※この作品はR-18です。

優しき日輪と鬼殺隊の美蝶   作:蓮紅

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※キャプション必読・リクエストに関しての説明あり
・鬼滅の刃原作に関するネタバレあり。原作未読の方は閲覧注意。
・鬼滅の刃二次創作小説です。
・原作・キャラクターの性格・設定等改変の可能性大。一部キャラ崩壊注意。
・思い付き次第で何度も編集を繰り返す可能性大。お時間がある時で良いので、良ければ読み返してみて下さい。
・誤字脱字等のミス・内容の矛盾等の指摘は大歓迎。理不尽なクレームは受け付けません。
・コメント・メッセージ大歓迎。創作意欲の燃料になります。コメント・メッセージの返信は必ずさせて頂きますのでどしどし御投稿下さい。
・SS内容に関してはネタパクリと言う名の盗作を間違えてしないよう気を付けてますが、もし私が投稿した作品が既に別の作者様と作品内容が酷似していた場合、メッセージにて御連絡下さい。

※リクエストに関して
メッセージにてリクエスト内容を御連絡下さい。
以下規約
・100%受け付けられると保証された訳では御座いません。創作意欲次第で承諾する場合もお断りする場合も御座います。
・炭治郎×鬼滅女子のみ。
・作者は遅筆。またリアルの都合や他SSの執筆で投稿が遅くなる可能性大。
・CP、全年齢かR作品か、ネタの内容を御記入下さい。ネタの内容が詳細で有れば有る程、筆が進むので御協力をお願い致します。


第伍拾参話 日輪は白蛇に託される ❤

「……所で竈門炭治郎、俺はお前に一つだけ聞きたい事がある。」

 

「はいっ! 小芭内さんっ! 俺が答えられる事なら、何だって聞いて下さいっ!!」

 

「……」

 

炭治郎から名前を呼ばれた小芭内は、内心げんなりしながらも気を取り直して聞きたい事を尋ねた。

 

「随分と、甘露寺と馴れ馴れしくしていたな……何時からだっ?」

 

「……はいっ?」

 

「何度も言わせるな。お前は俺の質問に正直に答えれば良い……何時から甘露寺と親しくしている?」

 

小芭内は苛立たし気に青筋を浮かべながら、再び同様の質問を炭治郎に行った。

 

「そうですね。銀座でお会いした頃からです……と言っても、一昨日の話になりますから、そんな前の話でもありませんけど。」

 

「一昨日……銀座だと?……詳しく聞かせて貰おうっ。」

 

小芭内が据わった眼をしながら、炭治郎に詳細を尋ねた。

 

「えーっと……少し長くなりますけど、良いですか?」

 

「ならばさっさと話せ。今話せ直ぐ話せ。それも簡潔に、されど詳細にだっ!」

 

「はっ、はいっ!!」

 

クワッと両眼を見開きながら迫って来る小芭内に、炭治郎は当惑を隠せないながらも銀座で自分達に起こった出来事について話し始めた。

 

 

 

♦︎

 

 

 

「……以上になります。」

 

「そうか。これで何故甘露寺が俺達より先にこの産屋敷本邸(おやしき)に来ていて、珠世達の護衛に付いていたのかは分かった……それはそれとして、だ。」

 

小芭内は一度閉口すると、ネチッこい視線を炭治郎に向けた。

 

「栗花落カナヲとのデート(逢引)の途中で、甘露寺と会うなど……まさか分かっていたのか?」

 

「分かる訳無いでしょう!? 偶然ですってば。そもそも"煉瓦家"なんて御洒落(はいから)な西洋料理専門店の名前も、その時にカナヲに教えて貰って初めて知ったんですからっ!!」

 

炭治郎はあらぬ疑いを小芭内に掛けられて、慌てた様子で弁明していた。

 

「ふん、まぁ良い……しかし平穏で楽しいお食事会とは、すんなり行かなかった様だな?」

 

「……えぇ、まぁ……。」

 

小芭内からそう指摘されて、炭治郎は眉を一度顰めてから困った表情を浮かべつつ答える。

 

「何故、甘露寺を侮辱した豚を始末しなかった?」

 

「……はいぃっ?」

 

炭治郎は小芭内が口にしている言葉が意味する内容が理解出来ず、思わずその様に返答をした。

一見すると惚けた様子を見せる炭治郎に、小芭内は青筋を浮かべながら更に問い詰め始めた。

 

「何故その豚を始末しなかったのかと聞いているっ。甘露寺が沢山食べるのはその体質故であり、彼女の美点でもある。

食事を美味しく食べる姿だけでも周囲を幸せにすると言うのに、それを豚と例えるだと?……全く以て許し難い。万死に値する。

そしてその馬鹿豚に制裁する事無くノコノコ生かしたお前の怠慢も、実に許されざる大罪だ。どう処分する。どう責任を取らせる。どんな目に遭わせてやろうか。」

 

「お、小芭内っ!……っ!!」

 

ひなき達と黙って話を聞いていた輝利哉が、小芭内の言動を見て流石に制止に入った。しかしそんな輝利哉を、逆に片手を翳して炭治郎が静止した。

 

「小芭内さんの御気持ちはよーく分かりますけど、落ち着いて下さいよ。」

 

炭治郎は小芭内を宥めると、更に話を続けた。

 

「あの後は直ぐに甘露寺さんに謝罪して、お詫びに食事代を全部奢ってくれましたし……第一、甘露寺さん御本人が許すって言っているのに、俺が口出し出来る訳が無いじゃないですかっ! 一々無茶言わないで下さいよっ。」

 

「ぐっ!?…………まぁ良い。」

 

炭治郎の正論を聞かされて、小芭内は反論する事が出来なかった。小芭内は苛立ちを抑えつつ、頭を切り替える。

 

「そんなに甘露寺さんが好きなんでしたら、好きだとはっきり告白したら良いじゃないですか。」

 

『!』

 

炭治郎は呆れ果てた様子で、小芭内に蜜璃へ告白する事を推奨した。炭治郎は更に話を続ける。

 

「甘露寺さんと一緒に居る時、何か刺さる様な視線を頻繁に感じてましたけど・・・それって小芭内さんだったんですね。甘露寺さんに好きって言うか、もう大好きとか愛してるって言える程強い匂いを常に出しているから、今思うと納得です。かなりと言うか、俺からしたら本当に大迷惑な話ですけど。」

 

『!!』

 

小芭内に対して一切取り繕う様子も無く、無遠慮且つ馬鹿正直に自身の感想を述べる炭治郎。

 

「……」

 

「何ですか? 言いたい事があるなら、はっきり言って下さいよ。それで? 甘露寺さんの事、小芭内さんはどう思っているんですか?」

 

「シャ――ッ。」

 

炭治郎に言いたい放題言われた小芭内は、沈黙したまま炭治郎をねちっこい視線で睨み付けるしかなかった。しかし炭治郎は、一切怯む事無く、小芭内に対して苦情を述べる様に言ってのけた。そして驚く事に小芭内至上主義の筈の鏑丸すら、炭治郎に同調する様に小芭内に声を上げる。

 

小芭内の事情を理解しつつも、蜜璃との関係には鏑丸も思う所があった模様であった。

 

「……っ。」

 

相棒の思わぬ裏切りに、小芭内は咄嗟に何も言う事が出来なかった。しかし、一度溜息を吐くと諦めた様子で炭治郎にはっきりと言った。

 

「ああ、好きだ。お前が言う様に、俺は甘露寺を愛している。」

――チッ……喩史郎(あの鬼)に続けて、嫌いな奴に連続して同じ事を言う羽目になるとはな。

 

「っ!……そうですか。」

 

炭治郎は小芭内の告白を聞いた後、即座に小芭内に尋ねた。

 

「言って貰った所を悪いですけど、それって俺達に言うべき事じゃないですよね? 早く甘露寺さんに言ってあげて下さい。」

 

『!』

 

炭治郎の無碍とも解釈出来る発言に、小芭内は思わず額に青筋を浮かべる。しかし、其処へある人物の言葉が脳裏を過った。

 

『想いを告げる勇気も無い意気地無しの(カス)如きに、嫉妬心も独占欲も抱く資格は無いっ!』

 

「……っっ。」

 

それは小芭内の心を深く抉った、喩史郎の発言であった。両眼を閉じた小芭内は湧き上がる怒りを抑えつつ、小芭内は思いを巡らせた。そして少ししてから、小芭内はカッ! と勢い良く開眼した。

 

「……俺が甘露寺に告白する事は……無い。絶対に無い。」

 

『!!』

 

小芭内はゆっくりと、されどはっきりと炭治郎達に聞こえる様にそう断言した。その断言の内容を聞いて、輝利哉達は驚かざるを得ない。

 

「どうしてそうなるんですかっ!?」

 

炭治郎も勿論驚いたが、それ以上に別の感情が炭治郎を支配していた。それは怒りであった。

 

炭治郎は小芭内を睨み付けていた。それは小芭内が蜜璃に想いを告白しない事実に対してであり、同時に小芭内から嘘や虚勢などの匂いなどなく、本心である事に怒りが湧き上がってきた。

 

「分不相応な俺が甘露寺に告白する資格など無い……輝利哉様はあれだけ仰って下さったが、どうしてもその考えだけは拭う事が出来ない。だから俺は、甘露寺に何も言う心算は無い。」

 

「そんなっ!!……小芭内さんはっ! 本当に小芭内さんはそれで良いんですかっ!?……っっ。」

 

炭治郎は小芭内の決意を聞いて、今にも泣きそうな表情を浮かべながら小芭内に尋ねた。心中で小芭内が考えを変えてくれる事を、心底祈りながら。

 

「本当にお前は、他人(ひと)の事ばかり五月蠅い……っっ。」

 

小芭内は自分以上に気に掛けて来る炭治郎に、そう言って悪態を吐いた。しかしその表情は、普段よりも大分柔らかいものとなっていた。

 

「っっ……そ、そんな事を言っていたらっ! 甘露寺さんが他の男性(ひと)に盗られちゃいますよっ!!……たっ!……例えば俺とかっ!!」

 

炭治郎は小芭内に殴られる覚悟で、挑発する様に小芭内を焚き付けた。炭治郎はどうしても、小芭内の考えを変えたかった。

 

「……ふっ。」

 

しかしその様な見え透いた炭治郎の思惑を看破して、小芭内は鼻で炭治郎を嗤った。

 

「なら、お前は甘露寺を手に入れようと言うのか?……竈門炭治郎、お前は甘露寺を何と思っている? 甘露寺はお前にとって、どんな女性なんだ?」

 

「!?」

 

小芭内から想像もしていなかった、思いもよらぬ質問に炭治郎は困惑を隠せない。

 

――下手な誤魔化しなんてしたら、逆に怒るよなぁ……自分に気持ちに嘘なんて吐きたくないし、それで殴られるなら構わない。

 

「……」

 

炭治郎は自分の気持ちを形にすべく、閉口したまま思案していた。

 

「……小芭内、君は本当にそれで良いの?」

 

「はい、輝利哉様。此処に来て漸く、俺も自分に区切りを付けられそうです。」

 

炭治郎が思案している間に、輝利哉が小芭内に質問をしていた。その表情は、小芭内の気持ちを慮って心配そうにしていた。

 

そんな輝利哉の思い遣りに感謝しつつ、小芭内は清々しさすら感じる表情を浮かべてはっきりと断言した。

 

「……はいっ! 甘露寺さんの事は、勿論好きですっ。」

 

『!』

 

其処へ炭治郎の、単純明快な肯定の返答が聞こえて来た。小芭内は勿論、輝利哉達も反応する。しかし、炭治郎の肯定はこれだけでは終わらなかった。

 

「とっても明るくて、優しくて、本当に満開のお花みたいに綺麗で可憐な女性(ひと)ですよね。桃色の髪の毛と大食漢な一面は普通の人には受け入れがたいかもしれませんけど、あれこそ甘露寺さんの美点ですから変だなんて思いません。あんなに可愛くて外面も内面も素敵な甘露寺さんを、好きにならない訳が無いじゃないですか。」

 

炭治郎は其処まで言うと、一旦沈黙して小芭内を真っ直ぐ見た。

 

「甘露寺さんを手に入れたいなんて傲慢な考えを、俺は微塵も持ち合わせていません。ただ、甘露寺さんに素敵な出会いがあればと、心から願っています……甘露寺さんは、俺達が失ってしまった掛け替えの無い日常を象徴する様な方だから……そんな女性(ひと)だからこそ、生き残って幸せになって欲しい。そう思っています。」

 

「…………そうか」

 

「まぁ、その……生き残って欲しいって言葉は、皆に当て嵌まる事なんですけどねっ!」

 

照れ臭そうに笑う炭治郎。しかし炭治郎が持つ蜜璃への考え方を聞いて、小芭内は一言だけ呟いた後はただ思案する為に沈黙していた。

 

「……及第点、だな……こんな奴でも、他の奴らよりマシか……。

 

「えっ?」

 

小芭内が小声で一言呟いたのだが、炭治郎は内容が聞き取れず聞き返した。

 

「何でも無い。お前が気にする事じゃない。」

 

内容を聞きたそうにする炭治郎に、小芭内は無視して沈黙させた。それから小芭内は一度身体を動かして、背中を壁際に凭れ掛けた。

 

「俺は改めて、人生の目標が出来た。と言っても、実際は何も変わっていないがな。再認識した、とでも言うべきか。」

 

小芭内は其処で一旦言っている事を止めると、決意を新たに語り始めた。

 

「鬼舞辻無惨を、この手で倒す。そして甘露寺が生き残って、幸せな人生を歩める様に守り抜く。ただそれだけだ。」

 

「っ!…… ええっ! そうですねっ!!」

 

小芭内の悲願とも言える決意を聞いて、炭治郎は笑みを浮かべながら心底同意した。

 

「小芭内さんっ! 俺と一緒に無惨を倒して、甘露寺さんを守りましょうねっ!!」

 

「!」

 

炭治郎にそう呼び掛けられた小芭内は、しばし沈黙したまま炭治郎を見詰めた。

 

「……」

 

しかしそれは殆ど刹那とも言える僅かな間だけで、直ぐにジト目に炭治郎を睨み付けた。

 

「お前は先ず柱になれるだけの強さを手に入れてから、そう言った大口を叩け。この足手纏いの厄介者がっ。」

 

「はいっ! 日々精進しますっ!!」

 

「っ!…………フンッ。」

 

小芭内の叱咤激励が混じった悪態を聞いて、炭治郎はただ精進する事を約束した。そんな炭治郎の調子を受けて、小芭内は小さく鼻を鳴らした。

 

 

 

♦︎

 

 

 

「炭治郎様、おめでとうございますっ……。」

 

炭治郎と小芭内が一頻り話し合いを終えたのを見計らって、ひなきが炭治郎に祝福の言葉を掛けた。

 

「ひなきちゃん?……っ?」

 

「うふふっ……炭治郎様が伊黒様……いえ、小芭内様と仲良くなられて、私達は嬉しいと思っているのです。」

 

「「!」」

 

ひなきが嬉しそうにそういうと、炭治郎と小芭内で二者二様の反応を見せた。

 

「「……」」

 

炭治郎こそ嬉しそうに笑みを浮かべたが、小芭内は顔を顰めそうになるのを必死で堪えていた。何か言えば藪をつついて蛇を出す様な真似だと分かっているのか、沈黙を貫いていた。

 

「姉上、小芭内を揶揄わない様に……。」

 

「ごめんなさい、あははっ。」

 

輝利哉がひなきを注意すると、ひなきは笑いながら謝罪した。

 

「……っ!」

 

炭治郎は輝利哉達の様子を見て、ある事に気付いた。そして徐に立ち上がった。

 

「輝利哉君っ。ひなきちゃん達も。長風呂になっちゃったね。もう急いで上がろうか?」

 

『!』

 

小芭内の話が思うよりも長引いてしまったので、思うよりも長風呂になってしまったのだ。まだ小柄な子供である輝利哉達が、年上の炭治郎と小芭内と同じ時間も温泉に入っていられる訳が無い。

 

炭治郎は輝利哉達の匂いと顔色を見て、温泉から上がる事を推奨した。これ以上居れば、輝利哉達がのぼせかねない。そう心配した炭治郎は、急いで温泉から上がろうとしたのである。

 

「炭治郎様、お気遣い下さってありがとうございます。でも……っ。」

 

ひなきは炭治郎の優しさと心遣いに、感謝して頭を下げた。輝利哉達もひなきに続けて、炭治郎に頭を下げる。しかしひなき達が頭を上げると、困った顔色を宿していた。

 

「ひなきちゃん、皆もどうかしたのかい?」

 

炭治郎はひなき達の困った様子に気付いて、何故困っているのか理由を知るべく尋ねた。

 

「……はい、そのっ……。」

 

ひなきが口を詰まらせていると、くいなが代わりに開口する。

 

「炭治郎様、私達は全裸(はだか)男湯(此処)に来てしまったので……そもそも着替えがっ……っっ。」

 

「あっ!?」

 

くいなにそう言われて、漸く炭治郎はひなき達が困っている理由を思い出した。

 

そもそもひなき達が男湯に居るのも、炭治郎達の騒動を聞き付けて炭治郎を心配するあまり衝動的に駆け付けて来たのだ。咄嗟に飛び出して来てしまったので、着替えは女湯の更衣室に置き去りにしてしまっていた。

 

「じゃあ……ひなきちゃん達の着替えは女湯の更衣室にある訳だね?」

 

「……はいっ。」

 

「ですが、恥ずかしくてとても着替えを取りに行く勇気が……っ。」

 

ひなきが恥ずかしそうに肯定すると、にちか達も続けて首肯した。更にかなたが取りに行く事が出来ない理由も、恥ずかしそうに炭治郎に伝えていた。

 

「…………良しっ! 分かったっ!」

 

『!』

 

ひなき達が困っている様子を見て、炭治郎は自身を鼓舞する様に大声を上げた。そんな炭治郎の大声に、輝利哉達も反応する。

 

「俺が女湯に忍び込んで、ひなきちゃん達の着替えを取りに行って来るよ。」

 

「……えぇっ!?」

 

『!?』

 

炭治郎の決意に、輝利哉を筆頭にひなき達全員が驚きの声を上げる。しかし、炭治郎はそんな輝利哉達に声を掛けた。

 

「ひなきちゃん達を、このままにしておく訳には行かないでしょう?……俺は鼻が利くから、他の誰か来ないか事前に分かるし……何だったら間仕切り越しを飛び越えて、男湯(此処)に戻って来るよ。」

 

『!』

 

炭治郎が成功する根拠を口にして、輝利哉達を説得した。炭治郎の言い分も正論である為、輝利哉達は反論出来ない。

 

「炭治郎様、御迷惑をお掛けして申し訳ございません……お手数ですが、どうかよろしくお願い致します。」

 

ひなきが謝罪した後、ゆっくりと頭を下げて炭治郎に依頼した。ひなきが頭を下げると、にちか達も遅れて頭を下げた。

 

「炭治郎、姉上達がごめんね?……頼んだよ。」

 

「うん。輝利哉君、任せておいて。」

 

輝利哉が詫びる様に炭治郎に謝罪した後、託す様に依頼を行った。

 

「……早く行け。これ以上、騒ぎを起こすなよ。」

 

「分かってますよ、小芭内さん。」

 

沈黙を貫いていた小芭内が、激励なのか忠告なのか、解釈が難しい言葉を炭治郎に掛けた。炭治郎はそれを激励と解釈して、笑顔でそれに答えた。

 

「行ってきます!」

 

炭治郎はそういうと、一足先に男湯から上がって行った。

 

 

 

♦︎

 

 

 

「……つ、疲れたっ……っっ。」

――もう、二度としたくない……っ。愈史郎さんの『紙眼()』が一枚でもあれば、こんな苦労なんてせずに済んだのに……っっ。

 

炭治郎は疲労困憊と言わんばかりに、ぐったりとした様子で廊下を歩いていた。

 

他人が更衣室に近付いていないかを神経質な程にその超人的な嗅覚で確認しながら、見事更衣室でひなき達の着替えを回収する事に成功した。

 

しかし来ないと分かっていたとは言え、女湯に忍び込む事は想像以上に神経が磨り減る行為であった。

 

そんな疲弊している炭治郎と共に、輝利哉達も全員共に廊下を歩いていた。

 

「炭治郎、姉上達の為にありがとう。」

 

輝利哉が代表して、炭治郎に礼を述べた。ひなき達も続けて、炭治郎に頭を下げた。

 

「ううん、ひなきちゃん達の為だもの。当然だよ…………っ。」

 

炭治郎はそう言って、輝利哉達の礼に答えた。しかし、同時にある事も回想していた。

 

――良い匂い……してたんだよなぁ。やっぱりしのぶさん達が居たんだと思うと……っっ。

 

炭治郎は女湯で僅かに残っていたしのぶ達の残香を明確に嗅ぎ取って、しばしその場を動けなかったのである。

本人の方が勿論良いのだが、炭治郎だからこそ僅かな香りだけでしのぶ達本人を明確に連想出来ていた。

 

「……炭治郎様?」

 

そんな惚けている炭治郎の様子を、輝利哉達が気付かない筈が無い。歩きながら上の空状態である炭治郎に、にちかが思わず炭治郎を呼び掛けた。

 

「はいっ!? な、何かなっ? にちかちゃん。」

 

我に返った炭治郎が、慌てた様子でにちかに返答した。炭治郎本人はこれで誤魔化せた心算であったが、逆に不審さが強調されていた。

 

「竈門炭治郎……何を考えていた?」

 

「!?」

 

小芭内が炭治郎を睨み付けながら、問い詰める様に強く訊ねた。

 

「えっ!? お、小芭内さんっ!? 俺はっ!? あのっ! そのっ!?……えっーと、あぁ~~。」

 

『……』

 

炭治郎は慌てながら弁解するが、口を何度も詰まらせて挙動不審な様子を見せては弁解の意味が無かった。

 

「どうやら、良からぬ事を考えていた様です……状況を考えて、女湯に関する事でしょう。」

 

「!!?」

 

『!』

 

小芭内が輝利哉達に告げ口をする様にそう報告すると、炭治郎は顔を赤茄子(トマト)の如く紅潮させた。更に酸欠状態の魚の如く、口をパクパクと動かしている始末だ。

 

これは小芭内の推測が的中しているからこそ、反論出来ないという事実を表している事に他ならなかった。

 

「……っ❤」

 

かなたが照れた様子で、顔を紅潮させた。しかしそんなかなたを見て、ひなきが声を掛けた。

 

「かなた……照れてる所を悪いけど、きっと私達の事ではないと思うわ。」

 

「私達が女湯に入る前に、胡蝶様達が先に入っていたのですものね。」

 

ひなきが口にした指摘に、にちかも同調してその理由を推測した。

 

「炭治郎。」

 

「「「「炭治郎様っ。」」」」

 

「竈門炭治郎。」

 

『何かやましい事を考えて(いたな)(いましたね)(いたよね)?』

 

「!!!??」

 

輝利哉達が異口同音に炭治郎に訊ねると、炭治郎の緊張感は頂点に達した。

 

「ソッ!……ソンナコトナイデスヨ。」

 

『!?』

 

炭治郎は咄嗟に嘘を吐いたが、口調が普段と異なっていた上に顔が凄まじい変顔になっていた。その変貌振りに、輝利哉達は呆気に取られてしまった。

 

「……貴様、嘘を吐けないにも限度があるだろう。」

 

小芭内は炭治郎の変顔に、呆れ果てた様子で指摘せざるを得なかった。

 

「放っといて下さい。俺、昔から嘘は付けない性質なんです。馬鹿正直なもので。」

 

元の顔貌に戻った炭治郎が、小芭内の指摘にそう言って抗弁した。

 

「……ぷっ。あははは。もう……炭治郎様が面白いから、怒る気も無くしちゃいました。」

 

ひなきが笑いながらそういうと、にちか達も長子のひなきに同調した。

 

「でもっ……ほんの僅かでも良いから、私達の事も意識して欲しいです。」

 

くいながそう言って、しのぶ達に嫉妬心と対抗心を静かに燃やしていた。そんなくいなに、炭治郎は即座に反応した。

 

「勿論、くいなちゃん達もそうだよ。凄く素敵で可愛い女の子なんだから。」

 

「本当ですか?……嬉しいっ❤」

 

炭治郎がくいな達も素敵な女子だと褒めると、くいなは嬉しそうに両頬を紅潮させた。ひなき達も炭治郎の称賛を聞いて、嬉しそうに両頬を紅潮させた。

 

「……スケコマシめ。」

 

小芭内が小声で炭治郎にそう悪態を吐くと、今度は輝利哉に声を掛けた。

 

「輝利哉様……俺は此処で失礼させて頂きます。御館様からお借りしている部屋に戻らなくては。」

 

「っ!……分かったよ、小芭内。今回はありがとう。君の事が沢山知れて、私はとても嬉しかった。」

 

「俺の方こそ輝利哉様からの数々のありがたい御言葉、生涯忘れは致しません。ありがとうございました。」

 

小芭内は輝利哉に向かって、頭を深く下げて感謝の意を示した。それからひなき達にも、小芭内は順番に頭を下げる。

 

「……」

 

「……っ。」

 

小芭内は炭治郎に一度だけ視線を向けると、そのまま炭治郎に背中を向けて歩き出した。炭治郎は小芭内が何も言ってくれなかった事を寂しいと思いながらも、何も言わずにその背を見送っていた。

 

すると歩いていた小芭内が、不意に足を止めて立ち止まった。

 

「……炭治郎、感謝する。」

 

『!!!』

 

小芭内が炭治郎に背中を向けたまま、炭治郎に感謝の言葉を伝えた。自身にも感謝の言葉を言ってくれた事実に、炭治郎は理解が遅れてしばし呆然とする。そして漸く現況を理解すると、炭治郎は直ぐに行動に出た。

 

「小芭内さんっ! 俺の方こそっ!! ありがとうございましたぁっ!!!」

 

炭治郎は小芭内に向かって、廊下の床に頭を叩き付けかねない勢いで頭を下げて最敬礼した。

 

「シャ――――ッッッ!!!!!」

 

小芭内は炭治郎の言葉に何も反応せず歩き去ったが、その際に小芭内の頸にとぐろを巻いている鏑丸が代わりと言わんばかりに大声を上げて反応したのだった。

 

 

 

♦︎

 

 

 

「炭治郎、疲れたね。」

 

「色々あったよね、輝利哉君。」

 

炭治郎達が居る部屋には、既に六人分の布団が二列で均等に並べられていた。ひなき達は既に、それぞれの布団の上に座っている。

炭治郎は去ろうとしたのだが、輝利哉達に懇願されて今夜は共に寝床に着く事にしたのだ。

 

――輝利哉君達、皆疲れてるなぁ……あれだけの事があれば、そりゃ疲れるだろうけど。

 

炭治郎は心中でそう思いながら、不意にひなきの方へと視線を向けた。

 

「……っ!」

 

ひなきを見た炭治郎は、ある事を思い出した。すると徐に炭治郎は、立ち上がらずに匍匐前進してひなきへ接近して行った。

 

「まぁ、炭治郎様。如何かなさいましたか?」

 

炭治郎が自身の下へやって来てくれる事に嬉しく思いながらも、ひなきは何故炭治郎が自分の下へやって来たのだろうと思って尋ねた。

 

「ひなきちゃん。」

 

「はい、炭治郎様。……んっ!?」

 

「「「「っ!?!」」」」

 

ひなきの名前を炭治郎が呼んだ後、直ぐにひなきの唇に向かって口付け(キス)を行ったのだ。

 

まさか炭治郎の方からしてくれるとは夢にも思わなかったひなきは、炭治郎から口付け(キス)されているにも関わらず両眼を見開いたまま固まってしまう。

 

そしてそれ以上に、輝利哉達の方が炭治郎の思わぬ行動力に驚愕していた。

 

「……フゥ。ひなきちゃん、どうだった?」

 

「あっ❤……た、炭治郎様ぁ❤」

 

炭治郎からの思わぬ贈り物に、ひなきは感激していた。しかしひなきがこうも幸福に身を浸かっていると、逆に幸福に餓えてしまう者達が居る。

 

「「「……っ。」」」

 

それはひなきの妹であるにちか達だ。にちか達は当然、炭治郎の行動は依怙贔屓であると抗議しようとしたが、それに関しては炭治郎が先手を打った。

 

「これで全員、俺と一回は口付け(キス)した事になるね。」

 

『!』

 

炭治郎は有無を言わせない凄みを含んだ笑みを浮かべてそう言うと、全員がハッとなって現況を理解した。特ににちか達はこれ以上我儘を言えば、流石に炭治郎に嫌がられるだろうと思うと行動に移せなかった。

 

「うぅっ……でしたら炭治郎様との添い寝を希望しますっ!」

 

『!?』

 

かなたは涙腺に悔し涙を溜めながら、炭治郎の右側に抱き着いた。咄嗟のかなたの行動に、炭治郎も反応が遅れてしまう。

 

「妙案です。では私は反対側に……。」

 

かなたの行動力を見て、にちかは称賛しながら空いている炭治郎の右側に抱き着いた。

 

「かなたっ! にちか姉上もっ!……っ!!」

 

にちかとかなたの様子を見ていた輝利哉が、抗議する様に二人の名前を呼んだ。それは炭治郎を盗られた嫉妬心からではなく、単純に炭治郎が迷惑ではないかと思っての事である。

 

「いや、大丈夫だよ……添い寝で良ければ、一緒に寝ようか?」

 

『!』

 

炭治郎は添い寝に関して肯定的に受け取ると、それが実質的に鶴の一声となった。

 

結果、布団を三つ程くっつけて炭治郎を中心に左側にひなきとにちか、右側にくいなとかなたが寄り添って寝る事となった。にちかとかなたが炭治郎の胴体に抱き着く様に寝転んでおり、ひなきとくいなは炭治郎の両腕を枕にする様に寝転がっていた。

 

輝利哉だけはこれ以上は炭治郎の迷惑になるからと、名残惜しさを押し殺して一人だけ炭治郎との添い寝に参加しなかった。

 

「炭治郎様。私の無理を聞いて頂き、ありがとうございます。」

 

冷静さを取り戻したかなたが、申し訳無さそうに炭治郎に感謝の言葉を述べた。

 

「ううん、俺も家族とこうやって固まって寝ていた頃を思い出すよ。皆、ありがとう。」

 

『!』

 

炭治郎の哀愁を感じる感謝の言葉を聞いて、ひなき達は何も言わずにただ炭治郎の身体に優しく触れる事で応えた。

 

「!……炭治郎様。」

 

「何、かなたちゃん?」

 

「「「「?」」」」

 

優しい眼差しを向けていたかなたが、何故か射抜く様な鋭い視線に変えながら炭治郎に呼び掛けた。そんなかなたの様子に、炭治郎と輝利哉達は怪訝な様子で見詰めた。

 

「小芭内様の一件もあって、聞きそびれていたのですが……その赤い痕は何なのでしょうか?」

 

「……えっ!?」

 

「「「「!!」」」」

 

かなたの一言で、輝利哉達の視線は炭治郎に注がれる事となった。一方の炭治郎は、かなたの質問に何と言えば良いのか分からなかった。

 

「……恐らくですが、胡蝶様達が口付け(キス)をして付けた痕なのでしょうね。違いますか? 炭治郎様っ。」

 

「うっ。」

 

くいながジト目でそう鋭く指摘すると、炭治郎は露骨に顔を逸らした。

 

「でしたら、一つだけ疑問があります……身体中にこの赤い痕はあるのに、何故お顔と頸には無いのですか?」

 

「それはね……顔と頸は隠せないから、しのぶさん達と話し合って其処だけは付けない様に決めているんだ。」

 

ひなきの質問を受けて、炭治郎は素直にそう答えた。

 

「そうなのですか。そう仰られますと、合点がいくと言うものです……炭治郎様。お手数をお掛けしますが、一度御身体を起こして下さいませ。」

 

「え? う、うんっ。」

 

にちかに身体を起こして欲しいと頼まれた炭治郎は、何も疑問を抱く事無くにちかの言う通りに身体を起こした。その為、にちかの思惑には気付いていない。

 

「「「「!」」」」

 

逆に輝利哉達は炭治郎とは対象的に、にちかの思惑に直ぐに気付いた。そして輝利哉を除いて、ひなき達は互いに一瞬だけ視線を交わした後に行動に出る。

 

 

 

ちゅっ❤

 

 

 

「!?」

 

ひなき達は一斉に、炭治郎の頚筋を目掛けて吸い付く様に口付け(キス)をしたのだ。炭治郎は呆気に取られて硬直状態の間にいる内に、ひなき達は一斉に炭治郎から離れた。

 

ひなき達は炭治郎から離れた後、自分達がが口付け(キス)を行った炭治郎の頚筋に視線を向ける。

 

其処には、くっきりとが口付け痕(キスマーク)が残されていた。

 

「フフッ❤」

 

「上手く行きましたっ……っ!」

 

「やったっ❤」

 

「ホッ❤」

 

ひなき達は炭治郎の頚筋に各々で付けた口付け痕(キスマーク)が残っている事実に、歓声と安堵の溜息を吐いた。

 

「えっ……なっ……あぁっ!」

 

我に返った炭治郎は、困惑した様子で自身の頚筋を撫でた。

 

「姉上達にしてやられたね? 炭治郎。」

 

其処へ何時の間にか、炭治郎の背後にまで移動していた輝利哉が炭治郎に声を掛けた。

 

「私からも一つだけ、良いかな? 聞きたい事があるんだけど……。」

 

「聞きたい事?」

 

炭治郎は何を聞いて来るだろうと、輝利哉の方に顔を振り向こうとした。しかしその前に自分の両肩に、輝利哉は炭治郎を制止する様に両手を置いた。

 

「温泉に入った時から、実は気になっていたんだ。この無数の口付け痕(キスマーク)はもう良いとして……その左肩の噛まれた痕も、しのぶ達が付けたの?」

 

『!』

 

輝利哉は炭治郎の寝間着を開けさせながら、左肩の歯型に付いて指摘した。

 

「……この噛まれた痕は、しのぶさん達の仕業じゃないよ。温泉に入った時に、無一郎君に噛まれたんだ。理由は分からないけれど……。」

 

「無一郎がっ?……フーン。」

 

輝利哉は炭治郎の噛まれた痕を凝視しながら、何故か思案していた。しかしそれも、直ぐに終わった。

 

 

 

カプリッ!

 

 

 

「いたっ!?」

 

「「「「!?」」」」

 

前触れも無く訪れた右肩に痛みを感じて、炭治郎は思わず声を上げる。急いで振り向くと、其処には口を開けたまま炭治郎から離れる輝利哉の姿があった。

 

右肩に視線を変えると、くっきりと歯形が残されていた。状況を考えれば、輝利哉が炭治郎の右肩に噛み付いた事は間違い無かった。

 

「油断大敵だよっ、炭治郎っ♪」

 

「……」

 

仕込んでいた悪戯が成功した悪戯っ子の如く、輝利哉はニヒヒと楽しそうに笑った。炭治郎は輝利哉の茶化す様な発言に、何も言う事が出来ない。そんな事よりも、炭治郎は自身を悩ませる問題に頭を抱えていた。

 

――口付け痕(これ)……どうやってしのぶさん達に誤魔化したら良いんだろう……っっ。

 

しのぶ達からは身体中に口付け痕(キスマーク)を付けられているが、顔と頚筋には付けて貰ってなどいない。

 

だからこそ、頚筋の口付け痕(キスマーク)を見れば自分達の物では無い事は一目瞭然であり、追求されるのが目に見えていた。

 

これから起こるであろう災難を想像すると、炭治郎は溜息を吐かざるを得ない。思案しても対策など思い浮かぶ筈が無いので、炭治郎は諦めて寝床に就く事しか出来なかった。

 

「……炭治郎、今日は本当にありがとう。おやすみなさい。」

 

「うん。輝利哉君も、おやすみなさい。」

 

「「「「炭治郎様、おやすみなさいませ。」」」」

 

「おやすみなさい。ひなきちゃん、にちかちゃん、くいなちゃん、かなたちゃん。」

 

炭治郎達は互いにそう声を掛けた後、漸く眠りに就いたのだった。

 

 

 

♦︎

 

 

 

男湯で思わぬ騒動に遭遇した所為か、炭治郎達は両眼を閉じてから百も数えない内に全員が深い眠りに就いた。すると其処へ突如、襖が人知れず音を立てる事無く開かれた。

 

開かれた襖からは、何故か人影の姿は一切無かった。しかしほんの僅か、本当に僅かな音だが耳を澄ませば畳を踏んだ際になる軋んだ音が聞こえる。姿こそ不可視であったが、確かに誰かが存在していた。

 

どうなの、カナヲ? 炭治郎さん達はちゃんと寝てる?

 

アオイ、大丈夫よ。ちゃんと炭治郎は寝てる……でも動かせば、炭治郎は起きると思う。そっちこそ大丈夫なの?

 

普段通り行けば、大丈夫だと思うけど……もしもの時は手伝ってっ。

 

分かった。任せてっ。

 

室内に入って来ていたのは、何とアオイとカナヲであった。炭治郎達を起こさない様に、なるべく声を小さくして話し合っていた。

 

何故アオイとカナヲがこの部屋にいるのかと言うと、実は炭治郎達の後を付けていたからだ。

 

『紙眼』を着用して炭治郎の捜索に当たっていたアオイとカナヲであったが、其処へ偶然廊下を歩いている炭治郎達を発見。迂闊に接近して炭治郎に気付かれない様に、細心の注意を払って尾行していた。

 

そして部屋の前まで辿り着いた二人は、炭治郎達が就寝に就くまで辛抱強く待っていたのである。二人の態度こそ冷静であったが、抑え込んでいる欲情から両眼はギラギラと妖しい光を輝かせていた。

 

欲情を抑えつつ無事に炭治郎達の前まで来たアオイは、懐から一枚の布を取り出していた。その布からは、薬品の匂いが感じ取れた。

 

「ん?……んっ~~っ。」

 

「「!」」

 

『紙眼』を使ってなお漏れ出す僅かな薬品の匂いを感じ取った炭治郎が、無意識に声を漏らした。

そんな炭治郎の反応に、過剰に反応するアオイとカナヲ。しかしまだ、炭治郎は起きてはいなかった。

 

「……っ!」

 

このままもたつけば炭治郎が起きると思ったアオイは、急いで薬品の付いた布を炭治郎の顔に押し当てた。

 

「んぐっ!?……んんっ!!??……~~~っっっ?!?!?」

 

炭治郎さん、ごめんなさいっ!

 

アオイは小声で炭治郎に謝罪すると、更に布を強く炭治郎に押し付けた。それから間もなく、炭治郎から呻き声が聞こえ無くなった。

 

一見すると殺人現場の様に見える、この光景だが実際は全く違う。布に付いている薬品の正体は、睡眠薬である。

 

これは炭治郎を穏便に連れて行く為に、アオイが用意した物だ。

 

これまで行って来た治療の中には、患者が暴れる者も少なくない。しのぶならば暴れて動きまくる患者であっても、注射針を正確に狙った場所に刺せるがアオイはまだそうは行かない。

 

間違った場所に注射針を刺して患者の神経等を傷付けずに済む様に、この方法が編み出されたのだ。

 

「……」

 

「……フゥ。」

 

炭治郎を再び眠らせる事に成功したアオイは、安堵の溜息を吐いた。

 

アオイ、お疲れ様……上手く行ったね。

 

えぇ、早く運び出しましょう。

 

うん。

 

アオイとカナヲは炭治郎の傍で眠っているひなき達を起こさない様に注意しつつ、炭治郎を慎重に運び出した。炭治郎が居なくなった室内には、輝利哉達の寝ている姿だけが残されていた。

 

 

 

♦︎

 

 

 

「……じゅずちゅっ❤……ちゅちゅるるっ❤……はぁんんっ❤……炭治郎ぉ❤」

 

「ちょっとっ……ちゅるるっ❤……もっと向こうに行ってっ……私が、舐められないじゃない……はむぅ❤……じゅちゅるるるっ!❤❤」

 

「……んっ?」

 

炭治郎は水音と下半身から感じる快楽に気付いて、ゆっくりと目を覚ました。頭を上げて視線を下半身に向けると、炭治郎は驚愕する。

 

「なっ!? アオイ、さんっ……それにカナヲッ!?」

 

「ちゅぅっ❤……あっ❤ 炭治郎さんっ❤」

 

「炭治郎ぉ❤……れろぉ❤……っっ❤」

 

炭治郎の視線の先には、競う様に自身の逸物に口淫(フェラチオ)をしているアオイとカナヲの姿が見えた。先刻まで輝利哉達と同じ部屋で一緒に寝ていただけに、炭治郎は現況が把握出来ず混乱するばかりであった。

 

「どうしてっ……俺は輝利哉君達と一緒に居た筈じゃ……っ。」

 

「じゅるる❤……ちゅうっ❤……すみません。輝利哉様達を起こさない様に、炭治郎さんをお連れしました。此処は禰豆子さんの一件でお借りしていた、別邸です。」

 

「!」

 

炭治郎はアオイからそう教えられると、直ぐに周囲を見渡した。部屋こそ暗くて視界では分かり辛かったが、匂いでアオイが言っている事が正しいと分かった。禰豆子達との乱交した名残が残っていたからだ。

 

「ちゅるううぅぅっ!❤……しゅきありっ!❤……はむぅっ!!❤」

 

「ああっ~~~っっ!?」

 

二人で協力して口淫(フェラチオ)をしていたが、アオイが現況の説明に為に炭治郎の逸物から口を離すと透かさずカナヲが口一杯に広げて逸物を咥えて独占した。そんなカナヲの行動に、アオイは大声を上げた。

 

「ぢゅぶぶぶっ!!❤……ひりゃにゃいっ……じゅぢゅるるっ!❤……ぢゅちゅうううぅぅっ!!❤❤」

 

「ああっ!❤……カナヲ、そんなに激しくされたら……出るっ!!」

 

 

 

ビュビュビュルルッ!!! ビュリュルルルルウウウウウウゥゥゥゥゥッッッ!!!!

 

 

 

カナヲが吸い込む様な口淫(フェラチオ)によって、炭治郎は生じた快楽に耐え切れず射精した。

 

「んぐむぅっ!!❤……ゴクッ!!❤❤……ゴクゴクゴクッ!!!❤❤」

 

口内を埋め尽くす精液の濁流に多少咽ながらも、カナヲは嬉しそうにその白濁の溶岩を体内へと流し込んで行った。

 

「うぅっ、カナヲの馬鹿ぁ……っっ。」

 

アオイはカナヲに抜け駆けされた為か、涙腺に悔し涙を貯めながら炭治郎の精液を飲み干すカナヲを睨み付けていた。

 

「ゴクッ!❤……むぐっ!……んんんっっ!!❤」

 

精液を飲んでいたカナヲだったが、ある程度飲み干すと何故か両頬に精液を貯め込み始めた。

 

「……っ?」

 

「カナヲ?」

 

そんなカナヲの行動を見て、炭治郎とアオイは首を傾げる。しかしカナヲは疑問に思う二人を他所に、カナヲは精液を両頬に貯め込んで行った。炭治郎の射精が終わった頃には、カナヲの両頬は餌を咥えている栗鼠(リス)の如く膨れていた。

 

「……ちゅっ❤」

 

「んんんっ!!?」

 

「!?」

 

カナヲは両頬に炭治郎の濃厚な精液を貯め込んだまま、何とアオイに口付け(キス)を行ったのである。

 

「……んんっ……んんっ……んっ。」

 

「「!!」」

 

アオイに口付け(キス)を行ったカナヲは、両頬に貯め込んでいた精液をアオイの口内へ流し込んで行った。その姿は丸で幼い雛に飲み込んだ餌を、口移しで与える鳩の如き姿であった。

 

「っ!?……ゴクッ!?……ゴクッ……ゴクゴクッ!❤……っっ❤」

 

カナヲの行動に戸惑っていたアオイであったが、自身の口内に愛する炭治郎の味を感じ取ると大人しくカナヲから与えられる白濁の溶岩を飲み干して行った。

 

「ゴクッ!❤……はぁはぁっ❤……カナヲ、貴女……っ。」

 

「えへへっ❤……お裾分けよ、アオイ。」

 

「!」

 

カナヲが達成感に満ちた様子でアオイにそういうと、アオイはカナヲの気遣いに感激した。

 

「……そうね。折角しのぶ様も禰豆子さんも出し抜いたのだもの……。」

 

「争っている暇なんて無い。そうだよね?」

 

「うんっ。」

 

カナヲの確認にアオイが肯定すると、二人は同時に寝間着を脱いで全裸になった。

 

「炭治郎っ❤」

 

「炭治郎さんっ❤」

 

「「いっぱい愛し合おうねっ!!❤❤」」

 

アオイとカナヲは口を揃えて異口同音にそう言うと、満面の笑みを浮かべてから二人仲良く抱き着いた。




お待たせ致しました。

自身の感情に区切りを付ける事が出来た小芭内でした。と言っても、かなり限り限りですけどね。異論は甘んじて受け付けます。

そしておませな産屋敷家子女の皆さんでした。

最後に今作は本編更新でのR作品なのに、全体の一割未満の描写しかない……しかも前戯のみと言うジャブを食らわせた程度の内容で申し訳ございません。

次回作は本番まで行きますので、どうか御了承下さいませ。
次回作の更新は11/11(木)になります。どうかよろしくお願い致します。
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