※この作品はR-18です。

獣・獣人短編集   作:神座(カムクラ)

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基本短編です。迷ったら最新作(1番下)か1作目!
1.狐に婿入り(狐獣人♀×狼獣人♂)


 

 山の麓にある、街とも呼べるくらい栄えた里を治めているのは由緒ある白狐獣人の一族。雄の狼獣人の私は訳あってその内のある白狐獣人夫婦と娘1人の家族に仕えている。 

 

 私が働き始めたのは10年ほど前、恐らく7、8歳くらいの頃だ。その頃から家事全般に加え夫婦の娘の身の回りの世話を主としていた。

 

 この里の獣人は15歳で結婚ができるようになる。そして今日、その娘が15歳の誕生日を向かえたのだが。

 

 

 「お、お嬢様…困ります……」

 

 

 「そんなこと言って、大きくなってきてるけど?」

 

 

 夕食の数時間後、部屋に呼び出されたと思ったらいきなり抱きついてきて股間を揉んでくる始末である。まだ大人ではないとはいえ十分雌としての魅力がある彼女に迫られては交際経験がない私の体はすぐに反応してしまう。

 

 

 「ずっとうちで働いてくれて、私の雑用もしてくれて、そのお礼よ。あなたも雄ならこういうことしたいんでしょ?」 

 

 

 「ちょ……」

 

 

 「労ってあげないと…ねぇ?」

 

 

 ぐっと顔を寄せて耳元で話されると全身の毛が逆立つ。純白の手が暗い赤に黒毛混じりの私の体を撫でた。

 

 

  

 

 

 ◯◯◯

 

 

 

 

 

 母親は灰色の狼獣人、父親は不明のとても裕福とはいえない家に私は生まれた。生きることに困ることはあまりなかったが、私が生まれ、弟二人が生まれたときは学校に行く金など何処にもなかった。

 

 普通の人が学校に行く歳を少し過ぎた頃、家にある小さな畑での仕事を終えて遊んでいたときのことだった。

 

 

 「ねぇねぇルイ、私も今度から学校に行くの!」

 

 

 嬉々として話すのは幼い白狐獣人。天真爛漫で雄顔負けの活発さで真っ白な体が泥で真っ黒になることも度々あり、その割に次の日になると毛並みは元通り艶やかであることから家族にとても愛されてることが分かる。

 

 

 「ミサ…僕は学校行ってないんだよ。」

 

 

 「あれ?そうなの?」

 

 

 「お金がないからね。ほら、この間弟たちも産まれて僕しか畑に出られないし、まだ働けないし……」

 

 

 一転、彼女は残念そうな顔つきになる。

 

 

 「お金……お金!」

 

 

 彼女はパッと顔を明るくした。

 

 

 「私の家で働けば良いじゃん!」

 

 

 「えっ」

 

 

 「パパが、おてつだいさんもう一人欲しいっていってた!」

 

 

 要するに召し使いのとこだ。確かに裕福で地位もある彼女の家に雇われればそれなりのお金が入るだろう。しかし彼女はまだ理解していないだけだろうが召し使いになれば自分の生活の大部分を犠牲にしなければならなくなる。家族に会える時間もほぼ無いだろう。それに彼女よりは歳上とはいえ自分も子供。雇ってくれるかどうかもわからない。

 

 だが金の誘惑には勝てず、彼女に手を引かれるがまま彼女の家へ、彼女の両親の元へ向かった。

 

 

 「───ということでお邪魔しました……」

 

 

 彼女の説明が支離滅裂だったので結局私が説明することになった。彼女の父親はやや困惑した様子で腕を組む。

 

 

 「…それで、仮に我々がお前を雇うとして、そうなればお前に金を払うことになる。それだけのことが出来るのか?」

 

 

 答えるより前に彼女の母親が口を挟んだ。

 

 

 「そもそもあなたのご家族は承知してるの?」 

 

 

 「母さんは…なんにも言わないと思います。好きで娼婦やってて、昼も夜も家に雄を呼んで来るんです。」

 

 

 察したようで、彼女の両親は少し複雑な顔になった。

 

 

 「でもそれならあなたが召し使いになるほど貧しいとは思えないのだけど…」 

 

 

 「いや、個人の家で娼館を営むにはそれなりに金がいる。日によって客も左右するし最近子供が産まれたというならここしばらく仕事が出来なかったんだろう。」

 

 

 「その通りです。その…弟たちには学校行かせてやりたいし、母さんもたまには普通に休んでほしいんです。」

 

 

 白狐夫婦は悩んだ末、試しに数日だけ雇うことにしてくれた。その日は帰宅して母に報告。案の定何の反対もなく翌日彼女の屋敷に向かった。

 

 

 「あらあら随分可愛い新入りさんだこと。」

 

 

 彼らの元で長く働いているという黒毛の雌の牛獣人が屋敷を案内してくれる。初老で温厚な彼女はミルダといって、小さな部屋を私専用の寝室として使って良いと言われそこに荷物を置いた後、家事の手伝いをすることになった。

 

 獣人は体毛が乱れるのでさほど着込まず、下着代わりの腰巻きとシンプルな衣を1~2枚羽織るくらいが普通。けれど流石白狐獣人の一族、布は上質で色とりどり。洗う際にあまり強く擦ると布が痛むと注意された。ちなみにミサはいつも自分と同じような麻でできた物を着ていたが、それはとにかく活発ですぐ汚したり破いたりしてしまうからだそうだ。洗濯を終えると次は掃除、その次は食事の準備。

 

 

 「どうですミルダ、あの子の様子は。」 

 

 

 準備の最中、彼女の母親が先輩召し使いを呼んで訊ねた。私は聞こえない振りをして野菜を煮込んでいる鍋をかき回していた。

 

 

 「真面目で良い子ですよ。料理はある程度慣れてるみたいですし、狼の子だから力仕事もできるでしょうし。飲み込み早いから助かってます。」

 

 

 これが決め手になったかどうかは定かではないが、私はこの家に雇われることになった。

 

 

 「ご用はなんでしょう。」

 

 

 「娘の送り迎えをしてほしい。ついでにお前も学んでこい。」

 

 

 そう言って渡されたのは学校で使う本や羽ペンだった。

 

 

 「別に行かなくても生活に支障はないが、流石に我らが一族の使用人ならある程度教養がないと困る。あぁ、給料はちゃんと別に払う。」

 

 

 私の戸惑いをそう一蹴すると、数日後から彼女と一緒に学校へ行くことになった。白狐獣人が運営している無償塾で文字の読み書きを教えてくれるので有料の学校に行かなくともこの里で生きていけないことはない。それでも商業を営むなら通う方が圧倒的に有利だし、知識が身に付き友達もできるのだから大抵の子供は通っていた。

 

 学校に通わせてもらえることは涙が出るほどありがたいことに間違いない。しかし家事や料理を学ぶ時間が大幅に減るので家での仕事を覚えるのに中々時間がかかった。お転婆お嬢様のお守りもしないといけないので尚更だ。

 

 私の仕事などお構いなしに遊ばされることもしょっちゅうあり、彼女の両親は娘の相手も仕事の内としてくれたので屋敷の外では何だかんだ他の子供たちと同じように過ごしていた。

 

 

 「奥様も旦那様も良いお方でしょう?あなたもまだ子供なんだから頑張り過ぎないでね。」

 

 

 夕食の後片付けをしている最中はいつも牛獣人ミルダと雑談している。彼女は先輩というよりも親切なおばちゃんという感じだ。

 

 

 「偉いわねぇうちの子供があなたぐらいの時なんて……」

 

 

 彼女はもうとっくの昔に子供を独り立ちさせているので以来住み込みで働き続けているらしい。給料は私より安いくらいしか貰っておらず、この屋敷につきっきりで使うこともないので自らそうしてくれるよう願い出たという。

 

 

 「ルイーー!一緒にお風呂入ろーー!」

 

 

 砂だらけのミサが服を脱いで走ってきた。いつもの光景だ。獣人の子供は室内では服を着ないことも多い。

  

 

 「お嬢様…まだ片付けが───」

 

 

 「いいわよいってらっしゃい。その汚れは独りじゃ洗いきれないだろうし…」

 

 

 彼女の厚意に甘えて片付けは任せ、ゴワゴワボサボサの彼女を連れて湯を沸かした。

 

 

 「ねぇルイ、明日の宿題やった?」

 

 

 彼女の体を丁寧に擦っているといつもの質問が飛んでくる。

 

 

 「まだです。だから答えは写せませんよ。」

 

 

 「けちーー!」 

 

 

 カンニング防止もそうだが寝る前くらいしか宿題をする時間がないというのが事実。そして今日もハードな1日が幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 ◯◯◯

 

 

 

 

 

 

 「ねー準備できた?」

 

 

 「お待たせしました。」

 

 

 年に数回行われるお祭りに、今年も彼女に狩り出される。去年までは遠慮しても押されて結局行く、というスタイル。その去年のお祭りで彼女が変質者に絡まれたため今年からは彼女の両親から正式に護衛を依頼された。

 

 

 「ルイが一緒なら安心よね。ねぇ筋肉ついた?」

 

 

 「そりゃあまぁ。」

 

 

 彼女の付き人として彼女を守れるようにと武術の稽古もさせられている。お陰で去年の変質者を撃退することができた。

 

 

 「…どうしたの?」

 

 

 「あぁいえ、何でもないです。弟みたいな子を見つけたので。私とは全然違う毛並みなので人違いかもしれないですけれど。」

 

 

 狼獣人に限らず暗い赤に黒毛が混じる独特な配色の体毛は珍しい。恐らく父方が竜人かリザードマンなのだろう。弟たちは普通の狼獣人だった。

 

 

 「あなたの弟、学校行けたんだっけ?」

 

 

 「えぇお陰さまで。先日の手紙にそう書いてありました。」

 

 

 給料日に合わせた2週に1度の仕送りをすると手紙が返ってくる。彼女の元で働いて5年。学校は卒業したので弟と会うことは無く、家に帰ってもいないので母とも顔を合わせていない。

 

 

 「ところで、お友だちとの待ち合わせ場所は反対方向ですよ。」

 

 

 「は、早く言ってよ!」

 

 

 彼女もだいぶ落ち着いてきて、自分も仕事に慣れたので暮らしに余裕が出てくる。料理のレパートリーもだいぶ増えて夕食を独りで担当することも多くなった。

 

 

 ある日、ベッドの上に仰向けになった彼女に自分が覆い被さって、接吻を交わしながら腰を振り昇り詰めた…ところで目が覚めた。

 

 夢か、と理解したのも束の間、脈打つ自分の雄に気がついて、遅れて湿っぽさと独特な匂いが漂ってきて一気に目がさえる。下半身と薄い掛け布団が大変なことになっていた。生殖のことは親が親なので嫌でも知っていたしこれも知識として知っていたが実体験は初めてだ。

 

 とにかく、嗅覚に優れている狐獣人にこの匂いを嗅がれてはまずいので外に洗いに行こうとするとボタタッと粘液が地面に滴る。動揺していた私はどうせ洗うから、と持っていた掛け布団で体を少し拭いてから部屋の外へ出る。気付かれないように洗おうとしたのだがこういうときに限って彼女の父親と鉢合わせしてしまった。

 

 

 「おう、もう起きたのか。」

 

 

 「あ…旦那様……」

 

 

 「ん?」

 

 

 数秒、間が空いた。下半身は布団で隠していたがどうやっても無駄である。というかその布団に大きなシミがある。12にもなって、私はお漏らしをした幼子のように彼からの言葉を待った。

 

 

 「あぁ、お前もそんな歳になったか。」

 

 

 対する彼は特に驚くこともなくいつもの調子でそう言った。

 

 

 「も、申し訳ありません…すぐ洗います……」

 

 

 「別に悪くないしその年頃じゃ普通のことだからそんなに狼狽えるな。お前も成長したんだな。」

 

 

 私の頭をわしわしと撫でて彼は立ち去り、私は自分の体と布団を水で洗う。鉢合わせしたのが彼女の母親ではなく父親で良かったとつくづく思った。

 

 そしてそれは何ヵ月かに1回起き、その度に彼女との行為の夢を見るので起きた日は何となく彼女と目を合わせるのが気まずく感じた。

 

 

 それから数年経ったある日、

 

 

 「15歳の誕生日おめでとう!」

 

 

 突然言われて驚いた。自分の歳なんてすっかり忘れていたし、誕生日を祝ってもらったことは1度もない。

 

 

 「今日は一緒に食べようね!」

 

 

 いつも、使用人の私とミルダは彼らの後に食事をとっている。私が御使いに出ている間に彼女の母親とミルダが夕餐(ゆうげ)を用意していたらしい。

 

 

 「背も随分大きくなって、いつの間にか声も変わりましたね。」

 

 

 「は、はい。」

 

 

 全員で食事をするという異様な光景に戸惑いながら温かい家族だと思う。振り返ってみれば、こき使われることもなく学校に通わせられたりと優遇っぷりもいいところだ。精進してますますお役にたたねばと思いながら食を進めた。

 

 

 そしてそれから3年、彼女の15歳の誕生日が近づいてきて、祝いの品は何にしようか、料理は何にしようかと彼女の両親やミルダと話し合っているときだった。

 

 

 「ルイ、」 

 

 

 会議が終わり解散すると彼女の父親に呼び止められる。

 

 

 「いかがなさいましたか、旦那様。」

 

 

 「あいつも15歳、そろそろ嫁に行かせようと思っている。もちろん本人次第で先送りにすることもあり得るが、お前はどうする。この家で働くか、娘について行き向こうの家の使用人となるか、解約するか。」

 

 

 「解約…ですか。」

 

 

 「娘が嫁に行けばやることはかなり少なくなる。仕事場を紹介してやろう。お前はそれなりに優秀だし、ここで働くより稼げると思う。あと縁談だな。お前も17、それにお前なら良い嫁を貰える。今度見合いでもしたらどうだ。」

 

 

 「そ、そうですね───」

 

 

 「ルイくーん?ちょっと来てくれますかー?」

 

 

 彼女の母親に呼ばれたので検討します、と伝えるとそちらに向かう。

 

 

 「どうしましたか奥………どうしたんですかお嬢様……」

 

 

 「えへ……ごめん!」

 

 

 泥だらけの彼女を見てため息をついた。近所の子供の遊び相手をしていたらエスカレートしてこうなったらしい。着物を洗うのは私の役目だ。流石に負い目を感じたのか洗濯を手伝うと言い出した。

 

 

 「早く体の方も洗わないと乾いて固まりますよ。」

 

 

 「良いわ自分で洗うから…」

 

 

 石鹸を溶かした水を溜めた桶のなかで着物を擦りながら彼女は遠慮がちに聞いてくる。

 

 

 「あなたの縁談のこと聞いたけど、どうするの?」

 

 

 「まだ何も決めていないです。ここでこのまま働くのも良いかなと。あなたに付いていくかどうかは相手方が何と言うかにもよると思います。」

 

 

 「そう…、あっという間よね、10年になるのよ。」

 

 

 「えぇ。そろそろ良いでしょう。後は私が干しておきます。」

 

 

 「あ…うん。」

 

 

 絞って、シワにならないよう伸ばしてから干す。道具を片付けて部屋に戻り、その後夕食の支度をした。

 

 

 「お嬢様は嫁入り…私にも縁談か…」

 

 

 寝室で独り呟く。一応給料を貰って働いている使用人なのだがまるで養子にでもなったかのようだった。

 

 自分の縁談まで持ってきてくれるとは思ってもいなかったしありがたいことだがいまいちピンと来ない。働き続けるとしたら、ここにはミルダがいることだしやはり彼女の嫁ぎ先の使用人となるのが妥当だろうか、それとも夫婦よりミルダの方が歳上なのでここに残った方が良いのだろうか。

 

 そんなことを考えている内に微睡み始め……淫夢を見かけた。見かけた、というのは、眠りが浅かったのですぐに目が覚め定期の惨事にならずにすんだということだ。とはいえいつもはほとんどが体内に収納されている雄槍が露出しているので布団が湿らないよう退ける。

 

 

 「ん…?」

 

 

 狐族同様狼族も嗅覚が鋭い。微かに自分の体に残っていた彼女の匂いを嗅ぎとると、見かけた夢が夢だったので愚息が一気に固くなる。

 

 ゆっくり起き上がって屋敷の外に出る。深夜の静まり返った洗濯場所で、自己嫌悪にかられながらも一向に熱が治まらない己に手を伸ばすと、生まれて初めての自慰にふけったのだった。

 

 その時の罪悪感も数週間経てば消え、彼女の15歳の誕生日に向けて里の白狐獣人に便りを届けたり晩餐に使う食材を買い出したりと準備を進める。

 

 里中の白狐獣人が集まるので他の屋敷の使用人とも協力して大人数分の料理を作る。食後も後片付けに追われてどんなことをしたり話したりしていたのか直接は分からなかったが、祝辞のあとは談笑しただけだと後で彼女が教えてくれた。

 

 

 「二人ともありがとう。ゆっくり休んでください。」

 

 

 奥さまにそう言われて私たちの大仕事は終わり。湯あみをして自室に戻って一息ついた。そんなとき、

 

 

 「ルイ、起きてる?」

 

 

 ノックと共に彼女の声が扉から聞こえたので開けた。

 

 

 「どうされました?」

 

 

 「ちょっと…来て。」

 

 

 言われるがまま彼女の部屋に連れていかれ、私が部屋に入ると彼女は扉を閉める。

 

 

 「今日はありがとう。料理、美味しかったわ。」

 

 

 「いえ、私だけが作った訳じゃないですし。15歳の誕生日、おめでとうございます。」

 

 

 言っている側から彼女はおもむろに衣を脱いで整えられた白い体が露になる。獣人とて幼子でもない限りむやみに裸体を晒したりはしない。

 

 

 「お嬢様?」

 

 

 「そう、あなたにそう呼ばれてもう10年経つの。」

 

 

 衣を丸めて椅子に奥と、こちらに向かってゆっくり歩み寄る。

 

 

 「今までありがとう。大変だったでしょ、私のお守り。」

 

 

 「いえ、そんな、」

 

 

 彼女は私のローブのような衣の隙間から片手を入れた。それ1枚しか着ていないので彼女の手が私の胸をなぞる。

 

 

 「あの、」

 

 

 彼女はそのまま私の胸元に頬を付けて密着した。

 

 

 「こんなに背が高くなったのね、小さいときは同じくらいだったのに。」

 

 

 「まぁ狼なので。それより、あの、これは、」

 

 

 特別大きくも小さくもない獣人らしい控えめな乳房の柔らかい感触に少し動揺する。彼女はすぐには答えなかった。抱擁を解くとローブの紐をほどく。

 

 

 「わぁ、久しぶりにみたけど随分逞しくなったのね。武術の稽古のお陰?」

 

 

 「えぇまぁ────」

 

 

 「かっこよくて真面目で優しくて、こんな体してたらお嫁さん探しに苦労しないでしょうね。」

 

 

 「さ、さぁ……」

 

 

 不可抗力で熱を帯び始めていた股間を突然擦られ思わず彼女から身を離す。

 

 

 「おっ…お嬢様…!」

 

 

 「今までのお礼、させてよ。」

 

 

 「い、いや何を言ってるんですか…!」

 

 

 「あはは…そんなに驚いてるところ初めて見た。」

 

 

 「あのですね…」

 

 

 「ねぇほらじっとしてよ…」

 

 

 彼女はまた私に抱きつくと愛撫を再開させた。

 

 

 「お、お嬢様、困ります。」

  

 

 「おっきくなってきたけど?気持ち良い?」

 

 

 こんな状況で平静を保っていられるはずもなく、彼女と私自身の腹に挟まれながら情欲が隆起していった。

 

 

 「……外して良い?」

 

 

 私が答える前に彼女は私の腰巻きを外して臨戦態勢になった雄をまじまじと見つめた。

 

 

 「うわぁ……」

 

 

 「お、お止めください。」

 

 

 「だから、お礼だって言ってるじゃん。」

 

 

 手で握られるとそれだけで快楽が痺れるように広がる。

 

 

 「私の嫁入り修行だとでも思って。」

 

 

 「どんな修行ですか……」

 

 

 優しくしごかれ思わず体を震わせた。彼女はそれだけでは飽きたらず、屈んで肉棒を舐め始めた。

 

 

 「き、汚いですよ。」

 

 

 「そうなの?これで赤ちゃん作るのに?」

 

 

 ざらついた舌で舐められ先走りが垂れてもお構い無し。しまいにはそのマズルで加えてねぶり始めた。

 

 

 「くっ…」

 

 

 「んむ……」

 

 

 軽く牙を当て、吸いながら前後に動かす彼女は口内に先走り液を出されても嫌がる素振りも見せずに口淫を続けたが体勢がきつかったのか何度か足踏みをして、そして肉棒を離した。

 

 

 「ルイ、ベッドに寝て。足疲れちゃった。」

 

 

 「お嬢様……」

 

 

 「良いから。気持ち良いんでしょ?私、全然嫌じゃないよ。」

 

 

 彼女は口に溜まっている先走りも混ざっているであろう唾液をゴクリと飲んで見せる。そしてまた私の手を引き、ついでにローブを剥ぎ取って私を全裸で仰向けに寝かせた。

 

 口淫はすぐに再開され、ここまでくると私も抵抗できなくなる。彼女は慣れたのか私の下っ腹や太ももの付け根辺りを擦りながらしゃぶった。

 

 

 「さっきより味が濃くなった…ねぇ気持ち良い?」

 

 

 「……はい。」 

 

 

 無視することもできず、私が小さく返すと嬉しそうに笑みを浮かべた。

 

 

 「撫でで。」

 

 

 私が彼女の頭や頬に手を添えるとまた口淫を続ける。何週間か前の自慰とは比べ物にならない快感と興奮に熱が競り上がって来るのを感じる。

 

 

 「お嬢様、もうお止めください。これ以上は…」

 

 

 彼女は素直に口を離した。

 

 

 「射精するの?良いよ?それが一番気持ち良いんじゃないの?」

 

 

 「そ、そんな……もう満足です。よ………」

 

 

 「?」

 

 

 「ここで出したら…汚してしまいます…」

 

 

 彼女は一瞬キョトンとして、笑った。

 

 

 「そうかもだけど、洗うのはあなたの役目よ?ほら、おとなしく観念しなさい。」

 

 

 強めにしごかれ息が荒くなる。と、彼女が私の体の上に乗ってきた。

 

 

 「こっちの方が興奮する?…照れないでよ。ねぇ、どうなの?」

 

 

 「…それでお願いします。」

 

 

 諦めてそう言うと彼女は私の上でうつ伏せになり、肉棒をしごく。直に感じる温もりがより興奮を高めた。

 

 

 「ん…く……」

 

 

 「そうよそのまま……」

 

  

 彼女が一旦手を休めて握り直す。すると先の方にとても暖かく柔らかい感触が─── 

 

 

 「お嬢様!!」

 

 

 諦めて委ねようと目を瞑っていた私はハッと下腹部を見て、先端が彼女の秘部にめり込んでいるのが目に入って思わず大きな声を出した。

 

 

 「だ、駄目です!それは!」

 

 

 しかし聞く耳を持たない彼女はそれを自らに押し込んだ。一気に半分程埋められその圧倒的な快楽を牙を食いしばって耐えると引き抜こうと体を起こして彼女の体を掴む。

 

 

 「動かないで!」

 

    

 彼女が声を震わせて言ったので思わず止まる。彼女は目に涙を浮かべていた。彼女も牙を食いしばるとグッと腰を下ろす。直後に彼女が倒れ込んできたのでそれを支えねばならず、肉棒は更に埋められた。

 

 

 「大丈夫ですか…?何てことを…」

 

 

 「痛い……大きすぎ……」

 

 

 父方の影響か狼獣人の中でも体格が恵まれていた私の雄がロクに慣らしていない彼女の純潔の証を破いたのだ。私が彼女の頭や腰を擦っている間にも自重で更に深く沈む。彼女は泣きながらも私の体を掴んで放さなかった。

 

 

 「お嬢様……」

 

 

 「うぅ……私の中……気持ち良い…?」

 

 

 「そんなことを言っている場合ではありません。落ち着いたら早く抜いて───」

 

 

 「気持ち良いくせに…」

 

 

 「え?」

 

 

 「もっと強く撫でて……あう…」

 

 

 強く締め付けてくる膣からの快感を堪えながら言われた通り撫でた。

 

 

 「何もここまでしなくても……」

 

 

 「あ゙っ……うぅ……すごい…体……ねぇ…お腹の奥まで入ってるの…しっかり感じるよ……」

 

 

 彼女は私の体を撫で回した。

 

 

 「お嬢様……ご両親に…知られたら……っ!!」

 

 

 雌との経験があるはずがない上に既に口淫で高ぶっていたのでなんとか彼女を説得しようとするがそれを知ってか知らずか彼女は体を揺らした。きつく締め付けている膣と擦れて一気に噴火寸前になる。

 

 

 「痛いのでしょう…?」

 

 

 「すごく……でも……」

 

 

 彼女が私のマズルを撫でて視線を合わせる。この座った状態で向かい合う体勢だとちょうど目線が同じくらいになった。

 

 

 「安心する……」

 

 

 彼女は私を抱き締めて頬同士を擦らせた。そして更に腰を揺らして私の快楽を煽る。そして彼女が私の頬を舐めたとき、快楽が弾けた。

 

 

 「ぐっ……」

 

 

 なんとか、なんとか堪えようと反射的に彼女を抱き締めて全身に力を込めた。純粋に射精を阻止しようとしたのだが余計に肉棒をめり込ませることになった。

 

 

 「あう……ルイ……我慢しないで良いから……」

 

 

 耳元で囁かれたその妖艶な声が止めとなって、ついに爆発してしまった。

 

 ぎっちり膣に包まれているので自分の肉棒が激しく脈を打つのがよく分かる。放出する感覚とは違う、注ぎ込む感覚に酔ってこのときばかりは何もかも忘れて夢中になった。お互い喘ぎながら向かい合って抱き合うその様を何も知らないものが見たらただの若いカップルの初夜、と思うことだろう。

 

 

 「ふぅ…ふぅ……」

 

 

 「まだ…どくどくしてる……」

 

 

 彼女の匂いを目一杯吸っての行為は至上のものだったが、射精が引くと理性が戻ってくる。そして狼や狐族特有の尾結合になる前に、ありったけの理性と意志を振り絞って彼女から己を引き抜いた。彼女も息をあらげていて何も言わなかったので彼女を下ろして寝かせ、落ち着くまで擦る。

 

 

 「大丈夫ですか…?」

 

 

 「えへへ…すごいね…」

 

 

 彼女は自分のお腹を擦ってみせる。秘部からも白濁の雫がボタボタと垂れた。

 

 

 「抜かなくてよかったのに。」

 

 

 「そんなわけにはいきません…あなたはもうすぐお嫁に行かれるのですよ…?」

 

 

 「ノリノリで私を抱き締めてこんなに出したのにそんなことを言うの?」

 

 

 粘液が流れる秘部を見せつけられて口をつぐむ。結合が解けたことで萎え始める肉棒を彼女は残念そうに見ていた。

 

 

 「身籠ってしまうかもしれないんですよ…?私が混血とはいえあなたとは近縁種で出来やすいでしょうし。とても心地良かったですしありがたいですが、2度としないでください…」

 

 

 「もう出来ちゃうかもしれないよ?」

 

 

 「そうなったら文字通り首が飛んでしまいます……」

 

 

 彼女はようやく沈黙する。しかし私がタオルと彼女の衣を取りに行こうと腕を掴まれた。

 

 

 「待ってよ。」

 

 

 「お嬢様…」

 

 

 「ルイの子なら妊娠しても良いわ。」

 

 

 彼女は息を飲む私を抱き締めた。

 

 

 「お父さんとお母さんだって、あなたを家族同然と思ってるはずよ。でなきゃ縁談なんて持ってこないわ。」

 

 

 「あの……」

 

 

 「ずっと、あなたは召し使いだった。それが当たり前だった。でもあなたの縁談の話を聞いたとき、すごく…虚しくなったの。きっと嫉妬よ。私ね、小さかったからあんまり覚えてないんだけど、あなたはいるだけでお金がもらえる、私はあなたと毎日遊べる、あのときはそれくらいにしか考えてなかったのよ。」

 

 

 「お嬢様……」 

 

 

 「そう、ずっとそう呼ばれてたからその気になってたけど……ねぇルイ、あなたは私の縁談を聞いてどう思ったの?」

 

 

 「それは…」

 

 

 私はすぐには返せず言葉が詰まる。

 

 

 「あなたも大人になったんだと…それだけです…」

  

 

 「嘘つき……じゃあ何であの日の夜独りで外にいたの?私覚えるわよ?」

 

 

 「え?」

 

 

 サッと血の気が引いていく。見られていた──?

 

 

 「あのとき自分の体についた私の匂い嗅いで…それで…それで出してたでしょ…」

 

 

 「な…」

 

 

 反論の余地がない。

 

 

 「あの日あなたに私のことを聞きたくて部屋に行こうとしたら偶然匂いがしたのよ…」

 

 

 「も……申し訳ありません…つい…魔が差して……」

 

 

 「ねぇルイ、キスして。」

 

 

 私の言葉を無視すると彼女は私の口先に自分の口先を重ねた。その柔らかい感触に興奮が再燃してくる。

 

 

 「嫌だったらこんなこと…すると思う?それとも私が遊びでこんなことすると思う?わざわざ15歳の誕生日に。お父さんとお母さんもそうだったけど、だいたい誕生日に結婚するのよ。」

 

 

 「お嬢様…そんな……」

 

 

 「私じゃ燃えない?そんなことないわよね?」

 

 

 僅かだが固さを取り戻した肉棒を彼女が握って少ししごくとすぐに先程と同じようにそそりたつ。

 

 

 「お嬢様はもちろんとても魅力的な雌です。ですが私は───」

 

 

 「ルイは知らないかもしれないけど、里であなたは評判になってるのよ。多分、あなたがその気になればすぐに相手が見つかると思う。でも私は10年もあなたと暮らした。特権があっても良いと思わない?それに知らない雄に嫁入りするよりあなたといた方が良いなって思うの。」

 

 

 彼女は私の顔を抱いて、私に頬擦りをした。そして密着する。

 

 

 「もし認めてくれなかったとしても、私は一生結婚しないで使用人としてのあなたと暮らすわ。でも子供は産む。もちろんあなたの子だからあなたがお父さん。」

 

 

 彼女は私のマズルをくわえて甘噛みした。愛情表現だ。

 

 

 「だからあとはあなた次第。どうしても立場を考えるなら無理強いはしないけど…あんな薄いはずの私の匂いで興奮するくらいなら私のこと……ねぇ?それとも私の勘違い?」

 

 

 肉棒を撫でられた快楽でまた欲が増幅する。彼女は私を不安げに見つつ私のマズルに鼻先を付ける。何度も見てきた淫夢よりも刺激的な現実。私はしばらく無心で彼女の滑らかな毛並みの背中を撫でていたが、ゆっくり口を開いて彼女のマズルを甘噛みした。

 

 途端、彼女はほっと息をついて満面の笑みを浮かべ、私に体全体を擦り付ける。

 

 

 「もっと、強く。」

 

 

 彼女の柔らかい体を強く抱き締める。彼女に合わせて私も彼女の匂いを思いきり吸い込んだ。

 

 

 「お嬢様…私は……」

 

 

 「名前呼んでよ…小さいときみたいにミサって呼んで…」

 

 

 「ミサ……」

 

 

 しばらく抱き合ったまま愛撫しあい、彼女の頬や頭を舐める。ここまでしてくれるのだ。後がどうなろうと雄として応えよう。そう決心した。まだまだ脆い決意だったが、歳差が逆転してしまったように彼女がリードしてくれる。

 

 

 「続きしましょう…ルイ…我慢しなくて良いから、好きにして。」

 

 

 まるであやすように私の後頭部を撫でながら私を引き寄せて仰向けになる。心拍数が上がり、私は遠慮しつつ彼女のお腹にそっと口を近づけて一舐めしてみる。すると彼女はそれで良いと言うように私を撫でたので腹から胸、首、そして顔を舐めて口づけを交わした。 

 

 

 「僕で……良いの……?」

 

 

 「良いわただの雄と雌よ…あなたの雌にして…ルイ…」

 

 

 その言葉に誘われるように先程の行為と今の興奮で十二分に濡れている彼女の秘部へ肉棒を突き立てた。

 

 

 「あっ……そう……それで良いの……」

 

 

 ゆっくり奥まで進むと歓迎するように締め付けられる。彼女に体重を預けて密着し、しっかり抱き締めた。 

 

 

 「ミサ、重くない?」

 

 

 「うん。やっと戻ってくれたね…さぁ、」

 

 

 頷き、腰を前後に動かす。快感はさっきの何倍も強く、彼女も目をトロンとさせていたので少しづつ欲を解放していった。

 

 

 「あっ……いいっ……」

 

 

 彼女の艶のかかった声が耳を犯す。動きは激しくなって雌雄の擦れる水音がお互いを興奮させた。引き抜けば絡み付き、付き入れると締め付けられる。目まぐるしく入れ替わるその感触は快楽の嵐となって着実に高みへ昇って行く。体重をかけて奥を押し上げればミサは嬌声を上げて肉棒をより強く締め付ける。

 

 

 「ミサっ…」

 

 

 「あっ…お゙っ゙…」

 

 

 突く度に柔らかくなっていた奥を尖ったら先端が貫通した。ミサが変な声を上げて膣の締まりがかなり強くなってもそれをほぐすように夢中でついた。気がつけば肉棒は根本まで入り下腹部どうしが何度もぶつかる。

 

 

 「出るっ……」

 

 

 興奮が最高潮になって更に激しく彼女を突き、そして耐えきれなくなって突き入れ思いきり抱き締めた。

 

 

 「んん…んんっ!」

 

 

 「くあぁっ!」

 

 

 どくん、どくんと射精する。受動的だった先程よりもずっと勢い良く肉棒は震え、精液を彼女に送り込む。それが終わるとすぐに肉棒の根本に違和感を覚えた。

 

 

 「今度は……抜いちゃ……だめよ…?」

 

 

 「うん…」

 

 

 そのままでいると大きさを増す肉棒の根本は急速に膨らんでいく。

 

 

 「まだ大きくなってる……」

 

 

 「ミサ…苦しくない?」

 

 

 「うん…気持ち良い…」 

 

 

 「僕もすごく気持ち良い……」

 

 

 膨らんだコブが彼女を固定し、また彼女の膣を刺激し続ける。

 

 

 「ルイ…大好き…」

 

 

 彼女のマズルを甘噛みしようとすると彼女も口を開いて僕を受け入れる。お互いのマズルをくわえて相手の舌を舐める熱い接吻に、若く経験もない僕はすぐに次の快感が込み上げてきた。知識としても知っているし少し前の自慰で実体験している。このあともしばらく射精して、そのうち色も粘度も段違いの精液が出る。それがいつか彼女の中で命に変わるのだろう。

 

 肉棒が振動してミサの手に力がこもった。射精が再開して、僕は快楽に震えながら同じく震えているミサを優しく撫でる。今まで抑えてきた感情が溢れている。今の僕には彼女がとても、性的に愛らしく見えた。

 

 

 「あっ…ルイ…ルイっ……───っ!!」

 

 

 ギュウゥッと膣が僕を締め付け彼女は体を痙攣させた。繋がってる間にそれは何度も何度も起き、僕に更なる快感を送り込んでくる。

 

 

 「お腹が…一杯…」

 

 

 「まだ出る……」

 

 

 肉棒の振動が強くなると彼女は声を上げて絶頂した。

 

 

 「熱いのが…!」

 

 

 濃く重い精液が子宮に溜まるのを感じるらしい。幸せな時間は長く続き、ようやく射精が終わって僕が彼女から萎えた肉棒を引き抜くとゴポリと白濁が逆流する。僕らは二人並んで仰向けになった。

 

 

 「ありがとうルイ……」

 

 

 「僕こそ。その……責任は、とるから。大好きだよミサ。」

 

 

 「うん。」

 

 

 また向かい合ってキスを交わし抱き合う。

 

 

 「ここにいてくれるでしょ?」

 

 

 「うん。」

 

 

 「ねぇ、今度料理教えてよ。ううん、その前に、ルイのシチュー食べたい。」

 

 

 「明日は決まってるから…明後日に作れるかどうか相談するよ。」

 

 

 「あれ好きなの。楽しみにしてる。おやすみ。」

 

 

 「おやすみなさい。」

 

 

 ベッドは一人用なので少し狭かったが、独りよりずっと温かかった。

 

 

 夢を見ることもなく、あっという間に目が覚める。彼女はまだ寝ていて、しばらくその寝顔を見ながら微睡んでいると目を覚ました。目が合いにっこり笑った彼女の頬を撫でて起き上がるといつもよりだいぶ寝坊したことに気がついた。

 

 

 「あっ………」

 

 

 思わず声に出て、彼女も遅れて気がついた。いや仕事のことではない。朝は簡素だし、ここで働き始めてから今日まで朝御飯の支度はミルダが担当している。

 

 

 「だ、大丈夫よ。いっそ堂々としましょ。どうせ匂いでバレるもの。」

 

 

 「そ…そうですね………」

 

 

 取り合えず腰巻きをつけて衣を羽織り、手を繋いで洗い場へ向かおうと廊下を歩くと狙っていたかのように彼女の母親と鉢合わせする。

 

 

 「あらおはよう。湯を沸かしてあるから入ってらっしゃい。」

 

 

 「えっ…あ……うん……」

 「えっ…あ…ありがとうございます……」

 

 

 何か微笑ましいものを見るような視線に戸惑いつつ気まずいので風呂場へ直行。体毛にこびりついた昨夜の残骸を落とし、湯に浸かってひとまず落ち着いた。

 

 

 「やっぱりこうなったな。」

 

 

 「えぇ。お見合いの話を保留にしておいて正解だったわ。」

 

 

 彼女と遅れた朝食を済ませると彼女の両親に呼ばれ、椅子に座り机を挟んで向かい合う。

 

 

 「どういうこと…?」

 

 

 「血の繋がってない年頃の雄と雌がひとつ屋根の下に10年もいるんだ。それに幼馴染みで仲も良い。お前が家で働き出したときからなんとなくこうなるんじゃないかと思っていたよ。手を出す素振りも見せなかった生真面目なルイをどうやって堕としたんだ?」

 

 

 押し黙った彼女からは湯気が出ているように見えた。

  

 

 「お見通しだった…訳ですか…?」

 

 

 「そうよ。縁談についてわざわざ別々に話したのもあなた達の反応を見るため。あの日も浴槽の準備はしてあったのよ。……そんなに青い顔しないで、匂いで分かっただけで直接見たわけではないし、それだけミサを大事に思ってくれてるということよ。あの日じゃないなら昨日だろうって。」

 

 

 「何も…反対なさらないのですか…私は狼でしかも混血…」

 

 

 「ルイ、それは────」

 

 

 「誰も反対しないと思うぞ。むしろ吉報を待っていると思う。」

 

 

 「何も白狐獣人は同族婚だけ、なんて法はどこにもありません。ずっと家にいてよく知っているあなたなら安心して娘を預けられます。」

 

 

 「まぁそういうことだ。さて、お前の仕事は探せばすぐ見つかるだろうし、まぁいっそお前はこのまま家事をしてミサが働いても良い。白狐獣人族の仕事は主に里の管理だから雌が働くことも珍しくない。あとは挙式の準備をしないと。」

 

 

 「あなたのお母様も招待しましょうね。」

 

 

 「今年はめでたい年だ。」

 

 

 こうして私たちの婚約は驚くほどスムーズに進み、2週間後に正式に夫婦となった。その際どこから引っ張り出したのか品の良い衣を着た母と再会。初めて会うが私の話は聞いていたらしい弟達とも挨拶を交わした。

 

 

 「ならいっそここに住んでしまえば良い。部屋がいくつも余ってるから縮小しようかと思っていたところだ。」

 

 

 家を建てるにはまだ時間が掛かるからそれまでは住まわしてほしいと伝えるとそう決定する。

 

 

 「何から何まですみません…」

 

 

 「別に構わない。孫の顔もすぐに見れるし。あぁそうそう、お前達の寝室は壁と扉を厚くしないとな。なに、私と妻の寝室も厚くしてあるから問題ないだろう。」

 

 

 その後私は白狐獣人に混じって里の管理職のひとつに就くことができた。皆親切で、私と同じように白狐獣人に婿入りした獣人と人間も少しいるので環境はとても良い。

 

 私の……僕の召し使い時代の癖も半年経てばだいぶ治り、婚約から1年後に早くもミサが身籠ったと知ったときは踊り出してしまいたくなるほど喜んだ。子宝にも恵まれた僕達の、幸せな生活が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◯◯◯

 

 

 

 

 

 

 

 

 「部屋が余っているのはもっともですが、子供が二人も同時にいなくなったら寂しいから、じゃないんですか。」

 

 

 「言えるか、そんなこと。」

 

 

 

 

                おわり

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