※この作品はR-18です。

優しき日輪と鬼殺隊の美蝶   作:蓮紅

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※キャプション必読・リクエストに関しての説明あり
・鬼滅の刃原作に関するネタバレあり。原作未読の方は閲覧注意。
・鬼滅の刃二次創作小説です。
・原作・キャラクターの性格・設定等改変の可能性大。一部キャラ崩壊注意。
・思い付き次第で何度も編集を繰り返す可能性大。お時間がある時で良いので、良ければ読み返してみて下さい。
・誤字脱字等のミス・内容の矛盾等の指摘は大歓迎。理不尽なクレームは受け付けません。
・コメント・メッセージ大歓迎。創作意欲の燃料になります。コメント・メッセージの返信は必ずさせて頂きますのでどしどし御投稿下さい。
・SS内容に関してはネタパクリと言う名の盗作を間違えてしないよう気を付けてますが、もし私が投稿した作品が既に別の作者様と作品内容が酷似していた場合、メッセージにて御連絡下さい。

※リクエストに関して
メッセージにてリクエスト内容を御連絡下さい。
以下規約
・100%受け付けられると保証された訳では御座いません。創作意欲次第で承諾する場合もお断りする場合も御座います。
・炭治郎×鬼滅女子のみ。
・作者は遅筆。またリアルの都合や他SSの執筆で投稿が遅くなる可能性大。
・CP、全年齢かR作品か、ネタの内容を御記入下さい。ネタの内容が詳細で有れば有る程、筆が進むので御協力をお願い致します。


第肆拾壱話 日輪と鬼殺隊の柱は交流を始める

【……ああああああああああああああああああああああああああああっ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!!】

 

優しい慈雨の中、紫色の蝶々の髪飾りが特徴的な少女が、赤みがかった瞳と髪色、そして額の痣が特徴的な少年に抱き着いたまま泣き叫んでいた。

まるで体内を蝕んでいた何かを吐き出す様に、少女は泣き続けた。少年はそんな少女を邪険にする事無く、対照的に静かに涙を流しながら抱擁を返していた。

 

【ひっく……うぅぅ……わ、わたしも、たんじろうくんが、うぐぅ、すき、です、だいすき、です……わたしを、あ、あなたのつ、つまに、してください!】

 

【……はいっ!】

 

魂の絶叫とも言える声が収まると、美少女は泣きながら炭治郎という名前の少年にそう告白して、口付け(キス)を交わした。

 

愛する両親を鬼に殺され、此の世で唯一の肉親となった最愛の姉をも失った。

偽りの笑顔の仮面を被り、心を深い闇の中へと沈めた。

そんな少女が愛する想い人の温もり()に触れ、初めてその身に抱えていた闇が祓われた瞬間であった。

 

「ぉお……おおっ……今だからこそ分かる。やはりあの時のしのぶと今の生き生きしたしのぶの姿とでは、最早別人の様だ。」

 

畳に染みを作る程の滂沱の涙を流しながら、行冥が歓喜に満ちた感想を述べた。

生来の感動屋で日常的に涙を流している行冥だが、今回は一段とその流している涙の量が凄まじかった。尤も、それは行冥だけでは無かった。

 

「ひぐっ……あうぅ……しのぶ、様ぁ……っ。」

 

「姉、さんっ……しのぶ姉ざぁん……良かったぁ……よがったよぉ……っっ。」

 

アオイとカナヲが号泣しながら、愈史郎に流されている映像を鑑賞していた。

 

「しのぶさん……っ。」

 

珠世はしのぶの姿を見ながら、手に持っている手巾(ハンカチ)で静かに涙腺から溢れる涙を拭った。

 

「しのぶちゃんっ……しのぶちゃぁ~~んっっ……っ!!!」

 

蜜璃に至っては、鼻水を垂らしたまま号泣して鑑賞していた。

 

「…………っ。」

 

小芭内は何故か、二人の様子を見て苦々しい表情を浮かべていた。

 

「…………甘露寺、そのままでは見っともないぞ。ほら、ちーんだ」

 

すると小芭内は映像を振り払う様に頭を一度振るってから、蜜璃の世話を甲斐甲斐しく始めていた。

 

「……っ!……っっ!……ひぐっ!……ぐずっ!……っっっ!!」

 

伊之助は食事のためにその端正な美顔を晒していたが、鑑賞が始まってから必死で堪えても涙が止まらず、泣き顔を誤魔化すために猪頭の被り物を着用した。

 

だがそれの行為が逆に涙を更に止め処無く溢れさせ、被り物から涙が溢れ出る始末であった。

 

「ぐずっ……二人揃って老衰で死ねバカヤロー……っ。」

 

善逸は炭治郎への嫉妬心から不器用な祝福の言葉を、泣きながら送っていた。

 

「……不死川、泣いているのか……っ?」

 

「んなッ!?……お……俺ァ……な、泣いてなんかねェッ!!」

 

表情筋が死んでいるのか問い詰めたくなる程、何一つ変化を見せない義勇が実弥に訊ねていた。実弥は動揺しながら、泣いている事を否定する。

 

確かに実弥は、泣いてはいなかった。鼻を赤くし、涙腺に溜まっている涙が決壊しない様に天を仰ぎ見ていたが。

 

――って、なんであんな無表情のままそんな優しい音が出せんの? 表情筋死んでんのかあの人っ!?

 

善逸が義勇から鳴り響く優しい音に気付き、それに反比例した対照的な表情を見比べていた。

 

「随分と熱烈で派手な告白じゃねぇか。」

――後で愈史郎(あいつ)に頼んで、雛鶴達にも見せてやりてぇな。つーか、派手に金を取れるぞこれ。

 

天元は笑みを浮かべてそう言いながらも、冷静に映像を見て感想を心中に述べていた。

 

「…………」

――炭治郎……格好良いなぁ……。

 

無一郎はしのぶを説得し、自身の想いを正面から告白する炭治郎を見て憧憬や尊敬の念を抱いていた。しのぶの事は、眼中に無かった。

 

「炭治郎……凄く格好良い……しのぶも、本当に良かった……。」

 

輝利哉は無一郎と違って素直に想いを吐露し、更にしのぶの事も祝福していた。

 

「炭治郎様……❤」

 

「なんて、お優しくて、嬉しいお言葉……❤」

 

「……素敵っ❤」

 

「嗚呼、私……惚れ直してしまいます……❤」

 

ひなき達は炭治郎を見て、その言動に見惚れていた。

 

「「……」」

 

産屋敷夫婦の二人は、行冥達と違って何も言わず静かに鑑賞を続けていた。しかし、二人が握り拳を作り手汗を掻いてるところを見れば、熱心に鑑賞している事は明らかであった。

 

「………………」

 

当事者の一人である、炭治郎は姿勢を正して正座して大人しくしていた。

 

当初こそしのぶ共々鑑賞を阻止するために愈史郎を気絶させようとしたが、速攻で取り押さえられた。

 

それも何とあまねの手によって実行されたのである。

 

愈史郎に向かって突撃する二人の真正面に立ちはだかると、二人は動きを止めざるを得なかった。あまねはその隙に制止した二人の肩を掴んで、畳の上に叩き付ける様に正座させたのである。

 

我に返った炭治郎としのぶはあまねから逃れようとしたが、其処へ耀哉が二人を説得したため、渋々首肯したのである。それを見てあまねも、二人から離れていった。

 

尤も、本人達に選択の権利など有りはしなかったのだが。

 

そして炭治郎が姿勢を正したまま大人しくしている最大の理由としては、自身の行為に炭治郎が恥辱を感じなかったという事実が有る。自身にとってしのぶに告白した、あの瞬間は胸を張れる出来事だからだ。

 

尤も、羞恥心は有るのか顔は林檎の如く真っ赤の染めており、身体は小刻みに震えていた。

 

「……っっ……っっ……っっっ!……っ……」

――嗚呼っ……穴があったら入りたい……っっ!!

 

一方で、しのぶは更に重症であった。

最初こそ炭治郎と同様、姿勢を正して正座していた。しかし映像が進むにつれて徐々に上半身を崩していき、ついに正座した状態で俯せになった。

所謂"ごめん寝"状態である。更に頭を抱えて炭治郎以上に、身体を震わせて羞恥心に悶え苦しんでいた。

 

――早く終われ。

 

炭治郎としのぶは二人して、そう念じながら必死で耐えていた。そしてついに、『紙眼』を通して脳裏に映し出されていた映像が消える。

 

『!』

 

「「っ!」」

――終わったっ!!!

 

恥辱に耐えていた炭治郎としのぶは自身に、一筋の光明が差した感覚を覚えた。其処へ耀哉は、二人に話し掛ける。

 

「炭治郎、しのぶ。素晴らしいものを見せて貰ったよ。ありがとう。」

 

「「!」」

 

「……恐れ入ります。」

 

「お目汚し、大変失礼致しました。」

 

耀哉の感謝の言葉に、炭治郎としのぶは何とも言えない表情を浮かべるしかなかった。

 

「この映像だけど、是非他の剣士(子供)達にも見て貰いたいね。」

 

『っ!?』

 

無邪気な笑みを浮かべてそう口にした耀哉に、周囲はギョッとした表情を浮かべる。特に炭治郎としのぶの反応は顕著だった。

 

「お、お、御館様……っ!」

 

「それだけは、どうか……どうか、お許し下さい……っ!」

 

炭治郎としのぶは脂汗をダラダラ流しながら、土下座して平伏し耀哉に懇願した。そんな二人を見て、耀哉はおかしそうに笑声を上げた。一頻り笑い終えると、耀哉は二人に話し掛けた。

 

「冗談だよ。二人とも、安心しておくれ。」

 

『!』

 

耀哉が笑みを浮かべてそう言うと、炭治郎としのぶは安堵の溜息を零していた。

 

「!……御館様、お戯れは程々に……。」

 

「あぁ。私が悪かったよ、行冥。」

 

見兼ねた行冥が耀哉に苦言を呈した。行冥の苦言を聞いて耀哉も反省の弁を述べた。

 

「しのぶが炭治郎の事を、心から想っている理由が良く分かった……でも、だからと言って継子のカナヲと殺し合うのは、流石に拙いと私は思うよ?」

 

『!?!?』

 

耀哉の爆弾発言に、大広間は騒然となった。特に関係している炭治郎達は思わず、固まっていた。

 

「鬼殺隊の長い歴史で、師弟が対立してその関係を解消した記録は有っても、想い人の異性を巡って師弟が殺し合うなんて前代未聞の大事件だよ。……しのぶとカナヲは、もっと理性を保つ努力をしなさい。

炭治郎も、故意にやっている訳では無く、無自覚なのだろうけれど……背中を刺されない様に気を付けてね?」

 

「「「…………御意。」」」

 

炭治郎としのぶ、そしてカナヲの三人は林檎の如く赤面しながら耀哉の言葉に了承した。

 

「「……っ……っっ……っっ……。」」

 

行冥と天元は、笑声を漏らすのを必死で堪えていた。

 

――殺し合う程って事は、それだけ炭治郎君の事が大好きって事よねっ!? きゃあ~~~っ!! 私もそんな燃え上がる様な恋がしたいわっ!!!

 

蜜璃は初めて聞いたしのぶとカナヲの事件を聞いて、逆にときめいていた。

 

「しのぶさんとカナヲちゃんが、殺し合ったぁ!?」

 

「おいっ!? そんなん知らねーぞどう言う事だ!?」

 

蜜璃と違い、善逸と伊之助は驚愕しながら声を上げた。

 

「何だよ、お前ら蝶屋敷にいるのに地味に知らねーのか? つーか、この乱闘騒ぎを知ってるから産屋敷邸(おやしき)に呼ばれたんじゃねぇのかよ?」

 

乱闘騒動の一件を知らなかった様子の善逸と伊之助に対して、天元が驚いた様子で尋ねた。

 

「音柱様。あの乱闘は御二人が帰って来るほんの少し前に起こった出来事でしたし、しのぶ様も緘口令を敷いていましたので知らなかったのも無理も無い話かと……」

 

善逸と伊之助に代わって、アオイが困った様子で天元の質問に回答する。

 

――三人の関係を考えたら無理も無いんでしょうけど……確かに、無理も無いんでしょうけど……。

 

珠世は苦笑しながら、心中で理由を考察していた。

 

「まあ、そうなるな。」

――仲直りの経緯は知っているが……禰豆子の一件も絡んでいるから教える訳にはいかん。それにもし教えたら、今度こそしのぶかカナヲのどちらかが俺を殺しに掛かって来るかもしれんからな。

 

愈史郎は心中でそう結論付けると、沈黙を貫く判断を選んだ。

 

「胡蝶、栗花落。(そんな真似をすれば、炭治郎が悲しむのだから)お前達もいがみ合うのは、大概にしておけ。」

 

「「……っ。」」

 

「ど、どうどうっ。二人とも、落ち着いて下さい。」

――ああっ、もうっ! 義勇さんも余計な事を言わないで下さいよっ!!

 

炭治郎は怒りの匂いを全身から発して、青筋を浮かべながら抜刀しようとするしのぶとカナヲを制止していた。心中では、義勇への愚痴を零しながら。

 

愈史郎を切っ掛けに引き起こされた騒動は、僅かに燻る火種を残しつつも晩餐会は無事に終了したのであった。

 

 

 

♦︎

 

 

 

「あの……。」

 

「何だ?」

 

産屋敷本邸の廊下を、二人の男性が歩いていた。否、正確には一人だ。何故ならば、もう一人の男性は肩に担がれる様に運搬されていたからだ。所謂、"お姫様抱っこ"ならぬ"お米様抱っこ"である。

 

担がれている方が炭治郎であり、担いでいる方が天元であった。

天元は平然としていたが、炭治郎は未だに困惑を隠せていなかった。

 

「どうして、俺は貴方に担がれているのでしょうか?」

 

「そりゃお前、俺がお前を派手に誘拐したからに決まっているだろう?」

 

困惑する炭治郎に対して、しれっとした表情で天元はそう言い放った。

 

この一件について説明するには、些か時間を遡らなければならない。

それは晩餐会が閉会し、耀哉の妻であるあまねの一言から事の起こりは始まっていた。

 

「……皆様。丁度良いお時間ですから、温泉で汗をお流ししては如何でしょうか?」

 

『!』

 

あまねが提案した一言に、炭治郎達は注目した。

 

産屋敷本邸の大浴場は産屋敷一家と使用人で、区別など付けたりせず分け隔て無く利用されている。産屋敷家にとって、使用人達も家族同然だからだ。

 

その様に大切に厚遇されているからこそ、使用人の中には百年単位で仕えている一族の出の者も少なくは無かった。

 

「お召し物も脱衣場にて、用意させて頂いております。このまま向かわれても構いません。」

 

「分かりました。あまね様のお心遣いに、深く感謝致します。」

 

行冥が代表して、あまねに礼を述べた。行冥の礼を聞いてから、耀哉は炭治郎に話し掛けた。

 

「炭治郎。君がこの中で一番疲れている筈だよ。ゆっくり湯船に浸かって、溜まった疲れを取っておいで。」

 

「はいっ! ありがとうございます、御館様。」

 

炭治郎は耀哉に礼を述べてから、徐に立ち上がった。

 

「御館様、それでは私も失礼させて頂きます。」

 

「しのぶは待ちなさい。」

 

「?……何でしょうか?」

 

しのぶも炭治郎に続いて立ち去ろうとしたが、耀哉に呼び止められたために足を止めた。

 

「ちょっと残って貰えるかな?……禰豆子の件について、聞きたい事が有るんだよ。特に()()の事とかね。それから……他の皆の目の届く所での、おイタは流石に自重しようね?」

 

『!?』

 

耀哉の苦言とも言える最後の一言に、しのぶは思わず固まってしまう。また驚きもあったが、炭治郎とアオイ、カナヲもしのぶに匹敵する程驚いていた。

 

「えっと……それは、その……。」

 

しのぶは何と返答すれば良いか分からず、動揺を隠せない。目を泳がせながら、必死に脳内でこの窮地を打破するための打開策を思い浮かべては却下を繰り返していた。

 

――こりゃ地味に長引きそうだな。

「胡蝶。お前らの旦那、借りてくぞ〜。」

 

「は?」

 

「えっ?……うわっ!?」

 

「!?」

 

天元が突如、炭治郎の隣に立つと一言だけそう言ってから炭治郎を担いで去っていった。その速さにしのぶ達は着いていけなかった。

 

「ちょっ!? 音柱様ぁ!?」

 

「し、しのぶ姉さんっ。私達先行くね!」

 

唖然となったアオイとカナヲだったが、我に返ると直ぐに追跡しようとした。

 

 

ポン

 

 

「「えっ?」」

 

「御二方も、胡蝶様とお残り下さい。」

 

立ち上がろうとしたアオイとカナヲの背後に、あまねがそっと肩に手を置いて二人を制止した。

 

「「……はい。」」

 

拒否したかった二人だったが、あまねの眼力や肩に置かれた手から有無を言わさぬ力強さを感じて、渋々承諾する他に道は無かった。

 

こうして、晩餐会は一部を除いて解散となった。

 

 

 

♦︎

 

 

 

「よーし。着いたぞ。」

 

「はい?」

 

天元の言葉を聞いて、炭治郎の脳裏には疑問符しかなかった。何故なら着いた場所は大浴場ではなく、天元に当てられた部屋だったからだ。

 

そんな炭治郎を気にする事無く、天元は炭治郎を担いだまま室内へと入室していく。

 

「あっ! 天元様ー!♥」

 

「天元様、お疲れ様です。」

 

「おかえりなさい。晩餐会は如何でしたか?」

 

「!」

 

二人が入室した部屋には、三人の先客が居た。全員が女性であり、すらりとした手足を持つ長身痩躯の極上の美女であった。

 

三人共、共通して谷間がくっきり見える程の豊満な乳房を強調した、露出度の高い服装をしていた。炭治郎は谷間へと視線誘導された眼差しを、急いで外した。

 

「……ほらよっ。」

 

「がぁっ!?」

 

しかし、それに気付かない天元では無かった。

天元は炭治郎を畳の上に叩き付けると、炭治郎は潰された蟇蛙(ヒキガエル)の如き声を出した。

 

「う、宇髄さん。この方達は……?」

 

「俺の自慢の女房達だ。」

 

「!」

 

起き上がった炭治郎が天元に尋ねると、天元は口にした様に自身にとって自慢の妻達を紹介した。

 

「はじめまして、宇髄雛鶴よ。」

 

「私は宇髄まきを。よろしくね。」

 

「よろしくお願いします! 宇髄須磨って言います!」

 

天元の妻達の自己紹介が始まった。

 

雛鶴は前髪を上げて黒髪の長髪を一つ結びをした髪型をしていた。左目の下に泣き黒子があり、これが色気を増大させている。

一目見ただけで品格や知性を感じさせる、落ち着きのある態度を取っていた。

 

まきをは肩までの長さが有る黒髪を、雛鶴と同様に一つ結びにしている。

最大の特徴は前髪部分だけ、善逸と同様に金髪になっている。炭治郎が見た限り、活発で勝ち気な性格の持ち主の様に見えた。

 

須磨は二人と違って、腰まで有る黒髪の長髪をそのままにしていた。二人と比べると、末っ子感が強かった。

 

「は、初めまして! 竈門炭治郎と言います!!」

 

「「「!!」」」

 

炭治郎は頬を少し赤く染めて自己紹介すると、雛鶴達は双眸を見開いて驚いた様子を見せた。

 

「あの、天元様……この子って()()()……。」

 

「ああ、その()()()だよ。」

 

「?」

 

まきをが驚きながら、天元に炭治郎の事を確認していた。会話の意図が読めず、炭治郎は首を傾げる。

 

「ふえええぇぇぇぇんっ! ごめんなさ〜〜いっ!!」

 

『!』

 

「!?」

 

すると突然、須磨が鼻水を垂らして泣きながら炭治郎に謝罪を始めた。脈略も無い唐突な謝罪に、炭治郎は困惑を隠せない。

 

「須磨さん。ど、どうして俺に謝るんですか?」

 

「ぶええええぇぇぇぇぇぇんんっ!!」

 

炭治郎は須磨に謝罪する理由を尋ねたが、須磨は泣くだけで答えようとしない。

 

「ちょっと、須磨! あんたちゃんと説明しないから、炭治郎が困ってるじゃないのよ!!」

 

するとまきをが須磨に怒鳴りつけて、泣くのを止めようとした。

 

「だ、だって〜〜〜味噌っかすの私がしっかりしなかったからぁ〜〜〜。」

 

まきをに怒鳴られた須磨だったが、自身を卑下する様に責めながら泣くのを止めなかった。

 

「二人共、落ち着きなさい。炭治郎君が困っているわ……ごめんなさいね、騒々しくって。」

 

「い、いえ! お気になさらず。」

――どうしてだろう? 凄い既視感が有る。初めて会ったとは思えない……。

 

雛鶴に困惑させられた炭治郎だったが、三人のやり取りが何かを連想させるも、それが何なのかは分からなかった。

 

「実はよぉ、須磨がああやって派手に泣いている理由なんだがなぁ。」

 

「……っ!?」

 

閉口して状況を見守っていた天元が、炭治郎に須磨が泣いて謝罪するその理由を語り始めた。

 

先刻の緊急柱合会議で、炭治郎が実弥に斬られた一件に関して、炭治郎が知らなかった真相が存在していた。

 

『隠』達の努力で最悪の事態が免れたと思っていたが、実は一部、真実が異なっていた。

 

それは実弥が日輪刀を求めて暴れていた時に、雛鶴、まきを、須磨の三人が一部を除いて保管していた日輪刀を持って実弥から逃走していたのである。

 

一部とは、行冥や蜜璃の特殊な日輪刀の事だ。この日輪刀は本人で無ければ、たとえ手に入れても振る事すら難しいと判断された。そもそも、行冥の日輪刀に至っては本人で無ければ持ち運ぶのも難しい。

 

三人が日輪刀を実弥から遠ざけている間に、『隠』達が身体を張って実弥を足止めしていたと言うのだ。

 

しかし、此処で想定外の出来事が発生した。

 

須磨が持っていた実弥の脇差を、途中で落としてしまっていたのである。そしてその事実に気付く事無くそのまま須磨は走り去り、『隠』達を薙ぎ倒した実弥によって回収されたのだという。

 

『隠』達は実弥から脇差を奪還しようとしたが、失敗に終わったのは結果を見れば明らかであった。

 

「そうだったんですか……でも気にしないで大丈夫ですよ!」

 

「「「「っ!」」」」

 

真相を知った炭治郎は、笑顔でそう答えた。炭治郎は更に続ける。

 

「皆さんは、俺の命の恩人です。助けて頂いて、ありがとうございました。」

 

炭治郎はそう言ってから、姿勢を正して礼を述べた。

 

「「「……っ。」」」

 

「わああああんっ! 天元様ぁ、この子凄く良い子ですよぉ~~!」

 

「おわっ!?」

 

須磨は炭治郎に礼を述べられると、泣きながら炭治郎の頭を抱き抱えて抱擁した。

 

咄嗟の須磨の行動に、炭治郎は思わず狼狽する。

 

「おう、まぁ確かにな……それより須磨。早くそいつを離してやんな。炭治郎が困ってんぞ。」

 

「わっ!? ご、ごめんなさいっ!!」

 

天元に言われて、須磨は谷間に押し付けていた炭治郎の頭から手を離して解放する。

 

「い、いいえ! そんな……えっと、宇髄さん……すみませんでした。」

 

「?」

 

須磨に解放された炭治郎は須磨の謝罪を固辞すると、隙かさず天元に謝罪した。謝罪された天元は何故自身が謝罪されるのか理解出来ていなかったが、それを察した炭治郎が説明を始める。

 

「俺、宇髄さんの奥さんにあんな事しちゃって……すみませんでした! 宇髄さんの気が済むまで、俺の事を煮るなり焼くなりして下さい!」

 

「「「「!」」」」

 

炭治郎は取り返しの着かない大罪でも犯したが如き、真剣な表情で天元に頭を下げて謝罪した。そんな炭治郎を見て、天元は思わずポカーンとした表情を取る。

 

すると、天元が自身の巨体を小刻みに震わせながら、炭治郎に尋ねた。

 

「おまえ……もしかして、須磨に抱き締められた事が悪い事だと思って、こうして俺に派手な謝罪してんのか?」

 

「はい、そうです。」

 

天元の質問に対して、炭治郎は真顔で肯定した。

 

「……ぶっ! だーはっはっはっはっ!! あーっはははははっ!!」

 

「!?」

 

天元は耐え切れないとばかり、大声で笑い出した。炭治郎は何故、天元がそうやって爆笑するのか理解出来ずにいた。一通り笑った後、天元は目尻に溜まった涙を吹きながら、話し始めた。

 

「俺がそんな些細で地味な事で、派手に怒ると思ってんなら大間違いだぜ。其処はなぁ、役得と思ってりゃ良いんだよ。」

 

「で、出来ませんよそんな事っ! もし他の男性をしのぶさん達が抱き締めてたら、俺は怒っちゃいますもん!!」

 

天元の寛容さに、炭治郎は怒って抗弁した。天元はそんな炭治郎を見て、少しだけ双眸を丸めて見詰めた。

 

「お前、結構地味に嫉妬深いのな……良いんだよ。この程度の事で、俺達の関係は変わったりしねぇから。」

 

「変わったり、しない……?」

 

天元の言葉に、炭治郎は首を傾げる。対して天元は首肯してからこう言い放った。静かに状況を見守っていた雛鶴達も、天元の言葉に黙って首肯する。

 

「おう。この先の一生、俺にとって一番大切なのはこいつらだから。」

 

「「「私達にとっても、一番大切なのは天元様だから。」」」

 

「ちょっとやそっとの事くらいで、俺達の絆は断ち切れたりしないのさ。」

 

「!!!」

 

天元達の言葉を聞いて、炭治郎は双眸を一度見開いた。そして感嘆の溜め息を吐く。

 

「素敵な関係ですね。宇髄さん。」

 

「そうだろそうだろう? もっと派手に俺を褒め称えろ。」

 

天元は自画自賛すると、再び派手な高笑いを始めた。

 

 

 

♦︎

 

 

 

炭治郎と宇髄夫婦は少しばかりの談笑を終えた後、一緒に大浴場へと向かっていた。

 

「どうだ、炭治郎。俺の女房達は、お前の食指が動くくらい良い女だろう?」

 

「宇髄さん。あのですね、凄く素敵な女性なのは認めます……でもだからって流石に人妻に手を出そうなんて思いませんし、出来ませんからっ!」

 

炭治郎は首を横に振って、そう否定した。だが次の天元の発言は、炭治郎にとっても想定外の代物だった。

 

「そうなのか? 炭治郎は人妻が範囲外、と……そうか、つまり未亡人なら有りって訳だな? 次に狙うのは珠世か? ん?」

 

「ぶっ!?」

 

天元からの思わぬ質問に、炭治郎は思わず吹いてしまう。慌てた様子で、炭治郎は天元に抗弁する。

 

「未亡人でも狙いませんよ!? 第一珠世さんにそんな事したら、俺が愈史郎さんに殺されますっ!!」

 

「……確かにあれを見りゃそうなるかもな。だが、珠世は地味にお前に気が有ると、俺は派手に見たがな。」

 

天元は炭治郎の抗弁に納得した様子を見せつつも、自身が結論付けた考えを口にする。その天元の考えに、炭治郎はキョトンとした表情を見せる。

 

「珠世さんが、俺に……?」

 

キョトンとした炭治郎の脳裏に、珠世の姿が幾つも思い浮かぶ。

 

『炭治郎さん。私を庇ったために斬られて傷付いてしまって、ごめんなさい。』

 

『……ううん、先ずはお礼を言うのが先よね?……私を守ってくれて、ありがとう。人として私達を守ってくれて、とても嬉しかったわ。』

 

『私はこうして息子を抱き締めたかった……ただ、息子が大きくなるのを見届けたかっただけなの……。』

 

『多分、息子には似てないと思うわ。……どちらかと言うと、夫の方に似てるわね。』

 

『私の夫は、炭治郎さんみたいに優しくて、太陽みたいな笑顔をする素敵な人だった。』

 

「……っ!!」

 

炭治郎は珠世の姿を思い出して、瞬時に顔を沸騰したヤカンの如く真っ赤に染める。

 

「いやいやいやいやっ!? 珠世さんは俺を通して旦那様の面影を見詰めてるだけですからっ!!」

 

そう言って炭治郎は直ぐに勢い良く、首を何度も左右に振った。そんな炭治郎(格好の獲物)を、天元が見逃す筈も無い。

 

「お前……そう言いながらも今、珠世の事を思い浮かべていただろう?」

 

「うぐっ……っ!」

 

天元の指摘を受けて、炭治郎は動揺を隠せない。天元の追撃は続く。

 

「まぁ確かに元旦那の姿を、炭治郎を通して投影しているのかもしれん。だけどな? たとえ地味であろうと、お前に気を向けている事実は変わらねぇっ!……だから隙あらば、逃がさず突いてけ? 若人が遠慮するんじゃねぇぞ。」

 

「しませんってば!? たとえ隙が有ろうと()()()()手を出しませんよ!! 第一、宇髄さんだって若人でしょうが!?」

 

天元の揶揄い混じりの助言に対して、炭治郎は不服と言わんばかりに大声で抗弁する。

 

()()()()?……あっ? お前受け専門なの?」

 

「はいぃ?」

 

炭治郎は訳が分からないと言いたげな様子で、天元を見詰めた。炭治郎は溜め息を吐いてから、天元に反論する。

 

「受け専門とは何の事か分かりませんが、少なくとも俺の方から先に告白したのは、しのぶさんだけです。アオイさんとカナヲは二人の方から、俺に告白してくれました。」

 

『!』

 

天元達は炭治郎が伝えた内容に驚きを覚えた。それから天元は、一人で納得した様子で独言を言い始める。

 

「……ほう、そうかい。何もしなくったって獲物の方からお前の下へやってくるたぁ恐れいった。こりゃ、誰も敵わんわ。」

 

「……あの、宇髄さんは俺を何だと思っているんです?」

 

炭治郎は疲れ果てた様子で、天元に質問をした。すると天元はお前は何を言っているんだと言いたげな様子で、炭治郎を見詰めながら開口する。

 

「そりゃ、お前。"鬼殺隊一の色男"だろ? それとも"鬼殺隊一の女たらし"かぁ? 派手な浮名だな、おい。」

 

「違いますっ! 俺、其処まで見境無しじゃないですよっ!?」

 

「説得力が欠片も無いっつの。」

 

こうして大浴場へと向かう道中、天元が炭治郎を揶揄って楽しんでいた。

 

炭治郎は顔を真っ赤に染めて反論すると、逆に天元は楽しいのか頭をワシワシと撫でて遊んでいた。天元に頭を撫でられた炭治郎はというと、何も抵抗出来ずに上目遣いで睨み付けるしか出来ない。

 

「天元様。意地悪はその辺でお止し下さい。」

 

「あんまりやり過ぎると炭治郎が可哀想ですよ、天元様。」

 

見兼ねた雛鶴と須磨の二人が、炭治郎を庇って軽く天元に向かって苦言した。

 

「!」

 

すると炭治郎達が通り過ぎ様とした部屋の襖が開き、一人の巨漢が出て来た。岩柱の行冥であった。

 

「むっ!……炭治郎に、宇随達か?」

 

「はいっ!……あれ? 悲鳴嶼さん、『紙眼()』はどうしたんですか?」

 

行冥に声を掛けられた炭治郎は元気良く返答したが、行冥の額に愈史郎特製の『紙眼・視』が着用されていない事に気付いた。

 

これでは以前の盲人状態に戻ってしまっている。気になった天元達も、行冥に注目した。

 

「ああ。『紙眼()』は敢えて外してあるんだよ。」

 

「どうしてですか?」

 

行冥の返答を聞いて、炭治郎は益々疑問に思った。行冥は苦笑しながら、炭治郎に答えた。

 

「確かに視力が戻った事は喜ばしい事だ。しかし私の日輪刀(かたな)を見れば分かると思うが、視力に頼り過ぎると他の感覚が鈍って今後の戦いに支障を来たしかねないのだよ。」

 

『!!』

 

行冥から『紙眼・視』を外している理由を知って、炭治郎は漸く理解した。自身で例えるなら、嗅覚が鈍る事に匹敵する程の大事である。

 

「……すみません。俺、もしかしたら余計な事を……。」

 

「それは違う。世界をこの目で見れた事に、私は心から感動し感謝している。それだけは分かってくれ、炭治郎。」

 

自身の行いが危うく行冥の弱体化に繋がると危惧した炭治郎は思わず謝罪するが、それを行冥は止める。

 

「地味な青二才が、余計な心配すんな。」

 

「ぐふっ!?」

 

頭を下げて俯いた炭治郎に、天元が拳骨で腹部を殴る。天元に手加減無しで殴られた炭治郎は、腹部を押さえながら膝を付いた。

 

「悲鳴嶼さんはなぁ、鬼殺隊で一番強いんだぞ。ちょっとくらいの事で弱くなったりしねぇよ。今のお前じゃあ、地味に分からんかもしれないけどな。」

 

「……悲鳴嶼さんは他の柱とすら匂いの質が違いますから、凄く強いって事くらいは今の俺でも分かりますよ。」

 

涙目のまま、炭治郎は天元に抗議した。そんな炭治郎と天元のやり取りを余所に、雛鶴が行冥に尋ねていた。

 

「悲鳴嶼様も、今から御風呂ですか?」

 

「ああ……折角だ。御一緒しても?」

 

「拒否する理由がありませんよ。」

 

「一緒に行きましょう!」

 

まきをと須磨が快諾すると、行冥も炭治郎達に加わって大浴場へ向かう事となった。

 

 

 

♦︎

 

 

 

「!」

 

行冥を加えて少しばかり歩くと、炭治郎は大浴場の前に三人の男性が立っている事に匂いで気付いた。

そして直ぐに姿が見えた事で、炭治郎はその三人の男性に声を掛ける。

 

「時透君! 善逸に伊之助も!!」

 

「炭治郎っ!」

 

ほぼ同時に互いに声を掛け合う炭治郎と無一郎。無一郎は満面の笑みを浮かべて、炭治郎に駆け寄った。

 

『……』

 

記憶喪失だったとはいえ、まるで人形の様に無機質だった無一郎が満面の笑みを浮かべている姿を見て、思わず行冥達は固まってしまう。尤も、行冥と天元は無一郎の変化に喜んでいたが。

 

「て、天元様。あれって時透様ですか? それとも別人ですか?」

 

「こら須磨っ!? 時透様に失礼でしょう!!」

 

「いたたたっ!? まきをさん引っ張らないでぇ~~。」

 

須磨が天元に質問した内容を聞いて、まきをが怒って須磨の片耳を引っ張る。片耳を引っ張られた須磨は、涙目になりながらまきをに抗議していた。

 

「二人共、人前で落ち着きなさい。」

 

まきをと須磨を見て、雛鶴は仕方無く仲裁に入った。そんな雛鶴達に気付く事無く、炭治郎は無一郎に話し掛けていた。

 

「時透君達も、今来たところ?」

 

「うん。入る前に炭治郎達の気配に気付いたから、一緒に待っていたんだ。」

 

無一郎は炭治郎の質問に、そう言って答えた。

 

「「……」」

 

善逸と伊之助は何か言いたげな表情を浮かべながら、ジト目で無一郎に視線を送っていた。

 

実は善逸と伊之助が大浴場に来た時には既に、無一郎は大浴場の扉の前で待っていたのだ。

善逸が無一郎に尋ねると、「炭治郎を待っている。一緒に入りたい。」と答えた。

 

伊之助は無一郎に構わず大浴場に入ろうとしたが、柱の無一郎が待っている手前、善逸も伊之助を止めて炭治郎を待つ他無かった。そして待つ事十分、善逸と伊之助の二人にとって永遠とも感じ取れた時間が、漸く登場した炭治郎達によって終わる事が出来たのだ。

 

因みにその事で伊之助は無一郎に文句を言うと、無言で無一郎に鳩尾を殴られて沈黙を強いられた。それを善逸は伊之助の二の舞は演じまいと、沈黙を貫いたのだ。

 

そんな二人を余所に、炭治郎達は男女で別れて大浴場の前にある脱衣所に入る。全員が入って服を脱ぎ始めた瞬間、更に一人の男性が大浴場の脱衣所に入って来た。

 

「んあァ?……揃いも揃って今から入んのかよ?」

 

『!』

 

炭治郎達は出入口が開く音と男性の声がしたので、振り返ると其処には風柱・不死川実弥が入って来ていた。

 

「不死川、お前も大浴場を利用しに来たのか?」

 

「まぁ、な……充てられた部屋に居ても、やる事ねぇしよォ……。」

 

そう言いながら実弥も服を脱ぎ始めた。

 

 

 

 

 

ガチャ

 

 

 

 

 

『!?』

 

再び出入口の扉が開くのを見て、炭治郎達は驚きから双眸を見開いた。何故なら、誰も居ないというのに扉がひとりでに開いたからだ。出入り口の扉はそのまま誰も姿を見せる事無く、バタッと音を立てて閉まった。

 

「……義勇さん?」

 

炭治郎が半信半疑な様子で、恐る恐る義勇の名前を呼ぶ。すると間も無く反応が起きた。

 

「……どうして、俺だと分かったんだ? 炭治郎。」

 

『!』

 

スッと音を立てる事無く、水柱・冨岡義勇が脱衣所に姿を現した。右手には愈史郎の『紙眼』を手に持っていた。義勇に尋ねられた炭治郎は、困った様子を見せながらも答えてみせた。

 

「えっと、『紙眼()』を持っている人を脱衣所(此処)に居ない義勇さんと伊黒さんの二人に絞って、更に付けたまま入って来るとしたら、その……伊黒さんがするとは思えないし、そうなると義勇さんしか思い当たる人が居なくて……。」

 

『……あ――っ。』

 

炭治郎の説明を受けて、行冥達が納得した様子で声を上げた。その様子は、呆れ果てていた様子であったが。

 

――それにしても……

 

そんな行冥達を余所に、炭治郎と善逸はそれぞれある匂いと音に気付いていた。

 

――義勇さん。楽しそうな匂いを出しているのは何でだろう?

 

――何で無表情のまま、滅茶苦茶楽しそうな音出してんだこの人っ!?

 

心中でそう呟きながら理由を探ろうと義勇を観察していたのだが、結局のところ観察しただけでは、炭治郎と善逸にも察する事は出来なかった。

 

――……良しっ! 取り敢えず聞いてみよう!

 

炭治郎は前向きに考えて、義勇に尋ねる判断をした。

 

「義勇さん、どうして『紙眼()』を付けたまま来たんですか?」

 

『!』

 

炭治郎の質問に、行冥達は注目する。炭治郎の質問を受けて、義勇も少しばかり時間を置いてから回答を始めた。

 

「……『紙眼()』の性能試験をしていたんだが、其処に(お前達と)不死川が大浴場に入って行くのを見て、俺も(皆と)一緒に風呂に入りたいから追って来た。」

 

『!?』

 

爆弾発言とも解釈出来る義勇の発言に、脱衣所は騒然となる。

 

「……っ!?……っ……っ?!」

 

名指しされた実弥に至っては、声も出ない様子で義勇から後退っていた。炭治郎と善逸は実弥から、困惑と恐怖の匂いと音が感じ取れた。

 

「……すんすん。」

 

一方でそんな様子の実弥など一切気にする事無く、炭治郎は引き続き義勇の匂いを嗅いで真意を探ろうとしてた。炭治郎はそうしている間に、耀哉から言われていた言葉を思い出していた。

 

 

 

 

 

『炭治郎。義勇はね? 言うべき言葉は口にしないのだけど、言ってはならない言葉は平然と口にしてしまう、ちょっと困った子なんだよ。弟弟子である君が、彼の一番の理解者になってあげておくれ。』

 

 

 

 

 

炭治郎もまた義勇の爆弾発言に驚いていたが、直ぐに冷静になれたのはこの耀哉の一言を事前に聞いていたからである。そして匂いを嗅ぎ終えた炭治郎は、恐る恐る自身が考え出した推察を質問する形で義勇の真意を探り始めた。

 

「義勇さん。見たのは不死川さんだけですか?」

 

「?……いいや、最初に炭治郎、お前達が大浴場に向かっているのを見て、それから不死川も目撃した。その後を、俺は追っていたんだ。」

 

「っ!」

――やっぱり……っ!

 

炭治郎は確信を得た様子で、更に義勇に尋ねた。

 

「つまり……不死川さんだけじゃなくて、俺達全員と一緒にお風呂に入りたかったんですよね?」

 

「そうだ。」

 

「そうですか。分かりました。」

――…………

 

質問を終えた炭治郎は義勇に一度だけ軽く会釈をすると、クルッと回れ右して行冥達と正面から顔を合わせてからこう言った。

 

「だ、そうです。」

 

『いや、分かるかぁっ!!??』

 

炭治郎がそう言ったのも束の間、脱衣所に居る一部の者達を除いて天元を筆頭に何名かが異口同音で声を揃えてそうツッコミを入れた。

 

「……?」

 

そんな天元達の様子を見て、義勇は終始理解出来ない様子で首を傾げていた。




お待たせしました。

皆様、明けましておめでとうございます。

鬼滅の刃はアニメを残して終了してしまいました。嬉しい反面、とても寂しく思います。
それから最終巻を知っている方のみ御存知でしょうが、敢えて断言させて頂きます。

「公式と二次元創作は別次元」です。

公式は公式で、炭治郎君達の幸せな結末を盛大に祝福しましょう。

此の世の全ての作品に言える事ですが、公式を否定したり不当に罵詈雑言を浴びせたりするのは論外です。かと言って公式に縛られては二次元創作は自由を失ってしまいます。(不満を口にしたり、矛盾を責めるなという話ではない。非難するのも自由。)

要は拙作「優しき日輪と鬼殺隊の美蝶」は、「炭治郎愛され」から一切ブレる事無く、最後まで貫き通す予定です。

ワニ先生が「鬼滅の刃」を完結させた様に、私もたとえ読んで下さる読者が居なくなろうとも、私が望む鬼滅世界を完結させていく所存であります。

予定としては今年中に完結を目指します。

こんな遅筆で無才な私の駄文拙作で良ければ、皆様もお付き合い下さいますと大変嬉しく思います。

どうか、今後ともよろしくお願い致します。

それともう皆様はお気付きかと思いますが、前話の参拾参話に書き忘れていた炭治郎と耀哉の会話を加筆しています。

最後にもう一つ報告させて頂きますと、拙作では一万字以上が投稿基準となっております。

緊急柱合会議編では毎回二万字以上になっていましたが、そうしないと都合上、区切りが悪かったからです。今後はその基準に戻すと思うのですが、どうかご了承下さい。

一万字ではボリュームが足りないと思われたらすみません。なるべく投稿期間が短くなる様に頑張ります。

次回の更新は一月中です。お楽しみに!

登場人物の性器発言ってどう思います?

  • 有り(エロくなるからばっちこい)
  • 無し(日輪刀、鞘とオブラートに揶揄って)
  • 作者にお任せ
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