 分かったぜ炭五郎っ!!……うぐあああああぁぁぁぁぁっっ!!」
炭治郎は見ていられず、伊之助に助言をする。伊之助は炭治郎の助言を受けて、一刀を投げ捨てて残ったもう一刀だけに集中した。
「……アオイさん、カナヲ、善逸。俺達もやろう。」
「わ、分かりました。」
「うん。」
「うへぇ……俺も本当にやるのぉ?」
炭治郎がアオイ達三人にも声を掛けて、赫刀の検証に加わった。
「はあああああああぁぁぁぁぁぁっ!!」
「「フウウウウウゥゥゥゥゥゥッッ!!」」
「ぎいいいぃぃぃぃぃぃあああ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁぁぁぁぁぁぁ(汚い高音)無理無理無理無理無理無理!!!」
産屋敷本邸の大広間に、幾つもの声が轟いていた。
♦
時刻:15:40
天気:晴れ
炭治郎達は大粒の汗を流し、息を整えながら休憩していた。検証を始めて十分程の時間が経過したが、日輪刀には何一つ変化を起こす事は出来なかった。
「(ゴクッゴクッ!)……プハッ! 糞がァ……何一つ変化が起きねぇッ!」
『……』
あまね達が持って来た井戸の冷水で乾いた喉を潤し、水分を補給しながら悪態を吐いた。天元達もまた、何も言わなかったが実弥の悪態に同意していた。そんな中、行冥が何も言わずに立ち上がった。
「……悲鳴嶼さん?」
無一郎が行冥の様子に気付いて、思わず声を掛けた。しかし行冥は無一郎に答えず、炭治郎達から一定の距離を取った。
「……フンッ!」
ガチィン! ガチィン! ガチィン!
『!』
行冥は気合を入れると、鎖を巧みに動かして戦斧と大鉄球を激突させた。轟音が産屋敷本邸になり響く中、行冥は三度ばかりこの行為を続けた。
「……そう言う事かっ! 協力するぜ、悲鳴嶼さんっ!」
行冥の意図を察した天元は行冥にそう言うと、両手に愛刀を持ちながら行冥に向かって愛刀を構えた。
「フッ――!……行くぞっ、宇髄っ!」
行冥はそう天元に声を掛けると、渾身の力を振るい鉄球を天元に向かって投げ付けた。
「派手に打ち返してやるぜっ! ぬおりゃあああああぁぁぁぁぁっっ!」
天元は雄叫びを上げながら、自身に向かって跳んで来る大鉄球に向かって愛刀を叩き付けた。
ガギイイィィン!!!
金属が激突し合う轟音が産屋敷本邸に鳴り響いた。
「ぬおおぉぉっ!……だっしゃああぁぁぁっ!!」
天元は限界まで愛刀を握っている両手に力を込めると、行冥の大鉄球を打ち返した。
跳ね返された大鉄球は一度地面に衝突後、跳ね返って行冥の横を跳んで行き再び地面に落下した。
「チィッ!……地味な結果で終わっちまったな……。」
「衝突を与えて
『!』
行冥が呟いた一言で、炭治郎達は行冥の目的を察した。
だが、この検証も失敗で終わった事も理解した。
「御館様、珠世さん。もうこれ以上の検証は、はっきり無意味では無いでしょうか?」
しのぶは赫刀の検証が上手く行かないのを見て、検証の中止を提言した。しのぶの提言を受けて、珠世は何も言わずに耀哉を見る。耀哉は顎に手を置いて、静かに一考していた。
「……いや、もう少し続けてみよう。今度は一本の日輪刀を、二人で握って試すと言うのはどうだろう?」
『!』
耀哉の提言を受けて、炭治郎達は思わず互いの顔を見合わせた。
「御言葉ですが、御館様。仮にそれで赫刀が発動出来ても、実用性は無いのではありませんか?」
耀哉の提言に異議を唱えたしのぶは、次に赫刀について珠世に質問する。
「珠世さん。赫刀ですが、永続的に強い握力で握り続けなければならないのですか? それでは戦いに支障を来たしてしまいますが……?」
「いえ、その必要は有りません。赫刀は発動さえさせてしまえば、暫くの間は持続して使用が可能です。」
『!!』
炭治郎達は朗報とも言えるその情報を聞いて、再び赫刀の検証を行う気力を取り戻した。
「よーし! 頑張るぞー!!……炭治郎君っ! 一緒にやろう!」
「えっ?」
『っ!?』
気合を入れ直した蜜璃が炭治郎に抱き着きながら誘った事で、一部の者達が騒然となる。大広間に居るしのぶも、思わず青筋を立てる。
「か、甘露寺。何故……竈門炭治郎を選んだんだ?」
小芭内は蜜璃を誘おうとした矢先に、その張本人の手によって目論見が木っ端微塵にされた事に動揺しながら、困惑を露にしつつ蜜璃に尋ねた。
「何故って……私が炭治郎君と組みたいと思っただけよ? 伊黒さん。」
「……っ。」
何故炭治郎を誘った理由を語らねばならないのかと、そう言わんばかりにキョトンと惚けた表情を蜜璃は見せた。それも小芭内から炭治郎を守る様に、優しく抱き締めながらだ。
これには小芭内も下手に何かを言おうものなら、大火傷をしかねないと考え、舌打ちしてから炭治郎を睨み付けるだけに留めた。
尤も、殆どの者は小芭内の心情を察していたが。
「「……」」
――出遅れた……っ!
アオイとカナヲは嫉妬で内心怒りの炎を滾らせながら、蜜璃を睨み付けていた。
「アオイちゃん、カナヲちゃん。炭治郎の事なんか放っておいてさ、どう? 俺と組「「ああ"ッ!?」」……みませんよね。はい、すみません。」
善逸はちゃっかりアオイとカナヲを誘ったが、殺意の籠もった視線を受けて即座に全面降伏して謝罪した。
壱:竈門炭治郎・甘露寺蜜璃
弐:悲鳴嶼行冥・宇髄天元
参:不死川実弥・伊黒小芭内
肆:富岡義勇・時透無一郎
伍:神崎アオイ・栗花落カナヲ
陸:我妻善逸・嘴平伊之助
以下の十二人六組がこうして、無難な人選で分けられたのは、不幸中の幸いであった。
「んにいいいぃぃぃぃっ!!……炭治郎君も頑張って!」
「は、はいっ!……ふうぅぅぅぅっ! ふううぅぅぅぅぅぅっっ!!」
背後から抱き着く様に炭治郎を抱き締めながら、蜜璃は炭治郎の愛刀を握り締めていた。
そのため炭治郎は別の意味で体温が上昇しそうになっていたが、同時に集中出来ずに居た。
――ううぅっ!……甘露寺さんから凄く良い匂いがするっ! 背中に当たる乳房も柔らかくて……あああっ! 駄目だ駄目だっ! 集中っ! 集中しないと……だああっ! 落ち着け俺っ! 俺なら集中出来るっ! 俺が次男だったらきっと集中出来無かったけど、長男だから絶対集中出来るっ!!
炭治郎は蜜璃を意識し過ぎて最早、赫刀の検証どころでは無かった。炭治郎は更に自身が所有している、
『……っ。』
一部の者達は炭治郎と蜜璃のやり取りを見て、怒りを力に変えて赫刀の検証に挑んだ。
だが結果としては、最初の単独での検証と何も変わらない結果で終わった。其処へ耀哉が、三人での検証で最後にすると決定した。
「炭治郎さんっ! わ、私を仲間に加えて下さいませんか!?」
「ねぇ、私としようよっ! 炭治郎っ!!」
耀哉の決定から間髪入れずにアオイとカナヲの二人が炭治郎と蜜璃の下へ向かい、積極的に
「え、えーとっ……。」
炭治郎はアオイとカナヲの気迫に圧されて決断しかねていたが、其処へ炭治郎に救いの手を差し伸べる者が現れた。
「炭治郎君。どっちかなんて言わないで、私は抜けるから二人と一緒にしたら良いわよ。」
「「「っ!」」」
この蜜璃の言葉に、炭治郎は元よりアオイとカナヲが驚いて双眸を見開いた。
「こ、恋柱様。良いんですか?」
「勿論よ、カナヲちゃん。遠慮なんてしなくて良いからね?」
カナヲは譲ってくれるとは考えられなかったのか、当惑しながら蜜璃に尋ねた。
「……ありがとうございます。恋柱様。」
「どういたしまして、アオイちゃん。」
アオイは直ぐに頭を下げて蜜璃に礼を言った。カナヲもアオイに続けて頭を下げた。二人が頭を下げたのを見てから、蜜璃は笑顔で炭治郎を激励してからその場を離れた。
「……甘露寺、良かったら俺と「おーい、甘露寺っ!」……っ。」
小芭内が一人になった蜜璃に声を掛けようとしていたが、天元に横槍を入れられる形で妨害された。小芭内は思わず憎悪の籠もった視線を、天元に無遠慮にぶつけるが天元本人は一切気にしなかった。
「なぁ、甘露寺。俺達と組まねぇか?」
「宇髄さんと……悲鳴嶼さんとですか?……でも二人が柄を掴んだら、私に持つところ有ります?」
天元に誘われた蜜璃だったが、鬼殺隊で一、二を争う巨漢の二人では、第三者が入り込む余地が有るのかと疑問に思った。
「その辺は地味に心配しなくて良い。俺の
「わ、私にとってあんまり自慢じゃなかったんですけど……分かりました、行きます!」
「……っ!」
蜜璃は少しばかり一考して、行冥と天元の下へ向かった。小芭内はそのまま取り残された。
「……っ!」
小芭内の様子を見て同情していた実弥だったが、在る重大な事実に気付いて慌てて行動に移り始めていた。
「おい、時透っ! 俺達と組めぇッ!」
実弥は大声で無一郎を呼んで、組む様に誘い出した。
「ねぇ、君達。良かったら僕を加えてくれない?」
「え、えーとっ……はい、良いですよ。」
「良ーしっ! これでわかめ頭を加えて三人だっ! 行くぞ紋逸っ!」
無一郎は実弥を思い切り無視して、善逸と伊之助の下へ向かい手を組んでそそくさと離れて行った。
「「……」」
「……」
実弥と小芭内に残されたのは、義勇一人だった。
壱:竈門炭治郎・神崎アオイ・栗花落カナヲ
弐:悲鳴嶼行冥・宇髄天元・甘露寺蜜璃
参:時透無一郎・我妻善逸・嘴平伊之助
肆:冨岡義勇・不死川実弥・伊黒小芭内
以下の十二人四組がこうして無難な人選で分けられた。一組を除いて。
「頑張ろうねっ!❤ 炭治郎っ!!❤❤」
「炭治郎さんっ!❤ 力を合わせて一緒に頑張りましょう!!❤❤」
「う、うん。頑張ろう、二人とも。」
アオイとカナヲは蜜璃に対抗してか、炭治郎の斜め後ろから抱き着いて乳房を押し当てていた。
「……っ。」
大広間から見学しているしのぶは、理由など付けずに自分も赫刀の検証に参加すれば良かったと内心で地団駄を踏んで後悔したが、後の祭りであった。
「ム――ッッ!」
禰豆子も大広間の日陰から炭治郎を見ていたが、嫉妬から不満しか無かった。
しのぶと禰豆子の様子を余所に、
「うがああああああぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
「ぎいいいやあああああああぁぁぁっっ!!!」
「……フウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥッッ!」
――この二人五月蠅い……僕も炭治郎と組みたかったなぁ……。
無一郎は内心、善逸と伊之助の騒々しさに辟易としながらも集中していた。
この四組の中で、ある組が一際、熱を入れてこの検証に取り組んでいた。
「シイイィィィィィアアアアァァァァァァァァッッッ!!!」
「クオオオオオオオォォォォォォォォォォォォッッッ!!!」
「ハアアアアアアアァァァァァァァァァァァァッッッ!!!」
それは実弥と小芭内、そして義勇の組であった。
義勇の表情は一見すると分からないが、実はとても楽しそうにしている。本人は普通の対応をしている心算だが、その誤解を招き易い言動で常に人から誤解を受け易く、特に実弥と小芭内とは折り合いが悪かった。
義勇本人は実弥や小芭内と仲良くなりたいと常々思っているのだが、常に誤解され失敗していた。今回の検証で実弥達と組めて、機嫌が良かった。
義勇の声色からも、非常に分かり難いがそれは察する事が出来た。
しかし、一方で実弥と小芭内の心情は義勇とは真逆であった。自身の行動の遅さが招いた事態とはいえ、毛嫌いしている義勇と組むのは腹に据えかねる思いであった。
その不機嫌さは二人の声色と青筋が浮かんだ表情から、明確に察する事が出来た。
心情はさておき、気合を入れた義勇達三人が握る日輪刀は何一つ変化が起きなかった。しかし、それは表面上だけの話である事が、間も無く分かった。
「シュルルルルルルルルゥ!! シュルルルルルシャー―――!!」
小芭内の首に巻き付いていた鏑丸が、日輪刀に向かって身体を伸ばし刀身を舌で舐めた。その直後、騒ぎ立てる様に鳴き始めたのだ。
「っ!……っ!?……伊黒さんっ! 鏑丸が『
「アアアアァァァァ……何ぃっ!?」
『っ!?』
炭治郎の一言で、義勇達を除いた全員の注目が義勇の日輪刀に集中した。
「気合入れろおらァ!!!」
「「「ガアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァッッッ!!!」」」
義勇と小芭内は実弥の掛け声で、更に気合を入れ力を込めて日輪刀を握った。当然だが、実弥も渾身の力を込めて日輪刀を握った。
♦
時刻:16:04
天気:晴れ
結論から言うと、義勇の日輪刀は赫くなる事は無かった。しかし日輪刀の刀身の温度を確認すると、通常では起こり得ない程の熱を持っていた事が発覚した。
汗を拭き終えた炭治郎達が大広間に再集結するのを待って、珠世は先ず炭治郎に労いの言葉を掛けてから語り始めた。
因みに、炭治郎の身体を拭くまたは拭いて貰うでアオイとカナヲで争いが在った。しかしこれをしのぶが一喝して二人を黙らせた後、炭治郎の汗をしのぶが拭き、アオイとカナヲで互いの身体を拭いたのだった。
「皆さん。赫刀の検証、大変お疲れ様でした。この御協力の御蔭で良い意味で、想定外の結果が得られました。大変申し訳無いですが、正直に言うと何一つ成果が上がらないと思っていましたから。この検証結果を見て、私はある仮説に思い付くまでに至りました。」
『っ!』
「その仮説……詳しく御聞かせ下さいますか? 珠世様。」
あまねが珠世に促す様に、仮説の解説を依頼した。珠世はコクリと頷いてから、仮説の解説を始める。
「はい。先ずは皆さんが御使用されている日輪刀の原材料は年がら年中、太陽光が差す"陽光山"で採れる"猩々緋砂鉄"と"猩々緋鉱石"の二種類の特殊鉱物を使用して製造されています。」
珠世は初頭に、日輪刀の基本知識をお浚いのために解説した。其処から間髪入れず、珠世は本題に入った。
「其処で私が考えたのは、赫刀が発動する要因です。
痣者は呼吸を極め、全身の体温を上昇させます。そして万力の握力から発生する強烈な高熱に、日輪刀に含まれる陽光が反応して、赫刀に変化するのではないか? と私は考えています。」
『!!!』
「となると……やはり赫刀の発現には、痣者になる事が大前提と言う訳だね?」
「そうですね。予想通りとも言えばそれまでですが、はっきりしたとも解釈出来ます。」
耀哉と珠世のやり取りを聞いて、炭治郎達は多少は報われた様に感じた。赫刀の議題は、これで終了する筈であった。
「うぅ――!!」
「禰豆子?」
禰豆子が突如、声を上げて炭治郎に近付いて行ったのだったその行動の意図が理解出来ず、怪訝そうに全員が禰豆子に注目する。
「うぅ――! うっ!」
禰豆子は
「禰豆子……もしかして、俺に
「(コクコクッ!)」
炭治郎の質問に、禰豆子は肯定する様に頸を縦に勢い良く振って頷いた。そんな禰豆子を見て、炭治郎は困った表情を浮かべる。大広間で日輪刀を抜刀する事は、流石に躊躇われたからだ。
「炭治郎。私達に気を使わなくても大丈夫。
「っ!……分かりました。」
炭治郎は耀哉の許可を得て、行冥達から少し離れて距離を取る。炭治郎が日輪刀を抜刀しようとした、その瞬間に事は起こった。
お待たせしました。
今回は痣と赫刀の話でした。とりあえず、痣者にも光明が出来ましたが、勘違いされても困るのではっきり言っておきます。助かった訳では無いのでその様に御理解願います。一先ず寿命の事は先送りで考えて頂けたらと思います。
変更点:時刻の変更。
時刻を早めたのは夜のイベントの時間を稼ぐためです。読者の皆様にとってこちらの方が大本命では無いでしょうか? もう少し先になりますが、御了承下さい。
最後にリクエストの件ですが、一人一回なんて制限は設けておりません。 何個でもして下さって大丈夫ですので、お待ちしております。
次回の更新は11/11(水) 0時です。お楽しみに!
登場人物の性器発言ってどう思います?
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有り(エロくなるからばっちこい)
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無し(日輪刀、鞘とオブラートに揶揄って)
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作者にお任せ