こちら日本国行政特区魔界風俗街2丁目8番地リサイクルショップ【大慈大悲館】 作:一条和馬
「ん~~っ……サトウ君はいつ見ても、美しい……」
薄暗い部屋の中に、一組の男女がいた。
男女は生まれたままの姿でベッドの上に横になり、互いの体に四肢を絡め合っていた。
「お館様はいつも同じ事しか言いませんね。語彙力ないんですか?」
お館様と呼ばれた男が荒っぽい息を吐きながらサトウと呼んだ女に鼻を近づけ、匂いを嗅いだり、頬を舌で舐めたりとするが、彼女の方は表情一つ変えない。
「今日こそサトウ君を喘ぎ狂わせてやるぞ!」
「あん。あん。いやん。あん」
「……気持ちは嬉しいが、どうせななら挿入してからやってほしかったかな」
このサトウという女は、所謂“不感症”だった。
熱さも、寒さも、痛さも、快楽も感じない特異体質。
そんな彼女に一人の“女”としての喜びを与えてあげたい。
それが男、ドクトル・ドピューデルの現在のささやかな夢だった。
「いい加減私に薬の一本や二本でも盛ればよろしいでしょうに」
「良いかサトウ君。君の身体は確実に“感覚”を得ている。現に君は、味覚はバッチリなのだろう?」
「えぇ。お陰様でお館様やシュテルの作る食事は食べるに値しないレベルのクソマズであることを知ってしまいました。なんで真っ先に味覚を治したんだこのヤブ医者」
「全く一切ブレないその毒舌っぷりには感動すら覚えるよ。感動し過ぎて……勃ってきちゃった♡」
そう言いながら、ドクトルは血管が浮き出る程に勃起したペニスを取り出し、サトウの頬に当てた。
「味わってみる?」
「ん」
人形の様に整った少女の口が、脈動するグロテスクな肉の棒を根元までガッチリと咥え込む。
「おふっ♡」
軽く挑発しただけのつもりだったドクトルだが、完全に不意を突かれて情けない声を挙げる。
<じゅっぽ。じゅ、じゅ……じゅっぽ>
「あー……いいよ、サトウ君。実に良い」
「ぷはぁ……私は不快です。イクならさっさとイけ」
<じゅっぷ。じゅっぷ。じゅっぷ。じゅっぷ。>
「嗚呼……サトウ君の美しい目で蔑まれながらのフェラチオ……もう、これだけで果てそうだ!」
サトウの死んだ魚の目の様な光沢のない光でじっと見つめられる、という事に昂りを感じたドクトルは、彼女の上に跨る……所謂
<じゅぼっ。じゅ。じゅ。じゅ。じゅ。>
「はぁ……こんなにオ〇ンコから汁が溢れているというのに、君は顔色一つ変えないんだよね……いいよ……それでこそ君は俺にとって最高の女なんだ……!!」
「わはひにほっへは、はいへいへふは」
(私にとっては、最低ですが…)
ペニスを口に咥えながらも無表情を貫き、尚も毒舌を浴びせるサトウ。
そんな彼女を、ドクトルは心の底から愛おしく思っていた。
彼女の不感症を薬や魔法で治すのは造作もないが、それは彼の“楽しみ”を奪う行為だ。
それに不感症という病で“あの”『魔界乳業』からも捨てられた過去を持つ彼女にとって、冴えない中年の人間に玩具にされる程度の事など、特に否定する理由もない。
「も、もう出すぞ! “仕事”がなくて一週間溜めに溜めた中年おじさんの濃いザーメンをしっかり味わえ……! うっ……!!」
<どっ♡ どぴゅーーーーーーーーーーーー♡♡♡>
まるで蛇口を一気に解放したような大量の精液がドクトルの股間から放出され、一瞬にしてサトウを白濁の海に沈める。
「ぐえっほっ。えっほっ……! おえっ」
「あー……飲んでって言ったじゃ~~ん……勿体ない」
「じゃあお前が飲め味オンチめ」
「はいはい。じゃあ次は下のオクチで“オンチ”ンポ味わいましょうねぇ」
「下品な上に全く面白くないギャグを平気で口にするとは、お館様ももう大分おっさん化が進みましたね」
「サトウ君に罵られるためなら、おっさんにでもオークにでもなっちゃうよぉ~~~」
「純粋にキモい」
「んふぅ~~~~~~~~~~元気取り戻して参りました! さて、では本番に……」
挿入しようか、と言おうとした、その時だった。
「お取込み中失礼しまぁす!!!!!!」
部屋のドアが、外から一気に蹴破れた。
木製のドアが真ん中からひしゃげ、倒れる。
廊下の光をバックに美しい蹴りのポーズで止まっていたのは、茶色いセミロングの髪の毛の女性。
もっさりとした緑色のジャージを上下で揃えていたが、その右腕部分だけが肩口から破られ、代わりに騎士甲冑とセットで使用されるはずのガントレットを装着していた。
「おう、どうしたタダ飯食らいのシュテル君」
「うるせぇタマナシ。アタイはちゃんと仕事したぞ」
「タマナシ呼ぶな。犯すぞ」
ドクトル・ドピューデル。
本名『玉無 枯葉』は、本名を呼ばれることを極端に嫌うのだ。
「腕っぷしでアタイに勝てると思うなよモヤシめが」
「……こんな屋敷に泥棒なんて入りっこないんだから、腕っぷし自慢の用心棒が必要な訳ないでしょうが」
「アタイもそう思ってたよ、さっきまでは」
シュテルと呼ばれた女性はドクトルとサトウの裸を見ても表情を変えない。彼女も不感症……ではなく、単に見飽きたので呆れかえっているだけなのだ。
「え、何々もったいぶって。面白くなかったらサトウ君とセッ〇ス続けるからねおじさん」
「私は嫌なのでシュテル、早く用件を」
「賊をひっとらえた。二匹だ。一人は鳥のキャッチで、もう一人は見た事のない人間のメス」
「「……」」
全裸の男女がお互いの顔を見つめ合う。
「……それは、面白そうですなサトウ君」
「えぇ。こりゃ乳繰り合ってる場合じゃねぇですわ」
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
「離してぇ~~~~! 私はただ案内してきただけで、全然全くやましい事はしてないんですぅ~~~~! 私だけ! 私だけでも見逃してぇ~~~~~!!」
「ちょっと! 玄関から入らずに侵入しようっていったの鳥さんじゃないですか!!」
「えぇ~~? わたしぃ、トリアタマだから分かんないくるぽっぽ~~」
「後で覚えてろ~~~~~!!」
「と、いう状況です、お館様」
「いや分かんねぇよ」
侵入してきた『賊』は既に縄で縛り上げ、部屋の中央で身動きが取れない状態にあった。
メイド服を着た少女に一言簡単に説明されたドクトル・ドピューデルだが、さっぱり要領を得ない。
「で、お前達はここに何を盗みに来た訳?」
「うわイカ臭っ。さては海産物の亜人類ですか貴方!? 駄目です私甲殻類アレルギーなんです!」
「いや甲殻類だったらイカ大丈夫だろうが……っていうか、俺人間だし。お嬢ちゃんと一緒」
「一緒にすんな!!」
「そうですよお館様。この様な可憐な少女と、薄汚い社会の底辺みたいなお館様が同一の種族だとは私到底思えません」
「サトウ君。今は毒舌は良い」
「なんだ、つまらない……」
ドクトルに言われ、渋々その場を去ったメイドは先ほどまで彼と肌を重ねていたサトウだった。
ドクトルは汗や体臭の対策もせぬまま上からシャツとズボン、白衣を纏っていたが、サトウの方は「え? 先程までセッ〇スに興じていた? まさかそんな」とでも言わんばかりに平静を保っており、ちゃっかり花の香りまで漂わせる始末。
「とりあえず、シュテルが一人居れば賊が暴れても対処出来るだろう」
「承知いたしました。それではキサラギメイド軍団、どこかのアホが蹴り飛ばしたドアの修繕の為に活動を開始します」
「……」
「お前の事やぞ」
「分かった悪かったから早く行け」
シュテルが適当に左手をヒラヒラと振ると同時、サトウと、賊の二人を囲って黙っていた十数名のメイド達が一緒になって部屋の奥へと消えていく。
「……で、何が欲しかった訳?」
「私は! 私は今すぐ自由が欲しい!! ついでに金目の物ねぇかなって思ったけどなさそうだし、私は今自由に飛び立つ翼が欲しい!!」
賊の内の一人、有翼人種のハーピィのメスが鳴くように言い訳を始める。
その声には全く反省の色が見えなかった。
「シュテル。今日の晩飯は鳥の丸焼きなんてどうだ?」
「良いね。折角だし外でバーベキューしよう」
「すいませんすいませんごめんなさいちょっと魔がしましただから食べないで」
「ま、鳥ちゃんは巻き込まれ体質だって猫ちゃんから聞いてたからな。今回は見逃してやる」
「やった! ほんとマジ私この人間送り届けただけなんで!」
「裏切者!!」
「私達はそもそも仲間じゃないぜハッハッハ! サラバ人間! せいぜいこの変態男の慰み物にされるがいいさ!!」
拘束から解放されたハーピィはとりあえず気が済むまで鳴き喚いた後、堂々と正面減から帰っていった。
部屋のど真ん中には、ドクトルと人間の少女だけが取り残される。
「……で」
「泥棒じゃないですよ。私は人探しに来ただけです」
「人探しぃ?」
「はい。私は枢木美代……10年前にこの『街』で行方不明になった母を探しに来ました」