※この作品はR-18です。

優しき日輪と鬼殺隊の美蝶   作:蓮紅

5 / 65
※キャプション必読・リクエストに関しての説明あり
・鬼滅の刃原作に関するネタバレあり。原作未読の方は閲覧注意。
・鬼滅の刃二次創作小説です。
・原作・キャラクターの性格・設定等改変の可能性大。一部キャラ崩壊注意。
・思い付き次第で何度も編集を繰り返す可能性大。お時間がある時で良いので、良ければ読み返してみて下さい。
・誤字脱字等のミス・内容の矛盾等の指摘は大歓迎。理不尽なクレームは受け付けません。
・コメント・メッセージ大歓迎。創作意欲の燃料になります。コメント・メッセージの返信は必ずさせて頂きますのでどしどし御投稿下さい。
・SS内容に関してはネタパクリと言う名の盗作を間違えてしないよう気を付けてますが、もし私が投稿した作品が既に別の作者様と内容が酷似していた場合、メッセージにて御連絡下さい。

※リクエストに関して
メッセージにてリクエスト内容を御連絡下さい。
以下規約参照
・100%受け付けられると保証された訳では御座いません。
・炭治郎×鬼滅女子のみ。
・作者は遅筆で怠惰癖あり。またリアルの都合や他SSの執筆で投稿が遅くなる可能性大。
・CP、全年齢かR作品か、ネタの内容を御記入下さい。ネタの内容が詳細で有れば有る程、筆が進むので御協力をお願い致します。


日蝶結愛編
第伍話 藤蝶は日輪を渇望す ❤


大日本帝国政府非公認組織・鬼殺隊

 

”原初の鬼”たる鬼舞辻無惨の討滅を目的に六代目産屋敷当主が創設した千年の歴史を持つ由緒ある組織である。

 

しかし、人を襲い喰らう鬼の存在が世間に露見すれば、この世は恐怖に包まれ、人々の間に無用な疑心暗鬼と混乱を生む危険性が多大に孕んでいる事から、鬼殺隊もまた公的に認められる事も認められて貰おうと歴代の産屋敷当主も働き掛ける事も無かった。

 

鬼殺隊もまた数百人からなる組織である。組織を滞りなく運営しようと思えば、やはり莫大な資金が必要不可欠だった。

 

しかし、産屋敷家一族は短命の代償を引き換えに鬼に対抗するために神から授けられたとしか言えない、”先見の明”と呼ばれる”第六感”や”未来予知”の異能を持ち、それを持って鬼殺隊存亡の危機から幾度となく脱して生き延び、莫大な財を築いて表向きは大日本帝国で一、二を争う大富豪・大実業家としての地位を築いて来た。

 

尤も、商談をする時も人脈構築も代理人を通してだったため、表世界に出て来る事は決して無かった。

そのため産屋敷家の名を知る者は居ても実態を知る者は殆ど居らず、皆が産屋敷家を「幻の一族」と呼んでいた。

 

鬼が闇夜に紛れて跋扈するこの世には残念ながら鬼の餌食になる不運な犠牲者と鬼殺隊に運良く救われ生き延びた幸運な生存者で別れる。

 

鬼殺隊に運良く救われた生存者の中にはその大恩に報いるべく、鬼殺隊に無償で支援する者達が存在する。

”藤の花の家紋の家”と何の捻りもない通称だが、鬼殺隊隊士が一目で支援者だと分かるように通称の通り藤の一文字と藤の花の家紋が玄関や門扉に刻んで目印としている。鬼殺隊の隊士達は此処で様々な支援を受けられる。

 

その”藤の花の家紋の家”が都市部から離れたところに一つ存在している。他の”藤の花の家紋の家”と比べ広大な敷地を持つ大屋敷に一人の穏やかそうな老婆が住んでいる。この穏やかそうな老婆の名は薬師寺ひさと言う人物だ。

 

薬師寺家は四百年前に当代の当主が鬼殺隊に命を救われた経緯から、支援者の一人として鬼殺隊を裏で支援して来た。

薬師寺家の中には鬼殺隊隊士として活動していた者もいた。尤も、そんな者は数えるほどしか居らず、多くの者は大商人として得た財貨を差し出して裏方に徹して来た。

 

ひさもまた例外を問わず、若い頃から女当主として商いで辣腕を振るいつつ、鬼殺隊を支援して来た。とうの昔に引退した今も、訪問して来た鬼殺隊の隊士を自ら率先してそのお世話を買って出ていた。

 

何時も冷静沈着で穏やかさをひさだったが、今回は違っていた。夕食の仕込みと藤の花の香を焚く準備に掛かった夕方前に鬼殺隊の隊士が訪問して来た。

そのため何時ものように持て成すために出迎えたのだが、その隊士が尋常ではない程に脂汗を滲ませながら苦しそうに呼吸を繰り返していたからだ。

 

「胡蝶しのぶ様っ! 直ちにお医者様を手配致しますので、どうか其れ迄の間はご辛抱を……っ!」

 

「はぁ、はぁ、結構ですからっ、はぁ、はぁ、お水だけ、はぁ、くれますかっ? はぁ、はぁ、はぁ、や、休んで、はぁ、いれば、はぁ、大丈夫ですから……っ!」

 

「しかしっ「お願い、します……っ!」……かしこまりましたっ。」

 

ひさは仕方なくその隊士の言う通り、水だけ持って来るためにその場を去る。

隊士は蝶々の羽根ののような美しい羽織を広げながら仰向けで寝転がる。

そして両腕で眼を覆った瞬間、今度は悔恨を滲ませたながら歯噛みした。

 

――――何よっ!……だらしのない! この私が、あの程度の事で動揺するなんて……っ!! ああっ……ひっく、うぅっ……っ!!

 

蝶々の髪飾りが特徴的なその美しい女性隊士は顔を歪めて涙を流し、負傷した左腕を右手で押さえながら今に至るまでの経緯を回想した。

 

 

 

♦︎

 

 

 

東京府・蝶屋敷

 

 

大正二年(一九一三年) 三月七日(金)

時間帯:朝

天気:晴れ

 

「納得出来ません! 何故っ!! 病み上がりの炭治郎君を鬼の討伐へ行かせるのですか!?」

 

「知ルカ! 御館様カラノ直々ノ御指名ダァッ!」

 

「……っ。」

 

炭治郎の病気は今日の早朝で完治した。予定よりも早く完治した事に喜びながら朝食を全員で取っていた矢先に急遽、乱入して来た鎹烏から炭治郎指名の鬼の緊急討伐指令が下った。

しのぶは炭治郎の体調を考えて異議を唱えたが、鎹烏から鬼殺隊の頭領たる産屋敷耀哉直々の指名と言われてはしのぶも従う他無かった。

 

「だからって、治ったばかりの炭治郎さんを行かせるなんて……っ!!」

 

「炭治郎の代わりに、私が行く! 炭治郎はまだ休ませて!!」

 

「駄目ダッ! 御館様ガコノ任務ハ竈門炭治郎二シカ出来無イと仰セダッ!!」

 

当然だがアオイやカナヲ、それからすみとなほときよと言った蝶屋敷の女性陣もまた強く反発したが、しのぶに変えられなかった案件が変わる訳が無かった。

朝食を早々に切り上げて出立しようとした炭治郎だったが、心配と寂しさから涙を流して見送るアオイ達に炭治郎は困った様子で微笑みながら一人一人を抱き締めて一時の別れを告げた。

 

それを陰で見守っていたしのぶだったが、すみ達は我慢出来たもののアオイとカナヲが炭治郎と抱擁を交わしたのを見た時は遂に我慢出来ず、嫉妬心が燃え広がる。

しのぶは颯爽と飛び出すと、炭治郎に強く抱き着いて抱擁する。そしてそのまま頬に口付け(キス)を落として行った。それも二回、左右両頬にである。

 

炭治郎は呆気に取られたが、しのぶに口付け(キス)された後に今度は自分から、しのぶを強く抱き締め返してアタフタと慌てさせた。

其処から炭治郎は追撃とばかりにしのぶの耳元に口を近付けて、「元気が出ました。行って来ます。」と囁いてから任務のために蝶屋敷から去って行った。

 

呆気に取られたアオイとカナヲは一瞬、石化したが如く固まってしまった。しかし我に返ると嫉妬心からしのぶに反発したが、しのぶは両頬を赤くしたまま上の空の状態で蝶屋敷の下へ戻って行った。

見送りが終わった後に午前診察を始めたしのぶだったが、炭治郎の事ばかり脳裏に浮かんでまともな診察が出来無かった。そのためしのぶは早々に切り上げて、自室に引き篭もったのである。

 

この時に診察された隊士達は、異口同音にこう答えた。

 

「何時も凄艶な胡蝶様だが、今朝は一際、扇情的で艶麗過ぎて目のやり場に困った。」

 

と赤面とした様子でそう言って、後々に周囲からの羨望と嫉妬を買う羽目になった。

 

「んんっ❤……っ❤。」

 

自室の寝台(ベッド)に寝転がったしのぶは、顔を赤くしながら両腕を交差して自身を抱き締めていた。見送りの際に炭治郎から受けたあの包み込む様な、力強い抱擁を思い出してその余韻を楽しんでいた。

 

その姿は鬼殺隊が誇る柱の一人、蟲柱・胡蝶しのぶではなく、年相応に恋に浮かれる一人の乙女であった。

 

「……はぁ~~~~。」

 

余韻を存分に楽しんでいたしのぶであったが、暫くすると憂鬱そうな表情に変わって溜息を吐いていた。

 

――私は何をやっているのかしら……炭治郎君の告白を無視して、「妹としか見てない。」と思い込んで、炭治郎君への想いを諦めた筈なのに……私は炭治郎君の優しさに甘えて、自分の身体が今どうなっているのかも忘れて、恋に浮かれる市井の町娘みたいに舞い上がっていた。諦めなきゃ逆に炭治郎君を傷つけてしまうと言うのに。

 

――諦めてアオイとカナヲに譲って応援しようと思ったのに、私はそれが許せなかった……二人が炭治郎君とイチャつこうとしていたのを可能な限り妨害した。尤も、私も二人から何度も妨害された身ですけど……。

 

「カァァ―――ッ!! 北多摩郡昭和町ニテ鬼ガ出現!”(きのえ)”ノ隊員モ含メ既ニ八名ガ犠牲ニナッテイル! 蟲柱・胡蝶シノブハ直チニ出陣セヨッ! 繰リ返スッ! 北多摩郡昭和町ヘ蟲柱・胡蝶シノブハ直チニ出陣セヨッ! カァァ―――ッ!!」

 

「っ!」

 

しのぶは鎹烏のために開けていた窓から、鎹烏が入って指令を言い渡しに来た。しのぶは鎹烏の声を聞いて本能的に準備を始めた。

 

――今度は私に出陣命令……鬼が皆、禰豆子さんみたいであれば、言う事無いのだけれど……まぁ私の溜まっていた鬱憤や苛立ちを晴らすのに丁度良いわっ。さっさと行くとしますかっ。

 

準備を終えたしのぶは蝶屋敷から出立しようとした。すると其処へ焦燥感を抱きながら、カナヲにすみとなほ、きよが揃って走って来る。

 

「師範っ!」

 

「「「しのぶ様っ!」」」

 

カナヲ達は大声でしのぶの名前を呼ぶと、門前のところで立ち止まった。

 

蟲柱のしのぶが出陣する程の任務である。

カナヲ達の表情からはしのぶなら大丈夫だと言う絶対的な信頼と、万が一の確率で起こり得る最悪の事態を心配する不安の二色が見て取れた。

 

そんな妹分であるカナヲ達の表情を読み取れないしのぶではない。安心させるために、しのぶはカナヲ達に振り返って笑顔で話し掛けた。

 

「大丈夫ですよ。何時も通り、直ぐに帰ってきますから、ね?」

 

「「「「っ!……はい!」」」」

 

しのぶにそう言われ、カナヲ達は不安を払拭して元気良く返答をした。

カナヲ達の力強い返答を聞いて、しのぶは再び蝶屋敷に背を向けて出立しようとした。

 

「……お待ち下さいっ! しのぶ様っ!!」

 

「っ!……アオイ……っ。」

 

走って来る足音と自身を呼ぶ声を聞いて、しのぶは再び立ち止まり振り返った。

 

其処には包を持ったアオイの姿が在った。

息までは切らしていなかったが、走ったせいで少し汗を掻いていたアオイは一度だけ深呼吸をすると、手に持っていた包をしのぶに差し出した。

 

「アオイ、これは?」

 

「はい、お弁当用のおにぎりと冷たいお茶入りの水筒が入っております。塩昆布のおにぎりが一つ、しのぶ様がお好みの生姜の佃煮が入ったおにぎりが二つ入っています。どうぞ持って行って下さいっ!」

 

「っ!……そう、嬉しいわ。ありがとう、アオイ……暫くの間、私は不在になりますがそれまでの間は蝶屋敷の事、頼みましたよ。」

 

「はいっ、しのぶ様! 武運長久をお祈り申し上げます!!」

 

「では、行って来ます。」

 

しのぶはアオイの声援を受けて、正午過ぎに蝶屋敷を出立した。アオイ達はしのぶの姿が見えなくなるまで見送ると、蝶屋敷へ戻って行った。

 

蝶屋敷を出立したしのぶは途中でアオイに渡された弁当をさっさと片付けたが、それ以外の休憩を挟む事無く走り続けた。

 

「……」

 

しのぶは当日の内に、鬼が出現したという北多摩郡昭和町と言う町に到着しようと思えば出来たのだが、その到着予定時間が丁度、日が沈んで闇夜に包まれた夜中になってしまう。

 

――焦って事をし損じれば、元も子も無いわね。私はまだ、死ぬ訳には行かないのだから……。

 

体力を消耗した状態で天地の利を得ている鬼と戦うなど、愚の骨頂である。

鬼殺隊隊士の頂点に位置する柱になったしのぶだが、己の実力を過信して自惚れて傲慢になってはいない。

如何なるしくじりをして、敗死と言う運命を辿るとも限らないのだ。

 

――此処は一つ、昭和町の手前に在る別の町で身体を休めましょう。

 

しのぶは鬼を一刻も早く倒したい衝動を抑えつつ、冷静にそう判断を下した。

其処から昭和町の前にある町に存在する”藤の花の家紋の家”で一泊してから目的の昭和町に向かうのだった。

 

 

♦︎

 

 

東京府・昭和町付近の竹林

 

 

大正二年(一九一三年) 三月八日(土)

時間帯:早朝

天気:曇り

 

「降りそうで降らないこの曇天……嫌な天気ですねぇ。」

 

黒い絨毯が敷いてあるが如く、黒雲が天空を覆っているのを見てしのぶはそう呟いた。

 

これは単純にしのぶが、曇天を嫌っているからそう呟いているのでは無い。

否、確かにしのぶは曇天や雨と言った天候を嫌っているが、そんな個人的な理由だけでは決して無い。

 

鬼殺隊の宿敵たる鬼は太陽に抗えず陽光を浴びれば灰になって即死するため、夜にしか活動しないと思われがちだがそれは大きな誤りである。

 

要は太陽の陽光さえ浴びなければ良いので、天候が曇っていたり、降雨や降雪ならば日中でも活動が可能なのだ。

もし対象の鬼に度胸が有るあらば、この時間帯から動いて人間を襲うとも限らない。しのぶは小さく奥歯を歯軋りして昭和町へと向かって行った。

しのぶは向かう途中、”藤の花の家紋の家”の主人に右側に有る竹林を通り抜ければ昭和町へ行くための近道になると教わったため、言われた通りに竹林へと足を進めた。

 

「っ!……手間が省けた様ですね。あの主人には感謝の手紙でも後で(したた)めまて送るとしますか。」

 

荷車も通れる程の広さまで切り開かれた竹林の一本道を進んでいると、一人の女性が反対方向から走って来た。

時代誤差も甚だしい暗紫色の被衣(かつぎ)を深く被って顔を隠し、また肌を晒さない様に紫を基調とした着物を着ていたその上背のある女性は真っ直ぐ進み、しのぶの姿を認識すると立ち止まる。

 

「あら、おはようございます。お嬢さん。こんなところに一人で居たら、悪ーい鬼に攫われて食べられちゃうわよ?」

 

「おはようございます。お姉さん。私、こう見えても結構強いですから、鬼が来てもへっちゃらですよ。」

 

「へぇ……そんなに小さいのにねぇ。この感覚……もしかして、鬼狩りで言う柱だったりするの貴女?」

 

 

 

ガキン!!

 

 

 

その言葉が戦端の口火を切った。しのぶも女性鬼もほぼ同時に踏み込んで攻撃を開始した。

 

――っ!……相殺されたっ!?

 

しかし、初撃は相打ちで終了した事にしのぶは驚愕する。これは嘗て自身が十二鬼月の下弦の肆を屠って以来の出来事だ。故にしのぶは対峙している鬼について咄嗟に考えた。

 

――この雌鬼、もしや十二鬼月でしょうか? 

 

しのぶが疑問に思ったのも束の間、件の女性鬼は被衣を脱いで、その素顔を晒した。

女性鬼の素顔を見て、しのぶは驚愕する事になる。

 

 

 

♦︎

 

 

 

「カナエ……姉さんっ!?」

 

しのぶが見た女性鬼の素顔は薄紫色を基調とした双眸、腰まである流れるような美しく黒い長髪、頭の両横に付けた蝶々の髪飾と、一見すると最愛の姉のカナエと瓜二つの容姿をしていたのである。

 

――……違うっ! あんなの姉さんじゃないっ! 

 

しのぶが動揺したのも一瞬の出来事。直ぐに頭を振り払う様に左右に振った。

 

――姉さんの遺体は……カナエ姉さんの遺体は私が回収して……()()()()を終えてから荼毘に付したの。だから鬼になっている訳が無い。

 

――それによくよく見てみたら姉さんと全然違うっ。瞳孔は猫みたいに縦に裂け目があるし、左目の目元には泣き黒子がある。それに色違いの髪飾りに加えて長髪の髪先にも三つ目の蝶々の髪飾りを付けている。そもそも、姉さんはあんな薄気味悪い笑い方なんてしない。なんて見ているだけで不愉快にさせる鬼なのっ!?

 

「カナエ……? 違うわよ。私の名前は妖鬼妃(ようきひ)。素敵な名前でしょう? あの御方がこの私に御自ら名付けて下さったのよ。……そう言えば、私が喰らった鬼狩り共の中には何人もそうやって勘違いしてた奴らが居たわね? そんなにそのカナエって娘に似てるの、私?」

 

「いいえ、全然似てませんよ。姉の方がもっと美人でした……一つ尋ねますが、その髪飾りは何処で手に入れたんです?……答えなさいっ!!」

 

「この髪飾りを何処で手に入れたですって……さぁ? 何処で手に入れたかしらねぇ?」

 

「巫山戯けてないで、私の質問に答えなさいよっ!? その髪飾りは何処で手に入れたっ!?」

 

しのぶはカナエが生前、大好きだと言っていた笑顔を捨てて女性鬼、妖鬼妃と名乗った女性鬼に問い詰めた。

 

カナエを模した笑顔の仮面をかなぐり捨てた事に一瞬、罪悪感を抱いたがそれに構っていられる程しのぶは冷静では無かった。何故なら妖鬼妃が着用している三つの蝶々の髪飾りには、見覚えが有ったからだ。

 

――あぁ、お願いっ!……どうかっ……私の見間違いであって……っ!

 

しのぶは祈った。自身の勘違いで有って欲しいと。そんなしのぶに、嘗てのある光景が回想として蘇る。

 

『ありがとうございます! カナエ様っ! しのぶ様っ! この髪飾り、大切にしますね!』

 

『師範とお揃いの髪飾りなんて光栄です! ありがとうございます!』

 

『師範の継子として恥じぬ、立派な鬼殺隊の隊士になりますっ! この頂いた髪飾りに誓って!』

 

カナヲと同様に、義妹であった嘗てのカナエやしのぶの継子達の思い出が脳裏に過った。

そんなしのぶの事など露知らず、妖鬼妃は楽しそうにコロコロ笑いながらしのぶに話し掛けた。

 

「そんなに怒ると皺になるわよ? せっかく綺麗な顔してるんだから勿体無い……人間なんて直ぐ老けてあっと言う間に皺くちゃになっちゃうんだから……フフッ。」

 

妖鬼妃はあっ! と今思い出したような顔をした。おどけた言動が天真爛漫で明るかったカナエと重なり、しのぶの苛立ちは募る一方だ。

 

「ああ、思い出したわ。この髪飾りを付けてたのは女の鬼狩り共のものだった……で、私が殺して喰らってから着けてるのよ。貴女も蝶々の髪飾りを着けてるわね? あの娘達の家族か何かかしら?」

 

「その髪飾りはカナエ姉さんと私があの娘達に渡した物だあああぁぁぁぁぁ!! 返せ返せ返せぇぇぇぇぇ!!!」

 

しのぶは激昂して地面を砕く程の踏み込みで妖鬼妃に迫る。その整った容姿は憎悪と憤怒で染まり切っていた。

 

――あの娘達が死んだ時、その鬼が討滅されたという報告を受けてなかったけれど、まさか此処でその仇敵(かたき)である元凶と出会うなんてっ! 絶対にこの悪鬼を生かして返さない。皆、見ててっ! 必ずっ……この雌鬼は必ず……私がこの手で滅殺(ころ)して、貴女達の敵討ちをするからっ!!

 

しのぶは心中で今は亡き継子達に固く誓うと、日輪刀を妖鬼妃に突き刺そうとする。

 

「……っ!?」

 

しかし、妖鬼妃に突き刺さるまで後一歩のところでしのぶはその場でしゃがみ込んだ。

 

「ちっ……この一撃で終わらせてあげようと思ったのに。」

 

妖鬼妃がそう忌々しそうに言った瞬間、しのぶの後方の竹林がバサバサと斬られて倒れる音が鳴った。

 

「っ!」

 

バサバサと音を立てながら倒れて行く竹林を耳にしながら、しのぶは跳んで妖鬼妃から距離を取る。

 

「腕が……一体何をしたんです?」

 

「私が素直に言うと思って?……まぁ別に良いわ……今見せてあげるっ!」

 

「っ!」

 

妖鬼妃がそう叫ぶと、両腕を蟷螂の鎌のような鋭利な刃物に変えて、鞭の如く伸ばしてしのぶの命を刈り取ろうとする。

 

――くっ!……速いっ!……早さだけじゃなくて間合いも広いっ……でも間合いは三十三尺(十m)が限界ってところかしらっ!

 

「それそれっ! どんどん行くわよっ!!」

 

妖鬼妃は楽しそうに嗤いながら、両腕を振り回してしのぶに襲い掛かる。しかし、しのぶもまた一度も掠る事すら無く、妖鬼妃の斬撃を躱し続ける。それだけで無く、妖鬼妃の分析も忘れない。

 

斬撃の速さを見切れる様になると、しのぶは反撃に出始めた。

 

されど、妖鬼妃は鬼特有の超速再生能力に感けて攻撃を受ける様な真似はしない。

高い身体能力だけでなく、その双眸から繰り出される幻術系の血鬼術をも駆使してしのぶを惑わそうとして来た。

 

――くっ!……手強い……っ!……こいつっ……十二鬼月特有の文字や数字が刻まれている数字持ちの鬼でも無い癖にっ、私が以前葬った下弦の肆よりも数段も強いっ!

 

妖鬼妃の強さに驚嘆と苛立ちを覚えながら、必死で突破口を探そうとしのぶは妖鬼妃を睨み付けた。

 

しのぶの視線を受けた妖鬼妃だったが、怯むどころか愉悦を感じて不敵に嗤う。機嫌を良くした妖鬼妃は、しのぶを挑発する様に饒舌に語り始めた。

 

「ふふ、どうしたのかしら? この髪飾りを取り戻すのでは無かったの? 本当に柱かしら? 貴女?……まぁ別に良いけどね。柱にしては弱い方なら役得だし。」

 

「っ!」

 

しのぶは妖鬼妃の挑発的な発言に激怒したが、それも刹那の間だけであった。

 

――この雌鬼の声を聞くのは腸が煮え繰り返りそうですが、このままべらべら喋らせましょう。思わぬ情報を聞き出せるかもしれない……。

 

逆に妖鬼妃の発言で冷静さを取り戻したしのぶは、そのまま妖鬼妃をただ単純に滅殺するのではなく少しでも情報を聞き出すために行動する考えに切り替えた。

 

「貴女を殺せばあの御方がお喜び下さる! 十二鬼月でもない私が柱を葬れば更にあの御方の尊き血を頂ける! それが叶ったら私は更なる力を手に入れて上弦の鬼にすらなる事だって夢じゃないっ!」

 

「……へぇ。不思議な話ですね。貴女程の強い鬼が下弦の鬼にすらその戦列に加えられていないのは、流石におかしいと思ってました。一体全体、十二鬼月の現状はどうなっているんです?」

 

捕らぬ狸の皮算用をする妖鬼妃を内心で嘲笑いながら、しのぶは答えて貰えないのを承知で妖鬼妃に質問してみた。すると妖鬼妃はしのぶの期待以上の情報を、自らの口から話し始めた。

 

「下弦の鬼なら廃止になったわっ。(下弦の伍)鬼殺隊(あなた達)に殺られてから、下弦の鬼達はあの御方にその不甲斐無さを咎められて粛清されたのよっ。魘夢(下弦の壱)だけは粛清を免れて機会を一度だけ与えられたみたいだけど結局、無様に殺られたみたいだし。本当、あの御方の御心を煩わせる、恥知らずの面汚し共だわっ。」

 

「廃止になった……?!」

 

しのぶは妖鬼妃から齎された情報の内容を聞いて、素で驚愕した。直ぐに笑みを零して歓喜したが。

 

何せ鬼舞辻無惨が自らの手で下弦とは言え、十二鬼月の半分を葬ってくれたのだ。

柱級の隊士ならば取るに足らぬ下弦の鬼であっても、一般隊士では束になっても討滅出来ぬ手に負えない強敵である。

自ら居なくなってくれるなら、鬼殺隊としては言う事は無い。寧ろその愚行に拍手喝采するに違いない。

 

――思いも選らぬ素晴らしい情報が手に入りました。これは是が非でも、この吉報を御館様の御耳に入れて頂かなくては。もうこれ以上の情報は引き出せそうにありませんし、さっさとこの雌鬼を地獄へ送るとしましょうか?

 

「貴女もあの娘達と同じよう手足を斬り落としてから、私の血鬼術で天国を味わいながら地獄へ送ってあげましょうっ。今思い出したんだけど貴女の名前、しのぶだったりしない? あの娘達が言ってたもの。」

 

「っ!?」

 

しのぶの浮かべていた笑みが、妖鬼妃の一言で一瞬にして歪んだ。妖鬼妃はそんなしのぶに気付きながら、楽しそうに回想して語り続ける。

 

「因みにだけど、あの娘達の最期は傑作だったわよ? あの整った綺麗な顔を歪ませて、涙や鼻水を流しながら、手足から血を垂らしながら、下の口から小水や愛液を漏らしながら『カナエ様、助けて! しのぶ様、助けて! 誰でも良いから助けてよぉ!!!』って最期は死ぬまで喚き散らしながら惨めに死んで逝ったわ。ああ、あの光景を今思い出しただけでイっちゃいそう!!」

 

「貴…………様っ! 貴様あああぁぁぁぁ!! もう黙れ喋るなあああぁぁぁぁぁ!!!」

 

しのぶは妖鬼妃が自身の調子を狂わせるために態と挑発なのは重々承知していた。

それでも実姉のカナエに似た顔で、苦しみながら逝った継子達の死に様に今も泥を掛け、唾を吐いて愚弄するのが許せなかった。

 

しのぶは怒り狂いながら、毒刃を喰らわせんと妖鬼妃に猛攻を仕掛ける。しかし同時に動きも荒くなったのか、しのぶは妖鬼妃の斬撃を浴びて左腕を負傷してしまう。

それを見て妖鬼妃は勝利が自身に傾いたと、そう言わんばかりに笑みを浮かべた。

 

 

 

♦︎

 

 

 

「やっと一撃喰らったわね。ちょこまかと鬱陶しいったらないわ」

 

妖鬼妃は嗤いながら、しのぶの血をたっぷり浴びた右腕を元に戻してその腕に付いた血を舐め始めた。

 

「っ!……ふふっ。」

 

負傷したしのぶは斬られた痛みに耐えながら、何故か満面の笑みを浮かべていた。

 

「っ?……何を笑っているの? 貴女は私に追い詰められている事を理解しているのかしら?……まぁ、自分の立場を理解していないと言うのなら、私が甚振って思い知らせてあげるわっ……がぁっ!?」

 

妖鬼妃はしのぶの様子に不審に思いながら、自身の優位性を疑わずにいた。しかし妖鬼妃は突然、顔を激しく歪めて、大量の血を吐いて膝から崩れ落ちた。

 

しのぶはその様子を見て歓喜しながら、絶対に此処で仕留めると改めて強く決意する。

日輪刀を一度鞘に仕舞って今調合出来る最強の猛毒を作成して抜刀する。

 

しのぶの日輪刀は、刀鍛冶の里を束ねる里長"鉄地河原鉄珍"が自ら製作した傑作品の一つだ。非力で刺突しか使えないしのぶのために、細剣(レイピア)の如き形状をしている。日輪刀の鍔は蝶の羽を連想させる、雅で巧みな意匠をしている。

 

鞘にはしのぶが自ら精製した毒が複数種類携帯されており、鞘に納め捻る事で毒を混ぜて毒刃を製薬するのだ。この特殊な日輪刀の仕組みは鉄珍としのぶにしか分からない。

 

愛刀を抜刀して構えたしのぶは、自身が独自に編み出した呼吸の剣技を繰り出した。

 

 

 

蟲の呼吸  蜈蚣(ごこう)ノ舞い   百足蛇腹(ひゃくそくじゃばら)

 

 

 

しのぶは毒刃をそのまま妖鬼妃の首に叩き付けると、妖鬼妃は顔を更に歪ませながらそのまま後ろに吹き飛んで行き、太い竹に背中から激突した。

しのぶは吹き飛んだ妖鬼妃を見ながら、地面に着地して日輪刀を鞘に納めた。

 

――あぁ良かった。これでこの戦いも終わる。後はあの娘達の形見となった髪飾りを回収するだけね。今の衝撃で髪飾りが壊れてなきゃ良いけれど。

 

しのぶは髪飾りを回収するために妖鬼妃に近付く。すると妖鬼妃が太い竹に持たれながら、座り込みながら苦しそうに憎悪と怨嗟に満ちた視線でしのぶを睨み付けていた。しのぶはそんな妖鬼妃を見て、警戒心を解く事無く負けじと睨み付ける。

 

「くそがっ……藤の花の……毒を……身体に仕込むなんて……悪趣味、過ぎるわよっ……がはっ!!」

 

「っ!!」

 

妖鬼妃はその言葉を最期に、大量の血を吐血して絶命した。絶命した妖鬼妃を見て、しのぶは漸く警戒心を解いて三つの髪飾りの無事を確認するために妖鬼妃に近付いて行った。

確認すると三つの髪飾りは幸い壊れて居なかった。しのぶはその事実に安堵し、一筋の涙を流して髪飾りを優しく抱き締めた。

 

――皆、敵討ちが遅くなってごめんなさいっ。カナエ姉さんや貴女達の御家族と天国で幸せにねっ。

 

「蟲柱様! 居られますか!? 蟲柱様!?」

 

「っ!」

 

しのぶが急いで涙を拭うと、声がした方向へと身体を向けた。其処にいたのは鬼殺隊の下部組織である事後処理部隊『(カクシ)』の一団であった。

 

しのぶは女性の『隠』である東城隊士から腕の治療を受けながら、同時にこの一団の指揮官である東城隊士に事の一部始終を説明し、報告を依頼した。

 

「おい、嘘だろ……この鬼、見て見ろよ……。」

 

「ん?……うわっ!? カ、カナエ様っ!?」

 

『っ!?』

 

二人の『隠』の会話から、全員の注目が妖鬼妃の遺体に集まった。

 

「っ!……止めなさいっ! 貴方達っ!!」

 

『っ!』

 

東城隊士がその声を聞いて状況を察すると、二人の『隠』に怒号を浴びせる。

己の失態に気付いた二人は、勢い良くしのぶに頭を下げた。

 

「っ……気にしなくて大丈夫ですよ。私も最初はそう勘違いしましたから。」

 

「胡蝶様……。」

 

しのぶはそう言って負傷した左腕を抑えながら、妖鬼妃の遺体に近付いて行った。近くまで行くと、しゃがんで妖鬼妃の顔を見る。

妖鬼妃は大量の血を吐いたせいか、口周りが血だらけであり左眼からは一筋の涙が流れた痕が在った。

 

「っ!」

 

しのぶはその光景を見た瞬間、ある悪夢の光景が脳裏に鮮明に流れ始めた。

 

 

 

『しのぶ。貴女には普通の女の子の幸せを手にいれて、お婆さんになるまで生きてほしいのよ。』

 

 

 

「っ!?……おええええぇぇぇぇぇっ!!」

 

『っ!!??』

 

しのぶが唐突に苦しみ出して、その場で嘔吐した。しのぶのそんな光景を見て、『隠』達は動揺して騒然となる。

 

「蟲柱様……?」

 

「私に触るなぁ!!!」

 

しのぶは自身に気を使ってくれた『隠』を、咄嗟に殴り飛ばしてしまった。

 

「こ、胡蝶様……。」

 

「……っ。」

 

困惑を隠せない東城隊士の視線が居た堪れなくて、しのぶは後処理を命じ、一人で先に帰還すると言って『隠』達を置いて行って、その場を逃げ去ってしまった。

そしてしのぶは真っ直ぐ蝶屋敷に帰れないと判断して、たまたま近くにあった薬師寺ひさの屋敷に転がり込んだのである。

 

 

 

♦︎

 

 

 

東京府・薬師寺ひさ邸

 

大正二年(一九一三年) 三月八日(土)

時間帯:夕方

天気:曇り

 

 

時間が経過して悲しみと罪悪感は薄まれどしのぶの心中から消える事は無かった。

 

そう、しのぶはカナエを自身の手で殺害した錯覚に襲われて、それを拭う事が出来ずにいたのだ。

 

ひさが布団を引き、しのぶに薄紫色の浴衣に着替えさせた後も未だに癒え無かった。

しのぶには夕食を食べる余裕も、湯船に浸かる余裕も無かった。

 

――分かってるっ……分かっているわよっ!……あんなのカナエ姉さんでも何でも無い! 只の他人の空似なんだって事は!……うぅっ……。

 

「あぁっ……やっぱり……辛いなぁ……姉さん……っ。」

 

しのぶは嗚咽を静かに漏らしていると、ドタドタと激しい足音が近付いて来る。ひさには絶対に誰も近付けるなと事前に言い伝えている。しのぶは警戒しながら足音の主が正体を現すのを待った。

 

「しのぶさんっ!? 炭治郎ですっ!! 大丈夫ですかっ!?」

 

「う……そっ? 炭治郎……君っ!?」

 

しのぶは足音の主の正体を見て驚愕した。しのぶにとって今、最も会いたくて、最も会いたくなかった人物だったからだ。炭治郎は心配しそうに、泣きそうな顔でしのぶに近付いて行く。

 

「任務が終わって、偶然この屋敷に寄ったらしのぶさんが苦しんでるってひささんから聞いて、俺、居ても立っても居られなくて……ひささんに頼んで中に入れて貰って、此処まで来たんです!!」

 

「炭治郎君…………っ❤️!」

 

――ああ、私の愛しい人はこんなにも私のために想ってくれるのね……❤️

 

しのぶは炭治郎と出会えた事に歓喜しながら、しのぶの自分の中にある糸がプツンと切れる幻聴を耳にした。しのぶは目元を拭いてから炭治郎に答えた。

 

「炭治郎君。私の事なんて良いですから、休まれて良いんですよ? 炭治郎君も任務帰りでしょうし、身体を休まれては……。」

 

「いいえ! しのぶさんの事を放っておいて休む事なんて出来ません! 俺に出来る事があれば、遠慮なさらず何でも言ってください!」

 

「……❤️」

 

――ああ、炭治郎君。貴方ならそう言うと思ってワザと言いました。意地悪な私を許して……。

 

「で、では…………この丸薬(くすり)を飲んで頂けますか?」

 

「え? 俺が飲むんですか?」

 

炭治郎が疑問に思うのも無理は無かった。苦しんでいるのはしのぶである筈であって自分ではない。それなのに薬を飲ませて欲しいと言うのならともかく、自分が飲むのは流石に解せなかった。

 

「お願い……❤️」

 

「っ……はい、分かりました!」

 

しのぶの色気に満ちた嘆願を聞いて、ただでさえお人好しなのに、好意を抱いている女性から頼まれては、断れる筈が無かった。

炭治郎は大きめの紫色の丸薬を一粒、そのまま躊躇する事無く飲み込んだ。

 

「しのぶさん、飲みましたよ。次は何をしたら良いですか?」

 

「で、では。三十分程経ったらまた此処に来て下さい。服は隊服のままで、お願いしますね❤️」

 

「はい!」

 

炭治郎はしのぶの発言を何一つ疑う事無く、炭治郎は部屋から退室した。パタン、と障子が閉まるとしのぶは大きく息を吸って吐いた後に、布団に倒れ込んで両手で顔を覆った。

 

――やっちゃったっ! やってしまったっ!! ああ、私が作った、私の妄想と願望の集大成である、あの丸薬を炭治郎君に飲ませてしまった……! も、もう後には引けない……! カナヲ、アオイ、ごめんなさい……っ!

 

しのぶはカナヲとアオイに罪悪感から謝罪したが、その美しい顔には狂喜の笑みが含まれていた。

 

 

 

♦︎

 

 

 

炭治郎は言われたように一秒も遅れる事無く、しのぶの部屋に到着した。しかしその顔ばかりか全身が赤く染まっており、呼吸を荒くしていた。

 

「はぁ、はぁ……し、しのぶさん。言われた通りに来ました……あ、あの一体何を、はぁはぁ……俺に飲ませたんですか? なんか、身体が熱いんですけど……?」

 

「そうですか……では隊服の上だけ脱いでから、布団の上に座って頂けますか?」

 

「えっ? は、はい……?」

 

しのぶは布団の上で正座して炭治郎を待っていた。炭治郎はしのぶが三十分前より顔が赤くなり、身体全体からやたらと甘い匂いを放っているのが気になっていたが、身体が熱くてそれどころでは無かった。炭治郎は隊服を脱いで半裸になると、しのぶが指定した位置に座り、しのぶと向き合った。

 

「しのぶさん……俺は何を「炭治郎君、ごめんなさいっ!」……んんっ?!」

 

しのぶはそう叫ぶように言うと、炭治郎を押し倒して熱い口付け(キス)をお見舞いした。炭治郎は眼をパチパチしながら困惑する他無かった。

 

「んちゅ❤️……んん❤️……はぁん❤️……ちゅうぅ❤️……んん❤️」

―――――んんっ❤️ 炭治郎君の唾液、甘い❤️……もっと口付け(キス)したい……❤️

 

「はぁん……うぅん……ちゅ……しの……さん……んんっ」

 

しのぶは荒々しく口付け(キス)をしながら舌を入れて、炭治郎の口内を蹂躙していた。歯茎まで嘗め尽くし、炭治郎の唾液を飲み込み、自身の唾液を炭治郎の口に流し込んだ。二人の唾液は口内から溢れ出て、布団の上に落ちて行った。

永遠とも感じた時間の中、しのぶは息切れを起こして口付け(キス)を解く。しのぶと炭治郎の間に太い銀色の橋が出来ていた。

 

「はぁ……はぁ……し、しのぶさん……。」

 

「はぁ❤️……はぁ❤️……炭治郎君……私、上手く出来ましたか……?❤️」

 

しのぶはトロンと蕩けたような視線をしながら、若干の不安を匂わせつつ、炭治郎に感想を尋ねた。まるで何かをして上手く出来たか親に尋ねる幼子のようだ。

炭治郎は先程の飢えた獣のようなしのぶから連想出来ないその姿に面喰らい、正直にどう感じたか答えた。

 

「えっと……とても……気持ち良かったです……後、甘かった……。」

 

「~~❤️ 良かった❤️……もっと❤️……もっとしましょ❤️❤️」

 

「しの……んん!?」

 

しのぶは炭治郎が喜んでくれた事に狂喜しながら、再び口付け(キス)を落とす。

 

「ちゅうぅぅ❤️ じゅる❤️ はぁん❤️ ちゅるる❤️ んん❤️」

 

「ちゅうぅ、ちゅ、んん、んふぅ、じゅる、じゅるるる。」

 

しのぶは先程よりも激しさの増した口付け(キス)から呂の字(ディープキス)に変えてそれを浴びせながら、炭治郎の口内の水分を吸いつくさんばかりに炭治郎の唾液を吸引した。炭治郎も先程より積極的にしのぶと唾液を交換し始めた。

 

しのぶは炭治郎が答えてくれたように感じて再び狂喜しながら呂の字(ディープキス)を続けて行くと、炭治郎の洋袴( ズボン)に手を掛ける。カチャカチャと両手の感覚だけで洋袴( ズボン)の金具を外し、降ろす直前で唇を離す。口付け(キス)に夢中だった炭治郎もしのぶが洋袴( ズボン)を降ろそうとしている事に気付いて狼狽する。

 

「しのぶさん! そ、其処は!?」

 

「お、お願い! 全部、全部私に任せてっ! 炭治郎君に一生懸命ご奉仕するからっ! 全部私に委ねて……ねっ❤️! ねっ❤️!!」

 

嘆願するしのぶに炭治郎が拒否するなど有り得なかった。炭治郎は羞恥心を隠しつつ「わ……わかりました。お、お願いします……!」としのぶに委ねた。しのぶはそのまま洋袴( ズボン)を丁寧にかつ素早く降ろした。

 

 

 

 

ボロロン!!

 

 

 

 

「きゃあああ❤️!」

 

「うぅ~、やっぱり恥ずかしいな……っ!」

 

炭治郎の逸物を見て、しのぶは歓声を上げた。しかし炭治郎は羞恥心が頂点に達したのか、とても恥ずかしそうにしていた。そんな炭治郎の心情など露知らず、しのぶは炭治郎の逸物を夢中に品評していた。

 

――す、凄い❤️ 今まで治療の過程で殿方の男根を何度も見て来たけれど……大きいのでも炭治郎君の半分少々しか無かったわっ…………本当に…………凄いっ❤️……最低でも六寸(十八cm)……いや七寸(二十一cm)以上はあるわね……熱した鋼鉄(てつ)のように熱くて硬くて……太さも指が付かないくらいあるなんて……ああっ❤️ 素敵っ❤️……素敵っ❤️

 

しのぶが沈黙して余りに熱く視線を炭治郎の男根に浴びせていたため、炭治郎は不安になって声を掛けた。

 

「あ、あの。しのぶさんっ!……その、気持ち悪い……ですよね……? 俺、小さい時からあそこが大きくて……お風呂の時に弟達にも良く茶化されてましたから」

 

「い、いいえっ! いいえっ❤️!! あまりに立派だから見惚れていたんです……っ❤️! 恥ずかしく思う必要なんてないですよっ❤️! とても……素敵です❤️ ああ、なんて雄々しくて、逞しいのかしら……❤️」

 

しのぶがうっとりしながら言うので、炭治郎もしのぶが喜んでくれるならと思うと今まで抱いて居た自身の逸物に対する劣等感は消えていた。

しのぶは炭治郎の逸物に頬ずりすると、口を大きく開けて逸物をパクっと加えた。

 

「っ! ううぅ!!」

 

「じゅるる❤️ ちゅぶ❤️ ちゅうぅ❤️ ちゅるる❤️ ちゅぅ❤️ ちゅば❤️……。」

 

「ああああっ!! なんだ……これ……すごく……気持ち良くて……あっ……なにか出る……出るっ!! しのぶさんっ……出ちゃうから離れてください……っ!!!」

 

「っ❤️!! じゅるるる❤️ じゅるるるる❤️ ちゅぼ❤️ ちゅば❤️……っ❤️!」

 

炭治郎は未知の快感に全身を震わせ、しのぶは喉元まで使って炭治郎を気持ち良くしようと書物や又聞きの知識で頑張って奉仕していた。耐性の無い炭治郎は湧き出る射精感に慌ててしのぶに伝えたのだが、しのぶは出してとばかりに更に激しくする。

 

 

 

ビュルルルルルル!! ビュブルルルルル!! ビュルビュル!!!

 

 

 

「――っ!!!」

 

「ゴクッ❤️……ゴクッ❤️……キュ❤️……ゴクッ❤️ ゴクッ❤️……ぷはぁ❤️ はぁー❤️ はぁー❤️」

 

炭治郎は我慢出来ずに逸物から白濁の溶岩を勢い良く射精した。しのぶは一滴も零すものかと全て飲み干して見せた。

しのぶは逸物から口を離し、手で逸物の硬さを確認する。萎えるどころか硬さが増している逸物を見て感じて、恍惚とした表情になる。炭治郎は快感が弱まって口が利くようになってからしのぶに謝罪した。

 

「しのぶさん……すみません。我慢、出来なくて……。」

 

「良いの❤️……とっても濃厚で❤️……甘くて❤️……素敵な味でした❤️……ね、ねぇ、炭治郎君❤️ もう一つになろ❤️ なりましょうね❤️」

 

しのぶは肌蹴ていた浴衣を脱ぎ捨てて生まれたての姿になる。明かりが付いたままであるため、その姿は良く見える。炭治郎はその鍛えられた美しい裸体から眼が離せなかった。

 

「ゴクッ……し、しのぶさんっ!」

 

「ふふっ❤️ 炭治郎君の日輪刀っ❤️ 私の裸を見て熱く硬く大きくなりましたよ❤️……ふぅ❤️ ふぅー❤️ も、もう挿入(いれ)ますね❤️……んんっ……んああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!❤️」

 

 

 

ズブブブブブッ

 

 

 

そう音を立てて騎乗位の態勢で炭治郎の逸物はしのぶの膣内に勢い良く侵入して行った。しのぶは一際大きな声を出した。その両眼からは大粒の涙が溢れ出る。それを見て炭治郎はしのぶを心配して声を掛けた。

 

「しのぶさんっ! 大丈夫ですかっ!? 痛くないですか!!」

 

「ち、違うのぉ❤️……気持ち良くて……それ以上に私が炭治郎君と一つになれたのが……貴方と結ばれたのが嬉しくて❤️……私……私ぃ……❤️」

 

しのぶは溢れ出る涙を両腕で拭いながら炭治郎に微笑んで見せた。そんなしのぶを見て炭治郎は愛おしさから胸が熱くなる。

 

「しのぶさんっ!」

 

「っ❤️!! あああああああん❤️!!」

 

炭治郎は上半身を勢い良く起き上がらせると、そのまましのぶを抱き締める。両手をしのぶの括れた腰に手を回し、自身の逸物をしのぶの蜜壷と形の良い大きな臀部に叩き付ける。炭治郎の対面座位での攻めに、しのぶは大きな声で嬌声を上げる。

 

「も、もう❤️ 全部、私に任せてって、んん❤️ 言ったのにぃぃぃあああああん❤️!!」

 

「しのぶさんっ! 貴女は俺をっ、ふぅ! 気持ち良くしてくれました! だから今度はっ、くぅ! 俺が貴女を、んん! 気持ち良くしてみせますっ!」

 

炭治郎はしのぶの豊満な乳房に顔を近付けて吸い付いた。そして吸い付いたまま徐々に攻めを強くして行く。しのぶは嬌声を上げながら炭治郎に抱き着く事しか出来ない。そうして炭治郎が攻め続けている内に、二人に限界が訪れ始めた。

 

「ああああっ! しのぶさん!! 出そうですっ!! 出ちゃいます!!!」

 

「んんっ❤️! 出してっ❤️! 私の膣内(なか)を❤️!! 炭治郎君でいっぱいにしてっ❤️!!!」

 

「はぁ、はぁ……うっ!!!」

 

 

 

ビュルルルルルルルル!! ビュルルル!!! ビュルビュル!!!

 

 

 

「「あああああああ!!!!」」

 

炭治郎の逸物から白濁の溶岩がしのぶの膣内を瞬く間に染めて行く。二人は快感のあまり屋敷中に響いたのではないかと言うくらいの嬌声を上げた。

 

「「はぁ、はぁ、はぁ。」」

 

快感の波が過ぎ去り、呼吸を整えると二人は見つめ合った後、口付け(キス)をした。

 

「「ちゅ……ちゅうぅ……ちゅ。」」

 

啄むような口付け(キス)を続けて行く内に、しのぶが炭治郎の肩に手を置いた。そしてそのまま炭治郎を押し倒した。

 

「わぁあ!? え、しのぶさんっ!?」

 

「私に任せてって言ったのに…………今度こそ、私が炭治郎君を気持ち良くしてあげますからっ❤️❤! 全部っ❤️❤️! お姉さんに任せて下さいねっ❤️❤️❤️!!!」

 

「……気持ち良くはもう既にさせられているのですが……わかりました。よろしくお願いします。ふふっ。」

 

しのぶが頬を膨らませながら炭治郎にそう宣言すると、炭治郎は苦笑しながらしのぶに委ねる事にした。しかし二、三回したくらいでは治まらず、その後二人は五時間以上もの間、休む事無く情交(セックス)を続けたのだった。




オリキャラ紹介

妖鬼妃(ようきひ)
カナエに良く似た女性鬼。効率良く成長するために稀血を中心に狩りをする美食家で、ある程度の人数を狩ったら鬼殺隊の眼から逃れるために他の鬼の縄張りも平気で侵入して共喰いしていた。しのぶの継子を全員殺害した張本人で臆病という訳ではなく、見つけた鬼殺隊士は容赦なく襲い殺して積極的に喰らっていた。

幻術系の血鬼術を使うが殺傷能力は低く、あくまで補助。両腕を蟷螂の鎌のように変化して攻撃する。間合いは三十三尺(十m)まで伸びる。実力は上弦の陸の片割れ"堕姫"と同等くらいの実力者。

しのぶとの死闘の末、討滅された。ある意味でしのぶのキューピッド役。
憎悪している鬼の御蔭で想い人と結ばれたと言う、しのぶへの皮肉の象徴でもある。

登場人物の性器発言ってどう思います?

  • 有り(エロくなるからばっちこい)
  • 無し(日輪刀、鞘とオブラートに揶揄って)
  • 作者にお任せ
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