ソードアート・オンライン・クロニクル もう一人の黒の剣士の物語より抜粋 R18Ver. 作:場流丹星児
「……最低」
小鶴がログアウトして感涙にむせび泣いていたちょうどその時、彼女とは真逆の感情に自己嫌悪しながらログアウトした女の子がいた。彼女は今日の冒険で、古い記憶を呼び覚ます、忌々しい出来事に遭遇していた。
「私……、嫌な女の子だ……」
部屋の明かりを着け、ため息をついた彼女は、自己嫌悪を洗い流すべくバスルームに向かう。服を脱いで洗濯機の中に放り込み、洗い場に移動してシャワーの栓を開き、勢い良く噴き出した熱い雫に身を委ねる。だが今日は熱いシャワーの湯は物理的に身体を清めただけで、精神のリフレッシュには至らなかった。むしろ、身体的清潔感が増した分、精神的な鬱屈感が際立ち、自己嫌悪はますます深まっていた。
バスタオルで濡れた身体を拭きながら、鏡の中の自分の顔を一瞥する。
「酷い顔……」
暗い表情でそう吐き捨てると、洗い替えのショーツを履き、バスタオルを肩にかけてバスルームを出た。机の上のノートパソコンを起動し、立ち上がる迄の間、彼女は少しでも気分を変えようと冷蔵庫から良く冷えた炭酸飲料を取り出し、封を切って口をつける。しかし、口の中に広がる炭酸の清涼感も、心の中に滓の様に堆積していく嫌悪感を流してはくれなかった。いつもより炭酸の刺激が喉に痛みを感じさせるのは、この最低な心の有り様だからなのだろうか? そう考えているうちに、ノートパソコンは起動を終えスタート画面を映し出した。その画面を確認した朝田詩乃は、炭酸飲料の缶を机の上に置くと、片手でまだ濡れた髪を肩にかけたバスタオルで拭きながら、指紋認証でパスをクリアし、マウスを操作してネットを開いた。もう一口、缶に口をつけて詩乃が検索したのは、とあるスポーツ系の無料動画配信サイトである。彼女はマウスとキーボードを操作して、目当ての動画を探し出した。
「これだ」
そう言って詩乃が再生した動画は、かつて驚愕と共に世界中を席巻した動画、祝屋猛がヒースロー空港でテロリストを鎮圧した動画だった。それから次々と、猛がSAOに囚われるまでに発表した動画を再生していく。
祝屋猛、かつて小学生ながら、超新星として彗星の如く古武術界に現れた天才剣術家。幼いながらも『剣の芸術家(ソードアーティスト)』と称される程に卓越した剣技と整った風貌は、彼を古武術の世界だけに留め置く事はなかった。彼を紹介した動画は瞬く間に世界に広がり、一躍時の人として耳目を集める事となる。
しかし……、その動画配信は、ある日を境に発表されなくなっている。最終配信日は、二千二十二年十一月六日、ソードアートオンライン開始日の前日、それ以来二度と配信されていない……
「やっぱり……」
繰り返し祝屋猛の動画を見て、詩乃は確信する。つい最近知り合った二人のプレイヤー、キリトやアスナの昔馴染みのSAOサバイバー、そのうちのインプの方は恐らく……
「間違いない、彼は、ヒョウはきっと……、祝屋猛」
ならば、最後の配信日がその日なのも辻褄が合う。祝屋猛は、最後の動画配信をした翌日、ソードアートオンラインに囚われたのだ。詩乃の頭の中で動画の祝屋猛の剣技と、出会ってから目にしたヒョウの剣技が重なる。詩乃に剣術の素養は無いが、彼女の持つスナイパーとしての眼力、そして観察力がそう看破させた。
詩乃は最後にもう一度、ヒースロー空港の動画を再生した後、パソコンをシャットダウンしてベッドに身を投げ出す。そのとたん、過去の拭いがたい記憶が甦り、詩乃を襲った。
「人殺し」
頭の中に甦る、忌まわしい言葉に、詩乃は肩にかけたバスタオルで顔を包み、耳を塞ぐ。
「人殺し」
「人殺し」
「人殺し」
しかし、容赦なく詩乃の頭の中を、その言葉は駆け巡る。それは、小学校時代に始まった、凄惨な虐めの記憶。
「違う、違う」
あれは不可抗力だ、拳銃を向けられた母を救おうと、無我夢中で強盗の腕に飛びついて、気がついたらあんな事になってしまった……
詩乃がどれだけ弁解しても、クラスメートを始めとする、周りの子供達は納得してはくれなかった。なぜなら
「祝屋猛は、二人のテロリストを殺さずに倒したじゃないか!」
祝屋猛がヒースロー空港でテロリストを鎮圧した。このニュースが同時期に世間を賑わせた事が、詩乃にとって最大の不幸だった。
祝屋猛は控えめに言っても、剣術の天才である、彼に出来たからといって、同じ事がそこらの子供に出来る訳がないのだ。素手の詩乃が他に被害者を出さず、拳銃を奪い取り犯人だけを射殺して、事件を収めたのは奇跡にも等しい。あの時、あの状況で動ける勇気が有った事は、本来ならば賞賛に値する事なのだ。しかし、子供というのは無知であり、そのため独善的で残酷な一面を持っている。
祝屋猛は銃を持った二人のテロリストを殺さずにやっつけたじゃないか、それなのにお前は相手がたった一人なのに殺しただろう! この人殺し!!
そんな暴論を当たり前と言わんばかりに、事件のショックの抜けきらない詩乃に叩きつけたのだ。この時の詩乃の絶望は、察してあまりある物がある。
人殺し
人殺し
人殺し
この言いがかりにも等しい、心無い中傷の言葉から、詩乃に耐える力を与えていたのは、皮肉な事と言って良いのだろうか? 自分が比較対象とされた、祝屋猛であった。
本来ならば憎んでも良い相手である。だが聡明な詩乃は、あの時自分がもし、刀を持っていたとしても、彼の様に振る舞える筈も無い事を充分理解していた。だから、憎む以前に純粋にその『強さ』に憧れていた。
もし、あの時、祝屋猛がいたならば、颯爽と刀を振るって私を助けてくれたに違いない
詩乃はクラスメートから「人殺し」と罵倒される度に、事件の記憶がフラッシュバックする度に、強くそう思って耐えていたのだ。しかし、それも長くは続かなかった。どれだけ強く思い込んでも、祝屋猛は助けには来てくれない。そうしているうちに、クラスメートの虐めはエスカレートしていき、母親の精神も日に日に壊れていく。母親の心がとうとう壊れ、養育能力を失ってしまい、詩乃が祖父母に引き取られる頃には、彼女の祝屋猛に対する認識は大きく変質していた。
どうして!? どうしてあなたは、私の所に来てくれなかったの!? 外国のヒースロー空港なんかじゃなく、どうして私達の訪れた、あの日の郵便局ではなかったの!? もし、あなたが私の所に来ていてくれたなら、きっと……。そうしたら、私は、私は……、こんな想いを……
それまでは憧れが勝って隠れていた憎しみが、詩乃の意識に浮上する。今まで願望への逃避先で強く憧れていた分、現実との乖離に打ちのめされて顕在化した憎しみは、激しい憎悪に成長していた。
詩乃の祝屋猛への想いは、複雑に鬱屈した物となる。そして祝屋猛の動画配信が途絶え、社会から風化されるにつれ、その想いは次第に封印されていって今に至る。しかし、今、その強く憧れると同時に激しく憎悪する祝屋猛とおぼしき人物が、バーチャルとはいえ自分の目の前に現れたのだ。詩乃の心は激しく揺れ動く。時が経ち精神的にも成長し、更にキリト達の協力で事件の一面を克服した詩乃にとって、自分のこの想いは、あの時のクラスメートの心無い中傷と同じく、ただの言いがかりだという事を知悉している。
それでもなお、ヒョウを前にして、その想いは湧き出してしまうのだ。そんな自分に対する、自己嫌悪が詩乃を苛立たせた。
「私って、本当に弱い……、最低だ……」
そう呟いて、灯りを消した詩乃は、逃げる様に頭から毛布を被って目を閉じた、詩乃の頭の中に自分を責める想いと言葉が鮮明にフラッシュバックして襲いかかる。四方八方からゾンビの様に迫り来る忌まわしい記憶、詩乃は身を守る様に両腕で胸を抱え、海老のように身を丸めて強く目をつぶった。
誰か……、助けて……
そう思った瞬間、詩乃の指が自分の乳房の敏感な部分に触れてしまう。それは無意識だったのか、意図的だったのか、詩乃自身にも分からない。その瞬間、詩乃の心と身体に電気が迸った。ビクンと身体を震わせて、詩乃の頭にもう一つの記憶がよみがえり、激しい衝動が湧き上がる。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ」
気がつくと、詩乃は両手で自分の胸を揉み始めていた。小ぶりで形の良い乳房がだんだんと張っていく、それに伴って詩乃の息は荒くなる、上気していく詩乃の頭の中に、少年の顔が逆光で浮かび上がっていく。恐怖に歪んでいた詩乃の表情は、少年の顔がはっきりとしていくにつれ、だんだんと柔らかくなっていく。詩乃の手が何かを求める様に、激しく乳房を揉みしだき、乳首を中指と親指でつまみながら、人差し指で撫で擦り、刺激を加えていく。
「ああん、はっ、はっ、はっ、くゥッ……」
息が更に荒くなり、意識がトランスしていく、もうすぐ、もうすぐ彼が助けに来てくれる。
「あっ、あっ、あっ、早く……早く来て……。あんっ、ああん」
そう、これは儀式なのだ。同級生の心無い中傷の言葉、腫れ物を見る様な大人達の視線、フラッシュバックする強盗の断末魔の顔、そんな怪物から自分を守るヒーローを降臨させる為、詩乃が事件の直後に母親の目を盗み、こっそりと布団の中で始めた儀式……
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ」
二次性徴期を迎えた女の子は、ふとした弾みで自慰行為に目覚め、耽ってしまう事が有る。きっかけは様々だが、詩乃の場合はあの事件そのものと、その後の周囲の目からくるストレスが原因だった。無理もない、幾ら正当防衛といえど、拳銃で人の命を奪ってしまったのだ。大人ですら壊れてしまうであろうトラウマを抱えた上、クラスメート達の心無い中傷の言葉と大人達からの化け物を見る様な目、詩乃がそれらから自分の心を守る為、自慰行為に逃避して耽溺するのを、誰が責められようか?
引き取られた時、それに気づいた祖母に上手に誘導され、今まで治まっていたのだが、乳首に触れたはずみで、快感がぶり返してしまった。
久しぶりの行為は、身体の成長が進んだ分得られた快感が余りにも大きく、詩乃には自分の中の燃え上がる炎の様な衝動を消し止める事が出来なかった。欲しかった現実を求め、詩乃は夢中で、自分の胸を揉みしだく
「詩乃ちゃん」
息も絶え絶えに喘ぐ詩乃の頭の中で、ヒーローの顔がはっきりと結像して声をかけてきた。詩乃の瞳に涙が溢れ、身体は歓喜に打ち震える
「ああ、猛さん……」
甘い吐息を吐いて心が弛緩していく詩乃は、待ち望んだヒーロー、祝屋猛の名前を呼びながら、ショーツの中に手を入れる。精神が歪な成長をしたせいなのか、詩乃には陰毛が生えていない。つるりとした、無毛の恥丘の上を滑る様に進んだ詩乃の指先は、ぴったりと閉ざされたスリットの中に分け入っていく。
「!! ひゃん」
自分の指が、自分自身の最も敏感な部分に達した時、詩乃の脳にアドレナリンとドーパミンが溢れ出した。詩乃は夢中で指を動かす、腰が高く上がり、救いを求めて上下にくねくねと動く。
「ああん、猛さん猛さん猛さん猛さん、早く、早く」
詩乃の頭の中で、祝屋猛が刀を振るい、心無い言葉もマイナス感情も何もかも斬り倒して行く。その度に詩乃は熱い吐息と共に猛の名を呼び、せがむ。荒々しくも繊細に、自分の乳房を揉みながら、クリトリスを刺激する詩乃は嬌声を上げてうつ伏せになり、丸みを帯びた可愛らしい尻を高く上げ、祝屋猛を求めて夢中で腰を振る。
「ああっ、猛、猛さん、もっと……、もっとォ……」
乳房を揉む手の中指にしゃぶりつき、唾液でしっかりと湿らせると、詩乃はショーツの中に差し入れ膣口の周りをなぞる様に刺激し始める。
クリトリスと膣口を激しく愛撫する詩乃は手の動きを阻害する邪魔なショーツから片足を抜いた。
剥き出しの性器が、愛液に濡れて光輝く。
興奮と快楽で小刻みに震える詩乃の身体は汗の光を輝かせながら、ギシギシとベッドを軋ませていた。無意識の中で猛の侵入を強く求てヒクヒクと収縮する詩乃の膣口は、泉の様に愛液を溢れ出させている。溢れる愛液と指先の動きは、小陰唇という名の楽器から、恥ずかしい音色をリズミカルに奏でていた。その音色を伴奏に、詩乃の口からよがり声が漏れ出して、部屋に満ちていく。
「ああん、良い、気持ち良ィイイイイ、猛さん、猛さん……、アアッ、猛ィイイイイ、猛ィイイイイ、良いのォおおお、気持ちイィイイイイイッ、アアッ、猛ィイイイイ」
クリトリスへの刺激に加え、膣口への刺激が詩乃を更なる高みへと上らせる、行為に没頭する詩乃は一心不乱に腰を振る、淫らに、淫らに……、そして……
「キャン」
短く、高い嬌声を上げて、詩乃はお尻を高く上げたうつ伏せの姿勢から一瞬で膝立ちとなり、棒を飲んだ様に硬直した。詩乃の細い中指が、処女膜を破る事なく膣の奥へと入っていた。
「もう少しの辛抱だよ、頑張って、詩乃ちゃん」
頭の中で、祝屋猛はそう言って後ろから肩を抱いてくれた。そしてまた、化け物の様なトラウマと戦いを再開する。
膝立ちのまま、詩乃は歓喜と快楽で小刻みに震える。この喜びがもっと欲しい! 詩乃の腰が再びゆっくりと、艶かしく動き出し、更なるトランスへと入っていく。
いつしか自分を守って戦うのは、祝屋猛だけではなく、ALOのヒョウも加わっていた。
詩乃の身体は歓喜で上気し、桜色に染まっていった。喘ぎながら詩乃は膣奥に入れた中指をゆっくりと動かし、確かめる様に膣襞を刺激する。その指の動きに合わせ、詩乃の腰が祝屋猛を求め、前後にくねくねと、卑猥に動き始めた。
「アアッ、猛ィイイイイ、ちょうだい、もっとちょうだい! 良いのォ~~、ああ~~猛ィ~~、良いのォ~~、気持ち良いのもっとちょうだい」
自らの嬌声が性感を高め、詩乃は震えながら、淫らに腰を振り続ける。詩乃の頭の中で、願望の祝屋猛とヒョウは、彼女の求めに答え、次々とゾンビの様なトラウマを斬り倒して行く。そして最後に残ったのは、血塗れで迫り来る強盗の姿だった。
「ヒッヒッヒ……、この人殺し」
強盗は頭から血を流し、薄ら笑いを浮かべながら五十四式・黒星をゆっくりと構えていった。その姿に詩乃は、すくみ怯える。
「グヘヘヘヘ……」
「イッ……、イヤァ……」
クチュ、クチュ、クチュ、クチュ、クチュ
恐怖に抗う様に、硬直した詩乃は、指先の動きを徐々に激しく複雑にして更なる快楽を求める、こうすれば祝屋猛もヒョウももっと強くなるのだ。
クチュクチュクチュクチュクチュクチュ……
詩乃は両手で一心不乱に、夢中になってクリトリスと膣の中を激しく、そして繊細に刺激した。濡れそぼったヴァギナから、恥ずかしい音と愛液が溢れ出す。
「んんんんッ、クーッ」
詩乃の中指がGスポットを探り当て、恐怖に抗う快感が脳髄を貫いた時……
「大丈夫、安心して」
頭の中で、祝屋猛が優しく肩に手を乗せ、微笑んで小学生の詩乃を励ましている。
「直ぐに倒すから、待っていて」
反対側の肩に手を乗せられ、振り向くと高校生の詩乃を励まして、微笑むヒョウが居た。
「ああん、猛ィイイイイイイ、ヒョオオオオオッ、良いの~、イイィイイイイイイ~~」
エクスタシーの波が詩乃の中で荒れ狂う、股間の指が快感を求め激しく動き、その快感を貪る様に卑猥な腰の動きが小刻みになり、リズミカルにスピードを増して行く。
「ああ~~ッ、イクゥ~~、猛ィイイイイイイ、イクゥウウウッ……。アッ、アッ、ヒョオオオオオッ、イイィイイイイイイ~~ッ、ああ~~ッ、イクッ、イクゥウウウ~~~~ッ」
快楽に痺れる詩乃の頭の中で、祝屋猛とヒョウが強盗を斬り倒して、ALOの中でモンスターを倒した時の様に、ポリゴンの欠片に変えて散らしていく。
「アアアアア~~、イクゥ~~~~ッ」
膣が詩乃の指を、キューッと締め付けた。その後奔流の様に訪れた、心と身体を貫いて行く大きな絶頂感に身を委ね、詩乃は一際甲高い嬌声をあげながら足をピンと伸ばし、ブリッジの姿勢で大きく仰け反って果てて行った。そして背徳の伴う心地よい落下感の中で頭の中の祝屋猛とヒョウが遠ざかっていく。
快楽の余韻に浸る幸せな表情で、遠ざかる二人に向かって詩乃は手を伸ばす。
しかし、その手は届かずに、祝屋猛とヒョウは笑顔を残して消えていく。快感の残り香の様な甘い余韻の中で二三度痙攣した詩乃の股間から、輝く放物線が描かれた。快楽に痺れた腰は、既に詩乃の身体を支える力は残されておらず、詩乃はその放物線を見送りながら、快楽の余韻に抱かれ、ベッドの上に崩れ落ちる様に身を横たえる。
「猛……、ヒョウ……」
詩乃はオナニーで得られた絶頂感と、その快楽の余韻の中で幸せな眠りに落ちて行った、しかし……
人殺し
人殺し
人殺し
再びの悪夢が詩乃を揺り起こす。飛び起きた詩乃は、左右を見回し猛とヒョウを探していた。
「馬鹿みたい……」
詩乃は現実を直視してため息をつく。あの祝屋猛とヒョウは、オナニーが作り出した幻影なのだ。シーツに広がる、自分の体液が作り出した恥ずかしいシミが、否応無く現実を詩乃の心に突き付ける。いくら現実逃避をしても、現状はもっと酷くなるだけで、解決される事はないのだと。
机の上の飲み残しの炭酸飲料に口をつけ、詩乃は顔をしかめる。すっかり温くなり、気の抜けた炭酸飲料の苦味の混じった不快な甘さは、今の自分の心情その物だった。
ため息を着いて俯く詩乃の視界に、自分の片足に絡み付くショーツが入って来た。そのショーツが祝屋猛やヒョウに救いを求めてすがり付く、弱い自分の心を象徴している様に思え、詩乃は惨めさに拳を握りしめる。
「畜生!」
詩乃は思い切り枕を殴り付ける。
畜生!
畜生!
畜生!
畜生!
……
詩乃は枕を殴り続ける。あの時と同じだ、幾ら強く想っても、祝屋猛は私を助けに来てくれない……。詩乃の頭の中に、ヒースロー空港でテロリストを鎮圧した猛の姿が、今日のALOの冒険でノームの少年を救ったヒョウの姿が浮かび上がる。
「何でよ!」
詩乃は力を込めて、ボスッと枕を殴り付ける。
「何で私の所へは来てくれないの!?」
ボスッ
「こんなに苦しいのに!」
ボスッ
「こんなに辛いのに!」
ボスッ
「どうしてあなたは、私の所に来てくれないの!」
ボスッ
「助けてよ!」
ボスッ
「他の人なんてどうでもいいから、私を助けてよ……、ねぇ、私を……助けて……」
詩乃は涙を流しながら、枕の上に崩れ落ちる。
「嫌いよォ……、あんたなんか大ッ嫌いよォ……」
詩乃のすすり泣く声は、次第に大きくなり、やがて慟哭へと変貌する。時が経ち、泣き疲れた詩乃は、虚ろな瞳で呟いた。
「大好き……、猛……。愛してる……」
詩乃の股間に、再び手が伸びて行った。
お読みいただき、ありがとうございます。本編『ソードアート・オンラインクロニクル もう一人の黒の剣士の物語』も、是非宜しくお願い致します。
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