羽丘女子学園の昼休み。
氷川日菜は、食堂で昼食をつついていた。どこかぼんやりと、上の空で。
一緒にテーブルを囲んでいる大和麻弥も口にご飯を運び、いつもと違う様子に眉を寄せた。
「どうしたんですか、日菜さん。なんだか今日はボーッとしてますけれど」
「…………んー」
「本当にどうしちゃったんですか?」
天井の一点を見つめて、固まっている。なにもないだろうと思いつつも視線を追いかけた。食堂の隅っこ。天井の角。わずかにだがヒビが入っていた。人工物である以上、どうしても劣化するし老朽化もする。
その何でもない天井の小さなヒビをジッと、日菜は猫のように見つめていた。
「……あのー、日菜さん? 聞いてますか?」
「…………」
氷川日菜が思いを馳せるのは――あの夜のこと。
双子の邪神。ティマイオスとクリティアスと死闘を繰り広げていた晩のこと。
オカルトハンターを名乗り、今は霊能学講師として花咲川女子学園と兼業で足を運んでいるエヌラスと名乗る魔術師のことをぼんやりと考えていた。
それだけではない。
全国で発生した、大規模な刀剣盗難事件。今はすっかり解決しているが、それは付喪神と化した刀剣達が血で血を洗う怪事件だった。
それを人知れず解決に導いたのも、やはりエヌラスだ。
ぼんやりと、あの人のことを考える。
「……ねー、麻弥ちゃん」
「はい? どうしました?」
「エヌラスさんのこと好き?」
「ぶっふぁ!?」
想定外の質問に、思わずご飯粒が吹き出される。むせて咳き込む麻弥に、日菜も目を丸くしていた。
「げっほげほ! と、突然なんですか!?」
「んー……なんとなく?」
「それにしては随分と思い切りアクセル踏み込んでますけど……」
麻弥からしたら、日菜の突拍子もない行動はいつものことなので慣れている。しかし、今回はどうにも様子がおかしい。とはいえ、聞かれた以上は答えなければ。
「エヌラスさん、ですかぁ……ジブンは、まぁ……嫌いじゃありませんね。好きかどうかと聞かれると、そうですね……どちらかと言えば好き、という感じで」
「ふーん」
「日菜さんはどうなんですか?」
「…………んー、それがね。ちょっとわかんないの」
「はぁ……好きじゃないですか、そのわからないことは」
氷川日菜は天才の部類に入る。アイドルバンド『Pastel*Palettes』のギターとしても、新人アイドルとしても活躍中のみならず、羽丘女子学園で生徒会長も務めている。その思考と感性はちょっと常人には理解し難いものであったりするが――麻弥は口周りを拭いて、眼鏡を直した。
「ちょっと意外です。日菜さんが恋の悩みを抱えるなんて」
「……? あたし、恋の悩みなんてしてるの?」
「え、違うんですか。異性に悩んでいるからてっきりそうだと思ってたんですけれど」
「恋?」
年頃の乙女のように、人並みに悩んだりもすることに逆に感心してしまっている。
「……恋。恋かぁ……そういうものなのかな?」
「だと、思いますけれど……? ジブンも経験が無いのでアドバイスは難しいですね」
「んー…………」
お弁当を箸でつつきながら、日菜はテーブルに頬杖をついて唸った。
今、自分があの人に対して抱いているこの気持を恋と定義するのなら。普段から氷川紗夜に抱いているこの気持ちも恋と呼べるものなのだろうか?
でもおねーちゃんとは姉妹だし。血が繋がっている家族だし。身内に恋をするのが世間的にマイノリティなのは当然にしても、かといって異性に対して抱くこの悩みが思春期特有の恋の病だとして、症状であるなら解消手段が必ずあるはずだ。一番は、相手に気持ちを打ち明けることだがそもそもこの抱えているモヤモヤがわからない。
悩むばかりで箸が進んでいない日菜を見かねて、麻弥も一緒に考える。
「日菜さんらしく、ぶつけてみたらどうでしょうか?」
「あたしらしく? ぶつける?」
「はい。あのエヌラスさんですし、きっと大丈夫です」
どれだけ打ちのめされても、立ち上がる。
不撓不屈のアヴェンジャー。絶対不諦のストレンジャー。
魔術師と呼ぶにはあまりに武闘派で、武人と呼ぶにはあまりに俗っぽく、教師と呼ぶにはあまりに反社会的で。
まるで野に放たれた獣のように生きている。それは、現代社会で生きていくにはあまりに不適合で。だが、怪異を相手にするのに合理的に過ぎる。
無法者を相手にする為に、自らも道を外れて戦うことを選んだ。選んで、捨てて。選んで捨てて。膨大な取捨選択で自分を削ぎ落とした結果――あの人はあんなにも人から外れてしまった。
そんな風にした、まだ見ぬあの人の師匠を許さない。許せないと、本気で思う。
きっと――エヌラスさんは、自分の“幸福”すらも捨てて生きてきた。
そんな人に、ぶつかっても大丈夫だろうか?
あたしのモヤモヤをぶつけて、本当にいいのだろうか?
どんな困難も試練も地獄もなんとかしてきた人に。
不意に、自分の唇に触れる。
一度は自分の意思で重ねた感触を思い出す。その度に、胸の奥がとても温かくなる。身体の芯から火照ってしまう。この疼きを抱えていると、あの人の顔が目に浮かぶ。
そんなことを考えていると、にわかに食堂が騒がしくなってきた。なんの騒ぎかと、日菜と麻弥だけでなく他の生徒たちも視線を向けると、そこにはスーツを着崩したエヌラスが肩で息をしていた。しかも汗だくで。
初夏に差し掛かりつつあるこの時期に長袖は少し辛いものだろうに。それでも、袖の下。服の下の素肌がどれほど傷だらけになっているのかを知っているのは日菜と麻弥だけだ。
どんなに傷ついても立ち上がる。それは、誰かが負うはずだった傷跡だらけで。
「ゼェー、ゼェー……! ま、間に合ったぁ……!!」
シャツは片方しか入れてないし、ボタンは掛け違えているし、ネクタイは首に掛けているだけだし、上着は小脇に抱えている。袖で顔の汗を拭っている姿を見るだけで、日菜は身体の内側から今にも飛び出しそうな衝動を抑えるのに精一杯だ。
髪は乱れ放題だし、荒い呼吸も深呼吸を繰り返すとあっという間に整えられている。
「――――」
硬直する日菜に代わって、麻弥が手を振った。すると、それにすぐ気がついたのかエヌラスが人混みを避けて歩み寄ってくる。
「おー、麻弥。日菜も一緒か」
「どうしたんですか、そんなに汗だくになって。まるで朝帰りみたいな」
「一晩中化物の相手して、帰ってきたのが今朝。起きたのが十分前で急いで支度してこっちに来たから当然だ。あっちぃ~……」
「タオルとか、お持ちではないんですか?」
「持ってくる余裕があるとお思いか?」
下着を扇いで身体をクールダウンさせている様子を、日菜がじっと見つめていた。
人一倍嗅覚が良いだけに、それが仇となっている。
普段から服用しているドラッグシガーに、高濃度蜂蜜酒の香り。直接的ではなくても、間接的に吸引するだけでも個人差はあるとはいえ作用する。それが爽快な香水の匂いと錯覚させられてしまう。
日菜にとっては、それだけでも十分凶器だというのに。この人は無自覚で大人の色気を振りまく。どこか無防備で、顔立ちとは裏腹に親しみやすく、体格の良さとどこか浮世離れている。外面だけで惚れ込む生徒もチラホラと。しかし、今井リサの彼氏という根も葉もない噂のおかげで不用意に声を掛けるものはいなかった。
「…………」
顎の汗を拭う姿に、思わず日菜が生唾を飲み込む。
「あー、腹減った……なんか買ってくる」
「もうほとんど売り切れてますよ」
「食えるんだったら生ゴミでいいわもう」
「それは人としてあまりにどうかと!?」
「汗もすごいよ?」
「そりゃー……寝苦しくてな」
「はい、ハンカチ」
「いいのか?」
「うん。どうぞ」
ポケットからハンカチを差し出すと、それを受け取ったエヌラスが顔の汗を拭った。
「明日洗って返す」
「えー? エヌラスさん洗濯できるの?」
「俺をバカにし過ぎにもほどがある。最近の洗濯機は自動でやってくれるから俺のような一人暮らし初心者でもなんとかなるんだぞ」
「小学生でも出来ますよ」
「俺は小学生以下だ……」
「――そんなことより。エヌラスさん、今日の放課後空いてる? 天文部の部室に来てほしいんだけど」
「唐突だな。霊能学終わったら空いてるけどよ」
「あ、ハンカチ返してね?」
「汗拭いたばっかだぞ」
「エヌラスさん忘れそうだもん。忙しそうだし」
「うーむ、否定できない。お前がそこまで言うなら返すが……」
汗を拭いたばかりのハンカチを遠慮がちにエヌラスが返すと、日菜は特に気にした様子もなく受け取ってポケットに入れている。
「じゃー、待ってるね♪」
「え? あぁ……おう……」
「いただきまーすっ」
すっかり上機嫌になってお弁当箱の中身をひょいひょいと口の中に放っていく日菜を呆然と見つめる麻弥とエヌラス。小腹が鳴る。
「……無駄な抵抗だと思うが、なんか買ってくる」
結果、全滅。エヌラスが昼食にありつけることはなかった。
――放課後。
本日の霊能学の授業に日菜の姿がなかったことに疑問を抱きながらも、襟を正したエヌラスは“変人の巣窟”と悪名高い天文部部室へ足を向ける。
階段を登り、羽丘女子学園の一角にその部室はあった。
ハナジョでは天文部顧問という体で面倒を押しつけられている気がするものの、そもそも弦巻こころがそれほど活動的ではないことが幸いしている。
(うーむ。天文部の部室に来るのは今日が初めてだが……)
確か。部員は日菜だけだったはずだ。
……氷川日菜と、二人きり。そのことに身の危険を覚えるのは経験上仕方のないことだが、厳しく注意しているのできっと大丈夫だろう。
エヌラスが扉をノックしようとして、中の物音に耳を澄ませる。
――人の気配がある。間違いなく日菜だろう。衣類の擦れる音に混じって、なにか吐息のようなものが聞こえる。
聞き耳を立てようかとも思ったが、人気のない場所とはいえそれは気が引けた。非常時ならいざ知らず、何の変哲もない校舎でそんなことしたら目立つだけだ。
それでもとりあえず扉を軽くノックしてみる。中で何か慌ただしい音が聞こえてきた。
「あー……何か準備中だったか、日菜?」
「そ、そんなことないから入ってきて大丈夫!」
「?」
バタバタと中で日菜が何か暴れている。不安を感じながらエヌラスが扉を開けた。
そこには、荒く息を繰り返しながら乱れた制服を整えている日菜の姿。シャツのボタンは開いているし、ネクタイも締めていない。手にはハンカチ。
「なにしてたんだ?」
「えっと……変なことはしてないよ?」
「……ならまずはボタンを留めろ」
エヌラスは入り口に立ったまま動かない。扉を締めてから、この部室に他の人間の気配がないことを確認していた。
「他に誰か来たか?」
「ううん? どうして?」
「……日菜。正直に答えてくれ。お前、本当になにしてたんだ?」
その質問に答えず立ち上がると、部室の扉の内鍵を締める。
「…………」
「日菜――」
振り向いて、突然身体を押された。この程度耐えられるが、全身で飛び込んでくるものだからエヌラスは咄嗟に抱きとめて尻もちをつく形で受け止める。
シャツを掴み、胸板に頭を埋めて深く呼吸を繰り返す日菜の様子がおかしいことにすぐ気がついた。肩に手を置いて、やんわりと離そうとするが――。
「むー!」
「…………」
背中に手を回して強く抱きついてきた。手首をしっかりとホールドする辺り、強い拒否反応を示している。
別に抱きつかれるのが嫌なわけではない。ただ、なぜ急にこんなことをするのか理解が追いつかない。それを問いただそうにも、日菜は顔を埋めたまま離れようとしてくれなかった。
「……なにかあったのか?」
できるだけ優しい声色で頭を撫でながら尋ねる。それに、首を小さく横に振っていた。なにもなかったらこんなことしないと思うのだが――部室を見渡して、エヌラスは何か見慣れないものを見つけた。いや、見慣れないというよりはこの天文部の部室において不釣り合い、というか似つかわしくないというのが正しい。
星図や書籍が乱雑に積み重ねられて放置されている部室。
そこに脱ぎ捨てられた、女性物の下着。それは本来、隠すべきものを隠しているはずだ。薄緑色の可憐な肌着が、あろうことか部室に放置されているではないか。これはどういうことか。そしてあれは一体誰のものなのか。
「…………日菜。バカなことを聞くが、お前パンツ穿いてるか?」
「、――――」
ほんの、僅かな一瞬。日菜が身体を強張らせた。エヌラスが手を伸ばしてスカートの上からお尻を触れば、丸く柔らかな曲線を描いている。あるべき感触がない。下着の膨らみがそこにはなかった。
「日、」
「――エヌラスさんが、悪いんだからね」
「な?」
手を掴まれて、ダクトテープで両腕を拘束される。見れば、自分のすぐ脇には日菜のバッグが落ちていた。恐らく、ここまで想定していたのだろう――。
日菜がスカートを持ち上げる。口にはハンカチを咥えて。
隠されているはずの秘部は、濡れていた。下着は着けておらず、すぐそこに放置されている。だが自分を拘束する理由がわからない。いや、引き剥がそうと思えばすぐにでもできるが、それは日菜もわかっているはずだ。
「あたし、エヌラスさんのせいでこんな風になっちゃったんだから」
「――その、日菜? おまえさっき、何してたんだ……?」
「……いたいけな女の子に言わせるつもり? もー、エヌラスさんってば変態なんだから……見て、分かるでしょ?」
口からハンカチを離して、深くニオイを吸い込む。まるで麻薬を吸引したような惚けた顔を見せる日菜が小さく息を吐き出す。
「エヌラスさんので、
「……」
「だって嗅いでるとあたしのここ、すっごくムズムズして……きゅんって、しちゃうんだよ? だから、ちょっとだけ、ちょっとだけって思ってたんだけど我慢できなくなっちゃって」
身体を擦り寄せながら日菜の顔が迫る。
紗夜に、とても良く似た髪と瞳で。瓜二つの双子。だが自分の目の前にいるのは紛れもなく、パスパレの一人だ。氷川日菜であり、決して双子の姉などではない。
唇が重ねられる。短く、何度も触れ合う柔らかな感触を貪欲に求める日菜が舌を入れてきた。首に手を回してしっかりとエヌラスの頭を捉えながら。
「だから、ね――責任とってくれるよね? あたしのこと、おかしくしちゃったの、全部エヌラスさんのせいなんだから」
「――ここ、学校だぞ?」
「うん、知ってるよ? でも大丈夫、部室の方なんて誰も来ないから」
「パスパレのレッスンは」
「今日は体調不良ってことで、麻弥ちゃんに言ってあるよ?」
「お前、生徒会長だろ……」
「それはそれ、これはこれ」
「……風紀の乱れとか気になさらない?」
「フェロモンの塊みたいなエヌラスさんが言っていいの?」
ぐぅの音も出ない。日本の平和ボケが感染った。しかし、そんなことを考えている間にも日菜の手はズボンへ伸びている。その膨らみを優しく擦ると、小悪魔のように微笑む。
「それに、こっちも期待してたみたいだけど?」
「ここまでされたら、嫌でもそうなる」
「……嫌なの?」
「嫌じゃない……」
「じゃあいいよね♪ チャック下ろすね」
「ていうか、日菜。お前、ゴムとか」
「持ってないけど、その時はその時♪」
もーだめだ手がつけられねぇ。言い終わるや否や、ズボンのファスナーを下ろしてパンツから息子と対面した日菜が硬直する。直に観察する陰茎を見て、生唾を飲み込み、息を呑んでいた。
「……こんな風になるんだ。ふ~ん……にぎにぎ」
「ん……あんま、乱暴にするなよ」
「痛かったら、言ってね? わ、あつい……ここは柔らかいんだ。えいっ」
竿の方から玉の方まで、日菜の柔らかくて温かい手が触れていく。形を覚えるような手つきで物怖じしない。好奇心のままに根本から先端まで指先でなぞっていくと、膨らんだ亀頭にグッと顔を近づけた。
「ここからびゅーって出るんだよね?」
「……そうですね」
「なんで敬語なの?」
「いや、なんか手慣れてるなと思って。経験ない、よな?」
「無いよ? 自分でシたのも、今日が初めて。でも驚いちゃった。こんな風に、身体の奥がムズムズしちゃうなんて。それってあたしがエヌラスさんのこと欲しがってる証拠だよね?」
「まぁ……そうなるな」
「……あむっ」
何を思ったのか、日菜が突然エヌラスの陰茎に大きく口を開けてソフトクリームでも食べるように口に咥える。その口内で、舌を使って丹念に舐め回していた。
「ん……! んむぅ……ぷはっ、おっきくて入んないや」
「……驚かすな」
「ね、エヌラスさん。挿れてもいい? あたし、ずっと一人でしてたから我慢できなくって」
「やり方、わかるのか?」
「子供じゃないんだから。こうして……こっちでしょ?」
スカートを片手で持ち上げながら、自分の秘部と先端をキスさせながら日菜が腰を前後にゆるく動かしている。唾液と愛液が混ざり合ってぴちゃぴちゃと卑猥な音を立てていた。
「じゃあ……えいっ――」
日菜が腰を下ろす。しかし、きつく閉じられた入り口はその侵入を阻むかのように滑らせていた。擦れる性器同士の熱さに日菜の口から甘い声が漏れる。
「あ、れ? もういっかい、いい?」
「ああ」
「ん……今度こそ――こうっ」
再び腰を上げて、勢いよく下ろすが残念なことに挿入は果たせなかった。焦らされるような感覚に日菜の目尻に涙が溜まる。それを見かねて、エヌラスが体勢を整えた。
両手首をダクトテープでぐるぐる巻にされて拘束されたままだが、足腰は自由に使える。それでも日菜の身体を下から突き上げる形になるが、位置を調整していた。
「日菜。ほら、次は俺もサポートするからもう一回」
「――うん。えっと、こうでいいの?」
「いや、もっと下の方。そう、そのまま」
陰茎を手で支え、日菜が入り口にあてがう。足を広げて姿勢を維持していると、まるでねだるように腰を上下させる。
「はや、くぅ……」
「じゃあ、そのまま腰を下ろして……キツイと思うが、少し我慢してくれよ」
「んっ♪」
頬に笑みを浮かべて、腰を少しずつ下ろしていく。膣口が先端に吸い付いてくると、エヌラスが腰を浮かせて挿入させる。その未体験の感触に日菜は驚いて身体を震わせた。だが腰を逃さずにそのまま更に腰を落としていく。先端が完全に挿入された状態から、深く突き上げていくと背中を震わせてぺたんと座り込んでしまった。
陰茎を包む、熱いほどの温かさ。その中では肉がうねり、異物の形を覚えようとヒダが一つ一つ絡みついてきていた。まるで名器のような感触に思わずエヌラスも腰が浮つく。
「エヌラス、さ――いま、動いちゃ……や……!」
「悪い……日菜の中、気持ちよくて……」
「ほん、と? あたしの中、気持ちいーい?」
「ああ……ほんとに。このまま動かなくてもいいくらいだ」
ジットリと熱を帯びてねだってくる膣の艶めかしさと、日菜の涙目で見つめてくる紅潮した顔にエヌラスも我を忘れそうになる。すぐにでもこの肢体を味わい尽くしたい。だが相手は天才とはいえ初心な女子高生だ。ゆっくりと慣らしていかなければ、変な癖を覚えられても困る。
「……、ちょっとずつでいいから、動いてくれるか?」
「うん……」
身体を預けて、日菜が腰を浮かせた。しゃぶりついて離さない膣がすぼみ、陰茎から精液を絞り取ろうとしている。その膣内が擦れる感触に耐えかねて腰を下ろせば、再び中を満たす熱い感触に声にならない声が口腔から溢れた。
「ん、ぁッ――♪ こ、れ……すご、ひ……かも……!」
最初はぎこちなく、手探り状態で腰をゆっくり上下させていた日菜だが、飲み込みが早い。自分が気持ちいい場所を弄るようにして、段々と動きも慣れてきていた。
「んっ、んっ……あっ♪ うん、あたし、ココ、好き♪」
動きもリズミカルになってきている。腰を打ちつける度に、熱い吐息をエヌラスの耳に吹きかけていた。囁くような声に、鼓膜がくすぐられる。
根本まで押しつけてから、日菜はしゃぶるような腰つきでゆっくりと前後させていた。
「んッ。ふっ――! ふぅ。あ、ふ……! この辺、ぐりぐりってするとキュンキュンって、きてぇ! エヌラスさん、あたし、これ――なんか、おかしくなっちゃう……!」
「く、っ……!」
「――あはっ♪ エヌラスさん、なんか、かわいい顔してる」
「……かわいいって、どんな?」
「ん~っとねぇ……ワンちゃんみたいな顔。お預けされて、切ない顔してる」
「…………」
エヌラスが何か言いたげに目で訴えるが、それに日菜は背筋をゾクゾクと背徳感でなぞられて震える。自分の口から垂れるよだれを指で掬いながら、相手の口に押し込む。
「ね、しゃぶって?」
「……ん」
不満そうに眉をつりあげながらも、唇に当てられた指に舌を這わせて甘く噛みつく。爪の隙間まで舐め回すような舌遣いにますます興奮を覚えていた。
その気になれば、いつだって抜け出せるのに。
その気になれば、押し倒して乱暴にすることだってできるのに。
今の状況を甘んじて受け入れているのが、不思議で仕方ない。だから、おもしろい。
この人はいつだってあたしを愉しませてくれる。尽きない興味がどんどん溢れてくる。
もっと知りたい、もっともっと知りたい。もっと、あたしだけに秘密を見せてほしい。
「ん、はぁ……日菜。もう、いいか?」
「まだ。もっと」
「まったく……はむ」
「~~」
赤子のように人差し指を舐めて、しゃぶる姿に性的興奮が刺激される。自分に言われるがままに、なすがままに振る舞う。
征服感に支配されて、日菜がますます身を乗り出す。
腰が止まらない。身体が火照って、疼いて堪らない。もっと欲しがってしまう。
結合部から溢れ出す愛液も、床に垂れて汚すシミも、制服のスカートも、気にならないくらい貪欲に求めてやまなかった。
唇を塞ぎ、舌を挿れて口内をなぶるように舐める。唾液が溢れて、垂れていく。息苦しさも、脳を溶かすような甘い誘惑も、蠱惑的な香りも何もかもが愛おしくて堪らない。
膣に包まれていた竿が熱く膨らむ。今にも爆発しそうなほど堪えているモノを、注ぎ込まれたくて我慢の限界だった。
日菜の腰使いがますます激しさを増す。それにエヌラスも射精を促されて、出すのは時間の問題だった。最初のたどたどしい腰の動きが嘘のように緩急をつけて日菜が腰を振る。
「日菜――、そろそろ、限界だ……」
「うん、うんっ。あたしも、早く欲しいっ。エヌラスさん、奥の方で、いっぱい……!」
「そんな、ねだらなくても――!」
「んぅ、あっ!? ん、ぅ~~……!!」
身震いする日菜の膣内で陰茎が跳ねた。吐き出される白濁液の熱さに満たされていく下腹部の奥が、重く沈みこんでいく。身体が貪欲に精液を求めている。搾り取るような膣の動きにエヌラスの射精が治まる気配はなかった。震える度に注がれる熱さに日菜が身体を委ねてくる。
「まだ、出て……はぁ、ふぅ……ん……ふあ、ぁ……!」
「っ……。は、ぁ……やば……溜まってたからな……」
ぐったりとした様子で深く呼吸を繰り返す相手に、エヌラスは頭を擦り寄せた。首に手を回して抱きついてきたかと思うと、頬ずりをしてくる。
「んぅ……ふふ……♪ あたし、なんか今ものすっごく幸せ……」
「……――――すぅ」
「?」
一呼吸。エヌラスが気息を整えて――手首を拘束して自由を奪っていたダクトテープを引き千切った。丹田に込めた気を発して、日菜の目の前で手首を擦る。
今度はすっかり縮こまる子犬のように身体を震わせる姿にエヌラスは優しく抱きしめた。
「……怒ってないの?」
「怒られると思ったのか?」
「うん。だっていっつもエヌラスさんって怒ってばかりだし」
「んー」
「ひゃ……!?」
優位性を保っていた日菜だが、自由を取り戻されて、こうなってはもう形無しである。
エヌラスに押し倒されて、シャツのボタンを外されていく。素肌を晒し、ブラもずらされた。一気に顔が熱くなるのがわかる。隠そうとして、手首を押さえつけられた。それも片手で。空いているもう片手でへそからみぞおちと撫でられて、くすぐったさに日菜が身体をよがらせる。
「ん、ぅぅ~~……」
「もう、こうなったら楽しんだもん勝ちだし? 怒り通り越して呆れてる」
「ん、あはは、エヌラスさん、おっぱい、くすぐったいってばぁ」
「日菜。まだ余裕ありそうか?」
「――――うんっ。もっと……しよ?」
「じゃ、今度は俺が動く番な」
「ふ、あ! あんま、激しいのダメ――」
「さっきまで人の上で腰振ってた生徒会長がなーにかわいいこと言ってんだ。ここ責められるの好きなんだろ? たっぷりイジメてやるから覚悟しろ、日菜」
「ん、ぅ――♪ そこ、好きだけどぉ……! んんぅ、あっん――!」
――傾いていた夕陽から、すっかり日は落ちて。
夜空に星が瞬いている。下校時刻はとっくに過ぎており、校舎に残っている生徒はいない。
天文部の部室を除いては。
「んっ……ふ、ぁ……! はぷっ、んくっ……ん、ぅ……! ぷあ……♪」
喉まで咥えていた陰茎から口を離して、日菜は嬉しそうな顔で息を吸い込んでいた。
すっかり乱れきった制服はシワだらけになり、胸元にまで精液がこぼれ落ちている。手の汚れを舐め取りながら、エヌラスの顔を上目遣いで見つめる日菜は何度目かになる挿入を果たした。
「お、い……まだやるのか? 何回目だ、これで」
「んっ! とぉ……五回? だって、エヌラスさん全然満足してくれないし
「一晩中付き合っても足りないくらいだっつうの……! これ、最後の一回だからな」
「えー? あたしまだし足りないのに」
「お前も大概だな……――日菜」
エヌラスが不意に、唇に指を当てる。それを何かと勘違いしたのか、日菜がしゃぶり始めた。しかし、すぐに手で口を塞いだ。身動きを封じるように抱きしめて、耳元で囁く。
「……見回りの先生だろうな、足音が近づいてきてる。音を立てるなよ」
「…………」
「……そこでなーんで期待したような視線をするかなーこの天才美少女ちゃんは?」
小声で話している合間にも、廊下に人の気配が近づいてきた。懐中電灯の光が部室に差し込むが、すぐに引き返していく。その間にも日菜に挿入された陰茎は窮屈な肉壺に収まったままで、身をよじるだけで吸い上げられるような感触に襲われた。相手の顔を見れば、甘くトロけたような顔をしている。
「エヌラスさん」
「なんだよ……」
「なんか、これ……無理やりされてるみたいで、すごく興奮しちゃう♡」
「……前言撤回。変態美少女に訂正だ」
口を手で塞ぎながら、少しだけ乱暴な腰使いで日菜を攻めると声を我慢しながらも全身を小刻みに痙攣させて悦んでいた。その勢いのままに、何度目かになる膣内射精を終えると身体を投げ出す。引き抜いてから、白く染まった陰茎を顔に近づけると自ら口を開けて舐め回していた。
「ん……すっかり、口でも慣れたな」
「らって……ん……こうひたら、エヌラスさん……ちゅぱっ……嬉しそうな顔するし。あたしもえっちな気分でむんむんしちゃうから――」
「ハイ終わり。ほら、片付けて。服整えて。先生に見つからないように帰るぞ」
「え~……? もぉ……?」
「……別に今日っきりってわけじゃないんだから」
「はぁい」
愛液と精液が混ざった液体でずぶ濡れの内股を拭いて、日菜が制服を整える。
「……あ」
「どうした?」
「ん、どうしよっかな……?」
「何か用事でも思い出したのか?」
「ううん、違うの。その、ね……溢れて垂れてきちゃうの、これどうしよう」
「…………いいからパンツ穿きなさい」
「なにかで栓した方がいいのかな?」
「いいからおパンツ穿きなさい」
出しすぎたのは認めるが。
エヌラスと日菜は宿直の教師に見つからないように羽丘女子学園を後にした。天文部の部室もきちんと掃除して。
夜の街を二人で歩く。汗ばみ、火照った身体に夜風が心地よい。
腕を組み、笑顔で身体を寄せてくる日菜の顔を直視できなかった。そんなにも幸せそうな顔をされると少し受け止めきれない。
「~♪ ん、エヌラスさんどうかしたの?」
「どうもこうもあるか。お前、なんであんなことしたんだ。いや、乗り気だった俺も悪いんだけどよ……」
「んー、なんでって。エヌラスさんのことが好きだったからだけど?」
「……あー、そう」
「ね、エヌラスさん」
「今度はなんだ」
「付き合わない?」
「…………日菜」
「だめ?」
上目遣いで尋ねてくる日菜の顔を見つめながら、エヌラスは呆れて頭を軽く手刀で叩く。
「あう」
「順番が、しっちゃかめっちゃかだ」
「う~。それで」
「え?」
「……あたしの恋人、嫌?」
「…………困ったことに、断る材料は手元に沢山ある」
「――――そ、っか」
「……材料はあ・る・が、俺は料理が壊滅的に出来ない男なので。断れないんだなコレが」
「…………いいの?」
「断ってい「それはダメ!」――いのか、って聞く前にダメ出しするなよ」
俯いていた顔を上げ、組んでいた腕にますます強くしがみついてくると月も眩むほどの笑顔を見せていた。
「……るんっ♪ってきたのか?」
「うんっ! 今まで感じたことないくらい、るるるんっ♪な気持ち! エヌラスさん――!」
「今度はどうした」
「子供できちゃったら、結婚してね」
「だーからお前は順番が滅茶苦茶なんだよ」
「? あたし、安全日なんて一言も言ってないよ?」
「…………」
「なのに、あんなにたっくさん射精されちゃってたら……ね☆」
エヌラスは天を仰ぐ。
「日菜」
「なーに?」
「今日は月が綺麗だな……」
「うんっ!」
俺はこの先、氷川日菜に一生頭が上がらず振り回される生活が待ち受けているのだろうか?
そう考えるだけで、自分の人生を軽々と棒きれのように振るう天才美少女が末恐ろしくてたまらなかった。だが――そんな日々も悪くないのだろうとも思う。
「やっぱり二人は欲しいかなー♪ あ、でもそうなったらパスパレもしばらくお休みかな? それにおねーちゃんやおかーさん達に紹介もしないといけないし。つぐちゃん達も招待しないとだよね」
「もう既に俺の命綱を握っているも同然じゃねぇかお前……」
どうやらこの先、一生退屈することはなさそうだ。それだけは、お互いに確信があった。
繋いだ手が手放したくないほど、こんなにも温かくて心地よい。
――後日。
「あ、日菜さん。エヌラスさんとはどうでしたか?」
「麻弥ちゃんのアドバイスのおかげで上手くいったよ! 今度誘ってあげるね!」
「それはよかったです。…………なんて? なにに?」
「今度のお休み、空けといてねー」
「ちょっと日菜さん!? なんですか!? ジブンを何に誘うつもりなんですか!?」
「大丈夫! あたしからの御礼だから遠慮せず受け取ってね!」
「なにを渡されるんですか!?」
そこは当日のお楽しみ。そして麻弥の不安はどこ吹く風と日菜はいつもより明るい笑顔を見せて羽丘女子学園の校門を駆け抜けていた。